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特開2025-15964循環型燃焼処理方法、発電方法及びこれから得られる炭酸ガス吸収材
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  • 特開-循環型燃焼処理方法、発電方法及びこれから得られる炭酸ガス吸収材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015964
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】循環型燃焼処理方法、発電方法及びこれから得られる炭酸ガス吸収材
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/00 20060101AFI20250124BHJP
   C05F 9/00 20060101ALI20250124BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20250124BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
F23G7/00 A
C05F9/00 ZAB
B01D53/62
B01J20/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118914
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】592048970
【氏名又は名称】日鉄セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593065899
【氏名又は名称】草野産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】大石 徹
【テーマコード(参考)】
3K161
4D002
4G066
4H061
【Fターム(参考)】
3K161AA02
3K161AA04
3K161AA05
3K161AA13
3K161DB32
3K161EA41
3K161LA02
3K161LA12
3K161LA17
3K161LA33
3K161LA40
3K161LA49
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA66
4G066AA78B
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA02
4H061AA02
4H061CC36
4H061CC42
4H061CC55
4H061EE61
4H061GG18
4H061GG24
4H061GG56
(57)【要約】
【課題】バイオマス燃料の燃焼によって生じた焼却灰の有効利用を図ると共に、炭酸ガスの排出量を削減した循環型燃焼方法及びこれから得られる無機肥料、炭酸ガス吸収材を提供する。
【解決手段】バイオマス燃料を燃焼して熱回収すると共に、無機成分を主たる成分とする焼却灰を得る燃焼工程、この焼却灰を炭酸ガスと反応させて炭酸塩含有材料とする炭酸ガス吸着工程、及びこの炭酸塩含有材料を肥料とする工程を有すること、及びこの肥料をバイオマス燃料又はその原料となる植物を育成ために使用することからなる炭酸ガス排出量が削減された循環型燃焼処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス燃料を燃焼して熱回収すると共に、無機成分を主たる成分とする焼却灰を得る燃焼工程、この焼却灰を炭酸ガスと反応させて炭酸塩含有材料とする炭酸ガス吸着工程、及びこの炭酸塩含有材料を肥料とする工程を有すること、及びこの肥料をバイオマス燃料又はその原料となる植物を育成ために使用することを特徴とする炭酸ガス排出量が削減された循環型燃焼処理方法。
【請求項2】
肥料を、炭酸ガス排出権付き肥料として使用することを特徴とする請求項1に記載の循環型燃焼処理方法。
【請求項3】
燃焼工程で得られる焼却灰を、炭酸ガス吸収材として使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の循環燃焼処理方法。
【請求項4】
燃焼工程で得られる焼却灰から製造されたことを特徴とする炭酸ガス吸収材。
【請求項5】
バイオマス燃料を燃焼して発電すると共に、無機成分を主たる成分とする焼却灰を得る燃焼工程、この焼却灰を炭酸ガスと反応させて炭酸塩含有材料とする炭酸ガス吸着工程、及びこの炭酸塩含有材料を肥料とする工程を有することを特徴とする炭酸ガス排出量が削減された循環型発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガスの排出量を削減したバイオマス燃料の循環型燃焼処理方法、発電方法及び燃焼により得られる焼却灰を利用した炭酸ガス吸収材に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス燃料は炭酸ガスの排出量を削減する燃料して注目されている。バイオマス燃料として、木材等の木質バイオマス燃料や、野菜、果実、穀物等の未利用部分がバイオマス燃料として期待されている。例えば、野菜くず、食品加工設備や酒類、ジュース工場等から排出される残渣、穀物の茎、葉、根なども再生可能エネルギー資源の一つとして注目されている。これらの植物系のバイオマスを発電用燃料などとして利用することによって、炭酸ガスの排出量を削減することができる。
【0003】
バイオマス燃料の燃焼に伴い発生する焼却灰は、その再利用がなければ循環型社会に組み込めず、廃棄処分することになる。草や木などには、カリウムが多く含まれていることに着目し、草木灰を肥料等として再利用することは広く知られている。植物系のバイオマス燃料には、カリウムが多く含まれており、その他植物の成長に必要なリンやマグネシウムなどの無機成分も含まれているので、これを無機肥料として利用することができれば有利である。
【0004】
バイオマス燃料の燃焼に伴い発生する焼却灰は、高温で燃焼させると金属分は酸化カリウムなどの酸化物として存在すると考えられる。このような酸化物は空気中に放置すると炭酸ガスと反応して炭酸塩となると推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-150958号公報
【特許文献2】特開2020-168740号公報
【特許文献3】特開2018-145338号公報
【0006】
特許文献1は、バイオマス燃料の燃焼装置からの焼却灰のうち、カリウム成分濃度が比較的高い微粉については肥料の原料等として再利用されるものの、カリウム成分濃度が低い粗粉については再利用されずに廃棄されている問題を解決するため、燃焼灰の全体に肥料成分を配合して、全体を肥料として利用することを開示する。
【0007】
特許文献2は、汚泥等のリンを豊富に含有するバイオマス燃料を燃焼する際に生じる燃焼装置の閉塞等の問題を解決するために、バイオマス燃料にカルシウム含有物質を配合することを開示する。
【0008】
特許文献3は、カリウム分をセルロース系の焼却灰にゼオライトと水を加えて、焼却灰中のカリウム分を溶出させて、これをゼオライトに吸着させ、肥料分を含む人工砂として園芸資材、緑化資材として使用することを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これらの文献は焼却灰を肥料として利用を開示するだけであり、焼却灰を炭酸ガス吸着材として使用することは教えない。炭酸ガスの排出量を削減できれば、地球環境の維持、改善に寄与する効果は大きいと期待される。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、バイオマス燃料の燃焼によって生じた焼却灰の有効利用を図ると共に、炭酸ガスの排出量を削減した循環型燃焼方法及びこれから得られる無機肥料、炭酸ガス吸収材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、バイオマス燃料を燃焼して熱回収すると共に、無機成分を主たる成分とする焼却灰を得る燃焼工程、この焼却灰を炭酸ガスと反応させて炭酸塩含有材料とする炭酸ガス吸着工程、及びこの炭酸塩含有材料を肥料とする工程を有すること、及びこの肥料をバイオマス燃料又はその原料となる植物を育成ために使用することを特徴とする循環型燃焼処理方法である。
【0011】
また、本発明は、バイオマス燃料を燃焼して発電すると共に、無機成分を主たる成分とする焼却灰を得る燃焼工程、この焼却灰を炭酸ガスと反応させて炭酸塩含有材料とする炭酸ガス吸着工程、及びこの炭酸塩含有材料を肥料とする工程を有することを特徴とする循環型発電方法である。
【0012】
上記肥料は、炭酸ガス排出権付き肥料として使用することができる。また、上記焼却灰は、炭酸ガス吸収材として使用することができる。
【0013】
また、本発明は上記燃焼工程で得られる焼却灰から製造されたことを特徴とする炭酸ガス吸収材である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の炭酸ガス回収処理方法の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、説明する。
本発明で燃焼させるバイオマス燃料は、化石燃料以外の植物や農産物等の自然界の有機性資源から抽出した生物由来の燃料である。バイオマス燃料としては、例えば、廃棄木材、間伐材、流木、農作物、草類などの他に、野菜くず、食物加工残渣、果実、穀物や木材等の未利用部分、パルプ残渣などが挙げられる。その他、廃棄食品、生活廃棄物、汚泥、家畜の糞尿等があるが、熱回収の面及び大量処理の観点からは、木質系又は食物加工残渣又はこれらを主として含むものなどが適する。また、鶏糞などカリウム分を比較的多く含むものも適する。
バイオマス燃料には、燃焼や発熱を促進又は増加する材料や焼却灰の性状を調整する材料や燃料を粒状など所定形状に成形するためアルカリ土類金属の酸化物を含む補助資材を配合してもよい。このような補助資材としては、酸化カルシウム、軽焼ドロマイトおよび軽焼マグネシアから選ばれるアルカリ土類金属の酸化物を1種以上含むものが望ましい。
【0016】
バイオマス燃料を燃焼させる装置には制限はないが、発電やボイラー用の燃焼装置が熱回収効率と大量処理の面で適する。バイオマス燃料専用の装置であっても、化石燃料と併用可能な装置であってもよいが、バイオマス燃料専用又はバイオマス燃料を主成分とする燃焼装置が好ましい。
燃焼温度が高いほどカリウム分などの無機成分は酸化物として焼却灰に存在する割合が高まるので、800℃以上、好ましくは950℃以上で燃焼させることが好ましい。
【0017】
燃焼方法としては、空気を十分に供給して完全燃焼する方法と、空気を理論量以下供給して部分燃焼する方法のいずれでもよいが、前者であれば、発熱量が最大となり、熱回収効率が向上する利点がある。後者の場合は、発生熱量は少ないが、燃焼排ガスに含まれる炭酸ガス量を大幅に低減することができる利点がある。この場合、未燃の炭素又は炭化物が焼却灰に存在することになるが、これが肥料に含まれても土壌改質材としての機能が期待できる。そして、後者の場合は、少なくとも炭素分の一部、好ましくは50~80 wt%が燃焼するように空気量を調整して発熱量を高めることがよい。
【0018】
バイオマス燃料を燃焼させると熱が発生すると共に、燃焼排ガスと焼却灰が生じる。熱は発電やボイラーの加熱に利用する。焼却灰は、カリウム分などの金属酸化物を含むので、炭酸ガス吸着材として有用である。焼却灰中に、カリウム分は酸化カリウムとして5wt%以上、好ましくは10wt%以上含まれることがよい。
【0019】
炭酸ガス吸着材は、焼却灰のみからなるものであってもよいが、焼却灰にアルカリ土類金属の酸化物を含む補助資材を混合する混合工程を設けて、混合し、必要により造粒して、成分や形状が調整された炭酸ガス吸着材とすることが好ましい。アルカリ土類金属の酸化物としては、肥料成分として有用なマグネシア又は焼成ドロマイトが好ましいが、生石灰又は消石灰等であってもよく、これらの混合物であってもよい。造粒する場合は、焼却灰と補助資材を水分の存在下に混錬、混合する方法が適する。
【0020】
本発明の燃焼処理方法又は発電方法では、炭酸ガス吸着工程において、焼却灰を炭酸ガス含有ガスと接触させて炭酸ガスを吸着させ、焼却灰中の金属酸化物を炭酸塩とする。
【0021】
炭酸ガス吸着工程において使用される装置に制限はないが、焼却灰又は炭酸ガス吸着材と炭酸ガス含有ガスとの接触を効率的に行うことができる装置が適する。無機肥料とする場合は、この装置は造粒機能を有することが好ましく、このような装置としては流動造粒反応槽や流動乾燥装置等があり、市販の装置を使用することができる。炭酸ガス吸着工程においては、造粒するため、炭酸ガスの吸着性を高めるため、又は肥料成分を調整するため、水及びマグネシア等の補助資材を配合することができるい。炭酸ガス吸着工程における温度は、熱間である必要があり、好ましくは250~900℃、好ましくは400~700℃である。高温であると炭酸塩が分解し、低温であると反応速度が低下する。
【0022】
炭酸ガス吸着工程において使用される炭酸ガス含有ガスには、制限はないが、バイオマス燃料を燃焼させる際に発生する燃焼排ガスであれば、設備や操作が簡便となり、しかも排ガスとして排出される炭酸ガスを大きく削減することができる。
【0023】
炭酸ガス吸着工程では、焼却灰は炭酸ガスを吸着して炭酸塩含有材料となる。炭酸塩含有材料中の金属酸化物はその全量又は大部分が炭酸塩となるように行うことが好ましい。具体的には、酸化カリウムの90wt%以上が炭酸塩となるように行うことが好ましい。
【0024】
炭酸ガス吸着工程で得られた炭酸塩含有材料は、炭酸カリウムをはじめとする無機肥料成分を含有するので、肥料として使用される。肥料は、炭酸塩含有材料単独であってもよいが、肥料として使いやすさや、肥料成分の調整のため、他の成分を配合してもよく、成形等を施してもよい。
有利には、回収工程で回収された炭酸塩含有材料を肥料製造工程に送り、これを所定品質の無機肥料とすることがよい。肥料製造工程では、炭酸化焼却灰に、必要により各種の肥料成分や成形性改良剤、水溶性調整剤、水等を加えて混合又は造粒することができる。
【0025】
本発明の肥料は、肥料として使用されるものに限るものではなく、肥料分を含む土壌改良材ととして使用されるものを含む。
【0026】
この無機肥料をバイオマス燃料の元となる植物の肥料として使用すれば、循環型システムが完成する。
【0027】
次に、本発明の炭酸ガス回収処理方法の一例を示すブロック図により、本発明が目指す循環型システムを説明する。
【0028】
バイオマス燃料は、燃焼工程で燃焼され、熱エネルギーを回収され、発電等に使用され、焼却灰と燃焼排ガスになる。焼却灰は必要により補助資材と混合されて炭酸ガス吸着材となる。この炭酸ガス吸着材は炭酸ガス吸着工程に送られ、所定の炭酸ガス濃度と温度を有する燃焼排ガスと接触して、アルカリ(土類)金属の酸化物を炭酸塩とし、炭酸塩含有材料とする。これを肥料製造工程に送り、肥料とする。この肥料は、農地に散布されて食品原料となる植物の成長を助ける。成長した植物は、食品工場に送られ、ここで排出される廃棄物は再度バイオマス燃料として利用される。
【実施例0029】
以下、本発明の実施例を示す。
【0030】
実施例1
天日乾燥したブドウの剪定枝1kgを用い、空気中、鉄製の大型ルツボ中で加熱燃焼させて129gの焼却灰を得た。
【0031】
実施例2
天日乾燥した収穫後のトマトの枝葉1kgを用い、実施例1と同様にして加熱燃焼させて70gの焼却灰を得た。
【0032】
実施例3
天日乾燥したアスパラガスの枝葉1kgを用い、実施例1と同様にして加熱燃焼させて82gの焼却灰を得た。
【0033】
実施例4
乾燥したコーヒー豆1kgを用い、実施例1と同様にして加熱燃焼させて33gの焼却灰を得た。
【0034】
実施例5
乾燥した茶葉1kgを用い、実施例1と同様にして加熱燃焼させて70gの焼却灰を得た。
【0035】
実施例6
市販の焼鶏糞1kgを用い、実施例1と同様にして加熱燃焼させて375gの焼却灰を得た。
【0036】
実施例7
バイオマス発電所から排出された間伐材チップ焼却灰1kgを用いた。
【0037】
各実施例における焼却灰の蛍光X線(XRF)分析による化学組成(wt%)を表1に示す。また、焼却灰中の揮発分を未燃分とし、その含有量(g/100g)を測定した結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例8
実施例1~7で得た焼却灰を炭酸ガス吸着材(1~7)として使用し、これをセラミック菅に充填し、空気を遮断した炭酸ガス気流中で、表2に示す温度で各1時間加熱して炭酸ガスと反応させた。なお、実施例1で得た焼却灰を吸着材1とし、以下同様とした。
得られた反応物生成物を、炭酸ガス気流中で室温まで冷却後、マッフル炉を使用して1100℃で1時間加熱して反応生成物を熱分解して炭酸ガスを放出させ、重量減少量から吸着材100gあたりの炭酸ガス吸収量(g)を求めた。結果を表2に示す。
約400℃~700℃の温度範囲であれば、高い炭酸ガス吸収量を示すことが分かる。
【0040】
【表2】
【0041】
実施例9
上記炭酸ガス吸着材(1~7)について、実施例8において、400℃にて炭酸ガス吸着後に含まれる反応物生成物中の肥料成分の含有量(wt%)を蛍光X線(XRF)分析によって求めた。結果を表3に示す。
【表3】
図1