(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016005
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
H02B 13/035 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
H02B13/035 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118984
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】坂入 利保
【テーマコード(参考)】
5G017
【Fターム(参考)】
5G017AA13
5G017BB01
5G017BB02
5G017BB10
5G017FF06
5G017FF09
5G017FF12
5G017HH06
(57)【要約】
【課題】絶縁モールドの破壊を抑えることができる開閉装置を提供する。
【解決手段】開閉装置1は、絶縁性ガスが封入されたハウジング2と、ハウジング2内に収容された開閉器5と、開閉器5の一次側に一次側導線を介して電気的に接続され、受電側母線が接続される一次側ケーブルヘッドと、開閉器5の二次側に二次側導線62を介して電気的に接続され、変圧器側母線102が接続される二次側ケーブルヘッド42と、二次側導線62と二次側ケーブルヘッド42との接続部に設けられ、絶縁材料から形成されて二次側ケーブルヘッド42に近づくにつれて外径が漸次増大するテーパ状の絶縁モールド72と、絶縁モールド72に対して二次側ケーブルヘッド42から離間する側に設けられ、導電材料から形成されて二次側導線62の外周面から径方向外側に拡径するシールド部8と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスが封入され、導電性材料から形成されたハウジングと、
前記ハウジング内に収容された開閉器と、
前記開閉器の一次側に一次側導線を介して電気的に接続され、受電側母線が接続される一次側ケーブルヘッドと、
前記開閉器の二次側に二次側導線を介して電気的に接続され、変圧器側母線が接続される二次側ケーブルヘッドと、
前記二次側導線と前記二次側ケーブルヘッドとの接続部に設けられ、絶縁材料から形成されて前記二次側導線の延伸方向において前記二次側ケーブルヘッドに近づくにつれて外径が漸次増大するテーパ状の絶縁モールドと、
前記絶縁モールドに対して前記二次側導線の延伸方向で前記二次側ケーブルヘッドから離間する側に設けられ、導電材料から形成されて前記二次側導線の外周面から径方向外側に拡径するシールド部と、を備える、開閉装置。
【請求項2】
前記シールド部は、
前記二次側導線の延伸方向で前記二次側ケーブルヘッド側を向き、前記二次側導線の延伸方向に交差する第1平面と、
前記二次側導線の延伸方向で前記二次側ケーブルヘッドから離間する側を向き、前記二次側導線の延伸方向に交差する第2平面と、を有し、
前記二次側導線の延伸方向における厚さが、前記径方向で一定である、
請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記シールド部は、前記二次側導線の延伸方向から見た際に、円形状に形成されている、
請求項2に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記シールド部の外周縁部は、前記径方向の外側に凸となる円弧状の断面形状を有している、
請求項1又は請求項2に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記シールド部は、
前記二次側導線の延伸方向で前記二次側ケーブルヘッド側に突出する凸湾曲面を有する、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記シールド部は、前記絶縁モールドの最小径部よりも大きな外径を有している、
請求項1又は請求項2に記載の開閉装置。
【請求項7】
前記シールド部は、前記絶縁モールドの最大径部よりも大きな外径を有している、
請求項6に記載の開閉装置。
【請求項8】
前記二次側ケーブルヘッドは、前記変圧器側母線の端部が接続可能である、
請求項1に記載の開閉装置。
【請求項9】
前記二次側導線、前記絶縁モールド、及び前記シールド部は、複数組が設けられ、
複数組の前記シールド同士は、前記径方向に間隔をあけて配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の開閉装置。
【請求項10】
前記開閉器は、遮断器である、
請求項1又は請求項2に記載の開閉装置。
【請求項11】
前記ハウジング内は、複数の室に区画され、
前記シールド部は、複数の前記室のうち、前記遮断器が収容された前記室に設けられている、
請求項10に記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所等に設置されるガス絶縁開閉装置において、遮断器を備える構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。遮断器は、落雷時等に、受電側(一次側)と、変圧器側(二次側)との間で、電路を遮断する。遮断器は、六フッ化硫黄(SF6)等の絶縁性ガスが封入され、導電性材料から形成された遮断器ユニットに収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたようなガス絶縁開閉装置において、遮断器ユニット自体は、金属製で、地面等に埋設された接地装置に電気的に接地されている。一次側、二次側の母線は、それぞれ、遮断器ユニットの外部でケーブルヘッドに接続されている。ケーブルヘッドと遮断器とは、遮断器ユニットの一部を貫通する導線を介して接続されている。ケーブルヘッドと導線との接続部には、絶縁モールドが設けられている。絶縁モールドは、ケーブルヘッド及び導線と、遮断器ユニットとを、電気的に絶縁している。絶縁モールドは、導線の延伸方向においてケーブルヘッドに近づくにつれて外径が漸次増大するテーパ状に形成されている。
【0005】
遮断器で一次側と二次側との間で、落雷等による過大な事故電流の経路を遮断する際、遮断器ユニット内で、アークが発生することがある。このアークにより、遮断器ユニット内の絶縁性ガスが化学変化を生じ、フッ化水素(HF)、二酸化硫黄(SO2)といった物質を含む分解ガスが遮断器ユニット内で生成される。生成された分解ガスが、絶縁モールドに接触すると、絶縁モールドを形成する絶縁材料(樹脂材料)が劣化し、絶縁性能の低下に繋がることがある。
【0006】
さらに、このように絶縁材料の劣化が生じている絶縁モールドにおいて、落雷時等に高い電圧が印加されると、絶縁モールドと、導線と、遮断器ユニット内の絶縁性ガスとの境界部分が電気的な弱点となる。すると、落雷時等に高い電圧が印加されたときに、絶縁モールドと、導線と、絶縁性ガスとの境界部分を基点として、高電圧側の導線と接地側の遮断器ユニットとの間で、絶縁モールドの沿面に沿って電気的な短絡(閃絡)が生じ、絶縁モールドの破壊に繋がることがある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明は、絶縁モールドの劣化が生じた状態においても、絶縁モールドの破壊を抑えることができる開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る開閉装置は、絶縁性ガスが封入され、導電性材料から形成されたハウジングと、ハウジング内に収容された開閉器と、開閉器の一次側に一次側導線を介して電気的に接続され、受電側母線が接続される一次側ケーブルヘッドと、開閉器の二次側に二次側導線を介して電気的に接続され、変圧器側母線が接続される二次側ケーブルヘッドと、二次側導線と二次側ケーブルヘッドとの接続部に設けられ、絶縁材料から形成されて二次側導線の延伸方向において二次側ケーブルヘッドに近づくにつれて外径が漸次増大するテーパ状の絶縁モールドと、絶縁モールドに対して二次側導線の延伸方向で二次側ケーブルヘッドから離間する側に設けられ、導電材料から形成されて二次側導線の外周面から径方向外側に拡径するシールド部と、を備える。
【0009】
また、シールド部は、二次側導線の延伸方向で二次側ケーブルヘッド側を向き、二次側導線の延伸方向に交差する第1平面と、二次側導線の延伸方向で二次側ケーブルヘッドから離間する側を向き、二次側導線の延伸方向に交差する第2平面と、を有し、二次側導線の延伸方向における厚さが、径方向で一定であってもよい。また、シールド部は、二次側導線の延伸方向から見た際に、円形状に形成されていてもよい。また、シールド部の外周縁部は、径方向の外側に凸となる円弧状の断面形状を有していてもよい。
【0010】
また、シールド部は、二次側導線の延伸方向で二次側ケーブルヘッド側に突出する凸湾曲面を有してもよい。また、シールド部は、絶縁モールドの最小径部よりも大きな外径を有していてもよい。また、シールド部は、絶縁モールドの最大径部よりも大きな外径を有していてもよい。
【0011】
また、二次側ケーブルヘッドは、変圧器側母線の端部が接続可能であってもよい。また、二次側導線、絶縁モールド、及びシールド部は、複数組が設けられ、複数組のシールド同士は、径方向に間隔をあけて配置されていてもよい。また、開閉器は、遮断器でもよい。また、ハウジング内は、複数の室に区画され、シールド部は、複数の室のうち、遮断器が収容された室に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様に係る開閉装置は、絶縁モールドに対して二次側ケーブルヘッドから離間する側に設けられたシールド部が、導電材料から形成されて二次側導線の外周面から径方向外側に拡径することにより、落雷時等には、電気的な短絡が、径方向外側に拡径したシールド部と絶縁モールドの最大径部との間で生じることとなる。その結果、絶縁モールドの沿面に沿って電気的な短絡が生じるのを抑え、絶縁モールドの破壊を抑えることができる。
【0013】
また、シールド部の厚さが、径方向で一定である構成では、二次側導線の延伸方向における第2平面と絶縁モールドとの間の距離を確保し、絶縁モールドの沿面に沿った電気的な短絡を有効に抑えることができる。また、シールド部が、円形状に形成されている構成では、シールド部の周方向のどの位置においても、絶縁モールドの沿面に沿った電気的な短絡を有効に抑えることができる。また、シールド部の外周縁部が、径方向の外側に凸となる円弧状の断面形状を有している構成においては、シールドの外周縁部に鋭角に突起する部位が存在するのを抑え、絶縁モールドの沿面に沿った電気的な短絡を抑えることができる。
【0014】
また、シールド部が、二次側ケーブルヘッド側に突出する凸湾曲面を有する構成においても、絶縁モールドの沿面に沿った電気的な短絡を有効に抑えることができる。また、シールド部が、絶縁モールドの最小径部よりも大きな外径を有している構成では、シールド部と絶縁モールドとの間隔を確保し、絶縁モールドの沿面に沿った電気的な短絡を生じにくくすることができる。また、シールド部は、絶縁モールドの最大径部よりも大きな外径を有している構成では、シールド部と絶縁モールドとの間隔を、より大きく確保し、絶縁モールドの沿面に沿った電気的な短絡をさらに生じにくくすることができる。
【0015】
また、二次側ケーブルヘッドが、変圧器側母線の端部が接続可能である構成では、変圧器側母線の端部が接続される二次側ケーブルヘッドと、二次側導線との接続部との間に設けられた絶縁モールドにおいて、絶縁モールドの沿面に沿って電気的な短絡が生じるのを抑え、絶縁モールドの破壊を抑えることができる。また、二次側導線、絶縁モールド、及びシールド部は、複数組が設けられた構成において、複数組のシールド同士が、径方向に間隔をあけて配置されることで、複数組のシールド同士の間で電気的な短絡が生じるのを抑えることができる。また、開閉器が、遮断器である構成では、遮断器による経路の遮断時に生じるアークによって、ユニット内の絶縁性ガスから分解ガスが生成され、絶縁モールドのモールド樹脂が劣化しやすい。このような絶縁モールドの沿面に沿った電気的な短絡が生じるのを抑えることで、モールド樹脂が劣化した絶縁モールドの破壊を抑えることができる。また、シールド部が、ハウジング内の複数の室のうち、遮断器が収容された室に設けられている構成では、遮断器で一次側と二次側との間で電路を遮断する際に生じるアークによって分解ガスが多く生成される室に、シールド部が設けられている。これにより、分解ガスによって絶縁モールドの劣化が生じた場合であっても、シールド部により、絶縁モールドの沿面に沿って電気的な短絡が生じるのを抑え、絶縁モールドの破壊を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る開閉装置の外観を、二次側ケーブルヘッド側から見た図である。
【
図2】
図1の開閉装置の内部構造を、二次側ケーブルヘッドとは反対側から見た断面図である。
【
図4】第1ユニットを、
図2の右側から見た断面図である。
【
図5】二次側導線と二次側ケーブルヘッドとの接続部に設けられた二次側絶縁モールド、及びシールド部を示す斜視図である。
【
図6】二次側導線と二次側ケーブルヘッドとの接続部に設けられた二次側絶縁モールド、及びシールド部を示す断面図である。
【
図7】比較のためのシールド部を備えない構成における、落雷時等における電界分布を示す図である。
【
図8】比較のためのシールド部を備えない構成における、閃絡予想経路を示す図である。
【
図9】本実施形態の開閉装置における、落雷時等における電界分布を示す図である。
【
図10】本実施形態の開閉装置における、閃絡予想経路を示す図である。
【
図11】実施形態の変形例に係る二次側導線と二次側ケーブルヘッドとの接続部に設けられた二次側絶縁モールド、及びシールド部を示す断面図である。
【
図12】実施形態の変形例の開閉装置における、落雷時等における電界分布を示す図である。
【
図13】実施形態の変形例の開閉装置における、閃絡予想経路を示す図である。
【
図14】分解ガスに曝露した後の二次側絶縁モールドに対し、電圧を印加したときの破壊の有無の確認結果を示す図である。
【
図15】分解ガスに曝露する前の試験前のサンプルと、分解ガスに曝露して電圧を印加した後の試験後のサンプルとで、電気抵抗の計測結果を比較するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する内容に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現しており、実際の製品とは寸法、形状が異なっている場合がある。
図1は、実施形態に係る開閉装置1の外観を、二次側ケーブルヘッド42側から見た図である。
図2は、
図1の開閉装置1の内部構造を、二次側ケーブルヘッド42とは反対側から見た断面図である。
図3は、
図2のI-I矢視断面図である。
【0018】
本実施形態に係る開閉装置1は、変電所等に設置されて、落雷時等に、一次側の受電側母線101と、二次側の変圧器側母線102との間で、電路を遮断することで、事故電流を遮断する。
図1に示すように、開閉装置1は、第1ユニット20と、第2ユニット30と、を有している。第1ユニット20と第2ユニット30とは、互いに接続されている。
【0019】
図2、
図3に示すように、開閉装置1は、ハウジング2と、一次側ケーブルヘッド41と、二次側ケーブルヘッド42と、開閉器5と、一次側導線61と、二次側導線62と、一次側絶縁モールド71と、二次側絶縁モールド(絶縁モールド)72と、シールド部8と、を備えている。ハウジング2は、地面等の設置面G上に、架台3を介して設けられている。ハウジング2は、鋼材等の導電性材料から形成されている。
【0020】
ハウジング2は、第1ハウジング21と、第2ハウジング31と、を有している。第1ハウジング21は、第1ユニット20の外殻を形成する。第2ハウジング31は、第2ユニット30の外殻を形成する。第1ハウジング21、及び第2ハウジング31は、それぞれ中空構造で、その内部に、密閉空間である室S1、S2を有している。
図2に示すように、第1ハウジング21内の室S1と第2ハウジング31内の室S2とは、絶縁性を有した仕切部23により仕切られている。
【0021】
図4は、第1ユニット20を、
図2の右側から見た断面図である。
図2~
図4に示すように、第1ユニット20は、第1ハウジング21内に、開閉器5、一次側導線61の一部、二次側導線62、二次側絶縁モールド72、及びシールド部8等を収容している。第1ハウジング21は、ハウジング本体24と、底板部25と、天板部26と、を有している。ハウジング本体24は、上下方向に連続する筒状に形成されている。ハウジング本体24は、例えば、上下方向から見た断面形状が円形状であり、上方と下方とに開口している。底板部25は、ハウジング本体24の下端部の開口を、下方から塞いでいる。天板部26は、ハウジング本体24の上端部の開口を、上方から塞いでいる。底板部25、天板部26は、それぞれ、複数本のボルトにより、ハウジング本体24に着脱可能にフランジ接続されている。
【0022】
ハウジング本体24には、第1開口部27、及び第2開口部28が形成されている。第1開口部27、第2開口部28は、それぞれ、筒状のハウジング本体24を径方向に貫通している。
図2、
図3に示すように、第1開口部27の外周縁部は、第2ハウジング31に形成された開口部31hの外周縁部に、複数本のボルト(図示無し)によりフランジ接続されている。第1開口部27と開口部31hとは、仕切部23により仕切られている。
【0023】
図1~
図4に示すように、第2開口部28は、ハウジング本体24の上部に形成されている。第2開口部28は、上下方向から見た際に、ハウジング本体24の中心回りの周方向で、第1開口部27とは異なる方向に向けて開口している。第2開口部28は、蓋体29により閉塞されている。蓋体29は、例えば、鉄等の金属材料から形成されている。蓋体29は、第2開口部28の外周部に、複数本のボルト(図示無し)によってフランジ接続されている。
【0024】
図2に示すように、第2ユニット30は、第2ハウジング31内に、断路器9等を収容している。第2ハウジング31は、ハウジング本体32と、底板部33と、天板部34と、を有している。ハウジング本体32は、上下方向に連続する筒状に形成されている。ハウジング本体32は、例えば、上下方向から見た断面形状が円形状であり、上方と下方とに開口している。底板部33は、ハウジング本体32の下端部の開口を、下方から塞いでいる。天板部34は、ハウジング本体32の上端部の開口を、上方から塞いでいる。底板部33、天板部34は、それぞれ、複数本のボルトにより、ハウジング本体32に着脱可能にフランジ接続されている。
【0025】
第1ハウジング21、第2ハウジング31は、それぞれ、地面等の設置面G中に埋設された接地装置(図示無し)等に電気的に接地されている。これにより、第1ハウジング21、及び第2ハウジング31は、接地電位となっている。第1ハウジング21、第2ハウジング31の室S1、S2内には、それぞれ、絶縁性ガスが封入されている。ここで用いる絶縁性ガスとしては、例えば、六フッ化硫黄(SF6)が適している。また、ハウジング2は、例えば、他の開閉装置等に接続するための機器を収容する第三ハウジングを有していてもよい。
【0026】
図1、
図2に示すように、一次側ケーブルヘッド41には、受電側母線101が接続される。一次側ケーブルヘッド41は、上下方向に延びる筒状に形成されている。一次側ケーブルヘッド41は、例えば、第2ハウジング31の底板部33に対し、下方から接するように設けられている。一次側ケーブルヘッド41は、第2ハウジング31の外部に露出している。一次側ケーブルヘッド41には、第2ハウジング31の外部に位置する受電側母線101の端部が接続されている。一次側ケーブルヘッド41は、三相分、すなわち3組設けられている。
【0027】
図1、
図3、
図4に示すように、二次側ケーブルヘッド42は、変圧器側母線102が接続される。二次側ケーブルヘッド42は、第1ハウジング21の外部に露出している。二次側ケーブルヘッド42は、蓋体29に対し、水平方向から接するように設けられている。二次側ケーブルヘッド42には、第1ハウジング21の外部に位置する変圧器側母線102の端部が接続されている。一次側ケーブルヘッド41は、三相分、すなわち3組設けられている。
【0028】
図4に示すように、二次側ケーブルヘッド42は、蓋体29から、蓋体29の表面29fに交差して水平方向に延びるヘッド第1部42aと、ヘッド第1部42aから下方に延びるヘッド第2部42bと、を一体に有している。変圧器側母線102は、ヘッド第2部42bに下方から挿入され、ヘッド第2部42b内に設けられた母線接続端子(図示無し)に電気的に接続可能である。
【0029】
図2~
図4に示すように、開閉器5は、第1ハウジング21内に収容されている。本実施形態において、開閉器5は、一次側と二次側との間で、電路を遮断可能な遮断器5Sである。開閉器5(遮断器5S)は、三相分、すなわち3組設けられている。
図2に示すように、各相の遮断器5Sの一次側には、一次側導線61の一端が接続されている。つまり、一次側導線61も、三相分、すなわち3組設けられている。
【0030】
各相の遮断器5Sの二次側には、二次側導線62の一端が接続されている。つまり、二次側導線62も、三相分、すなわち3組設けられている。二次側導線62の他端は、蓋体29を貫通して、二次側ケーブルヘッド42のヘッド第1部42a内に設けられた導線接続端子に電気的に接続されている。これにより、遮断器5Sの二次側は、二次側導線62、二次側ケーブルヘッド42を介して変圧器側母線102に電気的に接続されている。
【0031】
図2に示すように、一次側導線61は、仕切部23を貫通して、第1ハウジング21内から第2ハウジング31内へと導かれている。一次側導線61の途中には、断路器9が設けられている。一次側導線61の他端は、底板部33を貫通して、一次側ケーブルヘッド41に接続されている。これにより、遮断器5Sの一次側は、一次側導線61を介して一次側ケーブルヘッド41に電気的に接続されている。
【0032】
一次側絶縁モールド71は、一次側導線61と一次側ケーブルヘッド41との接続部に設けられている。一次側絶縁モールド71は、底板部33に対して第2ハウジング31の内側に配置されている。本実施形態において、一次側絶縁モールド71は、粒状のシリカが充填されたエポキシ樹脂から形成されている。一次側絶縁モールド71には、前記したように底板部33を貫通して一次側ケーブルヘッド41に接続されている一次側導線61が、一次側導線61の延伸方向(上下方向)に貫通している。
【0033】
図5は、二次側導線62と二次側ケーブルヘッド42との接続部に設けられた二次側絶縁モールド72、及びシールド部8を示す斜視図である。
図6は、二次側導線62と二次側ケーブルヘッド42との接続部に設けられた二次側絶縁モールド72、及びシールド部8を示す断面図である。
図3~
図6に示すように、二次側絶縁モールド72は、二次側導線62と二次側ケーブルヘッド42との接続部に設けられている。二次側絶縁モールド72は、蓋体29に対して第1ハウジング21の内側に配置されている。
【0034】
二次側絶縁モールド72は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁材料から形成されている。本実施形態において、二次側絶縁モールド72は、粒状のシリカが充填されたエポキシ樹脂から形成されている。二次側絶縁モールド72には、前記したように蓋体29を貫通して二次側ケーブルヘッド42に接続されている二次側導線62が、二次側導線62の延伸方向(水平方向)に貫通している。
【0035】
二次側絶縁モールド72は、二次側導線62の延伸方向において二次側ケーブルヘッド42に近づくにつれて外径が漸次増大するテーパ状(円錐台状)に形成されている。
図6に示すように、二次側絶縁モールド72は、第1端面72aと、第2端面72bと、外周面72cと、を有している。第1端面72a、及び第2端面72bは、それぞれ、二次側導線62の延伸方向に交差する面に沿って形成されている。
【0036】
第1端面72aは、二次側導線62の延伸方向において、蓋体29から離間する側に形成されている。第2端面72bは、二次側導線62の延伸方向において、蓋体29に対向する側に形成されている。第2端面72bは、蓋体29に当接している。これにより、二次側ケーブルヘッド42と、二次側絶縁モールド72の第2端面72bとの間に、蓋体29が挟み込まれている。さらに、第2端面72bの中央部には、蓋体29に形成された貫通孔29hに挿入される突出部72dが一体に設けられている。
【0037】
第1端面72aの直径は、第2端面72bの直径よりも小さい。外周面72cは、第1端面72aと第2端面72bとを接続するように形成されている。外周面72cは、第1端面72a側から第2端面72b側に向かって、漸次拡径している。つまり、外周面72cにおいて、二次側導線62の延伸方向において、第1端面72a側の端部が、二次側絶縁モールド72の最小径部72sであり、第2端面72b側の端部が、二次側絶縁モールド72の最大径部72mである。
【0038】
シールド部8は、二次側ケーブルヘッド42と二次側導線62の接続部に設けられている。シールド部8は、二次側絶縁モールド72に対して二次側導線62の延伸方向で二次側ケーブルヘッド42から離間する側に設けられている。シールド部8は、アルミニウム等の導電材料から形成されている。シールド部8は、二次側導線62の外周面62fから、二次側導線62を中心とした径方向の外側に拡径している。
【0039】
シールド部8は、二次側導線62の延伸方向から見た際に、例えば円形状に形成されている。本実施形態において、シールド部8は、二次側導線62の延伸方向における厚さTが、シールド部8の径方向で一定である。つまり、シールド部8は、本実施形態において、例えば円盤状に形成されている。シールド部8は、第1平面81と第2平面82と、外周縁部83と、を有している。
【0040】
第1平面81、及び第2平面82は、二次側導線62の延伸方向に交差する面に沿って形成されている。第1平面81は、二次側導線62の延伸方向で二次側ケーブルヘッド42側を向いている。第2平面82は、二次側導線62の延伸方向で二次側ケーブルヘッド42から離間する側を向いている。第1平面81と第2平面82とは、互いに平行に形成されている。これによりシールド部8は、二次側導線62の延伸方向における厚さTが、径方向で一定である。本実施形態において、シールド部8の端面の半径rを10±2mm(つまり厚さTは、16mm~24mm程度)とするのが好ましい。
【0041】
外周縁部83は、シールド部8において、径方向の外側を向いている。外周縁部83は、第1平面81の外周縁と、第2平面82の外周縁とを接続している。外周縁部83は、本実施形態において、径方向の外側に凸となる円弧状の断面形状を有している。本実施形態において、シールド部8は、外周縁部83と第1平面81との接続部分、及び外周縁部83と第2平面82との接続部分においても、角部のないよう、滑らかに連続する面により形成されている。
【0042】
シールド部8は、二次側絶縁モールド72の最小径部72sよりも大きな外径を有している。さらに、シールド部8は、二次側絶縁モールド72の最大径部72mよりも大きな外径を有しているのが好ましい。シールド部8は、二次側絶縁モールド72の最大径部72mと同等の外径を有していてもよい。シールド部8は、二次側絶縁モールド72の最大径部72mよりも小さい外径を有していてもよいが、後述するシールド部8の機能を有効に発揮するには、その外径をなるべく大きくするのが好ましい。本実施形態において、シールド部8は、二次側絶縁モールド72の最大径部72mの外径に対し、例えば1.2倍~2.5倍程度、あるいは1.5倍~2.0倍程度の外径を有しているが、この形態に限定されない。
【0043】
図2、
図4に示すように、第1ハウジング21内に、3組設けられた各相の二次側導線62に設けられたシールド部8同士は、径方向に、予め設定された所定寸法以上の間隔をあけて配置されている。これにより、各相のシールド部8同士の間で電気的な短絡が生じることが抑えられる。なお、各相のシールド部8同士の間で間隔を確保するため、例えば、各相のシールド部8同士の位置を、二次側導線62の延伸方向でずらすようにしてもよい。
【0044】
ここで、本実施形態において、シールド部8は、遮断器5Sが収容されている第1ハウジング21内にのみ設けられている。遮断器5Sで一次側と二次側との間で電路を遮断する際、遮断器5Sで遮断する電流値は、例えば25kAである。これに対し、前記したように、接地装置に接続された第1ハウジング21における電流値は、例えば400A程度である。これにより、第1ハウジング21内では、遮断器5Sで電路を遮断する際、強大なアークが発生しやすい。すると、発生したアークにより、第1ハウジング21内の絶縁性ガス(SF6)が分解することで生成される分解ガスの量が多くなる。結果として、第1ハウジング21内で分解ガスに曝露される二次側絶縁モールド72を形成する、モールド樹脂の劣化が促進されやすい。
【0045】
これに対し、第2ハウジング31内では、遮断器5Sが収容されていないため、アークによる分解ガスの生成が抑えられる。このため、第2ハウジング31内に配置された一次側絶縁モールド71においては、分解ガスによるモールド樹脂の劣化も生じにくく、シールド部8を設ける必要性が低い。もちろん、第2ハウジング31に配置された一次側絶縁モールド71の近傍にも、シールド部8を設けてもよい。
【0046】
図7は、比較のためのシールド部を備えない構成における、落雷時等における電界分布を示す図である。
図8は、比較のためのシールド部を備えない構成における、閃絡予想経路を示す図である。ここで、
図7、
図8に示すように、比較のため、シールド部8が設けられていない場合(従来の構成に相当)について検討する。シールド部8が設けられていない場合、落雷時等には、二次側導線62の表面に沿った領域A1から、二次側絶縁モールド72の外周面72cに沿った領域A2において、高電界となる。
【0047】
この場合、第1ハウジング21内で生成された分解ガスによって二次側絶縁モールド72のモールド樹脂の劣化が生じていると、落雷時等に閃絡が生じた場合、閃絡電流は、二次側導線62と二次側絶縁モールド72と絶縁性ガス(分解ガス)との境界部分Kを起点として、二次側絶縁モールド72の最小径部72s側から最大径部72m側へと、外周面72c(沿面)に沿う経路R1を辿ると予想される。結果として、二次側絶縁モールド72の外周面72cの全面が、閃絡予想経路に沿って破壊されてしまう可能性がある。
【0048】
図9は、本実施形態の開閉装置における、落雷時等における電界分布を示す図である。
図10は、本実施形態の開閉装置における、閃絡予想経路を示す図である。これに対し、
図9に示すように、シールド部8を備えている場合、落雷時等には、シールド部8の外周縁部83の近傍の領域A3と、二次側絶縁モールド72の最大径部72mの近傍の領域A4とで、高電界となる。
【0049】
この場合、分解ガスによって二次側絶縁モールド72のモールド樹脂の劣化が生じていると、
図10に示すように、落雷時等における閃絡電流は、シールド部8の外周縁部83から、二次側絶縁モールド72において外周面72cの最大径部72mへと、二次側導線62の延伸方向に沿った直線的な経路R2を辿ると予想される。つまり、シールド部8の高電界部分(端部の断面が半円部分の頂点付近)から高電界付近(外周面72c)へ最も近い距離で閃絡が起こることが考えられるため、経路R2を辿ると予想される。この場合、二次側絶縁モールド72の外周面72cに沿って閃絡電流が流れることが抑えられ、二次側絶縁モールド72の破壊が抑えられる。
【0050】
このように、本実施形態に係る開閉装置1においては、シールド部8が、二次側導線62の外周面から径方向外側に拡径している。これにより、分解ガスによって二次側絶縁モールド72を形成するモールド樹脂の劣化が生じている場合であっても、落雷時等に閃絡が生じたときに、二次側絶縁モールド72の外周面72c(沿面)に沿って閃絡電流が流れるのを抑え、二次側絶縁モールド72の破壊を抑えることができる。
【0051】
また、シールド部8の厚さTが、径方向で一定であるので、二次側導線62の延伸方向における第2平面82と二次側絶縁モールド72との間の距離を確保し、二次側絶縁モールド72の沿面に沿った電気的な短絡を有効に抑えることができる。また、シールド部8が、円形状に形成されているので、シールド部8の周方向のどの位置においても、二次側絶縁モールド72の沿面に沿った電気的な短絡を有効に抑えることができる。また、シールド部8の外周縁部83が、径方向の外側に凸となる円弧状の断面形状を有しているので、シールドの外周縁部83に鋭角に突起する部位が存在するのを抑え、二次側絶縁モールド72の沿面に沿った電気的な短絡を抑えることができる。
【0052】
また、シールド部8が、二次側絶縁モールド72の最小径部72sよりも大きな外径を有しているので、シールド部8と二次側絶縁モールド72の外周面72cとの間隔を確保し、二次側絶縁モールド72の沿面に沿った電気的な短絡を生じにくくすることができる。また、シールド部8は、二次側絶縁モールド72の最大径部72mよりも大きな外径を有しているので、シールド部8と二次側絶縁モールド72との間隔を、より大きく確保し、二次側絶縁モールド72の沿面に沿った電気的な短絡をさらに生じにくくすることができる。また、二次側ケーブルヘッド42は、変圧器側母線102の端部が接続可能であるので、変圧器側母線102の端部が接続される二次側ケーブルヘッド42と二次側導線62との接続部との間に設けられた二次側絶縁モールド72において、二次側絶縁モールド72の沿面に沿って電気的な短絡が生じるのを抑え、二次側絶縁モールド72の破壊を抑えることができる。
【0053】
また、複数組のシールド部8同士が、径方向に間隔をあけて配置されることで、複数組のシールド部8同士の間で電気的な短絡が生じるのを抑えることができる。また、開閉器5が、遮断器5Sであるので、通電状態で一次側と二次側との遮断を行う遮断器5Sとともに備えられた二次側絶縁モールド72において、二次側絶縁モールド72の沿面に沿って電気的な短絡が生じるのを抑え、二次側絶縁モールド72の破壊を抑えることができる。また、シールド部8が、ハウジング2内の複数の室S1、S2のうち、遮断器5Sが収容された室S1に設けられているので、分解ガスによって二次側絶縁モールド72の劣化が生じた場合であっても、シールド部8により、二次側絶縁モールド72の沿面に沿って電気的な短絡が生じるのを抑え、二次側絶縁モールド72の破壊を抑えることができる。
【0054】
(実施形態の変形例)
なお、上記実施形態において、シールド部8は、第1平面81と第2平面82とを有する円盤状としたが、これに限られない。
図11は、本実施形態の変形例に係る二次側絶縁モールド72、及びシールド部8Bを示す断面図である。例えば、開閉装置1は、
図11に示すようなシールド部8Bを備えるようにしてもよい。このシールド部8Bは、二次側導線62の延伸方向で二次側ケーブルヘッド42側を向く凸湾曲面85を有している。凸湾曲面85は、二次側導線62の延伸方向で二次側ケーブルヘッド42側に、略半球状に突出している。
【0055】
図12は、本実施形態の変形例の開閉装置における、落雷時等における電界分布を示す図である。
図13は、本実施形態の変形例の開閉装置における、閃絡予想経路を示す図である。
図12に示すように、凸湾曲面85を有するシールド部8Bを備えている場合、落雷時等には、凸湾曲面85全体を覆うような領域A5と、二次側絶縁モールド72の最大径部72mの近傍の領域A6とで、高電界となる。
【0056】
この場合、分解ガスによって二次側絶縁モールド72のモールド樹脂の劣化が生じていると、
図13に示すように、落雷時等における閃絡電流は、シールド部8の凸湾曲面85全体から、二次側絶縁モールド72において外周面72cへと、二次側導線62の延伸方向に沿った経路R3で一様に流れると予想される。つまり、シールド部8Bの高電界部分(凸湾曲面85のうち外側の面付近)から高電界付近(外周面72c)へ最も近い距離で閃絡が起こることが考えられるため、経路R3を辿ると予想される。この場合も、二次側絶縁モールド72の外周面72cに沿って閃絡電流が流れることが抑えられ、二次側絶縁モールド72の破壊が抑えられる。
【0057】
なお、上記実施形態、及び変形例では、開閉器5として遮断器5Sを例示したが、これに限られない。また、上記実施形態では、シールド部8が第1ハウジング21内に設けられた二次側絶縁モールド72の近傍にのみ設けられるようにしたが、これに限られない。例えば、一次側絶縁モールド71が、遮断器5Sが収容された第1ハウジング21内に設けられているのであれば、シールド部8を、一次側絶縁モールド71の近傍に同様に備えるようにしてもよい。
【0058】
(検証例)
次に、上記実施形態の構成についての検証を行ったので、その結果を以下に示す。まず、分解ガスへの曝露によるモールド樹脂の劣化が生じていない状態の二次側絶縁モールド72を用い、フラッシオーバ試験を行った。ここで、二次側絶縁モールド72を形成するモールド樹脂としては、シリカが充填されたエポキシ樹脂を用いた。
【0059】
フラッシオーバ試験では、200kV、300kV、400kV、500kVの電圧を印加した後、閃絡による二次側絶縁モールド72の破壊の有無を確認した。上記電圧の印加は、正極と、負極 の各々について、個別に行った。その結果、正極への印加、負極への印加の双方の場合において、200kV、300kV、400kV、500kVの各電圧で、二次側絶縁モールド72の破壊は認められなかった。
【0060】
その後、二次側絶縁モールド72、及び遮断器5Sが収容された密閉空間(第1ハウジング21の室S1内に相当)に、絶縁性ガスとしてSF6ガスを充填し、遮断器5Sにより、25kAの電流を、繰り返し6回遮断した。遮断器5Sの遮断時に生じるアークにより、絶縁性ガス(SF6)から分解ガスを生成し、二次側絶縁モールド72を、密閉空間内で分解ガスに3時間曝露させた。分解ガスには、二次側絶縁モールド72を形成するシリカ充填エポキシ樹脂に悪影響を及ぼすと考えられる、フッ化水素が多量に含まれていることを確認した。
【0061】
次いで、雷に相当する400kVの電圧を、正極、負極に3回ずつ印加した。400kVの電圧印加後に、二次側絶縁モールド72に破壊は認められなかった。続いて、実際の開閉装置において、落雷後にメンテナンスを実施することを想定し、遮断器5Sが収容された空間を開放し、二次側絶縁モールド72を、24時間大気に曝露させた。その後、二次側絶縁モールド72が収容された空間を再び密封し、絶縁性ガス(SF6)を再充填した。そして、200kV、300kV、400kV、500kVの電圧を、正極、負極に3回ずつ印加し、その後に閃絡による二次側絶縁モールド72の破壊の有無を確認した。
図14は、分解ガスに曝露した後の二次側絶縁モールドに対し、電圧を印加したときの破壊の有無の確認結果を示す図である。その結果、
図14に示すように、各電圧において、二次側絶縁モールド72に破壊は認められなかった。
【0062】
上記の試験後の二次側絶縁モールド72の表面について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果、試験前には目立った凹凸が認められなかった試験前の二次側絶縁モールド72に対し、試験後の二次側絶縁モールド72の表面には、複数の凹みが形成されていることが確認された。また、試験前と試験後の二次側絶縁モールド72について元素分析を行ったところ、試験前の二次側絶縁モールド72では認められなかった、フッ素原子が、試験後の絶縁フィールド相当量検出されていることが確認された。
【0063】
また、試験前、試験後の二次側絶縁モールド72の各々について、5個のサンプルを用意し、電気抵抗を測定した。
図15は、分解ガスに曝露する前の試験前のサンプルと、分解ガスに曝露して電圧を印加した後の試験後のサンプルとで、電気抵抗の計測結果を比較するためのグラフである。その結果、
図15に示すように、試験前の二次側絶縁モールド72では、電気抵抗の平均値が、1.34×1014(Ω)であったのに対し、試験後の二次側絶縁モールド72では、電気抵抗の平均値が、1.10×1014(Ω)と、僅かに低下していることが認められた。
【符号の説明】
【0064】
1・・・開閉装置
2・・・ハウジング
5・・・開閉器
5S・・・遮断器
8、8B・・・シールド部
41・・・一次側ケーブルヘッド
42・・・二次側ケーブルヘッド
61・・・一次側導線
62・・・二次側導線
71・・・一次側絶縁モールド
72・・・二次側絶縁モールド(絶縁モールド)
72c・・・外周面
72m・・・最大径部
72s・・・最小径部
81・・・第1平面
82・・・第2平面
83・・・外周縁部
85・・・凸湾曲面
101・・・受電側母線
102・・・変圧器側母線
S1、S2・・・室
T・・・厚さ