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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015914
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】回転機械設備の異常診断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20250124BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01H17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118808
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000200334
【氏名又は名称】JFEプラントエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸二
(72)【発明者】
【氏名】前田 啓博
(72)【発明者】
【氏名】染谷 優規
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD03
2G024AD04
2G024BA27
2G024CA13
2G024CA27
2G024DA09
2G024FA04
2G024FA15
2G064AA12
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064CC13
2G064CC29
2G064CC41
2G064DD08
2G064DD15
(57)【要約】
【課題】診断コストを抑えつつ信頼性の高い回転機械設備の異常診断装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る回転機械設備の異常診断装置15は、回転駆動する回転駆動部としてのモータ1と、回転駆動部の駆動力を伝達する伝達部としてのカップリング5、駆動軸3、第1軸受部7、第2軸受部9と、伝達部で伝達された回転力によって回転する回転従動部としての羽根車11と、を備えたものであって、回転駆動部、伝達部および回転従動部のそれぞれに設置された振動センサ(i)~(iv)と、振動センサ(i)~(iv)で採取された振動データを入力して異常を診断する異常診断部17とを有し、異常診断部17は、各振動データの相対的な関係に基づいて回転機械設備の異常箇所を特定する異常箇所特定部19と、特定された異常箇所における振動データに基づいて異常原因を特定する異常原因特定部21と、を備えたことを特徴とするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する回転駆動部と、該回転駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、該伝達部で伝達された回転力によって回転する回転従動部と、を備えた回転機械設備の異常診断装置であって、
前記回転駆動部、前記伝達部および前記回転従動部のそれぞれに設置された振動センサと、該振動センサで採取された振動データを入力して異常を診断する異常診断部とを有し、
該異常診断部は、前記各振動データの相対的な関係に基づいて前記回転機械設備の異常箇所を特定する異常箇所特定部と、特定された異常箇所における前記振動データに基づいて異常原因を特定する異常原因特定部とを備えたことを特徴とする回転機械設備の異常診断装置。
【請求項2】
前記異常箇所特定部は、前記各振動データの速度値及び加速度値の相対的な関係に基づいて異常箇所を特定することを特徴とする請求項1に記載の回転機械設備の異常診断装置。
【請求項3】
前記異常原因特定部は、前記振動データに基づく周波数解析を行って該周波数解析の結果に基づいて異常原因を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転機械設備の異常診断装置。
【請求項4】
回転駆動する回転駆動部と、該回転駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、該伝達部で伝達された回転力によって回転する回転従動部と、を備えた回転機械設備の異常診断方法であって、
前記回転駆動部、前記伝達部および前記回転従動部のそれぞれに設置された振動センサで採取された振動データの相対的な関係に基づいて前記回転機械設備の異常箇所を特定する異常箇所特定工程と、特定された異常箇所における前記振動データに基づいて異常原因を特定する異常原因特定工程と、を備えたことを特徴とする回転機械設備の異常診断方法。
【請求項5】
前記異常箇所特定工程は、前記各振動データの速度値及び加速度値の相対的な関係に基づいて異常箇所を特定することを特徴とする請求項4に記載の回転機械設備の異常診断方法。
【請求項6】
前記異常原因特定工程は、前記振動データに基づく周波数解析を行って該周波数解析の結果に基づいて異常原因を特定することを特徴とする請求項4又は5に記載の回転機械設備の異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械設備の異常診断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の振動センサによる回転機械設備の異常診断方法としては、例えば特許文献1~4に開示のものがある。
これらの特許文献に開示された方法は、概略以下のようなものである。
例えば回転機械設備を構成するモータ、軸受部及びポンプ等の従動機械のそれぞれに振動センサを設置して振動波形データを採取し、各部位ごとの振動の大きさ評価や周波数解析等を行う。そして、その解析結果から得られた情報と予め異常原因毎に定められた異常判定マトリクスの判定条件との類似度を比較することにより、その類似度が高いものを異常原因と推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-169536号公報
【特許文献2】特開2003-149043号公報
【特許文献3】特開平03-099234号公報
【特許文献4】特開昭62-093620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の診断ロジックは回転機械設備の取り付けた振動センサ(部位単位)ごとの解析結果に基づいて各部位ごとの異常原因を推定するものであり、複数部位に取り付けた複数の振動センサの解析結果を相互に比較検討して設備全体としての総合的な異常箇所や異常原因を判定するものではなかった。
【0005】
たとえば、モータで送風機の羽根車を回転させる設備において、羽根車にアンバランスがあるような場合、羽根車のアンバランスによる振動はモータやカップリングにも影響を及ぼす。このため、従来の部位単位で診断を行った場合、すべての振動センサで異常振動が検知され、その結果として、すべての部位にアンバランスの異常原因があると自動診断してしまう場合がある。
【0006】
この場合、本来異常ではないモータやカップリングに対しても無駄な分解整備や無関係な修理調整が行われてしまうことがあった。
従来このような誤判定を避けるため、ベテラン診断員がその知識や経験に基づいて真の異常原因と異常発生個所を総合的に判定するという思考手順が必要とされていた。
すなわち、自動診断により診断された部位単位の診断結果を基に、ベテラン診断員が設備全体を俯瞰しながら、どの部分に異常原因があるのかを総合的に判断していた。
【0007】
しかしながら、ベテラン診断員の総合的判断を必須とすると、診断コストが高くなり、またベテラン診断員の力量に診断結果が左右されることもある。
そこで、診断コストを抑えつつ信頼性の高い回転機械設備の異常診断装置及び方法が求められていた。
【0008】
本発明はかかる要請に応えるものであり、診断コストを抑えつつ信頼性の高い回転機械設備の異常診断装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る回転機械設備の異常診断装置は、回転駆動する回転駆動部と、該回転駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、該伝達部で伝達された回転力によって回転する回転従動部と、を備えたものであって、
前記回転駆動部、前記伝達部および前記回転従動部のそれぞれに設置された振動センサと、該振動センサで採取された振動データを入力して異常を診断する異常診断部とを有し、
該異常診断部は、前記各振動データの相対的な関係に基づいて前記回転機械設備の異常箇所を特定する異常箇所特定部と、特定された異常箇所における前記振動データに基づいて異常原因を特定する異常原因特定部とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記異常箇所特定部は、前記各振動データの速度値及び加速度値の相対的な関係に基づいて異常箇所を特定することを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記異常原因特定部は、前記振動データに基づく周波数解析を行って該周波数解析の結果に基づいて異常原因を特定することを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明に係る回転機械設備の異常診断方法は、回転駆動する回転駆動部と、該回転駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、該伝達部で伝達された回転力によって回転する回転従動部と、を備えた回転機械設備の異常診断方法であって、
前記回転駆動部、前記伝達部および前記回転従動部のそれぞれに設置された振動センサで採取された振動データの相対的な関係に基づいて前記回転機械設備の異常箇所を特定する異常箇所特定工程と、特定された異常箇所における前記振動データに基づいて異常原因を特定する異常原因特定工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
(5)また、上記(4)に記載のものにおいて、前記異常箇所特定工程は、前記各振動データの速度値及び加速度値の相対的な関係に基づいて異常箇所を特定することを特徴とするものである。
【0014】
(6)また、上記(4)又は(5)に記載のものにおいて、前記異常原因特定工程は、前記振動データに基づく周波数解析を行って該周波数解析の結果に基づいて異常原因を特定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る回転機械設備の異常診断装置においては、異常診断部が、各振動データの相対的な関係に基づいて回転機械設備の異常箇所を特定する異常箇所特定部と、特定された異常箇所における前記振動データに基づいて異常原因を特定する異常原因特定部とを備えたことにより、診断コストを抑えつつ信頼性の高い回転機械設備の異常診断が可能となる。その結果、誤った整備工事や誤った修理調整を防止でき、最適なメンテナンスが実現でき、補修費も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に係る異常診断装置の構成を説明するブロック図である。
図2】実施の形態1に係る異常診断方法のフローチャートである。
図3図1の取付箇所(iv)の振動センサで検知された速度波形を示す図である。
図4】各振動センサで検知された速度値を示すグラフである。
図5】本実施の形態に係る異常診断装置のデータベースの一例を示す図である。
図6】振動センサで得られたデータを周波数解析した結果を示す図である。
図7】実施の形態2に係る異常診断方法の対象とした回転機械設備と振動センサの取付位置の説明図である。
図8図7の各振動センサで検知された速度値を示すグラフである。
図9図7の取付箇所(ii)(iii)の振動センサで得られたデータを周波数解析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態1]
本実施の形態では、図1に示すように、回転駆動するモータ1と、モータ1の回転軸と駆動軸3を連結する軸継手5(カップリング5)と、駆動軸3を回転支持するベアリングを内蔵した第1軸受部7、第2軸受部9と、駆動軸3によって回転する羽根車11と、を備えた送風機設備13を診断対象とするものである。
なお、モータ1は本発明の回転駆動部に、カップリング5、駆動軸3、第1軸受部7、第2軸受部9は本発明の伝達部に、羽根車11は本発明の回転従動部に、送風機設備13は本発明の回転機械設備に、それぞれ相当する。
【0018】
上記のような送風機設備13を診断対象とする本実施の形態の異常診断装置15は、図1に示すように、モータ1に設置された振動センサ(i)(ii)と、2つの軸受部のうち軸継手5に近い第1軸受部7に設置された振動センサ(iii)及び羽根車11に近い第2軸受部9に設置された振動センサ(iv)と、これらの振動センサ(i)~(iv)で取得された振動データを入力して異常を診断する異常診断部17と、を有している。
そして、異常診断部17は、各振動データの相対的な関係に基づいて送風機設備13の異常箇所を特定する異常箇所特定部19と、特定された異常箇所における振動データに基づいて異常原因を特定する異常原因特定部21とを備えている。
【0019】
本実施の形態1の異常箇所特定部19は、各振動データの速度値及び加速度値の相対的な関係に基づいて異常箇所を特定する。
また、本実施の形態1の異常原因特定部21は、振動データに基づく周波数解析を行って該周波数解析の結果に基づいて異常原因を特定する。
【0020】
次に、図1に示した異常診断装置15を用いた異常診断方法を図1、及び図2図6に基づいて説明する。
異常箇所特定部19は、振動センサ(i)~(iv)からの振動データを取得し、速度値(速度波形)を取得する(S1)。
振動センサ(iv)から取得した速度波形を図3に示す。図3に示すように、振動センサ(iv)の箇所では20msごとに6.0mm/sの振動が生じていることが分かる。
振動センサ(i)~(iv)の振動に起因する各速度値のグラフを図4に示す。また、各速度値とこれらに基づく個別の判定結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
速度値を個別に見ると、速度値が3.0を超えている振動センサ(iv)(iii)(i)が取り付けられた箇所に注意ないし異常があると判定される。そして、従来の診断ロジックでは部位単位で個々の判定を行っているため、表1に示すように、診断結果の異常原因名称はモータ1のアンバランスと送風機のアンバランスとの両方にアンバランス異常があると診断される。
【0023】
これに対して、本実施の形態では、異常箇所特定部19が各振動センサ(i)~(iv)の速度値の比較を行う(S2)。速度値の相対的な関係は、表1及び図4に示すとおり(iv)>(iii)>(i)>(ii)となっている。
異常箇所特定部19は、速度値の相対的な関係と異常箇所との関係を記憶しているデータベース22を参照して、異常箇所が羽根車11にあると特定する(S5)。
【0024】
ここで、データベース22の一例について図5に基づいて説明する。
データベース22には、図5に示すように、異常原因名称に対応して、速度値の大きさ分布、加速度値の大きさ分布、異常箇所の速度周波数成分、異常箇所の加速度周波数成分がデータとして記憶されている。
【0025】
図1に示した送風機設備13の場合、異常発生部位としては、羽根車11、軸継手5、モータ1、第1軸受部7、第2軸受部9が考えられる。そして、羽根車11及びモータ1の異常原因としてはアンバランスがあり、軸継手5の異常原因としてはミスアライメント(芯ずれ)がある。また、第1軸受部7、第2軸受部9の異常原因としては損傷(例えば、ボールベアリングのボールの摩耗、変形等)がある。
以下、正常時及び異常時について、異常発生部位と異常原因毎に速度値の大きさ分布、加速度値の大きさ分布、異常箇所の速度周波数成分、異常箇所の加速度周波数成分の特徴について説明する。
【0026】
<正常時>
正常時には、図5に示すように、各部位の速度値及び加速度値は小さく、また各部位でほぼ同じ大きさである。
【0027】
<羽根車アンバランス>
アンバランスとは、回転体の一部に生じた摩耗や変形、異物付着等の要因により、回転体の質量分布が不均一になっている状態をいう。このアンバランスの状態で回転体が回転すると不均一部で遠心力が発生し、その遠心力によって羽根車11や軸が振れ回り振動を起こすような異常振動が発生する。
振れ回り振動は、不均一部を有する回転体と連結されている回転軸を介して他の部位にも伝播されるが、不均一部を有する部位の異常振動が最大となる。
【0028】
羽根車11にアンバランスが発生していた場合、速度値は発生個所である羽根車11に最も近い振動センサ(iv)で最大値となる。もっとも、この異常振動は他の部位にも伝達されるため、振動センサ(iii)~(i)でも正常状態よりも大きな振動が観測される。
速度値の大きさの相対的な関係は、(iv)>(iii)>(ii)>(i)となる。
なお、表1、図4では(ii)よりも(i)の速度値が大きくなっているが、これはモータ1の構造上(i)の部位が自由に揺れやすいために振動が増幅されたからである。つまり、図1のケースにおいて羽根車11にアンバランスが発生した場合には、(iv)>(iii)>(ii)>(i)の場合と(iv)>(iii)>(i)>(ii)となる場合が想定される。
なお、図5のデータベース22では、(iv)>(iii)>(i)>(ii)の図示を省略している。
【0029】
アンバランスの場合、加速度値には影響を与えないので、加速度値は4つの振動センサ(i)~(iv)で正常値と同様小さくてほぼ同一である。
【0030】
羽根車アンバランスの場合、振動センサ(iv)の振動データを周波数解析すると、羽根車11の回転周波数(fr)において速度値が大きくなる。
【0031】
<軸継手ミスアライメント>
軸継手5にミスアライメント(芯ずれ)が発生した場合、軸継手5を挟む二つの振動センサ(ii)(iii)の部位で振動が大きくなるため、振動センサ(ii)(iii)の速度値が大きくなる。
そして、異常箇所が軸継手5であるため、その両側の振動センサ(ii)(iii)の速度値はほぼ同一になる。
【0032】
ミスアライメントの場合、加速度値には影響を与えないので、加速度値は4つの振動センサ(i)~(iv)で正常値と同様小さくてほぼ同一である。
【0033】
軸継手ミスアライメントの場合、回転周波数(fr)及びその2倍以上の高周波数において速度値が大きくなる。
【0034】
<モータアンバランス>
何等かの原因によりモータ1の回転軸にアンバランスが生じた場合、モータ1に設置された2つの振動センサ(i)(ii)のうち、モータ1の構造上自由に揺れやすい部位に設置された振動センサ(i)の速度値が大きくなり、次に振動センサ(ii)の速度値が大きくなる。
【0035】
モータアンバランスの場合、加速度値には影響を与えないので、加速度値は4つの振動センサ(i)~(iv)で正常値と同様小さくてほぼ同一である。
【0036】
モータアンバランスの場合、振動センサ(i)の振動データを周波数解析すると、羽根車11の回転周波数(fr)において速度値が大きくなる。
【0037】
<送風機軸受損傷(部位(iii))>
送風機の軸受部のうち振動センサ(iii)が設置された第1軸受部7が損傷した場合、当該部位にて高周波の振動が発生する。この場合、速度値には変化がないので、速度値は4つの振動センサ(i)~(iv)で正常値と同様小さくてほぼ同一である。
他方、加速度値は、振動センサ(iii)のものが卓越して大きくなる。
このとき、周波数解析すると第1軸受部7のきず等に基づく周波数成分が大きくなり、またその2倍以上の周波数成分も現れる。
【0038】
以上がデータベース22の概要の説明であり、前述したように、異常箇所特定部19は、振動速度値の相対的な関係と異常箇所との関係についてデータベース22を参照して、図4に示した速度値の大きさや分布が、データベース22に記憶されている羽根車アンバランスのものと類似することから、異常箇所が羽根車11にあると特定する(S5)。
【0039】
異常箇所が羽根車11にあると特定されると、異常原因特定部21は、特定された箇所、すなわち振動センサ(iv)で取得された振動データの周波数解析を行う(S7)。周波数解析結果の振動波形(速度スペクトル)を図6に示す。
ここで、羽根車11の回転数は2963rpmなので、回転周波数(fr)は2963/60=49.4Hzとなる。また、回転周期は1/49.4=0.02s(20ms)となる。
周波数解析の結果、振動波形は1回転周期の振動となっており、周波数解析結果でも回転周波数成分49.4Hz(fr成分)が卓越していることがわかる。これより、異常原因がアンバランスと特定できる。
【0040】
この点、前述したように、振動センサ(i)~(iv)の個別の判定の場合には、表1に示されるように、モータ1と羽根車11の両方にアンバランスがあると判定されるのに対して、本実施の形態では、モータ1ではなく羽根車11のアンバランスが異常原因であると正しく判定される。
これにより、モータ1側のアンバランスと誤診されることが無くなり、送風機側の整備を行うことで異常振動が解消される。
【0041】
[実施の形態2]
次に、図7に示すように、モータ1と軸継手5と軸受部23とポンプ本体24とを備えたポンプ設備25の異常診断例について説明する。なお、図7の各部の符号は図1と対応する部位には同一の符号を付してある。
軸受部23はポンプ本体24と一体化されたものであり、振動センサは、図7に示すように、(i)~(iv)の4箇所に設けられている。
この例は、軸継手5にミスアライメント(芯ずれ)が発生しているケースである。
振動センサ(i)~(iv)の振動に起因する速度値のグラフを図8に示す。また、各速度値とこれらに基づく個別の判定結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
図8に示すように、振動センサ(iii)の速度値が卓越しているため、個別判定した場合には、表2に示すように、カップリング5のミスアライメントまたは軸受部23の摩耗によるガタの発生と判定される。これは、軸受部23にガタが有る場合の振動特性と軸継手5にミスアライメントがある場合の振動特性が似ているためである。つまり、個別判定の場合には、異常箇所が軸継手5か軸受部23か特定できないため、両方に対して対処することになる。
そして、軸受部23のガタに対しては、ポンプの分解整備が必要となり、軸継手5のミスアライメントに対しては、心出し調整を行うことになる。
このため、本例のように軸継手5に異常があり、軸受部23には異常がない場合にも拘わらずポンプの分解整備を行うという無駄な整備が必要となる。
【0044】
軸継手5のミスアライメントの場合は振動源が軸継手5であるため、軸継手5を挟む両側の振動センサ(ii)(iii)の振動が大きくなるのが一般的である。この点、図8を見ると振動センサ(ii)(iii)の振動が大きくなっている。
また、軸継手5の動きそのものが振動波形となることから、軸継手5を挟む振動センサ(ii)と振動センサ(iii)の振動波形は類似したものとなり、その結果、周波数解析を行うと図9に示すようにミスアライメント異常時は部位(ii)と(iii)の周波数スペクトルの成分が類似する結果となっていることがわかる。
なお、ミスアライメント発生時は回転周波数成分frとその2倍以上の高調波成分が現れる。
【0045】
本実施の形態2では、異常箇所特定部19が、速度値の相対的な関係と異常箇所との関係を記憶しているデータベース22を参照して、速度値の大きさと分布から異常箇所が軸継手5かあるいは軸受部23にあると特定する。
そして、異常原因特定部21が、振動センサ(ii)(iii)の周波数成分が類似していることから、異常原因は軸受部23の摩耗ガタではなく、軸継手5部のミスアライメントが原因であると異常原因を特定する。
これにより、軸受部23のガタと誤診されることが無くなり、誤ってポンプ側を分解整備することが無くなる。
【0046】
以上、実施の形態1、2で説明したように、本発明によれば、診断コストを抑えつつ信頼性の高い回転機械設備の異常診断が可能となる。その結果、誤った整備工事や誤った修理調整を防止でき、最適なメンテナンスが実現でき、補修費も低減できる。
なお、異常箇所と異常原因が特定された場合、異常箇所と異常原因をモニタ等の表示部27に表示するようにし、さらにその場合の適切な対処方法(ガイダンス文)を自動出力(モニタや紙出力)されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 モータ
3 駆動軸
5 軸継手(カップリング)
7 第1軸受部
9 第2軸受部
11 羽根車
13 送風機設備
15 異常診断装置
17 異常診断部
19 異常箇所特定部
21 異常原因特定部
22 データベース
23 軸受部
24 ポンプ本体
25 ポンプ設備
27 表示部
(i)~(iv) 振動センサ、測定部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9