(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015857
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】放射線撮影システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20250123BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20250123BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
A61B6/42 500S
A61B6/00 530A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024203930
(22)【出願日】2024-11-22
(62)【分割の表示】P 2023156587の分割
【原出願日】2018-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 信之
(72)【発明者】
【氏名】桑田 正弘
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 康史
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 幸平
(72)【発明者】
【氏名】原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】手塚 英剛
(57)【要約】
【課題】無線シリアル撮影を安定して実施できるようにする。
【解決手段】放射線撮影システムは、放射線照射装置による放射線照射を制御する放射線制御装置と、放射線制御装置と同期をとるための少なくとも一つの同期方法で通信可能な放射線撮影装置と、撮影方法を選択する撮影方法選択手段と、撮影方法選択手段により選択された撮影方法に基づいて、放射線制御装置と放射線撮影装置の同期方法を選択する同期方法選択手段と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線照射装置による放射線照射を制御する放射線制御装置と、
前記放射線制御装置と同期をとるための少なくとも一つの同期方法で通信可能な放射線撮影装置と、
撮影方法を選択する撮影方法選択手段と、
前記撮影方法選択手段により選択された撮影方法に基づいて、前記放射線制御装置と前記放射線撮影装置の同期方法を選択する同期方法選択手段と、を備える放射線撮影システム。
【請求項2】
計時部と、発振器と、を備え、
前記同期方法は、前記計時部の精度低下の影響または前記発振器の周波数の誤差の影響を受け難い第1の同期方法と、前記第1の同期方法とは異なる第2の同期方法を含む請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記放射線照射装置と前記放射線撮影装置は、無線または有線で通信可能である請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記撮影方法は、前記放射線照射装置と前記放射線撮影装置との無線通信により1枚の放射線画像を生成する無線静止画撮影と、前記放射線照射装置と前記放射線撮影装置との無線通信により1枚以上の放射線画像を生成する無線シリアル撮影と、を含み、
前記同期方法選択手段は、前記撮影方法が前記無線静止画撮影の場合は前記第1の同期方法を選択し、前記撮影方法が前記無線シリアル撮影の場合は前記第2の同期方法を選択する請求項3に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記撮影方法は、前記放射線照射装置と前記放射線撮影装置との無線通信により1枚の放射線画像を生成する無線静止画撮影と、前記放射線照射装置と前記放射線撮影装置との無線通信により1枚以上の放射線画像を生成する無線シリアル撮影と、を含み、
前記同期方法選択手段は、前記撮影方法が前記無線静止画撮影または前記無線シリアル撮影の場合は前記第2の同期方法を選択する請求項3に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記撮影方法は、前記放射線照射装置と前記放射線撮影装置との有線通信により1枚以上の放射線画像を生成する有線シリアル撮影と、前記放射線照射装置と前記放射線撮影装置との無線通信により1枚以上の放射線画像を生成する無線シリアル撮影と、を含み、
前記同期方法選択手段は、前記撮影方法が前記有線シリアル撮影の場合は前記第1の同期方法を選択し、前記撮影方法が前記無線シリアル撮影の場合は前記第2の同期方法を選択する請求項3に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記放射線撮影装置は放射線検出素子を備え、
前記第1の同期方法は、前記放射線照射装置から前記放射線撮影装置に、前記放射線検出素子の信号の読み出し開始タイミングを有線で通知する請求項3に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
前記撮影方法選択手段は、撮影オーダー情報に基づいて前記撮影方法を選択する請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
前記放射線撮影装置は、有線ケーブルの接続状態を検知する検知部を備え、
前記撮影方法選択手段は、検知部により検知された前記有線ケーブルの接続状態に基づいて前記撮影方法を選択する請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
前記撮影方法選択手段は、前記有線ケーブルが接続されている場合は前記放射線照射装置と前記放射線撮影装置との有線通信により1枚以上の放射線画像を生成する有線シリアル撮影を選択し、前記有線ケーブルが接続されていない場合は前記放射線照射装置と前記放射線撮影装置との無線通信により1枚以上の放射線画像を生成する無線シリアル撮影を選択する請求項9に記載の放射線撮影システム。
【請求項11】
撮影方法を選択するステップと、
前記選択された撮影方法に基づいて、放射線撮影装置による放射線の照射を制御する放射線制御装置と、前記放射線制御装置と同期を取るための少なくとも1つの同期方法で通信可能な放射線撮影装置と、の同期方法を選択するステップと、を備える放射線撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システム及び放射線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影装置で撮影を行うには、放射線制御装置の曝射タイミングと撮影装置の読出しタイミングの整合をとる必要がある。パルス照射にあわせて複数フレームの画像を生成する連続撮影(以降、シリアル撮影と称す)では、フレーム間の間隔が短くなるほど撮影装置の蓄積期間が短くなるため、照射タイミング及び読出しタイミングの高精度(場合によっては数ms~数百μsオーダー)な制御が求められる。
タイミングの同期は、撮影装置と放射線制御装置との間で、曝射と読出しに関わるタイミング情報をやりとりすることで行われるのが一般的である。放射線制御装置と撮影装置間の通信が専用線による有線通信にすると、高精度なタイミング制御が可能であるという利点を有する反面、撮影装置を患者下に直接入れて撮影する際に、撮影装置の取回しが悪く撮影を行いにくいという欠点があった。
そこで、撮影装置を無線にすることが求められているのだが、放射線制御装置と撮影装置との間の通信方式が、IEEE802.11等のCSMA/CA方式によるベストエフォート型の調停を用いる無線通信規格を用いる場合、パケット送信の調整時間が不定である為、通信遅延にバラツキが生じ、高精度なタイミング制御の実現に課題がある。
こうした課題に対応するために、以下のような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、無線通信規格のビーコン信号に応じてリセットされ計数を再開する第一のカウンタが規定時間になると読出しを開始する撮影装置と、ビーコン信号に応じてリセットされ計数を再開する第二のカウンタが規定時間になると曝射の開始を指示する放射線制御装置と、を備えた撮影システムについて記載されている。
また、特許文献1には、IEEE802.11等のCSMA/CA方式によるベストエフォート型の調停を用いる無線通信規格ではビーコン発信タイミングのずれが発生することがあり、所望のタイミングで曝射および読出しができない問題があるため、ビーコン信号発信時に自システムの無線通信を停止することでビーコン発信タイミングのずれを防止することについても記載されている。
【0004】
特許文献2には、第一計時手段が予め定められた時間になったら曝射の開始を指示する放射線制御装置と、撮影装置は第二計時手段が予め定められた時間になったら読出しを開始する撮影装置と、を備えた撮影システムにおいて、第一計時手段の時間と第二計時手段の時間とを同期させることで曝射と読出しのタイミングの整合をとることについて記載されている。
なお、静止画撮影では、放射線センサーによる照射検知タイミングから読出しタイミングを決定する方式が広く普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-186439号公報
【特許文献2】特開2010-081960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術は、ビーコン信号発信時に自システムの無線通信を停止することでビーコン信号の通信遅延のばらつきは防止できるとしている。しかし、特許文献1に記載の技術が採用しているIEEE802.11という通信規格は、非常に多くの機器に採用されている。また、テザリングの普及により親機として機能する機器が増えてきている。このため、特許文献1に記載された撮影システムの周囲には、当該システムが制御できない無線通信が様々なタイミングで発生することとなり、自システムの無線通信を停止するだけではビーコン信号の通信遅延のばらつきを防ぐことはできず、安定したタイミングで曝射制御を行うことは困難である。
つまり、特許文献1に記載された撮影システムによる同期制御は、一般的な無線通信環境に耐えることができないと言える。
【0007】
また、特許文献2に記載された技術は、撮影装置の第一計時手段と放射線制御装置の第二計時手段の時間を同期させ、各計時手段の時間を用いて曝射および読出しを開始するため、時間の同期精度が十分高く維持されていれば、曝射と読出しタイミングの整合をとることができる。
しかし、一連の曝射と読出しを繰り返している最中に、時間同期機能に異常が発生する(例えば、放射線制御装置と撮影装置以外の第三の装置が持つ時間に第一計時手段と第二計時手段を同期させる構成において、第三の装置に電源オフや再起動が起き、時間が急激に変化する)と、時間の同期精度が低下し、曝射と読出しのタイミングが合わなくなり、撮影がうまくいかなくなってしまう。
【0008】
また、静止画撮影では、放射線センサーによる照射検知タイミングから読出しタイミングを決定する方式が普及しているが、放射線センサーに到達する線量が低いと、検知できない、又は、検知に時間(例えば、照射開始から検出まで10ms程度)がかかることがある。シリアル撮影では多くの枚数を撮影するため、1フレームあたりの線量を静止画1枚の線量より低く抑えることが多く、放射線センサーを用いた方法では、必要なタイミング精度を実現することが困難である。
一方、高感度の放射線センサーを採用するという手もあるが、放射線センサーは感度が上がる程高価になるため、撮影システムの製造原価が高くなってしまう。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、複数の計時手段を用いて放射線照射装置と放射線撮影装置との同期をとる放射線撮影システムにおいて、シリアル撮影を安定して実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の問題を解決するために、本発明に係る放射線撮影システムは、
放射線照射装置による放射線照射を制御する放射線制御装置と、
前記放射線制御装置と同期をとるための少なくとも一つの同期方法で通信可能な放射線撮影装置と、
撮影方法を選択する撮影方法選択手段と、
前記撮影方法選択手段により選択された撮影方法に基づいて、前記放射線制御装置と前記放射線撮影装置の同期方法を選択する同期方法選択手段と、を備える。
また、本発明に係る放射線撮影方法は、
撮影方法を選択するステップと、
前記選択された撮影方法に基づいて、放射線撮影装置による放射線の照射を制御する放射線制御装置と、前記放射線制御装置と同期を取るための少なくとも1つの同期方法で通信可能な放射線撮影装置と、の同期方法を選択するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無線シリアル撮影を安定して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図2】
図1の放射線撮影システムが備える放射線制御装置の具体的構成を表すブロック図である。
【
図3】
図1の放射線撮影システムが備える放射線撮影装置の具体的構成を表すブロック図である。
【
図4】
図1の放射線撮影システムが備えるアクセスポイントの構成の一例を表すブロック図である。
【
図5】同実施形態に係る放射線撮影システムの他の構成を表すブロック図である。
【
図6】
図1の放射線撮影システムの動作の一例を表すタイミングチャートである。
【
図7】
図1の放射線撮影システムの動作の他の例を表すイミングチャートである。
【
図8】付帯技術に係る放射線撮影システムの構成を表すブロックである。
【
図9】
図8の放射線撮影システムが備える放射線制御装置の具体的構成を表すブロック図である。
【
図10】
図8の放射線撮影システムが備える放射線撮影装置の具体的構成を表すブロック図である。
【
図11】
図8の放射線撮影システムの基本動作を表すタイミングチャートである。
【
図12】
図8の撮影システムが動作するときの各計時部の計時情報を表す図である。
【
図13】
図10の放射線撮影装置の機能的構成を表すブロック図である。
【
図14】
図9の放射線制御装置の機能的構成を表すブロック図である。
【
図15】
図9の放射線制御装置又は
図10の放射線撮影装置の動作を表すタイミングチャートである。
【
図16】
図9の放射線制御装置又は
図10の放射線撮影装置の動作を表すタイミングチャートである。
【
図17】
図9の放射線制御装置又は
図10の放射線撮影装置の動作を表すタイミングチャートである。
【
図18】
図8の放射線撮影システムが備える放射線撮影装置の他の構成を表すブロックである。
【
図19】
図18の放射線撮影装置を備えた放射線撮影システムの動作を表すタイミングチャートである。
【
図20】
図8の放射線撮影システムが備える放射線撮影装置の他の構成を表すブロック図である。
【
図21】
図20の放射線撮影装置を備えた放射線撮影システムの動作を表すタイミングチャートである。
【
図22】実施例1-1に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図23】実施例1-2に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図24】実施例1-3に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図25】実施例1-4に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図26】実施例1-5に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図27】実施例1-6に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図28】実施例1-7に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図29】実施例1-8に係る放射線撮影システムが備える放射線撮影装置の具体的構成を表すブロックである。
【
図30】
図23の放射線撮影装置を備える放射線撮影システムの動作を表すタイミングチャートである。
【
図31】実施例1-9に係る放射線撮影システムの動作を表すタイミングチャートである。
【
図32】実施例1-11に係る放射線撮影システムの動作を表すタイミングチャートである。
【
図33】実施例2-1に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図34】実施例2-2に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図35】実施例2-3に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図36】実施例2-4に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図37】実施例2-5に係る放射線撮影システムが備える放射線撮影装置の斜視図である。
【
図38】実施例3-1に係る放射線撮影システムの動作を表すグラフである。
【
図39】実施例3-2に係る放射線撮影システムの動作を表すグラフである。
【
図40】実施例3-3に係る放射線撮影システムの動作を表すグラフである。
【
図41】実施例4-1に係る放射線撮影システムの動作を表すグラフである。
【
図42】実施例4-2に係る放射線撮影システムの動作を表すグラフである。
【
図43】実施例4-3に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図44】実施例5-1に係る放射線撮影システムの動作を表すグラフである。
【
図45】(a)は温度と計時速度の関係を表すグラフ、(b)は第一,第二発明の実施例5-3に係る放射線撮影システムの動作を表すグラフである。
【
図46】実施例6-2に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図47】実施例6-3に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図48】実施例6-4に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図49】実施例6-5に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図50】実施例6-6に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図51】実施例7-1に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図52】実施例7-2に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図53】実施例7-3に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図54】実施例9-1に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図55】実施例9-2に係る放射線撮影システムの動作を表すフローチャートである。
【
図56】実施例11-1に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図57】実施例11-2に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【
図58】実施例11-3に係る放射線撮影システムの構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図面に例示したものに限定されるものではない。
【0014】
〔放射線撮影システムの構成〕
初めに、本実施形態の放射線撮影システム(以下撮影システム100)の概略について説明する。
図1は、撮影システム100の概略構成を表すブロック図である。
【0015】
本実施形態の撮影システム100は、
図1に示したように、放射線照射装置(以下照射装置1)と、アクセスポイント(以下AP2)と、一又は複数の放射線撮影装置(以下撮影装置3)と、コンソール14と、を備えて構成されている。
そして、照射装置1とAP2、AP2と撮影装置3は、それぞれ通信可能となっている。すなわち、照射装置1と撮影装置3とは、AP2を介して通信可能となっている。
また、この撮影システム100は、図示しない放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)や、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等と、通信することが可能となっている。
【0016】
照射装置1は、放射線(X線等)を発生させ、その放射線Rを被検体S及びその背後に配置される撮影装置3へ照射するもので、放射線制御装置(以下制御装置12)、放射線管球(以下管球13)等で構成されている。
【0017】
制御装置12は、ユーザーによる曝射開始操作に基づいて、予め設定された放射線の照射条件に応じた電圧を管球13に印加するようになっている。
この制御装置12の具体的構成については後述する。
【0018】
管球13は、制御装置12から電圧が印加されると電圧に応じた線量の放射線Rを、電圧が印加された時間だけ発生させるようになっている。
すなわち、管球13は、制御装置12から連続的に電圧が印加されれば連続的に放射線Rを照射し、パルス状の電圧が印加されればパルス状の放射線Rを照射するようになっている。
【0019】
コンソール14は、PCや携帯端末、あるいは専用の装置によって構成されている。
また、コンソール14は、受信した画像データに対し、必要に応じて各種画像処理を施すことが可能となっている。
また、コンソール14は、図示しない表示部を有し、画像データに基づく放射線画像を表示することが可能となっている。
【0020】
また、コンソール14は、撮影モードを設定することが可能となっている。
本実施形態においては、静止画撮影モードとシリアル撮影モードの二種類の撮影モードがあり、このいずれかを選択することが可能となっている。
静止画撮影モードは、一回の曝射開始操作で、照射条件で設定した時間幅の放射線Rを1回だけ照射し、1枚の放射線画像を生成する撮影モードである。
シリアル撮影モードは、一回の曝射開始操作で、照射条件で設定した時間幅のパルス状の放射線Rを1回以上照射し、1枚以上の放射線画像を生成する撮影モードである。
また、コンソール14は、シリアル撮影が撮影モードとして設定された場合に、フレームレートを設定することが可能となっている。フレームレートは、ユーザーが入力した任意の数値としてもよいし、複数の選択肢(例えば15フレーム/s(以下fps),7.5fps,30fps等)の中から選択するものとしてもよい。
【0021】
AP2は、通信部を備え、照射装置1と撮影装置3との通信を中継するようになっている。
通信部は、アンテナと、コネクターと、を備え、有線通信と無線通信の両方を行うことが可能となっている。
また、通信部は、ビーコンを所定周期で繰り返し照射装置1や撮影装置3へ送信するようになっている。
なお、AP2は、照射装置1や撮影装置3とは別に設けるのではなく、照射装置1又は撮影装置3に内蔵させるようにしてもよい。
【0022】
撮影装置3は、照射装置1から放射線Rを受けることで画像データを生成するものである。
なお、撮影装置3の詳細については後述する。
【0023】
このように構成された本実施形態の撮影システム100は、照射装置1から撮影装置3の手前に配置した被検体Sへ放射線Rを照射することにより、被検体Sの放射線撮影を行うことが可能となっている。
コンソール14において撮影モードを静止画撮影モードに設定して撮影すれば、1枚の静止画像が得られ、シリアル撮影モードに設定して撮影すれば、一連の複数枚の画像からなる動態画像が得られる。
以下、シリアル撮影により得られた一連の複数枚の画像を動態画像と称し、動態画像を構成する個々の画像をフレーム画像と称する。
【0024】
なお、
図1では、撮影システム100として、AP2と照射装置1、AP2と撮影装置3が共に無線通信を行う場合を例示したが、本実施形態に係る撮影システム100は、計時情報源装置2,4と照射装置1、計時情報源装置2,4と撮影装置3の少なくともいずれかが無線で通信するよう構成されていればよく、例えば
図8に示すように、AP2と照射装置1とが有線接続された構成とすることもできる。
このようにすれば、制御装置12とAP2との同期精度を十分に高い状態で維持することができるため、制御装置12に動作モード切替えの機能を持たせる必要が無くなり、制御装置12を低コストで製造することができるようになる。
また、撮影装置3のIFを無線通信から有線通信に変更し、さらにAP2と撮影装置3とを専用線で接続することも可能である。
このようにすれば、撮影装置3に動作モード切替えの機能を持たせる必要がなくなる。
【0025】
また、このように構成された本実施形態の撮影システム100は、例えば病院の撮影室等に設置して用いることも可能であるし、照射装置1を車輪付きの回診車として構成することにより移動可能なシステムとして用いることも可能である。移動可能とすれば、移動が困難な被検体S(被検体S)のもとへ出向いて放射線画像の撮影を行うことができる。
【0026】
例えば、病院の撮影室に設置されている撮影台を用いて撮影を行う場合、撮影台に設置された撮影装置3には有線ケーブルを接続し、照射装置1との間で情報の送受信や、撮影装置3への電力の供給等を行うことができる。
例えば上記、撮影装置3との接続に有線ケーブルを用いる場合、有線ケーブルの信号にパルス信号やタイミング信号を含ませることで、照射装置1と撮影装置3のタイミングを合わせて撮影することが可能となる。
しかし、例えば撮影室における撮影でも、車椅子やベッドに乗せたままの状態で撮影を行わなければならない場合があり、そのような場合に撮影装置3に有線ケーブルをつけたままの撮影では、
・ケーブルが邪魔になる
・ケーブルが抜けて通信不能になる危険性がある
・ケーブルが被検体に触れるので衛生面で問題がある
といった問題があり、有線ケーブルを用いない撮影を行いたい、といった要望があった。
【0027】
回診車で移動し撮影を行う場合には、被検体が療養している病棟にて撮影を行うこととなる。この場合には被検体が寝ているベッドにて撮影することとなり、被検体とベッドとの間に放射線撮影装置を入れて撮影を行う必要がある。そこで、上記撮影室の場合以上に、ケーブルが邪魔になる、ケーブルが抜けて通信不能になる危険性がある、ケーブルが被検体に触れるので衛生面で問題がある、といった問題があり、有線ケーブルを用いない撮影を行いたいといった要望があった。
特にFPDを用いた放射線撮影装置以前のCRを用いた撮影では、撮影時に有線ケーブルが不要であり、CRと同等の操作の容易性を得るためには有線ケーブルを用いない撮影を行いたいといった要望があった。
しかし、本実施形態に係る撮影システム100を用いることで、こうした要望に沿った回診車を構成することができる。
【0028】
〔放射線制御装置の構成〕
次に、上記照射装置1が備える制御装置12の具体的構成について説明する。
図2は、制御装置12の具体的構成を表すブロック図である。
【0029】
本実施形態に係る制御装置12は、
図2に示したように、放射線制御部121、高電圧発生部122、記憶部123、通信部124、照射側計時部125、第二照射側計時部126、表示部127、操作部15等を備えている。
【0030】
放射線制御部121は、コンソール14又は操作盤15からの制御信号に基づいて、各種撮影条件(撮影対象部位、体格等の被検体Sに関する条件や、管電圧や管電流、照射時間、電流時間積等の放射線の照射に関する条件)を設定することが可能となっている。そして、曝射スイッチ15aから撮影開始信号を受信したことに基づいて、高電圧発生部122に対し電圧の印加(放射線の照射)開始を指示する制御情報を送信するよう構成されている。
【0031】
記憶部123は、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)、NAND型フラッシュメモリー、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。
【0032】
通信部124は、本発明における通信手段であり、外部と通信するためのアンテナ及びコネクターを備えている。
また、通信部36は、外部からの制御信号に基づいて、無線通信と有線通信のどちらを行うかを選択することが可能となっている。すなわち、無線通信が選択された場合には、アンテナを用いた無線通信を行い、有線通信が選択された場合には、有線LAN等を用いることで情報の送受信を行うことができる。また、有線通信を用いて同期を行いたい場合には、例えばNTP(Network Time Protocol)等のプロトコルや、国際標準規格IEEE Std.1558-2008(以下IEEE1588と略す)に規定されているような方法を用いることで同期を行うことができる。
【0033】
照射側計時部125は、本発明における第二計時手段であり、電源がオンにされたこと、あるいは外部から所定の制御信号を受信したこと等を契機として計時を開始し、計時情報を生成するよう構成されている。
照射側計時部125からの出力は、一定間隔のパルス等のタイミング情報としてもよいし、年、月、日、時、分、秒等の時刻や、ある時点から一定間隔でカウントアップしたカウント数等の時刻情報としてもよい。
なお、照射側計時部125は、制御装置12に内蔵するのではなく、制御装置12の外部に設けるようにしてもよい。
また、近年では、後述するIEEE802.11の通信規格に規定された時刻同期機能(Timing Synchronization Function、以下TSF)を標準で搭載し、前述のタイマー機能を有する無線LANチップも存在する。そこで、こうした無線LANチップを照射側計時部125として利用することも可能である。
【0034】
第二照射側計時部126は、計時動作自体は照射側計時部125と同様であり、電源がオンにされたこと、あるいは外部から所定の制御信号を受信したこと等を契機として計時を開始し、計時情報を生成するよう構成されている。
第二照射側計時部126からの出力は、一定間隔のパルス等のタイミング情報としてもよいし、年、月、日、時、分、秒等の時刻や、ある時点から一定間隔でカウントアップしたカウント数等の時刻情報としてもよい。
また、近年では、後述するIEEE802.11の通信規格に規定された時刻同期機能(Timing Synchronization Function、以下TSF)を標準で搭載し、前述のタイマー機能を有する無線LANチップも存在する。そこで、こうした無線LANチップを第二照射側計時部126として利用することも可能である。
【0035】
表示部127は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、放射線制御部121から入力される表示信号の指示に従って、操作部15からの入力内容や、放射線の照射結果情報(例えば管電圧や管電流、照射時間、管電流照射時間積、撮影枚数、入射線量、面積線量等の実績)や、画像データに基づく放射線画像等を表示する。
【0036】
操作部15は、2段構成の曝射スイッチ15aを備えている。
曝射スイッチ15aは、操作部15の本体と有線で接続されている。なお、曝射スイッチ15aは操作部15と無線で接続してもよい。
そして、曝射スイッチ15aが操作されたことに基づいて、撮影開始信号を制御装置12及び撮影装置3へ送信するようになっている。すなわち、本実施形態においては、曝射スイッチ15aの押下が上記曝射開始操作の一つとなる。
なお、後述するように(
図8に示したように)、操作部15を操作盤15として制御装置12外に設けるようにしてもよい。
【0037】
なお、本実施形態においては、制御装置12に高電圧発生部122も含む機器構成とした。このようにすることで、ユーザーが高電圧発生部122を意識せずに放射線を扱うことが可能となる。そのため、例えば機器間のマッチングによる意図しない不具合などの発生がより少ない機器構成で放射線を扱うことが可能となる。
一方で、制御装置12には高電圧発生部122を含まず、高電圧発生部122を制御装置12の本体から独立した構成とすることも可能である。このようにすることで、ユーザーが制御装置12とは独立した任意の高電圧発生部122を選択して機器を構成することが可能となり、機器選択の自由度を高めることができる。
【0038】
〔放射線撮影装置の構成〕
次に、上記撮影システム100が備える撮影装置3の具体的構成について説明する。
図3は、撮影装置3の具体的構成を表すブロック図である。
なお、ここでは、放射された放射線Rを可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型のものを例にして説明するが、本発明は、放射線Rを検出素子で直接電気信号に変換する、いわゆる直接型の撮影装置であってもよい。
また、撮影装置3の他の構成についても、放射線画像の画像データを生成することが可能であれば、
図3に例示したものに限る必要はない。
【0039】
本実施形態に係る撮影装置3は、図示しない筐体やシンチレーターの他、
図3に示したように、撮影制御部31、放射線検出部32、走査駆動部33、読出し部34、記憶部35、通信部36、撮影側計時部37、第二撮影側計時部39等を備えている。そして、各部31~39は、バッテリー38から電力の供給を受けるようになっている。
【0040】
筐体には、図示しない電源スイッチや切替スイッチ、インジケーター、後述する通信部36のコネクター36b等が設けられている。
シンチレーターは、放射線Rを受けると可視光等の放射線よりも波長の長い電磁波を発するようになっている。
【0041】
撮影制御部31は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成されている。なお、専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0042】
放射線検出部32は、放射線Rを受けることで電荷を発生させるためのもので、基板32aや、複数の走査線32b、複数の信号線32c、複数の放射線検出素子32d、複数のスイッチ素子32e、複数のバイアス線32f、電源回路32g等で構成されている。
基板32aは、板状に形成され、シンチレーターと並行に対向するよう配置されている。
複数の走査線32bは、所定間隔を空けて互いに平行に延びるよう設けられている。
複数の信号線32cは、所定間隔を空けて互いに平行に延びるように、走査線32bと直交して延びるように、かつ各走査線と導通しないように設けられている。
すなわち、複数の走査線32b及び信号線32cは格子をなすように設けられている。
【0043】
放射線検出素子32dは、当該放射線検出素子に照射された放射線の線量(或いはシンチレーターで変換された電磁波の光量)に応じた電気信号(電流、電荷)をそれぞれ発生させるもので、例えばフォトダイオードや、フォトトランジスター等で構成されている。
複数の放射線検出素子32dは、基板32aの表面であって、複数の走査線32b及び信号線32cによって区画された複数の領域内にそれぞれ設けられている。すなわち、複数の放射線検出素子32dは、マトリクス状(行列状)に配列されている。このため、各放射線検出素子32dは、それぞれシンチレーターと対向することとなる。
各放射線検出素子32dの一方の端子には、スイッチ素子であるスイッチ素子32eのドレイン端子が、他方の端子にはバイアス線がそれぞれ接続されている。
【0044】
複数のスイッチ素子32eは、放射線検出素子32dと同様、複数の走査線32b及び信号線32cによって区画された複数の領域内にそれぞれ設けられている。
各スイッチ素子32eは、ゲート電極が近接する走査線32bに、ソース電極が近接する信号線32cに、ドレイン電極が同じ領域内の放射線検出素子32dの一方の端子にそれぞれ接続されている。
【0045】
複数のバイアス線32fは、各放射線検出素子32dの他方の端子に接続されている。
電源回路32gは、逆バイアス電圧を生成し、バイアス線32fを介して各放射線検出素子に逆バイアス電圧を印加するようになっている。
【0046】
走査駆動部33は、電源回路33aや、ゲートドライバー33b等で構成されている。
電源回路33aは、それぞれ電圧の異なるオン電圧とオフ電圧を生成し、ゲートドライバー33bに供給するようになっている。
ゲートドライバー33bは、各走査線32bに印加する電圧をオン電圧かオフ電圧に切り替えるようになっている。
【0047】
読出し部34は、複数の読出し回路34aや、アナログマルチプレクサー34b、A/D変換器34c等を備えている。
複数の読出し回路34aは、放射線検出部32の各信号線32cにそれぞれ接続されるとともに、各信号線32cに基準電圧を印加するようになっている。
また、各読出し回路34aは、積分回路34dと相関二重サンプリング回路(以下、CDS回路)34e等で構成されている。
【0048】
積分回路34dは、信号線32cに放出された電荷を積分し、積分された電荷量に応じた電圧値をCDS回路34eへ出力するようになっている。
CDS回路34eは、信号を読み出す対象の放射線検出素子32dが接続された走査線32bにオン電圧を印可する前(オフ電圧を印加している間)に、積分回路34dの出力電圧をサンプリングホールドし、該当の走査線32bにオン電圧を印可して放射線検出素子の信号電荷を読出し、該当の走査線32bにオフ電圧を印加した後の積分回路34dの出力電圧の差分を出力するようになっている。
【0049】
アナログマルチプレクサー34bは、CDS回路34eから出力された複数の差分信号を一つずつA/D変換器34cへ出力するようになっている。
A/D変換器34cは、入力されたアナログ電圧値の画像データをデジタル値の画像データに順次変換するようになっている。
【0050】
記憶部35は、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)、NAND型フラッシュメモリー、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。
【0051】
通信部36は、本発明における通信手段であり、外部と通信するためのアンテナ36a及びコネクター36bを備えている。
また、通信部36は、外部からの制御信号に基づいて、無線通信と有線通信のどちらを行うかを選択することが可能となっている。すなわち、無線通信が選択された場合には、アンテナ36aを用いた無線通信を行い、有線通信が選択された場合には、有線LAN等を用いることで情報の送受信を行うことができる。また、有線通信を用いて同期を行いたい場合には、例えばNTP(Network Time Protocol)等のプロトコルや、国際標準規格IEEE1588に規定されているような方法を用いることで同期を行うことができる。
【0052】
撮影側計時部37は、本発明における第三計時手段であり、電源がオンにされたこと、あるいは外部から所定の制御信号を受信したこと等を契機として計時し、計時情報を生成するよう構成されている。
撮影側計時部37からの出力は、一定間隔のパルス等のタイミング情報としてもよいし、年、月、日、時、分、秒等の時刻や、ある時点から一定間隔でカウントアップしたカウント数等の時刻情報としてもよい。
なお、撮影側計時部37は、撮影装置3に内蔵するのではなく、撮影装置3の外部に設けるようにしてもよい。
また、近年では、後述するIEEE802.11の通信規格に規定された時刻同期機能(Timing Synchronization Function、以下TSF)を標準で搭載し、前述のタイマー機能を有する無線LANチップも存在する。そこで、こうした無線LANチップを撮影側計時部37として利用することも可能である。
【0053】
第二撮影側計時部39は、計時動作自体は撮影側計時部37と同様であり、電源がオンにされたこと、あるいは外部から所定の制御信号を受信したこと等を契機として計時を開始し、計時情報を生成するよう構成されている。
第二撮影側計時部39からの出力は、一定間隔のパルス等のタイミング情報としてもよいし、年、月、日、時、分、秒等の時刻や、ある時点から一定間隔でカウントアップしたカウント数等の時刻情報としてもよい。
また、近年では、後述するIEEE802.11の通信規格に規定された時刻同期機能(Timing Synchronization Function、以下TSF)を標準で搭載し、前述のタイマー機能を有する無線LANチップも存在する。そこで、こうした無線LANチップを第二撮影側計時部39として利用することも可能である。
【0054】
このように構成された撮影装置3は、電源がオンにされると、「初期化状態」、「蓄積状態」、「読出し・転送状態」のうちのいずれかの状態を取る。状態を切り替えるタイミングについては後述する。
「初期化状態」は、各スイッチ素子32eにオン電圧が印加され、放射線検出素子32dが発生させた電荷が各画素に蓄積されない(電荷を信号線32cに放出する)状態である。
「蓄積状態」は、各スイッチ素子32eにオフ電圧が印加され、放射線検出素子32dが発生させた電荷が画素内に蓄積可能となる(電荷が信号線32cに放出されない)状態である。
「読出し・転送状態」は、各スイッチ素子32eにオン電圧が印加されるとともに、読み出し部34が駆動して、流れ込んできた電荷に基づく画像データを読出し、それを他の装置へ送信することが可能な状態である。
なお、素子および装置の構成によっては、読出しにより蓄積された電荷がクリアされるため、「読出し」と「初期化」を別動作として区別せず、「読出し」と「初期化」が同じ動作として同時に行われる場合もある。
【0055】
〔計時部のずれ〕
詳細は後述するが、本実施形態に係る撮影システム100では、制御装置12が自身の備える第二照射側計時部126の計時情報に基づいて、撮影装置3が自身の備える第二撮影側計時部39に基づいて、各自の動作タイミングを決定するようになっている。このため、第二照射側計時部126の計時速度と第二撮影側計時部39の計時速度が揃っていれば、照射装置1と撮影装置3の同期がとられることとなる。
しかし、例えば、制御装置12や撮影装置3が備える発振器の周波数の誤差等の影響により、制御装置12と連動する第二照射側計時部126の計時速度と、撮影装置3と連動する第二撮影側計時部39の計時速度とに若干の差が生じる場合がある。このような場合、シリアル撮影のような比較的長時間の撮影を行うと、第二照射側計時部126の計時情報と第二撮影側計時部39の計時情報とのずれが次第に大きくなってくるため、照射装置1の動作タイミングと撮影装置3の動作タイミングとがずれてきてしまう。
【0056】
そこで、本実施形態の撮影システム100は、基準となる計時情報(以下第一計時情報)に基づいて、第二照射側計時部126の計時情報と第二撮影側計時部39の計時情報を定期的に揃えることが可能となっている。
第一計時情報を生成する方法は、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0057】
〔第一計時情報の生成方法1〕
一つ目の生成方法として挙げられるのは、IEEE802.11の通信規格が有する時刻同期機能(Timing Synchronization Function、以下TSF)で用いられる時刻情報を第一計時情報として利用する方法である。
【0058】
「TSF」とは、機器同士の無線通信を行う際、アクセスポイントと機器との間で時刻を合わせる機能のことである。
具体的には、アクセスポイントに、フリーランで周期的(1μs毎)にカウントアップする計時手段(TSFタイマー)を持たせ、周期的(標準では100ms毎)に送信されるビーコンに、送信時の時刻情報を含めて端末に送信する。
一方、端末にも周期的(1μs毎)にカウントアップする計時手段を持たせ、ビーコン受信時に自身の計時部125,37の時刻情報をビーコンに含まれる時刻情報に更新して、カウントアップを継続するというものである。
【0059】
このTSFの時刻情報を第一計時情報として用いる場合には、例えば
図4に示したように、AP2にTSFタイマー22を設け、時刻情報をAP2の通信部21が出力するビーコンに含めて制御装置12や撮影装置3へ出力するようにする。
計時方法は、例えば、0からカウントを開始し、時刻情報が所定の最大値に達したら0にリセットしてカウントを繰り返すようにする。
なお、TSFタイマー22は、制御装置12や撮影装置3とは独立した計時に基づいて計時情報を出力する構成としてもよいし、制御装置12又は撮影装置3の計時情報に連動した計時情報を出力する構成としてもよい。
このビーコンに含められる、すなわち、TSFタイマー22は、本発明における第一計時手段であり、ビーコン送信時点におけるTSFタイマー22の時刻情報が第一計時情報となる。
以下、TSFを第一計時情報として利用する場合のAP2を計時情報源装置2と称する。
【0060】
〔第一計時情報の生成方法2〕
二つ目の生成方法として挙げられるのは、第一計時情報を出力する専用の装置を用いる方法である。
【0061】
具体的には、例えば
図5に示すように、図示しない計時手段を備え、計時情報を制御装置12や撮影装置3と通信可能な計時情報源装置4を備えるようにする。
計時情報源装置4は、図示しない計時手段を内蔵したものとする。
なお、計時情報源装置4の計時手段は、制御装置12や撮影装置3とは独立した計時に基づいて計時情報を出力する構成としてもよいし、制御装置12又は撮影装置3の計時情報に連動した計時情報を出力する構成としてもよい。
計時情報源装置4からの出力は、一定間隔のパルス等のタイミング情報としてもよいし、年、月、日、時、分、秒等の時刻や、ある時点から一定間隔でカウントアップしたカウント数等の時刻情報としてもよい。
そして、計時した計時情報を第一計時情報として定期的に送信するようにする。
以下、AP2のTSFタイマー22と計時情報源装置4の図示しない計時手段を併せて基準計時部と称する場合がある。
【0062】
〔ずれの修正〕
本実施形態の制御装置12の放射線制御部121と撮影装置3の撮影制御部31のうち、第一計時手段を受信する装置の制御部(以下、制御部121,31)は、計時情報源装置2,4から第一計時情報を受信する度に、制御装置12の照射側計時部125と撮影装置3の撮影側計時部37のうち第一計時情報を受信する装置の計時部(以下計時部37,125)の計時情報を第一計時情報の値に更新するものとなっている。
【0063】
また、本実施形態の計時部126,39は、自身の動作モードを、同期モードとすることが可能であり、場合によって自走モードに切り替えるようになっている。
なお、これらの動作モードの切替えについては後述する。
【0064】
また、制御部121,31は、所定のタイミングで、制御装置12の第二照射側計時部126と撮影装置3の第二撮影側計時部39のうち第一計時情報を受信する装置の計時部(以下、第二計時部126,39)の計時情報を、計時部125,37の計時情報に更新し、その後カウントを継続させる。上述したように、計時部125,37は計時情報源装置2,4から第一計時情報を受信する度に計時情報源装置2,4と時刻同期する。このため、第二計時部126,39も、同期モードで動作している間、所定周期で計時情報源装置2,4と繰り返し同期をとることになる。
また、制御部121,31は、第二計時部126,39が自走モードで動作する際には、第二計時部126,39の計時情報を、計時部125,37の計時情報に更新することなくカウントを続けさせる。
【0065】
〔モード切替〕
次に、放射線制御部121や撮影制御部31が行う第二照射側計時部126や第二撮影側計時部39の動作モード切替えの詳細について説明する。
【0066】
例えば、計時情報源装置2,4に異常が発生して、計時情報源装置2,4の第一計時情報が途中でリセットされてしまい、計時情報源装置2,4と同期をとる撮影側計時部37や照射側計時部125(以下計時部37,125)や、これらの計時部37,125の計時情報を基準にして自身の計時情報を修正する第二撮影側計時部39や第二照射側計時部126(以下第二計時部39,126)の計時情報も途中で更新されてしまう場合がある。このようなときに、放射線の照射と電荷の蓄積を複数回繰り返すシリアル撮影が行われていると、計時情報が更新された直後の撮影のみタイミングがずれてしまう。
そこで、本実施形態の制御部121,31は、こうした場合においてもシリアル撮影の撮影周期を途中で乱さないようにするため、必要に応じて第二照射側計時部126や第二撮影側計時部39の動作モードを切り替えるようになっている。
【0067】
制御部121,31は、所定条件が成立したか否かを判定するようになっている。
本実施形態において所定条件が成立するとは、撮影タイミングに悪影響を及ぼす可能性がある異常を検知することであり、具体的には、例えば、撮影期間中に所定の事象を検出したことや、撮影期間中、前回同期をとってから今回同期をとるまでの時間(第一計時情報受信間隔)が所定の閾値を超えたこと、撮影期間中、第二撮影側計時部39と第二照射側計時部126の、同期をとったときの計時情報の変化量が所定の閾値を超えたこと、撮影期間中、計時情報源装置2,4の再起動等により計時情報が急激に変化したこと、撮影期間中、長期間に亘って第一計時情報の受信に失敗したこと等を以て、所定条件が成立したと判定する。
すなわち、制御部121,31は、本発明における判定手段をなす。
【0068】
その他、下記(1)~(3)に挙げたような事象の成立を以て、所定条件の成立とすることもできる。なお、これらは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
(1)撮影期間の第一計時情報の受信回数をカウントし、その回数が所定の閾値を下回ったこと。
(2)撮影期間中、第一計時情報の受信間隔を繰り返し測定し、少なくともいずれかの第一計時情報の受信間隔が所定の閾値を超えたこと。
(3)撮影期間中、第二撮影側計時部39と第二照射側計時部126の、同期をとったときの計時情報の変化量を繰り返し測定し、少なくともいずれかの変化量が所定の閾値を超えたこと。
特に(2)や(3)を用いれば、同期の失敗を即時に検出することができる。
【0069】
また、制御部121,31は、所定条件が成立したと判定した場合に、第二照射側計時部126や第二撮影側計時部39の動作モードを自走モードへ切り替えるようになっている。
なお、制御部121,31は、電源が投入されてから所定条件が成立したと判定されるまでの間(デフォルトの状態)は、動作モードを同期モードとするようになっている。
また、制御部121,31は、自走モードで撮影が行われた場合、所定条件が成立しなくなったことを契機として、同期モードに切り替える(戻す)ようになっている。
すなわち、制御部121,31は、本発明における切替手段をなす。
【0070】
なお、所定条件が成立したときだけ自走モードに切り替えるのではなく、所定条件が成立する可能性がある期間全体亘って自走モードに切り替えるようにしてもよい。
このような期間としては、例えば
図6に示したように、撮影開始から終了までの間が挙げられる。
【0071】
撮影開始と判断するための撮影開始トリガーとしては、以下の(開―1)~(開―8)のような動作が挙げられる。これらは、複数組合せることも可能である。
(開-1)コンソール14、撮影装置3、制御装置12、操作部15又は曝射スイッチ15 a等のユーザーインターフェース(以下UI)でユーザーの指示を受け付けたこと
(開-2)コンソール14で撮影オーダーが選択されたこと
(開-3)撮影装置3が放射線の照射を受ける準備を完了したこと
(開-4)曝射スイッチ15aの1段目が押下されたこと
(開-5)制御装置12が管球13から照射準備が完了した旨の信号を受信したこと、又は、制御部121が高電圧発生部122から照射準備が完了した旨の信号を受信したこと
(開-6)曝射スイッチ15aの2段目が押下されたこと
(開-7)制御装置12が管球13から1フレーム目撮影のための放射線照射を開始した旨の信号を受信したこと、又は、制御部121が高電圧発生部122から1フレーム目撮影のための放射線照射を開始した旨の信号を受信したこと
(開-8)上記(開-1)~(開-7)の撮影開始トリガー発生から所定時間が経過したこと
【0072】
また、撮影終了と判断するための撮影終了トリガーとしては、以下の(終―1)~(終―9)のような動作が挙げられる。これらも、複数組合せることも可能である。
(終-1)コンソール14、撮影装置3、制御装置12、操作部15又は曝射スイッチ15a等のUIでユーザーの指示を受け付けたこと
(終-2)制御装置12が管球13から最終フレームを撮影するための放射線照射が終了した旨の信号を受信したこと、又は、制御部121が高電圧発生部122から最終フレームを撮影するための放射線照射が終了した旨の信号を受信したこと
(終-3)撮影装置3又は制御装置12で最終フレームの処理が完了したこと
(終-4)撮影装置3で最終フレームの読出し完了
(終-5)曝射スイッチ15aの2段目が解放されたこと
(終-6)曝射スイッチ15aの1段目が解放されたこと
(終-7)撮影が継続できないエラーが発生したこと
(終-8)コンソール14で次の撮影オーダーが選択されたこと
(終-9)上記(終-1)~(終-8)の撮影終了トリガー発生から所定時間が経過したこと
【0073】
撮影時間が短いシリアル撮影や静止画撮影を行う場合、撮影期間中、所定条件が成立する前から自走モードに切り替えた場合であっても、撮影装置3と制御装置12の発振器の周波数の誤差による曝射・蓄積タイミングのずれが、要求精度内に収まることがある。よって、このようにすれば、撮影時間が短いシリアル撮影や静止画撮影のみを行う撮影システム100における制御部121,31での処理をシンプルにすることができ、撮影システム100の開発を低コスト且つ短期間で行うことができる。
【0074】
とはいえ、自走モードで動作させる期間が短いほど、撮影装置3と制御装置12の動作のずれは生じにくくなる。このため、より放射線の照射開始に近いタイミングで自走モードに切り替えるようにするのが好ましい。例えば、上記(開-4)に挙げた曝射スイッチの1段目が押下されたことを撮影開始と判断する撮影開始トリガーとする場合、1段目の押下から2段目の押下までの期間が長くなると、自走モードで動作する期間は長くなってしまうため、上記(開-4)より(開-5)~(開-7)等をトリガーとするのが好ましい。
【0075】
しかし、管球13や高電圧発生部122の仕様やシステム構成によっては、好ましい撮影開始トリガーの使用に、装置や配線の改修が必要になる場合がある。このため、装置やシステム構成に合わせて採用する撮影開始トリガーを決定するのが、開発コストを抑制する観点から望ましい。
なお、採用する撮影開始トリガーが限られることにより自走モードで動作させる期間が長くなってしまう場合には、上記(開-8)を撮影開始トリガーとすることにより、自走モードへの切替えタイミングを放射線の照射開始に近づけることができる。)
【0076】
また、上記(開-1)及び(終-1)で挙げたように、ユーザーの意志で動作モードを切り替え可能にしておくと、撮影装置3の配置による無線電波状態の悪化や、同時使用機器との電波干渉等により、基準時間との同期精度が低下し得る状態であることをユーザーが認識できている場合、その場で動作モードを手動切替することにより、同期精度の低下を回避することができる。
なお、その際、表示部127やコンソール14や操作部15や撮影装置3の図示しない表示部等に現在の動作モードを表示できるようにすれば、システム100の使い勝手が向上し、ユーザーが不必要な切り替え操作を行ってしまうのを防ぐことができる。
【0077】
また、撮影システム100を、計時情報源装置2,4を複数備え、撮影装置3及び制御装置12を移動させることで、現在接続中の計時情報源装置2,4(n)より、他の計時情報源装置2,4(n+1)との電波状態が向上すると、接続先を計時情報源装置2,4(n+1)に切替える(無線LANのローミング動作を行う)構成にした場合、撮影期間中に接続先が切り替わると、基準時間が変わってしまい、曝射と読出しタイミングの整合がとれなくなり、撮影が失敗してしまうことになる。これを回避するため、撮影期間中に接続する計時情報源装置2,4が変わる場合にも、自走モードへ切り替え、撮影終了後に同期モードに戻すようにするとよい。
【0078】
以上、ここでは、制御装置12と撮影装置3の両方に動作モードの切り替え機能を有する撮影システム100を例に説明したが、これらの機能は、制御装置12と撮影装置3の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0079】
〔シリアル撮影の流れ〕
次に、上述したような動作モードの切り替えを行うことが可能な本実施形態の撮影システム100を用いたシリアル撮影の流れについて説明する。
図7は、本実施形態の撮影システム100の動作を表すタイミングチャートである。
なお、ここでは、撮影条件を、撮影装置3の接続形態:無線、撮影モード:シリアル撮影、フレームレート:15fpsとする場合を例にして説明するが、他の撮影条件においてもその流れは同様である。
【0080】
ユーザーがコンソール14において撮影条件を選択すると、コンソール14は、撮影装置3に、有線通信網、計時情報源装置2,4及び無線経由で上記撮影条件を送信するとともに、制御装置12に、上記撮影条件及び放射線の照射条件(管電流、管電圧、照射時間)」を送信する。なお、ここでの照射時間は、パルス照射での1パルスあたりの照射時間である。
撮影装置3及び制御装置12は、上記撮影条件や照射条件を受信すると、それぞれの記憶部35,123に上記撮影条件や照射条件を記憶し、無線シリアル撮影を行うための処理を開始する。
【0081】
(手順1)
そして、制御装置12は、受信した照射条件を、制御部121経由で高電圧発生部122に設定する。なお、ユーザーが操作部15から照射条件を入力できるシステム構成にしてもよく、その構成では、制御装置12は、操作部15から入力された照射条件を、制御部121経由で高電圧発生部122に設定する。
制御装置12は、曝射スイッチ15aの一段目が押下される前の段階、もしくは、2段目が押下される前の段階では、コンソール14から新たな照射条件を受信すると、その都度、制御部121経由で高電圧発生部122に照射条件を設定する。なお、ユーザーが操作部15から照射条件を入力できるシステム構成でも同様である。通常、照射条件は、患者の体格にあわせて微調整されるが、このようにすることで、操作順序の自由度が増し、使い勝手が向上する。
【0082】
(手順2)
そして、撮影制御部31及び放射線制御部121は、それぞれ第二計時部39,126の動作モードを同期モードに設定する。
【0083】
(手順3)
また、計時情報源装置2,4は、第一計時情報を、撮影装置3及び制御装置12へそれぞれ周期的(標準では100ms毎)に送信する。その際、計時情報源装置2,4は、その時点の第一計時情報を撮影装置3及び制御装置12へ送信する。
このとき、計時情報源装置2,4と撮影装置3及び制御装置12との間に無線通信が確立されている場合には、撮影装置3及び制御装置12は、計時情報源装置2,4から第一計時情報を受信し、自身の計時部37,125を更新し、カウントを継続する。
【0084】
(手順4)
また、撮影装置3及び制御装置12は、所定条件が成立しているか否か、すなわち、自身の計時部37,125が、計時情報源装置2,4と必要な精度で同期できているか否かを継続して判定する。このように、事前に同期できているかを判定するのは、撮影期間中に同期精度が低下した場合、放射線の照射タイミングと画像データ読出しタイミングがずれて撮影失敗の原因となってしまうからである。
【0085】
(手順5)
また、撮影装置3と制御装置12は、それぞれの判定結果を定期的に送信し合うことで共有する。こうすることで、計時情報源装置2,4から第一計時情報が長期間受信できなくなる、あるいは計時情報源装置2,4の再起動等により計時情報源装置2,4の第一計時情報が大きく変化する等した場合に、そのことを直ちに検知することができる。
【0086】
(手順6)
制御装置12の制御部121は、曝射スイッチ15aの2段目の押下を検知する(撮影開始信号を受信する)と、その旨を伝える信号を高電圧発生部122に送信し、高電圧発生部122から照射準備が完了した旨の完了通知信号が返信されるのを待つ待機状態に遷移する。
高電圧発生部122は、撮影開始信号を受信すると、照射準備を開始する。具体的には、管球13に出力する電圧および電流の準備や、管球13への回転陽極の回転開始指示などを行う。
管球13は、回転陽極が所定の回転速度に達すると、準備完了通知信号を高電圧発生部122へ送信する。高電圧発生部122は照射準備が完了すると、制御部121に照射準備が完了した旨の完了通知信号を送信する。
制御部121は、照射準備完了通知信号を受信すると、通信部124経由で撮影装置3に放射線の照射準備が完了したことを通知するコマンドを送信する。
【0087】
(手順7)
撮影装置3は、コマンドを受信すると、撮影可能な状態に遷移する。
その後、撮影装置3及び制御装置12は、第二計時部39,126が、それぞれの計時情報を計時部37,125の計時情報に更新するのを待つ。
ここで、計時情報の更新が予め定められた時間内に完了しない場合には、コンソール14等に同期が失敗した旨を通知し、コンソール14の図示しない表示部等に同期が失敗した旨の表示や、計時情報源装置2,4の再起動やネットワーク設定の確認等のトラブルシューティングを促す表示、又は有線での撮影を促す表示等を行うようにしてもよい。これにより異常から早期に復帰できるようになる。
【0088】
第二計時部39,126の両方計時情報の更新が完了すると、撮影装置3は、完了時の第二計時部39の計時情報に、記憶部35に記憶された撮影シーケンス開始待ち時間を加算した撮影シーケンス開始時間を算出し、それを記憶部35に記憶するとともに制御装置12へ送信する。
撮影シーケンス開始待ち時間は、想定される通信の遅延時間に基づいて予め決めておくもので、想定される最大遅延時間以上に設定することで、撮影シーケンス開始時間の送信が遅延してしまった場合に、制御装置12が撮影シーケンス開始時間を受信した時点で既に撮影シーケンス開始時間を過ぎてしまっていて、撮影に失敗するという事態を回避することができる。
上記は、撮影装置3が制御装置12に撮影シーケンス開始時間を送信する構成としたが、制御装置12が、双方の更新完了時の第二計時部126の計時情報に、記憶部123に記憶された撮影シーケンス開始待ち時間を加算した撮影シーケンス開始時間を算出し、それを記憶部126に記憶するとともに撮影装置3へ送信する構成にしてもよい。
【0089】
(手順8)
撮影装置3及び制御装置12は、互いの同期が完了した後も、同期がとれているか否かを継続して判定する。
また、撮影装置3及び制御装置12は、高電圧発生部122から制御部121へ照射準備完了通知信号が送信された後に撮影装置3及び制御装置12の同期が完了した時点からシリアル撮影の最後のフレームの読出し開始までの期間に同期が失敗したことを検知すると、その時点から少なくともシリアル撮影の最後のフレームの読出し開始までの期間は第二計時部39,126を自走モードで動作させ、それ以降は同期モードに戻す。なお、同期が失敗したことを検知した場合は、第二計時部39,126の計時情報を計時部37,125の計時情報に更新する前に自走モードに切り替えることで、第二計時部39,126に異常値がセットされることを防ぐことができる。
【0090】
(手順9)
また、制御装置12は、撮影装置3から撮影シーケンス開始時間を受信すると、それを記憶部123に記憶する。そして、記憶された撮影シーケンス開始時間とフレームレート(15fps等)を元に、各フレームの曝射開始時間を生成する。
曝射開始時間の具体的な生成方法は、例えば、撮影シーケンス開始時間を1フレーム目の曝射開始時間とし、2フレーム目以降は、それに撮影周期(=1/フレームレート)を累積加算する。この場合、Nフレーム目の曝射開始時間=撮影シーケンス開始時間+(フレーム番号N-1)×撮影周期となる。
なお、曝射開始時間は、後で各フレームの曝射開始指示を受ける度に参照できるよう、予め複数生成して記憶部123に記憶しておいてもよいし、前のフレームの曝射開始時間に撮影周期を加算して、各フレームの曝射開始指示を受ける度に生成するようにしてもよい。後者のようにすれば、記憶部123の容量を削減できるし、1撮影あたりのフレーム数が変動する場合に対応が容易になる。
【0091】
(手順10)
また、制御部121は、第二照射側計時部126の計時情報が各フレームの曝射開始時間と合致する度に、高電圧発生部122に各フレームの曝射開始を指示する信号を送信する。
高電圧発生部122は、曝射開始の指示の信号を受信する度に、管球13に対して予め設定された照射時間分だけ放射線Rを照射する制御を行う。すなわち、制御装置12は、第二照射側計時部126の計時情報が第一所定値となったことを契機として、管球13から放射線Rを照射させる。
【0092】
(手順11)
また、制御部121は、例えば、曝射スイッチ15aの2段目が解放された、撮影フレーム数が記憶部123に記憶された最大フレーム数に達した、高電圧発生部122からの停止の通知を受けた、撮影装置3から停止の通知を受けた等の撮影終了イベントを検知すると、撮影終了を通知するコマンドを通信部124経由で撮影装置3に送信するとともに、当該撮影において新たな曝射開始指示を高電圧発生部122に送信しない。すなわち当該撮影を終了する。
最大フレーム数は、固定値を記憶部123に記憶しておいてもよいし、コンソール14で入力した値を制御装置12に送信し、記憶部123に記憶させてもよい。
【0093】
(手順12)
また、撮影装置3は、記憶部123に記憶された撮影シーケンス開始時間、フレームレート及び1フレーム当たりの蓄積時間を元に、各フレームの読出し開始時間を生成する。
なお、蓄積時間は、読出し中に曝射されることを避けるために、1フレームあたりの照射時間よりも大きくなるようにする。
読み出し開始時間の具体的な生成方法は、例えば、撮影シーケンス開始時間+1フレームあたりの蓄積時間を1フレーム目の読出し開始時間とし、2フレーム目以降は、それに撮影周期(=1/フレームレート)を累積加算する。この場合、Nフレーム目の曝射開始時間=撮影シーケンス開始時間+1フレームあたりの蓄積時間+(フレーム番号N-1)×撮影周期となる。
なお、読み出し開始時間は、後で各フレームの読出し処理を行う度に参照できるよう、予め複数生成して記憶部123に記憶しておいてもよいし、前のフレームの読出し開始時間に撮影周期を加算して、各フレームの読出し処理を行う度に生成するようにしてもよい。後者のようにすれば、記憶部123の容量を削減できるし、1撮影あたりのフレーム数が変動する場合の対応が容易になる。
【0094】
このように、撮影装置3において撮影シーケンス開始時間とフレームレートから読出し開始時間を単独で生成し、制御装置12も同様に単独で曝射開始時間を生成する方式にすることで、撮影装置3と制御装置12との間で最低限共有すべき情報が、撮影シーケンス開始時間とフレームレートのみになり、撮影装置3と制御装置12との間のパケットロス等による通信遅延によって、本来読出しを開始すべきタイミングの後に読出し開始時間が届いたり、本来曝射を開始すべきタイミングの後に曝射開始時間が届いたりすることによる撮影失敗のリスクを低減することができる。
【0095】
(手順13)
また、撮影装置3は、第二撮影側計時部39が各フレームの読出し開始時間と合致する度に、放射線検出部32に蓄積された電荷の読出しを開始し、フレーム画像の画像データを生成する。すなわち、撮影装置3は、第二撮影側計時部39の計時情報が第二所定値となったことを契機として、放射線検出部32に発生した電荷に基づいて放射線画像の画像データを読出す。
【0096】
(手順14)
そして、撮影装置3は、例えば、制御装置12から撮影終了を通知するコマンドを受信した、撮影フレーム数が記憶部35に記憶された最大フレーム数に達した等の撮影終了イベントを検出すると、当該撮影を終了する。
なお、読出し中に撮影終了イベントを検出した場合は、読出しを完了した後に当該撮影を終了するようにするのが好ましい。このようにすれば、最終フレームのフレーム画像が一部分のみになるといった異常を回避することができる。
【0097】
ここまで、本実施形態に係る撮影システム100について説明してきたが、計時情報源装置2,4、放射線制御装置12、コンソール14、操作部15、曝射スイッチ15aの接続構成は、
図1に記載の構成に限らず様々な構成をとることができる。
例えば、操作部15はコンソール14とのみ接続され、操作部15への操作に対する信号はコンソール14を介して制御装置12に入るように機器を構成することもできる。また例えば、計時情報源装置2,4は必ずしも制御装置12とコンソール14の両方に接続されている必要は無く、コンソール14とのみ接続しコンソール14との間で情報及び時刻修正を行い、制御装置12はコンソール14を介して情報及び時刻制御を行うように構成することもできる。
また、例えば曝射スイッチ15aは操作部15ではなく、制御装置12に直接接続される構成としても良い。
このように、以下の図でも同様に、上記記載以外にも、本発明に記載の目的、作用、効果を阻害しない機器接続の構成を用いることができる。
【0098】
<付帯技術>
次に、本発明を適用することが可能な他の放射線撮影システムの実施形態について説明する。
なお、ここでは、上記実施形態と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0099】
〔放射線撮影システムの構成〕
初めに、本実施形態の放射線撮影システム(以下、撮影システム100A)の概略について説明する。
図8は、撮影システム100Aの概略構成を表すブロック図である。
【0100】
本実施形態の撮影システム100Aは、
図8に示したように、上記実施形態と同様の管球13、コンソール14、計時情報源装置2,4の他、放射線制御装置(以下、制御装置12A)、放射線撮影装置(以下、撮影装置3A)、操作盤15を備えて構成されている。
そして、制御装置12A、撮影装置3Aは、計時情報源装置2,4を介して互いに通信可能となっている。
この制御装置12A及び撮影装置3Aの詳細については後述する。
【0101】
操作盤15は、上記実施形態の操作部15と同様に構成されている。
このため、上記実施形態と同様に(
図1に示したように)、操作盤15を操作部15として制御装置12A内に設けるようにしてもよい。
【0102】
〔放射線制御装置の構成〕
次に、上記撮影システム100Aが備える制御装置12Aの具体的構成について説明する。
図9は、制御装置12Aの具体的構成を表すブロック図である。
【0103】
本実施形態の制御装置12Aは、
図9に示したように、上記実施形態と同様の放射線制御部121、記憶部123、通信部124、照射側計時部125の他、高電圧発生部122等を備えて構成されている。
しかし、本実施形態の制御装置12Aは、上記実施形態の第二照射側計時部126に相当する構成を有していない。
【0104】
高電圧発生部122は、管球制御部から制御信号を受信したことに基づいて、予め設定された放射線の照射条件に応じた電圧を管球13に印加するよう構成されている。
【0105】
〔放射線撮影装置の構成〕
次に、上記撮影システム100Aが備える撮影装置3Aの具体的構成について説明する。
図10は、撮影装置3Bの具体的構成を表すブロック図である。
【0106】
撮影装置3Aは、上記実施形態の撮影装置3と近い構成を有している。すなわち、
図10に示したように、撮影制御部31A、上記実施形態と同様の放射線検出部32、走査駆動部33、読出し部34、記憶部35、通信部36、バッテリー38、撮影側計時部37Aを備えている。
しかし、本実施形態の撮影装置3Aは、上記実施形態の第二撮影側計時部39に相当する構成を有していない。
【0107】
〔放射線撮影システムの撮影動作〕
次に、上記撮影システム100Aが行う基本的な撮影動作について説明する。
図11は撮影システム100Aの動作を表すタイミングチャート、
図12は撮影システム100Aが動作するときの各計時部の計時情報を表す図である。
【0108】
まず、制御装置12Aの照射側計時部125及び撮影装置3Aの撮影側計時部37による計時開始の契機となる動作が行われる(例えば撮影システム100Aの各機器の電源がオンにされる)と、照射側計時部125及び撮影側計時部37がそれぞれ計時を開始する。
このとき、照射側計時部125の計時開始タイミングと撮影側計時部37の計時開始タイミングは異なることになる、一方の計時部の計時情報又は一方の計時部と連動した計時手段の計時情報によって、他方の計時部の計時情報が、一方の計時部の計時情報に合わせられる。
その後、照射装置1の曝射スイッチ15aがユーザーによって押下されると、照射装置1は撮影開始信号を制御装置12A及び撮影装置3Aへ送信する。
そして、撮影装置3Aは、撮影側計時部37の計時情報(時刻情報)が第一所定値(t1)になる、又はと(計時開始から第一所定時間(t1)が経過すると)、撮影装置3Aは、各スイッチ素子32eにオン電圧を印加することで、各画素に蓄積されていた暗電荷を信号線32cに放出する初期化を行う。
【0109】
その後、撮影側計時部37の計時情報が第一所定値より大きい第二所定値(t2)になると(計時開始から第二所定時間(t2)が経過すると)、撮影装置3Aは、各走査線32bへオフ電圧を印加することで、放射線検出素子32dが発生させた電荷を画素内に蓄積可能な状態となる。この電荷を蓄積可能な状態は、撮影側計時部37の計時情報が第二所定値よりも大きい第四所定値(t4)となるまで(計時開始から第四所定時間経過するまで)継続される。
【0110】
また、照射装置1は、制御装置12Aの照射側計時部125の計時情報が第二所定値より大きく第四所定値よりも小さい第三所定値(t3)になると(計時開始から第三所定時間経過すると)、放射線Rを被検体S及びその背後の撮影装置3Aへ照射する。すなわち、照射装置1は、撮影装置3Aが電荷を蓄積可能な状態となっている間(t2~t3)に放射線を照射する。
そして、撮影装置3Aは、放射線Rを受けると、放射線検出部32の各放射線検出素子32dで電荷を生成し、それを各画素に蓄積する。
【0111】
また、撮影側計時部37の計時情報が第三所定値よりも大きい第四所定値(t4)になると(計時開始から第四所定時間(t4)が経過すると)、撮影装置3Aは、まず、初期化と同じ流れで、各走査線32bに接続された各TFT35にオン電圧を印加し、各画素に蓄積していた電荷を各信号線32cに放出する。そして、読出し部34で流れ込んできた電荷に基づく画像データを読出す。
なお、撮影装置3Aの放射線検出素子の構成によっては、電荷読出し時に蓄積電荷を解放し初期化動作を行う場合もある。
【0112】
撮影モードがシリアル撮影モードに設定されていた場合、照射装置1及び撮影装置3Aは、TSFタイマー22及び撮影側計時部37の計時情報に基づいて、上述した一連の動作を撮影するフレーム画像の枚数分だけ繰り返す。
【0113】
〔計時部のずれ〕
撮影システム100Aが、上述したような動作をしている最中、例えば、制御装置12Aや撮影装置3Aが備える発振器の周波数の誤差等の影響により、制御装置12Aと連動する照射側計時部の計時速度と、撮影装置3Aと連動する撮影側計時部37の計時速度とに若干の差が生じる場合がある。このような場合、シリアル撮影のような比較的長時間の撮影を行うと、例えば
図12に示したように、照射側計時部125の計時情報と撮影側計時部37の計時情報とのずれが次第に大きくなってくるため、照射装置1の動作タイミングと撮影装置3Aの動作タイミングとがずれてきてしまう。
そこで、本実施形態の撮影システム100Aは、こうした照射装置1の動作タイミングと撮影装置3Aの動作タイミングのずれが診断に影響する程度にまで大きくなってしまう前に適切な対応をとるようになっている。
【0114】
ずれの程度を確認するためには、比較する基準となる第一計時情報と、比較対象となる第二計時情報が必要となる。
第一計時情報を生成する方法は、上記実施形態と同様、IEEE802.11の通信規格が有するTSFで用いられる時刻情報を第一計時情報とする方法を用いてもよいし、AP2とは異なる計時情報源装置4からの時刻情報又はタイミング情報を第一計時情報とする方法を用いてもよい。
【0115】
〔第二計時情報の取得〕
制御装置12Aと撮影装置3Aのうち、計時情報源装置2,4から第一計時情報を受信することとなる装置の制御部は、計時情報源装置2,4から第一計時情報を受信(取得)した時点における照射側計時部125あるいは撮影側計時部37の計時情報を第二計時情報として取得する。
特に、本実施形態においては、撮影期間内の少なくとも一部の期間における複数の所定時点で第一計時情報及び第二計時情報をそれぞれ複数取得するようになっている。
なお、特定期間は、ユーザーの操作に基づいて所望の長さに設定できるようにしてもよい。
【0116】
図13には、撮影装置3における自身の計時部37による計時情報を補正して撮影制御部31に計時情報を出力する構成を、
図14には、制御装置12Aにおける自身の計時部125による計時情報を補正して放射線制御部125に計時情報を出力する構成を、それぞれ示している。
【0117】
撮影装置3Aと制御装置12Aのうち第一計時情報を取得する装置は、計時制御手段3a,12aを有している。計時制御手段3a,12aは、自身の計時部125,37に接続されており、自身の計時部125,37から第二計時情報(時刻情報又はタイミング情報)を取得するようになっている。
また、計時制御手段3a,12aは、自身の通信部124,36と接続されており、計時情報源装置2,4から第一計時情報(時刻情報又はタイミング情報)を取得することが可能である。
このような計時制御手段3a,12aは、個別の半導体や基板や装置で行う構成としてもよいし、CPUやFPGA等汎用処理部(放射線制御部121や撮影制御部31を含む)の機能の一部として組み込んでもよい。
【0118】
また計時制御手段3a,12aには、予め計時情報源装置2,4のタイミング情報あるいは時刻情報発信に関する設定情報を設定しておくことが可能である。
計時情報源装置2,4が出力する第一計時情報がタイミング情報の場合、例えば、計時情報源装置2,4からタイミング情報(パルス等)が出力される間隔をx秒毎に設定した場合、外部から第一計時情報を取得できる間隔をx秒と設定することが可能となっている。
一方、計時情報源装置2,4が出力する第一計時情報が時刻情報の場合、例えば、計時情報源装置2,4から時刻情報(時刻や、ある時点から計時情報源装置4がカウントアップしたカウント数等)が出力される間隔をx秒毎に設定した場合、外部から計時情報を取得できる間隔をx秒と設定することが可能となっている。
特に、時刻情報が計時情報源装置4でのカウントアップ値の場合には、計時制御手段3a,12aは計時情報源装置4のカウント間隔を取得し設定することが可能である。例えば計時情報源装置2,4のカウント周波数がyHzである場合、カウント間隔が1/y秒であると取得し設定しておくことが可能である。
【0119】
[ずれの確認方法の組合せ]
本実施形態においては、上述したように、計時情報源装置2,4が生成する第一計時手段には時刻情報の場合とタイミング情報の場合とがあり、照射側計時部125や撮影側制御部37が取得する第二計時情報にも、時刻情報の場合とタイミング情報の場合とがある。
このため、第一計時情報と第二計時情報とのずれを確認するための比較は、各装置の構成次第では、以下の4つの方法のいずれかで行われることとなる。
1.タイミング情報とタイミング情報の比較
2.タイミング情報と時刻情報の比較
3.時刻情報とタイミング情報の比較
4.時刻情報と時刻情報の比較
以下、それぞれの方法で第一,第二計時情報のズレ量を確認する方法を詳しく述べる。
【0120】
[タイミング情報とタイミング情報の比較による計時情報ズレ量の確認方法]
図15,16は、制御装置12Aと撮影装置3Aのうち、第一計時情報を受信する装置の動作を示している。
計時情報源装置2,4が、第一計時手段としてタイミング情報を生成するように構成されるとともに、計時制御手段3a,12aが、タイミング情報を第二計時手段として取得するように構成されている場合、例えば
図15,16に示した例では、計時制御手段3a,12aが、計時情報源装置2,4からタイミング情報が入力されてから次のタイミング情報が入力されるまでの期間((N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間)に、自身の計時部125,37のパルス数をカウントし、計時情報源装置2,4の計時速度に対する、自身の計時部125,37の計時速度を判断することとなる。
【0121】
例えば、計時情報源装置2,4からの第一計時情報の出力周期が1秒と設定され、自身の計時部125,37のクロックが10MHzと設定された場合、1秒間に10,000,000回パルスがカウントされる設定となる。
しかしながら、実際には計時情報源装置2,4の計時手段の変動や、撮影側計時部37あるいは照射側計時部125自体の精度や、温度の変化により、パルス発生速度が変動し、正確に10,000,000回とはならず、差が生じる。
この差が、計時情報源装置4の計時手段と、撮影装置3Aあるいは制御装置12Aの計時手段との計時差となる。
【0122】
例えば
図15に示した場合において、(N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間のパルス数が10,000,010回と設定値より10回多い場合、計時情報源装置4に対して、10,000,000分の10だけ自身の計時部125,37が速いと認識することが可能となる。
一方、例えば
図16に示した場合において、(N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間のパルス数が9,999,990回と設定値より10回少ない場合、計時情報源装置4に対して、10,000,000分の10だけ自身の計時部125,37が遅いと認識することが可能となる。
【0123】
[タイミング情報と時刻情報の比較による計時情報ズレ量の確認方法]
計時情報源装置2,4が、第一計時手段としてタイミング情報を生成するように構成されるとともに、計時制御手段3a,12aが、時刻情報を第二計時手段として取得するように構成されている場合、例えば
図15,16に示した例では、計時制御手段3a,12aが、計時情報源装置2,4からタイミング情報が入力されてから次のタイミング情報が入力されるまでの期間((N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間)に、自身の計時部125,37のパルス等のタイミング情報から、時刻情報を生成し、生成された時刻情報から計時情報源装置4の計時速度に対する自身の計時部125,37の計時速度を判断することとなる。
【0124】
例えば、計時情報源装置2,4からの第一計時情報の出力周期が1秒と設定され、自身の計時部125,37のクロックが10MHzと設定された場合、1秒間に10,000,000回パルスが生成されるため、0.0000001秒毎にパルスが生成されることとなる。そこで、パルス毎に0.0000001秒づつ時刻情報を修正することで各タイミングでの時刻情報を得ることが可能となる。
ここで、時刻情報に対する修正は各パルスで行ってもよいが、複数パルス毎にまとめてから時刻情報の修正を行ってもよい。また時刻情報の照会があった場合に時刻情報をまとめて修正する構成としてもよい。
上述したような設定で1秒間にわたって上記時刻情報の修正を繰り返すと、時刻情報は1秒となる。
しかしながら、実際には計時情報源装置2,4の計時手段の変動や、撮影側計時部37あるいは照射側計時部125自体の精度や、温度の変化により、パルス発生速度が変動し、正確に1秒とはならず、差が生じる。
この差が、計時情報源装置4の計時手段と、撮影側計時部37あるいは照射側計時部125との計時差となる。
【0125】
例えば
図15に示した場合において、(N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間のパルス数が10,000,010回と設定値より10回多い場合、(N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間は1.000001秒となり、計時情報源装置4の計時速度に対して、1秒あたり0.000001秒だけ自身の計時部125,37の計時速度が速いと認識することが可能となる。
一方、例えば
図16にした場合において、(N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間のパルス数が9,999,990回と設定値より10回少ない場合、(N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間は0.999999秒となり、計時情報源装置4の計時速度に対して1秒あたり0.000001秒だけ自身の計時部125,37の計時速度が遅いと認識することが可能となる。
【0126】
[時刻情報とタイミング情報の比較による計時情報ズレ量の確認方法]
図17は、制御装置12Aと撮影装置3Aのうち、第一計時情報を受信する装置の動作を示している。
計時情報源装置2,4が、第一計時手段として時刻情報を生成するように構成されるとともに、計時制御手段3a,12aが、タイミング情報を第二計時手段として取得するように構成されている場合、例えば
図17に示した例では、計時制御手段3a,12aが、計時情報源装置2,4から時刻情報が入力されてから次の時刻情報が入力されるまでの期間((N-1)個目の時刻情報を受信してからN個目の時刻情報を受信するまでの期間)に、自身の計時部125,37のパルス数をカウントし、計時情報源装置2,4の計時速度に対する自身の計時部125,37の計時速度を判断することとなる。
【0127】
例えば、計時情報源装置2,4からの時刻情報として(N-1)時点における時刻と、N時点の時刻をそれぞれ取得し、これらの差を算出することで、計時制御手段3a,12aは(N-1)からNまでの期間の長さ(時間)を取得することができる。
一方、自身の計時部125,37からの時刻情報として(N-1)時点における計時情報と、N時点の計時情報を取得する場合には、(N-1)時点における計時情報と、N時点における計時情報の差に計時情報源装置4のカウント間隔を乗算することで、計時制御手段3a,12aは、(N-1)時点からN時点までの期間を取得することが可能となる。
そして、計時制御手段3a,12aは、(N-1)時点からN時点までの期間と、この期間に自身の計時部125,37のパルスの計時情報に自身のパルス間隔を乗算した値を比較することで、計時情報源装置4の計時速度に対する自身の計時部125,37の計時速度を判断することができる。
【0128】
[時刻情報と時刻情報の比較による計時情報ズレ量の確認方法]
計時情報源装置2,4が、第一計時手段として時刻情報を生成するように構成されるとともに、計時制御手段3a,12aが、時刻情報を第二計時手段として取得するように構成されている場合、例えば
図17に示した例では、計時情報源装置2,4からの時刻情報として(N-1)時点における時刻と、N時点の時刻をそれぞれ取得し、これらの差を算出することで、計時制御手段3a,12aは、(N-1)時点からN時点までの期間の長さ(時間)を取得することができる。
一方、自身の計時部125,37からの時刻情報として(N-1)時点における時刻と、N時点における時刻をそれぞれ取得し、これらの差を算出することで、計時制御手段3a,12aは、(N-1)時点からN時点までの期間を取得することができる。
そして、計時制御手段3a,12aは、第一計時情報に基づく(N-1)時点からN時点までの期間と、第二計時情報に基づく(N-1)時点からN時点までの期間とを比較することで、計時情報源装置4の計時速度に対する自身の計時部125,37の計時速度を判断することができる。
【0129】
以上の4つのいずれかの方法を用いて第一計時情報と第二計時情報とを比較することで、計時情報源装置2,4の計時速度に対する自身の計時部125,37の計時速度を判断することができる。
【0130】
[特定条件成立の判断]
また、撮影制御部31は、取得した第一計時情報及び第二計時情報に基づいて、特定条件が成立したか否かを判断するようになっている。
本実施形態においては、例えば、以下に挙げるような判断方法1~3の少なくともいずれかを用いて計時精度が十分であるか否かの判断を行い、計時精度が十分でないことを以て特定条件が成立したと判断するようになっている。
【0131】
[計時精度の判断方法1(差)]
第一計時情報と第二計時情報とのずれ量(差)を計時精度の判断に用いる場合には、例えば、取得した第一計時情報と第二計時情報との差を算出し、それが特定値を超えたか否かを判断する。そして、差が特定値を超えた場合には、計時精度が十分でない、すなわち特定条件が成立したと判断する。
【0132】
[計時精度の判断方法2(変化量)]
また、ずれ量(差)の変化を判断に用いる場合には、例えば、第一計時情報及び第二計時情報を取得する毎に、第一計時情報と第二計時情報との差を算出し、それを記憶部35に記憶しておく。そして、記憶しておいた差とその前に算出した差との変化量を算出し、算出した変化量がその前に算出した変化量を超えたか否かを判断する。そして、算出した変化量が前の変化量を超えた場合には、計時精度が十分でない、すなわち特定条件が成立したと判断する。
【0133】
なお、差の予想を判断に用いる場合には、例えば、取得した第一計時情報と第二計時情報との差やその変化量をそれぞれ算出し、それを記憶部35に記憶しておく。そして、記憶しておいた差及び変化量から、同様の変化が所定期間(例えば撮影期間)継続した場合に、特定値を超えるか否かを判断してもよい。
【0134】
なお、特定条件成立の判断に際しては、このような第一計時情報と第二計時情報の差、変化量の値をそのまま用いてもよいし、これらの値に対し、平均値を算出したり、線形補完やスプライン補間等の手法を用いて変化状態や今後の予想値を算出したりしてもよい。
平均値を算出する場合には、例えば、取得した第一計時情報と第二計時情報との差をそれぞれ算出し、それを記憶部35に記憶しておく。そして、記憶しておいた複数の差から平均値を算出する。差の変化量は急激に変化する場合があるため、平均値を算出することでそうした変化にも対応することができる。
線形補完やスプライン補間に必要なパラメーターは、例えば最小二乗法等を用いて求めることができる。このように判断を行うための手法は、他の分野でも用いられる内挿や外挿の手法を援用することでより高度な判断を行うことが可能となる。
【0135】
[特定の出力]
また、計時制御手段3a,12aは、特定条件が成立したと判断した場合に、特定の出力を行うようになっている。
本実施形態における特定の出力には、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0136】
[特定の出力1(計時情報の修正)]
この場合の計時制御手段3a,12aは、特定条件が成立したと判断した場合に、計時情報源装置2,4の第一計時情報と自身の計時部125,37の計時情報との差が小さくなるように、計時部125,37の動作を修正する。
修正の仕方としては、例えば、以下に挙げたような、タイミング情報の修正と時刻情報の修正がある。
【0137】
[タイミング情報の修正]
例えば
図15,16に示した例において、計時制御手段3a,12aは、(N-1)個目の計時情報からN個目の計時情報を受けるまでの期間に、上記方法により自身の計時部125,37の速度を確認した結果、特定条件が成立したと判断した場合には、N個目のタイミング情報から(N+1)個目のタイミング情報を受けるまでの期間に、自身の計時部125,37のタイミング情報を修正する構成とすることができる。
修正を行う方法は、例えば
図15に示すように、検知した速度差に応じて、一定期間に対してパルスを間引く、あるいは足すことで実現することができる。
【0138】
例えば、
図15に示した例では、(N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間のパルス数が10,000,010回と設定値より10回多い場合、N個目のパルスを受信してから(N+1)個目のパルスを受信するまでの期間において、1,000,000回に1回パルスを間引く処理を行う構成とすることができる。あるいは1回パルスが少なくなるようにパルス発生を遅らせる構成とすることができる。
一方、例えば、
図16に示した例では、(N-1)個目のパルスを受信してからN個目のパルスを受信するまでの期間のパルス数が9,999,990回と設定値より10回少ない場合、N個目のパルスを受信してから(N+1)個目のパルスを受信するまでの期間では、1,000,000回に1回パルスが多くなるように、パルスを2回カウントする構成とすることができる。あるいは1回パルスが多くなるようにパルス発生を速くする構成とすることができる。
【0139】
なお、計時制御手段3a,12aは、パルスの間隔を修正する構成とすることもできる。
例えば、パルス源としてCR発振回路やLC発振回路を用いる場合、C(コンデンサ)、R(抵抗)、L(コイル)の値を変えることで容易にパルス間隔を調整することが可能となる。
【0140】
[時刻情報の修正]
計時制御手段3a,12aは、(N-1)個目の計時情報からN個目の計時情報を受けるまでの期間に、上記方法により自身の計時部125,37の計時速度を確認した結果、特定条件が成立したと判断した場合には、N個目の時刻情報から(N+1)個目の時刻情報を受けるまでの期間に、自身の計時部125,37の時刻情報を修正する構成とすることができる。
【0141】
以上の通り、計時情報源装置2,4から送信される計時情報がタイミング情報である場合も、時刻情報である場合でも、一方、計時制御手段3a,12aが修正する対象がタイミング情報である場合でも、時刻情報である場合でも、上述したような方法を用いることで、計時部125,37の計時速度を、計時情報源装置2,4の計時速度との差に応じて適切に修正することが可能である。
【0142】
[特定の出力2(計時精度のずれを警告及び撮影許可)]
この場合の制御部31,121は、特定条件が成立したと判断した場合に、例えば、以下に挙げるような動作をする。
・所定期間、計時情報の修正が行われなかったことをユーザーに通知する
・撮影を許可しない旨を通知する
・撮影を許可しない
・撮影を中止するかユーザーに選択させる
・撮影を中止する
【0143】
通知は、表示部への表示、発光、音声、振動等によって行うことができる。
また、撮影を許可しないあるいは中止する場合には、放射線制御部121から高電圧発生部122への制御信号の送信を行わないようにする、中止を指示する信号を送信する等の制御を行う。
ユーザーに選択させる場合には、例えば表示部に選択肢を表示する等して、操作部の操作に基づいて動作するようにする。
なお、上記通知撮影を中止する等の動作の少なくともいずれかを併せて行うようにしてもよい。
また、撮影を中止した上で、計時情報源装置2,4の計時情報に基づいて撮影側計時部37の計時情報の修正を併せて行うようにしてもよい。
【0144】
一般的な放射線撮影システムにおいては、放射線照射装置に連動した第一計時手段から第二計時手段へ計時情報が周期的に送信される度に第二計時手段の計時情報を修正し、放射線照射装置と放射線撮影装置との同期をとることが可能なものもある。
【0145】
放射線撮影装置は、シリアル撮影を行う際、主に放射線が照射されることにより発生する電荷を受像部に蓄積する動作、蓄積された電荷を読出して転送する動作、受像部を初期化する動作を繰り返す動作を行う。
例えば、前記の計時手段の計時情報が修正されることにより、ある特定のフレーム画像の撮影における画素に電荷を蓄積する蓄積期間の長さが、連続した他のフレーム画像の撮影における蓄積期間と異なる場合がある。すると、受像部はその期間の長さの差の分だけ蓄積する電荷の量を異ならせることとなる。
例えば、前記の計時手段の計時情報が修正されることにより、特定のフレーム画像の撮影における蓄積期間が、連続した他のフレーム画像の撮影における蓄積期間より長くなる場合、特定のフレーム画像の撮影において、受像部は連続した他のフレーム画像の撮影における蓄積期間より長く受像することとなる。すなわち、受像部は連続した他のフレーム画像の撮影における蓄積期間よりも長く電荷を蓄積することとなる。
【0146】
このような問題に対し、放射線照射装置の動作を、蓄積期間内の一部期間にだけ例えばパルス状の放射線を照射するよう制御することで、蓄積期間の長さが異なっても、各蓄積期間における放射線照射装置からの放射線の照射量を一定にすることは可能である。
しかし、受像部は、放射線照射装置から照射される放射線以外にも、外部や被検体Sから放射される散乱線によっても電荷を発生・蓄積してしまう。これを除去するためには、被検体Sと受像部との間に散乱線を除去するグリッドを配置して撮影する場合もあるが、これでも散乱線を完全に除去することはできない。すなわち、放射線照射装置の動作を、蓄積期間内の一部期間にだけ放射線を照射するように制御したとしても、散乱線による受像、すなわち電荷の蓄積を止めることはできない。このため、前記の計時手段の時刻が変更されることにより、特定のフレーム画像の撮影における蓄積期間の長さが連続した他のフレーム画像の撮影における蓄積期間と異なると、前記の計時手段の時刻が変更された特定フレーム画像の撮影のみ、連続した他のフレーム画像の撮影とは異なる程度の散乱線の影響を受けた受像となってしまう。
【0147】
しかし、本実施形態に係る撮影システム100Aは、計時情報源装置2,4から第一計時情報が送信されると、撮影装置3A(判断手段)が特定条件が成立したか否かを判断し、成立した場合のみ撮影側計時部37(第二計時手段)の計時情報を修正する。このため、各計時部の計時情報の差が画像の内容(診断)に影響が出る程ずれた場合等、適切なタイミングでのみ適切な対応をとることができる。
【0148】
[計時精度の判断方法4]
上記実施形態に係る撮影システム100Aが上述したような各種動作をするためには、計時情報源装置2,4と、第一計時情報を受信する装置(制御装置12Aと撮影装置3Aの少なくともいずれか)との通信が確立していることが前提となる。このため、撮影システム100Aの使用環境によっては、通信が確立せず(上述した各種動作が行われず)、照射装置1と撮影装置3Aの動作がずれてきてしまう場合がある。
そこで、上記実施形態の撮影システム100Aに、以下のような形で動作のずれを検知する機能を持たせるようにしてもよい。
【0149】
具体的には、制御装置12Aと撮影装置3Bのうち第一計時情報を受信する装置に、
図18に示したように、撮影側計時部37とは別に、撮影装置3Bと連動してカウントを行う第二撮影側計時部39Aを備える。
そして、計時制御手段3a,12aに、計時情報源装置2,4から第一計時情報を受信すると、第二撮影側計時部39Aの計時情報をリセットする機能を持たせる。
リセットされた第二撮影側計時部39Aは、再度初期値からカウントを行うようにする。
そして、計時制御手段3a,12aに、第二撮影側計時部39Aの計時情報が所定の閾値を上回ったか否かを判断する機能を持たせる。
【0150】
このように構成された本実施形態の撮影システム100Aは、
図19に示したように、計時情報源装置2,4と撮影装置3Bとの通信に異常がないとき(t0~t1)は、撮影装置3Bが第一計時情報を受信する度に第二撮影側計時部39Aが計時情報のリセットを繰り返すため、その計時情報が閾値を超えることはない。しかし、計時情報源装置2,4と撮影装置3Bとの通信に異常が生じ、計時情報源装置から第一計時情報を受信できなくなると(t1~t2)、撮影側計時部37は計時情報を修正せず、第二撮影側計時部39Aは計時情報をリセットすることなくカウントを続ける。やがて第二撮影側計時部39Aの計時情報が閾値を超えると(t3)、撮影装置3Bは、所定期間の間、撮影側計時部の計時情報を計時情報源装置2,4の第一計時情報で修正することができなかったことを検知し、その旨を出力する。
【0151】
出力の際には、上記実施形態において特定条件が成立したと判断した場合の下記動作の少なくともいずれかを併せて行うようにしてもよい。
・所定期間、計時情報の修正が行われなかったことをユーザーに通知する
・撮影を許可しない旨を通知する
・撮影を許可しない
・撮影を中止するかユーザーに選択させる
・撮影を中止する
【0152】
その後、通信が回復し第一計時情報が受信されれば、第二撮影側計時部39Aが計時情報をリセットする(t4)ため、撮影システム100Aは元の動作をするようになる。
【0153】
上記実施形態に係る撮影システム100Aをこのように構成すれば、第二撮影側計時部39Aにより、所定期間の間、計時部37,125の計時情報を第一計時情報で修正することができなかった場合に、そのことを把握したり、所定期間の長さを計測したりすることが可能となる。
また、第二撮影側計時部の計時情報と閾値を比較することにより、第一計時部の計時情報と撮影側計時部の計時情報とのずれが許容範囲内であるか否かを判断し、許容範囲外であった場合に適切な対応をとることが可能となる。
【0154】
[計時精度の判断方法5]
また、上述した撮影システム100Aの使用環境によっては、通信が確立せず、照射装置1と撮影装置3Aの動作がずれてきてしまう場合があるという課題に鑑み、上記実施形態の撮影システム100Aに、以下のような形で動作のずれを検知する機能を持たせるようにしてもよい。
【0155】
具体的には、制御装置12Aと撮影装置3Cのうち第一計時情報を受信する装置に、
図20に示したように、第二撮影側計時部39Aの代わりに、メモリー39Bを備える。
このメモリー39Bは、計時情報源装置2,4から第一計時情報を受信すると、その第一計時情報(=修正後の撮影側計時部37の計時情報)を記憶するように構成する。
なお、メモリー39Bを備えずに、その機能を記憶部35に持たせるようにしてもよい。
そして、計時制御手段3a,12aに、撮影側計時部37の計時情報とメモリー39Bの記憶値との差が所定の閾値を上回ったか否かを判断する機能を持たせる。
【0156】
このように構成された本実施形態の撮影システム100Aは、
図21に示したように、計時情報源装置2,4と撮影装置3Cとの通信に異常がないとき(t0~t1の間)は、撮影装置3Cが第一計時情報を受信する度にメモリー39Bが第一計時情報を記憶するため、撮影側計時部37の計時情報とメモリー39Bの第一計時情報との差が閾値を超えることはない。しかし、計時情報源装置2,4と撮影装置3Cとの通信に異常が生じ、計時情報源装置2,4から第一計時情報を受信できなくなると(t1~t2)、撮影側計時部37は計時情報を修正せず、メモリー39Bは第一計時情報を更新しなくなる。やがて計時情報とメモリー39Bの古い第一計時情報との差が閾値を超えると、撮影装置3Cは、上記撮影装置3Bと同様に、所定期間の間、撮影側計時部の計時情報を計時情報源装置2,4の第一計時情報で修正することができなかったことを検知し、その旨を出力する。
【0157】
出力の際には、上記「計時精度の判断方法4」で説明した、特定条件が成立したと判断した場合の下記動作の少なくともいずれかを併せて行うようにしてもよい。
その後、通信が回復し第一計時情報が受信されれば、メモリー39Bが第一計時情報を更新するため、撮影システム100Aは元の動作をするようになる。
【0158】
上記実施形態に係る撮影システム100Aをこのように構成すれば、第二撮影側計時部39Aを用いることなく、すなわち上記第一実施形態よりも少ない計時部の数で、所定期間の間、計時部37,125の計時情報を第一計時情報で修正することができなかった場合に、そのことを把握することができる。
【実施例0159】
次に、上記実施形態の各実施形態に係る撮影システム100,100A,100B,100Aにおいて生じうる各種課題と、それらの課題を解決するための具体的な実施例について説明する。
【0160】
[実施例1-1]
コンソール14は、撮影システム100全体のコントロール、すなわち撮影システム100の各機器や、撮影システム100以外のシステムとの間で情報の送受信を行う機器の動作状態(動作状態とは正常動作状態であるか異常動作状態であるか、あるいは起動、終了動作状態であるか等の動作状態を含む。)を監視したり、撮影システム100の各機器や、撮影システム以外のシステムとの間で情報の送受信を行う機器の同期をとったりするものである。しかし、上記実施形態においては、計時情報源装置2,4をコンソール14ではなく、制御装置12に接続しているため、コンソール14は、同期確認等の処理を制御装置12を介して行わなければならず、処理の効率が低かった。
このような課題に鑑み、例えば
図22に示したように、計時情報源装置2,4とコンソール14とを接続するようにしてもよい。このようにすれば、計時情報源装置2,4とコンソール14とが直接接続されるため、コンソール14にて効率的に同期確認等の処理を行うことができる。
【0161】
なお、計時情報源装置2,4とコンソール14とを接続するとともに、計時情報源装置2,4と制御装置12とを接続するようにしてもよい。このようにすれば、コンソール14だけなく、制御装置12も計時情報源装置2,4と同期がとれるため、制御装置12とコンソール14がそれぞれ撮影装置3と同期を取ることが可能となる。
また、このようにする場合、制御装置12とコンソール14との動作タイミングがずれていないかどうかを確認する処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、通信障害等により、計時情報源装置2,4と制御装置12との同期、計時情報源装置2,4とコンソール14との同期のいずれかがとれなくなった場合に、制御装置12の動作タイミングとコンソール14の動作タイミングがずれてくるため、それを検知することで、撮影の停止や警告の表示が可能となる。
【0162】
[実施例1-2]
上記実施形態において、計時情報源装置2,4と制御装置12あるいはコンソール14とを有線で接続する場合、これらの間でも同期をとる必要があるため、これらを専用線で接続する必要があった。
【0163】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図23に示したように、計時情報源装置2,4と撮影装置3とを無線で接続するとともに、計時情報源装置2,4と制御装置12とを無線で接続するようにしてもよい。
その際、例えばIEEE802.11の通信規格で規定されたTSFを利用することにより、すなわち、計時情報源装置2,4から送信される第一計時情報によって撮影装置3の撮影側計時部37の計時情報を更新することで、両計時部の計時情報を同期させることもできる。
【0164】
このようにすれば、計時情報源装置2,4と撮影装置3との間の同期も、計時情報源装置2,4と制御装置12との間の同期も、同じ計時情報を用いて行うことが可能となる。このため、被検体Sの周囲にケーブルを這わせることなく時刻同期を行うことができる。また、同一の第一計時情報を基準にして計時情報を更新するため、制御装置12と撮影装置3との動作のずれを少なくすることができるし、他の装置との同期ずれを補償するための付加構成が不要となる。更に、同じ電波を用いて計時情報を更新するため、ずれを少なくすることができる。
【0165】
なお、計時情報源装置2,4と制御装置12とを無線で接続するのではなく、計時情報源装置2,4とコンソール14とを無線で接続し、同期をとるようにしてもよい。
また、計時情報源装置2,4と制御装置12とを無線で接続するとともに、計時情報源装置2,4とコンソール14とを無線で接続し、同期をとるようにしてもよい。
【0166】
[実施例1-3]
上記実施形態において、計時情報源装置2,4と制御装置12とを直接接続する場合、計時情報源装置2,4や、制御装置12、及びこれらを接続するケーブルの配置に制約を受けてしまうことがある、という問題があった。
また計時情報源装置2,4と制御装置12とを直接接続すると、接続距離が長くなるため、計時情報源装置2,4と制御装置12との間において通信不良が発生する可能性が増大してしまうという問題があった。
【0167】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図24に示したように、計時情報源装置2,4と放射線制御装置とを、ネットワーク機器5を介して接続するようにしてもよい。ネットワーク機器5としては、例えばHUBが挙げられる。
その際、計時情報源装置2,4とネットワーク機器5との接続、ネットワーク機器5と制御装置12との接続には、時刻遅延が少ない専用線を用い、IEEE1588で規定された有線通信の時刻同期を用いるようにするのが好ましい。
【0168】
このようにすれば、計時情報源装置2,4や制御装置12、ケーブルを配置する際の制約を少なくすることができる。
また、ネットワーク機器5を介して接続を行うことで、途中に機器を挟むことなく長距離に配線することで通信信号が劣化することを防ぐことができ、通信の信頼性を高めることが可能となる。
【0169】
[実施例1-4]
上記実施形態において、計時情報を用いて外部からの信号により同期を行う場合、撮影装置3側で同期がとれているか否かを判断することができないという問題があった。具体的には、電波干渉等により無線通信が行えない場合、撮影装置3側にて同期がずれている可能性があることを把握できていても、それを制御装置12に伝えることができず、放射線照射を停止させることができなかった。
【0170】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図25に示したように、撮影装置3に計時情報源装置2,4を内蔵し、撮影装置3から制御装置12へ第一計時情報を送信することにより同期をとるようにしてもよい。
この場合、制御装置12に計時部を設け、制御装置12が同期をとるようにするのが好ましい。
このようにすれば、一定期間同期がとられず、動作がずれている可能性がある場合に、そのことを制御装置12が把握することができるため、撮影装置3との無線通信が行えない場合であっても放射線照射を止めることが可能になる。
また、途中に計時情報源装置2,4を介さなくてよいので、計時情報源装置2,4に異常が生じて通信が遅延するリスクを低減することができる。
【0171】
[実施例1-5]
上記実施形態において、無線通信に対応していない放射線装置12では、無線を用いた時刻同期を行うことができない問題があった。
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図26に示したように、制御装置12に、計時情報源装置2,4から電波を受信することが可能な通信モジュール16を接続し、計時情報源装置2,4からの基準時間を、通信モジュール16を介して受信するようにしてもよい。
通信モジュール16と制御装置12との接続は、時刻遅延が少ない専用線を用い、IEEE1588で規定された有線通信の時刻同期を用いるようにするのが好ましい。
【0172】
このようにすれば、無線通信に対応していない放射線制御装置でも無線を用いた時刻同期が可能となる。
また、通信モジュール16は受信のみを行うため、通信モジュール16あるいは照射装置1から無線信号が放出されることがない。このため、無線信号の放出に起因した不具合が生じるリスクを低減することができる。
なお、通信モジュール16あるいは照射装置1からの無線信号放出の問題を考慮する必要が無い場合には、通信モジュールに送信機能を持たせることを妨げない。
【0173】
[実施例1-6]
上記実施形態において、撮影した静止画像や動態画像と他の機器による測定結果や撮影画像とを比較したい場合に、同じタイミングでの撮影であることを保証するために、撮影システム100と他の機器との同期をとる必要がある。例えば、心拍と同期させた撮影等を行う場合に、心拍のあるタイミングと同じタイミングで撮影を行う必要や、撮影された連続撮影から心拍のあるタイミングの画像を抽出したり、撮影された連続撮影と心拍データを関連付けたりする必要があり、時刻を同期させる必要がある。
【0174】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図27に示したように、撮影システム100と他の機器6とを、計時情報源装置2,4と制御装置12あるいは撮影装置3と同様の通信手段で接続し、計時情報源装置2,4からの第一計時情報に基づいて同期をとるようにしてもよい。
このようにすれば、他の装置5と同期した撮影が可能となる。例えば、他の装置5として心拍計を接続し適時タイミングの制御やタイミングの記憶や表示を行うことで、心拍と同期させて撮影を行うことや、撮影された動態画像が心拍のどのタイミングで撮影された画像であるかを確認し診断を行うことが可能となる。
また、他の装置5の例としては、前述の心拍に限らず、スパイロメーターのような呼吸状態の計測器や、動作を計測する変異センサーや加速度センサーなど、撮影する対象に応じた種々の機器を用いることができる。
なお、他の装置5、制御装置12及び撮影装置3のいずれか又は全てに計時情報を記憶する手段を設けるようにしてもよい。
また、計時情報を記憶することで、同じ時刻に測定あるいは撮影された情報を、計時情報から整理あるいは抽出し出力することができる。
【0175】
[実施例1-7]
上記実施形態は、同期を行うための計時情報の送受信を行う通信部がデータの送受信も行うため、送受信できるデータ量や送受信速度に限りがあったり、データの送受信に遅延が生じたり、データが送受信の途中で消失してしいまったりするという問題があった。
【0176】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図28に示したように、計時情報源装置2,4と制御装置12とを異なる複数の通信手段で接続するようにしてもよい。
例えば、計時情報源装置2,4と制御装置12との間を無線で接続し、両方の計時手段の時刻を同期させるための計時情報の送受信を無線で行うとともに、計時情報源装置2,4と制御装置12との間を有線(Ethernet等)でも接続し、時刻同期以外の情報(例えば放射線照射条件や放射線照射期間等)の送受信を有線で行う。
【0177】
このようにすれば、時刻同期用の通信手段と、情報送受信用の通信手段とを分けることができ、情報の送受信に遅延を生じたり情報を消失したりすることなく、情報の送受信と時刻同期とを同時に実現することができる。
また、時刻同期や情報の送受信に好適な通信手段をそれぞれ選択することができる。
【0178】
[実施例1-8]
上記実施形態において、例えば
図29に示したように、撮影装置3Dに上記実施形態とは異なる第二撮影側計時部39Dを備えるようにしてもよい。この第二撮影側計時部39Dは、例えば電波時計、GPS、NTP等を用いて構成することができる。なお、電波時計やGPS等を用いる場合には、電波を受信するためのアンテナを配置してもよい。
そして、好適なタイミングで、撮影側計時部37の計時情報と第二撮影側計時部39Dの計時情報を比較することにより、撮影側計時部37と第二撮影側計時部39Dの計時情報のずれを検知するようにする。
【0179】
このようにすれば、
図30に示したように、計時情報源装置2,4と撮影装置3との通信が途絶え、計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の第二計時情報とのずれが次第に大きくなってしまっても、撮影側計時部37の計時情報と第二撮影側計時部39Dの計時情報とを比較することで、ズレが生じたことを検知できる。
また、両計時部の計時情報の差(ずれ量)を算出して所定値と比較し、所定値を超えたと判定するようにすれば、時刻同期の精度が十分であるか否かも把握することができる。ずれ量が所定値を超えた場合には、上記実施形態と同様に、ずれ量が所定値を超えていることを通知する、撮影を許可しない旨を通知する、あるいは撮影を中止する等の出力を行うようにすればよい。
【0180】
なお、
図30には、計時情報源装置2,4と撮影装置3との同期がとれなくなった同期失敗期間のみ、第二撮影側計時部39Dによりずれを検知する場合を例示したが、同期失敗期間だけでなく、計時情報源装置2,4と同期がとれている同期期間においても、第二撮影側計時部39Dによるずれの検知を行うようにしてもよい。
【0181】
[実施例1-9]
上記実施例1-8において、撮影制御部31に、撮影側計時部37の計時情報を第二撮影側計時部39Dの計時情報に更新する、又は第二撮影側計時部39Dの計時情報を撮影側計時部37の計時情報に更新する制御を行わせるようにしてもよい。
このようにすれば、
図31に示したように、計時情報源装置2,4と撮影装置3との通信が行われている期間は、撮影装置3が、計時情報源装置2,4の第一計時情報を用いて撮影側計時部37の計時情報の更新を定期的に行い、計時情報源装置2,4と撮影装置3との同期が途中で取れなくなった後も、第二撮影側計時部39Dの計時情報を用いて撮影側計時部37の計時情報を定期的に更新するようになる。
このため、計時情報源装置2,4と撮影装置3との通信が途絶えてしまっても、計時情報源装置2,4との時刻同期を継続することが可能となり、撮影を継続することができる。
【0182】
なお、
図31には、計時情報源装置2,4と撮影装置3との通信が途絶えた期間のみ、第二撮影側計時部39Dにより撮影側計時部37の計時情報を更新する場合を例示したが、計時情報源装置2,4と同期がとれている期間においても、第二撮影側計時部39Dによる撮影側計時部37の計時情報を更新するようにしてもよい。
【0183】
[実施例1-10]
上記実施例1-8,1-9において、第二撮影側計時部39Dと外部との通信の信頼性を測定する測定手段を備えるようにしてもよい。
例えば、第二撮影側計時部39Dが電波時計やGPS等電波を用いる方式である場合には、電波の強度を測定する装置を測定手段として配置する。
そして、撮影制御部31に、装置による測定値を所定値と定期的に比較する制御や、測定値が所定値を下回った場合に、通信の信頼性が確保できていないと判断し、ユーザーに第三の計時手段の信頼性が低下していることを通知する、撮影を許可しない旨を通知する、あるいは撮影を中止するといった出力を行わせるようにする。
このようにすれば、第二撮影側計時部39Dの通信の信頼性が低下している状態で誤って撮影を行い、被検体Sが無駄に被曝してしまうのを防ぐことができる。
【0184】
[実施例1-11]
上記実施形態において、例えば
図32に示したように、計時情報の更新は撮影期間に入る(待機状態から実行に移行する)前にのみ行い、撮影期間中は、計時情報を更新せず、計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の計時情報との差(ずれ量)を監視のみするようにしてもよい。
監視を行うタイミングは、計時情報源装置2,4と撮影装置3との時刻同期タイミング(計時情報源装置2,4の第一計時情報の送信タイミング)、撮影側計時部37における所定タイミング等とすればよい。
【0185】
なお、計時情報源装置2,4の時刻同期タイミングと撮影装置3の所定タイミングの両方で監視を開始するようにしてもよい。このようにすれば、計時情報源装置2,4と撮影側計時部37のいずれかが不具合を生じた場合であっても、ずれ量の監視を行うことが可能となる。
なお、上記実施例1-9~1-11で挙げたような第二撮影側計時部39Dを備える場合には、撮影側計時部37の計時情報と第二撮影側計時部39Dの計時情報との差を監視するようにしてもよい。その場合、第二撮影側計時部39Dにおける所定タイミングでずれ量の監視を行うようにすればよい。
【0186】
[実施例1-12]
上記実施形態において、撮影装置3の通信部36、あるいは撮影制御部31に、通信が正常に確立された状態を維持しているか否かを監視する監視機能を持たせるようにしてもよい。
そして、こうした監視機能を有する撮影制御部31又は通信部36に、通信が切断されたことを検知した場合に、通信が正常に確立された状態を維持していないと判断し、ユーザーに通信の接続が切断されていることを通知する、撮影を許可しない旨を通知する、あるいは撮影を中止するといった出力を行わせるようにする。
このようにすれば、通信が正常に確立された状態を維持していない状態で誤って撮影を行い、被検体Sが無駄に被曝してしまうのを防ぐことができる。
【0187】
[実施例2-1]
上記実施形態においては、撮影前に、同期がとれているか否かを確認せずに撮影を開始してしまうことで、所望の撮影結果が得られず撮影が失敗に終わり、再撮影を行うことで被検体Sを無駄に被曝させてしまうという問題があった。
【0188】
このような課題に鑑み、上記実施形態の実施形態においては、
図33に示したように、曝射スイッチを押下するとき等、撮影を開始する際に時刻同期の確認を行うようにしてもよい(ステップS1)。そして、確認の結果、時刻が所望の精度以上で同期されている場合(ステップS1:Yes)には撮影を許可して(ステップS2)、撮影動作を開始する(ステップS3)。一方、時刻の同期精度が十分でない場合(ステップS1:No)には、ユーザーに同期ができていない旨を通知したり、撮影を許可しない旨を通知したり、あるいは撮影を中止したりするといった対応を行う(ステップS4)。
なお、ユーザーに通知するか否か、あるいは撮影を許可しない旨の通知を行うか否かの判断は、時刻同期のずれ量に応じて変えるようにするのが好ましい。
このようにすれば、同期がとれていない状態で誤って撮影を行い、被検体Sが無駄に被曝してしまうのを防ぐことができる。
【0189】
[実施例2-2]
上記実施例2-1において、
図34に示したように、ステップS4の動作の後、同期処理を再度行い(ステップS11)、その後、ステップS1~S4の動作を繰り返すようにしてもよい。
なお、同期処理を再度行う際に、通知や撮影の中止を行うようにしてもよい。
また、ユーザーに通知するか否か、あるいは撮影を許可しない旨を通知する否かの判断は、時刻同期のずれ量に応じて変えるようにするのが好ましい。
このようにすれば、同期がとれていない状態で撮影を行い、被検体Sが無駄に被曝してしまうのをより確実に防ぐことができる。
【0190】
[実施例2-3]
上記実施例2-2において、
図35に示したように、二度目のステップS4の後、計時情報源装置2,4と制御装置12、及び計時情報源装置2,4と撮影装置3との再接続を行い(ステップS21)、その後、ステップS1~S4の動作を繰り返すようにしてもよい。
通信を一旦切断し、再接続しても、時刻の同期精度が十分でない場合には、ユーザーに同期ができていない旨を通知したり、撮影を許可しない旨を通知したり、あるいは撮影を中止するといった対応を行うのが好ましい。
また、ユーザーに通知するか否か、あるいは撮影を許可しない旨を通知する否かの判断は、時刻同期のずれ量に応じて変えるようにするのが好ましい。
このようにすれば、同期がとれていない状態で撮影を行い、被検体Sが無駄に被曝してしまうのをより確実に防ぐことができる。
【0191】
[実施例2-4]
上記実施例2-3において、
図36に示したように、三度目のステップS4の後、計時情報源装置2,4の再起動を行い(ステップS31)、その後、ステップS1~S4の動作を繰り返すようにしてもよい。
計時情報源装置2,4の電源を一旦オフにし、計時情報源装置2,4を再起動させてから再接続しても、時刻の同期精度が十分でない場合には、ユーザーに同期ができていない旨を通知したり、撮影を許可しない旨を通知したり、あるいは撮影を中止するといった対応を行うのが好ましい。
また、ユーザーに通知するか否か、あるいは撮影を許可しない旨を通知する否かの判断は、時刻同期のずれ量に応じて変えるようにするのが好ましい。
このようにすれば、同期がとれていない状態で撮影を行い、被検体Sが無駄に被曝してしまうのをより確実に防ぐことができる。
【0192】
[実施例2-5]
上記実施形態において、ユーザーが所望するタイミングで同期処理を行いたくても、同期処理を指示する方法がないという問題があった。
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図37に示したように、撮影装置3に特定の操作ボタン3b設け、この操作ボタン3bを押下したことを契機として同期処理を行うようにしてもよい。
このようにすれば、ユーザーの所望するタイミングで撮影装置3と計時情報源装置2,4との時刻同期をとることができる。
【0193】
なお、操作ボタン3bが長押しされた場合や複数回押下された場合等、特別な操作が行われた場合に同期処理を行うようにしてもよい。
このようにすれば、元々設けられている他のボタンを操作ボタン3bとして用いることができるため、撮影装置3にボタンを増やしすぎることなく対応することができる。
【0194】
[実施例3-1]
上記実施形態において、照射装置1の動作と撮影装置3の動作が大きくずれたにもかかわらず撮影を継続してしまった結果、撮影が失敗となり、被検体Sに無駄な被曝をさせてしまうという問題があった。
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影装置3の撮影側計時部37の第二計時情報との差(ずれ量)に応じて、ユーザーに通知したり、撮影を中止したりするようにしてもよい。
【0195】
具体的には、撮影制御部31等に、ずれ量と所定の閾値とを比較する機能を持たせるとともに、ずれ量が閾値を超えた場合に、ユーザーに警告を表示する、又は放射線の照射を止め撮影を中止するようにする。
このようにすれば、同期がとれていない状態で撮影を行い、被検体Sが無駄に被曝してしまうのを防ぐことができる。
【0196】
なお、
図38に示したように、閾値を大小二つ設け、ずれ量が閾値1(低い方)を超えた場合に警告を行い、閾値2(高い方)を超えた場合に撮影を中止するようにしてもよい。
また、ずれ量が警告を行う閾値1を超えた場合であっても、(2)の範囲の時間帯のようにずれ量が減少傾向にあるときは警告表示を行わないようにしてもよい。
【0197】
[実施例3-2]
上記実施例3-1で挙げた、上記実施形態では、照射装置1の動作と撮影装置3の動作が大きくずれたにもかかわらず撮影を継続してしまう、という課題に対し、上記実施例3-1は、実際のずれ量に応じて、ユーザーに通知したり、撮影を中止したりするようにしたが、今後のずれ方を予測し、予測したずれ方に応じて、ユーザーに通知したり、撮影を中止したりするようにしてもよい。
【0198】
具体的には、記憶部31に、過去の撮影における撮影時間(枚数)と計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の第二計時情報との差(ずれ量)との関係を記憶しておくようにする。
そして、撮影制御部31に、記憶された過去の撮影時間とずれ量との関係に基づいて、今回新たに行う撮影において設定された撮影枚数まで撮影した場合のずれ量を予測する予測手段としての機能、予測したずれ量と所定の閾値とを比較する機能を行う比較手段としての機能、予測したずれ量が閾値を超えたと判断した場合に、最後まで撮影した場合に同期がずれて撮影が失敗する可能性があることを通知する、撮影を許可しない旨を通知する、あるいは撮影を中止するといった出力を行う出力手段としての機能を持たせる。
このようにすれば、同期がとれていない状態で撮影を行い、被検体Sが無駄に被曝してしまうかもしれないリスクを低減することができる。
【0199】
なお、
図39に示したように、閾値を大小二つ設け、ケース1のように、ずれ量が閾値1(低い方)を超えるが閾値2(高い方)は超えないと予測した場合、すなわち、ずれが撮影に大きくは影響しないと判断した場合に警告を行い、ケース2のように、閾値2を明らかに超えると予測した場合、すなわち、最後まで撮影を継続すれば必ず撮影が失敗となる場合、撮影期間中に画像に影響が出る程度に同期がずれた状態になる可能性があることを撮影者に通知する、あるいは撮影を中止するようにしてもよい。
【0200】
[実施例3-3]
計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の第二計時情報との差(ずれ量)がある閾値を超えた場合であっても、診断に用いることのできる画像を得られる場合がある。上記実施形態は、ずれ量が閾値を超えた場合に、自ら撮影を中止したり、通知することによってユーザーに撮影の中止を促したりするため、ずれ量が閾値を超えると、それまでに撮影した画像も無駄になり、被検体Sを無駄に被曝させてしまう可能性があるという問題があった。
【0201】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、ずれ量が閾値を超えても決められた枚数まで撮影を継続し、後でその旨を通知するようにしてもよい。
具体的には、撮影制御部31に、計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の第二計時情報との差(ずれ量)を所定の閾値と比較する比較手段としての機能を持たせる。
また、撮影制御部31に、ずれ量が閾値を超えたと判定した場合にその旨を記憶し、撮影期間中又は撮影期間後にユーザーに通知する通知手段としての機能を持たせる。
このようにすれば、ずれ量がある程度大きくなった場合にも、診断に用いることのできる画像を得ることができるため、被検体Sを無駄に被曝させてしまうリスクを低減することができる。
【0202】
なお、ずれ量が閾値を超えた場合に、閾値を超えていた期間を記憶しておいたり、閾値を超えていた期間に撮影した画像の画像データに特定の情報(フラグ等)を紐づけておいたりしてもよい。このようにすれば、後で画像を確認する際に、どの画像が閾値を超えた期間に撮影されたものか特定することができる。
また、
図40に示したように、閾値を大小二つ設け、ケース1のように、ずれ量が閾値1(低い方)を超えた(警告する程度のずれが生じた)期間と、ケース2のように、閾値2(高い方)を超えた(撮影を中止する必要がある程のずれが生じた)期間を記憶しておくようにしてもよい。
【0203】
[実施例4-1]
上記実施形態において、計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の計時情報を一度に一致させると、更新する方の計時部の計時情報が大きく変動し、そのことに起因する不具合が発生してしまうという問題があった。
例えば、複数のイベントの発生タイミングを一気に跨いでしまうほど計時情報が大きく変動し、放射線の照射、電荷の蓄積、読出し・転送等が同時に行われ、うまく撮影できなくなる等の不具合があった。
【0204】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、撮影期間中に計時情報を更新する必要が生じた場合には、計時情報を一致させ同期させるのではなく、少しずつ近づけるようにしてもよい。
具体的には、第一計時情報を送受信する度に、計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の第二計時情報との差(ずれ量)が、少しずつ小さくなるよう更新していく。
「少しずつ」とは、例えば、
図41に示したように、ずれ量に対する所定割合(○%等)としてもよいし、ずれ量に対して所定量(○分の一等)としてもよい。
このようにすれば、計時情報が大きく変化することに起因する問題の発生を防ぐことができる。
一方で、ズレ量が大きい場合には上記のように同期させずに少しずつ時間差を近づけたのでは撮影画像に影響のない程度にズレ量が小さくなるために多くの時間待たなければならない場合が生じる。
そこで、ズレ量の大きさに応じて、ズレ量が小さくなるように修正する時刻変化量を大きくするように制御しても良い。
【0205】
[実施例4-2]
上記実施形態において、計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の計時情報を一度に一致させると、更新する方の計時部の計時情報がそれまでの計時情報よりも小さくなり(時刻が戻り)、そのことに起因する不具合が発生してしまうという問題があった。
例えば、
図42(a)に示したように、計時情報があるイベントを発生させる時刻を超えた後に、更新により当該イベントを発生させる時刻の前の計時情報に戻り、同じイベントが二回繰り返されてしまうという不具合があった。イベントが放射線照射の場合、放射線照射を繰り返すことにより被検体Sを無駄に被曝させてしまったり、放射線照射を繰り返したときに撮影したフレームのみ放射線Rが2度照射され、他と画質の異なる画像が生成されてしまったりすることになる。
【0206】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、両計時部の計時情報がずれていることを検知した場合に、少なくとも一方の計時部の計時速度を調整するようにしてもよい。
具体的には、
図42(b)に示したように、第一計時情報を送受信したときに、計時情報を更新せずに、速い方の計時部の計時速度を下げたり、遅い方の計時部の計時速度を上げたりすることで、後の第一計時情報の送受信の際のずれ量が計時情報の更新が必要なくなる程度に収まるようにする。
このようにすれば、計時情報が小さくなることに起因する問題の発生を防ぐことができる。
【0207】
[実施例4-3]
上記実施例4-2で挙げた、更新により計時情報が小さくなり、同じイベントが繰り返されることがあるという課題に対し、上記実施例4-2は、計時部の計時速度を変えるようにしたが、
図43に示したように、イベント発生直後に、同種のイベントの発生を規制するイベント発生不可期間Tdを設定するようにしてもよい。
このようにすれば、計時部の計時速度を変えなくても、同じイベントが繰り返されてしまう不具合の発生を防ぐことができる。
【0208】
[実施例5-1]
上記実施形態においては、計時情報源装置2,4(照射装置1)と撮影装置3との通信が途絶えてしまった場合、続けて撮影が可能な状態であったとしても、どこまで撮影が可能であるかが不明であるため、撮影を中止しなければならなかった。
【0209】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、計時情報源装置2,4や撮影側計時部37の計時速度及びその精度に基づいて撮影可能枚数を算出し、算出した撮影可能枚数となるまでは撮影を継続するようにしてもよい。
具体的には、記憶部35に、照射装置1及び撮影装置3の発振器の振動周期の精度に影響する因子と振動周期との関係を予め記憶しておく。
また、撮影制御部31に、接続が途絶えた直後における計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の第二計時情報との差(ずれ量)、接続が途絶えた直後における第一,撮影側計時部37の計時速度、撮影制御部31に記憶しておいた因子と精度との関係に基づいて、ずれ量の変化を予測する機能を持たせる。このずれ量の変化は、
図44に示したように、そのときの精度によって増加する場合もあれば減少する場合もある。
また、撮影制御部31に、予測したずれ量の変化に基づいて、ずれ量が所定の閾値(放射線が蓄積期間に照射されるためのずれ量の上限)を超えるまでに要する撮影可能時間を算出する機能を持たせる。
また、撮影制御部31に、算出した撮影可能時間及びフレームレートからこの後撮影が可能な撮影可能枚数を算出する機能を持たせる。
このようにすれば、計時情報源装置2,4と撮影装置3との通信が途切れた場合であっても、撮影可能な枚数まで撮影を継続することが可能となる。
【0210】
[実施例5-2]
上記実施例5-1で挙げた、通信が途絶えた場合に撮影を中止しなければならなかったという課題に対し、上記実施例5-1は、撮影可能枚数を算出し、その算出可能枚数となるまでは撮影を継続するようにしたが、必要とする撮影枚数(残枚数)及び照射装置1及び撮影装置3の発振器の精度から、撮影を継続するか否かを判断するようにしてもよい。
具体的には、記憶部35に、実施例5-1と同様のパラメーターを記憶しておく。
また、実施例5-1の(撮影可能枚数を算出する機能を有する)撮影制御部31に、更に算出した撮影可能枚数とこの後撮影する必要がある残枚数とを比較する機能を持たせる。
また、この撮影制御部31に、撮影可能枚数が残枚数以上となった場合には撮影を継続し、撮影可能枚数が残枚数未満となった場合には、最後まで撮影できない旨を通知する、撮影を許可しない旨を通知する、あるいは撮影を中止するといった出力を行う機能を更に持たせる。
このようにすれば、計時情報源装置2,4と撮影装置3との通信が途切れた場合であっても、予め設定した枚数を撮りきることができる場合には、撮影を継続することができる。
【0211】
なお、撮影を継続する際に、ユーザーに接続は切れているが最後まで撮影できるため撮影を継続することを通知するようにしてもよい。
また、通信が途絶えた後に撮影を継続した場合、通信が途絶えた期間に撮影した画像の画像データに特定の情報(フラグ等)を紐づけておいたりしてもよい。
【0212】
[実施例5-3]
上記実施例5-1において、温度を加味して撮影可能枚数を算出する、すなわち、発振器の振動周期の精度に影響する因子として温度を用いるようにしてもよい。
具体的には、記憶部35に、例えば
図45(a)に示したような、照射装置1及び撮影装置3の発振器の温度と振動周期との関係を予め記憶しておく。図中の実線は理論値であり、上下の破線は精度を加味した上限値及び下限値である。
また、撮影制御部31に、接続が途絶えた直後における計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の第二計時情報との差(ずれ量)、接続が途絶えた直後における第一,撮影側計時部37の計時速度、撮影制御部31に記憶しておいた因子と精度との関係に基づいて、ずれ量の変化を予測する機能を持たせる。
撮影制御部31の他の機能は、上記実施例5-1と同様とする。
【0213】
発振器の温度は、他の因子に比べて発振器の振動周期の精度に大きな影響を与えるため、
このようにすれば、
図45(b)に示したように、より高い精度でずれ量の変化を予測することができ、延いては、撮影可能枚数をより高い精度で算出することができる。
なお、上記実施例5-2のように、撮影を最後まで行うことができるか否かを判断し、行える場合には撮影を継続し、行えない場合には中断するようにしてもよい。
【0214】
[実施例6-1]
上記実施形態において、一度同期をとった後は同期をとらないようにしてもよい。
具体的には、撮影制御部31に、曝射スイッチが押下された直後の第一計時情報の送信時に時刻同期を行う機能を持たせる。
また、撮影制御部31に、同期確認を行った後であって曝射スイッチが押下されている間は、撮影側計時部37の計時情報の更新を行わないようにする機能を持たせる。
このようにすれば、撮影期間における撮影装置3の動作タイミングの変動が無くなるため、撮影を安定的に行うことができる。
【0215】
なお、撮影制御部31に、時刻同期後、その次の第一計時情報の送信時に、第一計時情報と第二計時情報との差を測定することにより、時刻同期が正常に行われたか否か、時刻同期後のずれ量が所定値以下に収まっているか否か等を確認するようにしてもよい。
このようにすれば、実際には同期がとれていない状態で誤って撮影を行い、被検体Sが無駄に被曝してしまうのを防ぐことができる。
【0216】
[実施例6-2]
上記実施形態においては、不定期で同期をとるようにした場合、照射装置1又は撮影装置3の動作タイミングの変動により撮影画像に影響が出て、誤診の原因になってしまうという問題があった。
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図46に示したように、撮影期間中、撮影周期に合わせて(各フレームの撮影毎に)同期をとるようにしてもよい。
このようにすれば、各フレームの撮影における同一のタイミングで同期がとられるため、特定のフレーム画像にのみ動作タイミングの同期をとったことによる影響が出るのを防ぐことができる。
こうした動作タイミングの変動による画像の影響は、特に、隣り合うフレーム画像間の特徴量の差を解析に用いる場合に顕著に表れやすいが、上述したようにすることで、特徴量の差を用いた解析に影響が出るのを防ぐこともできる。
【0217】
なお、計時情報源装置2,4の第一計時情報送信周期を撮影周期と一致、又は撮影周期の整数分の1としてもよい。
また、そのようにする場合、第一計時情報の送信タイミングと、同期をとるタイミングとを所定の位相だけずらすようにしてもよい。
【0218】
[実施例6-3]
上記実施例5-1で挙げた、不定期で同期をとるようにした場合に撮影画像に影響が出てしまうという課題に対し、上記実施例5-1は、各フレームの撮影毎に同期をとるようにしたが、例えば、
図47に示したように、数十フレーム毎に同期に同期をとるようにしてもよい。
このようにすれば、長時間のシリアル撮影を行う場合であっても、フレーム画像への影響を少なくすることができる。
【0219】
なお、このようにする場合、撮影期間中の、画像に影響が出にくいタイミングで同期をとるようにするのが好ましい。
例えば、肺野のシリアル撮影を行う場合、診断において関心のある吸気や排気のタイミング(肺の動きが大きいとき)ではなく、吸気しきった又は排気しきったタイミング(肺の動きが小さいとき)等に同期をとるようにする。
このようにすれば、診断において関心のあるタイミングで撮影される画像に動作タイミングの変動の影響が出るのを防ぐことができる。
【0220】
[実施例6-4]
上記実施例5-1で挙げた、不定期で同期をとるようにした場合に撮影画像に影響が出てしまうという課題に対し、上記実施例5-1は、各フレームの撮影毎に同期をとるようにしたが、例えば、
図48に示したように、数フレーム撮影を行う毎に同期をとるようにしてもよい。
上記実施例6-1のように、フレーム毎に同期をとると、処理に時間がかかって当該フレームの撮影時間内に処理を終えられず次フレームに影響してしまう場合があった。一方、上記実施例6-2のように、数十フレーム毎に同期をとると、動作タイミングのずれが大きくなりすぎてしまう場合があった。しかし、このようにすれば、適度な間隔で同期をとれるため、同期処理の次フレームへの影響をなくすことができるとともに、同期をとる際のタイミングの変化量を小さくすることができ、撮影画像への影響を少なくすることができる。
【0221】
なお、あるフレームで計時部の計時情報の変更する処理を行った後、これに関連する処理を、次フレーム以降に行うようにしてもよい。
このようにすれば、計時情報の更新と他の処理を複数フレームに分散して行うことができ、他の処理による負荷を受けた状態であっても計時情報の更新を所定のタイミングで確実に行うことができる。
【0222】
[実施例6-5]
上記実施例5-1で挙げた、不定期で同期をとるようにした場合に撮影画像に影響が出てしまうという課題に対し、上記実施例5-1は、各フレームの撮影毎に同期をとるようにしたが、例えば、
図49に示したように、撮影周期よりも短い周期で同期をとる(1フレームの撮影の間に複数回同期をとる)ようにしてもよい。
このようにすれば、同期をとる際のタイミングの変化量を小さくすることができ、撮影画像への影響を少なくすることができる。
【0223】
なお、図示は省略するが、1フレームの撮影における特定シーケンスのタイミングでは同期をとらないようにしてもよい。
特定シーケンスとは、例えば、撮影装置3による電荷の蓄積や、画像データの読出し・転送や、初期化のことを指す。
こうした特定シーケンスでは、同期処理の影響を受けやすいため、このようにすれば、撮影画像への影響を少なくすることができる。具体的には、蓄積タイミングで同期をとらないようにすることで、撮影フレーム毎の画像コントラストへの影響を小さくすることができるし、読出・転送タイミングで同期をとらないようにすることでノイズの影響を小さくすることができる。
【0224】
[実施例6-6]
上記実施形態においては、同期をとることにより撮影した画像に影響が出る場合があるため、撮影手技や画像の解析方法によっては、動作のずれが許容範囲内にある限り同期処理を行いたくないという要請がある。
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図50に示したように、計時情報源装置2,4の第一計時情報と撮影側計時部37の第二計時情報との差(ずれ量)を定期的に計測し、ずれ量が閾値を超えた場合にのみ同期をとるようにしてもよい。
このようにすれば、同期をとる動作を極力少なくし、撮影画像へ影響が出てしまうリスクを低減することができる。
【0225】
なお、ずれ量が閾値を超えた場合であっても、特定シーケンスを行っている間は直ちに同期をとることはせず、特定シーケンスを終えるのを待って同期をとるようにしてもよい。
特定シーケンスとは、例えば、撮影装置3による電荷の蓄積や、画像データの読出し・転送や、初期化のことを指す。
特定シーケンスの実行中に同期をとると画像に影響が出る可能性があるため、このようにすれば、撮影画像へ影響が出てしまうのを極力少なくすることができる。
【0226】
また、同期をとったタイミングで撮影したフレーム画像に、同期処理を行ったことを示す情報を紐付けて保存するようにしてもよい。
このようにすれば、後から同期処理がどのフレームで行われたかを確認することが可能となる。同期処理が画像に影響を与えた場合、後からフレームを特定することで、画像に現れた影響が同期処理に起因したものであるか、診断対象に起因したものであるかを判断することが可能となる。
【0227】
[実施例7-1]
上記実施形態においては、照射装置1と撮影装置3の動作がずれてしまった場合、どちらの装置の動作を基準にして同期をとるかによって、撮影画質に影響が出てしまうという問題があった。
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、動作のずれを検知した場合に、照射装置1の動作を撮影装置3に合わせるようにしてもよい。
具体的には、
図51に示したように、早くなった放射線の照射タイミングを遅くしたり、逆に遅くなった照射タイミングを早めたりする。
撮影装置3の動作を修正した場合フレーム画像間のコントラストに影響が出やすいが、このようにすれば、コントラストの影響が出てしまうのを防ぐことができる。
【0228】
なお、上記実施例6-6と同様に、同期をとったタイミングで撮影したフレーム画像に、同期処理を行ったことを示す情報を紐付けて保存するようにしてもよい。
このようにすれば、後から同期処理がどのフレームで行われたかを確認することが可能となる。同期処理が画像に影響を与えた場合、後からフレームを特定することで、画像に現れた影響が同期処理に起因したものであるか、診断対象に起因したものであるかを判断することが可能となる。
【0229】
[実施例7-2]
上記実施例7-1で挙げた、照射装置1と撮影装置3のどちらの装置の動作を基準にして同期をとるかによって、撮影画質に影響が出てしまうというという課題に対し、上記実施例7-1では、撮影装置3を基準として照射装置1の動作を修正したが、動作のずれを検知した場合に、撮影装置3の動作を照射装置1に合わせるようにしてもよい。
具体的には、
図52に示したように、初期化タイミングを短くすることで遅れていた蓄積タイミングを早めたり、逆に初期化タイミングを長くすることで早まっていた蓄積タイミングを遅らせたりする。
【0230】
なお、同期をとる必要が生じた場合であっても、特定シーケンスを行っている間は直ちに同期をとることはせず、特定シーケンスを終えるのを待って同期をとるようにしてもよい。
特定シーケンスとは、例えば、撮影装置3による電荷の蓄積や、画像データの読出し・転送や、初期化のことを指す。
特定シーケンスの実行中に同期をとると画像に影響が出る可能性があるため、このようにすれば、撮影画像へ影響が出てしまうのを極力少なくすることができる。
【0231】
また、上記実施例7-1と同様に、同期をとったタイミングで撮影したフレーム画像に、同期処理を行ったことを示す情報を紐付けて保存するようにしてもよい。
このようにすれば、後から同期処理がどのフレームで行われたかを確認することが可能となる。同期処理が画像に影響を与えた場合、後からフレームを特定することで、画像に現れた影響が同期処理に起因したものであるか、診断対象に起因したものであるかを判断することが可能となる。
【0232】
[実施例7-3]
上記実施例7-1で挙げた、照射装置1と撮影装置3のどちらの装置の動作を基準にして同期をとるかによって、撮影画質に影響が出てしまうというという課題に対し、上記実施例7-1では、撮影装置3を基準として照射装置1の動作を修正したが、
図53に示したように、動作のずれを検知した場合に、照射装置1及び撮影装置3双方の動作を修正するようにしてもよい。
照射装置1の動作を修正したときと撮影装置3の動作を修正したときとで画像に異なる影響が出るような場合、いずれか一方の修正を行っただけでは画像への影響を無くすことが困難であるが、このようにすれば、照射装置の動作及び撮影装置の動作をそれぞれ少しずつ修正できるため、それぞれの画像への影響を少なくすることができる。
【0233】
なお、計時情報源装置2,4の第一計時情報を基準にして、照射装置1及び放射線検出器側双方の動作を修正するようにしてもよい。
このようにすれば、照射装置1及び撮影装置3にそれぞれ接続された計時情報源装置2,4を基準にすることとなり、同期を安定的にとることができる。
また、計時情報源装置2,4は、例えばIEEE1588等の通信規格を用いて外部ネットワークとの間で通信を行うことにより、外部の他の計時部とも連携して時刻同期を行うことが可能であるため、より正確な計時情報を基準とすることができる。
また、照射装置1や撮影装置3は、それらの動作により発熱し、内蔵する計時部の基準となる発振器等へ影響を与えてしまう可能性がある。しかし、このようにすれば、計時情報源装置2,4は、照射装置1や撮影装置3から離れたところに設置することが可能であり、これらからの熱の影響を受けにくいため、安定したカウントを提供することが可能となる。
【0234】
また、撮影内容や撮影手技により、照射装置1の動作を修正するか、撮影装置3の動作を修正するか、あるいはその両方を修正するか、を切り替え可能な構成としてもよい。このようにすれば、撮影方法や撮影手技に応じた同期方法を選択することにより、画像へ与える影響を、撮影方法や撮影手技毎に異なる許容範囲内に収めることが可能となる。
また、双方を修正する場合には、双方の修正の比率を変更できるようにしてもよい。例えば、血流解析においては、隣接するフレーム画像間のコントラスト変動を抑えることが重要である。よって、このようにすれば、コントラスト変動を抑えるように照射装置1側の修正量の比率を、撮影装置3側の修正量よりも大きくして修正する、といった対応が可能となる。
【0235】
[実施例7-4]
上記実施例7-1で挙げた、照射装置1と撮影装置3のどちらの装置の動作を基準にして同期をとるかによって、撮影画質に影響が出てしまうというという課題に対し、上記実施例7-1~7-3では、照射装置1と撮影装置3の少なくとも一方の動作を修正したが、それでも、特定のシーケンスを行っている間に同期をとると、依然として画像に影響が出てしまうことがあった。
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、1フレームの撮影における特定シーケンスのタイミングでは同期をとらないようにしてもよい。
特定シーケンスとは、例えば、撮影装置3による電荷の蓄積や、画像データの読出し・転送や、初期化のことを指す。
特定シーケンスの実行中に同期をとると画像に影響が出る可能性があるため、このようにすれば、撮影画像へ影響が出てしまうのを極力少なくすることができる。
【0236】
[実施例8-1]
上記実施形態において、撮影装置3Cにて撮影シーケンス開始時間とフレームレートから読出し開始時間を単独で生成し、制御装置12も同様に単独で曝射開始時間を生成するようにした場合、撮影装置3Cと制御装置12との間でフレームレートの切り替えタイミングが異なると、撮影が失敗してしまう。例えば、制御装置12から撮影装置3Cにフレームレート情報を送信する場合、パケットロス等による通信遅延によって撮影装置3C側のフレームレート切り替えタイミングが遅れてしまうことが考えられる。
【0237】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、制御装置12と撮影装置3Cで共通のフレーム番号をカウントしておき、制御装置12(撮影装置3Cでもよい)がフレームレートの変更指示を受け取った際に、撮影装置3Cに対してレート切替フレーム番号とフレームレートを送信するようにしてもよい。
レート切替フレーム番号は、現フレーム番号に「想定される通信遅延÷フレーム周期+1」より大きい数を足した値とすることで、通信遅延影響を回避することができる。
制御装置12Aと撮影装置3Cはレート切替フレーム番号に達した時に、フレームレートを切り替える。
このようにすれば、フレームレート切り替えタイミングを遅れにくくすることができる。
【0238】
なお、レート切替フレーム番号のかわりにレート切替時間を通知してもよい。ただし、レート切替時間がフレームの変わり目に近いと、計時部の同期精度によっては、切り替えタイミングが合わなくなるため、レート切替時刻フレームの変わり目±αには設定しないようにする。また、αは撮影時の想定同期精度よりも大きい値にする。
【0239】
[実施例8-2]
上記実施例8-1で挙げた、撮影装置3Cにて読出し開始時間を単独で生成し、制御装置12にて曝射開始時間を生成するようにした場合、通信遅延によって撮影装置3C側のフレームレート切り替えタイミングが遅れてしまうという課題に対し、上記実施例8-1では、制御装置12と撮影装置3Cで共通のフレーム番号をカウントしておき、制御装置12がフレームレートの変更指示を受け取った際に、撮影装置3Cに対してレート切替フレーム番号とフレームレートを送信するようにしたが、撮影装置3Cには最速フレームレートで読出しを行わせ、制御装置12には撮影装置3Cが所定回数読出しを行う毎に曝射を行わせることで、所望のフレームレートでの撮影を実現するようにしてもよい。
例えば、最速フレームレートが15fpsのシステムで7.5fpsの撮影を行いたい場合、撮影装置3Cには15fpsで画像の読出しを行わせ、制御装置12には撮影装置3Cが2フレーム読出しを行う毎に1回曝射を行わせる。
【0240】
このようにすれば、撮影装置にて読出し開始時間を単独で生成し、放射線制御装置にて曝射開始時間を単独で生成する方式が利用できるため、撮影装置3Cと制御装置12A間で最低限共有すべき情報が、撮影シーケンス開始時間とフレームレートのみになり、撮影装置3Cと制御装置12A間の通信遅延やパケットロスによって、本来読出しを開始すべきタイミングの後に、読出し開始時間情報が届いたり、本来曝射を開始すべきタイミングの後に、曝射開始時間情報が届いたりすることによる撮影失敗のリスクを低減することができる。
また、このようにすれば、フレームレートの切替え時に、上記実施例8-1のような、制御装置12と撮影装置12Aとの間でのフレームレート切替え情報のやり取りが必須ではなくなるため、フレームレートを瞬時に切替えることが可能となる。これにより、ユーザーは、必要なフレームレートを必要なタイミングで選択できるようになり、ユーザビリティーが向上する。
【0241】
[実施例8-3]
上記実施例8-2においては、撮影装置3Cは最速フレームレートで、曝射は撮影装置3Cが数フレーム読み出す毎に行っているため、撮影装置3Cが生成するフレーム画像の中には、未露光の画像(以下、白画像)が混ざってしまう。そして、白画像が混じった動態画像は視認性が悪いという問題がある。
このような課題に鑑み、上記実施例8-2においては、白画像を除くようにしてもよい。
具体的には、フレーム毎にフレーム内の所定領域(全領域を含む)の画素の信号値の平均又は最大値と所定の閾値とを比較し、閾値以下であった場合に白画像と判定するようにする。そして、白画像と判定した場合には、当該フレームを削除したり、白画像属性情報を当該フレームに付与し、表示する際に属性が付いているフレーム画像を表示しないようにしたりする。
なお、これらの処理は、撮影装置3Cで行ってもよいしコンソール14で行ってもよいが、撮影装置3Cで行うようにすれば、撮影装置3Cからコンソール14に送信するデータ量を減らすことができるため、撮影からコンソール14にフレーム画像を表示するまでの間に遅延を生じにくくすることができる。
【0242】
[実施例8-4]
上記実施例8-3で挙げた、上記実施例8-2においては生成するフレーム画像の中に白画像が混ざってしまうという課題に対し、上記実施例8-3では、フレーム画像の画素の信号値に基づいて白画像と判定したフレームを除くようにしたが、フレーム番号に基づいて白画像と判定したフレームを除くようにしてもよい。
【0243】
具体的には、制御装置12と撮影装置3Cと間で共通のルールに従って、1連の撮影における全フレームにそれぞれユニークなフレーム番号(例えば連番)を付けるようにする。
また、制御装置12に、フレーム番号に曝射の有無を示す情報を紐づけて曝射フレーム情報として保存し、曝射フレーム番号を撮影装置3C又はコンソール14に送信する機能を持たせる。
そして、撮影装置3C又はコンソール14に、各フレームのタイマー時間(例えば、曝射開始時間や終了時間、1フレーム内のいずれかの時間等)を保存し、受信した曝射フレーム番号を参照して、曝射せずに読みだしたフレーム画像を削除又は当該フレーム画像を表示しないようにする機能を持たせる。
【0244】
なお、制御装置12に、曝射したフレーム又は曝射していないフレームに関するタイマー時間を各フレームの曝射の有無を示す情報として保存し、撮影装置3C又はコンソール14に送信する機能を持たせ、撮影装置3C又はコンソール14に、各フレームのタイマー時間を保存し、受信した情報と照し合せて、曝射せずに読みだしたフレーム画像を削除又は当該フレーム画像を表示しないようにする機能を持たせるようにしてもよい。
このようにすれば、画像から白画像を判定する必要がないため、撮影装置やコンソールでの処理を軽くでき、それにより撮影からコンソールにフレーム画像を表示するまでの遅延を短縮することができる。
【0245】
[実施例8-5]
上記実施形態において、曝射スイッチの押下により撮影を開始した後、任意のタイミングで曝射及びそれに紐づく読出しを行えるようにしたいという要請がある。
任意のタイミングとは、例えば、管球13の位置を変えながら撮影を行う際に、管球13が所定位置(複数個所でもよい)に到達したタイミング、被検体Sに呼吸動作を促すアナウンスを行う際に、所定のアナウンスがなされたタイミング(複数回でもよい)、被検体Sの体位を変えながら撮影する際に、被検体Sの体位が所定の体位になったタイミング等である。
【0246】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、任意のタイミングに達してから、制御装置12で曝射開始時間及び読出し開始時間を決定し、照射線制御装置12Aから撮影装置3Cに読出し開始時間を通知した上で、制御装置12では、計時部の計時情報が曝射開始時間に達したら曝射を開始し、撮影装置では、計時部の計時情報が読出し開始時間に達したら読出しを開始するようにしてもよい。
曝射開始時間及び読出し開始時間は、想定される無線通信遅延に基づいて決定する。
読出し開始時間は、任意タイミング到達時の同期計時情報に、「現時刻から撮影装置が読出し開始時間を受信及び読出しを開始できるまでの時間(想定される無線通知遅延を考慮して決定する)」と「制御装置12の曝射開始準備に必要な時間+1フレームの曝射時間」のいずれか大きい方を足した値にする。
また、曝射開始時間は、読出し開始時間から、「1フレームの曝射時間」以上前の時間にする。
【0247】
このようにすれば、撮影装置3Cが読出し開始時間受信時点で既に読出し開始時間を過ぎてしまっているという事態を回避することができるため、撮影が失敗してしまうのを防ぐことができる。
なお、制御装置12Aではなく、撮影装置3Cが曝射開始時間及び読出し開始時間を決定するようにしてもよい。
【0248】
[実施例8-6]
上記実施例8-5で挙げた、曝射スイッチの押下により撮影を開始した後、任意のタイミングで曝射及びそれに紐づく読出しを行えるようにしたいという課題に対し、上記実施例8-5では、任意のタイミングに達してから、制御装置12で曝射開始時間及び読出し開始時間を決定するようにしたが、撮影装置3Cと制御装置12は、常に最速フレームレートで撮影できるよう、撮影装置3Cにて撮影シーケンス開始時間とフレームレートから読出し開始時間を単独で生成し、制御装置12も曝射開始時間を単独で生成するようにしてもよい。その上で、撮影装置は常に最速フレームレートで読出しを行い、制御装置12は、任意タイミングに到達後、直近の曝射タイミングに達したら管球13に曝射開始を指示するようにする。
【0249】
上記実施例1-5では、想定される無線通知遅延が大きい場合に、任意タイミングに達してから曝射開始までの時間が長くなり、所望のタイミングで曝射できず、撮影が失敗してしまう可能性があるが、このようにすれば、任意タイミングに達してから曝射開始までの最大遅延を、最速フレームレートの周期(例えば15fpsなら66.6ms程度)に抑えることができ、遅延による撮影の失敗を防ぐことができる。
なお、このようにする場合、白画像が生成されてしまうが、上記実施例8-3等を適用することによってこの問題を回避することができる。
【0250】
[実施例9-1]
上記実施形態は、同期した複数の計時部の各計時情報に従って曝射及び読出しを行う撮影方式であるため、複数フレームを連続して撮影する際、一連の曝射中に計時部の同期精度が低下すると、曝射と読出しのタイミングが合わなくなってしまうことがある。
【0251】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、撮影シーケンスを開始するときのみ計時情報を用いて同期をとるようにしてもよい。
具体的には、放射線制御部121に、第二照射側計時部126の計時情報が撮影開始トリガー時間に達したら、動作を開始し、所定タイミングで曝射を行わせる機能を持たせる。
また、撮影制御部31に、第二撮影側計時部39の計時情報が撮影開始時間に達したら、動作を開始し、所定タイミングで読出しを行う機能を持たせる。
なお、撮影装置3が読出しシーケンスを実行するタイミングは、制御装置12が曝射シーケンスを実行するタイミングの後になるように予め定めておく。
【0252】
このようにすれば、
図54に示したように、撮影装置3が計時情報に基づいて読出しシーケンス制御を開始し、制御装置12が計時情報に基づいて曝射シーケンス制御を開始した後は、計時情報を用いることなく、曝射及び読出しが行われる。このため、
図55に示したように、撮影期間中に計時情報源装置2,4に異常が生じ、第二計時部39,126の計時情報がそれぞれ変動しても、制御装置12と撮影装置3は、その影響を受けることなく動作を続けることができる。
【0253】
[実施例9-2]
上記実施形態においては、撮影装置3に撮影側計時部37及び第二撮影側計時部39を備え、撮影側計時部37は、第二撮影側計時部39の動作モードに依らず、計時情報源装置2,4と同期するようにしていた。一般的なWLANモジュールを使用する場合はこのような構成になる。
しかし、WLANモジュールのカスタマイズを行うことにより、撮影側計時部37を備えるのをやめ、第二撮影側計時部39が同期モードのときは計時情報源装置2,4と第二撮影側計時部39とを同期させるようにしてもよい。
撮影側計時部37を備えないと、その分だけ使用する計時部が減るため、回路やソフトウェアの規模を削減したり単純化したりすることができる。
なお、ここでは、撮影装置3に撮影側計時部37を備えないようにする場合について説明したが、制御装置12に照射側計時部125を備えないようにし、第二照射側計時部126を計時情報源装置2,4と同期させるようにすることもできる。
【0254】
[実施例9-3]
上記実施形態においては、高電圧発生部122から照射準備完了通知信号を受けて撮影シーケンス開始時間を決定するものであったが、高電圧発生部122の仕様やシステム構成によっては、照射準備完了通知信号の送信には、装置や配線の改修が必要になり、開発コストがかかってしまう場合がある。
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、照射準備完了通知以外の代替トリガーを撮影シーケンス開始時間の決定に用いるようにしてもよい。
代替トリガーとしては、下記(1)~(3)に挙げたようなものが考えられる。
(1)曝射スイッチの1段目が押下されたこと
(2)曝射スイッチの2段目が押下されたこと
(3)コンソール14、撮影装置3、制御装置12又は曝射スイッチ15a等のUIでユーザーの指示を受け付けたこと
【0255】
ところで、曝射スイッチの1段目が押下されてから2段目が押下されるまでの時間はユーザーの操作次第で変動する。また、曝射スイッチの1段目が押下された後、高電圧発生部122が照射準備を完了するには、管球13での回転陽極のローターアップを完了する必要があるが、ローターアップ時間も条件次第で変動してしまう。このため、上記(1)を代替トリガーとする場合、曝射スイッチの1段目が押下されてから照射準備完了までの時間は予測することができず、曝射開始時間及び読出し開始時間を決められないという問題が新たに生じてしまう。
このような問題に対応するには、上述したシリアル撮影の流れのうち手順6~11を以下のようにするのが有効である。なお、手順5までと手順12以降の流れは上述したものと同様である。また、上記説明に記載した補足等は省略する。
【0256】
(手順6)
制御装置12は、曝射スイッチの1段目の押下を検知する(撮影開始信号を受信する)と、その旨を伝えるコマンドを撮影装置3に送信する。
(手順7)
撮影装置3は、コマンドを受信すると、撮影可能な状態に遷移する。
その後、撮影装置3及び制御装置12は、第二計時部39,126が、それぞれの第二計時情報を計時情報源装置2,4の第一計時情報に更新するのを待つ。
第二計時部39,126の計時情報の更新が完了すると、撮影装置3は、完了時の第二計時部39の計時情報に、記憶部35に記憶された撮影シーケンス開始待ち時間を加算した撮影シーケンス開始時間を算出し、それを記憶部35に記憶するとともに制御装置12へ送信する。
上記は、撮影装置3が制御装置12に撮影シーケンス開始時間を送信する構成としたが、制御装置12が、双方の更新完了時の第二計時部126の計時情報に、記憶部123に記憶された撮影シーケンス開始待ち時間を加算した撮影シーケンス開始時間を算出し、それを記憶部126に記憶するとともに撮影装置3へ送信する構成にしてもよい。
【0257】
(手順8)
撮影装置3及び制御装置12は、互いの同期が完了した後も、同期がとれているか否かを継続して判定する。
また、撮影装置3及び制御装置12は、高電圧発生部122から制御部121へ照射準備完了通知信号が送信された後に撮影装置3及び制御装置12の同期が完了した時点からシリアル撮影の最後のフレームの読出し開始までの期間に同期が失敗したことを検知すると、その時点から少なくともシリアル撮影の最後のフレームの読出し開始までの期間は第二計時部39,126を自走モードで動作させ、それ以降は同期モードに戻す。なお、同期が失敗したことを検知した場合は、第二計時部39,126の計時情報を計時部37,125の計時情報に更新する前に自走モードに切り替えることで、第二計時部39,126に異常値がセットされることを防ぐことができる。
【0258】
(手順9)
また、制御装置12は、撮影装置3から撮影シーケンス開始時間を受信すると、それを記憶部123に記憶する。そして、記憶された撮影シーケンス開始時間とフレームレート(15fps等)を元に、各フレームの曝射開始時間を生成する。
曝射開始時間の具体的な生成方法は、例えば、撮影シーケンス開始時間を1フレーム目の曝射開始時間とし、2フレーム目以降は、それに撮影周期(=1/フレームレート)を累積加算する。この場合、Nフレーム目の曝射開始時間=撮影シーケンス開始時間+(フレーム番号N-1)×撮影周期となる。
【0259】
(手順10)
また、制御部121は、第二照射側計時部126の計時情報が各フレームの曝射開始時間と合致する度に、高電圧発生部122に各フレームの曝射開始を指示する信号を送信する。
高電圧発生部122は、曝射開始の指示の信号を受信する度に、曝射可能な状態であれば、管球13に対して予め設定された照射時間分だけ放射線Rを照射する制御を行う。すなわち、制御装置12は、第二照射側計時部126の計時情報が第一所定値となったことを契機として、管球13から放射線Rを照射させる。
【0260】
(手順11)
また、制御部121は、例えば、曝射スイッチ15aの1段目が解放された、撮影フレーム数が記憶部123に記憶された最大フレーム数に達した、高電圧発生部122からの停止の通知を受けた、撮影装置3から停止の通知を受けた等の撮影終了イベントを検知すると、撮影終了を通知するコマンドを通信部124経由で撮影装置3に送信するとともに、当該撮影において新たな曝射開始指示を高電圧発生部122に送信しない。すなわち当該撮影を終了する。
【0261】
また、曝射スイッチの2段目が押下された後、高電圧発生部122の照射準備が完了するには、管球13での回転陽極のローターアップを完了する必要があるが、ローターアップ時間も条件によって変動する。そのため、上記(2)を代替トリガーとする場合、曝射スイッチの2段目が押下されてから照射準備完了までの時間として、ローターアップに要する時間の最大値を設定する必要があり、ユーザーは曝射スイッチの2段目が押下されてから撮影開始までの間、比較的長時間待たされるため、意図したタイミング(例えば最大吸気時等)で撮影を開始することができないという新たな問題が生じてしまう。
この問題に対応するには、上記(1)を代替トリガーとする場合のシリアル撮影の流れの説明における「曝射スイッチの1段目」を「曝射スイッチの2段目」に置き換えた流れでシリアル撮影を行えばよい。
【0262】
また、上記(3)を代替トリガーとする場合、曝射スイッチの1段目も2段目も、制御装置12を経由しない場合(管球13に曝射スイッチが直結している場合)には、コンソール14、撮影装置3、制御装置12又は曝射スイッチ等のUI経由でユーザーが撮影開始を指示することになるが、上記(1)を代替トリガーとする場合と同様に、ユーザー操作から照射準備完了までの時間が予測できず、曝射開始時間及び読出し開始時間を決められないという問題がある。
この問題に対応するには、上記(1)をトリガーとする場合のシリアル撮影の流れの説明における「曝射スイッチの1段目の押下」を「コンソール14、撮影装置3、制御装置12又は曝射スイッチ15a等のUIでユーザーの指示」に置き換えた流れでシリアル撮影を行えばよい。
【0263】
[実施例9-4]
上記実施例9-3においては、高電圧発生部122および管球13が曝射可能な状態になるまでの間、白画像が生成されてしまうという問題があるが、上記実施例8-3等を適用することによってこの問題を回避することができる。
【0264】
[実施例9-5]
上記実施例9-3で挙げた、高電圧発生部122および管球13が曝射可能な状態になるまでの間、白画像が生成されてしまうという課題に対し、上記実施例9-3では、フレーム画像の画素から白画像の有無を判断していたが、制御部121が高電圧発生部122から曝射中を示す情報を得られる場合には、その情報に基づいて白画像を判断するようにしてもよい。
具体的には、放射線制御部121に、撮影シーケンス開始時間到達後に、最初に曝射中を示した時点の第二計時部126の計時情報を記憶部126に記憶するとともに、コンソール14又は撮影装置3に送信する機能を持たせる。
また、撮影制御部31に、記憶部35に保存された各フレームの読み出し開始時間と、受信した最初に照射中を示した時点の計時情報とを照し合せて、曝射していないフレームの画像を削除する又はフレーム画像表示の際に表示させない機能を持たせる。
このようにすれば、画像の画素から白画像を判定する必要がないため、撮影装置3やコンソール14での処理を軽くすることができる。また、これにより、撮影を行ってからコンソール14にフレーム画像が表示されるまでの間に遅延を生じにくくすることができる。
【0265】
[実施例9-6]
上記実施例9-3で挙げた、高電圧発生部122および管球13が曝射可能な状態になるまでの間、白画像が生成されてしまうという課題に対し、上記実施例9-3では、フレーム画像の画素から白画像の有無を判断していたが、撮影装置3に放射線量を測定可能な放射線センサーを備えておき、撮影シーケンス開始時間到達後に、放射線センサーの測定値が予め定めた閾値を超えた場合に、1フレーム目の撮影が開始されたみなし、それ以前のフレームは削除又は表示時に表示しないようにしてもよい。
このようにすれば、画像の画素から白画像を判定する必要がないため、撮影装置3やコンソール14での処理を軽くすることができる。また、これにより、撮影を行ってからコンソール14にフレーム画像が表示されるまでの間に遅延を生じにくくすることができる。
【0266】
[実施例9-7]
上記実施例9-6において、放射線センサーの放射線検出精度が1フレームあたりの最小累積線量を満たす場合には、フレーム毎に放射線センサーの測定値を読み出して閾値と比較し、さらにセンサー値を初期化して次のフレームに備えるようにしてもよい。
なお、放射線センサーの放射線検出精度が1フレームあたりの最小累積線量を下回る場合には、測定値をフレーム毎に初期化せず、複数フレームの線量を累積させた累積値を閾値と比較し、閾値を超えた場合に、曝射が開始されたとみなすようにすればよい。このようにすれば、放射線の検出性能が低い安価な放射線センサーを利用することができる。
【0267】
[実施例9-8]
上記実施例9-7に挙げた、複数フレームの線量の累積値を閾値と比較する構成においては、曝射スイッチの1段目が押下されてから2段目が押下されるまでの時間が長い場合、放射線センサーが長時間初期化されずにノイズが蓄積され、閾値を超えたと誤判断してしまう可能性がある。
この問題の対策としては、予め定めた時間又はフレーム数が経過する毎に初期化を行うようにすればよい。
【0268】
[実施例9-9]
上記実施形態においては、曝射フレーム数と読出しフレーム数が等しいシリアル撮影を行ったが、撮影システムの中には、最初の曝射フレームの前に、曝射しない(読出しのみ行う)フレームを必要とするものも存在する。例えば、撮影装置内の温度を安定させる、あるいは画像処理に使用することを目的として、曝射しないフレーム画像を取得するために、所定のフレーム数分(又は以上)は曝射せずに読出しのみを行った後、曝射及び読出しを行う、といったものである。
このような曝射しないフレームを必要とする撮影システムに上記実施形態を適用する場合、曝射しないフレームと曝射するフレームの切替えを適切に制御しないと、曝射しないフレームを取得する際に曝射が行われてしまい、所望の画像が得られずに撮影が失敗となってしまう可能性がある。
【0269】
このような問題に対応するには、上述したシリアル撮影の流れのうち手順6~16を、下記手順6~15のように変更するのが有効である。なお、手順5までの流れは上述したものと同様である。また、上記説明に記載した補足等は省略する。
【0270】
(手順6)
撮影装置3は、計時部37と計時情報源装置2,4の同期化が完了すると、撮影可能な状態に遷移する。
その後、撮影装置3及び制御装置12は、第二計時部39,126が、それぞれの第二計時情報を計時情報源装置2,4の第一計時情報に更新するのを待つ。
ここで、計時情報の更新が予め定められた時間内に完了しない場合には、コンソール14等に同期が失敗した旨を通知し、コンソール14の図示しない表示部等に同期が失敗した旨の表示や、計時情報源装置2,4の再起動やネットワーク設定の確認等のトラブルシューティングを促す表示、又は有線での撮影を促す表示等を行うようにしてもよい。これにより異常から早期に復帰できるようになる。
第二計時部39,126の両方の計時情報の更新が完了すると、撮影装置3は、完了時の第二計時部39の計時情報に、記憶部35に記憶された撮影シーケンス開始待ち時間を加算した撮影シーケンス開始時間を算出し、それを記憶部35に記憶するとともに制御装置12へ送信する。
上記は、撮影装置3が制御装置12に撮影シーケンス開始時間を送信する構成としたが、制御装置12が、双方の更新完了時の第二計時部126の計時情報に、記憶部123に記憶された撮影シーケンス開始待ち時間を加算した撮影シーケンス開始時間を算出し、それを記憶部126に記憶するとともに撮影装置3へ送信する構成にしてもよい。
【0271】
(手順7)
撮影装置3及び制御装置12は、互いの同期が完了した後も、同期がとれているか否かを継続して判定する。
また、撮影装置3及び制御装置12は、撮影可能な状態に遷移した撮影装置3と制御装置12の双方の同期化が完了した時点からシリアル撮影の最後のフレームの読出し開始までの期間に同期が失敗したことを検知すると、その時点から少なくともシリアル撮影の最後のフレームの読出し開始までの期間は第二計時部39,126を自走モードで動作させ、それ以降は同期モードに戻す。
【0272】
(手順8)
また、撮影装置3は、記憶部123に記憶された撮影シーケンス開始時間、フレームレート及び1フレーム当たりの蓄積時間を元に、各フレームの読出し開始時間を生成する。
なお、蓄積時間は、読出し中に曝射されることを避けるために、1フレームあたりの照射時間よりも大きくなるようにする。
(手順9)
また、制御装置12は、撮影装置3から撮影シーケンス開始時間を受信すると、それを記憶部123に記憶する。そして、記憶された撮影シーケンス開始時間とフレームレート(15fps等)を元に、各フレームの曝射開始時間を生成する。
【0273】
(手順10)
また、撮影装置3は、第二撮影側計時部39が各フレームの読出し開始時間と合致する度に、放射線検出部32に蓄積された電荷の読出しを開始し、フレーム画像の画像データを生成する。そして、撮影装置3は、ウォームアップに必要なフレーム数分の読出しを完了すると(もしくは画像処理のために必要な非曝射フレーム画像の取得を終了すると)、制御装置12に撮影の許可を通知する。撮影装置3は、曝射許可通知後も、第二撮影側計時部39が各フレームの読出し開始時間と合致する度に、放射線検出部32からの電荷読出しを開始し、フレーム画像を生成する。
【0274】
(手順11)
制御装置12の制御部121は、曝射スイッチ15aの2段目の押下を検知する(撮影開始信号を受信する)と、その旨を伝える信号を高電圧発生部122に送信し、高電圧発生部122から照射準備が完了した旨の完了通知信号が返信されるのを待つ待機状態に遷移する。
高電圧発生部122は、撮影開始信号を受信すると、照射準備を開始する。具体的には、管球13に出力する電圧および電流の準備や、管球13への回転陽極の回転開始指示などを行う。
【0275】
(手順12)
また、制御部121は、高電圧発生部122からの照射準備完了通知信号と、撮影装置からの曝射許可通知の両方を受信するまでは、高電圧発生部122に曝射開始を指示しない。両方を受信すると、撮影装置に通信コマンドで照射準備完了を通知した後、第二照射側計時部126の計時情報が各フレームの曝射開始時間と合致する度に、高電圧発生部122に各フレームの曝射開始を指示する信号を送信する。
高電圧発生部122は、曝射開始の指示の信号を受信する度に、管球13に対して予め設定された照射時間分だけ放射線Rを照射する制御を行う。すなわち、制御装置12は、第二照射側計時部126の計時情報が第一所定値となったことを契機として、管球13から放射線Rを照射させる。
【0276】
(手順13)
また、制御部121は、例えば、曝射スイッチ15aの2段目が解放された、撮影フレーム数が記憶部123に記憶された最大フレーム数に達した、高電圧発生部122からの停止の通知を受けた、撮影装置3から停止の通知を受けた等の撮影終了イベントを検知すると、撮影終了を通知するコマンドを通信部124経由で撮影装置3に送信するとともに、当該撮影において新たな曝射開始指示を高電圧発生部122に送信しない。すなわち当該撮影を終了する。
最大フレーム数は、固定値を記憶部123に記憶しておいてもよいし、コンソール14で入力した値を制御装置12に送信し、記憶部123に記憶させてもよい。
【0277】
(手順14)
また、撮影装置3は、制御装置12から照射準備完了通知信号を受信した後は、第二撮影側計時部39が各フレームの読出し開始時間と合致する度に、放射線検出部32に蓄積された電荷の読出しを開始し、フレーム画像の画像データを生成する。
【0278】
(手順15)
そして、撮影装置3は、例えば、制御装置12から撮影終了を通知するコマンドを受信した、撮影フレーム数が記憶部35に記憶された最大フレーム数に達した等の撮影終了イベントを検出すると、当該撮影を終了する。
【0279】
[実施例10-1]
上記実施形態は、制御装置12Aと撮影装置3とを無線で接続してシリアル撮影を行うものであったが、撮影装置3の接続形態が有線の場合は、第二撮影側計時部39の精度低下の影響や、撮影装置3と制御装置12の発振器の周波数の誤差の影響を受け難い方法に切替えるようにするとよい。
具体的には、照射線制御装置12で、各フレームの曝射開始タイミングと読出し開始タイミングを生成し、撮影装置3に読出し開始タイミングを専用線で通知するとともに、各フレームの曝射開始タイミングで管球13に曝射開始を指示する。
そして、撮影装置3は各フレームの読出し開始タイミングで読出しを開始する。
【0280】
なお、撮影装置3に接続形態を検知する機能を持たせ、有線ケーブルでの接続を検知した場合にはここで説明した有線シリアル撮影を選択し、有線ケーブルとの非接続を検知した場合には上述したシリアル撮影方法を選択するようにしてもよい。
このようにすれば、ユーザーの操作が少なくなり、ユーザビリティーが向上する。
【0281】
[実施例10-2]
上記実施形態は、無線シリアル撮影を行うものであったが、フレーム数を1つとしてもよい。このようにすれば、共通の制御で無線静止画撮影にも対応することができるため、制御の共通化により開発コストを抑制することができる。
一方、無線静止画撮影を行う際には、計時部の精度低下の影響や、撮影装置3と制御装置12の発振器の周波数の誤差の影響を受け難い方法(例えばAeroDRでのSRM撮影やAeroSync撮影等)に切替えることで、より安定した無線静止画撮影を行うことができる。
また、コンソール14に、選択されたオーダーが無線静止画か無線シリアルか応じて、撮影装置3及び制御装置12に指示する撮影方法を切り替える機能をもたせるようにすれば、ユーザーの操作が減り、ユーザビリティーが向上する。
【0282】
[実施例11-1]
放射線画像の動的な変化と生体情報の動的な変化を合わせて表示したり、両者の関係を解析したりすることで、被検体Sの状態をより細かく把握することができる。
例えば、被検体Sにパルスオキシメーターを装着した状態で、被検体Sの胸部の動態画像を撮影することにより、パルスオキシメーターからは、動脈血酸素飽和度(SpO2)や脈拍数の情報が得られ、動態画像からは肺換気機能情報を得ることができる。この両者の情報を統合して解析することにより、呼吸機能の時間的変化を評価することができる。
しかし、通常、パルスオキシメーターのような生体情報を計測する機器と放射線システムとは個別の装置であり、各々が持つ発振器で動作しているため、計時情報にずれが生じる。仮に、各々が周波数許容偏差±100ppmの発振器を搭載している場合、1時間あたり最大720ms(60秒×60分×±0.01%=±360ms、一方の機器が+360ms、もう一方の機器が-360msの場合)の差が生じる。この場合、両者の計時部の計時情報を正確に合わせてから1時間経過後に30fpsの動態画像を撮影すると、動態画像と生体情報のずれは最大約22フレームとなり、フレーム単位での生体機能の表示や解析に適さなくなってしまうという問題があった。
【0283】
昨今、様々な機器が無線LANでの通信機能に対応している。そこで、上記実施形態において、
図56に示したように、生体計測機器6を計時情報源装置2,4に接続し、計時情報源装置2,4からの第一計時情報に含まれる第一計時情報に基づいて、撮影システム100と生体計測機器6とを同期させるようにしてもよい。
具体的には、撮影システム100に、各フレーム画像に対応するタイマー時間を紐付けて保存する機能を持たせる。例えば、各フレームの曝射開始時間や曝射終了時間、読出し開始時間(タイムスタンプ)を紐付ける。
また、生体計測機器6に、生体情報をサンプリングした時点における計時情報を、各サンプリング値に紐付けて保存する機能を持たせる。
【0284】
このようにすれば、放射線画像と生体情報を統合して解析及び表示する機器に、放射線画像の画像データ及び生体情報を送信し、フレーム画像と生体情報のサンプリング値を、それぞれに紐付けられた計時情報に従って同時に再生することで、両者の情報の経時変化を時間的なずれを押さえつつ表示することができる。
また、表示だけでなく、両者の計時情報を用いて、同じ時間にどのような生体変化が起きていたかを解析することもできる。
【0285】
なお、計時情報源装置2,4と生体計測機器6の2つの機器だけでなく、3つ以上の機器を接続することも可能である。
また、無線LANだけでなく、IEEE1588やNTP、電波時計等で同期をとるようにしてもよい。
また、無線LANの周波数帯を選べるようにしてもよい。このようにすれば、例えば、連携したい生体計測機器6(パルスオキシメーター等)が2.4GHz帯のWLANのみに対応している場合は、撮影システム100の無線LANの周波数帯を2.4GHzに合わせることで対応することができる。
また、撮影システム100と接続する可能性がある他機器と使用周波数帯の一覧をコンソール14等に予め保存しておき、他機器が計時情報源装置2,4を介してコンソール14と接続された際に、保存していた一覧を参照して、撮影装置3と制御装置12の使用周波数帯を変更するようにしてもよい。このようにすれば、ユーザーは使用周波数帯を意識したり、切替えのための操作をしたりする必要がなくなり、ユーザビリティーが向上する。
【0286】
また、TSFを用いると、数十~数百μsオーダーの精度で機器の同期をとることができる。例えば30fpsで動態画像を撮影する場合、撮影周期は33.3msであり、時間のずれを1フレーム未満に抑えることができる。このため、フレーム単位で、放射線フレーム画像と生体情報サンプリング値の時間軸での紐付けが可能になり、より高精度は表示及び解析を行うことが可能になる。
【0287】
[実施例11-2]
上記実施例11-1で挙げた、通常、生体計測機器と放射線システムとは個別の装置であり、各々が持つ発振器で動作しているため、計時情報にずれが生じるという課題に対し、上記実施例11-1では、生体計測機器を計時情報源装置2,4と接続するようにし、その際のTSFを用いて同期をとることもできるとしたが、無線LANモジュールの中には、モジュール外部からTSFを利用して計時情報を読み出せないものも存在する。
生体計測機器で、そのような無線LANモジュールを採用している場合は、無線LANモジュールの改造や入替、あるいはハードウェアの修正が必要になり、対応に多くの開発期間と費用がかかってしまう。
【0288】
そのような場合、IEEE1588やNTP等のより一般的なソフトウェアにも実装可能な同期方式を選択することが考えられるが、放射線シリアル撮影の曝射と読出しタイミング制御にNTPを用いると、時間精度が不足して、撮影が失敗してしまう場合があった。
一方、片方の機器をNTP、もう片方の機器をWLANのTSFといったように、異なる同期方式を使うと、タイムスタンプ値の定義が異なり、両者の結果の時間を合わせて表示又は解析することができないという問題があった。
【0289】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図57に示したように、2つの同期方法を併用するようにしてもよい。
具体的には、撮影システム100内は、自身の制御に高精度な時間管理が必要であるため、高精度の時間同期方式(WLANのTSF等)で同期をとり、フレーム画像等の結果にタイムスタンプを付ける際には、一般的な時間同期方式の時間を使用するようにする。
一方、自身の制御に高精度な時間管理が不要な生体計測機器6(パルスオキシメータ等)は、心拍等の結果にタイムスタンプを付ける際には、一般的な時間同期方式の時間を使用する。
【0290】
このようにすれば、生体計測機器6等の外部機器のハードウェアを改造せずに、撮影システム100のフレーム画像と生体計測機器6のサンプリング値とを時間軸で紐付けることができる。
【0291】
[実施例11-3]
上記実施例11-1で挙げた、通常、生体計測機器と放射線システムとは個別の装置であり、各々が持つ発振器で動作しているため、計時情報にずれが生じるという課題に対し、上記実施例11-1では、生体計測機器を計時情報源装置2,4と接続するようにしたが、
同期させる生体計測機器が予め決まっていない場合、生体計測機器で使用可能な同期方式が決まらないため、撮影システムにてタイムスタンプに使用する基準時間を決められないという問題があった。
【0292】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、
図58に示したように、複数の基準時間の対応付けを行うブリッジデバイス7を予め接続しておくようにしてもよい。
各機器(生体計測機器6や撮影システム)は、各自が使える基準時間で検査結果にタイムスタンプを付ける。
ブリッジデバイス7は、例えばTSFとNTPとIEEE1588にて同期しておき、それぞれの基準時刻の組合せリストを保存する(例えば、10msec間隔で、3つの基準時刻の組合せをリストに追加していく)。
各モダリティは、タイムスタンプ付きの検査結果をブリッジデバイスに送信し、ブリッジデバイスがタイムスタンプを、任意の1つの基準時間に書き換えて、コンソールに送る。
なお、各モダリティが検査結果をコンソールに送り、コンソール14がブリッジデバイスに問い合わせてもよい。
【0293】
このようにすれば、連携する生体計測機器6が予め決まっていない場合でも、複数機器の結果を時間軸で紐付けられる撮影システムを構築することができる。
【0294】
[実施例12]
上記実施形態において、フレームレートを変更することが可能に構成されている場合、フレームレートが変わると、1フレーム画像中の暗電荷量がかわるため、画像処理に用いる補正テーブルをフレームレートに応じて切り替えて補正処理を行う必要がある。
ところで、撮影装置3で読出したフレーム画像は、可能な限り遅延することなくコンソール14において表示できるようにするのが望ましい。このようにすれば、ユーザーが撮影期間中の被検体Sの体位異常等をはやい段階で判断し、撮影を中断・やり直すことができ、被曝量を抑えることができる。
しかし、フレームレートが可変の場合、撮影装置3が記憶部35からフレームレートに応じた補正テーブルを読出して補正処理を行う構成が考えられるが、このような構成では、撮影装置3での処理に時間がかかりすぎ、コンソール14に画像を表示するまでの時間の遅延が増加してしまうという問題があった。
【0295】
このような課題に鑑み、上記実施形態においては、撮影装置3にて、各フレーム画像に時間的に隣接するフレーム画像間の時間が分る情報(タイムスタンプ)を紐付けて保存するようにするとよい。
例えば、各フレーム画像の読出し開始時間(同期計時情報)や、各フレーム画像の読出し終了時間(同期計時情報)を各フレーム画像に紐づけて保存する。
そして、撮影装置3ではフレームレートに応じた補正処理は行わず、各フレーム画像にタイムスタンプのみを付して、コンソール14に送信するようにする。
コンソール14では、受信したタイムスタンプに基づいて、各フレーム画像間の時間間隔を導き、導いた時間間隔で各フレーム画像順に画像を表示する。このとき表示される画像は画像処理を施されていないが、再撮影の判断に十分なものとなっている。
表示した後(もしくは、CPU処理性能に余力がある場合は同時並行で)、導いた各フレーム画像間の時間間隔に応じて補正テーブルを選択し、補正処理を行う。
【0296】
このようにすれば、撮影装置3での処理が最小限になるため、撮影装置3で読出したフレーム画像を遅延することなくコンソール14に表示することができる。このため、ユーザーが撮影期間中の被検体Sの体位異常等を早い段階で発見し、撮影を中断したりやり直したりすることができ、被検体Sの被曝量を抑えることができる。
【0297】
また、上記実施形態や実施例では、計時情報源装置2,4が、制御装置12、2Aにもコンソール14にも接続された場合を例に説明したが、本発明はこの接続に限られるものではなく、計時情報源装置2,4と放射線制御装置12,12Aのみを接続したり、計時情報源装置2,4とコンソール14のみを接続したりしても構わない。
照射装置1は、放射線を照射する装置であるため、計時情報源装置2,4と制御装置12,12Aを直接接続すれば、より正確に放射線照射のタイミングを制御することができる。
一方、コンソール14は、撮影システム100全体をコントロールする装置であるため、計時情報源装置2,4とコンソール14とを直接接続すれば、コンソール14にて効率的に同期確認等の処理を行うことができる。