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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015867
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】画像形成システム及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/10 20060101AFI20250124BHJP
   G03G 5/10 20060101ALI20250124BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20250124BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
G03G9/10
G03G5/10 B
G03G9/113
G03G9/113 361
G03G15/08 235
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118727
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯 知子
(72)【発明者】
【氏名】松島 香織
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 明彦
【テーマコード(参考)】
2H068
2H077
2H500
【Fターム(参考)】
2H068AA52
2H068CA05
2H068CA32
2H068FC08
2H077AC04
2H077AD06
2H077AD13
2H077EA16
2H077FA12
2H077FA22
2H077FA26
2H500AB04
2H500AB05
2H500CA04
2H500CB05
2H500CB09
2H500CB14
2H500EA02E
2H500EA62E
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、トナーの過剰な帯電を抑制し、低温低湿環境においても良好な画像を得ることのできる画像形成システム及び画像形成方法を提供すること。
【解決手段】二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを用いた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成システムであって、前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であり、かつ、少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内であることを特徴とする画像形成システム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを用いた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成システムであって、
前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であり、かつ、
少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記キャリアが、少なくとも芯材粒子の表面が被覆用樹脂で被覆されたキャリア粒子からなり、
前記被覆用樹脂が、(メタ)アクリレートに由来する構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記被覆用樹脂が、カーボンブラック、酸化マグネシウム及び二酸化チタンのうちの、少なくともいずれか一種を含有する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記キャリア粒子の表面における前記芯材粒子の露出面積比率が、当該芯材粒子の表面積に対して10.0~18.0%の範囲内である
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記ケイ素含有量が、少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金全量に対して、0.8質量%超、12.6質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記被覆用樹脂が、脂環式(メタ)アクリレートに由来する構造を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記キャリアの静的抵抗値が、10~1010Ω・cmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項8】
二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを用いた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成方法であって、
前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であり、かつ、
少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム及び画像形成方法に関する。より詳しくは、静電荷像現像用トナーの過剰な帯電を抑制し、低温低湿環境においても良好な画像を得ることのできる画像形成システム及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置本体を構成する各種部材において環境負荷の低減が求められている。
【0003】
環境負荷の低減手段の一つとして、上記の各種部材を製造する際に単位質量当たりの二酸化炭素排出量が少ない材料を使用することが考えられる。例えばアルミニウム合金を用いる部材の場合、ボーキサイトからアルミニウムを製造する過程で大量の二酸化炭素が排出されるため環境負荷が大きい。これに対してアルミニウムを含有する廃材からリサイクルされたアルミニウム合金を使用することで、ボーキサイトからアルミニウムを製造する工程が削減される。そして、これにより、二酸化炭素排出量を大幅に低減し、環境負荷を小さくすることができる。
【0004】
こうしたアルミニウム合金には、リサイクルであるかどうかに関わらず、物性や加工性を制御する目的でアルミニウム以外の元素が添加されている。特にケイ素は耐熱性・熱膨張性・加工性に影響を与えることから、様々な種類のアルミニウム合金に添加されている。
【0005】
このようなケイ素を含有するアルミニウム合金を電子写真方式の画像形成装置の部材に活用した例として、例えば特許文献1では支持体にケイ素を含有するアルミニウム合金を用いた電子写真感光体が開示されている。
【0006】
また、特許文献2ではケイ素を含有するアルミニウム合金を用いた現像剤担持体が開示されている。
【0007】
ところで、上記のようにリサイクルによりアルミニウム合金を製造する場合、ケイ素を含めた不純物等を検知・除去してそれらの含有量を調整する必要がある。
【0008】
しかしながら、ケイ素は分別・除去の難易度が高いため、リサイクルにより製造されたアルミニウム合金においてはケイ素含有量が必要以上に多くなってしまう。これにより、上記の各種部材に使用した場合、所望の性能を満たさない場合があった。
【0009】
したがって、上記のようなケイ素含有量の多いアルミニウム合金を用いた感光体及び現像剤担持体を使用した場合においても所望の性能を満たすような改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2022-132142号公報
【特許文献2】特開2008-102502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、静電荷像現像用トナーの過剰な帯電を抑制し、低温低湿環境においても良好な画像を得ることのできる画像形成システム及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、アルミニウム合金中のケイ素含有量がある特定の範囲内である感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブと、キャリアの静的抵抗値がある特定の範囲内である二成分現像剤とを、組み合わせて用いることによって上記課題を解決できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0013】
1.二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを用いた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成システムであって、
前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であり、かつ、
少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする画像形成システム。
【0014】
2.前記キャリアが、少なくとも芯材粒子の表面が被覆用樹脂で被覆されたキャリア粒子からなり、前記被覆用樹脂が、(メタ)アクリレートに由来する構造を有することを特徴とする第1項に記載の画像形成システム。
【0015】
3.前記被覆用樹脂が、カーボンブラック、酸化マグネシウム及び二酸化チタンのうちの、少なくともいずれか一種を含有することを特徴とする第2項に記載の画像形成システム。
【0016】
4.前記キャリア粒子の表面における前記芯材粒子の露出面積比率が、当該芯材粒子の表面積に対して10.0~18.0%の範囲内であることを特徴とする第2項に記載の画像形成システム。
【0017】
5.前記ケイ素含有量が、少なくとも前記感光体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金全量に対して、0.8質量%超、12.6質量%以下の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の画像形成システム。
【0018】
6.前記被覆用樹脂が、脂環式(メタ)アクリレートに由来する構造を有することを特徴とする第2項に記載の画像形成システム。
【0019】
7.前記キャリアの静的抵抗値が、10~1010Ω・cmの範囲内であることを特徴とする第1項に記載の画像形成システム。
【0020】
8.二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを備えた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成方法であって、
前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であり、かつ、
少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記手段により、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)の過剰な帯電を抑制し、低温低湿環境においても良好な画像を得ることのできる画像形成システム及び画像形成方法を提供することができる。
【0022】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0023】
本発明の画像形成システムは、二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを用いた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成システムであって、前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であり、かつ、少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0024】
アルミニウム合金製の電子写真感光体の支持体は、当該アルミニウム合金中のケイ素含有量の増加に伴い、その表面にケイ素とアルミニウムの共晶による粗大結晶(凸部)が多く存在するようになる。
【0025】
そして、上記のような支持体を有する感光体を使用して画像形成を行った場合、上記のような凸部には電界が集中しやすく、感光体最表面と感光体支持体との間で電荷のリークが生じやすい。
【0026】
こうした電荷のリークが発生することにより感光体表面の電位の絶対値が部分的に小さくなり、形成された画像上に局所的な画像不良(黒ポチ)が発生しやすくなる。
【0027】
一方、アルミニウム合金を用いた現像スリーブを有する現像剤担持体においても、当該アルミニウム合金中のケイ素含有量の増加に伴い、その表面にケイ素とアルミニウムの共晶による粗大結晶(凸部)が多く存在するようになる。
【0028】
そして、上記のような現像剤担持体を使用して画像形成を行った場合には、現像時の電圧印加により当該現像スリーブ表面の凸部と感光体表面の間で電荷のリークが生じやすい。
【0029】
こうした電荷のリークが発生することにより感光体表面の電位の絶対値が部分的に小さくなり、形成された画像上に局所的な画像不良(黒ポチ)が発生しやすくなる。
【0030】
以上のことからわかるように、ケイ素含有量がある特定の範囲内であるアルミニウム合金製の電子写真感光体の支持体及び当該アルミニウム合金製の現像スリーブを有する現像剤担持体とでは原因は異なる。しかしながら、電荷のリークが発生することで局所的な画像不良(黒ポチ)が発生する点は共通している。
【0031】
したがって、両者ともに電荷リークを抑制する手段が必要となる点に関しても共通している。
【0032】
このうち、感光体最表面と感光体支持体との間で生じる電荷のリークを抑制する手段としては、感光体を帯電させる際の当該感光体表面電位の絶対値を小さくすることが考えられる。
【0033】
その場合、非画像部へのトナー現像(いわゆる画像かぶり)を抑制するために現像剤担持体へ印加する現像電位の絶対値も小さくせねばならず、トナーの帯電量が高くなりやすい低温低湿環境において画像濃度が確保しにくくなる場合があった。
【0034】
一方、現像スリーブ表面の凸部と感光体表面との間で生じる電荷のリークを抑制する手段としては、現像剤担持体へ印加する現像電位の絶対値を小さくすることが考えられる。しかしながら、この場合、特にトナーの帯電量が高くなりやすい低温低湿環境において画像濃度が確保しにくくなる場合があった。
【0035】
本発明においては、画像形成時に、(1)ケイ素含有量がある特定の範囲内であるアルミニウム合金製の感光体の支持体と二成分現像剤、又は(2)ケイ素含有量がある特定の範囲内であるアルミニウム合金製の現像スリーブと二成分現像剤、若しくは(3)ケイ素含有量がある特定の範囲内であるアルミニウム合金製の感光体の支持体及びケイ素含有量がある特定の範囲内であるアルミニウム合金製の現像スリーブと二成分現像剤のいずれか三種類の組み合わせを用いる。さらに、二成分現像剤が含むキャリアの抵抗値をある特定の範囲内に調整する。
【0036】
抵抗値を調整することにより、トナーとキャリアが摩擦帯電する際にキャリア粒子から適度に電荷が放出されるため、トナーの過剰な帯電が抑制される。したがって、特に低温低湿下において、十分な濃度の画像が得られると推察される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】電子写真感光体の層構成の一例
図2】現像スリーブを備えた現像剤担持体の外観図
図3】シャフトがマグネットローラーを貫通しない構成の現像剤担持体の断面図
図4】シャフトがマグネットローラーを貫通する構成の現像剤担持体の断面図
図5】本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図
図6】交流電圧のVpp値を示す一例の概念図
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の画像形成システムは、二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを用いた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成システムであって、前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であり、かつ、少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0039】
この特徴は、下記各実施形態(態様)に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0040】
本発明の実施態様としては、前記キャリアが、少なくとも芯材粒子の表面が被覆用樹脂で被覆されたキャリア粒子からなり、前記被覆用樹脂が、(メタ)アクリレートに由来する構造を有することが、帯電の環境差を低減する観点から好ましい。
【0041】
また、前記被覆用樹脂が、カーボンブラック、酸化マグネシウム及び二酸化チタンのうちの、少なくともいずれか一種を含有することが、キャリアの静的抵抗値を調整する観点から好ましい。
【0042】
前記キャリア粒子の表面における前記芯材粒子の露出面積比率が、当該芯材粒子の表面積に対して10.0~18.0%の範囲内であることが、キャリア粒子の過剰帯電を抑制し、また、当該キャリア粒子の劣化を抑制する観点から好ましい。
【0043】
前記ケイ素含有量が、少なくとも前記感光体又は前記現像スリーブを形成するアルミニウム合金全量に対して、0.8質量%超、12.6質量%以下の範囲内であることが、感光体及び現像剤担持体の表面の加工性の観点から好ましい。
【0044】
前記被覆用樹脂が、疎水性の高い脂環式(メタ)アクリレートに由来する構造を有することが、帯電性の環境差をさらに低減する観点から好ましい。
【0045】
前記キャリアの静的抵抗値が、10~1010Ω・cmの範囲内であることが、低温低湿環境における画像濃度の低下を抑制できる観点から好ましい。
【0046】
本発明の画像形成方法は、二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを用いた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成方法であって、前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であり、かつ、少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内であることを特徴とし、本発明の画像形成システムに好適に用いることができる。
【0047】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0048】
[画像形成システム]
本発明の画像形成システムは、二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを用いた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成システムであって、前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であり、かつ、少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0049】
1.二成分現像剤
本発明に係る二成分現像剤は、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)及びキャリアを含み、当該キャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であることを特徴とする。
【0050】
本発明に係る二成分現像剤には、以下において詳述するキャリアとトナーを用いることが好ましい。
【0051】
なお、トナー粒子の混合量は、二成分現像剤全体に対し、1~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0052】
(1.1)キャリア
本発明に係る二成分現像剤に含まれるキャリアの主要な役割の一つは、現像ボックス内でトナーと撹拌・混合され、トナーに所望の電荷を与えることである。また、キャリアの別の役割は、現像機と感光体の間で電極として働き、電荷を帯びたトナーを感光体上の静電潜像に運び、トナー画像を形成させる担体物質(すなわちキャリア)として機能することである。
【0053】
キャリアは、磁気力によりマグネットローラー上に保持され、現像に作用した後、再び現像ボックスに戻り、新たなトナーと再び撹拌・混合され、ある一定期間繰り返し使用される。したがって、所望の画像特性(画像濃度、カブリ、白斑、階調性、解像力等)を安定に維持するためには、当然のことながら、キャリアの特性が使用期間中、安定であることが要求される。
【0054】
本発明に係るキャリアを構成するキャリア粒子は、後述するように鉄、フェライト、マグネタイト等の金属粉体である芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆されていることが好ましい。また、キャリア粒子には、必要に応じて抵抗調整剤などの内添剤が含有されていてもよい。
【0055】
(1.1.1)静的抵抗値
本発明に係るキャリアは、トナーを感光体上へ移行させる役割を果たし、当該キャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内である。これにより、現像電位を下げた際にも、特に低温低湿環境における画像濃度の低下を抑制できる。
【0056】
なお、前記キャリアの静的抵抗値が、1012Ωcm以上の場合、キャリアにおける電荷移動が遅くなるため、結果的にトナーの帯電の立ち上がり性が低下する場合があった。
【0057】
「トナーの帯電立ち上がり性」とは、トナーが帯電する時に電位が所望の値までにいかに早く到達するかどうかを表す当該トナーの性質のことである。そして、前記キャリアの静的抵抗値が、10~1010Ω・cmの範囲内の場合に帯電立ち上がり性がより向上するため好ましい。
【0058】
また、前記キャリアの静的抵抗値が、10Ωcm未満である場合、トナーが十分に帯電せず、カブリなどの画像不良が発生する場合がある。これは、キャリアの抵抗が低すぎると帯電した電荷が漏えいしやすくなりトナー自体の帯電量が少なくなるためである。
【0059】
上記のことから、前記キャリアの静的抵抗値は、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内であることが好ましく、10~1010Ω・cmの範囲内であることがより好ましい。
【0060】
(静的抵抗値の算出方法)
本発明に係る二成分現像剤が含むキャリアの静的抵抗値の算出方法は、以下のとおりである。なお、上記の「静的抵抗値」は、「体積固有抵抗値」とも呼ばれる。
【0061】
まず、静的抵抗値を算出したいキャリアを含む二成分現像剤を用意する。そして、界面活性剤が含有されている水溶液に上記の二成分現像剤を入れ、超音波によってトナーとキャリアとを分離する。その後、磁石により二成分現像剤からキャリアのみを取り出して分離し、当該キャリア1.0gを試料とし、当該試料を断面積1cmの絶縁性円筒容器に充填する。なお、上記の絶縁性円筒容器には、上下に断面積1.0cmの電極が配されている。
【0062】
次に、500gの荷重下で、試料によって形成された層の厚さt[cm]を求める。その後、絶縁抵抗計にて直流電圧100Vを印加し、その際の絶縁抵抗値R[Ω]を読み取る。
【0063】
また、試料によって形成された層の厚さt[cm]及び絶縁抵抗値R[Ω]を以下の式に代入し、静的抵抗値を算出する。
【0064】
(式1) 静的抵抗値[Ω・cm]=R・(S/t)
(上記式中、R[Ω]は絶縁抵抗値、S[cm]は試料によって形成された層の断面積、t[cm]は試料によって形成された層の厚さ)
【0065】
(1.1.2)芯材粒子
(種類)
本発明に係る芯材粒子は、例えば鉄粉、各種フェライト、マグネタイトなどの金属粉などから構成される。これらの中では、残留磁化が低く、好適な磁気特性が得られるという観点から、フェライトが好ましい。上記のフェライトには、銅、亜鉛、ニッケル、マンガンなどの重金属や、アルカリ金属又はアルカリ土類金属などの軽金属が含有されることが好ましい。
【0066】
なお、フェライトは、下記一般式(1)で表される化合物であり、フェライトを構成するFeのモル比yを30~95モル%の範囲内とすることが好ましい。
【0067】
一般式(1) (MO)(Fe
(上記式中、「M」は金属元素、「O」は酸素元素、「Fe」は鉄元素、「x」及び「y」はモル比を表す。)
【0068】
モル比yが30~95モル%の範囲内であると所望の磁化を得やすく、キャリア粒子を作製する際に、当該キャリア粒子同士の付着が起こりにくい利点がある。
【0069】
一般式(1)中の「M」としては、例えばマンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、リチウム(Li)等が挙げられる。また、上記の金属元素は、単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0070】
残留磁化が低く好適な磁気特性が得られるという観点から、マンガン、マグネシウム、ストロンチウム、リチウム、銅及び亜鉛が好ましく、その中でもマンガン、マグネシウムがより好ましい。すなわち、本発明に係る芯材粒子は、マンガン及びマグネシウムの少なくとも一方を含むフェライト粒子であることが好ましい。
【0071】
芯材粒子は市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0072】
(粒径)
芯材粒子の粒径としては、体積基準のメジアン径(D50)で13~40μmの範囲内であることが好ましく、15~30μmであることがより好ましい。芯材粒子の体積基準のメジアン径(D50)が40μm以下であれば、画質を低下させることなく、優れた画質を提供できる点で優れている。芯材粒子の体積基準のメジアン径(D50)が13μm以上であれば、キャリア粒子同士の付着の発生を防止することができ、また、かぶり等の少ない優れた画質を提供することができる点で優れている。
【0073】
芯材粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば湿式分散機を備えてなるレーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパティック社製)により測定することができ、芯材粒子の飽和磁化は、例えば「直流磁化特性自動記録装置3257-35」(横河電機株式会社製)により測定することができる。
【0074】
(磁化)
本発明に係る芯材粒子は、その飽和磁化が30~80Am/kgの範囲内であるものが好ましく、残留磁化が5.0Am/kg以下であるものが好ましい。このような磁気特性を有する芯材粒子を用いることにより、キャリア粒子が部分的に凝集することが防止され、現像剤搬送部材の表面に二成分現像剤がより均一に分散されて、濃度ムラがなく、均一で、きめの細かいトナー画像を形成することが可能になる。
【0075】
(合成方法)
芯材粒子を合成する方法としては、例えば下記のような方法が挙げられる。
【0076】
まず、原材料を適量秤量した後、湿式メディアミル、ボールミル又は振動ミル等で粉砕混合する。粉砕混合に要する時間としては、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1~20時間の範囲内である。
【0077】
このようにして得られた粉砕物を、加圧成型機等を用いてペレット化し、その後に仮焼成する。仮焼成に要する温度としては、700~1200℃の範囲内であることが好ましく、仮焼成に要する時間としては、0.5~5時間の範囲内であることが好ましい。
【0078】
なお、得られた粉砕物を、加圧成型機を使用しないで粉砕してもよく、粉砕後に当該粉砕物に水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化し、その後に仮焼成してもよい。
【0079】
仮焼成した後、さらに、ボールミル又は振動ミル等で粉砕する。このとき、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕してもよい。
【0080】
その後、水及びポリビニルアルコール(PVA)等のバインダー等を添加し、必要に応じ分散剤等を添加して粘度を調整し、造粒し、本焼成を行う。本焼成の温度は、1000~1500℃の範囲内が好ましく、本焼成の時間は、1~24時間の範囲内が好ましい。
【0081】
上記のボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、原料を効果的かつ均一に分散させるために、使用するメディアに1cm以下の粒径を有する微細なビーズを使用することが好ましい。また、使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。
【0082】
このようにして得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級法、メッシュ濾過法、沈降法などを用いて所望の粒径に粒度調整する。
【0083】
その後、必要に応じて、粉砕し、分級された焼成物の表面を低温加熱することで酸化被膜処理を施し、電気抵抗調整を行うこともできる。また、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行ってもよく、分級の後さらに磁力選鉱により低磁力品を分別してもよい。
【0084】
(1.1.3)被覆用樹脂
(種類)
本発明に係る芯材粒子の表面は、被覆用樹脂で被覆されていることが好ましく、当該被覆用樹脂は、(メタ)アクリレートに由来する構造を有することが帯電の環境差を低減する観点から好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味するものとする。
【0085】
(メタ)アクリレートに由来する構造を有する化合物としては、メタクリル酸エステル化合物、アクリル酸エステル化合物、及び脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物などが挙げられる。
【0086】
上記の中でも、特に、脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物は疎水性が高く、高温高湿環境下においてキャリア粒子への水分吸着量が低減され、帯電量の低下が抑制されるため、より好ましい。
【0087】
メタクリル酸エステル化合物としては、具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
【0088】
アクリル酸エステル化合物としては、具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0089】
脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、具体的にはアクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルフェニル、アクリル酸シクロドデシル、アクリル酸アダマンチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロオクチルなどが挙げられる。これらの中では、帯電量の環境安定性等の観点から、炭素数5~8のシクロアルキル基を有するものが好ましく、メタクリル酸シクロヘキシルがより好ましい。
【0090】
被覆用樹脂を構成するモノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の他のモノマーを用いてもよい。他のモノマーの例としては、例えばスチレン化合物、(メタ)アクリル酸、オレフィン化合物、ハロゲン化ビニル化合物、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルケトン化合物、N-ビニル化合物、ビニル化合物、及びアクリル酸又はメタクリル酸誘導体が挙げられる。
【0091】
スチレン化合物としては、具体的にはスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-クロロスチレン、3,4-ジクロロスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。
【0092】
(メタ)アクリル酸としては、具体的にはメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0093】
オレフィン化合物としては、具体的にはエチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。
【0094】
ハロゲン化ビニル化合物としては、具体的には塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0095】
ビニルエステル化合物としては、具体的にはプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0096】
ビニルエーテル化合物としては、具体的にはビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等が挙げられる。
【0097】
ビニルケトン化合物としては、具体的にはビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等が挙げられる。
【0098】
N-ビニル化合物としては、具体的にはN-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0099】
ビニル化合物としては、具体的にはビニルナフタレン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0100】
アクリル酸又はメタクリル酸誘導体としては、具体的にはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0101】
これら他のモノマーは、単独でも又は二種以上組み合わせても使用することができる。これら他のモノマーの中でも、帯電量の環境安定性等の観点から、スチレン、メタクリル酸が好ましい。
【0102】
被覆用樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位と他のモノマー由来の構成単位との比は、10:90~100:0であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましい。
【0103】
(重量平均分子量)
被覆用樹脂、すなわち上記モノマーを重合した重合体の重量平均分子量は、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲内であれば特に制限されるものではない。上記の重量平均分子量は、20~80万の範囲内であることが好ましく、30~70万の範囲内であることがより好ましい。上記の重量平均分子量が20万以上であれば、芯材粒子の表面に形成される樹脂被覆層の減耗が促進され過ぎず、キャリア粒子の付着を引き起こし難い点で優れている。上記の重量平均分子量が80万以下であれば、トナー粒子からキャリア粒子の表面への外添剤の移行による帯電量低下を引き起こさず、良好な帯電量を長期間保持できる。
【0104】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、より具体的には、下記の方法が挙げられる。
【0105】
装置「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn SuperHZ-L+TSKgel SuperHZM-M3連」(東ソー株式会社製)を用いる。
【0106】
カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.35mL/minで流す。
【0107】
室温において、測定試料をローラー式撹拌機にて10分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。
【0108】
次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得る。この試料溶液10μLを、上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出する。
【0109】
単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、測定試料の有する重量平均分子量分布を算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
【0110】
(樹脂被覆層の厚さ)
樹脂被覆層の厚さは、0.05~4μmの範囲内であることが好ましく、0.2~3μmの範囲内であることがより好ましい。樹脂被覆層の厚さが上記範囲内であれば、キャリア粒子の帯電性及び耐久性を向上させることができる。なお、樹脂被覆層の厚さは、以下の方法により求めることができる。
【0111】
集束イオンビーム装置「SMI2050」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)にて、キャリア粒子の中心を通る面でキャリア粒子を切断して測定試料を作製する。
【0112】
その測定試料の断面を透過型電子顕微鏡「JEM-2010F」(日本電子株式会社製)にて5000倍の視野で観察する。その後、その視野における最大厚さとなる部分と最小厚さとなる部分との平均値を樹脂被覆層の厚さとする。なお測定数は5視野とする。
【0113】
(抵抗調整剤)
前記被覆用樹脂が、抵抗調整剤としてカーボンブラック、酸化マグネシウム及び二酸化チタンのうちの、少なくともいずれか一種を含有することが、被覆用樹脂で被覆されたキャリアの静的抵抗値を調整する観点から好ましい。上記の中でも、樹脂中への分散しやすさから、特にカーボンブラックが好ましい。
【0114】
(露出面積比率)
キャリア粒子が有する電荷はキャリア表面に露出した芯材粒子を通じても放出される。芯材粒子の露出面積比率が10%以上であるとキャリア粒子から適度に電荷が放出されキャリア粒子の過剰帯電を抑制できる。また、露出面積比率が18%以下であると、キャリア粒子同士で摩擦が生じる際に、当該キャリア粒子を被覆する樹脂が剥がれにくく、当該キャリア粒子が劣化しにくい。
【0115】
上記のようなことから、前記キャリア粒子の表面における前記芯材粒子の露出面積比率が、当該芯材粒子の表面積に対して10.0~18.0%の範囲内であることが、キャリア粒子の過剰帯電を抑制し、当該キャリア粒子の劣化を抑制する観点から好ましい。
【0116】
キャリア粒子の表面における芯材粒子の露出面積比率は、例えば以下の方法によって測定することができる。
【0117】
測定装置として、「K-Alpha」(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いる。XPS測定(X線光電子分光測定)により、被覆層を構成する主たる元素(通常は炭素)と、芯材粒子を構成する主たる元素(通常は鉄)とについて測定する。
【0118】
このとき、X線源としては、AlモノクロマチックX線を用いて加速電圧を7kV、エミッション電流を6mVに設定する。
【0119】
なお、芯材粒子が酸化鉄系である場合、炭素についてはC1sスペクトルを測定する。また、鉄についてはFe2p3/2スペクトルを測定する。また、酸素についてはO1sスペクトルを測定する。
【0120】
炭素、酸素、及び鉄の元素個数(それぞれ、「AC」、「AO」、及び「AFe」と表す)を求めて、得られた炭素、酸素、鉄の元素個数比率より下記式に基づいて、芯材粒子単体の鉄量率、及び芯材粒子を被覆層で被覆した後のキャリアの鉄量率を以下の式(2)に代入することによって求める。
【0121】
(式2)
鉄量率[atomic%]=AFe/(AC+AO+AFe)×100
【0122】
芯材粒子単体の鉄量率、及び芯材粒子を被覆層で被覆した後のキャリアの鉄量率を以下の式(3)に代入することによって被覆率を求める。
【0123】
(式3)
被覆率[%]={1-(キャリアの鉄量率)/(芯材粒子単体の鉄量率)}×100
【0124】
なお、芯材粒子として、酸化鉄系以外の材料を用いる場合には、酸素の他に芯材粒子を構成する金属元素のスペクトルを測定し、上述の式に準じて同様の計算を行えば被覆率が求められる。
【0125】
(被覆用樹脂の製造方法)
被覆用樹脂の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の重合法を適宜利用できる。例えば粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、溶液重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、その他の公知の方法等が挙げられる。特に、粒子径の制御の観点から、乳化重合法で合成することが好ましい。
【0126】
乳化重合法で用いる上記モノマー以外の重合開始剤、界面活性剤、さらに必要に応じて用いる連鎖移動剤等に関しては、特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。また、重合温度等の重合条件に関しても特に制限されず、従来公知の重合条件を適宜利用して調整することができる。
【0127】
具体的には、後述する実施例に記載の各種添加剤を用いて乳化重合するのが望ましい。すなわち、アニオン性界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム、溶媒として水(イオン交換水)、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS)をそれぞれ用いて上記モノマーを乳化重合するのが粒径制御の観点から望ましい。
【0128】
(1.2)静電荷像現像用トナー
(1.2.1)トナー母体粒子
本発明に係る二成分現像剤に含まれる静電荷像現像用トナーを構成するトナー母体粒子は、例えば結着樹脂を含有し、必要に応じて着色剤を含有する。また、このトナー母体粒子には、必要に応じて、さらに離型剤及び荷電制御剤などの他の成分を含有することもできる。
【0129】
本発明において「トナー粒子」とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをいい、トナー粒子の集合体を「トナー」という。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。また、以下の説明においては、トナー母体粒子とトナー粒子とを特に区別する必要がない場合、単に「トナー粒子」ともいう。以下、本発明に係るトナー母体粒子の各構成材料の詳細について説明する。
【0130】
(結着樹脂)
トナー母体粒子を構成する結着樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。このような結着樹脂としては、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられているものを特に制限なく用いることができる。
【0131】
例えばスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、オレフィン系樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、これらの樹脂のうち二種以上が化学的に結合した複合樹脂などが挙げられる。
【0132】
中でも、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂及びポリエステルであることが、溶融特性が低粘度で高いシャープメルト性を有することから好ましい。これらは、単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0133】
特に、結晶性ポリエステルを含むことが、トナー粒子を溶けやすくし、定着時の省エネルギー化を達成する観点から好ましい。
【0134】
なお、本明細書において、「結晶性」とは、示差走査熱量分析において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを意味する。この際、明確な吸熱ピークとは、具体的には、実施例に記載の示差走査熱量分析(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0135】
結晶性ポリエステルは、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される部位を有する。なお、結晶性ポリエステルがそれ以外の樹脂と化学的に結合した複合樹脂の形態であってもよい。
【0136】
多価カルボン酸成分としては、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、ドデカン二酸(1,12-ドデカンジカルボン酸)、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0137】
また、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0138】
さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるが、これらに制限されない。
【0139】
これらは一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0140】
また、三価以上のカルボン酸としては、例えば1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0141】
これらは一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0142】
さらに、多価カルボン酸成分の他に、二重結合を有するジカルボン酸成分を使用してもよい。
【0143】
二重結合を有するジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
また、これらの低級エステル、酸無水物等も挙げられる。
【0145】
一方、多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールが好ましく、主鎖部分の炭素数が47~20の範囲内である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。
【0146】
前記脂肪族ジオールが直鎖型の場合、ポリエステルの結晶性が維持され、溶融温度の降下が抑えられることから、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び低温定着性に優れる。
【0147】
また、炭素数が4~20の範囲内であると、多価カルボン酸成分と縮重合させる際の融点が低く抑えられ、かつ低温定着が実現される一方、実用上、材料を入手しやすい。
【0148】
主鎖部分の前記炭素数としては4~14の範囲内であることがより好ましい。
【0149】
結晶性ポリエステルの合成に好適に用いられる脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
これらは一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0151】
これらのうち、入手容易性を考慮すると、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
【0152】
三価以上のアルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0153】
これらは一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0154】
結晶性ポリエステルは、常法に従い、ジブチル錫オキシド、又はテトラブトキシチタネート等の重合触媒存在下で、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との重縮合反応を行って合成すればよい。
【0155】
重縮合反応における反応温度は、180~230℃の範囲内で行うことが好ましい。
【0156】
必要に応じて反応系内を減圧にし、重縮合で発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
【0157】
モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。
【0158】
重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。
【0159】
共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0160】
結晶性ポリエステルの重量平均分子量は、良好な低温定着性と画像保存性との観点から、好ましくは5000~50000の範囲内である。
【0161】
なお、本明細書において、結晶性ポリエステルの重量平均分子量は、GPCによって測定される値であり、キャリアの被覆用樹脂と同様の測定条件で測定することができる。
【0162】
結晶性ポリエステル以外の結着樹脂(以下、「他の樹脂」とも称する)を得るための重合性モノマーとしては、例えばスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレンモノマーが挙げられる。
【0163】
また、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-ステアリルなどのアクリル酸エステルモノマーが挙げられる。
【0164】
また、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステルモノマーが挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、及びフマル酸などのカルボン酸モノマーなどが挙げられる。これら重合性モノマーは、単独でも又は二種以上を組み合わせても用いることができる。
【0165】
これら他の樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法など公知の方法により製造することができる。中でも、粒子径の制御の観点から、乳化重合法が好ましい。乳化重合法により他の樹脂を製造する場合、例えばラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤等を用いる。
【0166】
ラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、4,4′-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩等の水溶性アゾ化合物、及び過酸化水素が挙げられる。
【0167】
上記のラジカル重合開始剤は、所望に応じてレドックス重合開始剤として用いることもでき、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0168】
上記の組み合わせとしては、例えば過硫酸塩とメタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、過酸化水素とアスコルビン酸等の組み合わせが挙げられる。
【0169】
連鎖移動剤としては、例えばn-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカブタン、n-オクチルメルカプタン等のチオール化合物が挙げられる。また、テトラプロモメタン、トリブロモクロロメタン等のハロゲン化メタン等が挙げられる。
【0170】
他の樹脂の重量平均分子量は、低温定着性と画像保存性との観点から10000~50000の範囲内であることが好ましい。
【0171】
なお、他の樹脂の重量平均分子量はGPCによって測定される値であり、被覆用樹脂と同様の測定条件で測定することができる。
【0172】
(外添剤)
本発明に係るトナー母体粒子の表面には、流動性や帯電性を制御する目的で、外添剤を付着させる。外添剤としては、従来公知の金属酸化物粒子を使用することができる。
【0173】
例えばシリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、及び酸化ホウ素粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸カルシウム粒子、チタン酸マグネシウム粒子等が挙げられる。
【0174】
これらは、単独でも又は二種以上を併用してもよい。
【0175】
特にシリカ粒子に関して、ゾルゲル法により作製されたシリカ粒子を用いることがより好ましい。ゾルゲル法で作製されたシリカ粒子は、粒子径分布が狭いという特徴を有しているため、付着強度のバラツキを抑制する点で好ましい。
【0176】
ゾルゲル法により形成されたシリカ粒子の個数平均一次粒子径は、55~150nmの範囲内であることが好ましい。個数平均一次粒子径がこのような範囲内にあるシリカ粒子は、他の外添剤に比べて粒子径が大きいのでスペーサーとしての役割を有する。そして、その他の粒子径の小さい外添剤が現像機中で攪拌混合されることによって、トナー母体粒子中に埋め込まれるのを防止する効果を有する。また、トナー母体粒子同士が融着するのを防止する効果を有している。
【0177】
ゾルゲル法により作製されたシリカ粒子以外の金属酸化物粒子の個数平均一次粒子径は、10~70nmの範囲内であることが好ましく、10~40nmの範囲内であることがより好ましい。
【0178】
なお、金属酸化物粒子の個数平均一次粒子径は、例えば走査型電子顕微鏡で撮影した画像から求める方法により測定することができる。
【0179】
また、スチレン、メタクリル酸メチルなどの単独重合体やこれらの共重合体等の有機微粒子を外添剤として使用してもよいし、前記重合体と無機微粒子を複合させた有機無機複合微粒子を用いても良い。
【0180】
外添剤として用いられる金属酸化物粒子は、カップリング剤等の公知の表面処理剤により表面の疎水化処理が施されているものが好ましい。
【0181】
上記表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0182】
また、表面処理剤として、シリコーンオイルを用いることもできる。シリコーンオイルの具体例としては、例えばオルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状化合物や、直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。
【0183】
また、側鎖、片末端、両末端、側鎖片末端、側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルを用いてもよい。
【0184】
上記の変性基としては、例えばアルコキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、高級脂肪酸変性、フェノール基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基などが挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0185】
また、アミノ/アルコキシ変性など数種の変性基を有するシリコーンオイルであってもよい。また、ジメチルシリコーンオイルと上記の変性シリコーンオイル、さらには他の表面処理剤とを用いて混合処理又は併用処理しても構わない。
【0186】
併用する処理剤としては、例えばシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物、ロジン酸等が挙げられる。
【0187】
クリーニング性や転写性をさらに向上させるために外添剤として滑剤を使用することも可能である。
【0188】
滑剤の具体例としては、例えばステアリン酸亜鉛やステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩、窒化ホウ素などが挙げられる。これら外添剤の添加量は、トナー粒子全体に対して0.1~10質量%の範囲内が好ましく、1~5質量%の範囲内がより好ましい。
【0189】
(離型剤)
トナー粒子には、離型剤が含有されていてもよい。
【0190】
上記の離型剤としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステルワックス、サゾールワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ホホバ油ワックス、及び蜜ろうワックス等、公知のものを挙げることができる。
【0191】
トナー粒子中における離型剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して1~30質量部の範囲内であることが好ましく、5~20質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0192】
(荷電制御剤)
トナー粒子には、荷電制御剤が含有されていてもよい。
【0193】
上記の荷電制御剤としては、例えばサリチル酸誘導体の亜鉛やアルミニウムによる金属錯体(サリチル酸金属錯体)、カリックスアレーン化合物、有機ホウ素化合物、及び含フッ素四級アンモニウム塩化合物などを挙げることができる。
【0194】
トナー粒子中における荷電制御剤の含有割合としては、結着樹脂100質量部に対して0.1~5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0195】
(着色剤)
本発明に係るトナー粒子は、カラートナーとするために、着色剤をさらに含んでもよい。使用できる着色剤としては、公知の無機又は有機着色剤が挙げられる。以下、具体的な着色剤を示す。
【0196】
黒色の着色剤としては、例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックや、マグネタイト、フェライトなどの磁性粉が挙げられる。
【0197】
マゼンタ又はレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同48:2、同48:3、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238、同269等が挙げられる。
【0198】
オレンジ又はイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180、同185等が挙げられる。
【0199】
グリーン又はシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0200】
また、染料としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同44、同56、同61、同77、同79、同80、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等が挙げられる。
【0201】
これらの着色剤は、必要に応じて単独でも又は二種以上を併用することも可能である。
【0202】
着色剤を用いる場合の添加量は、トナー全体に対して1~30質量%の範囲内が好ましく、2~20質量%の範囲内がより好ましい。
【0203】
着色剤としては、表面改質されたものを使用することもできる。
【0204】
その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などを好ましく用いることができる。
【0205】
(その他)
〔体積平均粒径〕
本発明に係るトナー粒子の体積平均粒径は、3~10μmの範囲内である。体積平均粒径が3μm未満の場合、トナー粒子の流動性が低下し、トナー粒子の帯電量の立ち上がりが低下する。一方、10μmを超える場合、画質の低下が発生する。トナー粒子の体積平均粒径は、好ましくは3.5~6.5μmの範囲内である。
【0206】
トナー粒子の体積平均粒径は、具体的には、下記の方法により測定した体積基準のメジアン径(D50)を採用するものとする。
【0207】
トナー粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
【0208】
測定手順としては、0.02gのトナー粒子を、20mLの界面活性剤溶液で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を作製する。
【0209】
なお、上記の界面活性剤溶液は、トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液を用いることができる。
【0210】
このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTON II(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5~10%の範囲内になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを25000個に設定して測定する。
【0211】
なお、マルチサイザー3のアパーチャー径は100μmのものを使用する。
【0212】
測定範囲1~30μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(D50)とする。
【0213】
トナー粒子の体積平均粒径は、上述の製造方法における凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、又は融着時間等を制御することにより制御することができる。
【0214】
〔平均円形度〕
本発明に係るトナー粒子の平均円形度は、0.98以下であることが好ましく、0.930~0.975以下であることがより好ましい。
【0215】
このような範囲の平均円形度であれば、より帯電しやすいトナー粒子となる。
【0216】
なお、平均円形度は、例えばフロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて測定することができ、具体的には、以下の方法で測定することができる。
【0217】
トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA-3000」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。円形度は下記式(5)で算出される。
【0218】
式(5) 円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0219】
平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
【0220】
トナー粒子の平均円形度は、上述の製造方法における熟成処理時の温度、時間等を制御することにより制御することができる。
【0221】
(1.2.2)トナーの製造方法
本発明に係るトナー母体粒子、すなわち、外添剤を添加する前の段階の粒子は、公知のトナー製造方法により製造が可能である。
【0222】
すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナー母体粒子を作製するいわゆる粉砕法や、重合性モノマーを重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法によるトナー製造方法が挙げられる。
【0223】
トナー母体粒子に外添剤を添加して混合することで、トナー粒子が製造される。
【0224】
外添剤の混合装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用することができる。
【0225】
例えばヘンシェルミキサーを用いる場合は、撹拌羽根の先端の周速を好ましくは30~80m/sの範囲内とし、20~50℃の範囲内で10~30分程度攪拌混合する。
【0226】
2.感光体
「感光体」は、電子写真方式の画像形成方法において潜像又は顕像をその表面に担持する物体である。本発明に係る感光体は、例えば支持体、感光層、保護層及び他の層で構成される。図1は本発明に係る電子写真感光体の層構成の一例である。
【0227】
画像形成においては、まず感光体の表面を帯電させ支持体表面との間に電位差を生じさせる。次に露光装置によって感光層から電荷を発生させ、この電荷が感光体表面の電荷を打ち消すことで、感光体表面に静電潜像が形成される。続いて、現像剤担持体に現像バイアス電圧を印加することで、現像剤担持体から感光体表面の潜像部分にトナーが静電的に引き付けられ、現像される。
【0228】
ここで、感光体の表面に一定の大きさ以上の凸部が存在すると、当該凸部に電界が集中しやすくなることから、感光体最表面を帯電させる際に支持体表面と感光体最表面の間で電荷のリークが発生する。
【0229】
感光体の表面の電荷がリークした箇所は電位の絶対値が低くなり、それにより当該電荷がリークした箇所にトナーが引きつけられやすくなる。
【0230】
トナーが引きつけられやすくなった箇所は当該トナーが記録媒体に転写・定着された際に「黒ポチ」と呼ばれる画像欠陥となる。
【0231】
本発明に係る感光体の表面の電荷のリークを抑制するためには、感光体最表面と支持体の間の電位差の絶対値を小さく設定することが有効である。
【0232】
ただし、前記電位差の絶対値を小さく設定すると、感光体最表面において非画像部にもトナーが引きつけられてしまい、いわゆる画像かぶりが発生してしまう。
【0233】
ここで、「非画像部」とは、本来画像を形成する予定のない記録媒体の箇所をいう。
【0234】
また、「画像かぶり」とは、非画像部にトナー画像が形成されることをいう。
【0235】
このような画像かぶりを防ぐためには、現像の際に印加する電圧の絶対値を小さく設定することが有効である。しかし、この場合感光体からトナーが離れにくくなり、特にトナー帯電量が高くなりやすい低温低湿環境においては画像濃度が低下する場合があった。
【0236】
しかしながら、静的抵抗値が10~1012Ωcmの範囲内である前述のキャリアを二成分現像剤に用いることによって、トナーの帯電量が上昇することを防ぎ、上記のような画像濃度の低下を抑制することができる。
【0237】
(2.1)支持体
本発明に係る感光体の支持体は、導電性支持体であり、アルミニウム合金製である。
【0238】
(ケイ素含有量)
上記のアルミニウム合金中のケイ素含有量は、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内である。
【0239】
上記のアルミニウム合金にはケイ素以外に他の元素を含有させてもよく、当該元素としては、例えば銅、クロム、ニッケル及び亜鉛等が挙げられる。
【0240】
アルミニウム合金中のケイ素の含有量が0.6質量%以下であると、加工性が落ちるため感光体の表面が不均一になってしまう。また、アルミニウム合金中のケイ素含有量が12.6質量超であると、ケイ素とアルミニウムの共晶による粗大結晶(凸部)が発生しやすく、黒ポチなどの画像不良の原因となりやすい。
【0241】
感光体の支持体の表面の加工性の観点からは、アルミニウム合金中のケイ素含有量が0.8質量%超であることがより好ましい。
【0242】
〔測定方法〕
アルミニウム合金中のケイ素含有量は、当該ケイ素の元素量を測定することによって得られ、当該ケイ素の元素量は、例えば高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma)によって測定することができる。
【0243】
なお、「高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法」とは、金属を酸やアルカリ等に溶解した溶液試料をArプラズマ中に噴霧し、励起発光した光をそれぞれの波長に分光し、その光強度から元素の種類と含有量を定量する方法である。
【0244】
同法は、微量域から高濃度まで光強度と含有量が直線関係にあり、それぞれ元素を同時に分析することができる。
【0245】
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法の測定装置としては、例えば「ULTIMA2000(堀場製作所製)」を用いることができる。
【0246】
この他、アルゴン雰囲気放電発光スタンド付発光分光分析装置や大気放電発光スタンド付発光分光分析装置、グロー放電質量分析装置(GD-MS)、蛍光X線分析装置(XRF)などを用いることもできる。
【0247】
なお、本発明に係る感光体の支持体上に樹脂などの塗布層が存在する場合、溶剤などで樹脂などの塗布層を適宜除去した後で測定を行う。
【0248】
(2.2)感光層
感光層は、後述する露光手段により、所期の画像の静電潜像を感光体の表面に形成するための層である。また、感光層は、単層でもよいし、積層された複数の層で構成されていてもよい。感光層の好ましい例としては、電荷輸送物質と、電荷発生物質とを含有する単層、及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層との積層物等が挙げられる。
【0249】
(2.3)保護層
保護層は、感光体表面の機械的強度を向上させ、耐傷性や耐摩耗性を向上させるための層である。当該保護層の好ましい例としては、重合性モノマーを含む組成物の重合硬化物を含む層が挙げられる。
【0250】
(2.4)その他の層
感光体は、上記の導電性支持体、感光層及び保護層以外のその他の層をさらに含んでいてもよい。
【0251】
(2.4.1)中間層
その他の層の好ましい例としては、中間層等が挙げられる。
【0252】
当該中間層は、例えば、上記導電性支持体と上記感光層との間に配置される、バリア機能と接着機能とを有する層である。
【0253】
(2.4.2)最外層
本明細書において、感光体の最外層とは、トナーと接触する側の最外部に配置される層を表す。最外層は、特に制限されないが、上記の保護層であることが好ましい。
【0254】
本発明に係る感光体において、最外層は、無機粒子を含むことが好ましく、無機粒子は表面処理剤で表面処理されたものであることがより好ましい。表面処理剤としてはシランカップリング剤や電子輸送性化合物、重合性の官能基を有する化合物が挙げられる。
【0255】
(無機粒子)
無機粒子としては、特に制限されないが、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム、スズがドープされた酸化インジウム、アンチモンがドープされた酸化スズ及び酸化ジルコニウム、銅アルミ複合酸化物(CuAlO)が含まれる。
【0256】
無機粒子は、錫、亜鉛、チタン、ケイ素及び銅の少なくとも一つを含むことが好ましく、錫、亜鉛、チタン及び銅の少なくとも一つを含むことがより好ましく、錫、亜鉛及び銅の少なくとも一つを含むことが特に好ましい。
【0257】
無機粒子の数平均一次粒子径は、特に制限されないが、好ましくは5~300nmの範囲内であり、より好ましくは10~200nmの範囲内である。
【0258】
なお、無機粒子の数平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察した粒子像の長径の平均値から算出することができる。
【0259】
(結着樹脂)
最外層(保護層)は、結着樹脂を含んでもよい。
【0260】
最外層用の結着樹脂は、公知の結着樹脂を一種単独で、又は二種以上の樹脂を組み合わせて使用することができる。
【0261】
(2.5)感光体の製造方法
本発明に係る感光体は、公知の電子写真感光体の製造方法によって製造することができる。なお、アルミニウム合金製の支持体上に形成された感光層の表面に、無機粒子を含む最外層形成用塗布液を塗布する工程と、塗布された最外層形成用塗布液に活性エネルギー線を照射して、又は塗布された最外層形成用塗布液を加熱して、最外層形成用組成物の硬化物を得る工程と、を含む方法によって製造することが好ましい。
【0262】
(その他)
最外層の厚さは、1~10μmの範囲内であることが好ましく、1.5~5μmの範囲内であることがより好ましい。
【0263】
3.現像剤担持体
本発明に係る現像剤担持体における現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量は、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内である。
【0264】
ここで、現像剤担持体の表面に一定の大きさ以上の凸部が存在すると、記録媒体へのトナー画像形成時に当該凸部と感光体の表面との間で電荷のリークが発生する。
【0265】
こうした電荷のリークが発生することにより感光体表面の電位の絶対値が部分的に小さくなり、それにより当該電荷がリークした箇所にトナーが引きつけられやすくなる。
【0266】
トナーが引きつけられやすくなった箇所は、当該トナーが記録媒体に転写・定着された際に「黒ポチ」と呼ばれる画像欠陥となる。
【0267】
本発明に係る現像剤担持体の表面の電荷のリークを抑制するためには現像バイアス電圧印加の際の電位の絶対値を小さく設定する必要がある。
【0268】
ただし、現像バイアス電圧印加の際の電位の絶対値を小さく設定すると、感光体からトナーが離れにくくなり、これにより、特にトナー帯電量が高くなりやすい低温低湿環境においては画像濃度が低下する場合があった。
【0269】
しかしながら、静的抵抗値が10~1012Ωcmの範囲内である前述のキャリアを二成分現像剤に用いることによって、トナーの帯電量が上昇することを防ぎ、上記のような画像濃度の低下を抑制することができる。
【0270】
(現像剤担持体の構成)
本発明に係る現像剤担持体は、例えば現像スリーブ、フランジ、シャフト及びマグネットローラーで構成される。
【0271】
なお、上記の「現像スリーブ」とは、適度に帯電させた現像剤を担持し、かつ静電潜像が形成された感光体に当該現像剤を供給する機能を有する手段であって、例えば電子写真画像形成装置が備える現像装置が有する現像剤担持体の一部である。
【0272】
また、上記の現像スリーブは、特開2003-91084のように単純な円筒型ではなく断面に蓮根状の孔のある管のようなもの、については含まないものとする。
【0273】
図2は、現像剤担持体の外観図である。
【0274】
例えば図2における現像スリーブ11は、回転自在で筒状であり、現像剤を表面に担持して搬送する役割を担う。
【0275】
なお、現像スリーブ11の表面は、図2のような構成に限定されず、例えばその表面に溝等を形成してもよい。
【0276】
また、図3及び図4は、本発明の現像剤担持体の軸方向の断面図の一例であり、それぞれ形状の異なるマグネットローラー及びシャフトの構成を備えている。
【0277】
本発明に係る現像剤担持体は、マグネットローラーのようなマグネット部をその構成の一部として含まなくてもよく、図3及び図4の構成に限定されるものではない。
【0278】
なお、図3は、シャフトがマグネットローラーを貫通しない構成の現像剤担持体の断面図である。
【0279】
図3に示すように、現像剤担持体10は、マグネットローラー12に形成された穴にシャフトを挿入することによってシャフト16を固定し、マグネットローラー12の外周に非磁性体の現像スリーブ11を備えている。
【0280】
また、図4は、シャフトがマグネットローラーを貫通する構成の現像剤担持体の断面図である。
【0281】
図4に示すように、現像剤担持体10は、シャフト16の周囲にマグネットローラー12を固定し、マグネットローラー12の外周に非磁性体の現像スリーブ11を備えている。
【0282】
現像スリーブ11はマグネットローラー12の外側に備えられたベアリング等の軸受け部17を介してマグネットローラー12とは所定の間隙を持って連結されている。
【0283】
現像スリーブ11の軸方向の軸受け部17の外側には、反駆動側フランジ18、駆動側フランジ19が現像スリーブ11に対して連結されている。
【0284】
なお、反駆動側フランジ18と駆動側フランジ19は逆であってもよく、これに限定されることはない。
【0285】
反駆動側フランジ18、駆動側フランジ19は、現像容器に対して保持されつつ、現像スリーブ11と共に回転駆動される。
【0286】
(ケイ素含有量)
本発明に係る現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量は、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内である。アルミニウム合金中のケイ素の含有量が0.6質量%以下であると、加工性が落ちるため、現像剤担持体の表面が不均一となり、画像にムラが生じてしまう。また、アルミニウム合金中のケイ素含有量が12.6質量超であると、強度が増す一方でケイ素とアルミニウムの共晶による粗大結晶(凸部)が発生しやすい。したがって、感光体との間で電荷のリークが起こりやすくなり、黒ポチが発生してしまう。
【0287】
本発明に係る現像スリーブ表面の加工性の観点からは、アルミニウム合金中のケイ素含有量が0.8質量%超であることがより好ましい。
【0288】
〔測定方法〕
アルミニウム合金中のケイ素含有量の測定方法としては、前述の感光体の支持体におけるアルミニウム合金中のケイ素含有量の測定方法と同様である。
【0289】
(表面)
現像剤担持体が備える現像スリーブの表面に適切な粗さを付与する観点からは、サンドブラスト処理が好ましく、これにより現像スリーブの外周表面の粗さを適切に保つことができる。
【0290】
4.画像形成方法
本発明の画像形成方法は、二成分現像剤と、アルミニウム合金製の支持体を用いた感光体又はアルミニウム合金製の現像スリーブを用いた現像剤担持体のうち、少なくとも一方を備えた画像形成装置とを用いる画像形成方法であって、前記二成分現像剤に含まれるキャリアの静的抵抗値が、10~1012Ω・cmの範囲内であり、かつ、少なくとも前記感光体の支持体又は前記現像剤担持体の現像スリーブを形成するアルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内であることを特徴とし、本発明の画像形成システムに好適に用いることができる。
【0291】
5.画像形成装置
本発明の画像形成方法には、例えば以下のような画像形成装置を用いることができ、当該画像形成装置は帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を具備する。また、上記の画像形成装置は、前述の感光体及び現像剤担持体のうち、いずれか一方または両方を具備する。
【0292】
図5は、本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。図5に示す画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110Bkと、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。
【0293】
画像形成装置100の本体の上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0294】
画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110Bkは、鉛直方向に並んで配置されている。
【0295】
画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110Bkは、回転されるドラム状の感光体111Y、111M、111C、及び111Bkと、この外周面領域において感光体の回転方向に沿って順次配置された、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、及び115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、及び117Bkと、一次転写ローラー(一次転写手段)133Y、133M、133C、及び133Bkと、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkとを有する。
【0296】
上記の感光体は、アルミニウム合金製の支持体を用いており、アルミニウム合金中のケイ素含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内である。
【0297】
感光体111Y、111M、111C、及び111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)のトナー画像がそれぞれ形成される構成とされている。
【0298】
以下、図を用いて説明する際は、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
【0299】
<帯電手段>
帯電手段は、感光体の表面を一様に帯電させる手段である。
【0300】
帯電手段には、帯電ローラー、帯電ブラシ及び帯電ブレードのような接触方式と、コロナ帯電器(コロトロン帯電器、ストロコトン帯電器など)のような非接触方式がある。接触方式には、帯電プロセスに伴う有害なオゾンガス発生量が少ないという利点がある。非接触方式には、接触方式と比べて近接放電でないことから、フィルミングが生じにくいという利点がある。
【0301】
本発明の画像形成システムが備える帯電手段は、接触方式でも非接触方式でもよい。
【0302】
前記帯電手段が、近接帯電ローラー及び接触帯電ローラーであることが、帯電プロセスに伴う有害なオゾンガス発生量が少なく、高画質化及び装置の小型化に有利である観点から好ましい。
【0303】
図5に示す帯電手段113Yは、接触方式である。この例の帯電手段113Yは、感光体111Yの表面に接触して配設された帯電ローラーと、当該帯電ローラーに電圧を印加する電源とからなる。
【0304】
<露光手段>
露光手段は、帯電手段により一様な電位を与えられた感光体上に、画像信号に基づいて露光を行い、画像に対応する静電潜像を形成する手段である。
【0305】
露光手段としては、例えば感光体の軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子からなるもの、レーザー光学系のものが挙げられる。
【0306】
<現像手段>
現像手段(現像機)は、感光体の表面に現像剤を供給して、感光体の表面に形成された静電潜像を現像し、トナー画像を形成する手段である。
【0307】
なお、上記の現像剤としては、前述のトナー及びキャリアを含む現像剤を用いる。
また、上記キャリアの静的抵抗値が、10Ω・cm以上、1012Ω・cm未満の範囲内である。
【0308】
前記現像手段には、前記現像剤に滑剤を供給する滑剤供給手段が具備されていてもよく、前記現像手段にて供給される現像剤が、滑剤を含有することが、耐摩耗性向上の観点から好ましい。
【0309】
前記滑剤が、金属石鹸であることが、耐摩耗性向上の観点からより好ましい。
【0310】
図5に示す現像手段117Yは、具体的には、マグネットローラーを内蔵し現像剤を保持して回転する現像剤担持体118Y、及び感光体111Yと現像剤担持体118Yとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置(図示しない)により構成されている。
【0311】
なお、上記の現像剤担持体は、前述のように現像スリーブ、フランジ、シャフト及びマグネットローラーで構成される。
【0312】
また、上記現像スリーブが有するアルミニウム合金のケイ素の含有量が、0.6質量%超、12.6質量%以下の範囲内である。
【0313】
現像剤担持体118Yの回転によって、感光体111Yに現像剤を搬送する。そして、現像剤担持体118Y上のトナー薄層が、感光体111Yに当接して感光体111Y上の静電潜像を現像する。
【0314】
現像剤担持体118Yは、電圧印加装置に接続されている。この電圧印加装置により、現像剤担持体118Yには直流及び/又は交流バイアス電圧が印加される。現像剤担持体118Yに印加する電圧を制御することで、現像バイアスが所望の値に調整できるように構成されている。
【0315】
現像剤担持体118Yと感光体111Yにより担持された静電潜像の電位との間の電位差(現像電位差)によって、現像剤担持体118Yと感光体111Yが相互に対向している現像部に電界が形成される。
【0316】
現像剤担持体118Yの回転により現像部に搬送された現像剤中のトナーは、電界から受ける力の作用によって移動し、感光体111Y上の静電潜像に吸着する。
【0317】
感光体111Yに担持されていた静電潜像が顕像化されることによって、感光体111Yの表面には、静電潜像の形状に対応したトナー画像が形成される。
【0318】
〔現像電位差〕
「現像電位差」とは、画像部の電位(Vi)と現像電位(Vdc)の差である。
現像電位差の絶対値が、200~600Vの範囲内であることが、画像濃度確保及びかぶり抑制の両立の観点から好ましく、300~400Vの範囲内であることがより好ましい。
【0319】
<転写手段>
転写手段とは、トナー像を記録媒体に転写する手段である。転写手段としては、例えばコロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラーなどを用いることができる。中間転写体を用いる場合は、一次転写ローラーが転写手段となる。
【0320】
図5に示す一次転写ローラー133Yは、感光体111Y上に形成されたトナー画像を無端ベルト状の中間転写体131に転写する。一次転写ローラー133Yは、中間転写体131と当接して配置される。
【0321】
図5に示す画像形成装置100においては、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に形成されたトナー画像を一次転写ローラー(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkによって中間転写体131に転写し、中間転写体131上に転写された各トナー画像を二次転写ローラー(二次転写手段)217によって転写材Pに転写する中間転写方式が採用されているが、感光体上に形成されたトナー画像を転写手段によって直接転写材Pに転写する直接転写方式が採用されてもよい。
【実施例0322】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0323】
A.各感光体の作製
(A.1)感光体1の作製
以下の手順にしたがって感光体1を作製した。
【0324】
(導電性支持体の準備)
アルミニウム合金によって形成された導電性支持体を準備した。
上記のアルミニウム合金全量に対するケイ素の含有量は、0.7質量%である。
なお、上記の導電性支持体の外形は30mm、長さは360mmである。
【0325】
(中間層の形成)
次いで、下記の成分〔1〕を下記の分量で分散することで、中間層形成用の塗布液を調製した。
【0326】
<成分〔1〕>
ポリアミド樹脂 1.0質量部
酸化チタン 1.1質量部
エタノール 15質量部
【0327】
このとき、成分〔1〕の分散機としてはサンドミルを用い、バッチ式で10時間の分散を行った。
【0328】
結着樹脂として用いた上記成分〔1〕のポリアミド樹脂は、「X1010」(ダイセルデグサ株式会社製)である。
【0329】
また、導電性粒子として用いた成分〔1〕の酸化チタンは、「SMT500SAS」(テイカ株式会社製)であり、数平均一次粒径は、0.035μmである。
【0330】
導電性支持体の外周面に、成分〔1〕を分散することによって調製された中間層形成用の塗布液を浸漬塗布法により塗布し、オーブン内において110℃で20分間乾燥させた。
【0331】
これにより、導電性支持体の表面上に厚さ2μmの中間層を形成した。
【0332】
(電荷発生層の形成)
次いで、下記の成分〔2〕を下記の分量で混合することで、電荷発生層用の塗布液を調製した。
【0333】
<成分〔2〕>
付加体Aと電荷発生物質の混晶 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂 12質量部
混合液A 400質量部
【0334】
上記成分〔2〕の電荷発生物質は、Cu-Kα特性X線回折スペクトル測定で8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークを有するチタニルフタロシアニンである。
【0335】
成分〔2〕の付加体Aは、電荷発生物質(上記のチタニルフタロシアニン)に(2R,3R)-2,3-ブタンジオールを1:1で付加した化合物である。
【0336】
上記成分〔2〕のポリビニルブチラールは、「エスレックBL-1」(積水化学工業株式会社製)(「エスレック」は同社の登録商標)である。
【0337】
成分〔2〕の混合液Aは、3-メチル-2-ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(V/V)である。
【0338】
このとき、成分〔2〕の混合機を、循環式超音波ホモジナイザー「RUS-600TCVP」(株式会社日本精機製作所製)を下記の条件の下で使用した。
【0339】
<条件>
循環式超音波ホモジナイザーの振動数を19.5kHz、出力を600Wとして循環流量を1時間あたり40Lとし、0.5時間にわたって分散する。
【0340】
上記中間層の表面に、成分〔2〕を混合することによって調製された電荷発生層用の塗布液を浸漬塗布法によって塗布し、オーブン内において120℃で1時間乾燥させた。
【0341】
これにより、中間層の表面上に厚さ0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0342】
(電荷輸送層の形成)
下記成分〔3〕を下記分量で混合し、溶解させることで電荷輸送層用の塗布液〔A1〕を調製した。
【0343】
<成分〔3〕>
電荷輸送物質CTM-1 75質量部
ポリカーボネート 100質量部
酸化防止剤 4質量部
【0344】
上記の成分〔3〕の電荷輸送物質CTM-1の化学構造式を下記に示す。
【0345】
【化1】
【0346】
上記の成分〔3〕のポリカーボネートは、「Z300」(三菱ガス化学株式会社製)である。
【0347】
上記の成分〔3〕の酸化防止剤は、「IRGANOX1010」(BASF社製)(「IRGANOX」は同社の登録商標)」である。
【0348】
電荷発生層の電荷輸送層用の塗布液〔A1〕を塗布し、120℃で70分間乾燥した。
【0349】
これにより、電荷発生層の表面上に厚さ21μmの電荷輸送層を形成した。
【0350】
(A.2)感光体2~5の作製
アルミニウム合金全量に対するケイ素の含有量を表Iに記載の量としたこと以外は、感光体1の作製手順と同様にして感光体2~5を作製した。
【0351】
【表1】
【0352】
B.現像剤担持体の作製
(B.1)現像剤担持体1の作製
以下の手順にしたがって、現像剤担持体1を作製した。
【0353】
(現像スリーブの作製)
〔支持体の準備〕
アルミニウム合金製の円筒状の支持体を準備した。
【0354】
上記の円筒状の支持体のアルミニウム合金中のケイ素含有量は、0.5質量%である。
【0355】
また、上記の円筒状の支持体は、外径が16mm、内径が15mm、肉厚1mmの薄肉の円筒状の支持体である。
【0356】
〔サンドブラスト処理〕
上記の現像剤担持体に、ブラストガンにてガラスビーズを噴射することで円筒の外周面にサンドブラスト処理を施すことによって現像スリーブを作製した。スリーブ表面の粗さ(Rz)は10μmであった。
【0357】
上記サンドブラスト処理の加工条件は以下のとおりである。
【0358】
<加工条件>
ガラスビーズの種類:FGB#80
ガラスビーズの供給量速度:200g/分
ブラストガンから円筒までの噴射距離:100mm
ブラストガンの移動速度:5.0cm/sec
圧縮空気圧:0.23MPa
円筒の回転速度:545rpm
【0359】
(マグネットローラーの設置)
上記の現像スリーブの内側に図4のようにマグネットローラーを設置することによって、現像剤担持体1を作製した。
【0360】
(B.2)現像剤担持体2~5の作製
現像スリーブに使用したアルミニウム合金中のケイ素の含有量を表IIに記載の量としたこと以外は、現像剤担持体1の作製手順と同様にして現像剤担持体2~5を作製した。
【0361】
【表2】
【0362】
C.キャリアの作製
(C.1)被覆用樹脂の作製
(C.1.1)被覆用樹脂1の作製
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、シクロヘキシルメタクリレート/スチレンの各モノマーを(50:50)の質量比で添加した。
【0363】
上記の各モノマーの総量の0.5質量%にあたる量のペルオキソ二硫酸カリウムを添加して乳化重合を行うことによって被覆用樹脂1を作製した。
【0364】
上記の被覆用樹脂1の重量平均分子量を公知の測定装置を用いて測定したところ、50万であった。
【0365】
(C.1.2)被覆用樹脂2~5の作製
被覆層材料を表IIIに記載のように変更した以外は、被覆用樹脂1の作製手順と同様にして、被覆用樹脂2~5を作製した。
【0366】
【表3】
【0367】
(C.1)キャリア1の作製
以下の手順にしたがって、キャリア1を作製した。
【0368】
(芯材粒子の準備)
体積平均粒径が35μm、飽和磁化が61A・m/kgのMn-Mg-Sr系の「フェライト粒子」を準備した。
【0369】
上記のフェライト粒子の体積抵抗値は、4.5×10Ωcmであった。
【0370】
(芯材粒子の被覆)
撹拌羽根つき高速混合機に、上記で準備した「芯材粒子」100質量部と、「被覆用樹脂1」を3.55質量部投入した。
【0371】
このとき、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した。
【0372】
その後、120℃で50分混合して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に樹脂被覆層を有するキャリア1を製造した。
【0373】
キャリア1の芯材露出面積比率は、19%、体積抵抗値は、10Ω・cmであった。
【0374】
(C.2)キャリア2~7及び11~14の作製
被覆用樹脂の種類及び添加量を表IVに記載のように変更した以外は、キャリア1の作製手順と同様にして、キャリア2~7及び11~14を作製した。
【0375】
(C.3)キャリア8の作製
撹拌羽根つき高速混合機に、上記で準備した「芯材粒子」100質量部と、「被覆用樹脂1」を3.75質量部投入した。
【0376】
このとき、抵抗調整剤として粒径25nmのカーボンブラック(体積抵抗率:1.2×10-1Ω・cm)を0.5質量部を投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した。
【0377】
その後、120℃で50分混合して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に樹脂被覆層を有するキャリア8を製造した。
【0378】
キャリア8の芯材露出面積比率は、13%、体積抵抗値は10Ω・cmであった。
【0379】
(C.4)キャリア9及び10の作製
キャリア8の作製において、抵抗調整剤を表IVに記載のように変更した以外は、キャリア8の作製手順と同様にして、キャリア9及び10を作製した。
【0380】
【表4】
【0381】
D.トナーの作製
トナーとしては、一種類のみを作製した。このトナーをトナー1とする。
【0382】
(D.1)非晶性ポリエステル粒子分散液(a1)の調製
(D.1.1)非晶性ポリエステル(A1)の作製
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、下記モノマー〔1〕と、「ジオクチル酸スズ」を下記モノマー〔1〕の合計100質量部に対して0.25質量部投入した。
【0383】
<モノマー〔1〕>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物 40モル部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.2モル付加物 60モル部
テレフタル酸ジメチル 60モル部
ドデセニルコハク酸無水物 20モル部
【0384】
窒素ガス気流の下、235℃で6時間かけて反応容器中で反応させた。
【0385】
その後、反応容器内を200℃に降温して、フマル酸ジメチルを15モル部とトリメリット酸無水物を5モル部とを反応容器に加え、1時間かけて反応容器中で反応させた。
【0386】
反応容器内の温度を220℃まで5時間かけて昇温し、10kPaの圧力下で所望の分子量になるまで重合させ、淡黄色透明な非晶性ポリエステル(A1)を作製した。
【0387】
非晶性ポリエステル(A1)は、重量平均分子量(Mw)が35000、数平均分子量(Mn)が8000、ガラス転移温度(Tg)が56℃であった。
【0388】
(D.1.2)非晶性ポリエステル(A1)粒子分散液の調製
次いで、非晶性ポリエステル(A1)と、下記混合溶液〔2〕とを下記の分量でセパラブルフラスコに入れ、十分に混合し、溶解した。
【0389】
非晶性ポリエステル(A1) 200.0質量部
【0390】
<混合溶液〔2〕>
メチルエチルケトン 100.0質量部
イソプロピルアルコール 35.0質量部
10質量%アンモニア水溶液 7.0質量部
【0391】
その後、セパラブルフラスコ内を40℃で加熱撹拌しながら、送液ポンプを用いてイオン交換水を送液速度8g/分で滴下した。
【0392】
そして、イオン交換水の送液量が580質量部になったところでイオン交換水の滴下を止めた。
【0393】
その後、減圧下で溶剤除去を行い非晶性ポリエステル粒子の分散液(a)を調整した。
【0394】
上記分散液(a)にイオン交換水を加えて、固形分量が25質量%となるように調整することで非晶性ポリエステル粒子分散液(a1)を調製した。
【0395】
この非晶性ポリエステル粒子分散液(a1)中に含有される非晶性ポリエステル粒子の体積基準のメジアン径(d50)を、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)にて測定したところ、156nmであった。
【0396】
(D.2)非晶性ビニル樹脂粒子分散液(b1)の調製
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)を5.0質量部と、イオン交換水を2500質量部とを仕込み、窒素気流の下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、反応容器内を75℃に昇温させた。
【0397】
次いで、18.0質量部の過硫酸カリウム(KPS)を342質量部のイオン交換水に溶解させた溶液を上記の反応容器内に添加し、液温を75℃とした。
【0398】
さらに、下記モノマー〔3〕からなる混合液を下記の分量で2時間掛けて上記の反応容器内に滴下した。
【0399】
<モノマー〔3〕>
スチレン(St) 903.0質量部
n-ブチルアクリレート(BA) 282.0質量部
アクリル酸(AA) 12.0質量部
1,10-デカンジオールジアクリレート 3.0質量部
ドデカンチオール 8.1質量部
【0400】
滴下終了後、75℃において2時間にわたって加熱撹拌することによって重合させ、非晶性ビニル樹脂粒子の分散液(b)を調整した。
【0401】
上記分散液(b)にイオン交換水を加えて固形分量が25質量%となるように調整し、非晶性ビニル樹脂粒子分散液(b1)を調製した。
【0402】
なお、上記非晶性ビニル樹脂粒子分散液(b1)に含有される「非晶性ビニル樹脂」を「非晶性ビニル樹脂(B1)」とする。
【0403】
非晶性ビニル樹脂粒子分散液(b1)に含有される非晶性ビニル樹脂粒子の体積基準のメジアン径(d50)をマイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)にて測定したところ、160nmであった。
【0404】
なお、非晶性ビニル樹脂(B1)は、ガラス転移温度(Tg)が52℃、重量平均分子量(Mw)が38000、数平均分子量(Mn)が15000であった。
【0405】
(D.3)結晶性ポリエステル粒子分散液(c1)の調製
(D.3.1)結晶性ポリエステル(C1)の作製
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に下記モノマー〔4〕を下記分量で入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した。
【0406】
<モノマー〔4〕>
ドデカン二酸 50モル部
1,6-ヘキサンジオール 50モル部
【0407】
次いで、チタンテトラブトキサイド(Ti(O-n-Bu))を上記モノマー〔4〕の合計100質量部に対して0.25質量部投入した。
【0408】
窒素ガス気流の下、反応容器内の温度を170℃とし、3時間撹拌し反応させた。
【0409】
その後、反応容器内の温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間撹拌し反応させた。
【0410】
これにより、結晶性ポリエステル(C1)を得た。
【0411】
結晶性ポリエステル(C1)は、重量平均分子量(Mw)が25000、数平均分子量(Mn)が8500、融点が71.8℃であった。
【0412】
(D.3.2)結晶性ポリエステル(C1)粒子分散液の調製
次いで、結晶性ポリエステル(C1)と、下記混合溶液〔5〕からなる混合液とを下記の分量でセパラブルフラスコに入れ、これを70℃で充分混合、溶解した後、10質量%アンモニア水溶液を8質量部滴下した。
【0413】
結晶性ポリエステル(C1) 200質量部
【0414】
<混合溶液〔5〕>
メチルエチルケトン 120質量部
イソプロピルアルコール 30質量部
【0415】
その後、加熱温度を67℃に下げ、撹拌しながらイオン交換水送液ポンプを用いて送液速度8g/分で滴下した。
【0416】
そして、イオン交換水の送液量が580質量部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。
【0417】
その後、減圧下で溶媒除去を行い、結晶性ポリエステル粒子の分散液(c)を調整した。
【0418】
上記の分散液(c)にイオン交換水を加えて、固形分量が25質量%となるように調整することで、結晶性ポリエステル粒子分散液(c1)を調製した。
【0419】
結晶性ポリエステル粒子分散液(c1)に含有される結晶性ポリエステル粒子の体積基準のメジアン径(d50)を、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)にて測定したところ、198nmであった。
【0420】
(D.4)離型剤粒子分散液(W1)の調製
下記の離型剤、界面活性剤及びイオン交換水を下記の分量で混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した。
【0421】
「FNP0090」(離型剤) 270質量部
「ネオゲンRK」(界面活性剤) 13.5質量部
イオン交換水 21.6質量部
【0422】
なお、上記の離型剤「FNP0090」(日本精蝋製)は、パラフィン系ワックスであり、融解温度は89℃である。
【0423】
また、上記の界面活性剤「ネオゲンRK」(第一工業製薬製)は、アニオン性界面活性剤である。
【0424】
その後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、分散液(w)を得た。
【0425】
さらに、イオン交換水を加えて固形分量が20%になるように分散液(w)を調整し、これを離型剤粒子分散液(W1)とした。
【0426】
離型剤粒子分散液(W1)中の粒子の体積平均粒径は215nmであった。
【0427】
(D.5)ブラック着色剤粒子分散液(1)の調製
下記の着色剤、界面活性剤及びイオン交換水を下記分量にて混合し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX T50、IKA社製)により10分間予備分散した。
【0428】
「リーガル(登録商標)330」(着色剤) 100質量部
「ネオゲンSC」(界面活性剤) 15質量部
イオン交換水 400質量部
【0429】
なお、上記の「着色剤」は、カーボンブラック(キャボット社製)である。
また、上記の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製)である。
【0430】
その後、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン製)を用いて、圧力245MPaで30分間分散処理を行うことで、ブラック着色剤粒子の水系分散液を得た。
【0431】
上記のブラック着色剤粒子の水系分散液に、さらに、イオン交換水を添加して、固形分が15質量%となるように調製し、これをブラック着色剤粒子分散液(1)とした。
【0432】
ブラック着色剤粒子分散液(1)中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径(d50)を、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、110nmであった。
【0433】
(D.6)トナー母体粒子(1)の作製
(凝集・融着工程及び熟成工程)
温度計、pH計及び撹拌器を備えた4リットルの反応容器に前述の(D.1)~(D.5)で調整した分散液、界面活性剤及びイオン交換水を下記の分量で入れ、温度25℃下に1.0%硝酸を添加してpHを3.0に調整し、原料の分散液とした。
【0434】
非晶性ポリエステル粒子分散液(a1) 1008質量部
非晶性ビニル樹脂粒子分散液(b1) 32質量部
結晶性ポリエステル粒子分散液(c1) 160質量部
離型剤粒子分散液(W1) 160質量部
ブラック着色剤粒子分散液(1) 187質量部
「Dowfax2A1」(界面活性剤) 40質量部
イオン交換水 1500質量部
【0435】
なお、上記の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。
【0436】
その後、ホモジナイザー「ULTRA-TURRAX T50」(IKA社製)にて3000rpmで分散しながら、100質量部の凝集剤を30分かけて滴下した。
【0437】
上記の凝集剤としては、濃度2%の硫酸アルミニウム水溶液を使用した。
【0438】
凝集剤の滴下終了後、10分間撹拌し、原料の分散液と凝集剤とを十分に混合した。
【0439】
その後、反応容器に撹拌器及びマントルヒーターを設置した。
【0440】
スラリーが充分に撹拌されるように撹拌器の回転数を調整しながら、反応容器内の温度が40℃になるまでは0.2℃/分の昇温速度とした。
【0441】
反応容器内の温度が40℃を超えてからは、0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとに「コールターマルチサイザー3」(アパーチャー径100μm、ベックマン・コールター社製)にて粒径を測定した。
【0442】
上記の原料の分散液中の粒子の体積基準のメジアン径が3.9μmになったところで温度を保持し、あらかじめ混合しておいた下記の非晶性ポリエステル粒子分散液(a1)と界面活性剤との混合液を反応容器に20分間かけて投入した。
【0443】
<混合液>
非晶性ポリエステル粒子分散液(a1) 400質量部
「Dowfax2A1」(界面活性剤) 15質量部
【0444】
なお、上記の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。
【0445】
次いで、反応容器内を50℃にて30分間保持した後、当該反応容器に、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)20%液を8質量部添加した。
【0446】
その後、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を反応容器に加え、当該反応容器内の原料分散液のpHを9.0に制御した。
【0447】
その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で85℃まで昇温し、85℃で保持した。
【0448】
(冷却工程)
その後、「FPIA-3000」を用い、形状係数が0.970になった時点で降温速度10℃/分で冷却し、トナー母体粒子分散液(1)を調整した。
【0449】
(濾過・洗浄工程及び乾燥工程)
その後、トナー母体粒子分散液(1)を濾過し、イオン交換水で充分洗浄した後、40℃にて乾燥することで、トナー母体粒子(1)を作製した。
【0450】
作製したトナー母体粒子(1)の体積基準のメジアン径は4.0μm、平均円形度は0.971であった。
【0451】
(D.7)外添剤の添加
上記で作製したトナー母体粒子(1)に、下記の外添剤を下記の分量で添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製)を用いて混合を行った。
【0452】
<外添剤>
疎水性シリカ(数平均一次粒径12nm、疎水化度68) 1.0質量%
疎水性酸化チタン(数平均一次粒径20nm、疎水化度64) 1.5質量%
【0453】
その後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去することにより「トナー1」を作製した。
【0454】
E.現像剤の調製
(E.1)現像剤の調製
前述の(C.1)~(C.4)で作製したキャリア1と、(D.1)~(D.7)で作製したトナー1とを、下記の分量でV型混合機に投入し、常温常湿環境下で5分間混合することによって現像剤1を調製した。
【0455】
キャリア1 100質量部
トナー1 6質量部
【0456】
(E.2)現像剤2~14の調製
キャリアの種類をキャリア1から表Vのように変更したこと以外は、現像剤1の作製手順と同様にして、現像剤2~14を調製した。
【0457】
【表5】
【0458】
F.評価
(F.1)電荷のリークによる画像不良
(評価方法)
市販のカラー複合機「bizhub C450i」(コニカミノルタ株式会社製)に感光体、現像剤担持体、現像剤を表VIの組み合わせで装着し、常温常湿環境(温度20℃、湿度50%RH)で、V=-550V、Vdc=-400V、周波数=4kHz、Vpp=1.5kVの条件にて、PODグロスコート(A3サイズ、100g/m、王子製紙社製)上に10枚の出力を行った。
【0459】
なお、Vは感光体の表面電位、Vdcは直流電圧、Vppは交流電圧波形の最小値(Vp)と最大値(Vp)の差の絶対値(|Vp-Vp|)である(図6参照。)。
なお、このとき直流電圧Vdcは(Vp-Vp)/2で表される。
【0460】
【表6】
【0461】
10枚の画像を目視で観察し、リークによる画像不良(黒ポチ)の発生に関して、以下の評価基準に従って画像評価を行った。
【0462】
(評価基準)
A 10枚のいずれにおいても、リークによる画像不良が観察されない。
B 10枚の少なくともいずれかにおいてリークによる画像不良が確認でき、不良発生箇所の合計個数が1~3個である。
C 10枚の少なくともいずれかにおいてリークによる画像不良が確認でき、不良発生箇所の合計個数が4~9個である。
D 10枚の少なくともいずれかにおいてリークによる画像不良が確認でき、不良発生箇所の合計個数が10個以上である。
【0463】
(F.2)低温低湿環境における画像濃度
(評価方法)
上記評価機を低温低湿環境(10℃/20%)にて一昼夜放置したのち、10cm角のベタ画像をプリントし、画像濃度を反射濃度計「RD-918(マクベス社製)」でランダムに10か所測定し、その平均濃度を画像濃度とした。
画像濃度が1.20以上のものを実用的問題ないものと判断し、合格とした。
【0464】
(評価基準)
A 1.70以上
B 1.50以上~1.70未満
C 1.20以上~1.50未満
D 1.20未満
【0465】
G.総評
表VIの組み合わせによる実施例又は比較例の感光体及び現像剤担持体のケイ素含有量、現像剤が含むキャリアに関する各値や評価結果等を表VIIにまとめた。
【0466】
【表7】
【0467】
なお、表VII中の各記号等の意味するものは以下のとおりである。
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
St:スチレン
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
BA:ブチルアクリレート
CB:カーボンブラック
MgO:酸化マグネシウム
TiO:二酸化チタン
*1:リークによる画像評価
*2:低温低湿環境における画像濃度
【0468】
表VIIを見ると、比較例の評価と異なり実施例の評価には電荷のリークによる画像不良及び低温低湿環境における画像濃度において「D」の評価がついていない。このことから、実施例においては、静電荷像現像用トナーの過剰な帯電を抑制し、低温低湿環境においても良好な画像を得ることができることが分かる。
【符号の説明】
【0469】
1 電子写真感光体
10 現像ローラー
11 現像スリーブ
12 マグネットローラー
16 シャフト
17 軸受け部
18 反駆動側フランジ
19 駆動側フランジ
100 画像形成装置
101 感光体用支持体
102 中間層
103 電荷発生層
104 電荷輸送層
105 最外層
110Y、110M、110C、110Bk 画像形成ユニット
111Y、111M、111C、111Bk 感光体
113Y、113M、113C、113Bk 帯電手段(帯電ローラー)
115Y、115M、115C、115Bk 露光手段
117Y、117M、117C、117Bk 現像手段
118Y、118M、118C、118Bk 現像ローラー
119Y、119M、119C、119Bk クリーニング手段
131 中間転写体
133Y、133M、133C、133Bk 転写手段(一次転写ローラー)
150 給紙搬送手段
170 定着手段
217 二次転写ローラー(二次転写手段)
SC 原稿画像読み取り装置
P 転写材
図1
図2
図3
図4
図5
図6