(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015892
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20250124BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20250124BHJP
F16L 41/02 20060101ALI20250124BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/122 Z
F16L41/02
F16L5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118773
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】安部 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】川島 拓也
【テーマコード(参考)】
2D061
3H019
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB07
2D061AC01
2D061AC05
2D061AC07
3H019BA24
3H019BB01
3H019BB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴム輪の破損を適切に防止できる管継手を提供する。
【解決手段】、管継手は、立て管部と枝管部(16)とを備える。枝管部は、排水横管の端部が挿入される受口本体、受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝64、ゴム輪本体とリップ部とを有するゴム輪、および受口本体の内周面60aにゴム輪溝の奥側壁部70と連なって形成され、ゴム輪溝の内部空間64aと連通する逃げ空間82aを形成する空間形成部82を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立て管部と前記立て管部から側方に突出する枝管部とを備え、排水立て管と排水横管との合流部分に設けられる管継手であって、
前記枝管部は、
前記排水横管の端部が挿入される受口本体、
前記受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、
前記ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、前記ゴム輪本体の内周面から突出するリップ部とを有するゴム輪、および
前記受口本体の内周面に前記ゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備える、管継手。
【請求項2】
前記空間形成部は、前記受口本体の底部のみに形成される、請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記受口本体の先端部の外周面下部を切り欠くように形成される平面部を備える、請求項1または2記載の管継手。
【請求項4】
前記受口本体の先端部の内径は、前記排水横管の外径の1.01倍以上1.15倍以下の大きさである、請求項1または2記載の管継手。
【請求項5】
前記受口本体の先端から前記ゴム輪溝の中央までの軸方向長さである第1長さは、5mm以上20mm以下である、請求項1または2記載の管継手。
【請求項6】
前記受口本体の奥部の内周面に形成されるストッパを備え、
前記ゴム輪溝の中央から前記ストッパの前記受口本体先端側の端縁までの軸方向長さである第2長さは、25mm以上50mm以下である、請求項1または2記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管継手に関し、特にたとえば、縦管状の管本体と管本体から側方に突出する枝管部とを備え、排水立て管と排水横管との合流部分に設けられる、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の管継手(集合継手)の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の技術では、複数の管部材を組み合わせることで上部管継手および下部管継手を含む集合継手が形成される。また、枝管部(横管接続部)は、ゴム輪受口構造を有しており、排水横管の端部が挿入される受口本体を備える。受口本体の内周面には、ゴム輪溝が形成されており、このゴム輪溝には、ゴム輪が装着される。ゴム輪は、ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、ゴム輪本体の内周面から突出するリップ部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上部管継手または集合継手などの管継手の枝管部は、床下空間(建物の床スラブとフロアとの間の配管スペース)に配置される。この際、排水の流れ勾配を確保しつつ、床下空間の高さを抑えて住空間を広く確保するためには、枝管部を床スラブの上面に近接させて配置することが望ましい。一方、枝管部が床スラブに近接して配置されると、枝管部が備える受口本体に排水横管を接続(挿入)するときに斜め挿入になり易く、ゴム輪が損傷したり捲れたりして、施工不良(接続不良)を招く恐れがある。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、管継手を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、枝管部に対して排水横管を接続する際の施工不良を適切に防止できる、管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、立て管部と立て管部から側方に突出する枝管部とを備え、排水立て管と排水横管との合流部分に設けられる管継手であって、枝管部は、排水横管の端部が挿入される受口本体、受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体とゴム輪本体の内周面から突出するリップ部とを有するゴム輪、および受口本体の内周面にゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備える、管継手である。
【0008】
第1の発明では、管継手は、立て管部と立て管部から側方に突出する枝管部とを備え、排水立て管と排水横管との合流部分に設けられる集合継手である。この管継手の枝管部は、ゴム輪受口構造を有しており、排水横管の端部が挿入される受口本体を備える。この受口本体の内周面には、ゴム輪溝が形成され、このゴム輪溝には、ゴム輪が装着される。ゴム輪は、ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、ゴム輪本体の内周面から突出するリップ部とを有している。また、受口本体の内周面には、空間形成部が形成される。この空間形成部は、ゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する。このような枝管部では、仮に、排水横管の端部が斜め挿入されてゴム輪のリップ部が排水横管によって引き延ばされても、引き延ばされたリップ部は、空間形成部が形成する逃げ空間内に入り込む(逃げる)ことができるので、リップ部の挟み込みが回避される。
【0009】
第1の発明によれば、枝管部を床スラブに近接させて配置しても、枝管部がリップ部の逃げ空間を形成する空間形成部を有するので、枝管部に排水横管が斜め挿入された際のリップ部の挟み込みを適切に回避することができる。したがって、ゴム輪の破損および捲れを適切に防止でき、枝管部に対して排水横管を接続する際の施工不良を適切に防止できる。
【0010】
また、枝管部に排水横管の端部が斜め挿入されてもゴム輪の破損や捲れを防止できるので、必ずしも枝管部に排水横管の端部を真っ直ぐに入れる必要がなくなる。したがって、施工性が向上する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、空間形成部は、受口本体の底部のみに形成される。
【0012】
第2の発明によれば、排水横管が受口本体の上部(頂部)から底部に向かって斜め挿入されても、ゴム輪の転びを防止しつつ、ゴム輪の破損および捲れを適切に防止できる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、受口本体の先端部の外周面下部を切り欠くように形成される平面部を備える。
【0014】
第3の発明によれば、枝管部(延いては管継手)を床スラブのより近傍に配置できるので、床下空間の高さをより抑えて住空間をより広く確保することができる。また、平面部を把持部として用いることができるので、管継手のハンドリングが容易となる。
【0015】
第4の発明は、第1または第2の発明に従属し、受口本体の先端部の内径は、排水横管の外径の1.01倍以上1.15倍以下の大きさである。
【0016】
第4の発明によれば、ゴム輪のボリュームが大きくなり過ぎることを防止しつつ、受口本体に対する排水横管の斜め挿入角度を取り易くすることができる。
【0017】
第5の発明は、第1または第2の発明に従属し、受口本体の先端からゴム輪溝の中央までの軸方向長さである第1長さは、5mm以上20mm以下である。
【0018】
第5の発明によれば、受口本体の先端付近にゴム輪が装着されるため、受口本体に対する排水横管の斜め挿入角度を取り易くすることができる。
【0019】
第6の発明は、第1または第2の発明に従属し、受口本体の奥部の内周面に形成されるストッパを備え、ゴム輪溝の中央からストッパの受口本体先端側の端縁までの軸方向長さである第2長さは、25mm以上50mm以下である。
【0020】
第6の発明によれば、受口本体の内径を過大に大きくすることなく(つまり挿入した排水横管の外側面と受口本体の内側面との隙間を大きくし過ぎることなく)、排水横管の斜め挿入角度が取り易い受口長さとなり、ゴム輪による止水性を確保しつつ、排水横管を適正位置まで挿入し易くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、枝管部がリップ部の逃げ空間を形成する空間形成部を有するので、ゴム輪の破損および捲れを適切に防止でき、施工不良を適切に防止できる。また、施工性も向上する。
【0022】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の一実施例である上部管継手を備える集合継手を配管した様子を示す断面図である。
【
図4】集合継手が備える管本体を示す片側断面図である。
【
図7】管本体が備える上部管部材を示す斜視図である。
【
図8】管本体が備える第2ゴム輪受口部材(枝管部)の一例を示す正面図である。
【
図10】ゴム輪を装着した状態の第2ゴム輪受口部材を示す断面図である。
【
図11】第2ゴム輪受口部材の他の例を示す正面図である。
【
図13】第2ゴム輪受口部材に形成される空間形成部の他の例を示す斜視図である。
【
図15】空間形成部のさらに他の例を示す断面図である。
【
図16】空間形成部のさらに他の例を示す断面図である。
【
図17】
図1の集合継手の枝管部に排水横管の端部を真っ直ぐに挿入した様子を示す図である。
【
図18】従来の集合継手の枝管部に排水横管の端部を斜めに挿入したときのゴム輪の挙動を模式的に示す図である。
【
図19】
図1の集合継手の枝管部に排水横管の端部を斜めに挿入したときのゴム輪の挙動を模式的に示す図である。
【
図20】第2ゴム輪受口部材のさらに他の例を示す正面図である。
【
図22】
図21のXXII-XXII線における第2ゴム輪受口部材の断面を示す断面図である。
【
図23】第2ゴム輪受口部材のさらに他の例を示す断面図である。
【
図24】この発明の他の実施例の上部管継手を備える集合継手を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1-
図3を参照して、この発明の一実施例である上部管継手30は、マンションおよび商業ビル等の多層階の建物において、排水立て管100と排水横管102との合流部分に設けられる管継手である。この実施例では、上部管継手30は、集合継手10に組み込まれて集合継手10の一部(上部)を構成する。詳細は後述するように、集合継手10(排水集合管とも言う。)は、管本体12、熱膨張部18および振動絶縁部20などを備える。また、集合継手10(上部管継手30)の管本体12は、立て管部14と、立て管部14から側方に突出する枝管部16とを備える。集合継手10の管本体12の立て管部14は、建物の床スラブ104を貫通するように配管されて、排水立て管100と接続される。また、枝管部16のそれぞれは、ゴム輪受口構造を有しており、床スラブ104の上面に沿うように配管されて、排水横管102と接続される。
【0025】
以下、この発明に係る管継手の一例である上部管継手30が一体化されている集合継手10の構成について具体的に説明する。以下では、内径が100mmの排水立て管100に対して、内径が75mmの3つの排水横管102を合流させる3枝タイプの集合継手10を例示して説明する。ただし、この実施例で示す上部管継手30および集合継手10の具体的構成は、単なる一例であり、適宜変更可能である。
【0026】
図1-
図3と共に
図4-
図6を参照して、集合継手10は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される管本体12を備える。管本体12は、立て管部14と枝管部16とを備え、この実施例では、受口本体を含む複数の管部材を組み合わせることで構成されている。複数の管部材は、たとえば接着接合によって一体化される。ただし、各管部材の接続部における受け差しは、どちらが受けでも差しでも構わない。また、管本体12の全体または複数の管部材のうちの一部を一体成形することもできるし、鋳鉄などの金属によって管本体12を形成することもできる。さらに、管本体12の全体または一部(たとえば、後述する第1ゴム輪受口部材36および第2ゴム輪受口部材38)は、透明樹脂によって形成することもできる。
【0027】
具体的には、集合継手10の管本体12は、管本体12の上部を構成する部材である上部管継手30と、管本体12の下部を構成する部材である下部管継手32とを含む。上部管継手30は、上部管部材34、上部立て管用の第1ゴム輪受口部材36、および横管用(横枝用)の第2ゴム輪受口部材38を含む。一方、下部管継手32は、中部管部材40および下部管部材42を含む。
【0028】
なお、上部管継手30の立て管部は、主として、上部管部材34および第1ゴム輪受口部材36によって構成され、上部管継手30の立て管部を含む管本体12(つまり集合継手10)の立て管部14は、上部管部材34、第1ゴム輪受口部材36、中部管部材40および下部管部材42によって構成される。また、上部管継手30の枝管部は、管本体12の枝管部16であり、主として、第2ゴム輪受口部材38によって構成される。
【0029】
上部管部材34は、上下方向に延びる円筒状の胴部44を備える。この胴部44の内径は、排水立て管100の内径よりも大きく設定されている。ただし、胴部44の上端部は、排水立て管100の内径と略同じ内径を有するように、段差状に縮径されている。この胴部44の上端部は、後述する第1ゴム輪受口部材36の第2接続部36bと接着接合される第1接続部44aとして用いられる。また、胴部44の下端部は、後述する中部管部材40の第4接続部40aと接着接合される第3接続部44bとして用いられる。さらに、胴部44には、第1接続部44aの下側において、側方に分岐する短円筒状の3つの第5接続部46が周方向に並ぶように形成される。これら第5接続部46のそれぞれには、後述する第2ゴム輪受口部材38の第6接続部62が接着接合される。
【0030】
第1ゴム輪受口部材36は、上側に形成される受口本体36aと、下側に形成される第2接続部36bとを備える。受口本体36aの内周面にはゴム輪溝が形成されており、このゴム輪溝にはゴム輪が装着される。この受口本体36aに対して、上流側の排水立て管100の下端部が挿入されてゴム輪接合される。第1ゴム輪受口部材36の受口本体36aは、斜め挿入となる施工条件になる可能性が低いので、後述する斜め挿入対策が施された第2ゴム輪受口部材38の受口本体60と同じ構成を有するようにしてもよいし、異なる構成を有するようにしてもよい。異なる構成とする場合は、第1ゴム輪受口部材36に装着されるゴム輪は、第2ゴム輪受口部材38に装着されるゴム輪72よりもボリュームを大きくして、排水立て管100の自重をゴム輪で支える構成としてもよい。
【0031】
一方、第2ゴム輪受口部材38は、排水横管102の端部が挿入される受口本体60と、受口本体60の基端部に形成される第6接続部62とを備える。この第2ゴム輪受口部材38(つまり枝管部16)の具体的構成については、後述する。
【0032】
また、上部管部材34の胴部44の内周面には、各第5接続部46の基端側開口の両側に、胴部44の軸方向(上下方向)に沿って延びるリブ状の逆流防止板50が形成される。この逆流防止板50は、排水横管102から管本体12の立て管部14内に流入した排水が他の排水横管102に逆流することを防止する。
【0033】
さらに、上部管部材34の胴部44の内周面には、周方向に沿って延びる1つの偏流板52が形成される。この実施例では、偏流板52は、3方に分岐する第5接続部46のうちの真ん中に配置される第5接続部46の上側において、第1接続部44aの内周面から突出するように形成される。偏流板52は、排水立て管100から管本体12の立て管部14内に流入した排水を偏流および減速させることによって、排水能力を向上させるものである。具体的には、偏流板52は、その突出端が平面視で中央部が管本体12の立て管部14の軸中心に向かって膨らむ凸曲面状に形成され、その上面が基端から突出端に向かうに従って低くなる凸曲面状に形成される。すなわち、偏流板52は、上面から突出端(側面)にかけて全体に丸みを帯びた形状を有している。このような偏流板52の詳細については、この出願人による特開2023-36894号公報に記載されているので、それを参照されたい。ただし、偏流板52の具体的構成については、適宜変更可能であり、偏流板52は、たとえば、立て管部14の軸線に対して傾斜する平板状に形成されてもよいし、立て管部14の中心側から見て多角形状に形成されてもよい。
【0034】
中部管部材40は、上下方向に延びる円筒状の管部材であって、上端側に形成される第4接続部40aと、下端側に形成される第7接続部40bとを備える。第4接続部40aには、上部管部材34の第3接続部44bが接着接合され、第7接続部40bには、後述する下部管部材42の第8接続部42aが接着接合される。また、中部管部材40の上部は、上部管部材34の胴部44の内径と同じ内径を有しており、中部管部材40の下部には、下方に向かうに従い径小となるテーパ部40cが形成される。
【0035】
また、中部管部材40の内周面には、旋回羽根54が設けられる。旋回羽根54は、中部管部材40の軸方向(上下方向)に対して斜め方向に延びる略平板状に形成される。このような旋回羽根54は、中部管部材40内(つまり立て管部14内)を流下する排水に旋回力を与えて、旋回流を発生させることで排水能力を向上させる。なお、旋回羽根54は、図示したように中部管継手40の管壁を内側に窪ませるようにして形成することもできるし、管壁外面に窪みが生じないように形成することもできる。
【0036】
下部管部材42は、上下方向に延びる直管タイプの管部材であって、排水立て管100の内径と同じ内径を有する。下部管部材42の上端部は、中部管部材40の第7接続部40bと接着接合される第8接続部42aとして用いられる。また、下部管部材42の下端部は、下流側の排水立て管100との第9接続部42bとして用いられる。この実施例では、第9接続部42bには、下部立て管用の第3ゴム輪受口部材106を介して、下流側の排水立て管100の上端部が接続される。ただし、第9接続部42bは、受口形状を有していてもよいし、第9接続部42bに接続される排水立て管100は、ベンド管などであってもよい。
【0037】
このような集合継手10の管本体12は、上述のように、立て管部14が床スラブ104の貫通孔104aを貫通するように配管され、枝管部16のそれぞれが床スラブ104の上面に沿うように配管される。そして、この実施例では、上部管部材34の胴部44(つまり上部管継手30の立て管部)の下部および中部管部材40の上部が床スラブ104の貫通孔104a内に配置される部分(貫通管部)となる。ただし、貫通管部の範囲は床スラブ104の厚みによって変わり、第3接続部44bの下端から第7接続部40bの上端までの部分が貫通管部となる場合もある。
【0038】
また、立て管部14には、床スラブ104の貫通孔104a内に配置される部分(貫通管部)に、熱膨張部18が設けられる。熱膨張部18は、火災時に熱膨張して貫通孔104aを閉塞することによって、床スラブ104の下階で発生した熱、火炎および煙などが貫通孔104aを通過して上階側に到達することを防止するためのものである。熱膨張部18は、熱膨張性黒鉛を含有するゴム系材料または樹脂製材料などの熱膨張材によって形成され、たとえば、温度が200℃以上になったときに熱膨張してその体積が5~40倍に膨張するものが使用される。
【0039】
この実施例の熱膨張部18は、
図7からよく分かるように、リング状に形成されて、上部管部材34の胴部44(上部管継手30の立て管部)の下部外周面に装着される。ここで、胴部44の下部(第3接続部44bの下端よりも下側の部分)の軸方向長さXは、50mm以上500mm以下の大きさに設定することが好ましい。これにより、第3接続部44bの接続代を確保しつつ、胴部44に熱膨張部18を適切に取り付けることができると共に上部管部材34のみで床スラブ104を貫通させることもできるからである。このような熱膨張部18を備えることで、上部管継手30および集合継手10を耐火構造物(令8区画ほか)に適用できるようになる。
【0040】
また、立て管部14の外周面には、筒状の振動絶縁部20がさらに設けられる。この振動絶縁部20は、上端部および下端部などに巻き付けられた固定テープ26によって立て管部14に固定される。振動絶縁部20は、管本体12内を流れる排水に起因する振動が床スラブ104に伝わることを低減する、つまり躯体伝播音を低減することで、排水騒音を防止する部材である。振動絶縁部20は、たとえば、グラスウール、ロックウールおよびシリカ繊維などで形成された不織布層(基材層)とその表面を覆うアルミ箔層とを含む。この振動絶縁部20の不織布層は、耐熱温度が800℃以上である繊維を用いて形成されたものを用いることが好ましい。これにより、火災時において熱膨張部18の落下を防止する落下防止部材として振動絶縁部20を用いることができ、熱膨張部18によって床スラブ104の貫通孔104aを確実に閉塞できるからである。このような振動絶縁部20の詳細については、この出願人による特開2021-38829号公報に記載されているので、それを参照されたい。ただし、振動絶縁部20の具体的構成については、適宜変更可能である。
【0041】
さらに、管本体12の立て管部14(具体的には上部管部材34の胴部44の下部)には、貫通孔104aの上縁部に対応する位置において、熱膨張部18の上端面を覆うように円環状のゴムパッキン22が設けられる。このゴムパッキン22によって、管本体12と振動絶縁部20との間が止水され、この間を伝う下階への漏水が防止される。なお、集合継手10の外周面と貫通孔104aの内周面との間には、モルタル等の充填材108が充填される。
【0042】
また、枝管部16(具体的には後述する第2ゴム輪受口部材38が備える受口本体60)の先端部の外周面下部には、ゴムまたはスポンジ等で形成される緩衝部24が設けられる。これにより、床スラブ104との接触による枝管部16の損傷を防止でき、集合継手10を設置する際の位置決めも容易となる。
【0043】
続いて、
図8-
図10を参照して、第2ゴム輪受口部材38(つまり枝管部16)の構成について具体的に説明する。
図8-
図10に示すように、第2ゴム輪受口部材38は、ゴム輪受口構造を有しており、円筒状に形成される受口本体60を備える。受口本体60の基端部(奥側の端部)の外周面は段差状に縮径されており、この受口本体60の基端部が第6接続部62として用いられる。この第6接続部62は、上述のように、上部管部材34の第5接続部46と接着接合される。ただし、上部管部材34と第2ゴム輪受口部材38とは、スペーサ(ブッシュ)を介して接続されても構わない。
【0044】
受口本体60の先端部の内周面60aには、周方向に延びる環状のゴム輪溝64が形成される。具体的には、ゴム輪溝64は、管軸に平行な短円筒状の基壁部66と、基壁部66の管軸方向両端部から径方向(管軸方向に対して垂直な方向)に延びる円環状の側壁部(手前側壁部68および奥側壁部70)とによって形成される。ただし、手前側壁部68および奥側壁部70の一方または双方は、管軸側に向かうに従って互いに離れるように傾斜する傾斜壁であってもよい。
【0045】
ゴム輪溝64には、止水用のゴム輪72(シールリングとも言う。)が装着される。ゴム輪72は、ゴム輪本体74とゴム輪本体74の内周面から突出するリップ部76とを備え、SBR(スチレンブタジエンラバー)等のゴム材料によって形成される。ゴム輪本体74は、ゴム輪溝64内に収容されて基壁部66に密着する部分であり、短円筒状(リング状)に形成される。一方、リップ部76は、排水横管102の端部外周面に密着する部分であり、その基端側(受口手前側)から突出端側(受口奥側)に向かって徐々に縮径する円錐台形の筒状に形成される。なお、ゴム輪溝64には、ゴム輪に72に加えて、ゴム輪72を押さえてゴム輪72の転びを防止するための転び防止部材(図示せず)を装着することもできる。
【0046】
また、ゴム輪72には、予め滑剤が塗布される。第2ゴム輪受口部材38(枝管部16)は、床スラブ104の上面に近接して設けられるため、受口本体60に排水横管102の端部を接続する際に、この接続部に滑剤を塗布することには労力を要する。ゴム輪72に予め滑剤を塗布しておくことで、この塗布作業が不要となるので、作業性が向上される。また、滑剤の塗布量の確認も不要となり、ゴム輪72の捲れを適切に防止できる。
【0047】
また、受口本体60の奥部の内周面には、ストッパ80が形成される。受口本体60に排水横管102の端部を接続する際には、排水横管102の先端がストッパ80に突き当たることで、受口本体60に対する排水横管102の挿入長さが規定されると共に、排水横管102がそれ以上奥側に挿入されることが防止される。この実施例では、ストッパ80は、受口本体60の軸方向に延びる突条であって、周方向に120度間隔で3つ形成される。ストッパ80の突出高さは、たとえば2mm以上5mm以下に設定することが好ましく、ストッパ80の軸方向長さは、たとえば5mm以上20mm以下に設定することが好ましい。また、ストッパ80の先端面80aは、先端(上流側)に向かって徐々に高さが低くなる傾斜面になっている。これにより、仮に排水横管102が熱伸長しても、排水横管102の端部がストッパ80上に乗り上げることで、この熱伸長を受口本体60内で吸収できるので、排水横管102および上部管継手30(集合継手10)の破損を防止できる。
【0048】
また、ストッパ80は、受口本体60の底部以外に設けられることが好ましい。具体的には、ストッパ80は、受口本体60の頂点を中心にして、それぞれ120度以下、つまり240度以下の周方向範囲に形成されることが好ましく、180度以下の周方向範囲に形成されることがより好ましく、60度以下の周方向範囲に形成されることがさらに好ましい。これにより、仮に排水横管102が熱収縮してストッパ80と離れた場合でも、受口本体60の底面(つまり排水面)にストッパ80がないため、排水面に段差ができて排水性能に支障をきたすことや、排水に含まれる夾雑物がこの隙間に留まることを防止できる。
【0049】
ただし、ストッパの配置態様は、適宜変更可能である。たとえば、ストッパは、周方向に所定間隔で形成されてもよいし、周方向に延びるように連続で形成されていてもよい。また、ストッパは、必ずしも受口本体60に一体成形する必要はなく、受口本体60の奥部に緩衝部材を設け、この緩衝部材をストッパとして用いることもできる。
【0050】
さらに、受口本体60の奥側の底部内周面には、軸方向に延びる溝部60bが形成される。これにより、受口本体60の内周面と上部管部材34の第5接続部46の内周面との間に大きな段差が形成されることが防止される。
【0051】
そして、この実施例では、受口本体60の内周面60aに空間形成部82が形成される。空間形成部82は、ゴム輪溝64の内部空間64aと連通するリップ部76の逃げ空間82aを形成する部分であり、ゴム輪溝64の奥側壁部70の内側面と連なって形成される。この実施例では、受口本体60の内周面60aの奥側壁部70と連なる部分を面取りすることで、空間形成部82を形成している。この空間形成部82の内周面は、奥側壁部70の内側面と空間形成部82奥側の受口本体60の内周面60aとを連結するテーパ面状またはR面状(曲面状)に形成される。
【0052】
ここで、受口本体60の先端部の内径R(つまり開口径)は、排水横管102の外径の1.01倍以上1.15倍以下の大きさに設定することが好ましい。内径Rがこの範囲より大きいと、ゴム輪72のボリュームが大きくなり過ぎるからであり、この範囲より小さいと、受口本体60に対する排水横管102の斜め挿入角度を取り難くなるからである。この実施例では、排水横管102の外径が89mmであるのに対して、受口本体60の先端部の内径Rは、90.5mm(つまり1.017倍)である。
【0053】
また、ゴム輪72は、受口本体60の先端近くに設けることが好ましい。具体的には、受口本体60の先端からゴム輪溝64の中央までの軸方向長さである第1長さL1は、5mm以上20mm以下に設定することが好ましい。これにより、受口本体60に対する排水横管102の斜め挿入角度を取り易くなるからである。この実施例では、第1長さL1は、11.5mmである。
【0054】
さらに、ゴム輪溝64の中央からストッパ80の先端側の端縁までの軸方向長さである第2長さL2は、25mm以上50mm以下に設定することが好ましい。第2長さL2がこの範囲より大きいと、排水横管102を適正位置まで挿入し難くなり、排水横管102の斜め挿入により受口本体60に負荷(モーメント)が掛かり、集合継手10が破損したり床スラブ104から剥離したりする恐れが生じるからである。一方、第2長さL2がこの範囲より小さいと、排水横管102が熱収縮したときや施工ミス(挿入不足)があったときに、ゴム輪72による止水性を確保できなくなる恐れが生じるからである。第2長さL2を上記範囲内に設定することで、受口本体60の内径を過大に大きくすることなく(つまり挿入した排水横管102の外側面と受口本体60の内側面との隙間を大きくし過ぎることなく)、排水横管102の斜め挿入角度が取り易い受口長さとなる。この実施例では、第2長さL2は、28.7mmである。
【0055】
また、内径R、第1長さL1および第2長さL2のそれぞれを上記範囲内に設定することで、受口本体60に対する排水横管102の斜め挿入角度が5度以上10度以下の範囲で許容されるようになる。すなわち、排水横管102の斜め挿入角度を適切に取ることができるので、受口本体60に対して排水横管102を接続し易くなる。
【0056】
なお、上述の実施例では、内径75mmの3つの排水横管102を合流させる3枝タイプの集合継手10(上部管継手30)を例示して説明したが、枝管部16の数は、適宜変更可能であり、1つまたは2つ以上でも構わない。また、枝管部16に接続する排水横管102としては、内径が50mm~100mmのものが好適であるが、複数の枝管部16を設ける場合には、同じ内径の排水横管102が接続されてもよいし、異なる内径の排水横管102が接続されてもよい。なお、異なる内径用の枝管部16を設ける場合(たとえば、100mm用の枝管部16を基準として、50mm用の枝管部16を設ける場合)には、スペーサ(ブッシュ)を介して上部管部材34と第2ゴム輪受口部材38とを接続すると好適である。
【0057】
図11および
図12には、内径100mmの排水横管102が接続される第2ゴム輪受口部材38の一例を示す。簡単に説明すると、
図11および
図12に示す第2ゴム輪受口部材38は、円筒状に形成される受口本体60を備える。また、受口本体60の基端側には、下方に傾斜する傾斜管部を介して第6接続部62が形成される。この実施例の第6接続部62は、接着受口であり、この第6接続部62に上部管部材34の第5接続部46が挿入されて接着接合される。
【0058】
また、受口本体60の先端部の内周面60aには、周方向に延びる環状のゴム輪溝64が形成される。この実施例では、受口本体60の先端部に形成した拡径部にゴム輪溝64が形成される。ゴム輪溝64には、ゴム輪72が装着される。また、受口本体60の奥部の内周面には、ストッパ80が形成される。さらに、受口本体60の内周面60aには、空間形成部82が形成される。空間形成部82は、ゴム輪溝64の奥側壁部70の内側面と連なって形成され、ゴム輪溝64の内部空間64aと連通する逃げ空間82aを形成する。また、この実施例では、接続される排水横管102の外径が114mmであるのに対して、受口本体60の先端部の内径Rは、116.5mm(つまり1.022倍)である。また、第1長さL1は、14.1mmであり、第2長さL2は、36.2mmである。
【0059】
ここで、空間形成部82は、上述の実施例で示したように受口本体60の全周に亘って設けることもできるが、
図13および
図14に示すように、受口本体60の底部のみに形成することが好ましい。具体的には、空間形成部82は、受口本体60の底点を中心とする30度以上180度以下(12分の1周以上半周以下)の周方向範囲に形成することが好ましく、30度以上120度以下(12分の1周以上3分の1周以下)の周方向範囲に形成されることがより好ましい。空間形成部82を形成する周方向範囲(周方向長さ)を大きくし過ぎると、ゴム輪72の転びが生じる可能性が出てくるからであり、空間形成部82を形成する周方向範囲を小さくし過ぎると、リップ部76の逃げ空間82aを適切に形成できないからである。また、空間形成部82が形成する逃げ空間82aの体積は、受口本体60の先端およびゴム輪72の位置に基づいて算出される、受口本体60に斜め挿入された排水横管102の端部によって引き延ばされるリップ部76の体積分以上の大きさに設定することが好ましい。
【0060】
なお、上述の実施例では、受口本体60の内周面60aを面取りすることで空間形成部82を形成したが、これに限定されない。たとえば、
図15に示すように、空間形成部82は、受口本体60の管壁をR形状(曲壁状)またはテーパ状とすることで形成することもできる。また、
図16に示すように、空間形成部82とゴム輪溝64とで2段の溝状となるように空間形成部82を形成することもできる。
【0061】
続いて、
図17-
図19を参照して、集合継手10の枝管部16に排水横管102の端部を接続するときの空間形成部82の作用について説明する。
【0062】
図17に示すように、集合継手10の枝管部16には、排水横管102の端部(差口)が挿入される。この際、枝管部16の受口本体60に対して排水横管102の端部が真っ直ぐに挿入された場合には、排水横管102の先端がゴム輪72のリップ部76に引っ掛かることなく、排水横管102の端部がゴム輪72を通過する。そして、ゴム輪溝64の内周面と排水横管102の外周面との間でゴム輪72(ゴム輪本体74およびリップ部76)がゴム輪溝64内で収まるように圧縮(接合)されることで、この間の止水性が確保される。
【0063】
しかしながら、集合継手10の枝管部16は、床スラブ104の上面近傍に配置されるため、受口本体60に対して排水横管102の端部を挿入する際には、排水横管102の先端側が下となる斜め挿入になり易い。ここで、
図18に示すように、空間形成部のない従来の集合継手200の枝管部202では、排水横管102の端部が斜め挿入されると、ゴム輪204のリップ部206に排水横管102の先端が引っ掛かってリップ部206が引き延ばされ、排水横管102の先端とゴム輪溝208の奥側壁部との間にリップ部206が挟まってしまう。この状態で排水横管102の端部を無理にねじ込むと、ゴム輪204が損傷してしまう。つまり、適切な接合ができず、施工ミス(漏水)の原因になる。
【0064】
これに対して、
図19に示すように、空間形成部82を備える枝管部16では、排水横管102の端部が斜め挿入されたときにリップ部76が引き延ばされても、引き延ばされたリップ部76は、空間形成部82が形成する逃げ空間82a内に入り込む(逃げる)ことができるので、リップ部76の挟み込みを適切に回避することができる。また、斜め挿入時にリップ部76が引き延ばされても、枝管部16に対する排水横管102の接続が完了したときには、空間形成部82の内周面に沿ってリップ部76(延いてはゴム輪72)が正規の位置に戻る。したがって、ゴム輪72が捲れた状態で接合されることを防止できる。さらに、空間形成部82の内周面がR面状に形成されていれば、排水横管102の先端がRに沿って移動するようになり、せん断の力が緩和される。したがって、リップ部76の挟み込みをより適切に回避することができ、リップ部76が損傷することなく、止水性が確保される。
【0065】
以上のように、この実施例によれば、上部管継手30(延いては集合継手10)の枝管部16(ゴム輪受口)がリップ部76の逃げ空間82aを形成する空間形成部82を有するので、排水横管102の端部(差口)が斜め挿入された際のリップ部76の挟み込みを適切に回避することができる。したがって、ゴム輪72の破損および捲れを適切に防止でき、排水横管102の端部を枝管部16に接続する際の施工不良を適切に防止できる。
【0066】
また、枝管部16に排水横管102の端部が斜め挿入されてもゴム輪72の破損や捲れを防止できるので、必ずしも枝管部16に排水横管102の端部を真っ直ぐに入れる必要がなくなる。すなわち、排水横管102の斜め挿入も可能となるので、施工性が向上する。
【0067】
さらに、枝管部16の受口本体60の底部のみに空間形成部82を形成することで、ゴム輪72の転び(ゴム輪溝64からのゴム輪72の離脱)を適切に防止しつつ、リップ部76の挟み込みを回避してゴム輪72の破損および捲れを適切に防止できる。
【0068】
なお、上述の実施例では、枝管部16(第2ゴム輪受口部材38)の受口本体60の先端部外周面を円形(円筒形)としているが、これに限定されない。
図20-
図22に示す実施例のように、受口本体60の先端部には、外周面下部を切り欠くように平面部84を形成しておくこともできる。このような平面部84を枝管部16が有することで、枝管部16を床スラブ104のより近傍に配置できるので、床下空間の高さをより抑えて住空間をより広く確保することができる。
【0069】
さらに、この平面部84は、集合継手10を移動(ハンドリング)する際の把持部としても利用できる。集合継手10を移動時には、この平面部84に手指を掛けることで、集合継手10を容易に移動させることができる。特に、ゴム輪72や受口本体60の内周面に予め滑剤を塗布しておく場合には、受口本体60の内周面に手指を掛けると手指が汚れたり滑剤が剥がれ落ちたりしてしまうが、平面部84を把持部として用いることでこれが防止される。なお、この平面部84には、緩衝部を取り付けておくこともできる。
【0070】
また、上述の実施例では、枝管部16(第2ゴム輪受口部材38)の受口本体60の内周面にゴム輪溝64を予め形成しておくようにしたが、これに限定されない。
図23に示す実施例のように、ゴム輪溝64は、第2ゴム輪受口部材38の受口本体60の先端部に押さえ部材86を取り付けることで形成されてもよい。
【0071】
簡単に説明すると、受口本体60の先端部は、上述の手前側壁部68(環状突起)が形成されずに直管状に形成される。また、押さえ部材86は、受口本体60の先端部に外嵌めされる短円筒状の嵌合部88と、嵌合部88の先端から内側に突出する円環板状の壁部90とを備える。そして、受口本体60の先端部に押さえ部材86を取り付けることで、押さえ部材86が枝管部16の先端部の一部となって壁部90がゴム輪溝64の手前側壁部68を構成し、ゴム輪溝64が形成される。
【0072】
また、壁部90(つまり枝管部16の先端部)の外周面下部には、平面部84が形成される。さらに、図示は省略するが、第2ゴム輪受口部材38および押さえ部材86には、第2ゴム輪受口部材38に対する押さえ部材86の周方向位置を合わせるための位置合わせ部が設けられる。位置合わせ部は、たとえば、受口本体60に形成される凸部と、押さえ部材86に形成される凹部とで構成される。これにより、押さえ部材86の組立ミスが防止され、平面部84が必ず下側にくるようにできる。
【0073】
さらに、上述の実施例では、管本体12(具体的には上部管部材34の胴部44の下部)の外周面に熱膨張部18を取り付けるようにしたが、これに限定されない。熱膨張部18は、管本体12の管壁内部に埋め込まれていてもよいし、管本体12の管壁自体に熱膨張性黒鉛を所定の割合(たとえば3%以上10%以下の重量割合)で含むことで形成されてもよい。また、熱膨張部18は、中部管部材40に設けることもできる。さらに、熱膨張部18は、必ずしも貫通孔104a内に納まるように設けられる必要はなく、その一部が貫通孔104aから突出するように設けられていても構わない。
【0074】
なお、この発明に係る管継手は、上述のように集合継手10の一部(上部)を構成する上部管継手30のことを言う事もあれば、上部管継手30および下部管継手32を含む集合継手10のことを言う事もある。また、上述の実施例では、管継手の上流側および下流側の双方に排水立て管100を接続しているが、排水立て管100は、管継手の上流側および下流側の少なくとも一方に接続されていればよい。したがって、この発明に係る管継手は、戸建て住宅の基礎上などに設置される集合ますの上部などにも適用可能である。さらに、集合継手10の具体的構成は、上述のように適宜変更可能である。たとえば、
図24に示すように、胴部44の下部の軸方向長さを大きくすることで上部管継手30(上部管部材34)のみで床スラブ104を貫通させることもできるし、上部管継手30と下部管継手の他の例であるベンド管92(脚部継手)とで集合継手10を構成することもできる。
【0075】
また、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 …集合継手(管継手の他の例)
12 …管本体
14 …立て管部
16 …枝管部
18 …熱膨張部
20 …振動絶縁部
24 …緩衝部
30 …上部管継手(管継手の一例)
32 …下部管継手
34 …上部管部材
36 …第1ゴム輪受口部材
38 …第2ゴム輪受口部材
60 …受口本体
64 …ゴム輪溝
72 …ゴム輪
80 …ストッパ
82 …空間形成部
84 …平面部
100 …排水立て管
102 …排水横管
104 …床スラブ