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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015927
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】電気伝導度検出器
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/06 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
G01N27/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118845
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐紀
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AE17
2G060AF03
2G060AF08
2G060AG03
2G060FA01
2G060HA02
2G060HC12
2G060HC13
2G060KA05
(57)【要約】
【課題】ノイズの影響を受けにくい電気伝導度検出器を提供する。
【解決手段】電気伝導度検出器1は、測定対象12に交流信号を供給する波形出力部11と、波形出力部11を制御する制御装置100とを備える。制御装置100は、交流信号が測定対象12を通過して得られる検出波に電気伝導度を検出するための参照波を乗算する乗算処理105を実行するように構成される。制御装置100は、入力波にダミーピークを重畳した波形を交流信号として波形出力部に生成させ、対応して得られた検出波と交流信号との位相差を検出する位相差検出処理102を実行するように構成される。制御装置100は、入力波にダミーピークを重畳しない波形を交流信号として波形出力部に生成させるとともに、参照波に対して位相差を補正する処理103を実行し、乗算処理の結果に基づいて電気伝導度を算出する電気伝導度算出処理108を実行するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に交流信号を供給する波形出力部と、
前記波形出力部を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記交流信号が前記測定対象を通過して得られる検出波に電気伝導度を検出するための参照波を乗算する乗算処理を実行するように構成され、
前記制御装置は、入力波にダミーピークを重畳した波形を前記交流信号として前記波形出力部に生成させ、対応して得られた前記検出波と前記交流信号との位相差を検出する位相差検出処理を実行するように構成され、
前記制御装置は、前記入力波に前記ダミーピークを重畳しない波形を前記交流信号として前記波形出力部に生成させるとともに、前記参照波に対して前記位相差を補正する処理を実行し、前記乗算処理の結果に基づいて前記電気伝導度を算出する電気伝導度算出処理を実行するように構成される、電気伝導度検出器。
【請求項2】
前記入力波は正弦波であり、前記参照波は矩形波である、請求項1に記載の、電気伝導度検出器。
【請求項3】
前記波形出力部は、D/Aコンバータを含み、
前記制御装置は、前記電気伝導度算出処理において、正弦波データを前記D/Aコンバータに送信するように構成され、
前記制御装置は、前記位相差検出処理において、前記正弦波データに前記ダミーピークのデータを加算したデータを前記D/Aコンバータに送信するように構成される、請求項2に記載の電気伝導度検出器。
【請求項4】
前記制御装置は、前記位相差検出処理において、前記検出波のピーク値を検出し、前記交流信号の前記ダミーピークから前記検出波の前記ピーク値までの遅延量に基づいて前記位相差を検出するように構成される、請求項3に記載の電気伝導度検出器。
【請求項5】
前記制御装置は、前記乗算処理の結果を積算することによって前記参照波と前記正弦波との重畳部分の面積を算出し、算出した面積を前記電気伝導度に変換するように構成される、請求項2に記載の電気伝導度検出器。
【請求項6】
前記ダミーピークの高さは、前記交流信号の振幅の5%以上15%以下である、請求項1に記載の電気伝導度検出器。
【請求項7】
前記ダミーピークの高さは、前記交流信号の振幅の10%である、請求項6に記載の電気伝導度検出器。
【請求項8】
前記ダミーピークの幅は、前記交流信号の周期の半分よりも短い、請求項1に記載の電気伝導度検出器。
【請求項9】
前記測定対象は、イオンクロマトグラフィーの試料液であり、
前記電気伝導度検出器は、前記試料液を収容するセルをさらに備え、
前記セルは、前記試料液に浸漬され、前記波形出力部から前記交流信号が与えられる第1電極と、前記試料液に浸漬され、前記検出波を出力する第2電極とを含む、請求項1に記載の電気伝導度検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気伝導度検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気伝導度検出器は、たとえば、イオンクロマトグラフにおいてカラムで分離された試料の各成分(イオン)を検出するための検出器として用いられる。電気伝導度検出器は、イオンクロマトグラフからの溶出液(試料液)の流路を挟んで配置された一対の電極の間に電圧を印加し、両電極間を流れる電流を測定する。これにより両電極間を流れる溶出液の電気伝導度を算出し、電気伝導度検出器は、電気伝導度に基づいてイオンクロマトグラフで分離された成分を検出する。ここで、両電極間に印加する電圧を直流とすると電極間に分極が生じて正確な電気伝導度を測定することができないため、電圧には振幅、周波数が一定の交流(例えば、正弦波)が用いられる。
【0003】
国際公開第2017/208561号(特許文献1)には、このような電気伝導度検出器の一例である測定器が開示されている。この測定器は、交流信号を出力するセンサ部と、交流信号と同じ周波数、同じ位相を有する参照信号を出力する参照信号出力部と、交流信号と参照信号とを乗算する乗算部と、乗算部の前または後に置かれたA/D変換部と、乗算部の出力であるデジタル信号を積算する積算部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/208561号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気伝導度検出器では、ロックイン測定を行なうものがある。ロックイン測定を行なう場合、検出波と参照波(=駆動波と同周波数かつ同位相)を乗算する処理が行なわれる。測定対象によっては検出波と参照波に位相差が発生し乗算結果に誤差を生じる場合がある。このため、駆動波(参照波)と検出波の位相差を計算し、参照波の位相を検出波の位相に揃えることで上記誤差をなくす。しかし、駆動波にノイズ成分が重畳し、位相差が正確に検出できず、電気伝導度の検出精度が低下する場合がある。
【0006】
本開示は、このような課題が解決された電気伝導度検出器であって、ノイズの影響を受けにくい電気伝導度検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、電気伝導度検出器に関する。電気伝導度検出器は、測定対象に交流信号を供給する波形出力部と、波形出力部を制御する制御装置とを備える。制御装置は、交流信号が測定対象を通過して得られる検出波に電気伝導度を検出するための参照波を乗算する乗算処理を実行するように構成される。制御装置は、入力波にダミーピークを重畳した波形を交流信号として波形出力部に生成させ、対応して得られた検出波と交流信号との位相差を検出する位相差検出処理を実行するように構成される。制御装置は、入力波にダミーピークを重畳しない波形を交流信号として波形出力部に生成させるとともに、参照波に対して位相差を補正する処理を実行し、乗算処理の結果に基づいて電気伝導度を算出する電気伝導度算出処理を実行するように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電気伝導度検出器は、位相差検出のために目印となるダミーピークが入力波に重畳されるので、多少のノイズがあっても位相差を正確に検出できる。したがって、電気伝導度の検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る電気伝導度検出器の構成を示すブロック図である。
図2】位相誤差がある場合のロックイン測定について説明するための図である。
図3】位相誤差がない場合のロックイン測定について説明するための図である。
図4】位相差について説明するための図である。
図5】スパイクノイズがピーク位置に与える影響を説明するための図である。
図6】ダミーピークの形状の一例を示した図である。
図7】スパイクノイズとダミーピークの関係を示した図である。
図8】位相差検出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図9】電気伝導度算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る電気伝導度検出器の構成を示すブロック図である。図1に示す電気伝導度検出器1は、D/Aコンバータ11と、セル12と、アンプ13と、A/Dコンバータ14と、波形出力部(D/Aコンバータ11)を制御する制御装置100とを備える。セル12は、D/Aコンバータ11は、測定対象に交流信号を供給する波形出力部として機能する。測定対象である試料液を収容する。アンプ13は、検出波を増幅する。A/Dコンバータは、アンプ13の出力をデジタル信号に変換する。
【0012】
制御装置100は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0013】
制御装置100は、記憶装置を含む。記憶装置は、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ、SSD(Solid State Drive)、またはハードディスクなどを含む。記憶装置には、各種の処理を実現するためのプログラムが記憶されている。制御装置100は、記憶装置に記憶されているプログラムを実行することで、以下の各種処理を実現する。
【0014】
制御装置100は、交流信号が測定対象(セル12の試料液)を通過して得られる検出波に電気伝導度を検出するための参照波を乗算する乗算処理を実行するように構成される。乗算処理は乗算器105で実行される。
【0015】
制御装置100は、入力波にダミーピークを重畳した波形を交流信号として波形出力部に生成させ、対応して得られた検出波と交流信号との位相差を検出する位相差検出処理を実行するように構成される。位相差検出処理は、位相差検出部102で実行される。
【0016】
制御装置100は、入力波にダミーピークを重畳しない波形を交流信号として波形出力部に生成させるとともに、参照波に対して位相差を補正する処理を実行するように構成される。位相差を補正する処理は、位相補正部103で実行される。
【0017】
制御装置100は、乗算処理の結果に基づいて電気伝導度を算出する電気伝導度算出処理を実行するように構成される。電気伝導度算出処理は、乗算器105の出力が積算部106で積算され、フィルタ部107で数値が平滑化された後に、電気伝導度算出部108で実行される。
【0018】
電気伝導度検出器1によれば、参照波の位相を検出波に併せる補正の精度が位相補正部103によって向上するので、電気伝導度を精度良く検出することができる。
【0019】
以下に、位相の補正について詳細に説明する。電気伝導度検出器では一般的にロックイン測定が行なわれる。図2は、位相誤差がある場合のロックイン測定について説明するための図である。図3は、位相誤差がない場合のロックイン測定について説明するための図である。
【0020】
図2図3に示すように、駆動波には固定周波数の正弦波を用いることが多い。図1に示した構成では、正弦波の生成には、D/Aコンバータ11が用いられ、波形の読み取りにはA/Dコンバータ14が用いられる。
【0021】
1位相検波の場合、検出波と参照波(=駆動波と同周波数かつ同位相)が乗算器105で乗算される。しかし、図2に示すように、測定対象によっては検出波と参照波に位相差が発生し演算結果に誤差を生じる。
【0022】
図4は、位相差について説明するための図である。図4に示すように、通常は測定前にピーク検出処理をして駆動波(または参照波)のピークと検出波のピークとの間の位相差を計算し、位相差分の時間を補正して参照波の位相を検出波の位相に揃えることで上記誤差をなくす。
【0023】
図2に示したように、駆動波(=参照波)と検出波に位相差がある場合には、正しい演算結果が得られない。位相ずれの分、参照波と検出波の符号が異なる部分が発生し、乗算結果を積算しても正しい面積が得られない。一方、図3に示したように、駆動波(=参照波)と検出波に位相差がないには、正しい演算結果が得られる。
【0024】
したがって、通常測定前にピーク検出処理による位相差を検出し、検出した位相差を参照波にフィードバックして図2の状態から図3の状態にすることにより正しい演算結果を得ることができる。
【0025】
しかし、安価なD/Aコンバータを使用する場合には、出力電圧にスパイクノイズが入り込むことがある。図5は、スパイクノイズがピーク位置に与える影響を説明するための図である。図5には、スパイクノイズを含む駆動波(実線)とスパイクノイズを含まない駆動波(破線)とが重ねて示されている。図5に示すように、スパイクノイズの有無によって、ピーク位置が変わってしまうため、スパイクノイズが入ることで正弦波のピーク検出に誤差が生じる。
【0026】
したがって、図4に示したピーク検出の際に誤差が生じる。これは、位相誤差となり、位相誤差はそのまま電気伝導度の誤差となる。
【0027】
スパイクノイズはA/Dコンバータのサンプリング時間で平均化されてブロードなピークとなるため、検出波の振幅が小さい場合など、一般的な閾値判定による処理が難しい状況が多い。一方、スパイクノイズの出ないグリッチフリーのD/Aコンバータを使用すれば誤差は改善されるが、このようなD/Aコンバータは高価である。
【0028】
また、D/Aコンバータの出力部にアナログフィルタを入れることでスパイクノイズは低減できるがフィルタによる遅延および検出信号の減衰を考慮する必要がある。また部品追加によるコストアップにつながる。
【0029】
そこで、位相差を検出する際に、本実施の形態の電気伝導度検出器では、ダミーピークを用いる。図6は、ダミーピークの形状の一例を示した図である。図7は、スパイクノイズとダミーピークの関係を示した図である。
【0030】
本実施の形態では、ピーク検出処理をする際、D/Aコンバータ11の出力信号にスパイクノイズよりも振幅の大きいダミーピークを加えるように正弦波データ出力部101がデータを作成する。図7に示すように、スパイクノイズよりもダミーピークの振幅が大きいので、ピーク検出を行なった場合にピーク位置がスパイクノイズによってずれることがなくなる。一方、通常測定時はダミーピークなしの正弦波データとするため分析結果に影響はない。
【0031】
ダミーピークの振幅は、想定されるスパイクノイズの振幅より大きく、入力波である交流信号の振幅より小さければ良い。たとえば、ダミーピークの振幅は交流信号の振幅の5%以上15%以下とすれば良い。より限定的には、ダミーピークの振幅は10%とすれば良い。
【0032】
図8は、位相差検出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS1において、制御装置100はダミーピークありの正弦波データをD/Aコンバータ11に出力し、ステップS2において、制御装置100はA/Dコンバータ14から検出波のデータを取得する。
【0033】
続いて、ステップS3において、制御装置100は検出波のピーク検出を行なう。ピーク検出では、制御装置100は、A/Dコンバータ14によって数値に変換された波形のデータ値が最大となる時刻を検出する。続いて、ステップS4において、制御装置100は、入力波のピークの時刻と検出波のピークの時刻の差から位相差(または遅延時間)を算出し、ステップS5において位相補正データとして位相差を設定する。
【0034】
図9は、電気伝導度算出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS11において、制御装置100はダミーピークなしの正弦波データをD/Aコンバータに出力し、セル12を経由した検出波のデータをA/Dコンバータ14から得る。そして、ステップS12において、制御装置100は位相補正された矩形波データを出力し、ステップS13において検出波のデータと矩形波データとを乗算する。そして、乗算結果を正弦波の半周期分または1周期分積算して面積を算出する。
【0035】
このとき、矩形波データの補正を行なっていないと、図2のように矩形波の符号と検出波の符号が異なる部分が生じるため、乗算結果が負の値となり面積が正しく積算できない。本実施の形態では、矩形波データを検出波データと乗算する際に矩形波データの位相を補正する。このため、図3に示したように検出波データの符号と矩形波データの符号は全範囲で一致するようになり、これらを乗算した結果を積算することによって面積を正しく計算することができる。
【0036】
その後、ステップS15においてフィルタリング処理が実行され、ステップS16においてセルの大きさなどに対応する係数などを必要に応じて乗じて変換された結果が電気伝導度として出力される。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態の電気伝導度検出器によれば、次の効果が得られる。
【0038】
スパイクノイズの出ないグリッチフリーのD/Aコンバータを使用する必要がなく、スパイクノイズ除去用のフィルタ回路の実装が不要なので低コストで電気伝導度検出器を製造できる。
【0039】
入力波のデータを変更するだけで、計算コストもほぼ変わらないためハードウエア(CPU、PLDなど)を変更する必要がなく、位相補正の精度を向上させる処理を導入するのが容易である。
【0040】
[態様]
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0041】
(第1項) 本開示の第1の態様は、電気伝導度検出器に関する。電気伝導度検出器は、測定対象に交流信号を供給する波形出力部と、波形出力部を制御する制御装置とを備える。制御装置は、交流信号が測定対象を通過して得られる検出波に電気伝導度を検出するための参照波を乗算する乗算処理を実行するように構成される。制御装置は、入力波にダミーピークを重畳した波形を交流信号として波形出力部に生成させ、対応して得られた検出波と交流信号との位相差を検出する位相差検出処理を実行するように構成される。制御装置は、入力波にダミーピークを重畳しない波形を交流信号として波形出力部に生成させるとともに、参照波に対して位相差を補正する処理を実行し、乗算処理の結果に基づいて電気伝導度を算出する電気伝導度算出処理を実行するように構成される。
【0042】
第1項の電気伝導度検出器によれば、参照波の位相を検出波に併せる補正の精度が向上するので、電気伝導度を精度良く検出することができる。
【0043】
(第2項) 第1項に記載の電気伝導度検出器において、入力波は正弦波であり、参照波は矩形波である。
【0044】
第2項の電気伝導度検出器によれば、参照波である矩形波の位相を検出波である正弦波に合せる補正の精度が向上するので、電気伝導度を精度良く検出することができる。
【0045】
(第3項) 第2項に記載の電気伝導度検出器において、波形出力部は、D/Aコンバータを含む。制御装置は、電気伝導度算出処理において、正弦波データをD/Aコンバータに送信するように構成される。制御装置は、位相差検出処理において、正弦波データにダミーピークのデータを加算したデータをD/Aコンバータに送信するように構成される。
【0046】
第3項の電気伝導度検出器によれば、D/Aコンバータで波形を発生するため、入力波に対してダミーピークの重畳の有無を容易に切替えられる。
【0047】
(第4項) 第3項に記載の電気伝導度検出器において、制御装置は、位相差検出処理において、検出波のピーク値を検出し、交流信号のダミーピークから検出波のピーク値までの遅延量に基づいて位相差を検出するように構成される。
【0048】
第4項の電気伝導度検出器によれば、ダミーピークを重畳させるため、ピーク間の時間差がノイズの影響を受けにくくなるので、参照波の位相を検出波に併せる補正の精度が向上するので、電気伝導度を精度良く検出することができる。
【0049】
(第5項) 第2項に記載の電気伝導度検出器において、制御装置は、乗算処理の結果を積算することによって参照波と正弦波との重畳部分の面積を算出し、算出した面積を電気伝導度に変換するように構成される。
【0050】
第5項の電気伝導度検出器によれば、入力信号が交流信号である場合に、参照波の位相を検出波に併せる補正の精度が向上するので、電気伝導度を精度良く検出することができる。
【0051】
(第6項) 第1項に記載の電気伝導度検出器において、ダミーピークの高さは、交流信号の振幅の5%以上15%以下である。
【0052】
第6項の電気伝導度検出器によれば、ダミーピークがノイズよりも大きく、かつダミーピークが交流信号に影響を与えない範囲であるため、ピーク間の時間差がノイズの影響を受けにくく、かつ電気伝導度の検出精度を良くすることができる。
【0053】
(第7項) 第6項に記載の電気伝導度検出器において、ダミーピークの高さは、交流信号の振幅の10%である。
【0054】
第7項の電気伝導度検出器によれば、ダミーピークがノイズよりも大きく、かつダミーピークが交流信号に影響を与えない範囲であるため、ピーク間の時間差がノイズの影響を受けにくく、かつ電気伝導度の検出精度を良くすることができる。
【0055】
(第8項) 第1項に記載の電気伝導度検出器において、ダミーピークの幅は、交流信号の周期の半分よりも短い。
【0056】
第8項の電気伝導度検出器によれば、ダミーピークが交流信号に影響を与えない範囲であるため、ピーク間の時間差がノイズの影響を受けにくく、かつ電気伝導度の検出精度を良くすることができる。
【0057】
(第9項) 第1項に記載の電気伝導度検出器において、測定対象は、イオンクロマトグラフィーの試料液である。電気伝導度検出器は、試料液を収容するセルをさらに備える。セルは、試料液に浸漬され、波形出力部から交流信号が与えられる第1電極と、試料液に浸漬され、検出波を出力する第2電極とを含む。
【0058】
第9項の電気伝導度検出器によれば、イオンクロマトグラフィーに用いる、電気伝導度の検出精度を良くすることができる。
【0059】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 電気伝導度検出器、11 D/Aコンバータ、12 セル、13 アンプ、14 A/Dコンバータ、100 制御装置、101 正弦波データ出力部、102 位相差検出部、103 位相補正部、105 乗算器、106 積算部、107 フィルタ部、108 電気伝導度算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9