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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015891
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】二部式着物
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/00 20180101AFI20250124BHJP
【FI】
A41D1/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118770
(22)【出願日】2023-07-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和5年3月10日に福岡県で開催された展示会に出展 2.令和5年3月24日に石川テレビの番組を通じて放送(「石川さん Live News イット!」) 3.令和5年4月28日~6月1日にインターネットサイト(Youtube)において動画配信 4.令和5年5月6日に徳島県で開催された投資家向けの集会で公開 5.令和5年5月31日に東京ビックサイトで開催されたブライダル産業フェア2023に出展
(71)【出願人】
【識別番号】596160540
【氏名又は名称】株式会社 塗装館エス・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】坂井 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】坂井 めぐみ
【テーマコード(参考)】
3B030
【Fターム(参考)】
3B030BA02
3B030BB01
3B030BC02
3B030BC04
3B030BC07
(57)【要約】
【課題】着付けの簡便さと美しさとを両立させた二部式着物を提供する。
【解決手段】二部式着物1の上衣2は、前身頃において上衣左前部が上衣右前部の外側に重なった状態で上衣右前部に予め縫合部で縫合され、後身頃において、上衣右後部6と上衣左後部7とが上衣用面ファスナー8を介して着脱されることで開閉自在である。右衿片部14と左衿片部15とは、着脱手段16を介して開閉自在である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上衣と下衣とを有する二部式着物であって、
前記上衣における前身頃の上衣右前部と上衣左前部とが、前記上衣左前部が前記上衣右前部の外側に重なった状態で予め縫合され、
前記上衣における後身頃が、上衣右後部と上衣左後部とに分かれており、前記上衣右後部と前記上衣左後部とが、上衣用面ファスナーを介して開閉自在である、
ことを特徴とする二部式着物。
【請求項2】
前記上衣右後部の上端に在る衿である右衿片部と、
前記上衣左後部の上端に在る前記衿である左衿片部と、を有し、
前記右衿片部と前記左衿片部とが、閉じられてひとつらなりに見えるように揃った一意の姿勢に着脱できる着脱手段を介して開閉自在である、
ことを特徴とする請求項1に記載された二部式着物。
【請求項3】
前記上衣の着丈が、前記上衣が帯で絞められた際に前記上衣の下端部がおはしょりとなる長さである、
ことを特徴とする請求項2に記載された二部式着物。
【請求項4】
前記下衣に予め縫合された帯部と、
前記帯部の下端から張り出したおはしょり部と、を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載された二部式着物。
【請求項5】
着用された前記上衣の下端部が、着用された前記下衣の内側に在る第一着付け状態、又は、着用された前記上衣の前記下端部が、着用された前記下衣の外側に在る第二着付け状態となる、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載された二部式着物。
【請求項6】
前記下衣が、腰側部と、前記腰側部から下に伸びた裾側部とを有し、
前記腰側部における前身頃の腰側右前部と腰側左前部とが、前記腰側左前部が前記腰側右前部の外側に重なった状態で予め縫合され、
前記腰側部における後身頃が、腰側右後部と腰側左後部とに分かれたことで、前記腰側部の後身頃に開口部が形成され、
前記裾側部における前身頃の裾側右前部と裾側左前部とが、前記裾側左前部が前記裾側右前部の外側に縫合されず重ねられ、
前記裾側部における後身頃の裾側右後部と裾側左後部とが、予め閉じられて縫合されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された二部式着物。
【請求項7】
前記帯部が、前記帯部同士を留めるための帯用面ファスナーを有する、
ことを特徴とする請求項4に記載された二部式着物。
【請求項8】
前記下衣における後身頃の下衣右後部と下衣左後部とが、予め閉じられて縫合され、
前記下衣における前身頃が、下衣右前部と下衣左前部とに分かれており、
前記帯用面ファスナーが、前記帯部における右側端部の外面及び前記帯部における左側端部の内面に取り付けられ、
前記下衣左前部が前記下衣右前部の外側に重なり、前記帯部における前記右側端部の外面が前記帯部の内面と重なり、前記帯部における前記左側端部の内面が前記帯部の外面と重なった状態で、前記帯部が前記帯用面ファスナーを介して留められる、
ことを特徴とする請求項7に記載された二部式着物。
【請求項9】
前記帯部が、腰回り調整用のアジャスタを、前記下衣における前身頃の上方以外の部位に有する、
ことを特徴とする請求項4に記載された二部式着物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に分かれた着物である二部式着物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、着付けの簡便性の観点から上衣と下衣とに分かれている着物として、下記特許文献に記載された二部式着物がある。特許文献1に記載された二部式着物(以下、「文献公知1発明」と記す。)は、上衣が左右に分離されている。よって、文献公知1発明は、例えば、身体が不自由な着用者に着せる際、補助者にとって扱いやすく、着せやすい。
【0003】
特許文献2に記載された二部式着物(以下、「文献公知2発明」と記す。)は、着物の内側に着用される長襦袢が、予め下衣の内側に縫合されている。よって、文献公知2発明は、下衣に対して長襦袢の位置がズレないことから、見栄えが良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3196534号公報
【特許文献2】特開2020-45587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したとおり、二部式着物は、着付けの簡便さと美しさとが求められるため、両者を両立させる必用がある。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものであり、着付けの簡便さと美しさとを両立させた二部式着物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る二部式着物は、上衣と下衣とを有する二部式着物であって、前記上衣における前身頃の上衣右前部と上衣左前部とが、前記上衣左前部が前記上衣右前部の外側に重なった状態で予め縫合され、前記上衣における後身頃が、上衣右後部と上衣左後部とに分かれており、前記上衣右後部と前記上衣左後部とが、上衣用面ファスナーを介して開閉自在である、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る二部式着物は、前記上衣右後部の上端に在る衿である右衿片部と、前記上衣左後部の上端に在る前記衿である左衿片部と、を有し、前記右衿片部と前記左衿片部とが、閉じられてひとつらなりに見えるように揃った一意の姿勢に着脱できる着脱手段を介して開閉自在である、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る二部式着物は、前記上衣の着丈が、前記上衣が帯で絞められた際に前記上衣の下端部がおはしょりとなる長さである、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る二部式着物は、前記下衣に予め縫合された帯部と、前記帯部の下端から張り出したおはしょり部と、を有する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る二部式着物は、着用された前記上衣の下端部が、着用された前記下衣の内側に在る第一着付け状態、又は、着用された前記上衣の前記下端部が、着用された前記下衣の外側に在る第二着付け状態となる、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る二部式着物は、前記下衣が、腰側部と、前記腰側部から下に伸びた裾側部とを有し、前記腰側部における前身頃の腰側右前部と腰側左前部とが、前記腰側左前部が前記腰側右前部の外側に重なった状態で予め縫合され、前記腰側部における後身頃が、腰側右後部と腰側左後部とに分かれたことで、前記腰側部の後身頃に開口部が形成され、前記裾側部における前身頃の裾側右前部と裾側左前部とが、前記裾側左前部が前記裾側右前部の外側に縫合されず重ねられ、前記裾側部における後身頃の裾側右後部と裾側左後部とが、予め閉じられて縫合されている、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る二部式着物は、前記帯部が、前記帯部同士を留めるための帯用面ファスナーを有する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る二部式着物は、前記下衣における後身頃の下衣右後部と下衣左後部とが、予め閉じられて縫合され、前記下衣における前身頃が、下衣右前部と下衣左前部とに分かれており、前記帯用面ファスナーが、前記帯部における右側端部の外面及び前記帯部における左側端部の内面に取り付けられ、前記下衣左前部が前記下衣右前部の外側に重なり、前記帯部における前記右側端部の外面が前記帯部の内面と重なり、前記帯部における前記左側端部の内面が前記帯部の外面と重なった状態で、前記帯部が前記帯用面ファスナーを介して留められる、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る二部式着物は、前記帯部が、腰回り調整用のアジャスタを、前記下衣における前身頃の上方以外の部位に有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
一般的な着物は、後ろから羽織るものであるため、例えば、身体が不自由で腕が上がらない着用者や、腕を後ろに回せない着用者にとっては、着付けが困難である。
【0017】
そこで、本発明に係る二部式着物は、上衣と下衣とを有するものであって、上衣における前身頃の上衣右前部と上衣左前部とが、上衣左前部が上衣右前部の外側に重なった状態で予め縫合され、上衣における後身頃が、上衣右後部と上衣左後部とに分かれており、上衣右後部と上衣左後部とが、上衣用面ファスナーを介して開閉自在である。着用者は、身体の前から両腕を通すことで上衣を着用することができるため、着付けが簡便である。また、前身頃は、予め左前の状態(すなわち、上衣右前部が内側で上衣左前部が外側の状態。着物の着付けとして正しい状態。)であるため、衿を整える必要もない。例えば、着付けに不慣れな外国人であっても、整った衿を簡便に実現させることができる。よって、着付けの簡便さと美しさとが両立する。
【0018】
上衣における後身頃の開閉手段が、仮に、金属製や樹脂製のファスナーやボタンであると、皮膚への負担となる場合がある。例えば、触覚が衰えた着用者は、剛性の部品が当たり続けていても気付くことができない。
【0019】
そこで、本発明の上衣は、面ファスナーを介して開閉する。面ファスナーは、平坦かつ柔軟であるため、身体に当たっても皮膚への負担が少ない。また、背骨が変形していたり、身体に器具や管を装着している着用者にとっては、器具との干渉を避け、管を上衣の外側に通すうえで、様々な姿勢で、かつ、部分的に着脱できる面ファスナーが便利である。
【0020】
面ファスナーは、便利であるが、様々な姿勢で着脱されるため、仮に、上衣右後部及び上衣左後部と共に分かれた各衿片部までも面ファスナーであった場合、着脱の都度、各衿片部の相対的な位置が変わり、左右で衿片部がズレる場合がある。
【0021】
そこで、本発明に係る二部式着物は、上衣右後部の上端に在る衿である右衿片部と、上衣左後部の上端に在る衿である左衿片部とを有し、右衿片部と左衿片部とが、閉じられてひとつらなりに見えるように揃った一意の姿勢に着脱できる着脱手段を介して開閉自在である。姿勢が一意に着脱できる着脱手段として、ボタンやフックが挙げられる。これらの着脱手段によって閉じられた各衿片部は、姿勢が一意に定まるため、常に衿の形が美麗となる。
【0022】
女性の着用者は、帯の下におはしょりを作って着用するところ、おはしょりを美麗に見せることは困難である。
【0023】
そこで、本発明に係る二部式着物は、上衣の着丈が、上衣が帯で絞められた際に上衣の下端部がおはしょりとなる長さである。すなわち、着丈が所定の長さであることから、一般的な位置で、帯を上衣の上から巻くと、帯からはみ出した上衣の下端部が、自然とおはしょりとなる。よって、着付けの簡便さと美しさとが両立する。
【0024】
本発明に係る二部式着物は、下衣に予め縫合された帯部と、帯部の下端から張り出したおはしょり部とを有している。着用者が、上衣の下端部を下衣の内側に入れて着用すると、外観上、上衣と下衣との境界に帯部が配置されるため、後から帯を巻き付ける必要がないし、帯を整える必要もない。更に、一般的に困難であるおはしょりを作る必要もない。よって、着付けの簡便さと美しさとが両立する。
【0025】
本発明に係る二部式着物は、着用された上衣の下端部が、着用された下衣の内側に在る第一着付け状態、又は、着用された上衣の前記下端部が、着用された下衣の外側に在る第二着付け状態となる。すなわち、様々な体形の着用者に合わせて着付け状態が選択される。例えば、上衣の下端部が、おはしょりとして長すぎる場合、第一着付け状態が選択される。第一着付け状態であれば、下端部が下衣の内側に隠れ、同時に、下衣の帯部やおはしょり部が外側に露出する。一方で、下衣の丈が長すぎて、丈を足元に合わせた結果、帯部やおはしょり部の位置が高くなりすぎる場合、第二着付け状態が選択される。第二着付け状態であれば、帯部やおはしょり部が上衣の内側に隠れ、同時に、上衣の下端部が外側に露出し、おはしょりとなる。何れも、上衣を下衣の内側に入れるか、外に出すかであり、また、何れの状態であっても、おはしょりが予め形成されているため、着付けの簡便さと美しさとが両立する。
【0026】
下衣は、ズボンのように脚を通して履くものであるが、身体が不自由で自身で履くことができない着用者もいる。
【0027】
そこで、本発明に係る二部式着物は、下衣が、腰側部と、腰側部から下に伸びた裾側部とを有し、腰側部における前身頃の腰側右前部と腰側左前部とが、腰側左前部が腰側右前部の外側に重なった状態で予め縫合され、腰側部における後身頃が、腰側右後部と腰側左後部とに分かれたことで、腰側部の後身頃に開口部が形成され、裾側部における前身頃の裾側右前部と裾側左前部とが、裾側左前部が裾側右前部の外側に縫合されず重ねられ、裾側部における後身頃の裾側右後部と裾側左後部とが、予め閉じられて縫合されている。腰側部の後身頃が開口しているため、例えば、着用者が、ベッド等に横たわったまま、又は、車椅子等に着席したまま、僅かに脚を上げれば、補助者は、開口部に着用者の脚を通して下衣を履かせることができる。着用者の脚が通された後、開口部に着用者の臀部が配置されるため、臀部を持ち上げて履かせる必要がない。一方で、裾部側が閉じているため、着崩れすることもない。
【0028】
本発明に係る二部式着物は、帯部が、帯部同士を留めるための帯用面ファスナーを有している。帯用面ファスナーによって、帯部同士が任意の長さで留められるため、着用者の体格に応じた着付けが可能である。
【0029】
本発明に係る二部式着物は、下衣における後身頃の下衣右後部と下衣左後部とが、予め閉じられて縫合され、下衣における前身頃が、下衣右前部と下衣左前部とに分かれており、帯用面ファスナーが、帯部における右側端部の外面及び帯部における左側端部の内面に取り付けられ、下衣左前部が下衣右前部の外側に重なり、帯部における右側端部の外面が帯部の内面と重なり、帯部における左側端部の内面が帯部の外面と重なった状態で、帯部が帯用面ファスナーを介して留められる。左前の状態でのみ帯部が留められる位置に帯用面ファスナーが配置されているため、着用者が帯部を面ファスナーで留めようとすれば、必然的に左前の状態となる。換言すれば、左前ではない状態(すなわち、上衣左前部が内側で上衣右前部が外側の状態。)では、帯部が留まらないため、着付けを誤ることがない。
【0030】
一般的に、着物の正面である前身頃やおくみには、絵柄が描かれており、絵柄を美麗に見せることが肝要であるため、前身頃やおくみには、皺ができないように着付けをする。しかし、下衣には、予め帯部が縫合されているため、着用者の腰回りに合わせて帯部が留められると、帯部に引っ張られて、前身頃やおくみに皺ができる場合がある。前身頃やおくみに過度な皺ができない程度に帯部を留めればよいが、帯部の留め具合が腰回りに対して緩い場合、下衣が脱げ落ちる可能性があるし、脱げ落ちなかったとしても、不本意に脱げ落ちることへの不安や腰回りに適合していないことへの違和感が残る。
【0031】
そこで、本発明に係る二部式着物は、帯部が、腰回り調整用のアジャスタを、下衣における前身頃の上方以外の部位に有している。前身頃やおくみに過度な皺ができない程度に帯部を留めることで、絵柄を美麗に見せることができ、一方で、腰回りに対する帯部の留め具合をアジャスタで調整することで、不安や違和感が払拭される。仮に、アジャスタで調整したことで皺ができたとしても、アジャスタは、帯部において前身頃の上方以外の部位に配置されているため、皺ができる位置は、少なくとも前身頃ではなく、前身頃以外である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る二部式着物の上衣の正面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る二部式着物の上衣の背面図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る二部式着物の下衣の正面図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係る二部式着物の下衣の背面図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る二部式着物の下衣の背面展開図である。
図6図6は、本発明の第一実施形態に係る二部式着物のアジャスタが拡大されたものであって、調整前の状態を説明するための未調整説明拡大図である。
図7図7は、本発明の第一実施形態に係る二部式着物のアジャスタが拡大されたものであって、調整後の状態を説明するための調整済説明拡大図である。
図8図8は、本発明の第一実施形態に係る二部式着物の第一着付け状態の正面図である。
図9図9は、本発明の第一実施形態に係る二部式着物の第二着付け状態の正面図である。
図10図10は、本発明の第二実施形態に係る二部式着物の上衣の正面図である。
図11図11は、本発明の第二実施形態に係る二部式着物の下衣の正面図である。
図12図12は、本発明の第二実施形態に係る二部式着物の下衣の正面展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の実施形態に係る二部式着物を図面に基づいて説明する。図1及び2には、本発明の第一実施形態に係る二部式着物1の上衣2が示されている。図1には、上衣2の正面が示され、図2には、上衣2の背面が示されている。図3ないし5には、第一実施形態に係る二部式着物1の下衣18が示されている。図3には、下衣18の正面が示され、図4及び5には、下衣18の背面が示されている。なお、以下の説明では、二部式着物1を着用した着用者(図示省略)を基準として、着用者の正面が前、背面が後、右側が右、左側が左である(図1及び2参照。図1では、着用者を基準とした右側は、紙面左向きであり、着用者を基準とした左側は、紙面右向きである。)。
【0034】
図1ないし5に示されているとおり、二部式着物1は、一般的な着物と異なり、着物が予め上下に分かれたものであり、上衣2と下衣18とから構成されている。図1及び2に示されているとおり、上衣2は、身頃部(以下、上衣2の身頃部を「上身頃部」と記す。)3の左右両端に袖部10がそれぞれ縫合されており、上身頃部3には衿部11が縫合されている。上身頃部3は、正面側である前身頃と、背面側である後身頃とから構成されている。前身頃は、上衣右前部4(図1において紙面左側)と上衣左前部5(図1において紙面右側)とを有している。上衣左前部5は上衣右前部4の外側に重なった状態で、上衣右前部4に予め縫合されている(図1の縫合部50参照)。後身頃は、上衣右後部6と上衣左後部7とに分かれている。上衣右後部6と上衣左後部7とは、上衣用面ファスナー8を介して着脱されることで開閉自在である。上衣用面ファスナー8は、上下に長手の直線状であり、後身頃の上端から下端の近傍に至って縫合されている。後身頃の下端は、上衣用面ファスナー8が縫合されていない非面ファスナー部9を有している。
【0035】
衿部11は、後身頃の上端から前身頃の正面に渡って縫合されている。詳説すれば、後身頃が上衣右後部6と上衣左後部7とに分かれ、前身頃が上衣右前部4と上衣左前部5とに分かれていることから、衿部11も、右衿部12と左衿部13とに分かれている。右衿部12のうち、上衣右後部6の上端に在る右衿片部14と、左衿部13のうち、上衣左後部7の上端に在る左衿片部15とは、着脱手段16を介して開閉自在である。着脱手段16は、例えばスナップボタン等であり、右衿片部14と左衿片部15とが閉じられたとき、右衿片部14と左衿片部15とがひとつらなりに見えるように揃った一意の姿勢となる。換言すれば、右衿片部14及び左衿片部15は、二分されていない通常の衿のように見える(図1参照)。
【0036】
図3ないし5に示されているとおり、下衣18は、身頃部(以下、下衣18の身頃部を「下身頃部」と記す。)19の上端に予め帯部35が縫合されている。帯部35には、この帯部35同士を留めるための帯用面ファスナー36が縫合されている(図5参照)。よって、帯部35は、帯用面ファスナー36の着脱が可能な素材である。帯部35には、腰回り調整用のアジャスタ37が縫合されている。アジャスタ37は、下衣18における前身頃の上方以外の部位に配置されている。具体的には、アジャスタ37の位置は、帯部35における左の側面である(図3において紙面右側)。帯部35は、おはしょり部41を有している。おはしょり部41は、おはしょりを模して、帯部35の下端から張り出した状態で予め縫合されている。下身頃部19は、正面側である前身頃と背面側である後身頃とを有しており、更に、上側である腰側部20と、下側であって腰側部20から下に伸びた裾側部21とに区分されている。
【0037】
なお、おはしょり部41の作り方は様々である。一般的な着物において、おはしょりは、着用者の身長に合わせて着物が胴回りでたくし上げられた状態で、腰紐で絞められた際、腰紐の上に覆いかぶさって垂れ下がった袋状の部分であり、上から帯で締められると、帯の下側から張り出した状態となる。したがって、胴回りの布は、身体(又は長襦袢)の上に重なる内布部分と、腰紐で下方に折り返されて内布部分の外側に重なる中間布部分と、この中間布部分の下端で折り返されて上方に伸びて中間布部分の外側に重なる外布部分とで三層となって、帯で締められる。一般的な着物は、上衣と下衣とに分かれず繋がっているため、おはしょりの長さは丈の長さに依拠し、両者のバランスをとるのが困難である。一方で、二部式着物1は、上衣2と下衣18とに分かれているうえ、下衣18のおはしょり部41は、腰紐で絞められることなく予め作られたものであるため、丈の長さに依拠せずにおはしょり部41を任意の長さとすることができる。例えば、外観となる外布部分を適度な長さとし、中間布部分を内布部分に縫合すれば、おはしょり部41の長さは、下衣18の丈に依拠しない。
【0038】
図3に示されているとおり、前身頃は、下衣右前部22と下衣左前部23とを有している。前身頃のうち、腰側部20の下衣右前部22である腰側右前部24と、腰側部20の下衣左前部23である腰側左前部25とは、腰側左前部25が腰側右前部24の外側に重なった状態で予め縫合されている(同図の縫合部51参照)。また、前身頃のうち、裾側部21の下衣右前部22である裾側右前部26と、裾側部21の下衣左前部23である裾側左前部27とは、裾側左前部27が裾側右前部26の外側に縫合されずに重ねられている。
【0039】
図4及び5に示されているとおり、後身頃は、下衣右後部28と下衣左後部29とを有している。後身頃のうち、腰側部20の下衣右後部28である腰側右後部30と、腰側部20の下衣左後部29である腰側左後部31とは、縫合されずに分かれており、後身頃の腰側部20には、スリットとして開口部32が形成されている。また。後身頃のうち、裾側部21の下衣右後部28である裾側右後部33と、裾側部21の下衣左後部29である裾側左後部34とは、予め閉じられて縫合されている(同図の縫合部52参照)。
【0040】
ここで、帯部35のアジャスタ37を図面に基づいて説明する。図6及び7には、拡大されたアジャスタ37部分が示されている。図6に示されているとおり、アジャスタ37は、例えば、帯状のゴムバンドである。アジャスタ37の一方の先端部は帯部35に縫合され、他方の先端部には、アジャスタ用面ファスナー38が縫合されている。したがって、帯部35が折り重なった状態でアジャスタ37で留められると、重なった分だけ帯部35が短くなる。
【0041】
次に、上衣2及び下衣18の着付け状態を図面に基づいて説明する。図8及び9には、着付け状態が示されている。着付け状態は二態様あり、図8には、第一着付け状態が示され、図9には、第二着付け状態が示されている。
【0042】
図8に示されているとおり、第一着付け態様では、着用者が二部式着物1を着用した状態で、上衣2の下端部17が下衣18の内側に入っている。下衣18の帯部35が露出することから、上衣2と下衣18との境界には、帯部35が配置される。帯部35には、おはしょり部41が予め縫合されていることから、おはしょり部41も露出し、おはしょりとなる。
【0043】
図9に示されているとおり、第二着付け状態では、着用者が二部式着物1を着用した状態で、上衣2の下端部17が下衣18の外側に露出している。上衣2は、下衣18の帯部35ではない別の帯39で締められている。このとき、上衣2の下端部17が、帯39から下側にはみ出していることから、この下端部17が、おはしょりとなる。すなわち、上衣2の着丈は、上衣2が帯39で絞められた際に下端部17がおはしょりとなる長さに予め計算されて設計されている。
【0044】
以上のとおり、二部式着物1が構成されている。次に、二部式着物1の効果を説明する。
【0045】
上記したとおり、上衣2の上衣左前部5は、上衣右前部4の外側に重なった状態で、縫合部50によって上衣右前部4に予め縫合されているため、上衣2の前身頃は、予め左前の状態である(図1参照)。したがって、衿を整える必要もない。例えば、着付けに不慣れな外国人であっても、整った衿を簡便に実現させることができる。よって、着付けの簡便さと美しさとが両立する。
【0046】
上衣2の後身頃は、上衣右後部6と上衣左後部7とが、上衣用面ファスナー8を介して着脱されることで開閉自在である(図2参照)。したがって、着用者は、身体の前から両腕を通すことで上衣2を着用することができる。よって、着付けが簡便である。また、上衣用面ファスナー8は、平坦かつ柔軟であるため、身体に当たっても皮膚への負担が少ない。
【0047】
上衣2の衿部11は、上衣右後部6の上端に在る右衿片部14と、上衣左後部7の上端に在る左衿片部15とが、スナップボタン等の着脱手段16を介して開閉自在である(図2参照)。着脱手段16を介して右衿片部14と左衿片部15とが閉じられたとき、右衿片部14と左衿片部15とがひとつらなりに見えるように揃った一意の姿勢となる(図1参照)。一意の姿勢に着脱できる着脱手段16によって閉じられた各衿片部14,15は、姿勢が一意に定まるため、常に衿の形が美麗となる。
【0048】
下衣18では、前身頃の腰側右前部24と腰側左前部25とが、腰側左前部25が腰側右前部24の外側に重なった状態で、縫合部51によって予め縫合されているため、前身頃が不本意に開けることがない(図3参照)。一方で、前身頃の裾側右前部26と裾側左前部27とが、裾側左前部27が裾側右前部26の外側に縫合されずに重ねられているため、裾側左前部27が開けて、自然な着物に見えるうえ、裏地に施された柄や色彩が見え隠れして、美麗である(図3参照)。
【0049】
下衣18では、後身頃の腰側右後部30と腰側左後部31とが、縫合されずに分かれており、後身頃の腰側部20にスリットとして開口部32が形成されている(図4及び5参照)。したがって、着用者が、ベッド等に横たわったまま、又は、車椅子等に着席したまま、僅かに脚を上げれば、補助者は、開口部32に着用者の脚を通して下衣18を履かせることができる。着用者の脚が通された後、開口部32に着用者の臀部が配置されるため、臀部を持ち上げて履かせる必要がない。一方で、後身頃の裾側右後部33と裾側左後部34とが、縫合部52によって予め閉じられて縫合されているため、着崩れすることもない(図4及び5参照)。
【0050】
下衣18は、上端に予め帯部35が縫合されており、帯部35には、この帯部35同士を留めるための帯用面ファスナー36が縫合され、帯部35は、帯用面ファスナー36の着脱が可能な素材である(図5参照)。したがって、帯用面ファスナー36を介して帯部35同士が任意の長さで留められるため、着用者の体格に応じた着付けが可能である。
【0051】
下衣18の帯部35には、ゴムバンド等のアジャスタ37が縫合されており、アジャスタ37には、アジャスタ用面ファスナー38が縫合されている(図6及び7参照)。前身頃やおくみに過度な皺ができない程度に帯部35を留めることで、絵柄を美麗に見せることができ、一方で、腰回りに対する帯部35の留め具合をアジャスタ37で調整することで、不本意に下衣18が脱げ落ちることへの不安や違和感が払拭される。仮に、アジャスタ37で調整したことで皺ができたとしても、アジャスタ37は、帯部35における左の側面に配置されているため(図3参照)、皺ができる位置は、少なくとも前身頃ではなく、右の側面である。よって、前身頃やおくみの美観を損なうことがない。
【0052】
二部式着物1は、上衣2の下端部17が下衣18の内側に入っている第一着付け状態(図8参照)、又は、下端部17が下衣18の外側に露出している第二着付け状態となる(図9参照)。すなわち、様々な体形の着用者に合わせて着付け状態が選択される。例えば、下端部17が、おはしょりとして長すぎる場合、第一着付け状態が選択される。第一着付け状態であれば、下端部17が下衣18の内側に隠れ、同時に、下衣18の帯部35が外側に露出し、帯部35に予め縫合されているおはしょり部41も露出する。したがって、おはしょりが不自然に長すぎることにはならないし、一般的に困難であるおはしょりを作る必要がない。よって、着付けの簡便さと美しさとが両立する。一方で、下衣18の丈が長すぎて、丈を足元に合わせた結果、帯部35及びおはしょり部41の位置が高くなりすぎる場合、第二着付け状態が選択される。第二着付け状態であれば、帯部35及びおはしょり部41が上衣2の内側に隠れ、同時に、上衣2の下端部17が外側に露出し、上衣2が帯39で締められることで、下端部17がおはしょりとなる。何れも、上衣2を下衣18の内側に入れるか、外に出すかであり、また、何れの状態であっても、おはしょりが予め形成されているため、着付けの簡便さと美しさとが両立する。
【0053】
下衣18は、上端に予め帯部35が縫合されていることから、第一着付け状態において、上衣2の下端部17が下衣18の内側に入れられると、外観上、上衣2と下衣18との境界に帯部35が配置される(図8参照)。したがって、後から帯を巻き付ける必要がないし、帯を整える必要もない。よって、着付けの簡便さと美しさとが両立する。なお、必要に応じて帯39を帯部35の上から巻くこともできる。
【0054】
上衣2の着丈が所定の長さであることから、第二着付け状態において、一般的な位置で、上衣2の上から帯39を巻くと、帯39からはみ出した上衣2の下端部17が、自然とおはしょりとなる(図9参照)。よって、着付けの簡便さと美しさとが両立する。
【0055】
次に、第二実施形態に係る二部式着物201を図面に基づいて説明する。図10には、第二実施形態に係る二部式着物201に用いられる上衣202の正面が示され、図11及び12には、第二実施形態に係る二部式着物201の下衣218の正面が示されている。なお、以下は、第一実施形態に係る二部式着物1と主に異なる構成の説明であり、二部式着物1と同様の構成の説明は省略されている。
【0056】
図10に示されているとおり、上衣202は、上衣左前部205と上衣右前部204とが縫合されておらず、上衣左前部205と上衣右前部204とを閉じるための紐240を有している。上衣左前部205の内側、及び、上衣右前部204の右衿部212に、それぞれ紐240が縫合されている。図11及び12に示されているとおり、下衣218は、前身頃において、下衣右前部222と下衣左前部223とが縫合されずに分かれており、後身頃の下衣右後部と下衣左後部が、予め閉じられて縫合されている点において、下衣18と異なる。
【0057】
帯用面ファスナー236は、帯部235における右側端部242の外面及び帯部235における左側端部243の内面に取り付けられている。下衣218が着用される際、下衣左前部223が下衣右前部222の外側に重ねられ、帯部235における右側端部242の外面が帯部235の内面と重なり、帯部235における左側端部243の内面が帯部235の外面と重なった状態で、帯部235が帯用面ファスナー236を介して留められる。
【0058】
以上のとおり、二部式着物201が構成されている。次に、二部式着物201の効果を説明する。
【0059】
帯部235は、帯用面ファスナー236が、帯部235における右側端部242の外面及び左側端部243の内面に取り付けられている。左前の状態でのみ帯部235が留められる位置に帯用面ファスナー236が配置されているため、着用者が帯部235を帯用面ファスナー236で留めようとすれば、必然的に左前の状態となる。換言すれば、左前ではない状態(右前の状態)では、帯部235が留まらないため、着付けを誤ることがない。なお、上衣202は、上衣左前部205の紐240と上衣右前部204の紐240とが結ばれると、自然と左前となるため、やはり着付けを誤ることがない。
【0060】
二部式着物201は、二部式着物1と同様に、第一着付け状態又は第二着付け状態となるため、様々な体形の着用者に合わせて着付け状態が選択される。したがって、着付けの簡便さと美しさとが両立する。
【0061】
なお、本発明に係る他の実施形態では、着脱手段は、面ファスナー、ボタンとボタンホール、フック等である。
他の実施形態では、上衣の下端部の長さが任意である。
他の実施形態では、下衣が帯部及びおはしょり部を有していない。すなわち、浴衣の場合、おはしょり部は不要である。
他の実施形態では、下衣が帯部を有しているが、おはしょり部を有していない。
他の実施形態では、下衣の腰側部における前身頃の腰側右前部と腰側左前部とが予め縫合されていない。
他の実施形態では、下衣の腰側部における後身頃の腰側右後部と腰側左後部とが閉じていて、腰側部の後身頃に開口部が形成されていない。
他の実施形態では、下衣の裾側部における前身頃の裾側右前部と裾側左前部とが予め縫合されている。
他の実施形態では、帯部が、スナップボタン、ボタンとボタンホール、フック等を有している。
他の実施形態では、帯部がアジャスタを有していない。
他の実施形態では、非面ファスナー部を有しておらず、上衣用面ファスナーが、後身頃の下端に至って縫合されている。
【0062】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,201 二部式着物
2,202 上衣
3 上身頃部
4,204 上衣右前部
5,205 上衣左前部
6 上衣右後部
7 上衣左後部
8 上衣用面ファスナー
9 非面ファスナー部
10 袖部
11 衿部
12,212 右衿部
13 左衿部
14 右衿片部
15 左衿片部
16 着脱手段
17,217 下端部
18,218 下衣
19 下身頃部
20 腰側部
21 裾側部
22,222 下衣右前部
23,223 下衣左前部
24 腰側右前部
25 腰側左前部
26 裾側右前部
27 裾側左前部
28 下衣右後部
29 下衣左後部
30 腰側右後部
31 腰側左後部
32 開口部
33 裾側右後部
34 裾側左後部
35,235 帯部
36,236 帯用面ファスナー
37,237 アジャスタ
38 アジャスタ用面ファスナー
39 帯
41,241 おはしょり部
50~52 縫合部
240 紐
242 右側端部
243 左側端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12