(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015918
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】押出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/31 20190101AFI20250124BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20250124BHJP
【FI】
B29C48/31
B29C48/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118819
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】523212690
【氏名又は名称】アクスモールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100222243
【弁理士】
【氏名又は名称】庄野 友彬
(72)【発明者】
【氏名】横田 新一郎
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AG01
4F207AP04
4F207AP08
4F207AP16
4F207AR04
4F207AR09
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK12
4F207KL76
4F207KL80
4F207KM05
4F207KM15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】Tダイ法により樹脂フィルムを成形する押出成形装置であって、樹脂フィルムの膜厚を容易に調節することができる押出成形装置を提供する。
【解決手段】第一ブロックの可動リップ115と第二ブロックの固定リップ116が対向して形成されるリップ開口152から溶融樹脂を吐出してフィルム状に成形する押出成形装置であって、先端が可動リップに固定されると共に第一ブロックに設けられた複数のスタッド121と、モータの回転運動によりスタッドを進退させることができる複数のアクチュエータ122と、各アクチュエータに含まれるモータの稼働状況を検出する複数の検出部と、各アクチュエータに対応したスタッドを進退させる制御部と、を備え、制御部は、特定の第一スタッドを進退させる場合に、検出部の検出結果に応じて特定の第一スタッドに隣接する第二スタッドに対する補正制御量を生成し、補正制御量に基づいて第二スタッドを進退させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ブロックと第二ブロックが対向することより押出された溶融樹脂の流路が形成され、前記第一ブロックの可動リップと前記第二ブロックの固定リップが対向して形成されるリップ開口から前記溶融樹脂を吐出してフィルム状に成形する押出成形装置であって、
先端が前記可動リップに固定されると共に前記リップ開口の長さ方向に並べて前記第一ブロックに設けられた複数のスタッドと、
各スタッドに接続され、モータを備えると共に前記モータの回転運動により前記スタッドを進退させることができる複数のアクチュエータと、
各アクチュエータに含まれるモータの稼働状況を検出する複数の検出部と、
各アクチュエータを制御し、各アクチュエータに対応した前記スタッドを進退させると共に前記検出部から前記稼働状況を受け取る制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記アクチュエータによって特定の第一スタッドを進退させる場合に、前記特定の第一スタッドに関する前記稼働状況に応じて前記特定の第一スタッドに隣接する第二スタッドに対する補正制御量を生成し、前記補正制御量に基づいて前記第二スタッドを進退させることを特徴とする押出成形装置。
【請求項2】
前記稼働状況は、前記モータのトルクであることを特徴とする請求項1記載の押出成形装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出部から前記特定の第一スタッドにかかるモータのトルクの値を受信し、前記トルクの値と予め設定されたトルクの閾値との比較結果に基づいて前記補正制御量を生成した後に、前記第二スタッドを進退させることを特徴とする請求項2記載の押出成形装置。
【請求項4】
前記稼働状況は、前記モータの回転量であることを特徴とする請求項1又は2記載の押出成形装置。
【請求項5】
前記第二スタッドの進退する量は、前記第一スタッドの進退する量よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の押出成形装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第二スタッドに対する補正制御量の生成に連動して、前記第二スタッドに隣接する第三スタッドの補正制御量を生成し、当該補正制御量に基づいて前記第三スタッドを進退させることを特徴とする請求項1記載の押出成形装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記溶融樹脂の粘度に応じて前記モータに対する制御量を変化させることを特徴とする請求項1記載の押出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱した溶融樹脂をフィルム状に成形するものとしてTダイを用いた押出成形装置が知られている。押出成形装置は、押出機から供給された溶融樹脂をTダイのリップ開口から吐出して樹脂フィルムを成形するものである(例えば、特許文献1)。押出成形装置は前記リップ開口の幅を調整することで樹脂フィルムの膜厚の均一化を図っている。
【0003】
リップ開口の幅は、当該リップ開口の長手方向に沿って並べて設けられたヒートボルトによって調節することができる。ヒートボルトは、ヒータを内蔵した金属製のロッドであって、当該ヒータの加熱によって熱膨張することにより前記リップ開口の幅を変更できるものである。押出成形装置は、各ヒータに対する通電量を個別に制御することによって、各ヒートボルトの膨張量を調節することができる。これにより、前記リップ開口の幅をヒートボルト単位で局所的に調節することができる。リップ開口の幅の調節は、当該リップ開口から吐出して成形した樹脂フィルムの膜厚を測定し、この測定結果から各ヒートボルトの膨張量を変更することにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ヒートボルトの膨張量を調節する際には、ヒータに対する通電量の変更の他、気温、溶融樹脂の粘性等の要素やヒータに対する通電量を変化させた後にヒートボルトが所望の温度に変化するまでの応答性も考慮する必要がある。そのため、樹脂フィルムの膜厚の均一化作業は技術者の経験則やノウハウによって精度が保たれているものであり、熟練の技術者であっても膜厚の均一化には時間を要していた。したがって、Tダイ法に用いる押出成形装置において樹脂フィルムの膜厚の調節作業を容易にし、熟練者の作業時間の短縮や未経験者等による作業を可能とすることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、Tダイ法により樹脂フィルムを成形する押出成形装置であって、樹脂フィルムの膜厚を容易に調節することができる押出成形装置を提供することにある。
【0007】
すなわち、本発明は、第一ブロックと第二ブロックが対向することより押出された溶融樹脂の流路が形成され、前記第一ブロックの可動リップと前記第二ブロックの固定リップが対向して形成されるリップ開口から前記溶融樹脂を吐出してフィルム状に成形する押出成形装置であって、先端が前記可動リップに固定されると共に前記リップ開口の長さ方向に並べて前記第一ブロックに設けられた複数のスタッドと、各スタッドに接続され、モータを備えると共に前記モータの回転運動により前記スタッドを進退させることができる複数のアクチュエータと、各アクチュエータに含まれるモータの稼働状況を検出する複数の検出部と、各アクチュエータを制御し、各アクチュエータに対応した前記スタッドを進退させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記アクチュエータによって特定の第一スタッドを進退させる場合に、前記検出部の検出結果に応じて前記特定の第一スタッドに隣接する第二スタッドに対する補正制御量を生成し、前記補正制御量に基づいて前記第二スタッドを進退させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の押出成形装置によれば、アクチュエータによって特定の第一スタッドを進退させる場合に、検出によるフィードバック情報に基づいて、前記第一スタッドに隣接する第二スタッドに対する補正制御量を生成することができる。制御部は、この補正制御量に基づいて第二スタッドを進退させることができる。そのため、押出成形装置100は、第一スタッドに隣接する第二スタッドを前記第一スタッドのモータの稼働状況に応じて適切な量だけ進退させることができるため、スタッド121同士の間隔を狭くした押出成形装置であっても、モータに対する負荷を軽減しつつ前記第一スタッド121aを正常に動作させることができる。したがって、押出成形装置100は、前記リップ開口152の幅を容易に調整することができ、樹脂フィルムの膜厚調整を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる押出成形装置の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる押出成形装置を側面から観察した際の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる押出成形装置の制御系を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる押出成形装置の一部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を用いて本発明の押出成形装置を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態にかかる押出成形装置100の斜視図である。押出成形装置100は、溶融樹脂を押し出して樹脂フィルム等を成形する際に用いられる。押出成形装置100は、リップ開口152から溶融樹脂を吐出するダイ110と、前記リップ開口152の開口幅を調整する複数の開口調整部120と、モータの稼働状況を検出する複数の検出部(図示せず)と、前記開口調整部120を制御する制御部(図示せず)と、前記ダイ110から吐出されて成形された樹脂フィルムの膜厚を計測する膜厚計と、を有している。リップ開口152から吐出された樹脂フィルムは巻き取り装置によってロール状に巻き取られる。前記リップ開口152から吐出された前記樹脂フィルムの膜厚は膜厚計により計測されており、この計測結果として生成されるデジタル信号は前記制御部に入力される。なお、本明細書において、樹脂フィルムには樹脂シートも含まれるものとして説明する。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態にかかる押出成形装置100を側面から観察した際の断面図である。ダイ110は、第一ブロック111と、第二ブロック112と、を有している。第一ブロック111と第二ブロック112は互いに対向して配置されている。第一ブロック111と第二ブロック112との対向面には、前記第一ブロック111及び第二ブロック112の一端部130に設けられた押出機140から前記ダイ110に供給される溶融樹脂の流路150が形成されている。前記流路150は一端に押出機140から押し出された溶融樹脂の受け入れ口151を有している一方、他端に前記流路150を流動した溶融樹脂を吐出するリップ開口152を有している。
【0013】
前記流路150は、前記受け入れ口151からリップ開口152に向けて延びた導入流路153と、前記導入流路153と連通するマニホールド154と、前記マニホールド154から前記リップ開口152に向けて連通する排出流路155と、を有している。導入流路153には、前記押出器140から前記受け入れ口151に供給された溶融樹脂が導入される。
【0014】
マニホールド154は、前記導入流路153に導入された溶融樹脂をダイ110の幅方向に沿って拡幅するためのものであって、前記ダイ110の幅方向に向かって延びている。ここで、前記ダイ110の幅方向は、
図2における紙面前後方向であって、前記リップ開口152の長手方向と同一の方向を指すものとする。これにより、マニホールド154に流れてきた溶融樹脂は前記ダイ110の幅方向に向かって拡幅される。
【0015】
排出流路155は、前記マニホールド154とリップ開口152の間に形成されている。排出流路155は、前記マニホールド154と同様に、前記ダイ110の幅方向に向かって延びている。前記排出流路155は前記マニホールド154よりも小さい通路で形成されている。排出流路155を通過した溶融樹脂は前記リップ開口152から吐出される。
【0016】
前記第一ブロック111は他端部131に傾斜面113を有しており、前記第二ブロック112は他端部131に傾斜面114を有している。前記傾斜面113には、後述するスタッド121と連結するための凹部118が設けられている。前記第一ブロック111の傾斜面113及び前記第二ブロック112の傾斜面114は前記リップ開口152に向けて傾斜しているため、前記ダイ110は前記他端部131に向かって窄まった形状になっている。前記傾斜面113の先端には可動性を有した可動リップ115が設けられている一方、前記傾斜面114の先端には固定性を有した固定リップ116が設けられている。前記リップ開口152はこれら可動リップ115及び固定リップ116とから構成されており、前記リップ開口152の開口幅は前記可動リップ115及び固定リップ116の間隔によって決まる。
【0017】
前記第一ブロック111の他端部131には、前記ダイ110の幅方向に向かって貫通した孔117が設けられている。前記孔117は前記可動リップ115の近傍であり、かつ、前記可動リップ115よりも前記一端部130側に設けられている。前記孔117は前記可動リップ115と連続的に形成されている。これにより、前記孔117と排出流路155との間には薄肉部156が形成され、前記可動リップ115は前記薄肉部156を支点として弾性変形可能である。また、前記第一ブロック111には、前記ダイ110の幅方向に向かって連続的に形成された固定部材119が設けられている。固定部材119は、後述するロッド123を回転自在に保持するホルダー部126と、凸状に形成されたガイド部127と、を有している。前記ガイド部127は後述するスタッド121が進退する方向に延びている。
【0018】
図1の斜視図のとおり、前記複数の開口調整部120は、前記第一ブロック111の固定部材119に並べて設けられている。前記開口調整部120は、前記リップ開口152の開口幅を調整するためのものであって、前記可動リップ115を押し引きするためのスタッド121と、前記スタッド121を進退させるアクチュエータ122と、を有している。すなわち、押出成形装置100は、前記リップ開口152の長さ方向に並べて前記第一ブロック111に設けられた複数のスタッド121と、各スタッド121に接続された複数のアクチュエータ122と、を有している。
【0019】
前記スタッド121は、一端が前記可動リップ115に固定される一方、他端が前記アクチュエータ122に接続されている。前記スタッド121の他端には、前記スタッド121を前記アクチュエータ122に接続するための雌ねじ部132が形成されている。前記スタッド121は、軸が前記リップ開口152に向けて配置されている。前記スタッド121の一端には、前記スタッド121を前記可動リップ115に固定するための凹部124が設けられている。当該凹部124と前記傾斜面113の凹部118にはコ字状の連結部材125が嵌められる。これにより、前記可動リップ115と前記スタッド121は連結される。
【0020】
前記スタッド121の他端側にはリニアガイド128が設けられており、前記スタッド121はリニアガイド128を介して固定部119に接続されている。前記リニアガイド128はスタッド121を軸方向へ案内する。これにより、前記スタッド121は、前記アクチュエータ122の入力に応じて軸方向へ自在に移動可能である。
【0021】
前記アクチュエータ122は、モータと当該モータの回転が与えられるロッド123とを備えている。前記ロッド123は前記固定部材119のホルダー部126に回転自在に保持されている。前記ロッド123の先端には、雄ねじ部129が形成されている。前記雄ねじ部129は前記スタッド121の他端に設けられた雌ねじ部132に螺合し、前記アクチュエータ122と前記スタッド121が接続される。これにより、前記モータの回転をロッド123に対して与えると、前記ロッド123は回転し、前記スタッド121は前記ロッドの回転量に応じた距離だけ前記スタッド121の軸方向に沿って移動することができる。
【0022】
このように、前記アクチュエータ122は、前記モータを回転させることにより、前記スタッド121を前記モータの回転量に応じて前記スタッド121の軸方向に進退させることができる。このスタッド121の軸方向の進退は前記スタッド121に接続された可動リップ115に伝達される。これにより、前記アクチュエータ122は可動リップ115を任意の量だけ押し引きすることができ、前記押出成形装置100は前記リップ開口152の幅を前記アクチュエータ122単位で局所的に調整することができる。この際、前記可動リップ115は薄肉部156を支点として可動する。なお、
図1に示す押出成形装置100のアクチュエータ122はリップ開口152の長さ方向に沿って並列に設けられているが、これに限定するものではなく、前記アクチュエータ122を千鳥状に配置したものであってもよい。前記アクチュエータ122を千鳥状に配置することで、各アクチュエータ122の配列ピッチを小さくすることができる。
【0023】
検出部は各アクチュエータ122に内蔵されており、前記モータの稼働状況を検出することができる。稼働状況は、前記モータを回転させた際のモータの状態であり、例えば、前記モータのトルクや回転量等が挙げられる。本実施形態の押出成形装置100は、検出部として、前記モータの回転量を計測するロータリーエンコーダ及び前記モータにかかるトルクを測定するトルクセンサを有している。そのため、前記押出成形装置100は、当該ロータリーエンコーダ及びトルクセンサによって前記モータの稼働状況を検出することができる。ロータリーエンコーダ及びトルクセンサによって生成されたデジタル信号は前記制御部に対して出力される。なお、検出部はロータリーエンコーダやトルクセンサに限定するものではない。
【0024】
前記制御部は、RAM及びROMを内蔵したマイクロコントローラによって実現されており、前記検出部からのデジタル信号及び膜厚計からのデジタル信号を取り込むことができる。前記制御部は、前記ROMに格納された制御プログラムを実行して、各アクチュエータ122が有するモータの回転量を制御するための駆動信号を生成し、ドライバ回路に出力する。これにより、前記制御部は、各アクチュエータ122が有するモータを制御することができ、前記スタッド121が進退する量を調整することができる。
【0025】
図3は、本実施形態の押出成形装置100の制御系を示すブロック図である。前記制御部は、前記膜厚計による計測結果に応じて特定のアクチュエータ122を操作することができ、当該特定のアクチュエータ122に接続された特定のスタッド121を進退させることができる。前記膜厚計はリップ開口152から押し出される樹脂フィルムの膜厚をその幅方向に沿って任意のピッチで計測可能であり、樹脂フィルム全体の膜厚分布を把握することができる。当該計測結果としての膜厚分布上で樹脂フィルムの膜厚が許容範囲を超えて不均一な場合に、特定のスタッド121を進退させることで、前記リップ開口152の幅をスタッド121単位で局所的に調整することができる。また、制御部は、成形する樹脂フィルムの樹脂材料の粘度に応じて前記アクチュエータ122のモータに対する制御量を変化させることができる。これにより、制御部は成形する樹脂フィルムの均一化を図ることができる。
【0026】
制御部は、前記膜厚分布に基づいて各アクチュエータ122の制御量を生成し、この制御量に基づいて各アクチュエータ122に対応した各スタッド121を進退させることができる。この際、前記制御量は、特定のスタッド121を操作する場合に、前記特定のスタッド121に隣接するスタッド121にかかるアクチュエータ122の制御量を前記特定のスタッド121の制御量に基づいて生成することができる。前記第一アクチュエータ122aの制御量と前記第二アクチュエータ122bの制御量との関係は、夫々の制御量を同一の値又は略同一に値にすることやいずれか一方の制御量の値を大きく又は小さくする等が挙げられる。これにより、制御部は、特定のスタッド121に隣接するスタッド121を前記特定のスタッド121と併せて操作することができ、隣接するスタッド121同士の進退量を最適化することができる。
【0027】
例えば、
図4に示すように、第一アクチュエータ122aの制御量が大きい場合に、前記第一アクチュエータ122aに隣接する前記第二アクチュエータ122bの制御量を前記第一アクチュエータ122aの制御量と略同一の値や前記第一アクチュエータ122aよりも小さい値にすること等ができる。リップ開口152はダイ110の幅方向に延びて連続したものであるため、特定のスタッドのみを調整すると樹脂フィルムの膜厚の調整が困難になる場合やアクチュエータ122に過度な負荷をかけてしまう場合があるが、このように制御することで、樹脂フィルムの膜厚の調整が容易になり、機械への負荷を抑えることができる。特に、樹脂フィルムの成形精度の向上させるためにスタッド121同士の間隔を狭くした場合に、アクチュエータ122が有するモータにかかる負荷を軽減させることで、アクチュエータ122の破損を防止することができる。
【0028】
また、制御部は、第二スタッド121bの進退する量を第一スタッド121aの進退する量よりも小さくすることができる。例えば、第二スタッド121bの進退する量を前記第一スタッド121aの進退する量の半分とすることができる。これにより、より適切なリップ開口152の幅調整を容易に行うことができる。第二スタッド121bは第一スタッド121aの両隣に存在するが、双方を操作してもよいし、いずれか一方のみを操作してもよい。
【0029】
更に、前記制御部は、第一アクチュエータ122aの制御量及び第二アクチュエータ122bの制御量に基づいて前記第二アクチュエータ122bに隣接する第三アクチュエータ122cの制御量を生成することができる。そのため、前記制御部は、第一アクチュエータ122a及び第二アクチュエータ122bの操作に連動して、前記第二アクチュエータ122bに隣接する第三アクチュエータ122cを操作することができる。これにより、第一スタッド121a及び第二スタッド121bを進退させる際に、前記第一スタッド121a及び前記第二スタッド121bの進退に連動して、前記第二スタッド121bに隣接する第三スタッド121cを進退することができる。第三スタッド121cの進退させる量は、前記第二スタッド121bよりも小さくすることができる。
【0030】
前記制御部は、膜厚計により計測された膜厚分布に基づいて特定の第一スタッド121aを進退させる場合に、前記検出部の検出結果に応じて前記第一アクチュエータ122aに隣接する第二アクチュエータ122bの補正制御量を生成することができる。補正制御量は、前記膜厚計の測定結果に基づいて生成された第二アクチュエータ122bの制御量に対して、前記第一アクチュエータ122aにかかるモータの稼働状況に基づいて補正を行った値である。前記制御部は、前記補正制御量に基づいてアクチュエータ122bに対応する第二スタッド121bを進退させることができる。すなわち、前記制御部は、前記検出部からのフィードバック情報によって前記モータの稼働状況を認識し、これ応じて特定のスタッドに隣接するスタッドを操作することができる。
【0031】
前記トルクセンサによって第一アクチュエータ122aのモータに対するトルクが検出されると、この検出結果が制御部に入力される。制御部は、この検出結果のトルクの値と予め設定されたトルクの閾値とを比較し、検出結果のトルクの値が前記閾値を超えている場合に、前記第二アクチュエータ122bに対する補正制御量を生成する。すなわち、制御部は、前記トルクセンサによる検出結果として前記第一スタッド121aに接続された第一アクチュエータ122aのモータに対して基準値を超えるトルクが発生していることが検出された場合、前記第一スタッド121aに隣接する第二スタッド121bを前記補正制御量に応じた量だけ進退させることができる。このように、押出成形装置100は、膜厚計からのデジタル信号に基づいて第一アクチュエータ122aを制御する場合に、トルクセンサからのデジタル信号に基づいて第二アクチュエータ122bの制御量を補正することができる。これにより、スタッド121同士の間隔を狭くした押出成形装置であっても、モータに対する負荷を軽減しつつ前記第一スタッド121aを正常に動作させることができ、前記リップ開口152の幅を容易に調整することができる。
【0032】
前記ロータリーエンコーダによる検出結果として、前記第一スタッド121aに接続された第一アクチュエータ122aのモータに対して制御部から入力された回転量が得られていなかったことが検出された場合に関しても、第一アクチュエータ122aに隣接する第二アクチュエータ122bの補正制御量を生成することができる。これにより、前記第一スタッド121aに隣接する第二スタッド121bを進退させることができ、前記第一スタッド121aにかかるモータの回転量を前記制御部から入力した回転量に可及的に近づけることができる。これにより、前記第一スタッド121aを正常に動作させることができ、前記リップ開口152の幅を容易に調整することができる。
【0033】
また、前記制御部は、前記検出部の検出結果に応じて前記第一スタッド121a及び第二スタッド121bを進退させる場合に、前記第二アクチュエータ122bの補正制御量を前記第一アクチュエータ122aの制御量よりも小さくすることができる。すなわち、前記第二スタッド121bの進退する量を前記第一スタッド121aの進退する量よりも小さくすることができる。これにより、可動リップ152の動作が円滑になる場合がある。第二スタッド121bは第一スタッド121aの両隣に存在するが、前記第二スタッド121bの双方を操作してもよいし、いずれか一方のみを操作してもよい。更に、制御部は、前記第二アクチュエータ122bの補正制御量を生成する際に、前記第二アクチュエータ122bに隣接する第三アクチュエータ122cの補正制御量を生成することができる。これにより、制御部は、第一スタッド121a及び第二スタッド121bを進退させる際に、前記第一スタッド121a及び前記第二スタッド121bの進退に連動して、前記第二スタッド121bに隣接する第三スタッド121cを進退させることができる。第三スタッド121cの進退させる量は、前記第二スタッド121bよりも小さくすることができる。第二スタッド121bに加えて第三スタッド121cも第一スタッド121aの進退に連動して操作することで、更に精密な樹脂フィルムの膜厚の調整をすることができる。
【0034】
以上説明してきたように、押出成形装置100は、膜厚計の計測結果に基づいて特定の第一アクチュエータ122aを操作する場合に、検出部によるフィードバック情報に基づいて、前記第一アクチュエータ122aに隣接する第二アクチュエータ122bや前記第二アクチュエータ122bに隣接する第三アクチュエータ122cの補正制御量を生成することができる。押出成形装置100の制御部は、当該補正制御量に基づいて第二アクチュエータ122b又は第三アクチュエータ122cを制御し、第二スタッド121bの又は第三スタッド121cを進退させることができる。これにより、押出成形装置100は、第一スタッドに隣接するスタッドを第一スタッドにかかるモータの稼働状況に応じて適切な量だけ進退させることができ、スタッド121同士の間隔を狭くした押出成形装置であっても、モータに対する負荷を軽減しつつ前記第一スタッド121aを正常に動作させることができるため、前記リップ開口152の幅を容易に調整することができる。
【0035】
また、前記リップ開口152の幅に沿って設けられたアクチュエータ122同士の間隔が狭い場合、特定のスタッド121aのみを強制的に進退させると、前記特定のスタッド121にかかるモータに対するトルクが発生しやすく、また、制御部からモータに与えられた回転量が得られない等といった不具合が発生しやすいという問題がある。本発明の一実施形態にかかる押出成形装置100は、特定の第一スタッド121aに連動して前記第一スタッド121aに隣接した第二スタッド121bや当該第二スタッド121bに隣接する第三スタッド121cを進退させるため、第一スタッド121aのみを強制的に進退させる場合に比して可動リップ152の動作を円滑にすることができる。そのため、押出成形装置100は、アクチュエータ122の配列ピッチが小さい場合であっても、前記リップ開口152の幅を容易に調整することができる。
【符号の説明】
【0036】
100…押出成形装置、110…ダイ、111…第一ブロック、112…第二ブロック、115…可動リップ、116…固定リップ、120…開口調整部、121…スタッド、122…アクチュエータ、150…流路、152…リップ開口