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特開2025-15924車両走行支援システム及び車両走行支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015924
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】車両走行支援システム及び車両走行支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20250124BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20250124BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20250124BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
G08G1/01 E
G08G1/00 J
G01C21/34
G08G1/0969
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118837
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】更谷 安紀子
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129AA04
2F129AA05
2F129AA06
2F129BB03
2F129CC12
2F129CC17
2F129DD27
2F129DD45
2F129DD65
2F129EE52
2F129EE55
2F129EE96
2F129FF02
2F129FF17
2F129FF18
2F129FF20
2F129FF43
2F129FF57
2F129FF59
2F129FF64
2F129FF72
2F129GG18
2F129HH18
2F129HH19
2F129HH20
2F129HH21
5H181AA01
5H181AA06
5H181AA07
5H181AA14
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181CC01
5H181CC11
5H181CC14
5H181DD04
5H181EE12
5H181FF05
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF32
5H181MA42
5H181MA48
(57)【要約】
【課題】具体的な予測が難しい気象現象の動向を適宜に推定・把握し、当該地域を走行する車両の円滑な移動を支援可能とする技術を提供する。
【解決手段】 車両走行支援システム10において、各車両1に備わる降雨情報の出力部2、各車両1から出力された降雨情報と外部システム5等から得られる渋滞情報を記憶する記憶部11、降雨情報及び渋滞情報に基づいて道路Aにおける渋滞状況と降雨状況との対応関係を特定する特定部12、現時点の道路Aの降雨状況を対応関係に適用し道路Aの渋滞状況を予測する予測部13、他道路Bに関する情報のうち道路Aの渋滞状況の予測結果に応じた情報に基づいて通知情報を生成する生成部14、及び通知情報を車両1に提供する情報提供部15を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両それぞれに搭載され、降雨状況に関する降雨情報を出力する出力部と、
各車両の前記出力部から出力された降雨情報と、外部システム又は各車両から得られる渋滞情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記降雨情報及び前記渋滞情報のうち、対象道路に関して得られた前記降雨情報及び前記渋滞情報に基づいて、前記対象道路における渋滞状況と降雨状況との対応関係を特定する特定部と、
現時点の前記対象道路における降雨状況と、前記対応関係とに基づいて、前記対象道路における渋滞状況を予測する予測部と、
前記対象道路に連絡可能な他道路に関して得られている情報のうち、前記対象道路の渋滞状況の予測結果に応じた情報に基づく通知情報を生成する生成部と、
前記通知情報を通知対象の車両に提供する情報提供部と、
を備える車両走行支援システム。
【請求項2】
前記特定部は、
前記記憶部に記憶された前記降雨情報及び前記渋滞情報のうち、前記対象道路に関して得られた各時刻の前記降雨情報及び前記渋滞情報をそれぞれ抽出し、
前記降雨情報が示す各時刻の単位時間あたりの降雨量と当該各時刻の前記渋滞情報が示す渋滞状況との間の第1相関関係、及び前記降雨情報が示す降り始め時刻から各時刻までの累積降雨量と当該各時刻の前記渋滞情報が示す渋滞状況との間の第2相関関係、をそれぞれ特定し、
前記第1相関関係及び前記第2相関関係のうち、相関度合いが強い方を前記対応関係とする、請求項1に記載の車両走行支援システム。
【請求項3】
前記特定部は、前記降雨情報が示す降り始め時刻から各時刻までの累積降雨量を算定し、
前記特定部は、
観測システムが配信する、前記対象道路を含む地域での前記降り始め時刻である降雨発生予測時刻と、前記外部システム又は前記各車両から得られる渋滞開始時刻との間における各時刻について、前記出力部から得られる降雨状況が示す単位時間降雨量を特定し、
前記降雨発生予測時刻から前記各時刻に至るまでの時間帯について特定した前記単位時間あたりの降雨量を積算することで前記累積降雨量を算定する、請求項2に記載の車両走行支援システム。
【請求項4】
前記特定部は、前記記憶部に記憶された前記降雨情報及び前記渋滞情報のうち、前記他道路に関して得られた前記降雨情報及び前記渋滞情報に基づいて、前記他道路における渋滞状況と降雨状況との対応関係である他道路用の対応関係をさらに特定し、
前記生成部は、
前記他道路用の対応関係に基づき、前記渋滞状況の予測結果が示す前記渋滞開始時刻における前記他道路での渋滞状況を特定し、
前記対象道路及び前記他道路のそれぞれの渋滞状況に基づき、前記対象道路を回避して前記他道路のいずれかに誘導する回避ルート情報を前記通知情報として生成する、請求項3に記載の車両走行支援システム。
【請求項5】
前記生成部は、前記回避ルート情報の生成に際し、目的地別又は経由地別に特定された前記目的地又は前記経由地に向かう車両の台数と、前記対象道路及び前記他道路のそれぞれの渋滞状況とに基づいて、前記他道路のいずれかによって構成された複数の回避ルートを設定し、
前記情報提供部は、
前記目的地又は前記経由地に向かう車両の台数を、複数の前記回避ルートによって分散させ、各車両が走行対象とする前記回避ルートを車両ごとに特定し、
各車両に向けて、当該各車両が走行対象とする前記回避ルートに関する前記回避ルート情報を通知する、請求項4に記載の車両走行支援システム。
【請求項6】
前記生成部は、前記他道路に関して得られている情報として、前記他道路を走行している車両のドライバが音声入力した降雨、前記他道路での渋滞、及び前記他道路の浸水の少なくともいずれかの状況に関する情報を取得する、請求項1に記載の車両走行支援システム。
【請求項7】
情報処理装置が、
複数の車両それぞれに搭載され、降雨状況に関する降雨情報を出力する出力部から、前記降雨情報を取得し、外部システム又は各車両から渋滞情報を取得し、前記降雨情報及び前記渋滞情報を記憶部に格納し、
前記記憶部に格納された前記降雨情報及び前記渋滞情報のうち、対象道路に関して得られた前記降雨情報及び前記渋滞情報に基づいて、前記対象道路における渋滞状況と降雨状況との対応関係を特定し、
現時点の前記対象道路における降雨状況と、前記対応関係とに基づいて、前記対象道路における渋滞状況を予測し、
前記対象道路に連絡可能な他道路に関して得られている情報のうち、前記対象道路の渋滞状況の予測結果に応じた情報に基づく通知情報を生成し、
前記通知情報を通知対象の車両に提供する、車両走行支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行支援システム及び車両走行支援方法に係り、特に、具体的な予測が難しい気象現象の動向を適宜に推定・把握し、当該地域を走行する車両の円滑な移動を支援可能とする車両走行システム及び車両走行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるゲリラ豪雨や動きの急な台風など、発生時期や詳細な動きが予想しにくい気象現象が増加している。こうした気象現象は、その予測困難性や現象の激しさゆえに、様々な被害につながる恐れがある。そこで、気象現象を観測し、種々の情報発信や減災につなげる技術が提案されてきた。
【0003】
そうした技術としては、例えば、雨量等の河川情報が入り次第、そのまま流出、氾濫、避難までを一連下で扱い、多様な洪水氾濫状況に可能な限り近い情報をいち早くかつ正確に提供し、延いては、時々刻々と変化する多様な洪水氾濫状況下に的確かつリアルタイムに情報を配信して、水害による人命等の被害を最小限に止める技術(特許文献1参照)が提案されている。
【0004】
この技術は、地図情報、住所・ランドマーク情報、水位・雨量に関する河川情報及び洪水ハザードマップ関連情報を配信サーバより自動的に発信させるデータ配信手段と、地図表示手段、地図登録手段、水位・雨量データ表示手段、シミュレーション手段、ハザードマップ表示手段、災害時情報発信手段、データベース管理手段、情報通信手段などを備えるシステムにかかる。
【0005】
また、災害が迫る中、避難するタイミングを逸することなく車両に乗って避難所に避難可能とする技術(特許文献2参照)も提案されている。
【0006】
この技術は、緊急避難警報及び災害情報を受信する送受信部、車両に対する操作者が正当な権限者であるか否かを認証する認証部、認証部が該操作者は正当な権限者であることを認証すると、車両の自動運転避難機能を有効にする避難機能有効部、車両の乗員情報を取得する乗員情報取得部、該自動運転避難機能が有効であるときに、送受信部が緊急避難警報を受信すると、災害情報に基づいて避難所及び避難所までの経路を設定し、経路を通って避難所までの移動時間を算出し、避難所までの移動時間、災害情報、及び乗員情報に基づいて、車両の発進可否を判定する判定部、避難所まで車両を誘導する制御を行う制御部を備えるシステムにかかる。
【0007】
また、局所的な豪雨をリアルタイムで把握し、その発生地域を迅速且つ正確に特定して周辺自治体へ的確な警報を配信可能とする技術(特許文献3参照)も提案されている。
【0008】
この技術は、センタ装置の降雨判定手段において、雨量計からの雨量情報と、高速道路や主要な一般道路を走行する車両から送信される車両情報(ワイパ動作速度、ライト点灯情報、外気温度情報、車速情報、車両位置情報)に基づいて降雨を検知し、雨量及び降雨地域を判定する構成とすることで、雨量計が設置されていない地域においても降雨に関する情報が得られ、局地的な豪雨の発生を検知可能とするシステムにかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-168179号公報
【特許文献2】特開2020-157875号公報
【特許文献3】特開2013-196090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
既存の観測体制において、上述のごとき特定の気象現象について、実際に発生した気象現象をレーダー等で継続的に観測することや、発生可能性を推測することまでは可能である。しかし、具体的な発生場所や発生時刻、発生した現象の内容及び特徴(例えば、降雨量)についての予測は困難である。つまり、現状では、実際に発生した気象現象を観測することで状況を把握する他ないケースも多いと言える。
【0011】
一方、既存の観測体制下では観測機器が設置されていないエリアも観測範囲とすべく、車両に観測用のセンサ類を設置し、その観測データを用いることで、当該車両の現在位置たる観測地点での気象現象の特定や各種の情報配信を行う従来技術も存在する。
【0012】
ただし、そうした従来技術では、車両等の移動体が上述の観測地点やその周辺を目的地や移動経路としたケースに関し、当該気象現象の発生に伴って生じうる渋滞や通行止め等の不利益事象を総合的に判断し、それを効率的に回避することは難しい。
【0013】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、具体的な予測が難しい気象現象の動向を適宜に推定・把握し、当該地域を走行する車両の円滑な移動を支援可能とするシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は、本発明の車両走行支援システムよれば、複数の車両それぞれに搭載され、降雨状況に関する降雨情報を出力する出力部と、各車両の出力部から出力された降雨情報と、外部システム又は各車両から得られる渋滞情報とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された降雨情報及び渋滞情報のうち、対象道路に関して得られた降雨情報及び渋滞情報に基づいて、道路における渋滞状況と降雨状況との対応関係を特定する特定部と、現時点の道路における降雨状況と、対応関係とに基づいて、道路における渋滞状況を予測する予測部と、道路に連絡可能な他道路に関して得られている情報のうち、道路の渋滞状況の予測結果に応じた情報に基づく通知情報を生成する生成部と、通知情報を通知対象の車両に提供する情報提供部と、を備える構成とすることにより解決される。
本発明の車両走行支援システムは、以上のような構成を備え、一連の処理を実行することで、具体的な予測が難しい気象現象の動向を適宜に推定・把握し、当該地域を走行する車両の円滑な移動を支援可能となる。
【0015】
なお、上記の車両走行支援システムにおいて、特定部は、記憶部に記憶された降雨情報及び渋滞情報のうち、道路に関して得られた各時刻の降雨情報及び渋滞情報をそれぞれ抽出し、降雨情報が示す各時刻の単位時間あたりの降雨量と各時刻の渋滞情報が示す渋滞状況との間の第1相関関係、及び前雨情報が示す降り始め時刻から各時刻までの累積降雨量と各時刻の渋滞情報が示す渋滞状況との間の第2相関関係、をそれぞれ特定し、第1相関関係及び第2相関関係のうち、相関度合いが強い方を前記対応関係とする、と好適である。
上記の構成によれば、各時刻の単位時間降雨量と、降り始めから当該時刻までの累積降雨量のいずれが渋滞状況と強い相関を持つとしても、好適な観点での相関関係を選び取り、以後の渋滞状況の特定を精度よく行うことにつながる。ひいては、具体的な予測が難しい気象現象の動向を適宜に推定・把握し、当該地域を走行する車両のより円滑な移動を支援可能となる。
【0016】
また、上記の車両走行支援システムにおいて、特定部は、降雨情報が示す降り始め時刻から各時刻までの累積降雨量を算定し、特定部は、観測システムが配信する、道路を含む地域での降り始め時刻である降雨発生予測時刻と、外部システム又は各車両から得られる渋滞開始時刻との間における各時刻について、出力部から得られる降雨状況が示す単位時間降雨量を特定し、降雨発生予測時刻から各時刻に至るまでの時間帯について特定した単位時間あたりの降雨量を積算することで累積降雨量を算定する、と好適である。
上記の構成によれば、雨雲レーダーから配信された降雨発生予測時刻を、上述の降り始めの時刻として、それ以後の各時刻での単位時間降雨量を積算することで、各時刻における累積降雨量を効率よく算定可能となる。これにより、累積降雨量と渋滞状況とが強い相関を持つ場合には、具体的な予測が難しい気象現象の動向をより効率よく推定・把握し、当該地域を走行する車両の円滑な移動を支援可能となる。
【0017】
また、上記の車両走行支援システムにおいて、特定部は、記憶部に記憶された降雨情報及び渋滞情報のうち、他道路に関して得られた降雨情報及び渋滞情報に基づいて、他道路における渋滞状況と降雨状況との対応関係である他道路用の対応関係をさらに特定し、生成部は、他道路用の対応関係に基づき、渋滞状況の予測結果が示す渋滞開始時刻における他道路での渋滞状況を特定し、道路及び他道路のそれぞれの渋滞状況に基づき、道路を回避して他道路のいずれかに誘導する回避ルート情報を通知情報として生成する、と好適である。
上記の構成によれば、対象道路と連絡する周辺道路(他道路)についても相関関係を特定し、これを利用することで、ゲリラ豪雨等の発生した(或いは発生予定の)或る時期における渋滞状況を道路間で比較し、渋滞回避のための好適なルート選定を効率的に行えることとなる。ひいては、具体的な予測が難しい気象現象の動向を適宜に推定・把握し、当該地域を走行する車両よりの円滑な移動を支援可能となる。
【0018】
また、上記の車両走行支援システムにおいて、生成部は、回避ルート情報の生成に際し、目的地別又は経由地別に特定された目的地又は経由地に向かう車両の台数と、道路及び他道路のそれぞれの渋滞状況とに基づいて、他道路のいずれかによって構成された複数の回避ルートを設定し、情報提供部は、目的地又は経由地に向かう車両の台数を、複数の回避ルートによって分散させ、各車両が走行対象とする回避ルートを車両ごとに特定し、各車両に向けて、当該各車両が走行対象とする回避ルートに関する回避ルート情報を通知する、と好適である。
上記の構成によれば、或る道路を走行中または走行予定の車両それぞれに関し、当該道路よりも渋滞度合が低い他道路に迂回する渋滞回避ルートの選定を、対象地域における車両それぞれの間で渋滞回避程度が平均化される形で実行可能となる。
つまり、ある車両群が渋滞を完全に回避して快適な走行が可能になる一方で、別の車両群は当初よりも渋滞が激しくなった道路を走行することになり、当該地域全体としては渋滞緩和がほとんど図られていない又は渋滞がかえって激化している、といった事態を抑制しうることとなる。ひいては、具体的な予測が難しい気象現象の動向を適宜に推定・把握し、当該地域を走行する車両のさらに円滑な移動を支援可能となる。
【0019】
また、上記の車両走行支援システムにおいて、生成部は、他道路に関して得られている情報として、他道路を走行している車両のドライバが音声入力した降雨、前記他道路での渋滞、及び他道路の浸水の少なくともいずれかの状況に関する情報を取得する、と好適である。
上記の構成によれば、雨量センサや渋滞監視システムといった観測機器類で捕捉できる現象または現象の程度には限界があるところ、実際の運転現場にいる人物によってのみ、直接的に認識しうる現象やその程度(例:渋滞や降雨に至る直前の予兆)を、気象現象や渋滞状況のリアルタイムデータとして利用可能となる。ひいては、具体的な予測が難しい気象現象の動向を一段と精度良好に推定・把握し、当該地域を走行する車両の円滑な移動を支援可能となる。
【0020】
また、前述の課題は、本発明の車両走行支援方法によれば、情報処理装置が、複数の車両それぞれに搭載され、降雨状況に関する降雨情報を出力する出力部から、前記降雨情報を取得し、外部システム又は各車両から渋滞情報を取得し、前記降雨情報及び前記渋滞情報を記憶部に格納し、前記記憶部に格納された前記降雨情報及び前記渋滞情報のうち、対象道路に関して得られた前記降雨情報及び前記渋滞情報に基づいて、前記対象道路における渋滞状況と降雨状況との対応関係を特定し、現時点の前記対象道路における降雨状況と、前記対応関係とに基づいて、前記対象道路における渋滞状況を予測し、前記対象道路に連絡可能な他道路に関して得られている情報のうち、前記対象道路の渋滞状況の予測結果に応じた情報に基づく通知情報を生成し、前記通知情報を通知対象の車両に提供する、ことで解決される。
上記の車両走行支援方法によれば、具体的な予測が難しい気象現象の動向を適宜に推定・把握し、当該地域を走行する車両の円滑な移動を支援可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車両走行支援システム及び車両走行支援方法によれば、具体的な予測が難しい気象現象の動向を適宜に推定・把握し、当該地域を走行する車両の円滑な移動を支援可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態におけるネットワーク構成例を示す図である。
図2】本実施形態におけるサーバ装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】本実施形態におけるマップDBの構成例を示す図である。
図4】本実施形態における観測データDBの構成例を示す図である。
図5】本実施形態における対応関係DBの構成例を示す図である。
図6】本実施形態における業務DBの構成例を示す図である。
図7】本実施形態における走行対象エリアでの道路配置例を示す図である。
図8】本実施形態における車両走行支援方法のフローを示す図である(その1)。
図9】本実施形態における車両走行支援方法のフローを示す図である(その2)。
図10】本実施形態における雨量の時間推移を示すグラフの例1を示す図である。
図11】本実施形態における雨量の時間推移を示すグラフの例2を示す図である。
図12】本実施形態における雨量又は累積降雨量と渋滞開始時刻との関係性に対応したグラフを示す図である。
図13】本実施形態における車両走行支援方法のフローを示す図である(その3)。
図14】本実施形態における通知情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<<本発明の一つの実施形態に係る車両走行支援システムについて>>
以下、本発明における車両走行支援システムを構成する各装置やそこで実行される方法、及びそのためのプログラムについて、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)を例に挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、当然ながら、本発明には、その等価物が含まれる。
【0024】
また、以下の説明の中で参照される図面に示される画面例も一例に過ぎず、画面の構成例、表示される情報の内容、及びGUI(Graphical User Interface)等は、システム設計の仕様及びユーザの好み等に応じて自由に設計することができ、また適宜変更し得る。
【0025】
また、本明細書において、「装置」とは、単独で所定の機能を発揮する一つの装置のみ、互いに分離されているものの所定の機能を発揮するために協働する複数の装置の組み合わせをも含むものとする。
【0026】
なお、以降の説明では、物流拠点にて荷下ろしや積み込み等の業務を行う車両が、当該物流拠点を目的地ないし経由地として走行する状況を前提とし、そうした車両がゲリラ豪雨等の気象現象による渋滞や道路の浸水(冠水)等の不利益事象を的確に回避し、効率的に走行可能となるよう支援する技術について説明する。
【0027】
ただし、本発明は、物流業務に携わる車両以外の、例えば、バスやタクシーなど人の運送業務用車両や、一般の自家用車両など、気象に起因する渋滞の影響を受けうる車両を対象として走行支援を行う状況にも適用可能である。
【0028】
<ネットワーク構成>
まずは、本実施形態における車両走行支援システム10を構成する、ネットワーク構成例について図1に基づき説明する。図1は本実施形態におけるネットワーク構成例を示す図である。
【0029】
図1に示すネットワーク構成における、本実施形態の車両走行支援システム10は、車両1、交通情報センタ5、雨雲レーダーシステム6、及び物流拠点7が、携帯電話網などのネットワークNを介してサーバ装置100と通信可能に結ばれて構成されている。
【0030】
ただし、こうしたネットワーク構成は、あくまでも一例であり、車両1や交通情報センタ5、雨雲レーダーシステム6、及び物流拠点7のいずれか1つが、又はいずれか複数が協働し、サーバ装置100の構成や機能を備えて、本実施形態の車両走行支援方法を実行する形態も採用可能である。
【0031】
上述のネットワーク構成のうち、交通情報センタ5は、各地の道路状況をセンサや監視カメラなどの観測装置で一定時間ごとに観測し、渋滞の発生状況や通行止めといった事象に関して外部に報知する情報配信センタである。また、雨雲レーダーシステム6は、気象レーダーとも呼ばれるもので、アンテナシステムから電波を発射し、その反射波の応答時間により雨雲や雪雲までの距離を、また、反射波の強度から雨や雪の強さを観測するシステムである。雨雲までの距離及び反射波の強度の各情報によれば、雨雲の進行方向にある各地での降雨開始時刻や降雨強度の予測が可能である。
【0032】
また、物流拠点7は、車両1が荷下ろしや積み込みを行う物流倉庫であり、消費地や工業地帯の近郊、高速道路のインターチェンジや港湾、空港の周辺など各地に配置されている。本実施形態における物流拠点7は、予め備える業務システムにより、自身の在庫情報や各種設備のスペック(例:荷物の収容容積、冷凍や冷蔵の施設有無や仕様、車両待機スペースの規模など)の他、及び各車両1による荷下ろしや積み込みといった業務の予定を管理している。こうした物流拠点7における業務システムは、ネットワークNにアクセスし、サーバ装置100と必要なデータ授受を行うものとする。
【0033】
本実施形態におけるサーバ装置100は、車両走行支援システムの主たる機能を実装する情報処理装置であって、車両走行支援装置とも言える。こうしたサーバ装置100は、図1に示すように、記憶部11、特定部12、予測部13、生成部14及び情報提供部15を備える。
【0034】
記憶部11は、各車両1の降雨センサ2やマイク3といった出力部から出力された降雨情報と、交通情報センタ5等の外部システム又は各車両1のマイク3から得られる渋滞情報を、観測データDB11Bにて記憶する。この記憶部11が保持する情報類としては、マップDB11A、観測データDB11B、対応関係DB11C、及び業務DB11D(いずれも図2で図示)が含まれるが、詳細は後述する。
【0035】
上記のように記憶部11が構成、運用されることで、気象予報サービス等の既存の情報ソースのみならず、実際に道路を走行中の車両からリアルな情報(位置情報を伴う降雨や渋滞、道路浸水などの情報)を継続的に取得し、道路や地域ごとの経時的な気象現象のデータを蓄積可能である。
【0036】
こうして蓄積されるデータは、当該データの発生場所における気象現象の時間推移を示すものであり、また、その発生場所で当該気象現象により起こる事象(ここでは渋滞)との関係性を示すものとなりうる。
【0037】
また、特定部12は、記憶部11に記憶された降雨情報及び渋滞情報のうち、対象道路に関して得られた降雨情報及び渋滞情報として、例えば対象道路を含む領域に関する観測データを観測データDB11Bから抽出する。そして、特定部12は、抽出された観測データに基づいて、当該道路における渋滞状況と降雨状況との対応関係、例えば、双方の状況についての回帰式を重回帰分析等で特定する。特定した対応関係は、対象となる道路での降雨によって生じる渋滞の判定モデルとなる。
【0038】
上述の対象道路は、ある車両1の走行予定道路であって、本実施形態においては、物流拠点7の運営者等が管理している車両運行計画に登録された道路となる。こうした走行予定道路の情報は、業務DB11Dの「予定情報」で管理されている。ただし、これに限定されず、車両のナビゲーションユニット4が、サーバ装置100に対して走行予定道路の情報を都度通知し、その情報が示す走行予定道路を対象道路として取り扱ってもよい。
また、渋滞状況とは、渋滞の発生、成長、衰退、及び終了といった渋滞の各段階(ステージ)、基準時点から渋滞の各段階に至るまでの経過時間、あるいは渋滞度合(例えば、渋滞区間の距離、渋滞区間を通過する際の所要時間、及び、通常時の所要時間と比較したときの超過時間の長さ)などが該当する。
【0039】
なお、特定部12は、上述の降雨情報及び渋滞情報のうち、対象道路に関して得られた各時刻の降雨情報及び渋滞情報をそれぞれ観測データDB11Bから抽出し、第1相関関係及び第2相関関係を、それぞれ特定する。第1相関関係は、降雨情報が示す各時刻の単位時間あたりの降雨量と当該時刻の渋滞情報が示す渋滞状況との間の相関関係である。第2相関関係は、降雨情報が示す降り始め時点から各時刻までの累積降雨量と当該時刻の渋滞情報が示す渋滞状況との間の相関関係である。そして、特定部12は、第1相関関係及び第2相関関係のうち、相関度合いがより強い方の相関関係を対応関係として特定する。
【0040】
また、特定部12は、記憶部11に記憶された降雨情報及び渋滞情報のうち、対象道路と連絡する他道路に関して得られたものを観測データDB11Bから抽出し、これに基づいて、当該他道路における渋滞状況と降雨状況との対応関係(他道路用の対応関係)をさらに特定すれば、より好適である。
【0041】
なお、特定部12は、降雨情報が示す降り始めから各時刻までの累積降雨量を、雨雲レーダーシステム6など外部の観測システムが配信する、対象道路を含む地域での降り始めの時刻である降雨発生予測時刻と、上述の外部システム又は各車両1から得られる渋滞開始時刻との間における各時刻について、降雨センサ2から得られる降雨状況が示す単位時間降雨量を特定し、降雨発生予測時刻から各時刻に至るまでの時間帯について特定した単位時間降雨量を積算することで算定する。
【0042】
また、予測部13は、現時点における上述の対象道路における降雨状況と、特定部12が特定した対応関係とに基づいて、当該道路における渋滞状況を予測する。このように、回帰式等の対応関係に、雨雲レーダーシステム6などの外部ソースから得た降雨予測の情報や、或いは車両1の降雨センサ2やマイク3から得られる現在の降雨情報等を照合すれば、近い未来の又は現在の降雨状況に応じて、任意の時点に関して予想される渋滞状況を特定することができる。
【0043】
こうした渋滞状況の特定は、当該道路と連絡する周辺道路(他道路)についても同様に実行しておくことで、生成部14が、ゲリラ豪雨等の発生した(或いは発生予定の)或る時期における渋滞状況を道路間で比較し、渋滞回避のためのルート選定を行えることにつながる。
【0044】
生成部14は、対象道路に連絡可能な他道路に関して得られている情報のうち、対象道路の渋滞状況の予測結果に応じた情報に基づく通知情報を生成する。この他道路に関して得られている情報として、車両1のドライバがマイク3で音声入力した降雨、渋滞、及び浸水の少なくともいずれかの状況に関する情報を含みうるものとする。
【0045】
なお、生成部14は、他道路に関して特定した対応関係に基づき、渋滞状況の予測結果が示す渋滞開始時刻における他道路での渋滞状況を特定し、対象道路及び他道路のそれぞれの渋滞状況の予測結果に基づき、対象道路での渋滞を避けて他道路のいずれかに誘導する回避ルートを通知状況として生成する。
【0046】
また、生成部14は、回避ルートの生成に際し、目的地別または経由地別の車両数と、対象道路及び他道路の各渋滞状況の予測結果とに基づいて、1または複数の回避ルートたる他道路に向けて各車両を分散させる回避ルートを特定する。この場合、生成部14は、対象道路とそれに連絡する他道路との間で、車両を流入させた場合の当該道路(対象道路及び他道路)での車両数を算定し、その算定結果がいずれの道路でも一定数以下となるよう、各車両の走行ルート、すなわち渋滞回避ルートを選定するとしてもよい。
【0047】
勿論、こうしたルート選定の手法や概念は一例であり、いわゆる巡回セールスマン問題など、多変数の最適化問題におけるルート選定の解法を適宜に採用することもできる。その場合、車両走行支援システムにおいて、最適化問題のソルバーや人工知能、量子コンピューティングといった機能を実装するか、又はネットワーク経由でそれらを利用可能な構成とする。
【0048】
また、情報提供部15は、生成部14が生成した通知情報を、通知対象の車両1に提供する。なお、情報提供部15は、生成部14で特定された回避ルートごとに分散することになる車両1それぞれに向けて、当該回避ルートの情報を通知するとすれば好適である。
【0049】
以上のように通知状況として特定された、渋滞回避ルート等の情報は、例えば携帯電話網のネットワークNを介して、各車両1のナビゲーションユニット4に経路案内用のデータとして配信およびセットされるか、或いはそのディスプレイで表示されることとなる。当該車両1のドライバは、渋滞回避ルートがセットされたナビゲーションユニット4を使用し、その経路案内に従って渋滞回避に好適なルートを走行することとなる。
【0050】
一方、上述の渋滞回避ルートの通知を受ける車両1は、すでに述べたとおり物流拠点7を目的地又は経由地として、荷下ろしや積み込み等の業務を行う配送車両である。また、車両1それぞれの情報は、当該車両の運行管理を行っているサーバ装置100又は物流拠点7の適宜な業務システムにて保持、管理されているものとする。
【0051】
なお、車両1またはそのドライバは、ネットワークNにアクセス可能な通信手段を備え、ネットワークN上の各システム等と通信可能である。そうした通信手段は、ネットワークNのプロトコルに沿った手順にて、通信開始、データ送受信、及び通信終了といった一連の処理を実行するチップセットや、当該チップセットを備えた携帯電話等を想定する。
【0052】
本実施形態の車両1は、一般的な配送車両としての機構や機能に加えて、降雨センサ2、マイク3、及びナビゲーションユニット4を備える。このうち降雨センサ2は出力部の1つであり、降り始め、降り終わりや降雨強度(単位時間あたりの降雨量)を観測可能なセンサであり、超音波式、光学式、ドップラーレーダー式など種々の方式のものを採用可能である。
【0053】
降雨センサ2は、走行中の振動が継続的に生じる車両1に搭載される点を考慮すると、可動機構を備えず、いわゆるメンテナンスフリーで運用可能なものが好適である。降雨センサ2による観測結果は、観測日時や位置状況(ナビゲーションユニット4から都度取得)とともに、車両1に備わる通信手段により、ネットワークNを介してサーバ装置100に配信される。
【0054】
また、マイク3は出力部の1つであって、車両1のドライバが、自らが遭遇している降雨状況や渋滞状況、浸水状況などの各種事象に関して発した音声を拾って音声データとする。このマイク3は、ナビゲーションユニット4に備わるものを利用してもよい。
【0055】
マイク3により取得された音声データは、観測日時や位置状況(ナビゲーションユニット4から都度取得)とともに、車両1に備わる通信手段により、ネットワークNを介してサーバ装置100に配信される。
【0056】
なお、上記の音声データは、車両1やナビゲーションユニット4に備わる音声認識機能によりテキスト化され、当該テキスト化されたデータがサーバ装置100に配信される構成であれば、ネットワークNやサーバ装置100での負荷低減の観点で好適である。
【0057】
また、ナビゲーションユニット4は、車両1のドライバが設定した目的地(ここでの目的地は、経由地を含み得る)に向け、現在地からの走行ルートの検索と案内を行う装置となる。ナビゲーションユニット4は、上空のGPS(Global Positioning System)衛星からの信号に基づいて自機の現在位置を算定し、この現在位置と目的地との間について、マップデータと経路探索エンジンに基づいてルート選定を行う。本実施形態における目的地としては、主として物流拠点7が設定されることになる。また、ナビゲーションユニット4は、上述のように算定した現在位置の状況と現在日時の情報を、降雨センサ2やマイク3に提供するか、或いは、降雨センサ2やマイク3の観測データを取得し、取得したデータに現在位置や現在日時の情報を付加して、サーバ装置100に送信する。
【0058】
<サーバ装置のハードウェア構成>
続いて、車両走行支援システム10を主として構成するサーバ装置100の構成について説明する。図2は本実施形態におけるサーバ装置100のハードウェア構成例を示す図である。なお、本実施形態におけるサーバ装置100は、図示するように1台のコンピュータで構成するとする場合の他、並列分散された複数台のコンピュータで構成されるとしてもよい。或いは、サーバ装置100は、ASP (Application Service Provider)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)又は、IaaS(Infrastructure as a Service)用のコンピュータで構成されるとしてもよい。
【0059】
ここでは、本実施形態におけるサーバ装置100が1台のコンピュータで構成される前提にて、当該サーバ装置100が、補助記憶装置101、主記憶装置103、演算装置104、及び通信装置105が、バス106で接続された構成を図2にて示している。
【0060】
上述の構成のうち補助記憶装置101は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、FD(Flexible Disc)、MOディスク(Magneto-Optical disc)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SDカード(Secure Digital card)、又はUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)といった、不揮発の記憶装置ないし記憶媒体により実装される。
【0061】
また、補助記憶装置101は、サーバ装置100の筐体内に内蔵される構成の他、外付け形式でサーバ装置100に接続された構成であってもよい。さらに、補助記憶装置101は、サーバ装置100と通信可能に接続された別のコンピュータ等によって構成されてもよい。なお、各種データを記録する技術としては、不正なデータ改竄等を回避する目的からブロックチェーンのような分散型台帳技術を用いてもよい。
【0062】
本実施形態における補助記憶装置101は、後述するマップDB11A、観測データDB11B、対応関係DB11C、及び業務DB11Dを格納している。
【0063】
また、主記憶装置103は、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等の揮発性の半導体メモリによって構成されるとよい。本実施形態における主記憶装置103は、補助記憶装置101から読みだしたOS(Operating System)を含むプログラム102や、回帰分析エンジン110、相関分析エンジン111、及び経路検索エンジン112を保持する。
【0064】
このうちOSはサーバ装置自体の制御や基本機能を実装し、その制御下で、演算装置104がプログラム102の各部を呼び出して実行することで、車両走行支援方法に対応する各機能、すなわち、記憶部11、特定部12、予測部13、生成部14、及び情報提供部15を実装することとなる。
【0065】
また、演算装置104は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、TPU(Tensor Processing Unit)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成されるとよい。
【0066】
また、通信装置105は、例えば3G~5G若しくはそれ以降の世代の移動通信プロトコル、又はLTE(Long Term Evolution)のプロトコルに対応した通信用のチップセットを想定するが、ネットワークNの種類によって他の機器等で実装するとしてもよい。例えば、ネットワークNが無線LANで構成されている場合、通信装置105は、Wi-fi(登録商標) に基づく無線LANのプロトコルに対応したネットワークインターフェイスカードで実装されることになる。
【0067】
<各種データベースについて>
続いて、本実施形態におけるサーバ装置100が保持する各種のデータベースについて説明する。
(マップDBの構成)
先ず、マップDB11Aについて図3に基づき説明する。図3は、本実施形態におけるマップDB11Aの構成例を示す図である。本実施形態におけるマップDB11Aは、車両1が走行対象としうるエリアの電子地図データである。そのデータ構成は、エリア、座標データ、更新日、及びマップデータといった各値を含むレコードの集合体となっている。
【0068】
このうち、エリアは、対象エリアを行政区画で矩形に細分化した値であり、座標データは、当該エリア外周の各頂点座標(矩形の各頂点座標)のデータとなる。また、更新日は、マップデータの更新日である。マップデータは、当該エリアに含まれる地図要素、すなわち道路や建物などの施設、また、河川や山地、田畑などの地形や土地利用形態等といった各要素の位置座標や領域形状、名称、アイコンなどの情報を含んでいる。
【0069】
(観測データDBの構成)
続いて、観測データDB11Bについて図4に基づき説明する。図4は、本実施形態における観測データDB11Bの構成例を示す図である。本実施形態における観測データDB11Bは、車両1の降雨センサ2やマイク3といったデータソースから得た観測データを格納するデータベースである。なお、車両1のみならず、交通情報センタ5、及び雨雲レーダーシステム6もデータソースとなりうるものとする。
【0070】
そのデータ構成は、観測日時、観測位置、観測対象、観測データ、及び観測主体といった値を含むレコードの集合体となっている。このうち観測日時は、対象となる観測データの観測日時を示す。また、観測位置は、当該観測データが観測された地点の座標値であり、車両1のナビゲーションユニット4が付与した値である。また、観測対象は、車両1の降雨センサ2やマイク3からデータを得た事象の種類を示すもので、降雨、渋滞、浸水等といった事象の値がセットされる。
【0071】
また、観測データは、当該事象に関する観測データであり、例えば、雨の降り始めや降り終わり、単位時間降雨量等といった値や、渋滞レベルや浸水の有無といった値を含む。また、観測主体は、降雨や渋滞、浸水といった事象の観測を行った車両1の識別情報となる。
【0072】
車両1の降雨センサ2やマイク3、或いはこれらの観測データの送信を代行する場合のナビゲーションユニット4は、自身が搭載されている車両1の識別情報を予め保持し、また、ナビゲーションユニット4から観測位置の座標値、観測日時を都度取得し、これらを観測データに紐づけてサーバ装置100への配信処理を行うものとする。
一方、サーバ装置100は、観測データを受信した際、当該観測データのソースが降雨センサ2の場合は「降雨」、ソースがマイク3の場合で音声データを変換したテキスト中にキーワード「渋滞」を含む場合は「渋滞」、キーワード「浸水」を含む場合は「浸水」などと観測対象を判定し、観測データに付与するものとする。
【0073】
(対応関係DBの構成)
続いて、対応関係DB11Cについて図5に基づき説明する。図5は、本実施形態における対応関係DB11Cの構成例を示す図である。本実施形態における対応関係DB11Cは、サーバ装置100の特定部12が、観測データDB11Bが保持する降雨及び渋滞の観測データを、特定の道路(対象道路)を含むエリアごとに抽出し、その観測データを回帰分析エンジン110に付与することで特定した回帰式を格納したデータベースである。
【0074】
この対応関係DB11Cは、対象エリア、対象道路、回帰式、連絡道路、及び更新日といったデータを含むレコードの集合体となっている。このうち対象エリアは、回帰式の特定対象としたエリアの識別情報であり、対象道路は、当該エリアに含まれる道路の識別情報である。
【0075】
また、回帰式は、当該対象道路に関して特定した回帰式であって、例えば、降り始めから単位時間経過時の累積降雨量を変数Xの入力とし、当該時点での渋滞レベルを出力Yとした線形式(Y=aX+b・・・)が一例として想定できる。こうした回帰式は、もちろん一例であって、回帰分析の結果により種々の形式の回帰式が生成されることとなる。
【0076】
また、渋滞レベルの値としては、0:渋滞発生前、1:渋滞発生、2:低レベルの渋滞、3:中レベルの渋滞、3:高レベルの渋滞、4:通行止め、といったものを採用できるが、こうした形態に限定せず、より粒度の小さな又は大きな渋滞レベルでの判定形態を採用してもよい。
【0077】
また、本実施形態では対応関係として回帰式を一例として挙げたが、機械学習や深層学習などの人工知能を用いたモデル生成手段を採用し、これにより特定した判定モデルを対応関係として採用する形態も採用できる。その場合、サーバ装置がそうした機械学習等のエンジンを実装又は外部から呼出しして、雨の降り始めからの各時刻における累積降雨量の情報と、当該時点での実際の渋滞状況の情報とのセットを学習データとして多数与えることで、当該学習データの間で共通する、累積降雨量と渋滞状況との関係性をモデル化し、当該モデルを対応関係DB11Cの回帰式欄に格納して利用することとなる。
【0078】
ここで対応関係DB11Cのデータ構成の説明に戻る。データ構成のうち連絡道路は、対象道路と連絡する他道路の識別情報である。つまり、対象道路の渋滞状況によっては、回避対象となりうる道路の情報が、対象道路や回帰式と紐づけられている。また、更新日は、当該データの更新日を示す。
【0079】
(業務DBの構成)
続いて、業務DB11Dについて図6に基づき説明する。図6は、本実施形態における業務DB11Dの構成例を示す図である。本実施形態における業務DB11Dは、物流拠点7や車両1の情報を管理するデータベースである。
【0080】
この業務DB11Dは、種類、識別情報、所在地、現在位置、仕様、及び予定情報といった値を含むレコードの集合体となっている。このうち、種類は、物流拠点7であるか車両1であるかを区別する値である。また、識別情報は、物流拠点7又は車両1の識別情報である。また、所在地は、物流拠点7が所在する座標値である。また、現在位置は、車両1の現在位置を示す座標値である。また、仕様は、物流拠点7の設備や機能等の情報を規定したデータか、車両1の積載量や装備当の情報を規定したデータである。また、予定情報は、荷物の出荷や格納日の予定等のような物流拠点7の業務スケジュール、及び、車両1の業務スケジュール(例:荷下ろしや積み込みを行う日時や物流拠点7の情報など)である。
【0081】
<観測データ取得フロー>
続いて、本実施形態における車両走行支援方法のフロー例について説明する。
なお、以降の説明では、説明を分かり易くする目的から、本実施形態における車両走行支援対象となる車両1が走行する又は走行予定の地域及びその道路の配置例として、図7に示すケースを想定することとする。図7に示すケースでは、ある市街地における道路のうち、或る車両1が走行予定または走行中の対象道路Aであり、この道路Aと連絡する他道路として道路B、Cが存在する。
本実施形態に係る車両走行支援方法は、例えば、図8に示す流れに従って進められる。図8は、本実施形態における車両走行支援方法のフロー例であり、具体的には、観測データの取得フローについて示す図である。
【0082】
ここではまず、それぞれの車両1の降雨センサ2やマイク3といった出力部が、当該車両1が走行中の地域での雨の降り始め/降り終わり、単位時間降雨量や、ドライバが認識しマイク3で発話した、雨の降り始め/降り終わり、並びに、渋滞の開始/終了及び渋滞レベルといった事象の観測を行う(S1)。
【0083】
降雨センサ2やマイク3は、S1で得た観測データを、自身が備える通信手段で、又は車両1ないしナビゲーションユニット4の通信手段を介して、サーバ装置100に配信する(S2)。この場合、降雨センサ2やマイク3は、車両1にて構築済みの有線または無線の通信路で車両1のコントロールユニットやナビゲーションユニット4に対して観測データを送信する。これを受けた車両1やナビゲーションユニット4は、自身の通信手段により、ネットワークNを介してサーバ装置100に観測データの配信を行う。
【0084】
なお、車両1やナビゲーションユニット4は、上述の観測データに対し、観測日時、観測位置、及び観測主体の各値を紐づけて、上述の配信を行う。このうち観測日時の値は、車両1やナビゲーションユニット4が有するクロック機能から取得する。また、観測位置の値は、ナビゲーションユニット4が有するGPSユニットから取得する。また、観測主体の値は、当該観測データのソースが降雨センサ2である場合には「降雨」と判定され、マイク3がソースであり、且つ観測データである発話内容に含まれるキーワードが「雨」である場合には「降雨」と判定される。同様に、上記の発話内容に含まれるキーワードが「渋滞」である場合には、観測主体の値が「渋滞」と判定され、キーワードが「浸水」である場合、観測主体の値が「浸水」と判定される。なお、車両1のコントロールユニットやナビゲーションユニット4は、音声認識機能を有しているか、ネットワークNを介して外部サービスを利用して音声認識処理を実行可能であるとする。
【0085】
一方、観測データの配信を受けたサーバ装置100は、当該観測データを観測データDB11Bに格納して(S3)、取得フローを終了する。なお、この観測データの格納に際し、サーバ装置100は、当該観測データの観測日時、観測位置、観測対象、及び観測主体の各値が紐づいたレコードを生成し、これを格納する。こうしたS1~S3の処理が時間経過とともに繰り返されることで、観測データDB11Bが成長し、多くの観測データが蓄積されることになる。
【0086】
<回帰分析フロー>
続いて、本実施形態における回帰分析フローの例について説明する。図9は、本実施形態における車両走行支援方法のフロー例であり、具体的には、特定部12による回帰分析のフローについて示す図である。この場合、サーバ装置100の特定部12は、記憶部11の観測データDB11Bに記憶されたレコードのうち、例えばサーバ装置100の管理者等から検討対象とされた対象道路Aに関して得られたものを抽出する(S5)。
【0087】
この抽出に際し、特定部12は、上述の対象道路Aの情報をキーにして、マップDB11Aの各マップデータを検索母集団とした検索を実行し、いずれかのレコードのうち、マップデータに対象道路Aの地図要素を含むものを特定し、当該マップデータにおける当該対象道路Aの座標値を取得する。特定部12は、こうして取得した対象道路Aの座標値を観測位置に含むレコードを、観測データDB11Bで検索する。対象道路Aの座標値は、一点ではなく、対象道路Aの延長範囲、形状に対応した座標値群であるから、観測位置が、座標値群の示す座標範囲に含まれているレコードは、抽出対象となる。
【0088】
続いて、特定部12は、S5で得た対象道路Aの観測データを回帰分析エンジン110に入力して、当該対象道路Aにおける渋滞状況と降雨状況との対応関係たる回帰式を特定する(S6)。
なお、上述の対応関係をイメージしやすいグラフとして、降り始めからの時間経過を横軸、各時刻の単位時間降雨量及びその累積降雨量を縦軸としたものを、図10及び図11で例示する。これらの図中で示すように、雨の降り始めですぐ渋滞が発生するケースよりも、降り始めから一定の時間が経過して後に渋滞が発生する状況が多いものと想定される。
また、図12で示すように、S6で得られる回帰式としては、降雨状況を示す雨量(単位時間降雨量)又は累積降雨量を変数Xとし、渋滞状況の一例としての渋滞開始時間、詳しくは雨の降り始めから道路Aが渋滞になるまでの時間を出力Y、とした線形式(図12のY)が想定できる。
【0089】
なお、特定部12は、S6に際し、S5で対象道路Aに関して抽出した「降雨」に関する各時刻の観測データが示す単位時間降雨量と、当該各時刻の渋滞情報が示す渋滞状況との間の相関関係を相関分析エンジン111で算定する。また、特定部12は、S5で対象道路Aに関して抽出した「降雨」に関する各時刻の観測データが示す、降り始めから各時刻までの累積降雨量、当該各時刻の渋滞情報が示す渋滞状況との間の相関関係を相関分析エンジン111で算定する。
【0090】
この場合、特定部12は、単位時間降雨量と渋滞状況との相関係数と、累積降雨量と渋滞状況との相関係数とを比較し、その絶対値が大きい方、すなわち相関が強い方を回帰式の特定対象として判定するものとする。
【0091】
なお、上述の判定において、特定部12は、降雨情報が示す降り始め以降の各時刻までの累積降雨量を算定する。具体的には、雨雲レーダーシステム6等の外部の観測システムが配信する、対象道路Aを含む地域での降り始めの時刻である降雨発生予測時刻を特定する。また、雨雲レーダーシステム6等の外部システム又は各車両1から得られる渋滞開始時刻との間における各時刻について、降雨センサ2やマイク3から得られる降雨状況が示す単位時間あたりの降雨量を特定する。そして、特定された降雨発生予測時刻及び単位時間あたりの降雨量から、降雨発生予測時刻から各時刻に至るまでの時間帯について特定した単位時間あたりの降雨量を積算することで、降雨情報が示す降り始め以降の各時刻までの累積降雨量を算定する。
【0092】
なお、特定部12は、記憶部11の観測データDB11Bに記憶された観測データのうち、他道路B、Cに関して得られたものに基づいて、他道路B、Cにおける渋滞状況と降雨状況との対応関係についても、対象道路Aと同様に特定し、これも対応関係DB11Cに格納しておくものとする。
【0093】
続いて、特定部12は、S6で得た回帰式を対象道路Aと対応付けたレコードを生成し、これを対応関係DB11Cに格納して(S7)、回帰分析フローを終了する。特定部12は、このレコードの格納に際し、対象道路Aを含むエリアをマップDB11Aで対象エリアとして特定し、また、対象道路Aと連絡する他道路をマップDB11Aで連絡道路として特定し、それぞれ当該レコードの構成データとして含める。
【0094】
対象エリアの特定は、S5で説明した手順と同様に、対象道路Aの情報をキーにして、マップDB11Aの各マップデータを検索母集団とした検索を実行し、いずれかのレコードのうち、マップデータに対象道路Aの地図要素を含むものを特定し、当該マップデータにおける「エリア」の値を対象エリアの値として取得する。また、連絡道路の特定は、上述のレコードが地図要素として含む対象道路Aの座標値群に基づき、当該座標値群のいずれかの座標と隣接する座標を座標群に含む他の道路の地図要素を他道路と特定する。
【0095】
以上までに説明したフローを実行することで、図5の対応関係DB11Cで示したように、対象エリア及び対象道路ごとに回帰式が生成され、また、この対象道路と連絡する他道路との対応関係も規定されることになる。さらには、こうした他道路に関する回帰式等も同様に生成され、そのレコードが対応関係DB11Cにて格納・保持されることになる。
【0096】
<分析・情報提供フロー>
続いて、本実施形態における分析・情報提供フローの例について、図13に基づき説明する。図13は、本実施形態における車両走行支援方法のフロー例であり、具体的には分析・情報提供フローについて示す図である。
【0097】
本フローにおいて、サーバ装置100の予測部13は、回帰式が生成された各道路のうち、例えばサーバ装置100や物流拠点7の管理者、或いは車両1のドライバから指定された対象道路Aに関して、現在から以後の渋滞状況について予測する。そのために、予測部13は、上述の対象道路Aにおける現時点での降雨状況を、車両1の降雨センサ2やマイク3又は雨雲レーダーシステム6から取得する(S10)。そして、予測部13は、対象道路Aに関して生成済の回帰式を対応関係DB11Cから読み出し、取得した降雨状況を当該回帰式に入力して、対象道路Aにおける現時点以降の各時刻の渋滞状況を予測する(S11)。
【0098】
なお、上述のS10においてマイク3から取得した場合の情報は、車両1のドライバがマイク3で音声入力した降雨(あるいは、渋滞や浸水)の状況に関する情報となる。
【0099】
続いて、サーバ装置100の生成部14は、対象道路Aに連絡可能な他道路B、Cに関して得られている情報のうち、対象道路Aの渋滞状況の予測結果に応じた情報として、対応関係DB11Cにおいて保持する他道路B、Cに関するレコードを抽出し、当該レコードが示す回帰式を特定する(S12)。特定された回帰式は、対応関係DB11Cに保持される。
【0100】
また、生成部14は、上述の対象道路Aに関するものと同時刻に観測された情報、すなわち現時点での道路B、Cにおける降雨状況の情報を、他道路B、Cを走行中の車両1の降雨センサ2やマイク3、又は雨雲レーダーシステム6から取得する(S13)。
【0101】
また、生成部14は、S13で得た降雨状況の状況を、S12で他道路B、Cそれぞれに関して特定済の回帰式に入力して、他道路B、Cそれぞれにおける現時点以降の各時刻の渋滞状況を予測する(S14)。
【0102】
生成部14は、S11で予測した渋滞状況のうち、対象道路Aにおける渋滞開始時刻において、他道路B、Cでの渋滞状況がどのようなものとなっているか、S14で特定した各時刻の渋滞状況の予測結果から特定する(S15)。例えば、対象道路Aでの渋滞開始時刻が、本日14時であった場合、この本日14時刻における他道路B、Cそれぞれでの渋滞予測結果を特定することになる。
【0103】
続いて、サーバ装置100の情報提供部15は、ここまでで得た対象道路A及び他道路B、Cのそれぞれの渋滞状況の予測結果に基づき、対象道路Aでの渋滞を避けて他道路B、Cのいずれかに誘導する回避ルートを選定する(S16)。この選定は、対象道路A及び他道路B、Cのそれぞれの渋滞状況のレベルが、例えば、対象道路A>他道路B>他道路Cである場合、対象道路Aを走行する車両1に対し、渋滞レベルが相対的に低い、他道路C、他道路Bの順で優先順位を設定した回避ルートを選定する。
【0104】
情報提供部15は、S16で選定した回避ルートに関する回避ルート情報を、通知情報として、対象道路Aを走行対象とする車両1に対して配信して(S17)、分析・情報提供フローを終了する。回避ルート情報は、図14に示すように、回避ルートとしての他道路Bの経路、及び他道路Bに導くメッセージ等を含む情報である。
なお、対象道路Aを走行対象とする車両1は、例えば、業務DB11Dの各レコードのうち、「種類」が「車両」であるレコードの「予定情報」を参照し、その予定として対象道路Aの走行予定が含まれているレコードの「識別情報」を該当車両の情報として特定できる。
【0105】
なお、回避ルート選定を別の観点で行うこともできる。その場合、生成部14は、回避ルートの選定に際し、目的地別又は経由地別の車両数を算定する。この算定は、例えば道路A、他道路B、Cのいずれかを走行対象とする車両1を、業務DB11Dの各レコードのうち、「種類」が「車両」であるレコードの「予定情報」を参照し、その予定として対象道路A、他道路B、Cのいずれかの走行予定が含まれているレコードを特定し、それぞれの数を集計する。
【0106】
続いて、生成部14は、対象道路A及び他道路B、Cの各渋滞状況の予測結果を、S11及びS14と同様の手順にて取得する。生成部14は、目的地別または経由地別の車両数と、各道路での渋滞状況の予測結果とに基づいて、1または複数の回避ルートたる他道路B、Cに向けて各車両を分散させる回避ルートを特定する。
【0107】
上述の各車両の分散を伴う回避ルート選定に際し、生成部14は、対象道路Aとそれに連絡可能な他道路B、Cとの間で、車両を流入させた場合の当該道路での車両数を算定する。例えば、対象道路Aを走行対象とする100台の車両のうち60台を、他道路B、Cの渋滞レベルの差異(例:他道路Bでの渋滞レベルが、他道路Cでの渋滞レベルの1.2倍)に応じて、他道路Bに27台、他道路Cに33台と分散した形で流入させるとする。この場合、もともと他道路B、Cを走行予定としていた車両数が例えば、他道路Bで36台、他道路Cで30台であったとすると、流入後の他道路Bでの車両数は、63台、他道路Cでの車両数は63台となる。また、分散後の対象道路Aでの車両数は40台となる。
【0108】
ここで、例えば、対象道路A及び他道路B、Cのそれぞれにおける渋滞発生条件として、走行中の車両数として60台が上限であった場合、上述のように分散された車両流入後の他道路B、Cのそれぞれで渋滞発生の可能性が想定され得る。そこで、生成部14が、例えば対象道路Aには50台を残して、残りの50台を、他道路Bに23台、他道路Cに27台と分散させることとする。この場合、もともと他道路B、Cを走行予定としていた車両数が、例えば、他道路Bで36台、他道路Cで30台であったとすると、流入後の他道路Bでの車両数は59台、他道路Cでの社数は57台、そして対象道路Aにおける車両数は50台となり、いずれの道路でも渋滞発生条件の車両数が60台以下となる。よって、この分散内容にて各車両の走行ルート、すなわち渋滞回避ルートを選定すれば好適である。
【0109】
一方、情報提供部15は、特定された回避ルートごとに、渋滞発生条件の基準を下回る車両数となる形で分散された車両1それぞれに向けて、当該回避ルートの情報を通知することとなる。
なお、車両分散の条件となる、渋滞発生条件の基準以下となる車両数を特定する際には、車両数V、W、Yの各間の差異を最小化する最適化問題をソルバーで解き、その結果である各道路の車両数が渋滞発生条件の基準を下回るときの値を最終的な解として特定する。ここで、車両数Yは、対象道路Aを走行対象としていた車両数Xのうち、対象道路Aに残す車両数である。また、他道路B、Cへの分散対象となる車両数をZとした場合、Zは、XとYとの差分(すなわち、X-Y)によって表され、車両数Vは、車両数Zのうち他道路Bに分散させる車両数であり、車両数Wは、他道路Cに分散させる車両数である。ここで、車両数Zは、車両数Vと車両数Wとの和(すなわち、V+W)であり、他道路Bと他道路Cの渋滞レベルの比率をS:Tとした場合には、V:W=T:Sという関係式が成立する。
【符号の説明】
【0110】
A 道路
B、C 他道路
N ネットワーク
1 車両
2 降雨センサ(出力部)
3 マイク(出力部)
4 ナビゲーションユニット
5 交通情報センタ(外部システム)
6 雨雲レーダーシステム(外部の観測システム)
7 物流拠点
10 車両走行支援システム
11 記憶部
11A マップDB
11B 観測データDB
11C 対応関係DB
11D 業務DB
12 特定部
13 予測部
14 生成部
15 情報提供部
100 サーバ装置
101 補助記憶装置
102 プログラム
103 主記憶装置
104 演算装置
105 通信装置
110 回帰分析エンジン
111 相関分析エンジン
112 経路検索エンジン
図1
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