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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015948
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】プレス機械
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
B21D5/02 K
B21D5/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118879
(22)【出願日】2023-07-21
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】500419218
【氏名又は名称】株式会社吉野機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】野内 幸平
(72)【発明者】
【氏名】吉野 友章
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063BA07
4E063FA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】装置構造の複雑化や高コスト化を伴うことなくクラウニングの矯正を行うことができるプレス機械を提供する。
【解決手段】上金型と調整台40に載置された下金型の間でワークに対して加工を行うプレス機械であって、前記調整台は、幅方向Xに沿って配列された複数の駆動ピン44を有する幅方向Xに延在する制御ロッド43と、制御ロッドを幅方向に駆動するロッド駆動部と、幅方向Xに沿って配列された複数の調整ブロック42と、を有し、それぞれの調整ブロックは、第一テーパー面50aと、駆動ピンを案内する幅方向に対して所定の角度αで傾斜するスロット50bを有する第一テーパー板50と、第一テーパー面に対向する第一テーパー面に相補的な第二テーパー面51aを有する第二テーパー板51と、有し、少なくとも1つの調整ブロックのスロット51bの傾斜角度αが他の少なくとも1つの調整ブロックのスロット50bの傾斜角度αと相違する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型と調整台に載置された下金型との間でワークに対して加工を行うプレス機械であって、
前記調整台は、
幅方向に沿って配列された複数の駆動ピンを有する幅方向に延在する制御ロッドと、
前記制御ロッドを前記幅方向に駆動するロッド駆動部と、
前記幅方向に沿って配列された複数の調整ブロックと、
を有し、
それぞれの前記調整ブロックは、
第一テーパー面と、前記幅方向に対して所定の傾斜角度で延在し、前記駆動ピンを案内するスロットを有する第一テーパー板と、
前記第一テーパー面に対向する前記第一テーパー面に相補的な第二テーパー面を有する第二テーパー板と、
を有し、
少なくとも1つの前記調整ブロックの前記スロットの前記傾斜角度が他の少なくとも1つの前記調整ブロックの前記スロットの前記傾斜角度と相違することを特徴とするプレス機械。
【請求項2】
前記幅方向の中央に位置する前記調整ブロックの前記スロットの前記傾斜角度が、前記幅方向の両端側に位置する前記調整ブロックの前記スロットの前記傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項1のプレス機械。
【請求項3】
前記調整台は、前記第二テーパー板の前後方向の位置を調整する前後位置調整手段を有することを特徴とする請求項1のプレス機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルベンダー、プレスブレーキなどのプレス機械に関し、さらに詳しくは、曲げ加工時のテーブルに生じるクラウニングを補正・矯正できるプレス機械に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に従来のプレス機械101を示す。プレス機械101は、サイドフレーム110と、上型122を保持する上テーブル120と、下型132を保持する下テーブル130と、サイドフレーム110に固定されたサーボモーター等のテーブル駆動手段111を有する。テーブル駆動手段111の駆動軸112の駆動によって上テーブル120を下降させることで、上下金型122,132の間に配置したワークを挟圧して曲げ加工する。このときの加圧力により、上下テーブル120,130に仮想線C1,C2で示す凹状の撓み(クラウニング)が生じてワークの加工精度が低下する問題がある。特に、ワーク若しくは上下テーブル120,130の幅方向寸法が大きい場合や加圧力が大きい場合にこの問題が顕著になる。
【0003】
上記問題に対する対処法としては、例えば、特許文献1、2が知られている。特許文献1は、下テーブルの幅方向中間位置に配置した複数の撓み補正用シリンダーの付勢力によってクラウニングを軽減するというものである。特許文献2は、上及び下テーブルの幅方向中間位置に埋設した複数の弾性装置によって上下テーブルの弾性力を幅方向で変化させることでクラウニングを軽減するというものである。
【0004】
他のクラウニング対策として、図6のプレス機械201も知られている。プレス機械201では、下テーブル230が、前後に重ね合わせた複数のテーブル231~233で構成され、中央付近の連結ピン240でこれらを連結すること真ん中のテーブル231のクラウニングを軽減するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-329549号公報
【特許文献2】特開2004-136366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のプレス機械では、撓み補正用シリンダーの増設によるコスト増が過大である。特許文献2のプレス機械では、弾性装置の構造が複雑かつ精密であるために故障に弱く、また、弾性装置の耐荷重には限界があるため、加圧力の大きいプレス機械には適用できない問題がある。図6の方式では、プレス機械201の幅寸法に応じた本数(2~8本程度)の連結ピン240が必要であるが、各テーブル231~233に各連結ピン240を通す挿通孔を極めて高い位置精度で形成することが必要となるため、加工コストが過大となる問題がある。
【0007】
本発明の目的は、従来と異なる方法でクラウニングを軽減又は解消することである。一態様では、大幅な複雑化や高コスト化を伴うことなくクラウニングの矯正を行うことができるプレス機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願には、下記発明が開示される。
<構成1>
上金型と調整台に載置された下金型との間でワークに対して加工を行うプレス機械であって、
前記調整台は、
幅方向に沿って配列された複数の駆動ピンを有する幅方向に延在する制御ロッドと、
前記制御ロッドを前記幅方向に駆動するロッド駆動部と、
前記幅方向に沿って配列された複数の調整ブロックと、
を有し、
それぞれの前記調整ブロックは、
第一テーパー面と、前記幅方向に対して所定の傾斜角度で延在し、前記駆動ピンを案内するスロットを有する第一テーパー板と、
前記第一テーパー面に対向する前記第一テーパー面に相補的な第二テーパー面を有する第二テーパー板と、
を有し、
少なくとも1つの前記調整ブロックの前記スロットの前記傾斜角度が他の少なくとも1つの前記調整ブロックの前記スロットの前記傾斜角度と相違することを特徴とするプレス機械。
<構成2>
前記幅方向の中央に位置する前記調整ブロックの前記スロットの前記傾斜角度が、前記幅方向の両端側に位置する前記調整ブロックの前記スロットの前記傾斜角度よりも大きいことを特徴とする構成1のプレス機械。
<構成3>
前記調整台は、前記第二テーパー板の前後方向の位置を調整する前後位置調整手段を有することを特徴とする構成1のプレス機械。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1実施形態のプレス機械1を示す。
図2】プレス機械1の側方断面図を示す。
図3】調整台40を示す。(a)は全体斜視図。(b)は一部の第一テーパー板50及び第二テーパー板51を取り外した状態の調整台40。(c)はロッド駆動部45の拡大図。
図4】調整台40を示す。(a)は第一テーパー板50の平面図。(b)は第二テーパー板51の平面図。(c)は(a),(b)のA-A位置における調整台40の断面図。
図5】従来のプレス機械101を示す。
図6】他の従来のプレス機械201を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1,2は、本発明の1実施形態のプレス機械1を示す。プレス機械1は、左右のサイドフレーム10と、サイドフレーム10の前面に上下に移動可能に取り付けられた上テーブル(第1テーブル)20と、サイドフレーム10の前面に固定された下テーブル(第2テーブル)30を有する。上テーブル20の下端には、金型ホルダー21を介して上金型22を取り付け可能であり、下テーブル30の上端には、調整台40を介して金型ホルダー31及び上金型32を取り付け可能である。金型ホルダー21,31を省略して上テーブル20及び/又は調整台40に直接金型22,32を取り付けてもよい。本明細書では、下テーブル30の延在方向(図1のX方向)を幅方向と言い、その直角方向(図2のY方向)を前後方向と言う。
【0011】
上テーブル20は、駆動手段の駆動力によって上下動し、上下の金型ユニット21,31に取り付けられた上下金型22,32間でワークを挟圧することでワークを曲げ加工する。図2の例では、駆動手段は、油圧シリンダーやサーボモーターなどの駆動源11aと、駆動源11aの駆動軸11bと、駆動軸11b上の力点11cと上テーブル20の上端の作用点11dを連結する連結部材11eを有し、支点11fの周りで連結部材11eを回転させることで上テーブル20を上下に駆動する。駆動源11aは油圧シリンダーやサーボモーターなど種類を問わない。本例では、上テーブル20が移動可能なプレス機械1を示すが、下テーブル30が移動可能なプレス機械にも本発明は適用可能である。
【0012】
図3,4は、調整台40の詳細を示す。調整台40は、幅方向に配列された複数の調整ブロック42,42・・・42(調整ブロック42,42・・・42を総称して調整ブロック42と言う場合がある)と、複数の調整ブロック42の下方に配置された幅方向に延在する制御ロッド43と、制御ロッド43を駆動するロッド駆動部45を有する。各調整ブロック42の配列間隔は一定間隔がよく、各調整ブロック42の寸法や外形は同一がよいが、これらは適宜変更してもよい。制御ロッド43の湾曲/屈曲を防止するため、制御ロッド43の両側に間隔を開けて幅方向に延在する基台43a,43bを配置し、基台43a,43bの間の隙間で制御ロッド43が移動するようにするとよい。
【0013】
図4(a)~(c)に示すように、調整ブロック42は、上下に積層された第一テーパー板50と第二テーパー板51を有する。第一テーパー板50は上面に所定の角度で傾斜する第一テーパー面50aを有する。第二テーパー板51は下面に所定の角度で傾斜する第二テーパー面51aを有する。第一テーパー面50aと第二テーパー面51aは相補的な形状/傾斜を有する。例えば、第一テーパー面50aは、後方に向けて下降する傾斜を有し、第二テーパー面51aは後方に向けて上昇する傾斜を有するとよい。第一、第二テーパー板50,51は、第一、第二テーパー面50a,51aを対向/当接させた状態で積層されている。
【0014】
図4(a),(c)に示すように、調整ブロック42の第一テーパー板50は幅方向(X)に対して所定の傾斜角度αで延在するスロット50bを有する。各調整ブロック42のスロット50bの傾斜角度αは個別に設定され、少なくとも1つの調整ブロック42のスロット50bの傾斜角度は他の少なくとも1つの調整ブロック42のスロット50bの傾斜角度と相違する。好ましくは、幅方向中央側の調整ブロック42のスロット50bほど傾斜角度が大きく、幅方向両端側の調整ブロック42のスロット50bほど傾斜角度が小さい。第一テーパー板50はさらに前後方向に延びるガイド50cと第一テーパー板50の上面から起立するガイドピン50dを有するとよい。
【0015】
図3(c)に示すように、制御ロッド43は、基端側でモーター45a、回転ベルト45b、ボールネジ45c等を有するロッド駆動部45に連結され、ロッド駆動部45の駆動によって制御ロッド43は幅方向に進退移動する。図3(b)に示すように、制御ロッド43は、幅方向に配列された各第一テーパー板50のスロット50bに挿入される複数の駆動ピン44,44・・・44図3(b)では駆動ピン44及び44のみ示す。)を有する。駆動ピン44,44・・・44の配列間隔は調整ブロック42,42・・・42と同一がよいが、適宜変更も可能である。
【0016】
図4に示すように、基台43aは、所定間隔で幅方向に配列された複数のガイドピン46を有し、ガイドピン46が各第一テーパー板50のガイド50cに挿入されて案内されることで、第一テーパー板50の前後方向以外の方向への移動が規制される。ガイドピン46の配列間隔は調整ブロック42,42・・・42と同一がよいが、適宜変更も可能である。図では、第一テーパー板50の左側にのみガイド50cを有する場合を示すが、第一テーパー板50の右側にも同様のガイド50cを設け、基台43bに立設したガイドピンを案内することも可能である。
【0017】
図4(b),(c)に示すように、第二テーパー板51は、さらに、前後方向に延びるネジ穴51bを有し、前壁41aの幅方向に所定間隔で配列された前後方向に延びる操作ボルト47の操作(六角レンチ等を用いて操作ボルト47の回転させることで操作ボルト47を前後方向に移動させる等)により第二テーパー板51を前後方向に移動させることが可能である。操作ボルト47の配列間隔は調整ブロック42,42・・・42と同一がよいが、適宜変更も可能である。第二テーパー板51は、第一テーパー板50に植設されたガイドピン50dに係合する前後方向に延在するガイド孔51cを有し、ガイドピン50dがガイド孔51cに案内されることで第二テーパー板51の前後方向以外への移動が規制される。
【0018】
上記プレス機械1では、ロッド駆動部45の駆動により制御ロッド43を幅方向で移動させることにより、駆動ピン44とスロット50bの案内に従って第一テーパー板50が前後方向に移動し、これにより、各調整ブロック42,42・・・42の高さを変化させることができる。各第一テーパー板50の前後方向の移動量は、各第一テーパー板50のスロット50bの傾斜角度αに依存するため、各第一テーパー板50のスロット50bの傾斜角度αの調整により、調整台40の高さの幅方向プロファイルを任意に調整することが可能であり、これにより、下テーブル30の幅方向のクラウニングを矯正することが可能である。例えば、幅方向中央の調整ブロック42のスロット50bの傾斜角度αを大きくし、幅方向両端側の調整ブロック42のスロット50bの傾斜角度αを順次小さくしていくことにより、図5に示すような中央が凹陥する凹状のクラウニングC1を矯正することが可能である。
【0019】
さらに、プレス機械1では、各操作ボルト47の操作によって、各第二テーパー板51を個別に前後に移動させ、これにより、各調整ブロック42,42・・・42の高さを個別に調整することが可能である。よって、上記制御ロッド43により概略のクラウニング矯正を行った後にさらに、各操作ボルト47の操作により下テーブル30のクラウニングの微調整を行うことが可能である。
【0020】
上記実施形態に記載したプレス機械1及びそれらの要素の寸法、形状、配置、個数、材料等は例示であり、他の態様も可能である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・プレス機械
10・・・サイドフレーム
11a・・・駆動源
11b・・・駆動軸
11d・・・作用点
11f・・・支点
11c・・・力点
11e・・・連結部材
20・・・上テーブル
21・・・金型ホルダー
22・・・上金型
30・・・下テーブル
31・・・金型ホルダー
32・・・下金型
40・・・調整台
41a・・・前壁
41b・・・後壁
42(42,42・・・42)・・・調整ブロック
43a,43b・・・基台
43・・・制御ロッド
44(44,44・・・44)・・・駆動ピン
45・・・ロッド駆動部
45a・・・モーター
45b・・・回転ベルト
45c・・・ボールネジ
46・・・ガイドピン
47・・・操作ボルト
50・・・第一テーパー板
50a・・・第一テーパー面
50b・・・スロット
50c・・・ガイド
50d・・・ガイドピン
51・・・第二テーパー板
51a・・・第二テーパー面
51b・・・ネジ穴
51c・・・ガイド孔
α・・・傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6