(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015997
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】採血分注システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
G01N35/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118967
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】591086854
【氏名又は名称】株式会社テクノメデイカ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】白石 典之
(72)【発明者】
【氏名】山中 将也
(72)【発明者】
【氏名】大澤 碧
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058EA02
2G058EA08
2G058GC05
2G058GC09
(57)【要約】
【課題】
採血前及び採血時に医療従事者及び患者にかかる負担を軽減することができ、かつ、採血後の血液を検査項目に対応する一つ又は複数の分析装置に供給することが可能な採血分注システムを提供すること。
【解決手段】
本発明に係る採血分注システムは、患者の採血指示情報に基づいて、患者の検査に必要な血液総量を採血可能な親採血容器に貼り付けるための患者の検査に関する識別情報を印字及び/又は記憶させた親識別ラベルを作成する親採血容器準備装置と、前記患者の検査に関する識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備し、前記親採血容器の親識別ラベル及び/又は子採血容器の子識別ラベルに印字又は記憶された識別情報に基づいて、親採血容器から子採血容器に血液を分注する子採血容器準備及び分注装置とを備えていることを特徴とする
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の採血指示情報に基づいて、患者の検査に必要な血液総量を採血可能な親採血容器に貼り付けるための患者の検査に関する識別情報を印字及び/又は記憶させた親識別ラベルを作成する親採血容器準備装置と、
前記採血指示情報又は患者の検査に関する識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備し、前記親採血容器の親識別ラベル及び/又は子採血容器の子識別ラベルに印字又は記憶された識別情報に基づいて、親採血容器から子採血容器に血液を分注する子採血容器準備及び分注装置と
を備えていることを特徴とする採血分注システム。
【請求項2】
前記子採血容器準備及び分注装置が、前記親識別ラベルが貼り付けられた採血後の親採血容器の前記親識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の採血分注システム。
【請求項3】
前記親採血容器準備装置が、患者の検査に関する識別情報を、子採血容器準備及び分注装置に供給するように構成され、
前記子採血容器準備及び分注装置が、前記親採血容器準備装置から供給された患者の検査に関する情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の採血分注システム。
【請求項4】
該採血分注システムが、さらに、
親採血容器準備装置で準備された親採血容器と、子採血容器準備及び分注装置で準備された子採血容器とを、これらの容器に貼り付けられた親識別ラベル及び子識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に基づいて照合する照合装置を備えている
ことを特徴とする請求項3に記載の採血分注システム。
【請求項5】
前記親採血容器準備装置が、
前記親識別ラベルを作成すると共に、患者の検査に必要な血液総量を採血可能な親採血容器に前記親識別ラベルを貼り付けるラベル作成貼付装置を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の採血分注システム。
【請求項6】
前記親採血容器が、内圧を調整可能なキャップ付き親採血管から成り、
前記親採血管準備装置が、
前記採血指示情報に基づいて、前記親採血管の内圧を患者の検査に必要な血液総量に応じた陰圧にする真空装置を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の採血分注システム。
【請求項7】
前記真空装置が、
前記親採血管のキャップに抜き差し可能な吸引ノズルと、
前記吸引ノズルを介して親採血管内部の空気を吸引可能なポンプと
を備えていることを特徴とする請求項6に記載の採血分注システム。
【請求項8】
前記真空装置が、
キャップ取付前の親採血管及びキャップを収容可能な真空チャンバと、
前記キャップを採血管に取り付けるキャップ取付機構と
を備え、
前記採血指示情報に基づいて、前記親採血管の内圧が患者の検査に必要な血液総量に応じた陰圧になるよう前記真空チャンバ内の圧力を減圧すると共に、前記キャップ取付機構を用いて前記陰圧にされた親採血管にキャップを取り付けるように構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の採血分注システム。
【請求項9】
前記親採血容器が、内圧を調整可能にプランジャが摺動可能に挿入されたシリンジ型採血管から成り、
前記真空装置が、前記シリンジ型採血管の内圧を、患者の検査に必要な血液総量に応じた陰圧になるように前記プランジャを動作させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の採血分注システム。
【請求項10】
前記子採血容器準備及び分注装置が、
前記親識別ラベルが貼り付けられた採血後の親採血容器の前記親識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備する子採血容器準備装置と、
前記親採血容器の親識別ラベル及び/又は子採血容器の子識別ラベルに印字又は記憶された識別情報に基づいて、親採血容器から子採血容器に血液を分注する分注装置と
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の採血分注システム。
【請求項11】
前記子採血容器が、採血に用いられる市販の真空採血管から成る
ことを特徴とする請求項1に記載の採血分注システム。
【請求項12】
前記子採血容器準備装置が、
採血済の親採血容器の親識別ラベルから識別情報を読み取る読取装置と、
複数種類の子採血容器としての子真空採血管をそれぞれ収容する複数の子真空採血管収容部と、
親識別ラベルの識別情報に基づいて、前記複数の子真空採血管容部から患者の検査に必要な子真空採血管を取り出して、ラベル作成貼付装置に移送する移送手段と、
前記親識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に対応する識別情報をラベルに印刷及び/又は記憶させて子識別ラベルを作成し、作成した子識別ラベルを取り出された子真空採血管に貼り付ける前記ラベル作成貼付装置と、
ラベル貼付後の子真空採血管を患者毎に排出する排出装置と
を備えていることを特徴とする請求項10及び11に記載の採血分注システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の採血に必要な親採血容器の準備から、分析装置において使用するための子採血容器の準備迄の一連の処理を実行する採血分注システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液検査のために患者から採血をする時に用いられる採血管として真空採血管が用いられている。真空採血管は内部が真空に保たれており、真空採血ホルダに設けられた穿刺針の先端を患者の血管に穿刺した後、真空採血ホルダ内に真空採血管を挿入して真空採血管のキャップを穿刺針の後端に突き刺すことで内部の真空によって血液が真空採血管内に引き込まれる。
採血後の真空採血管は、そのまま分析装置に送られ分析装置で開栓されて血液の分析が行われるため、どの真空採血管がどの検査に対応するものかを明確にするために、検査の種類によって栓の色や形状が変えられている。また、採血量によって管径及び管長も変えられている。このため、患者の検査をする際には、検査内容に応じて採血に必要な種類の採血管を準備し、準備した採血管を用いて採血が行われている。準備する採血管を間違えると、採血後の採血管が意図しない分析装置に送られて意図しない分析が行われることになり、必要な分析を行えないことになるため、検査内容に応じて必要な種類の採血管を選択し、その採血管に患者の氏名等の識別情報を印字したラベルを貼り付けて排出する採血管準備装置が提案され、既に医療の現場で数多く使用されている(特許文献1)。
上記したように、従来の真空採血管は、検査項目によって種類が異なり、また、採血量によって管径及び管長が異なるため、複数の項目について検査を行う場合には、検査項目に応じて複数の真空採血管を使用する必要がある。このため、従来の採血管準備装置は、予め複数種類の採血管を収容し、患者の検査内容に応じて必要な採血管を選択して取り出し、取り出した採血管に患者識別情報が印字又は記憶されたラベルを貼り付けて排出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように真空採血管は、検査項目に応じて種類が異なるため複数項目の検査を行うためには、複数種類の真空採血管を準備し、各真空採血管に採血を行う。具体的には、採血を行う医療従事者は、真空採血ホルダの穿刺針を患者の血管に穿刺し、片手で真空採血ホルダを固定したまま、もう一方の手で準備された真空採血管を取って真空採血ホルダに挿入して採血をし、採血後の真空採血管を真空採血ホルダから引き抜いて、必要に応じて転倒混和した後、次の真空採血管を取り再び真空採血ホルダに挿入して採血をするという動作を準備された真空採血管の数だけ行う必要があり、この間、真空採血ホルダを患者に穿刺したまま固定して保持していなければならない。この作業は、真空採血ホルダを患者に穿刺した状態で行わなければならないので非常に高い技術を必要とし、医療従事者に対する負担が大きく、また、真空採血ホルダに真空採血管を抜き差しする動作は少なからず患者にも負担をかけるものである。また、片手で真空採血ホルダを保持したまま、もう一方の手で準備された真空採血管を取るため、例えば、健康診断のように多くの患者の真空採血管が準備されている場合には、誤って他人のために準備された真空採血管を取ってしまう可能性もゼロではない。
さらに、上記したように真空採血管は、採血管準備装置によって準備されているものの、採血前に必要な種類の真空採血管が揃っていること、及び、全ての真空採血管に患者識別情報が印字又は記憶されたラベルが貼り付けられていることを確認する必要があるため、これも採血を行う医療従事者の手間となる。
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みて、採血前及び採血時に医療従事者及び患者にかかる負担を軽減することができ、かつ、採血後の血液を検査項目に対応する一つ又は複数の分析装置に供給することが可能な採血分注システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る採血分注システムは、患者の採血指示情報に基づいて、患者の検査に必要な血液総量を採血可能な親採血容器に貼り付けるための患者の検査に関する識別情報を印字及び/又は記憶させた親識別ラベルを作成する親採血容器準備装置と、前記患者の検査に関する識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備し、前記親採血容器の親識別ラベル及び/又は子採血容器の子識別ラベルに印字又は記憶された識別情報に基づいて、親採血容器から子採血容器に血液を分注する子採血容器準備及び分注装置とを備えていることを特徴とする。
前記子採血容器準備及び分注装置は、前記親識別ラベルが貼り付けられた採血後の親採血容器の前記親識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備するように構成され得る。
また、前記親採血容器準備装置を、患者の検査に関する識別情報を、子採血容器準備及び分注装置に供給するように構成し、かつ、前記子採血容器準備及び分注装置を、前記親採血容器準備装置から供給された患者の検査に関する情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備するように構成してもよい。この場合、好ましくは、採血分注システムに、さらに、親採血容器準備装置で準備された親採血容器と、子採血容器準備及び分注装置で準備された子採血容器とを、これらの容器に貼り付けられた親識別ラベル及び子識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に基づいて照合する照合装置が設けられ得る。
前記親採血容器準備装置は、好ましくは、前記親識別ラベルを作成すると共に、患者の検査に必要な血液総量を採血可能な親採血容器に前記親識別ラベルを貼り付けるラベル作成貼付装置を備え得る。
また、前記親採血容器は、内圧を調整可能なキャップ付き親採血管から成り得、前記親採血管準備装置は、前記採血指示情報に基づいて、前記親採血管の内圧を患者の検査に必要な血液総量に応じた陰圧にする真空装置を有し得る。
この場合、前記真空装置は、前記親採血管のキャップに抜き差し可能な吸引ノズルと、前記吸引ノズルを介して親採血管内部の空気を吸引可能なポンプとを備えることができる。
また、前記真空装置に、キャップ取付前の親採血管及びキャップを収容可能な真空チャンバと、前記キャップを採血管に取り付けるキャップ取付機構とを設け、該真空装置を、前記採血指示情報に基づいて、前記親採血管の内圧が患者の検査に必要な血液総量に応じた陰圧になるよう前記真空チャンバ内の圧力を減圧すると共に、前記キャップ取付機構を用いて前記陰圧にされた親採血管にキャップを取り付けるように構成してもよい。
また、子採血容器準備及び分注装置は、前記親識別ラベルが貼り付けられた採血後の親採血容器の前記親識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備する子採血容器準備装置と、前記親採血容器の親識別ラベル及び/又は子採血容器の子識別ラベルに印字又は記憶された識別情報に基づいて、親採血容器から子採血容器に血液を分注する分注装置とから構成され得る。
好ましくは、前記子採血容器は、採血に用いられる市販の真空採血管から成る。
この場合、前記子採血容器準備装置は、採血済の親採血容器の親識別ラベルから識別情報を読み取る読取装置と、複数種類の子採血容器としての子真空採血管をそれぞれ収容する複数の子真空採血管収容部と、親識別ラベルの識別情報に基づいて、前記複数の子真空採血管収容部から患者の検査に必要な子真空採血管を取り出して、ラベル作成貼付装置に移送する移送手段と、前記親識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に対応する識別情報をラベルに印刷及び/又は記憶させて子識別ラベルを作成し、作成した子識別ラベルを取り出された子真空採血管に貼り付ける前記ラベル作成貼付装置と、ラベル貼付後の子真空採血管を患者毎に排出する排出装置とを有し得る。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る採血分注システムは、患者の採血指示情報に基づいて、患者の検査に必要な血液総量を採血可能な親採血容器に貼り付けるための患者の検査に関する識別情報を印字及び/又は記憶させた親識別ラベルを作成する親採血容器準備装置と、前記患者の検査に関する識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備し、前記親採血容器の親識別ラベル及び/又は子採血容器の子識別ラベルに印字又は記憶された識別情報に基づいて、親採血容器から子採血容器に血液を分注する子採血容器準備及び分注装置とを備えているので、採血作業者が、親採血容器を用いて、1回の採血作業で検査に必要な血液総量を採血するだけで、子採血容器準備及び分注装置において、対応する識別情報が印字及び/又は記憶された子識別ラベルが貼り付けられた子採血容器を準備して、採血後の親採血容器から子採血容器への分注を行うことができるので、従来の分析装置を用いて分析をすることが可能になる。これにより、採血作業者は、採血時に、従来のように採血ホルダを押えながら、真空採血管の交換を行ったり、転倒混和したりする必要がなくなるので採血作業者の負担が軽減し、かつ、採血される患者の負担も軽減する。
また、前記子採血容器準備及び分注装置を、前記親識別ラベルが貼り付けられた採血後の親採血容器の前記親識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備するように構成することで、採血後の親採血容器に応じた子採血容器の準備を行うことが可能になる。
さらにまた、前記親採血容器準備装置を、患者の検査に関する識別情報を、子採血容器準備及び分注装置に供給するように構成し、前記子採血容器準備及び分注装置を、前記親採血容器準備装置から供給された患者の検査に関する情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを貼り付けたラベル付き子採血容器を準備するように構成することで、子採血容器準備及び分注装置は、親採血容器を用いた採血を待つことなく、子採血容器の準備を開始することができるので、全体の処理の流れを早くすることができる。この場合、採血分注システムに、さらに、親採血容器準備装置で準備された親採血容器と、子採血容器準備及び分注装置で準備された子採血容器とを、これらの容器に貼り付けられた親識別ラベル及び子識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に基づいて照合する照合装置を設けることで、子採血容器に分注する前に、子採血容器に正しい子識別ラベルが貼り付けられているかを照合することが可能になる。
また、前記親採血管準備装置が、前記親識別ラベルを作成すると共に、患者の検査に必要な血液総量を採血可能な親採血容器に前記親識別ラベルを貼り付けるラベル作成貼付装置を有することで、親採血管準備装置で、親識別ラベルが貼り付けられた親採血容器を自動的に準備することが可能になり、採血作業者が該親採血管準備装置で準備されたラベル付きの親採血容器を使用して採血を行うだけでよいので、採血のための準備が軽減する。
さらにまた、前記親採血容器を、内圧を調整可能なキャップ付き親採血管で構成し、かつ、前記親採血管準備装置に、前記採血指示情報に基づいて、前記親採血管の内圧を患者の検査に必要な血液総量に応じた陰圧にする真空装置を設けることで、採血作業者は、採血量を気にすることなく1回の採血作業で患者の検査に必要な血液を採血することが可能になり、この点においても採血作業者の負担が軽減する。また、採血作業者が採血量を間違えることもなくなる。
また、前記子採血容器として、採血に用いられる市販の真空採血管を用いることで、子採血容器を新たに準備する必要がなく、かつ、分注後の子採血容器を、真空採血管を用いて採血した血液を分析する従来の分析装置でそのまま使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る採血分注システムの一実施例の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る採血分注システムの別の実施例の構成を示す概略図である。
【
図3】本発明に係る採血分注システムのさらに別の実施例の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面に示した一実施例を参照しながら、本発明に係る採血分注システムの実施の形態を説明していく。
【0009】
図1は、本発明に係る採血分注システムの一実施例の構成を示す概略図である。
図面に示すように、この実施例に係る採血分注システムは、
採血指示情報に基づいて、
患者の検査に必要な血液総量を採血可能な親採血容器を準備すると共に、
患者の検査に関する識別情報(以下、この明細書において単に「識別情報」と記載する場合は、「患者の検査に関する識別情報」を意味する)を印字及び/又は記憶させた親識別ラベルを準備し、該識別ラベルを親採血容器に貼り付けて識別ラベル付き空親採血容器を準備する親採血容器準備装置1と、
採血後の親採血容器の親識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に基づいて、患者の検査に必要な子採血容器を選択して取り出すと共に、前記識別情報を印字及び/又は記憶させた子識別ラベルを準備し、前記子識別ラベルを取り出した子採血容器に貼り付けて、患者毎に出力する子採血容器準備装置2と、
前記親採血容器の親識別ラベル及び/又は子採血容器の子識別ラベルに印字又は記憶された識別情報に基づいて、親採血容器から子採血容器に血液を分注する分注装置3と
を備えている。
【0010】
ここで、前記「採血指示情報」は、例えば、患者ID等の患者識別情報及び/又は検査ID等の検査識別情報を含み、「患者識別情報」は、患者氏名、患者性別及び患者生年月日等の患者個人に関する情報を含むか、又は、これらの情報と紐づけされており、「検査識別情報」は、検査項目及び検査日等の患者の検査に関する情報を含むか、又は、これらの情報と紐づけされている。
また、「患者の検査に関する識別情報」は、前記「患者識別情報」及び/又は「検査識別情報」、又はこれらの情報に含まれる情報、又は、これらの情報に紐づけされたユニークな情報を意味し、前記ユニークな情報を使用する場合、前記ユニークな情報が親採血容器準備装置1が「採血指示情報」を受信した時に生成することができる。
さらに、患者識別情報と検査識別情報とは紐づけされており、さらに、前記「検査項目」は検査に必要な血液量に関する情報を含むか、又は該情報に紐づけされている。
上記した情報は、何れも上位コンピュータ、例えば、パーソナルコンピュータ又はサーバー等に記憶されており、一つの情報から、それに紐づけされた情報を読み取ることができるように構成されている。
【0011】
上記したように構成された親採血容器準備装置1は、具体的には、制御装置1a、真空装置1b及びラベル作成貼付装置1cを備え、制御装置1aが、医師等からの採血指示情報を入力し、前記採血指示情報に基づいて、患者の血液検査に必要な血液総量を算出し、キャップ付き採血管の内圧を、前記血液総量に応じた陰圧にするよう真空装置1bを作動させる。真空装置1bは、キャップ付き採血管のキャップに抜き差し可能な吸引ノズル(符号なし)を備え、前記吸引ノズルをキャプ付き採血管に穿刺した後、同キャップ付き採血管の内圧が前記血液総量に応じた陰圧になるまで空気を吸引した後、吸引ノズルを引き抜き、空の親採血容器を準備する。
制御装置1aは、同時に、ラベル作成貼付装置1cを動作させて、前記採血指示情報に基づいて、患者の検査に関する識別情報(例えば、患者識別情報及び/又は検査識別情報)をラベルに印字及び/又は記憶させた親識別ラベルを作成し、同ラベルを前記空の親採血容器に貼り付けさせ、ラベル付き空親採血容器を準備する。
尚、前記キャップ付き採血管については、親採血容器準備装置1の内部に採血管収容部を設けて、該採血管収容部に複数のキャップ付き採血管を収容し、必要に応じてキャップ付き採血管を取り出して、前記真空処理を施す位置にセットするように親採血容器準備装置1を構成してもよく、又は、使用者が必要に応じてキャップ付き採血管を親採血容器準備装置1に投入すると、キャップ付き採血管が前記真空処理を施す位置にセットされるように構成してもよい。
前記した親採血容器準備装置1において準備されえたラベル付き空親採血容器は、対応する患者の採血に使用される。ここで、ラベル付き空親採血容器の識別ラベルには患者の検査に関する識別情報(例えば、患者識別情報及び/又は検査識別情報)が印刷及び/又は記憶されているので、採血時に、採血作業者は前記識別情報に基づいて採血すべき患者の照合を行うことができる。また、ラベル付き空親採血容器は、患者の検査に必要な血液総量を収容可能なサイズであり、かつ、上記したように、その内圧が血液総量に応じた陰圧になるよう真空処理が施されているので、採血作業者は一回の採血動作で患者から検査に必要な血液総量を採血することが可能になる。
【0012】
図示実施例では、採血済み親採血容器は、専用のラックに収容されて子採血容器備装置2に送られる。
子採血容器準備装置2は、子採血容器としての複数種類の子真空採血管をそれぞれ収容する複数の子採血管収容部2aと、前記複数の子採血管収容部2aから検査に必要な子真空採血管を取り出して、ラベル作成貼付装置2bに移送する移送手段(図示せず)と、採血済み親採血容器の親識別ラベルに印字及び/又は記憶された識別情報に対応する識別情報をラベルに印刷及び/又は記憶させて子識別ラベルを作成し、作成した子識別ラベルを取り出された子真空採血管に貼り付ける前記ラベル作成貼付装置2bと、ラベル貼付後の子真空採血管を患者毎に排出する、具体的には、この実施例では、採血済み親採血容器を収容したラックに排出する排出装置(図示せず)とを備えている。
上記したように構成された子採血容器準備装置2は、制御装置2c及び親採血容器の親識別ラベルから識別情報を読み取る読取手段2dを備え、制御装置2cは、前記読取手段2dで読み取った識別情報に基づいて、必要に応じてサーバー等の上位コンピュータ等から対応する患者識別情報及び/又は検査識別情報に含まれている又は紐づけられた情報を読み出し、前記移送手段、前記ラベル作成貼付装置2b及び前記排出装置を動作させて、採血済み親採血容器に対応する患者の検査に必要な子真空採血管に子識別ラベルを貼り付けて患者毎に排出するように構成されている。
前記子真空採血管は、好ましくは、従来から患者の採血に使用されている真空採血管であり、分析項目に応じた薬剤が予め収容されている真空採血管である。
前記子採血容器準備装置2は、具体的には、公知の採血管自動準備装置の構成を使用することが可能であり、具体的には、前記移送手段(図示せず)は、例えば、採血管取出しカム機構及びコンベアの組み合わせや、ロボットアーム等で構成することもできる。
【0013】
分注装置3は、採血済み親採血容器及びラベル付き子真空採血管のキャップにそれぞれ抜き差し可能な分注ノズル装置3aを備え、親採血容器及び子真空採血管の親識別ラベル及び子識別ラベルの識別情報に基づいて、採血済み親採血容器から各子真空採血管に血液を分注する。
分注装置3は、公知のノズル洗浄機構(図示せず)を備え、親採血容器から子真空採血管に分注後にノズルを洗浄して次の分注処理まで待機する。また、分注装置3は、公知の転倒混和機構(図示せず)を有することができ、必要に応じて分注後の子真空採血管を転倒混和するように構成され得る。
分注装置3において分注された子真空採血管は、検査項目に対応する分析装置(図示実施例では、分析装置A~C)に送られる。また、分注後の親採血容器は、不図示の冷蔵保管庫に送られる。
上記したように構成された採血分注システムにおいて、親採血容器準備装置1から採血場、採血場から子採血容器準備装置2、及び子採血容器準備装置2から分注装置3の親採血容器及び/又は子真空採血管の移動は、作業者が行ってもよいが、親採血容器準備装置1、採血場、子採血容器準備装置2、及び分注装置3間の全体又は一部を繋ぐコンベアを設けてもよいことは勿論である。
【0014】
上記したように構成された採血分注システムによれば、親採血容器準備装置1において、患者の検査に必要な血液総量を収容できる親採血容器を準備するので、採血作業者は1回の採血作業で検査に必要な血液総量を採血することが可能になり、従来のように採血ホルダを押えながら、真空採血管の交換を行ったり、転倒混和したりする必要がなくなるので採血作業者の負担が軽減し、かつ、採血される患者の負担も軽減する。また、上記した採血分注システムによれば、親採血容器準備装置1において、患者の検査に必要な血液総量に応じて親採血容器の内部を陰圧にする真空装置1bを備えているので、採血作業者は、採血量を気にすることなく採血することが可能になり、この点においても採血作業者の負担が軽減する。さらに、真空装置1bで親採血容器の内部を血液総量に応じた陰圧にするように構成されているので、使用者が血液総量に応じて親採血容器を準備する必要がなくなる。
また、上記した採血分注システムによれば、子採血容器として従来から採血に使用されていた真空採血管を用いるように構成されているので、子採血容器を新たに準備する必要がなく、かつ、分注後の子採血容器を、真空採血管を用いて採血した血液を分析する従来の分析装置でそのまま使用することが可能になる。
【0015】
上記した実施例では、親採血容器準備装置1が真空装置1bを備え、親採血容器の内圧を血液総量に応じた陰圧にするように構成されているが、この構成は必須ではなく、例えば、使用者が、患者の検査に必要な血液総量に応じたサイズ及び内圧を有する親採血容器を選択して装置に投入するように構成してもよい。この場合、選択して投入された親採血容器にラベルが貼り付けられる。採血する血液総量を一定量とする運用とする場合には、親採血容器を選択する必要もなくなる。
【0016】
また、上記した実施例では、親採血容器として採血管を使用しているが、親採血容器の構成は本実施例に限定されることなく、例えば、
図2に示すように血液パックを親採血容器として使用することも可能である。
図2は、親採血容器として血液パックを使用した例を示す
図1に対応する概略図である。
図1に示した実施例と同一又は対応する構成要素には同じ符号を付して、ここでは詳細な説明は省略する。
図2の採血分注システムでは、親採血容器準備装置10は、ラベル作成装置10aを備え、該ラベル作成装置10aは、医師等からの採血指示情報を入力し、前記採血指示情報に基づいて、患者の検査に関する識別情報(例えば、患者識別情報及び/又は検査識別情報)をラベルに印字及び/又は記憶させて親識別ラベルを作成して出力する。
前記親識別ラベルは、ラベル貼付装置により自動で、又は、使用者による手貼りで親血液パックに貼り付けられる。
その後、前記親血液パックは、採血場、例えば、病棟等に運ばれて採血に供され、その後、子採血容器準備装置2に送られる。
子採血容器準備装置2及び分注装置3の構成は
図1に示した実施例と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0017】
また、上記した実施例では、子採血容器準備装置2が読取手段2dを備え、前記読取手段2dで採血済の親採血容器の親識別ラベルから識別情報を読み取り、読み取った識別情報に基づいて、必要に応じてサーバー等の上位コンピュータ等から対応する患者識別情報及び/又は検査識別情報に含まれている又は紐づけられた情報を読み出し、前記移送手段、前記ラベル作成貼付装置2b及び前記排出装置を動作させて、採血済み親採血容器に対応する患者の検査に必要な子真空採血管に子識別ラベルを貼り付けて患者毎に排出するように構成されているが、この構成は本実施例に限定されることなく、例えば、親採血容器準備装置1から子採血容器準備装置2に患者の検査に関する識別情報を供給し、子採血容器準備装置2を、親採血容器準備装置1から供給された識別情報に基づいて、採血済み親採血容器に対応する患者の検査に必要な子真空採血管に子識別ラベルを貼り付けて患者毎に排出するように構成してもよい。
図3は、採血分注システムのさらに別の実施例の構成を示す概略図である。
図1の採血分注システムの構成要素と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図3に示す採血分注システムは、親採血容器準備装置1が、子採血容器準備装置2に患者の検査に関する識別情報を供給するように構成されている。識別情報の供給は、親採血容器準備装置1から子採血容器準備装置2に直接供給するように構成してもよく、また、サーバーやパーソナルコンピュータ等の上位制御装置を介して親採血容器準備装置1から子採血容器準備装置2に供給するように構成してもよい。
子採血容器準備装置2の基本的な構成は
図1に示した子採血容器準備装置2と同じ構成であり、この実施例においては、子採血容器準備装置2は、親採血容器準備装置1から供給された患者の検査に関する識別情報に基づいて、移送手段(図示せず)、ラベル作成貼付装置2b及び排出装置(図示せず)を動作させて、採血済み親採血容器に対応する患者の検査に必要な子真空採血管に子識別ラベルを貼り付けて患者毎に排出するように構成されている。
この採血分注システムは、さらに、照合装置4を備え、該照合装置4は、採血済み親採血容器の親識別ラベルと、子採血容器準備装置2で準備された対応する子採血容器の子識別ラベルとから、それぞれ識別情報を読み取り、読み取った識別情報に基づいて、子採血容器が、採血済み親採血容器の患者に対応する子採血容器であるか否かを照合する。照合の結果、子採血容器が採血済み親採血容器に対応するものである場合には、採血済み親採血容器及び子採血容器を分注装置3に送り、分注装置3で分注を行う。照合の結果、子採血容器が採血済み親採血容器に対応するものでない場合には、採血済み親採血容器及び子採血容器を分注装置に送らずに、視覚的又は聴覚的なエラー情報を不図示の出力装置(例えば、スピーカー、モニター又はプリンター等)から出力する。
このように、子採血容器準備装置2を、親採血容器準備装置1から供給された患者の検査に関する識別情報に基づいて子採血容器を準備するように構成することで、採血前から子採血容器の準備を開始することが可能になるので、採血後の処理の流れを早くすることが可能になる。
【0018】
また、上記した第1及び第2の実施例では、子採血容器準備装置2と分注装置3とが別々の装置として構成されているが、この構成は本実施例に限定されることなく、子採血容器準備装置2と分注装置3とは一つの装置として構成してもよい。
さらにまた、上記した実施例では、子採血容器として真空採血管が使用されているが、この構成は本実施例に限定されることなく、通常の試験管又はスピッツ等を子採血容器として使用してもよい。
また、上記した実施例では、親採血容器と子採血容器とをラックに収容して移動するように構成されているが、この構成は本実施例に限定されることなく、トレイ等の他の容器に収容して移動するように構成してもよい。
さらにまた、上記した実施例では、親採血容器と子採血容器とを同じラックに収容して移動するように構成されているが、この構成は本実施例に限定されることなく、親採血容器と子採血容器とは、例えば、平行に設けられたコンベアでそれぞれ移動するように構成してもよい。このように構成する場合、平行に設けられたコンベアの間に分注装置における読取装置及び分注ノズル機構等が設けられ得る。
また、
図1及び
図3に示した実施例では、真空装置1bに、キャップ付き採血管のキャップに抜き差し可能な吸引ノズル(符号なし)を設け、前記吸引ノズルをキャプ付き採血管に穿刺した後、同キャップ付き採血管の内圧が前記血液総量に応じた陰圧になるまで空気を吸引した後、吸引ノズルを引き抜き、空の親採血容器を準備するように構成されているが、真空装置の構成は本実施例に限定されることなく、親採血容器の内部を患者の検査に必要な血液総量に応じた陰圧にするように構成されていれば任意の構成でよく、例えば、キャップ取付前の親採血容器及びキャップを収容可能な真空チャンバと、前記キャップを採血管に取り付けるキャップ取付機構とを設け、採血指示情報に基づいて、前記親採血容器の内圧が患者の検査に必要な血液総量に応じた陰圧になるよう前記真空チャンバ内の圧力を減圧すると共に、前記キャップ取付機構を用いて前記陰圧にされた親採血容器にキャップを取り付けるように構成してもよい。さらにまた、前記真空装置は、例えば、親採血容器として、内圧を調整可能にプランジャが摺動可能に挿入されたシリンジ型採血管を使用する場合には、前記プランジャを操作可能なプランジャ操作機構(図示せず)を設け、該プランジャ操作機構で、シリンジ型採血管の内圧を、患者の検査に必要な血液総量に応じた陰圧になるように前記プランジャを動かすように構成してもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 親採血容器準備装置
1a 制御装置
1b 真空装置
1c ラベル作成貼付装置
2 子採血容器準備装置
2a 子採血管収容部
2b ラベル作成貼付装置
2c 制御装置
2d 読取手段
3 分注装置
3a 分注ノズル装置
4 照合装置
10 親採血容器準備装置
10a ラベル作成装置