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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015901
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】アスファルトプラント
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/10 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
E01C19/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118785
(22)【出願日】2023-07-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年10月31日~令和4年11月11日に展示会「日工メッセ2022」にて展示 〔刊行物等〕 令和5年1月24日に株式会社PRTIMSのウェブサイト(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000081441.html)に掲載 〔刊行物等〕 令和5年4月3日に日工株式会社発行の日工テクニカルレポート,第四号に掲載 〔刊行物等〕 令和5年4月3日に日工株式会社のウェブサイト(https://www.nikko-net.co.jp/product/technical-report.html)に掲載
(71)【出願人】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三木 隆史
(72)【発明者】
【氏名】久保 直志
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓馬
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AA15
2D052BA03
2D052BA08
2D052BA13
2D052BA23
2D052CA13
2D052DA06
2D052DA14
2D052DA22
(57)【要約】
【課題】 簡素な構成にて所定粒径以下の不良材およびオーバーサイズ材をプラント外へと排出可能としたアスファルトプラントを提供する。
【解決手段】 自重落下投入式のアスファルトプラント1のトロンメル17下位に加熱廃材の排出先切り替え手段36を介在させ、排出先切り替え手段36は、網目部18を通過する所定粒径以下の加熱廃材R1、R3の排出先を、トロンメル17下位に配した廃材貯蔵ビン23、または系外排出路31の何れかより選択可能とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台上に回転自在に傾斜支持した廃材ドライヤのキルン本体の一端側にホットホッパを、他端側に排気煙道と接続したコールドホッパを設け、前記廃材ドライヤの前記ホットホッパ側に廃材供給手段およびバーナを備える一方、前記コールドホッパ側の前記キルン本体端部にトロンメルを連結し、該トロンメルの網目部を通過しない粒径の加熱廃材を、前記トロンメル終端部下位に配した系外排出路を経由してプラント外へと排出可能な構成としたアスファルトプラントであって、前記トロンメル下位に加熱廃材の排出先切り替え手段を介在させ、該排出先切り替え手段は、前記網目部を通過する所定粒径以下の加熱廃材の排出先を、前記トロンメル下位に配した廃材貯蔵ビン、または前記系外排出路の何れかより選択可能としたことを特徴とするアスファルトプラント。
【請求項2】
前記排出先切り替え手段は、前記排出先として前記系外排出路が選択されているとき、傾斜状態をとると共に、傾斜方向下位に配した前記系外排出路へと前記加熱廃材を案内可能としたことを特徴とする請求項1記載のアスファルトプラント。
【請求項3】
前記排出先切り替え手段は、軸心部を中心に回動可能なダンパであることを特徴とする請求項1または2記載のアスファルトプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装材であるアスファルト混合物を製造するアスファルトプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトプラントにおいては、道路工事等によって掘り起こされたアスファルト舗装廃材(以下「廃材」という)の再利用を図るため、廃材を所定粒径(例えば13mm)以下に破砕・分級して廃材ドライヤに投入し、バーナの熱風に晒して所定の目標温度(160℃程度)に加熱再生した加熱廃材を、アスファルト混合物の材料として使用している。
【0003】
このとき、破砕機の不調や、廃材同士の付着・団粒化といった何らかの要因により、所定粒径を超えるオーバーサイズの加熱廃材が発生する場合があるが、こうしたオーバーサイズの加熱廃材がアスファルト混合物の材料として使用されると、道路舗装の窪み・ひび割れ(ポットホール)の原因になる等の問題がある。
【0004】
こうした問題への対策として、本出願人は特許文献1に示すように、廃材ドライヤのキルン本体の後端部に加熱廃材篩い分け用のトロンメルを連結し、トロンメルの網目部を通過した所定粒径以下の加熱廃材を、アスファルト混合物の材料としてプラント内の設備(例えば、加熱廃材貯蔵用の廃材貯蔵ビン)に供給する一方、網目部を通過しないオーバーサイズの加熱廃材をプラント外へと排出する構成とした廃材ドライヤを提案している。
【0005】
他方、立地上の問題等を解消すべく、アスファルトプラントの省スペース化が望まれており、本出願人は特許文献2に示すように、架台上に搭載した廃材ドライヤの排出側端部を、縦長円筒形状とした廃材貯蔵ビン上部に接続し、廃材ドライヤから排出される加熱廃材を廃材貯蔵ビン内部へと直に自重落下投入する構成としたアスファルトプラントを提案している。かかる構成により搬送装置を極力不要として設備の簡素化をも実現しており、こうした自重落下投入式のアスファルトプラントに、特許文献1のトロンメル付き廃材ドライヤを組み込んだ設備は近年の主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7-10009号公報
【特許文献2】特開2015-227598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、廃材ドライヤによる廃材の加熱再生の過程では、加熱不足等の様々な原因により所定品質を具備しない加熱廃材(不良材)が生産される場合があり、アスファルト混合物の材料として適さないこのような不良材は、プラント外に排出(系外排出)することが望ましい。ところが、上記構成の自重落下投入式のアスファルトプラントにおいては、たとえ不良材であっても所定粒径以下のものは網目部を通過し、廃材貯蔵ビン内部へとそのまま落下混入することになる。
【0008】
この場合、例えば、不良材の混入した廃材貯蔵ビン内の加熱廃材を一旦全排出する対応をとることが考えられるものの、廃材の加熱に要したエネルギーの無駄となり、経済上好ましいものではない。
【0009】
そこで、加熱廃材の全排出を回避するための実機上の対策として、例えば、図6の従来技術に係るアスファルトプラント101が採用されている。図6に示す従来技術は、トロンメル102付き廃材ドライヤ103の排出側端部を、廃材貯蔵ビン104と接続してなる自重落下投入式のアスファルトプラント101において、オーバーサイズの加熱廃材をプラント外へと排出する第一の系外排出路105と、不良材をプラント外へと排出する第二の系外排出路106とを独立別個に備える。第一の系外排出路105は廃材貯蔵ビン104内部においてトロンメルの終端部102aに連結され、廃材貯蔵ビン104外へと延出する。また、第二の系外排出路106は廃材貯蔵ビン104側部に連結され、第二の系外排出路106の開口部付近に、排出先切り替え手段である大型のダンパ107が備えられている。ダンパ107は軸心部108を中心に回動自在に構成される。なお、廃材貯蔵ビン104の最上部には排気煙道109が接続される。
【0010】
そして、前記アスファルトプラント101において、廃材ドライヤ103の運転中は、オーバーサイズの加熱廃材は、ダンパ107の回動位置にかかわらず、トロンメルの網目部102bを通過せずに終端部102aまで送り出され、第一の系外排出路105から廃材貯蔵ビン104外へ、更にはプラント外へと順次排出される。一方、網目部102bを通過する所定粒径以下の加熱廃材は直下の廃材貯蔵ビン104へと順次、自重落下投入される。
【0011】
他方、不良材の発生時には、加熱廃材の自重落下投入経路と平面視で重なる位置までダンパ107を回動させて傾斜配置させることで、網目部102bを通過する所定粒径以下の不良材であっても、自重落下投入を遮って廃材貯蔵ビン104に落下混入させることなく、第二の系外排出路106へと案内してプラント外へと排出するようにしている。
【0012】
しかしながら、前記アスファルトプラント101においては、二系統の系外排出路105、106を別個に備える構成としており、装置がやや大型化・複雑化しているきらいがあった。
【0013】
本発明は上記の点に鑑み、簡素な構成にて所定粒径以下の不良材およびオーバーサイズ材をプラント外へと排出可能としたアスファルトプラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のアスファルトプラントは、架台上に回転自在に傾斜支持した廃材ドライヤのキルン本体の一端側にホットホッパを、他端側に排気煙道と接続したコールドホッパを設け、前記廃材ドライヤの前記ホットホッパ側に廃材供給手段およびバーナを備える一方、前記コールドホッパ側の前記キルン本体端部にトロンメルを連結し、該トロンメルの網目部を通過しない粒径の加熱廃材を、前記トロンメル終端部下位に配した系外排出路を経由してプラント外へと排出可能な構成としたアスファルトプラントであって、前記トロンメル下位に加熱廃材の排出先切り替え手段を介在させ、該排出先切り替え手段は、前記網目部を通過する所定粒径以下の加熱廃材の排出先を、前記トロンメル下位に配した廃材貯蔵ビン、または前記系外排出路の何れかより選択可能としたことを特徴としている。
【0015】
また、請求項2記載のアスファルトプラントは、前記排出先切り替え手段は、前記排出先として前記系外排出路が選択されているとき、傾斜状態をとると共に、傾斜方向下位に配した前記系外排出路へと前記加熱廃材を案内可能としたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項3記載のアスファルトプラントは、前記排出先切り替え手段は、軸心部を中心に回動可能なダンパであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡素な構成にて所定粒径以下の不良材およびオーバーサイズ材をプラント外へと排出可能としたアスファルトプラントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るアスファルトプラントの概略図である。
図2図1のアスファルトプラントの要部拡大断面図である。
図3】(a)13mm粒径以下の加熱廃材の排出先が系外排出路であるときを表す図である。(b)13mm粒径以下の加熱廃材の排出先が廃材貯蔵ビンであるときを表す図である。
図4】本発明に係るアスファルトプラントの運転方法を表すフローチャートである。
図5】(a)本発明に係るアスファルトプラントの第一の変形例を表す図である。(b)本発明に係るアスファルトプラントの第二の変形例を表す図である。
図6】従来技術に係るアスファルトプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るアスファルトプラントにあっては、複数のフロアを有する高架台上に、廃材加熱用の廃材ドライヤを回転自在に傾斜支持する。前記廃材ドライヤの円筒形状のキルン本体の一端側には隔壁体であるホットホッパを、他端側には排気煙道と接続した隔壁体であるコールドホッパをそれぞれ設ける。前記ホットホッパは、高位側のキルン本体一端部(前端部)を覆う一方、前記コールドホッパは、低位側のキルン本体他端部(後端部)を覆う。
【0020】
また、前記廃材ドライヤの前記ホットホッパ側に、廃材供給手段である廃材投入シュートと、熱風供給用のバーナとを備える一方、前記コールドホッパ側の前記キルン本体後端部に、所定形状および大きさの網目部を有した加熱廃材篩い分け用のトロンメルを連結する。更に、トロンメル終端部下位かつ前記コールドホッパ下位に加熱廃材の系外排出路を配し、前記網目部を通過しない、例えば13mm粒径を超えるオーバーサイズの加熱廃材を、前記トロンメル終端部、次いで前記系外排出路を順次経由してプラント外へと排出可能な構成とする。
【0021】
上記構成のアスファルトプラントにおいて、前記トロンメル下位かつ前記コールドホッパ内部に、加熱廃材の排出先切り替え手段を介在させる。具体的には、前記排出先切り替え手段は、加熱廃材を、前記網目部より廃材貯蔵ビンの投入口へと至る自重落下投入経路上で遮って強制的に排出先を変更させる、可動式の遮蔽板である。前記排出先切り替え手段は、前記網目部を通過する所定粒径(13mm)以下の加熱廃材の排出先を、前記トロンメルの前記網目部下位(直下)に投入口を配した前記廃材貯蔵ビン、またはその側方に位置する前記系外排出路の何れかより選択可能とする。
【0022】
なお、従来技術に係るアスファルトプラントにおいては、図6に示すように、縦長の略円筒形状に形成した廃材貯蔵ビン104上部に廃材ドライヤ103の排出側端部(キルン本体後端部)を接続し、廃材貯蔵ビン104そのものが排気室を兼ねた構成としていたので、廃材貯蔵ビン104の開口面積は相応の大きさ(廃材貯蔵ビン104本体の断面積相当)となっていた。
【0023】
これに対して、本発明に係るアスファルトプラントにおいては、廃材貯蔵ビンは、排気室機能を有するコールドホッパと分離した構造としている。かかる分離構造を採用することにより、本発明に係るアスファルトプラントにあっては、廃材貯蔵ビンの上部は投入口相当分だけ開口しており、開口面積は従来比で小さく抑えられている。
【0024】
開口面積が抑制されることで、排出先切り替え手段(加熱廃材の自重落下投入経路を遮るための遮蔽板)の所要サイズを小型化できる等、レイアウト上の融通性が向上する結果、排出先切り替え手段を実機上の好適位置に配置し易いものとなっている。
【0025】
また、本発明に係るアスファルトプラントにおいては、コールドホッパ内部には、オーバーサイズの加熱廃材が排出されるトロンメル終端部、および所定粒径以下の加熱廃材が通過する網目部の両方が位置する。すなわち、コールドホッパ内部は、全粒径の加熱廃材共通の自重落下投入経路となっている。かかる設備構成は非常にコンパクトであり、自重落下投入経路上にて必要最小の排出先切り替え動作を行うだけで、不良材発生等の不具合の際には、所定粒径以下のサイズの加熱廃材が廃材貯蔵ビンへと落下投入されることを遮り、その落下先を、所定粒径を超えるサイズの加熱廃材の落下先と合流させることができる。
【0026】
したがって、本発明に係るアスファルトプラントにあっては、排出先切り替え手段をコールドホッパ内部の好適位置(網目部下位の、所定粒径以下の加熱廃材の自重落下投入経路上)に介在させることで、全粒径の加熱廃材の系外排出路を一纏めに集約化可能となり、設備の簡素化・省スペース化を実現している。
【0027】
好ましくは、前記排出先切り替え手段は、前記所定粒径以下の加熱廃材の排出先として前記系外排出路が選択されているとき、少なくとも前記加熱廃材の安息角以上に急な勾配を有した傾斜状態をとるとよい。これにより、加熱廃材は、前記排出先切り替え手段の案内面(傾斜状態において前記トロンメルと対向する面)上を滑落して系外排出路へと案内されるため、加熱廃材の自重落下を活用して搬送装置を極力不要とすることができ、設備の簡素化・省スペース化に一層有利となる。
【0028】
好ましくは、前記排出先切り替え手段は、軸心部を中心に回動可能なダンパであるとよい。これにより、必要最小の回動動作にて加熱廃材の排出先変更が可能となり、設備の簡素化において一層有利となる。また、投入口の開口面積を抑制したことによりダンパの所要サイズも比較的小さくなっており、図6の従来技術のような大型のダンパ107に比べて動力削減効果も見込める。
【0029】
より好ましくは、前記トロンメルの直下に前記廃材貯蔵ビンを配すると共に、該廃材貯蔵ビンの投入口と前記トロンメルとは平面視で重なる配置とするとよい。これにより、所定粒径以下の加熱廃材を廃材貯蔵ビンへと直に自重落下投入でき、設備の簡素化・省スペース化において一層有利となる。また、粘着性を有する加熱廃材が各種設備へと付着することをも抑制できる。
【0030】
より好ましくは、前記ダンパの軸心部は、前記トロンメル終端部直下に位置すると共に、前記ダンパは、前記所定粒径以下の加熱廃材の排出先が前記廃材貯蔵ビンであるとき、前記ダンパの案内面が鉛直な起立状態をとるとよい。これにより、ダンパが起立状態であるときは、簡素かつ省スペースな構成にて、適正に加熱再生された所定粒径以下の加熱廃材(網目部を通過する、不良材ではない加熱廃材)が系外排出路へと誤って流入することを制限できる。
【0031】
より好ましくは、前記ダンパの軸心部は、前記ダンパの前記案内面方向における中心部に位置するとよい。これにより、回動時のトルクを減らしてダンパの動力を削減できる。なお、図6の従来技術においては、軸心部108はダンパ107の長手方向(案内面方向)における一端部に位置していたことに加え、ダンパ107自体が大型であったため、回動時のトルクが大きく相応の動力を要する他、配置位置のレイアウト上の制約も多かった(廃材貯蔵ビン104の側部以外のレイアウトは採用し難い)。本発明においては、ダンパの小型化等によりレイアウト上の融通性が向上した結果、ダンパの軸心部を、かかる実機上の好適位置に配置可能なものとなっている。
【実施例0032】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るアスファルトプラント1の概略図である。アスファルトプラント1は、道路舗装材であるアスファルト混合物の製造設備であり、複数のフロア2a~2fを有して立設した高架台3の、地上フロア2f側部には、最上フロア2a方向へと廃材を揚送する廃材用垂直搬送装置4を併設する。なお、廃材は、図示しない破砕機・振動篩い等の各装置により、本実施例では13mm粒径以下の適正粒度に破砕・分級されている。
【0033】
高架台3上には、廃材用垂直搬送装置4にて揚送された廃材を加熱再生する廃材ドライヤ5を搭載する。具体的には、高架台3の最上フロア2a上に基台6を若干傾けて配設すると共に、基台6上の支持ローラ7上に略円筒形状のキルン本体8を載置してなり、これによりキルン本体8を回転自在に傾斜支持し、廃材を傾斜方向低位側へと送り出し可能としている。
【0034】
傾斜したキルン本体8の高位側のキルン本体前端部9には、当該キルン本体前端部9を覆う隔壁体であるホットホッパ10を連設する一方、キルン本体8の低位側のキルン本体後端部11には、当該キルン本体後端部11を覆う隔壁体であるコールドホッパ12を連設する。
【0035】
コールドホッパ12には、キルン本体後端部11と対向する壁面を下方先細りのテーパ形状とした縮径部Dを形成してなる。これにより、メンテナンス時には作業者が後述するダンパ等の可動機構といった内部設備へとアプローチし易いものとなる上、プラントからの熱気流出抑制(加熱廃材の温度低下抑制)も期待できるものとなっている。縮径部Dを含むコールドホッパ12上部は、主として廃材ドライヤ5由来の排ガスをプラント外へと導出する排気室機能を担う。
【0036】
また、コールドホッパ12のうち縮径部Dよりも地上側には、下部拡径部Pを形成してなる。下部拡径部Pは、コールドホッパ12のうち、キルン本体後端部11の最も低位となる箇所よりも下部に形成される。本実施例における下部拡径部Pの最大径は、コールドホッパ12上位側の最大径と略等しい。コールドホッパ12の下部拡径部P内部は、主として廃材ドライヤ5にて加熱再生された加熱廃材の落下投入経路となっている。
【0037】
なお、コールドホッパ12の形状は、図面上の記載に限定されず、縮径部Dを省略した各部略同径の縦長の箱体、または円筒体等の形状としても構わない。これらの場合であっても、本発明に係るアスファルトプラント1のコールドホッパ12は、上部が排気室に、下部が加熱廃材の落下投入経路にそれぞれ相当する。
【0038】
廃材ドライヤ5はホットホッパ10と一体構造をなし、ホットホッパ10側に廃材投入シュート(廃材供給手段)13および熱風供給用のバーナ14を備える。これにより、廃材用垂直搬送装置4にて揚送した廃材は、廃材投入シュート13を介して廃材ドライヤ5のキルン本体8内へと供給され、バーナ14の熱風に晒されることで、160℃程度の目標温度まで昇温されて加熱再生される。
【0039】
バーナ14は、バーナ本体15に燃焼用空気供給用の送風ファン16を組み込んでなる。なお、バーナ14の種類は特に限定されず、重油・都市ガス等の化石燃料、木質燃料等のバイオマス、その他の各種燃料(気体・液体・固体の何れも含む)を燃焼可能な工業炉用バーナであればよい。
【0040】
廃材ドライヤ5のキルン本体後端部11には加熱廃材篩い分け用のトロンメル17を備える。トロンメル17は、所定形状(本実施例では矩形の格子体)かつ、適正粒度相応の大きさ(本実施例では1辺の長さ、および対角線長が13mmを超えない)の網目部18を有する。
【0041】
これにより、廃材ドライヤ5にて加熱再生された加熱廃材のうち、13mm粒径以下(適正粒度)の加熱廃材である再生材R1は網目部18を通過して、後述する材料供給用設備へと落下投入される一方、13mm粒径を超える(適正粒度範囲を上振れる)加熱廃材であるオーバーサイズ材R2は、網目部18を通過せずに低位側へと転動してゆき、トロンメル終端部19より排出される。すなわち、加熱廃材はその粒径に応じて、再生材R1とオーバーサイズ材R2とに篩い分けられる。
【0042】
キルン本体後端部11は、トロンメル17と共にコールドホッパ12の壁面(縮径部Dのテーパ形成面と対向する壁面)から内部に向けて貫入し、貫入箇所にはシール部材20を設けて気密性を高めている。また、コールドホッパ12の最上部付近は排気煙道21と接続し、該排気煙道21側には排風機22を備える。これにより、負圧発生源となる排風機22の稼働時には、コールドホッパ12の縮径部D内部付近に充満した廃材ドライヤ5由来の排ガスは吸引され、排気煙道21、次いで該排気煙道21末端の煙突(図示せず)へと順次導出されてプラント外へと排気される。すなわち、縮径部Dを含むコールドホッパ12上部は、廃材ドライヤ5由来の排ガスをプラント外へと導出する排気室機能を担う。
【0043】
他方、コールドホッパ12の下部拡径部P下位には、廃材貯蔵ビン23を配すると共に、その(廃材貯蔵ビン23の)投入口24を位置させている。廃材貯蔵ビン23は、適正粒度の再生材R1を保温状態にて一次的に貯蔵する貯蔵容器であり、本実施例では高架台3の各フロア2a~2cを貫通してアスファルトプラント1に組み込まれる。また、廃材貯蔵ビン23は、トロンメル17の網目部18直下(投入口24が網目部18と平面視で重なる位置)に配設される。
【0044】
この配置構成により、廃材ドライヤ5で加熱再生された加熱廃材のうち、網目部18を通過する適正粒度の再生材R1は、コールドホッパ12の下部拡径部P内部を経由し、網目部18直下の廃材貯蔵ビン23へと落下投入される。
【0045】
このとき、投入口24を、コールドホッパ12の最大径となる箇所(下部拡径部P)の内径、および廃材貯蔵ビン23本体の内径よりも小径としていることから、廃材貯蔵ビン23の上部開口面積は従来技術と比べて抑制されてはいるが、それでもなお、投入口24を開口した状態で排風機22を稼働すると、廃材貯蔵ビン23内部の空気(熱気)は、その投入口24を介してコールドホッパ12の下部拡径部P内部へと流出し得る。そして、流出・上昇した熱気は、縮径部D内部付近に充満した廃材ドライヤ5由来の排ガスと共に、コールドホッパ12上部(排気室相当部分)より吸引・排気され得る構造となっている。
【0046】
こうした熱気流出は貯蔵中の再生材R1の温度低下の要因となり、温度が低下した再生材R1がアスファルト混合物の製造に使用された場合、品質上好ましくないものとなり得るが、本発明においては、後述する加熱廃材の排出先切り替え機構の配置構成により、こうした熱気流出の抑制を図っている。
【0047】
なお、廃材貯蔵ビン23は、本実施例では下方を先細りのテーパ形状に形成した円筒体としたが、所望の形状を採用することができる。また、本実施例では、再生材R1の保温性能を高めるために、断熱材(図示せず)を廃材貯蔵ビン23にのみ施工している。このとき、廃材貯蔵ビン23はコールドホッパ12と分離した構造としているため、コールドホッパ12には断熱材を施工しなくても、加熱廃材からの放熱は生じにくく、保温性能は比較的良好に保たれる。これにより、簡素な構成にて熱損失を抑制でき、断熱材のコスト削減も可能となっている。ただし、断熱材の施工箇所は本実施例に限定されず、また、施工それ自体を省略しても構わない。
【0048】
廃材貯蔵ビン23の直下には廃材計量槽25を、該廃材計量槽25の直下にはミキサ26を備える。これにより、廃材貯蔵ビン23にて貯蔵しておいた再生材R1を、廃材計量槽25、次いでミキサ26へと順に払い出し、自重落下にて投入可能な構成としている。なお、廃材貯蔵ビン23、廃材計量槽25およびミキサ26は、それぞれ図示しない開閉ゲートを備える。
【0049】
高架台3側方の地上フロア2fには、新規骨材を加熱乾燥処理する新材ドライヤ27を別途備え、該新材ドライヤ27の上位には集塵用のバグフィルタ28を配設している。前記新材ドライヤ27にて加熱乾燥処理された新規骨材(新材)は、新材用垂直搬送装置29にて高架台3の最上フロア2a方向へと揚送される。
【0050】
高架台3上の廃材貯蔵ビン23と近接する位置には、揚送された加熱新規骨材を粒径別に篩い分ける振動篩30を備え、該振動篩30にて篩い分けた加熱新規骨材を粒径別に保温状態にて貯蔵する骨材貯蔵ビン(図示せず)、該骨材貯蔵ビンにて貯蔵した加熱新規骨材を計量する骨材計量槽(図示せず)を順に階層状に組み込むと共に骨材計量槽の直下にミキサ26を臨ませる配置として、加熱新規骨材も再生材R1と同様、自重落下にて投入可能としている。また、石粉・新規アスファルト・再生添加剤といったアスファルト混合物の各種材料の貯蔵・供給設備(図示せず)を備えてミキサ26に別途接続する。これにより、ミキサ26へと供給された再生材R1、新規骨材およびその他各種材料を混合調整して、所望のアスファルト混合物(再生アスファルト混合物)を製造可能としている。
【0051】
他方で、こうした再生アスファルト混合物の材料として適さない加熱廃材が発生した場合に備えて、これらをプラント外へと排出するべく、コールドホッパ12の下部拡径部P下部(投入口24の側方かつ、排出方向奥側)には、系外排出路31を接続している。再生アスファルト混合物の材料として適さない加熱廃材の代表例としては、オーバーサイズ材R2が挙げられ、廃材を事前に適正粒度に破砕・分級したとしても、何らかの要因で一定量発生する場合がある。本実施例に係るアスファルトプラント1は、こうしたオーバーサイズ材R2を廃材貯蔵ビン23内に落下混入させることなくプラント外へと排出可能な構成を採用している。
【0052】
具体的には、系外排出路31のシュート開口部32は、廃材貯蔵ビン23の投入口24と略面一となるよう、トロンメル終端部19に臨ませる(トロンメル終端部19直下に位置する)。また、系外排出路31は、高架台3の側方へと延出した傾斜シュート33と、高架台3の側方に沿って鉛直方向に配設した垂直落下シュート34とを連結してなり、垂直落下シュート34の最下端には系外排出ゲート35を備える。傾斜シュート33は、少なくともオーバーサイズ材R2を含む各種加熱廃材の安息角以上に急な勾配を有する。
【0053】
上記構成により、オーバーサイズ材R2は、網目部18を通過落下せずに(したがって、直下の廃材貯蔵ビン23の投入口24へと落下混入することなく)トロンメル終端部19より排出されると、コールドホッパ12の下部拡径部P内部を経由して、トロンメル終端部19直下のシュート開口部32へと先ず落下投入される。更に、オーバーサイズ材R2は系外排出路31の傾斜シュート33、垂直落下シュート34を順次経由して系外排出ゲート35へと落下案内される。
【0054】
当該落下先となる系外排出ゲート35は通常は閉塞状態とされているが、オーバーサイズ材R2が系外排出路31内部に一定量蓄積されると、所要のタイミングで系外排出ゲート35が開放される。これにより、オーバーサイズ材R2は最終的にはプラント外へと払い出される。
【0055】
ところで、アスファルト混合物の素材として適さない加熱廃材は、オーバーサイズ材R2に限られない。例えば、13mm粒径以下の適正粒度には収まるものの、加熱不足といった何らかの理由で所定品質を具備しない加熱廃材R3(以下「不良材R3」という)が、廃材ドライヤ5の運転過程で生じる場合がある。
【0056】
こうした不良材R3は、網目部18の格子体の目開きを通過落下するため、何らの対策をも講じないとすれば、コールドホッパ12の下部拡径部P内部を経由して、直下の廃材貯蔵ビン23へと落下混入する投入経路を辿る。
【0057】
そこで、本実施例においては、不良材R3の排出先切り替え手段(可動式の遮蔽板)としてダンパ36を採用し、該ダンパ36をコールドホッパ12の下部拡径部P内部の略全域に亘って設けると共に、トロンメル17下位の軸心部37を中心として回動可能な構成としている。前記ダンパ36は、制御部38と有線・無線によって通信可能に接続されると共に、制御部38に備えた回動制御器39によって回動動作が制御される。
【0058】
これにより、廃材ドライヤ5の運転過程で不良材R3が発生した場合には、ダンパ36を所定位置まで回動させて不良材の落下投入を下部拡径部P内部で遮り、投入口24側方のシュート開口部32へと不良材R3を案内することで、その排出先を初期(デフォルト)の投入経路上に位置する廃材貯蔵ビン23から、系外排出路31へと強制的に切り替え可能としている。
【0059】
また、所定品質を具備する再生材R1が生産されている場合は、落下投入を妨げない所定の初期位置までダンパ36を回動させる(逃がす)ことで、廃材貯蔵ビン23が排出先として選択される。すなわち、ダンパ36により、13mm粒径以下の各加熱廃材R1、R3の排出先を、廃材貯蔵ビン23または系外排出路31の何れかより選択可能としている。
【0060】
なお、排出先として系外排出路31を選択した場合、不良材R3はシュート開口部32へと落下案内される途中でオーバーサイズ材R2と合流し、同じ排出経路を辿る。このとき、コールドホッパ12の下部拡径部P内部は、各粒径の加熱廃材R1~R3共通の自重落下投入経路であり、自重落下投入先の系外排出路31および廃材貯蔵ビン23と互いに連通していることから、下部拡径部P内部は排出先切り替え手段のダンパ36の設置位置として非常に好適なものとなっており、当該配置により設備の簡素化(コンパクト化)を実現している。
【0061】
すなわち、13mm粒径以下の再生材R1は、通常はトロンメル17より廃材貯蔵ビンへと落下投入されるが、不良材R3の発生時となれば、従来技術と比べて簡素な動作にて(投入口24上位でダンパ36を最小限回動させるだけで)廃材貯蔵ビン23への落下混入を遮り、オーバーサイズ材R2と共に系外排出可能としている。こうした構成上の利点は、コールドホッパ12を廃材貯蔵ビン23と分離構造とし、かつ投入口24の開口面積を絞り、投入口24上位の下部拡径部P内部に従来比で小型の(投入口24の絞り径相応のサイズの)ダンパ36を配することで実現可能となったものである。
【0062】
また、オーバーサイズ材R2の自重落下投入経路上に投入口24が位置しない配置として、オーバーサイズR2が廃材貯蔵ビン23へと落下混入することを未然に防いでいる。これにより、従来技術のようにトロンメル終端部19(図6、102a)に系外排出路31(図6、105)を直接連結する必要がなくなり、この点においても設備を簡素化できる。
【0063】
なお、前述した制御部38の詳細についての図示は省略するが、ダンパ36はエアシリンダ等の駆動手段(図示せず)によって駆動され、該駆動手段とPLC(Programmable Logic Controller、図示せず)とを通信可能に接続すると共に、該PLCと、操作用のPC端末(CPU又はGPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ、ハードディスクドライブ又はSSD等の記憶媒体からなるコンピュータ、図示せず)とを更に通信可能に接続している。以下、制御部38は、PLCとPC端末とを総称したものをいう。
【0064】
また、制御部38はプラント制御盤40と通信可能に接続され、少なくとも、廃材ドライヤ5の運転状態(運転/停止)に関する信号がプラント制御盤40から制御部38へと送出される。更に、廃材ドライヤ5下流の排気煙道21に備えた温度センサ(温度検出手段)Tが検出した排ガス温度が、プラント制御盤40から制御部38へと適宜送出される。プラント制御盤40には、加熱廃材の目標温度や、加熱廃材を目標温度まで昇温させるために必要となるキルン本体8内部の所要温度といった所定温度の各値が予め設定登録されている。廃材ドライヤ5等の運転状態および温度等のパラメータは、後述するプラント運転制御に適宜用いられる。
【0065】
図2は、図1中の要部拡大断面図であって、並流加熱方式の廃材ドライヤ5のキルン本体8は、バーナ14火炎が形成される前半部Fには図示しないライナーを周設する一方、後半部Bに掻き上げ羽根41を複数備えている。これにより、投入シュート13を介してキルン本体8内へと供給される廃材は、掻き上げ羽根41にてベール状に掻き上げられつつバーナ14の熱風に晒されて加熱再生されると共に、キルン本体後端部11へと送り出され、トロンメル17によって粒径別に篩い分けられる。篩い分けられた加熱廃材のうち、オーバーサイズ材R2は、ダンパ36の回動位置・状態にかかわらず、トロンメル終端部19から排出され、系外排出路31へと順次、自重落下投入される。
【0066】
ダンパ36の軸心部37は、トロンメル終端部19下端より垂下した仮想軸線L付近に位置する。また、当該軸心部37は、ダンパ36の長手方向における略中央部分に位置する。
【0067】
ダンパ36は、一の回動位置において傾斜状態をとる。具体的には、図3(a)に示すように、傾斜状態のダンパ36は、傾斜方向(長手方向)において少なくとも加熱廃材R1~R3の安息角以上に急な勾配を有し、13mm粒径以下の不良材R3を自重落下投入経路上で遮り、ダンパ36の案内面α(傾斜状態においてトロンメル17と対向する、太線にて表される面)上を滑落させて、シュート開口部32へと案内する。
【0068】
このとき、傾斜状態のダンパ36は、廃材貯蔵ビン23の投入口24上位に介在し、該投入口24を略閉塞状態とするので、廃材貯蔵ビン23内部に再生材R1が貯蔵されている場合は、ダンパ36があたかも保温蓋としての機能を発揮し、再生材R1からの熱気Hの流出(貯蔵中の温度低下)を抑制できる。さらには、投入口24を少なくともコールドホッパ12の下部拡径部Pの内径よりも小径としている(接続部分に相当する開口面積を絞っている)ことにより、貯蔵中の再生材R1からの熱気Hの流出抑制の効果を高めている。これにより、排風機22の稼働時であっても、投入口24と連通したコールドホッパ12へと廃材貯蔵ビン23内の空気(熱気H)が吸引されることを抑制できる。なお、図3(a)、(b)以外の各図においては、案内面αの図示を省略する。
【0069】
なお、ダンパ36が図3(a)の傾斜状態にあるとき、ダンパ36の傾斜方向における低位側の一端部は前記投入口24の上端縁β(廃材貯蔵ビン23とコールドホッパ12との接続部分である、太線で表される領域)と、高位側の他端部は前記コールドホッパ12の内壁面γ(コールドホッパ12一側部の、太線で表される面)と、それぞれ当接または近接させる配置となっている。ここで、近接とは、ダンパ36の一端と上端縁β、ダンパ36の他端と内壁面γが、例えば、500mm程度以下、好ましくは300mm程度以下、より好ましくは100mm程度以下の空隙を隔てて配置されることをいう。なお、図3(a)、(b)以外の各図においては、上端縁β、内壁面γの図示を省略する。
【0070】
これら各構成要素間の空隙が小さいほど、熱気Hの流出抑制効果は高いと考えられるのは勿論であるが、多少の空隙が設けられていても、熱気Hの流出は相当程度を抑制可能である。したがって、これら数値の記載に限定されず、排風機22の吸引能力等に応じて、熱気Hの流出を抑制しうる程度の空隙を許容してもよい。なお、ダンパ36両端に多少の空隙を設けることで、加熱廃材の旧アスファルト分によるダンパ36の固着化等の不具合が抑制されると考えられる。
【0071】
他方で、ダンパ36は、他の回動位置において、起立状態をとる。具体的には、図3(b)に示すように、ダンパ36が起立状態にあるとき、ダンパ36の案内面αは鉛直な(仮想軸線Lと略重なる)起立状態をとって、投入口24を全開放する。
【0072】
そして、上記構成のアスファルトプラント1において、再生材R1を所定割合配合した再生アスファルト混合物を製造するときは、該再生アスファルト混合物の混合調整前(出荷要請前)に相当量の再生材R1を予め加熱再生・貯蔵しておくために、事前に破砕・分級しておいた廃材を廃材用垂直搬送装置4にて揚送し、高架台3の最上フロア2aに搭載した廃材ドライヤ5に供給していく。
【0073】
以降の運転方法の各工程を、図4のフローチャートに基づいて説明する。なお、図中のS1~S10は各手順のステップを表している。
【0074】
まず、廃材ドライヤ5のバーナ本体15及び送風ファン16の両方を稼働してバーナ14を着火する(S1)と共に、キルン本体8の回転駆動による加熱廃材の送り出しを開始する(S2)。なお、こうした加熱開始直後の廃材ドライヤ5にあっては、キルン本体8内部が充分に昇温しておらず、加熱不足の不良材R3が発生しやすい状態にある。
【0075】
そうすると、制御部38はダンパ36を回動させて傾斜状態とし、13mm粒径以下の加熱廃材(不良材R3)の排出先として系外排出路31を選択すると共に、投入口24を閉塞させ(S3)、廃材ドライヤ5のキルン本体8内部温度が、廃材を目標温度(例えば、160℃程度)に昇温するのに充分な所要温度に達するまでの立ち上げ運転時には(S4:NO)、廃材ドライヤ5から排出される全粒径の加熱廃材R2、R3の全てを系外排出していく。
【0076】
具体的には、廃材ドライヤ5の立ち上げ運転時は、図3(a)に示すように、オーバーサイズ材R2はトロンメル終端部19より系外排出路31へと自重落下投入すると共に、投入口24に向かって自重落下する不良材R3(加熱不足)を傾斜状態のダンパ36にて遮り、不良材R3(加熱不足)をダンパ36の案内面αを滑落させて系外排出路31へと案内し、系外排出対象の各加熱廃材R2、R3を合流させてプラント外へと排出していく。なお、本実施例では、温度センサTが検出した排ガス温度に基づいて、キルン本体8の内部温度を算出している。
【0077】
次いで、廃材ドライヤ5のキルン本体8内部が所要温度に達して定常運転に移行すると(S4:YES)、制御部38によりダンパ36を回動させて起立状態とし、13mm粒径以下の加熱廃材(再生材R1)の排出先として廃材貯蔵ビン23を選択すると共に投入口24を開放し、(S5)、バーナ14の運転中は(S6:NO)、オーバーサイズ材R2を系外排出する一方、160℃程度に加熱再生された再生材R1を廃材貯蔵ビン23内へと投入していく。
【0078】
具体的には、廃材ドライヤ5の定常運転時は、図3(b)に示すように、160℃程度に加熱再生された加熱廃材であってもオーバーサイズ材R2はトロンメル終端部19より系外排出路31へと自重落下投入する一方、160℃程度に加熱再生されると共に適正粒度を具備する再生材R1のみを、廃材貯蔵ビン23の投入口24へと自重落下投入していく。このとき、ダンパ36が起立状態をとることで、再生材R1は、遮られることなく投入口24へと自重落下投入される。また、起立状態のダンパ36が再生材R1の自重落下投入経路の系外排出路31側を閉塞するので、アスファルト混合物の材料に適した再生材R1が誤って系外排出されることは抑制されている。これにより、歩留まり良く再生材R1を生産できる。
【0079】
次いで、バーナ14の運転を終了する場合は(S6:YES)、バーナ14を消火し、廃材用垂直搬送装置4・廃材投入シュート13からの廃材の供給を先行停止する(S7)。このとき、キルン本体8内部には一定量の廃材が残留しているが、バーナ14の消火後であることから、粒度等の各種性状のばらついた不良材R3が生じる場合がある。
【0080】
よって、バーナ14の消火後は、こうした不良材R3の落下混入を抑制すべく、再び制御部38によりダンパ36を回動させて傾斜状態とし、13mm粒径以下の加熱廃材(不良材R3)の排出先として系外排出路31を選択すると共に、投入口24を閉塞させ(S8)、キルン本体8内部に残留した全粒径の加熱廃材(残材)R2、R3が無くなるまでの、立ち下げ運転時は(S9:YES)、キルン本体8の回転駆動(廃材の送り出し)は継続して廃材ドライヤ5から排出される全粒径の残材R2、R3を系外排出していく。
【0081】
具体的には、廃材ドライヤ5の立ち下げ運転時は、図3(a)に示すように、キルン本体8内部の残材のうち、オーバーサイズ材R2はトロンメル終端部19より系外排出路31へと自重落下投入すると共に、投入口24に向かって落下する不良材R3を傾斜状態のダンパ36にて遮り、不良材R3をダンパ36の案内面αを滑落させて系外排出路31へと案内し、系外排出対象の各加熱廃材R2、R3を合流させてプラント外へと排出していく。
【0082】
このように、廃材ドライヤ5の各運転過程において発生し得る、低温・加熱不足の不良材R3(立ち上げ運転時)や、バーナー14消火後にキルン本体8内部に残留した不良材R3(立ち下げ運転時)は、適正粒度の13mm粒径以下であるにもかかわらず強制的に系外排出されるので、特に所定品質を具備した再生材R1のみを選択的に廃材貯蔵ビン23に貯蔵することができ、これを材料として混合してなる再生アスファルト混合物の品質向上が期待できる。
【0083】
また、廃材貯蔵ビン23内部に再生材R1が残存した状態で、新たに加熱再生した再生材R1を追加投入する場合においても、各種不良材R3の発生時にはピンポイントで系外排出できる。これにより、再生アスファルト混合物の品質向上が期待できると共に、不良材R3発生時に既に投入済みの再生材R1もろとも廃材貯蔵ビン23から全排出する必要もなく、エネルギー損失も回避できて経済的に好ましい。
【0084】
そして、廃材ドライヤ5のキルン本体8内部の残材R2、R3がすべて排出される(S9:NO)と、キルン本体8の回転駆動を停止させて廃材の送り出しを停止する(S10)。これにより、廃材ドライヤ5による廃材の加熱再生処理は終了となる。
【0085】
当該加熱再生処理の一連の工程は、「加熱再生運転モード」として、シーケンス制御や、温度センサTの検出結果に基づくフィードバック制御等により実行できる。例えば、「加熱再生運転モード」の実行中、制御部38は、各ステップにおいて、所定時間経過(タイマアップ)により任意の次ステップへと移行しても良い。また、S4において、制御部38は、温度センサTにより検出された排気温度に基づいて、次ステップS5のダンパ38回動動作へと移行してもよい。
【0086】
なお、廃材ドライヤ5による廃材の加熱再生処理中であっても(上記材料加熱運転中のS5に相当する)、キルン本体8内部が急激に温度低下する場合があり得る。この場合、図3(a)と同様、制御部38は、例えば、割り込み処理によりダンパ36を回動させて傾斜状態とし、不良材R3の排出先として系外排出路31を選択すると共に、投入口24を閉塞させ、不良材R3を含む全粒径の加熱廃材R2、R3を系外排出していく。本実施例においては、温度センサTが検出した排ガス温度でもって加熱処理後の加熱廃材温度を監視しておき、当該排ガス温度が所定値を下回ったこと(キルン本体8内部が所要温度以下であること)を条件に、割り込み処理として「不良材抜き取りモード」へと移行する。ただし、「不良材抜き取りモード」への移行可否は、オペレータによって判断されてもよく、機械的手段によって判断されてもよい。また、キルン本体8内部が所要温度まで昇温していても何らかの理由で所定品質を具備しない不良材R3が発生する場合も考えられるが、この場合も上記同様、「不良材抜き取りモード」を実行するとよい。
【0087】
そして、廃材ドライヤ5の材料加熱運転の終了後は、廃材貯蔵ビン23への加熱廃材R1の追加投入を行わない限り、制御部38はダンパ36を傾斜状態に保つ(13mm粒径以下の加熱廃材R1、R3の排出先として系外排出路31を選択すると共に、投入口24を閉塞状態に維持する)。当該運転方法は、「保温モード」として実行することができる。なお、バーナ14消火中であっても、キルン本体8内部の空気を清浄に保つべく、排風機22を稼働させると共に、送風ファン16を必要に応じて独立運転することで廃材ドライヤ5の換気運転を行う場合があるが、この場合であっても「保温モード」実行中は、廃材貯蔵ビン23から熱気Hが流出することを抑制できる。
【0088】
このように、本発明に係るアスファルトプラント1にあっては、不良材R3の混入を抑制して再生材R1の品質を高めるとともに、廃材貯蔵ビン23内部の再生材R1を効果的に保温して出荷時に備える。
【0089】
そして、再生アスファルト混合物の出荷要請があれば、製造する再生アスファルト混合物の再生材R1の配合割合に応じ、廃材貯蔵ビン23内に貯蔵している再生材R1を直下の廃材計量槽25に自重落下投入し、所定量を計量後、直下のミキサ26へと自重落下投入していく。
【0090】
また、別途新材ドライヤ27にて加熱乾燥処理しておいた各粒径の加熱新規骨材を骨材貯蔵ビンから払い出し、骨材計量槽にて計量後、直下のミキサ26へと自重落下投入していく。そして、これら再生材R1および加熱新規骨材を、所定量の新規アスファルト・石粉・再生添加剤等を添加しながら混合調整して、所望の再生アスファルト混合物を製造する。製造した再生アスファルト混合物は、例えば、ミキサ26下位に侵入してきた出荷用の運搬車両(図示せず)へと払い出し、次バッチのアスファルト混合物の製造に備える。
【0091】
なお、オーバーサイズ材R2、不良材R3は、系外排出ゲート35から払い出された後、再び分級・破砕・加熱再生処理する等して適宜再利用することができる。
【0092】
以上説明した本発明に係るアスファルトプラント1は、上記実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0093】
例えば、図5(a)の第一の変形例に示すように、トロンメル終端部19下位にガイド部42を設けてもよい。ガイド部42は、トロンメル終端部19より排出されるオーバーサイズ材R2がダンパ36と接触することを抑制可能な構成とする。具体的には、ガイド板42は、折曲形成した板材であり、起立状態のダンパ36と略平行な鉛直ガイド部43と、傾斜状態のダンパ36と略平行な傾斜ガイド部44からなる。鉛直ガイド部43は起立状態のダンパ36側方の排出方向側に位置し、傾斜ガイド部44は傾斜状態のダンパ36上位側に位置する。
【0094】
これにより、ダンパ36の案内面と加熱廃材が接触する機会は不良材R3発生時といった特定の場合に限定され、加熱廃材の旧アスファルト分がダンパ36へと付着することを抑制できるので、メンテナンス時の清掃作業等の負担が軽減される。
【0095】
また、例えば、図5(b)の第二の変形例に示すように、排出先切り替え手段としては、斜め方向に摺動自在としたスライドゲート45等を採用してもよい。スライドゲート45は、一の摺動位置において廃材貯蔵ビン23の投入口24を閉塞し、13mm粒径以下の不良材R3の排出先として系外排出路31を選択する一方、他の摺動位置においての投入口24を開放し、13mm粒径以下の再生材R1の排出先として廃材貯蔵ビン23を選択する。
【0096】
また、再生材R1の適正粒度の基準値となる所定粒径は、13mm粒径に限定されない。したがって、網目部18の大きさ・形状は種々のものを採用してもよい。例えば、網目部18の大きさは、13mm粒径以下の再生材R1を通過可能とした大きさに代えて、20mm粒径以下等、好適な粒径の加熱廃材を通過可能とした大きさの網目を採用してもよい。また、網目部18の形状は方形に限定されない。
【0097】
また、各図の記載は、傾斜状態のダンパ36、傾斜シュート33、傾斜ガイド板45等の勾配(傾斜度合い)を何ら限定するものではないが、該勾配は加熱廃材の安息角に応じて、少なくとも該安息角以上に急勾配となるよう決定することが好ましい。
【0098】
また、廃材の加熱再生時の目標温度は160℃に限定されない。本実施例では、加熱廃材の温度監視にあたって排ガス温度を用いていたが、キルン本体後端部11、コールドホッパ12内部、廃材貯蔵ビン23といったプラント設備に温度センサ等の温度検出手段を備え、加熱廃材温度を直接測定してもよい。特に、廃材ドライヤ5により加熱再生された加熱廃材温度を直接測定・監視し、該温度が所定値を下回った場合に「不良材抜き取りモード」へと移行してもよい。また、温度検出手段としては、接触式、非接触式等の種々の方式のものを採用でき、検出される温度の値は、直接の測定値のほか、推定値や予測値であっても構わない。
【0099】
上記の開示に係る変形例、および上記実施例に登場した各構成は、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、道路舗装材であるアスファルト混合物(特に、加熱廃材を混合してなる再生アスファルト混合物)を製造するアスファルトプラントにおいて広く適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1…プラント本体 3…高架台
5…廃材ドライヤ 8…キルン本体
8…排気煙道 10…ホットホッパ
12…コールドホッパ 14…バーナ
17…トロンメル 21…排気煙道
23…廃材貯蔵ビン 24…投入口
31…系外排出路 36…ダンパ(排出先切り替え手段)
R1…加熱廃材(再生材) R2…加熱廃材(オーバーサイズ材)
R3…加熱廃材(不良材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6