(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016013
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】成分分離回収装置、成分分離回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
B01D53/04 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119003
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】小川 莉玖
(72)【発明者】
【氏名】中野 彬
(72)【発明者】
【氏名】中川 匡
(72)【発明者】
【氏名】福村 琢
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012CA03
4D012CB16
4D012CD02
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF08
4D012CF10
4D012CJ03
4D012CJ05
4D012CK03
(57)【要約】
【課題】高濃度かつ高回収率でガス中の特定成分の分離をすること。
【解決手段】本実施形態における一態様の成分分離回収装置は、ガス中の特定成分を吸着する吸着材および前記吸着材を充填する容器を備える複数の固定層と、前記特定成分が液相状態で貯留される液化貯留タンクと、前記液化貯留タンク内の前記特定成分の一部が貯留されるパージタンクと、前記パージタンクの後段に設けられた圧縮機と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中の特定成分を吸着する吸着材および前記吸着材を充填する容器を備える複数の固定層と、
前記特定成分が液相状態で貯留される液化貯留タンクと、
前記液化貯留タンク内の前記特定成分の一部が貯留されるパージタンクと、
前記パージタンクの後段に設けられた圧縮機と、を備える
成分分離回収装置。
【請求項2】
前記パージタンクに貯留される前記特定成分は気相状態である請求項1に記載の成分分離回収装置。
【請求項3】
前記パージタンクに貯留される前記特定成分の量は、
前記固定層の前記吸着材の吸着帯で吸着可能な前記特定成分の量と、
前記固定層の前記吸着材以外の空間体積と同等の量と、を加算した量である請求項2に記載の成分分離回収装置。
【請求項4】
前記圧縮機は、前記パージタンクに貯留されている前記特定成分を圧縮する請求項3に記載の成分分離回収装置。
【請求項5】
前記複数の固定層は、吸着塔および脱離塔として機能する請求項4に記載の成分分離回収装置。
【請求項6】
前記吸着塔として機能する複数の固定層と、
前記脱離塔として機能する複数の固定層と、の機能を反転させて運転する請求項5に記載の成分分離回収装置。
【請求項7】
前記液化貯留タンクは、前記脱離塔として機能する複数の固定層の前記吸着材から脱離された前記特定成分が液化して貯留される請求項6に記載の成分分離回収装置。
【請求項8】
前記圧縮機の後段に温度センサを更に備える請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の成分分離回収装置。
【請求項9】
前記温度センサは、前記圧縮機で圧縮された前記特定成分の温度を測定し、
前記温度センサの測定値に基づいて、前記圧縮機を制御する制御部を更に備える請求項8に記載の成分分離回収装置。
【請求項10】
前記吸着材の脱離温度を考慮した所定温度を予め設定し、
前記制御部は、前記温度センサの測定値が前記所定温度以上になるように前記圧縮機を制御する請求項9に記載の成分分離回収装置。
【請求項11】
ガス中の特定成分を複数の固定層内の容器に充填される吸着材で吸着する吸着工程と、
前記特定成分が吸着されている前記吸着材から前記特定成分を脱離させる脱離工程と、を並行して実行する成分分離回収方法であって、
前記吸着工程の実行期間と、前記脱離工程の実行期間は少なくとも一部が重なることを特徴とする成分分離回収方法。
【請求項12】
前記吸着工程の実行後に、前記複数の固定層から前記特定成分以外の成分を排出させるパージ工程を実行する請求項11に記載の成分分離回収方法。
【請求項13】
前記パージ工程でパージガスとして用いる前記特定成分を圧縮機で圧縮するパージ準備工程を前記吸着工程と並行して実行する成分分離回収方法であって、
前記パージ工程の実行期間と、前記吸着工程の実行期間は少なくとも一部が重なることを特徴とする請求項12に記載の成分分離回収方法。
【請求項14】
システムの終了指示を受け付けた場合に、
前記吸着材に前記特定成分が吸着されている前記複数の固定層の前記脱離工程のみを実行する請求項13に記載の成分分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分分離回収装置、成分分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスから特定成分を分離する技術の必要性が増している。そこで例えば、特許文献1、2は、ガスから固体吸着材を用いてCO2を分離するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-69417号公報
【特許文献2】特開2021-35654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスから特定成分を分離する技術においては、ガスから高回収率で特定成分を分離しようとすると、特定成分以外の成分が混入してしまい、特定成分の濃度が低下する問題が発生する。よって、ガスから高濃度かつ高回収率で特定成分を分離することが求められる。
【0005】
本実施形態の課題としては、高濃度かつ高回収率でガス中の特定成分の分離をすることができる成分分離回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態における一態様の成分分離回収装置は、ガス中の特定成分を吸着する吸着材および前記吸着材を充填する容器を備える複数の固定層と、前記特定成分が液相状態で貯留される液化貯留タンクと、前記液化貯留タンク内の前記特定成分の一部が貯留されるパージタンクと、前記パージタンクの後段に設けられた圧縮機と、を備えることを特徴とする。
【0007】
ガス中の特定成分を複数の固定層内の容器に充填される吸着材で吸着する吸着工程と、前記特定成分が吸着されている前記吸着材から前記特定成分を脱離させる脱離工程と、を並行して実行する成分分離回収方法であって、前記吸着工程の実行期間と、前記脱離工程の実行期間は少なくとも一部が重なることを特徴とする成分分離回収方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高濃度かつ高回収率でガス中の特定成分の分離をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る成分分離回収装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本実施の形態に係る成分分離回収装置の一例を示す概略構成図である。
【
図3】吸着工程中の経過時間と吸着状態の関係を示す概略図である。
【
図4】吸着工程中の吸着材の吸着状態を示す概略図である。
【
図5】成分分離回収装置を構成する構成部品の経過時間ごとの温度と圧力との関係を示すグラフである。
【
図6A】成分分離回収装置により実行される成分分離方法の一例を示すフローチャート(その1)である。
【
図6B】成分分離回収装置により実行される成分分離方法の一例を示すフローチャート(その2)である。
【
図6C】成分分離回収装置により実行される成分分離方法の一例を示すフローチャート(その3)である。
【
図6D】成分分離回収装置により実行される成分分離方法の一例を示すフローチャート(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1、
図2は、本実施の形態に係る成分分離回収装置の一例を示す概略構成図である。なお、本実施の形態に係る成分分離回収装置としては、火力発電プラントや化学工業プラント(工場)などのプラントから排出されるガスから特定成分を分離することを目的とする装置を考える。特定成分として、本実施の形態においては、特定成分としてCO
2(二酸化炭素)を分離する装置を考える。ただし、これに限られず、本実施の形態に係る成分分離回収装置は、燃焼器として船舶に使用されるエンジンから排出されるガスや、廃棄物焼却施設から排出されるガスから特定成分を分離する処理に適用可能である。
【0011】
図1、
図2に示すように、本実施の形態に係る成分分離回収装置1は、第1固定層10、第2固定層20、液化貯留タンク30、パージタンク40、圧縮機50、温度センサ60、圧力計70、管71a~管71m、および弁72a~弁72m、制御部80を備える。
図1、
図2の実施の形態においては、第1固定層10および第2固定層20(以下、特に区別して説明しない場合には単に「固定層」とも呼ぶ)の2つの固定層しか表示されていないがこの限りではない。固定層の数は、2つ以上であればよく、成分分離回収装置1は、複数の固定層を設けることができる。弁72a~弁72mは、制御部80の制御に基づき、開閉される。
【0012】
第1固定層10は、吸着材11、および容器12を備える。吸着材11は、容器12内に充填されている。第1固定層10の容器12内に充填された吸着材11は、容器12内に流入したガスから特定成分を吸着する。本実施の形態においては、吸着材11は、特定成分としてCO2を吸着する。本実施の形態において吸着とは、吸収の概念を含むものとする。したがって、吸着材11は、特定成分を吸収する吸収剤などの材料が含まれる。本実施の形態においては、吸着材11は、特定成分としてCO2を吸着しているがこの限りではない。例えばガスに含まれる有用な成分または無用な成分を特定成分として吸着できるものあればよい。例えば、吸着材11は、特定成分として、SOX、NOX、CO等を吸着してもよい。
【0013】
第2固定層20は、吸着材21、および容器22を備える。吸着材21は、容器22内に充填されている。第2固定層20の容器22内に充填された吸着材21は、容器22内に流入したガスから特定成分を吸着する。本実施の形態においては、吸着材21は、特定成分としてCO2を吸着する。本実施の形態において吸着とは、吸収の概念を含むものとする。したがって、吸着材21は、特定成分を吸収する吸収剤などの材料が含まれる。本実施の形態においては、吸着材21は、特定成分としてCO2を吸着しているがこの限りではない。例えばガスに含まれる有用な成分または無用な成分を特定成分として吸着できるものあればよい。例えば、吸着材21は、特定成分として、SOX、NOX、CO等を吸着してもよい。
【0014】
管71aは、排ガス供給源81と、第1固定層10と、を接続する。弁72aは、管71aに配置される。管71bは、第1固定層10と、外界82と、を接続する。弁72bは、管71bに配置される。管71cは、排ガス供給源81と、第2固定層20と、を接続する。弁72cは、管71cに配置される。管71dは、第2固定層20と、外界82と、を接続する。弁72dは、管71dに配置される。
【0015】
管71eは、第1固定層10と、再生用熱源83と、を接続する。例えば、再生用熱源として、エンジン排熱を使用することができる。エンジン排熱を使用する場合は、熱交換器で熱交換を行って昇温させてもよい。こうすることで動力コストを下げられる。弁72eは、管71eに配置される。管71fは、第2固定層20と、再生用熱源83と、を接続する。弁72fは、管71fに配置される。管71gは、第1固定層10と、圧縮機50と、を接続する。弁72gは、管71gに配置される。管71hは、第2固定層20と、圧縮機50と、を接続する。弁72hは、管71hに配置される。
【0016】
管71iは、第1固定層10と、液化貯留タンク30と、を接続する。弁72iは、管71iの第1固定層10側に配置される。管71jは、第2固定層20と、液化貯留タンク30と、を接続する。弁72jは、管71jの第2固定層20側に配置される。すなわち、液化貯留タンク30は、第1固定層10および第2固定層20の後段に設けられている。
【0017】
管71kは、液化貯留タンク30と、パージタンク40と、を接続する。弁72kは、管71kに配置される。すなわち、パージタンク40は、液化貯留タンク30の後段に設けられている。パージタンク40には、圧力計70が接続されている。
【0018】
管71lは、パージタンク40と、圧縮機50と、を接続する。弁72lは、管71lに配置される。すなわち、圧縮機50は、パージタンク40の後段に設けられている。弁72mは、液化貯留タンク30の前段側に配置される。圧縮機50と、第1固定層10および第2固定層20と間に、温度センサ60が設けられている。すなわち、温度センサ60は、パージタンク40および圧縮機50の後段に設けられている。温度センサ60は、パージ工程の際に、第1固定層10および第2固定層20へ流入する圧縮機50で圧縮したCO2の温度を測定し、制御部80に出力する。
【0019】
本実施の形態の成分分離回収装置1は、第1固定層10および第2固定層20を用いて温度変動吸着法(TSA)によって特定成分が吸着と脱離とを繰り返すことにより、ガス中の特定成分のCO2を分離することができる。
【0020】
図1を参照して、第1固定層10においてCO
2の吸着を行い(以下、「吸着工程」とも呼ぶ)、第2固定層20においてCO
2の脱離を行う(以下、「脱離工程」とも呼ぶ)工程(以下、「第1の工程」とも呼ぶ)について説明する。
【0021】
第1の工程では、制御部80は、弁72a、72bを開放し、弁72i、72e、72g、72c、72dを閉止することにより、排ガス供給源81から供給された排ガスは、管71bを通じて第1固定層10へ流入する。排ガスに含まれるCO2は容器12内に充填された吸着材11に吸着される。吸着材11によるCO2の吸着は、回収率が100%に近づくまで継続して行われる。そして、CO2以外の残りの成分は、第1固定層10から、管71aを通じて外界82へ排出される。これにより、吸着搭として機能する第1固定層10においてCO2の吸着工程を行うことができる。
【0022】
続いて、制御部80は、弁72m、弁72lを閉止し、弁72kを開放することにより、液化貯留タンク30に貯留されている液相の状態(以下、「液相状態」と呼ぶ)のCO2の一部をパージタンク40へ流入させてパージ工程の準備を行うことができる。パージタンク40へ流入したCO2は気相の状態(以下、「気相状態」と呼ぶ)で貯留される。
【0023】
続いて、制御部80は、弁72kを閉止し、弁72lを開放して、圧縮機50をONにすることで、パージタンク40から圧縮機50へ流入した気相状態のCO2を圧縮機50によって昇圧させることにより、昇温することができる。この場合、制御部80は、温度センサ60で測定したCO2のパージガス温度が後述する温度Tパージ以上となるまで圧縮機50を制御して昇圧する。そして、制御部80は、温度センサ60で測定したCO2のパージガス温度が温度Tパージ以上となった場合には、圧縮機50を制御して圧力を維持する。
【0024】
続いて、制御部80は、弁72bを閉止し、弁72gを開放することにより、圧縮機50によって昇圧していたCO2を第1固定層10へ流入させ、第1固定層10に対しパージ工程を実行する。
【0025】
続いて、制御部80は、パージ時間が後述するtパージ以上となるまで第1固定層10に対しパージ工程を実行した後に、弁72aを閉止する。続いて、制御部80は、弁72g、弁72lを閉止し、圧縮機50をOFFにしてパージ工程および吸着工程を終了する。
【0026】
また、第1の工程では、制御部80は、弁72f、弁72j、弁72mを開放し、弁72c、弁72d、弁72hを閉止することにより、再生用熱源83から供給された加熱蒸気は、管71fを通じて第2固定層20へ流入する。容器22内に充填された吸着材21に吸着されたCO2は、加熱蒸気により脱離される。そして、脱離したCO2は、管71jを通じて液化貯留タンク30へ送られる。これにより、脱離搭として機能する第2固定層20においてCO2の脱離工程を行うことができる。
【0027】
次に、第2固定層20においてCO2の吸着を行い(吸着工程)、第1固定層10においてCO2の脱離を行う(脱離工程)工程(以下、「第2の工程」とも呼ぶ)について説明する。
【0028】
第2の工程では、制御部80は、弁72c、弁72dを開放し、弁72j、72h、72f、72a、72bを閉止することにより、排ガス供給源81から供給された排ガスは、管71dを通じて第2固定層20へ流入する。排ガスに含まれるCO2は容器22内に充填された吸着材21に吸着される。吸着材21によるCO2の吸着は、回収率が100%に近づくまで継続して行われる。そして、CO2以外の残りの成分は、第2固定層20から、管71cを通じて外界82へ排出される。これにより、吸着搭として機能する第2固定層20においてCO2の吸着工程を行うことができる。
【0029】
続いて、制御部80は、弁72m、弁72lを閉止し、弁72kを開放することにより、液化貯留タンク30に貯留されている液相状態のCO2の一部をパージタンク40へ流入させてパージ工程の準備を行うことができる。パージタンク40へ流入したCO2は気相状態で貯留される。
【0030】
続いて、制御部80は、弁72kを閉止し、弁72lを開放して、圧縮機50をONにすることで、パージタンク40から圧縮機50へ流入した気相状態のCO2を昇圧(圧縮)させることにより、昇温することができる。この場合、制御部80は、温度センサ60で測定したCO2のパージガス温度が温度Tパージ以上となるまで圧縮機50を制御して昇圧する。そして、制御部80は、温度センサ60で測定したCO2のパージガス温度が温度Tパージ以上となった場合には、圧縮機50を制御して圧力を維持する。
【0031】
続いて、制御部80は、弁72dを閉止し、弁72hを開放することにより、圧縮機50によって昇圧、昇温していたCO2を第2固定層20へ流入させ、第2固定層20に対しパージ工程を実行する。
【0032】
続いて、制御部80は、パージ時間がtパージ以上となるまで第2固定層20に対しパージ工程を実行した後に、弁72cを閉止する。続いて、制御部80は、弁72h、弁72lを閉止し、圧縮機50をOFFにしてパージ工程および吸着工程を終了する。
【0033】
また、第2の工程では、制御部80は、弁72e、弁72i、弁72mを開放し、弁72a、弁72b、弁72gを閉止することにより、再生用熱源83から供給された加熱蒸気は、管71eを通じて第1固定層10へ流入する。容器12内に充填された吸着材11に吸着されたCO2は、加熱蒸気により脱離される。そして、脱離したCO2は、管71iを通じて液化貯留タンク30へ送られる。これにより、脱離搭として機能する第1固定層10においてCO2の脱離工程を行うことができる。
【0034】
第1の工程および第2の工程により、CO2が第1固定層10または第2固定層20から液化貯留タンク30へ送られる。液化貯留タンク30は、第1固定層10または第2固定層20から送られたCO2などの特定成分を液相状態で貯留(以下、「液化貯留」とも呼ぶ)する。特定成分の液化手段として、弁72iおよび弁72jの後段かつ弁72mの前段に、CO2に圧力をかけて液化させるための圧縮手段(圧縮機など)を設けてよい。また、弁72iおよび弁72jの後段かつ弁72mの前段にはCO2を液化させるための冷却手段を設けてよい。冷却手段としては、CO2を冷却するための冷凍機であってもよく、海水や真水などの冷却水との熱交換による冷却手段であってもよい。これにより、特定成分の体積を小さくして大量に保管しておくことができる。その結果、成分分離回収装置1を構成する際の省スペース化を図ることができる。
【0035】
液化貯留タンク30に貯留されているCO2をパージタンク40へ供給する場合には、弁72kを開放する。これにより、液化貯留タンク30に液相状態で貯留されているCO2は、管71kを通じてパージタンク40へ供給される。
【0036】
パージタンク40は、CO2の一部を気相の状態で貯留する。パージタンク40内に貯留されたCO2の圧力は、圧力計70により計測され、制御部80へ出力される。パージタンク40は、前段に設けられた弁72kと、後段に設けられた弁72lと、に基づいてパージタンク40内の圧力を調整することができる。パージタンク40に貯留されている特定成分の濃度が高いガスを圧縮機50で圧縮して吸着工程中の第1固定層10または第2固定層20へ流すことにより、第1固定層10および第2固定層20内に残留する特定成分以外の成分を流すことにより、特定成分以外の成分を排出(以下、「パージ」とも呼ぶ)することができる。パージタンク40には、パージに必要なガスの圧力(以下、「パージガス圧」とも呼ぶ)で特定成分のCO2が貯留されている。
【0037】
制御部80は、パージに用いられるCO2(以下、「パージガス」とも呼ぶ)を温度センサ60により計測した温度結果に基づいてセンシングしている。圧縮機50は、脱離に適した温度となるまでパージタンク40に貯留されているパージガスを圧縮して昇温する。また、このパージガスは、液化貯留タンク30に貯留されているCO2のうちの一部が気相状態(ガス状態)で貯留されている。
【0038】
パージに用いられるCO2の最低圧縮率の算出方法について説明する。CO2の最低圧縮率は、下記式(1)(2)により算出される。
CO2の最低圧縮量[kg]=パージに用いられるCO2量[kg]・・・式(1)
パージに用いられるCO2量[kg]=(吸着帯Z1で未反応の吸着材11の量[kg]/吸着材11のCO2吸着率(質量割合))+((第1固定層10内の体積[m3]-全吸着材11の体積[m3])×CO2密度[kg/m3])・・・式(2)
【0039】
上記式(2)のうち、「第1固定層10内の体積[m
3]-全吸着材11の体積[m
3]」は、
図4に示す空間Z3により表される。空間Z3は、第1固定層10を構成する容器12内の体積のうち、吸着材11が充填されていない領域により構成される。
【0040】
上記式(1)(2)により算出された量のパージガスを圧縮機50により圧縮し、パージガス温度=任意のパージガス温度Tパージとなった場合に、圧縮機50による圧縮を停止する。なお、パージガス温度とは、圧縮機50によって圧縮されたパージガスの温度をいう。
【0041】
なお、吸着材11の再生温度T再生、任意のパージガス温度Tパージ、および吸着材11の脱離温度T脱離は、それぞれ下記式(3)が成立するように設定される。
吸着材11の再生温度T再生≦任意のパージガス温度Tパージ≦吸着材11の脱離温度T脱離・・・式(3)
【0042】
上述のように、パージタンク40は、液化貯留タンク30とは別に設けられている。そして、制御部80は、弁72m、弁72lを閉止し、弁72kを開放することにより、液化貯留タンク30に貯留されているCO2の一部をパージタンク40へ流入させることで、パージタンク40内にCO2を気相状態で貯留することができる。パージタンク40内にCO2を気相状態で貯留することにより、パージタンク40内に貯留した気相状態のCO2を周囲温度に馴染ませておくことができる。その後、制御部80は、弁72kを閉止し、弁72lを開放して、圧縮機50をONにすることで、パージタンク40から圧縮機50へ流入した気相状態のCO2を昇圧させることにより、昇温することができる。このように、パージタンク40内のCO2を周囲温度に予め馴染ませておくことで、CO2の昇温に必要なエネルギーを少なくでき、パージ用の圧縮負荷を小さくすることができる。なお、上述の実施の形態においては、パージで用いられるガスをパージタンク40により気相の状態で貯留しているがこの限りではない。液相状態で貯留している液化貯留タンク30から必要量のみのCO2を昇圧することもできる。この場合、パージタンク40の構成を備えないで済むことから、コストの低減を図ることができる。ただし、パージタンク40において周囲温度に馴染ませておく場合と比較して、余分なエネルギーが必要となることとなる。周囲温度は、例えば外気温度または工場等の建物内の室温である。周囲温度に馴染ませておくとは、パージタンク40内のCO2の温度が、外気温度又は工場等の建物内の室温と比較して±10℃の範囲に収まっていることをいう。
【0043】
液化貯留タンク30からパージタンク40へ送られるCO2の量は、パージで用いられるCO2の量をパージタンク40で待機させる。パージで用いられるCO2の量は、下記(1)(2)を加算した量を設定することができる。
(1)吸着帯Z1で吸着可能なCO2の成分量と同等量
(2)第1固定層10または第2固定層20内で吸着材設置部以外の空間体積(空隙など)と同等量
【0044】
以下、
図3、
図4を用いて第1固定層10で用いられる吸着材11の状態について説明する。
図3は、吸着工程中の経過時間と吸着状態の関係を示す概略図である。
図4は、吸着工程中の吸着材の吸着状態を示す概略図である。
図3、
図4では、第1固定層10で用いられる吸着材11について説明する。第2固定層20で用いられる吸着材21については、第1固定層10で用いられる吸着材11と同様であるため、
図3、
図4をもって説明を省略する。
【0045】
図3に示すように、吸着工程においては、排ガス供給源81から供給された排ガスに含まれるCO
2が第1固定層10の容器12内に充填された吸着材11に接触するように供給される。
【0046】
時間の経過とともに、吸着材11に目的のCO2が吸着されていくと、経過時間taに示すように吸着帯Z1と呼ばれる吸着の濃度分布を持つエリアが吸着材11内のエリアに生成される。経過時間taにおけるCO2の吸着帯Z1は、吸着材11の厚さZ0より十分少ないため、まだ十分に特定成分を吸着できる。
【0047】
時間の経過とともに、吸着材11に目的のCO2が吸着していき、飽和帯Z2と呼ばれるエリアが吸着材11内のエリアに生成される。飽和帯Z2のエリアは、CO2の吸着が飽和状態となり、これ以上CO2の吸着ができないエリアとなっている。飽和帯Z2の生成に伴い、経過時間tbにおけるCO2の吸着帯Z1は、飽和帯Z2の生成により出口方向に移動される。経過時間tbにおけるCO2の吸着帯Z1の厚さと、経過時間taにおける吸着帯Z1の厚さとが略同様であるため、まだ十分に特定成分を吸着できる。
【0048】
時間の経過とともに、吸着材11に目的のCO2が吸着していき、飽和帯Z2の厚さが増加し、吸着材11の厚さすべてが、経過時間tcのように、飽和帯Z2のエリアと吸着帯Z1のエリアとのエリアにより占有されると、吸着帯Z1において十分に吸着することができなくなり、特定成分であるCO2の通過を許してしまうことになる。この経過時間tcの時間を破過時間と呼ぶ。破過時間を超えて、CO2を吸着させようとすると、経過時間tdのように、目的の特定成分であるCO2が第1固定層10の外に流出してしまい、特定成分の回収率の低下を招くという課題が生じていた。一方で、CO2回収率を100%にすると、CO2以外のガスが第1固定層10内に残留してしまい、脱離時にCO2以外のガスを含んでしまうこととなっていた。その結果、分離ガスの純度が低下してしまうという課題が生じていた。
【0049】
分離ガスは、貯留または利用されるが、高純度化が求められる場合には、後工程において追加分離や濃縮など、更なるエネルギーが必要となるため、温度変動吸着法(TSA)による成分分離回収時点において、高純度化することが求められている。
【0050】
そこで、本実施の形態においては、制御部80は、気相状態の特定成分を、温度センサ60により計測された温度を監視しながら圧縮機50で昇圧することで、設定した任意の温度まで昇温することができ、特定成分で構成されたパージガスを短時間かつ脱離温度に近づけて流すことにより、第1固定層10で吸着する工程で特定成分以外の成分を排出することとした。
【0051】
次に、経過時間とともに推移する成分分離回収装置1を構成する構成部品の温度と圧力との関係について説明する。
図5は、成分分離回収装置1を構成する構成部品の経過時間ごとの温度と圧力との関係を示すグラフである。
図5においては、第1固定層10が吸着搭として機能し、第2固定層20が脱離搭として機能する場合について説明している。なお、第1固定層10が脱離搭として機能し、第2固定層20が吸着搭として機能する場合には、
図5(a)と、
図5(c)とが入れ替わることとなる。
【0052】
図5(a)は、吸着搭として機能する第1固定層10の経過時間ごとの温度を示し、
図5(b)は、吸着搭として機能する第1固定層10の経過時間ごとの吸着率を示し、
図5(c)は、脱離搭として機能する第2固定層20の経過時間ごとの温度を示し、
図5(d)は、脱離搭として機能する第2固定層20の経過時間ごとの脱離率を示し、
図5(e)は、圧縮機50のON、OFFの状態を示し、
図5(f)は、圧縮機50によって昇圧される経過時間ごとのパージガス温度を示し、
図5(g)は、パージタンク40に貯留されている経過時間ごとのパージガス圧を示す。
【0053】
図5において、時間t
0は工程開始時間を示し、時間t
1は昇温完了時間を示し、時間t
2は脱離温度到達時間を示し、時間t
3は破過到達時間を示し、時間t
4は脱離完了時間を示し、時間t
5はパージ完了時間を示し、時間t
6は再生完了時間を示す。工程開始時間は、第1固定層10が吸着工程、第2固定層20が脱離工程を開始する時間をいう。昇温完了時間は、パージタンク40から送られ、圧縮機50によって昇圧されたパージガス温度が、任意に設定した温度T
パージに到達した時間をいう。脱離温度到達時間は、第2固定層20の温度が脱離に必要な温度T
脱離に到達した時間をいう。破過到達時間は、第1固定層10の容器12内に充填された吸着材11に特定成分が吸着されずに、特定成分の通過を許してしまうこととなる時間をいう。脱離完了時間は、第2固定層20の脱離が完了するまでの時間をいう。例えば、脱離を開始してからの経過時間(脱離時間)が、脱離工程にかかる時間t
脱離以上になったか否かにより、脱離の完了を判断することができる。脱離完了時間t
4は、脱離温度到達時間t
2にt
脱離が加算された時間を示す。パージ完了時間は、第1固定層10のパージが完了するまでの時間をいう。例えば、パージを開始してからの経過時間(パージ時間)が、パージ工程にかかる時間t
パージ以上になったか否かにより、パージの完了を判断することができる。パージ完了時間t
5は、破過到達時間t
3にt
パージが加算された時間を示す。再生完了時間は、第2固定層20に充填された吸着材21の再生が完了するまでの時間をいう。再生完了時間t
6は、脱離完了時間t
4に吸着材21の再生にかかる時間が加算された時間を示す。時間t
1~t
6は、いずれも予め実験等から求めておいてもよく、任意の時間を設定してよい。
【0054】
温度Tパージとは、吸着材11または吸着材21の脱離温度を考慮して任意に設定した温度をいう。例えば、温度センサ60で計測したパージガス温度が任意に設定した温度Tパージになるように圧縮機50を制御することができる。温度T再生とは、吸着材11または吸着材21を吸着可能な温度まで冷却した吸着材の温度をいう。周囲温度とは、成分分離回収装置1の周辺環境における気温をいう。圧力Pパージとは、パージに必要なパージガスの圧力をいう。定常圧力とは、パージ前にパージタンク40に貯留されているCO2の圧力をいう。温度T脱離とは、脱離に必要な温度であり、第1固定層10、または第2固定層20内の温度をいう。
【0055】
吸着搭として機能する第1固定層10による吸着が開始されると、第1固定層10に充填された吸着材11によるCO
2の吸着が開始され、
図5(b)に示すように、経過時間とともに吸着率が上昇する。そして、CO
2の吸着に伴い、
図5(a)に示すように、吸着搭として機能する第1固定層10の温度が上昇する。
【0056】
第1固定層10による吸着工程が開始されると、並行してパージ準備が開始される。パージ準備が開始すると、
図5(e)に示すように、圧縮機50がONとなる。圧縮機50のONに伴って昇圧されたパージガス温度が周囲温度から温度T
パージまで上昇するとともに、パージタンク40内に貯留されているCO
2のパージガス圧が定常圧力から圧力P
パージまで上昇する。第1固定層10は、吸着工程かつパージ準備が完了した場合、パージ工程が開始される。また、第1固定層10による吸着工程が開始されるとともに、脱離塔として機能する第2固定層20による脱離工程が開始される。第2固定層20に充填された吸着材21の脱離が開始されると、
図5(d)に示すように、経過時間とともに脱離率が上昇する。そして、CO
2の脱離に伴い、
図5(c)に示すように、脱離搭として機能する第2固定層20の温度が減少する。
【0057】
次に、成分分離回収装置1により実行される成分分離方法について説明する。
図6Aは、成分分離回収装置1により実行される成分分離方法の一例を示すフローチャート(その1)である。
図6Bは、成分分離回収装置1により実行される成分分離方法の一例を示すフローチャート(その2)である。
図6Cは、成分分離回収装置1により実行される成分分離方法の一例を示すフローチャート(その3)である。
図6Dは、成分分離回収装置1により実行される成分分離方法の一例を示すフローチャート(その4)である。
【0058】
はじめに成分分離回収装置1は、ステップS11の吸着工程と、ステップS25の脱離工程と、を並行して実行する。ステップS11の吸着工程において、吸着搭として機能する第1固定層10は、吸着材11によるCO2の吸着を開始する。吸着工程が実行されると、成分分離回収装置1は、ステップS12~ステップS16の処理と、ステップS17~ステップS18の処理と、を並行して実行する。並行して実行するとは、ステップS11の吸着工程の実行期間およびステップS25の脱離工程の実行期間の少なくとも一部が重なることを指してもよく、ステップS12~ステップS16の処理の実行期間とおよびステップS17~18の処理の実行期間の少なくとも一部が重なることを指してよい。
【0059】
ステップS12において、成分分離回収装置1は、パージ準備を実行する。パージ準備が実行されると、成分分離回収装置1は、弁72kを開弁する(ステップS13)。次に、成分分離回収装置1は、弁72kを閉弁し、弁72lを開弁し、圧縮機50をONすることにより、パージタンク40から圧縮機50に送られたCO2を圧縮機50により昇圧する(ステップS14)。成分分離回収装置1は、温度センサ60が検出した圧縮機50後段のパージガス温度が温度Tパージ以上となったか否かを判定する(ステップS15)。
【0060】
温度センサ60が検出した圧縮機50後段のパージガス温度が温度Tパージ未満である場合(ステップS15:NO)には、温度センサ60が検出した圧縮機50後段のパージガス温度が温度Tパージ以上となるまで圧縮機50によるパージガスの圧縮を継続して実行する。温度センサ60が検出した圧縮機50後段のパージガス温度が温度Tパージ以上となった場合(ステップS15:YES)には、成分分離回収装置1は、圧縮機50を制御して圧縮機50後段のCO2の圧力を維持する(ステップS16)。成分分離回収装置1は、圧力を維持するために圧縮機50をOFFにしてもよい。ステップS16が実行されると、処理はステップS19へ進む。
【0061】
ステップS17において、成分分離回収装置1は、弁72a、弁72bを閉弁する。成分分離回収装置1は、吸着時間が時間t3、すなわち、破過到達時間以上となったか否かを判定する(ステップS18)。吸着時間が破過到達時間未満の場合(ステップS18:NO)には、成分分離回収装置1は、吸着時間が破過到達時間以上となるまで吸着工程を継続して実行する。吸着時間が破過到達時間以上となった場合(ステップS18:YES)には、処理はステップS19へ進む。
【0062】
ステップS19において、成分分離回収装置1は、パージ工程を実行する。パージ工程が実行されると、処理はステップS20へ進む。ステップS20において、成分分離回収装置1は、弁72bを閉弁し、弁72gを開弁する。成分分離回収装置1は、パージ時間がtパージ以上となったか否かを判定する(ステップS21)。パージ時間がtパージ未満の場合(ステップS21:NO)には、パージ時間がtパージ以上となるまでパージ工程を継続して実行する。パージ時間がtパージ以上となった場合(ステップS21:YES)には、成分分離回収装置1は、弁72aを閉弁する(ステップS22)。次に、成分分離回収装置1は、弁72g、弁72lを閉弁し、圧縮機50をOFFにする(ステップS23)。ステップS11~S23の処理が終了すると、成分分離回収装置1は、吸着搭として機能する第1固定層10による吸着工程およびパージ工程を終了する(ステップS24)。吸着搭として機能する第1固定層10による吸着工程およびパージ工程を終了すると、処理はステップS36へ進む。
【0063】
ステップS25の脱離工程においては、脱離搭として機能する第2固定層20は、吸着材21からのCO2の脱離を開始する。脱離工程が実行されると、成分分離回収装置1は、弁72f、72jを開弁する(ステップS26)。その後、成分分離回収装置1は、弁72mを開弁する(ステップS27)。
【0064】
成分分離回収装置1は、脱離搭として機能する第2固定層20の吸着材21の温度が温度T脱離以上となったか否かを判定する(ステップS28)。吸着材21の温度が温度T脱離未満である場合(ステップS28:NO)には、吸着材21の温度が温度T脱離以上となるまでステップS28を継続して実行する。吸着材21の温度が温度T脱離以上となった場合(ステップS28:YES)には、成分分離回収装置1は、脱離時間がt脱離以上となったか否かを判定する(ステップS29)。
【0065】
脱離時間がt脱離未満の場合(ステップS29:NO)には、成分分離回収装置1は、脱離工程を継続して実行する。脱離時間がt脱離以上となった場合(ステップS29:YES)には、第2固定層20の吸着材21の再生工程が開始される(ステップS30)。その後、成分分離回収装置1は、弁72f、弁72j、弁72mを閉弁する(ステップS31)。
【0066】
成分分離回収装置1は、脱離搭として機能する第2固定層20の吸着材21を冷却する(ステップS32)。吸着材21を冷却した結果、脱離搭として機能する第2固定層20の吸着材21の温度が温度T再生以下であるか否かを判定する(ステップS33)。吸着材21の温度が温度T再生よりも高い場合(ステップS33:NO)には、成分分離回収装置1は、吸着材21の温度が温度T再生以下となるまで吸着材21の冷却を継続して実行する。
【0067】
吸着材21の温度が温度T再生以下となった場合(ステップS33:YES)には、成分分離回収装置1は、吸着材21の冷却を停止する(ステップS34)。ステップS25~S34の処理が終了すると、成分分離回収装置1は、脱離搭として機能する第2固定層20による脱離工程を終了する(ステップS35)。脱離搭として機能する第2固定層20による脱離工程を終了すると、処理はステップS36へ進む。
【0068】
ステップS36において、成分分離回収装置1は、吸着搭として機能する第1固定層10と、脱離搭として機能する第2固定層20を反転させて運転する。この反転処理が実行されると、吸着搭として機能する第1固定層10は脱離搭として機能し、脱離搭として機能する第2固定層20は吸着搭として機能する。
【0069】
ステップS37において、成分分離回収装置1は、終了指示を受け付けたか否かを判定する。終了指示を受け付けた場合(ステップS37:YES)には、成分分離回収装置1は、第1固定層10の脱離工程を開始する(ステップS38)。この工程が終了すると、第1固定層10および第2固定層20を含む全てのシステムを停止する。全てのシステムを停止させる場合は、第1固定層10の容器12内に充填された吸着材11および第2固定層20の容器22内に充填された吸着材21に吸着されているCO2を全て脱離させてから終了する。すなわち、ステップS35で脱離工程が完了している第2固定層20については、新たに吸着工程は実行せず、ステップS24で吸着工程およびパージ工程が完了している第1固定層10の脱離工程のみを実行することで、吸着材に吸着されているCO2を全て脱離することが可能になる。終了指示を受け付けていない場合(ステップS37:NO)には、処理はステップS39へ進む。
【0070】
ステップS39において、成分分離回収装置1は、ステップS39の吸着工程と、ステップS53の脱離工程と、を並行して実行する。ステップS39の吸着工程においては、吸着搭として機能する第2固定層20は、吸着材21によるCO2の吸着を開始する。吸着工程が実行されると、成分分離回収装置1は、ステップS40~ステップS44の処理と、ステップS45~ステップ46の処理と、を並行して実行する。並行して実行するとは、ステップS39の吸着工程の実行期間およびステップS53の脱離工程の実行期間の少なくとも一部が重なることを指してもよく、ステップS40~ステップS44の処理の実行期間とおよびステップS45~46の処理の実行期間の少なくとも一部が重なることを指してよい。
【0071】
ステップS40において、成分分離回収装置1は、パージ準備を実行する。パージ準備が実行されると、成分分離回収装置1は、弁72kを開弁する(ステップS41)。次に、成分分離回収装置1は、弁72kを閉弁し、弁72lを開弁し、圧縮機50をONすることにより、パージタンク40から圧縮機50に送られたCO2を圧縮機50により昇圧する(ステップS42)。成分分離回収装置1は、温度センサ60が検出した圧縮機50後段のパージガス温度が温度Tパージ以上となったか否かを判定する(ステップS43)。
【0072】
温度センサ60が検出した圧縮機50後段のパージガス温度が温度Tパージ未満である場合(ステップS43:NO)には、温度センサ60が検出した圧縮機50後段のパージガス温度が温度Tパージ以上となるまで圧縮機50によるパージガスの圧縮を継続して実行する。温度センサ60が検出した圧縮機50後段のパージガス温度が温度Tパージ以上となった場合(ステップS43:YES)には、成分分離回収装置1は、圧縮機50を制御して圧縮機50後段のCO2の圧力を維持する(ステップS44)。成分分離回収装置1は、圧力を維持するために圧縮機50をOFFにしてもよい。ステップS44が実行されると、処理はステップS47へ進む。
【0073】
ステップS45において、成分分離回収装置1は、弁72c、弁72dを閉弁する。成分分離回収装置1は、吸着時間が時間t3、すなわち、破過到達時間以上となったか否かを判定する(ステップS46)。吸着時間が破過到達時間未満の場合(ステップS46:NO)には、成分分離回収装置1は、吸着時間が破過到達時間以上となるまで吸着工程を継続して実行する。吸着時間が破過到達時間以上となった場合(ステップS46:YES)には、処理はステップS47へ進む。
【0074】
ステップS47において、成分分離回収装置1は、パージ工程を実行する。パージ工程が実行されると、処理はステップS48へ進む。ステップS48において、成分分離回収装置1は、弁72dを閉弁し、弁72hを開弁する。成分分離回収装置1は、パージ時間がtパージ以上となったか否かを判定する(ステップS49)。パージ時間がtパージ未満の場合(ステップS49:NO)には、パージ時間がtパージ以上となるまでパージ工程を継続して実行する。パージ時間がtパージ以上となった場合(ステップS49:YES)には、成分分離回収装置1は、弁72cを閉弁する(ステップS50)。次に、成分分離回収装置1は、弁72h、弁72lを閉弁し、圧縮機50をOFFにする(ステップS51)。ステップS39~S51の処理が終了すると、成分分離回収装置1は、吸着搭として機能する第2固定層20による吸着工程およびパージ工程を終了する(ステップS52)。吸着搭として機能する第2固定層20による吸着工程およびパージ工程を終了すると、処理はステップS64へ進む。
【0075】
ステップS53の脱離工程においては、脱離搭として機能する第1固定層10は、吸着材11からのCO2の脱離を開始する。脱離工程が実行されると、成分分離回収装置1は、弁72e、72iを開弁する(ステップS54)。その後、成分分離回収装置1は、弁72mを開弁する(ステップS55)。
【0076】
成分分離回収装置1は、脱離搭として機能する第1固定層10の吸着材11の温度が温度T脱離以上となったか否かを判定する(ステップS56)。吸着材21の温度が温度T脱離未満である場合(ステップS56:NO)には、吸着材11の温度が温度T脱離以上となるまでステップS56を継続して実行する。吸着材11の温度が温度T脱離以上となった場合(ステップS56:YES)には、成分分離回収装置1は、脱離時間がt脱離以上となったか否かを判定する(ステップS57)。
【0077】
脱離時間がt脱離未満の場合(ステップS57:NO)には、成分分離回収装置1は、脱離工程を継続して実行する。脱離時間がt脱離以上となった場合(ステップS57:YES)には、第1固定層10の吸着材11の再生工程が開始される(ステップS58)。その後、成分分離回収装置1は、弁72e、弁72i、弁72mを閉弁する(ステップS59)。
【0078】
成分分離回収装置1は、脱離搭として機能する第1固定層10の吸着材11を冷却する(ステップS60)。吸着材11を冷却した結果、脱離搭として機能する第1固定層10の吸着材11の温度が温度T再生以下であるか否かを判定する(ステップS61)。吸着材11の温度が温度T再生よりも高い場合(ステップS61:NO)には、成分分離回収装置1は、吸着材11の温度が温度T再生以下となるまで吸着材11の冷却を継続して実行する。
【0079】
吸着材11の温度が温度T再生以下となった場合(ステップS61:YES)には、成分分離回収装置1は、吸着材11の冷却を停止する(ステップS62)。ステップS53~S62の処理が終了すると、成分分離回収装置1は、脱離搭として機能する第1固定層10による脱離工程を終了する(ステップS63)。脱離搭として機能する第1固定層10による脱離工程を終了すると、処理はステップS64へ進む。
【0080】
ステップS64において、成分分離回収装置1は、脱離搭として機能する第1固定層10と、吸着搭として機能する第2固定層20を反転する。この反転処理が実行されると、脱離搭として機能する第1固定層10は吸着搭として機能し、吸着搭として機能する第2固定層20は脱離搭として機能する。
【0081】
ステップS65において、成分分離回収装置1は、終了指示を受け付けたか否かを判定する。終了指示を受け付けた場合(ステップS65:YES)には、成分分離回収装置1は、第2固定層20の脱離工程を開始する(ステップS66)。この工程が終了すると第1固定層10および第2固定層20を含む全てのシステムを停止する。全てのシステムを停止させる場合は、第1固定層10の容器12内に充填された吸着材11および第2固定層20の容器22内に充填された吸着材21に吸着されているCO2を全て脱離させてから終了する。すなわち、ステップS63で脱離工程が完了している第1固定層10については、新たに吸着工程は実行せず、ステップS52で吸着工程およびパージ工程が完了している第2固定層20の脱離工程のみを実行することで、吸着材に吸着されているCO2を全て脱離することが可能になる。終了指示を受け付けていない場合(ステップS65:NO)には、処理はステップS11へ戻る。
【0082】
このように、本実施の形態によれば、成分分離回収装置1は、ガス中のCO2を分離することを目的として、第1固定層10、第2固定層20、液化貯留タンク30、パージタンク40、圧縮機50、および温度センサ60を備える。第1固定層10は、CO2を吸着する吸着材11および吸着材11を充填する容器12を備え、第2固定層20は、CO2を吸着する吸着材21および吸着材21を充填する容器22を備える。そして、液化貯留タンク30は、脱離搭として機能する第1固定層10の吸着材11または脱離搭として機能する第2固定層の吸着材21から脱離したCO2を貯留する。パージタンク40は、液化貯留タンク30が貯留しているCO2の一部を気相で貯留する。圧縮機50は、パージタンク40の後段に設けられるとともに、温度センサ60は、圧縮機50の後段に設けられる。
【0083】
これにより、気相状態のCO2を、温度センサ60により計測された温度を監視しながら圧縮機50で昇圧することで、任意の温度まで昇温することができ、脱離温度に近づけたCO2を短時間で流すことにより、第1固定層10で吸着工程において、CO2以外の成分を排出することとした。その結果、ガスから高回収率で特定成分を分離した場合であっても、CO2以外の成分の混入を抑止し、CO2の濃度が低下する問題を防ぐことができる。これにより、高濃度かつ高回収率でガス中のCO2の分離をすることができる。
【0084】
本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩または派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0085】
上記各実施の形態では、成分分離回収装置1は、温度変動吸着法(TSA)によって特定成分の吸着と脱離とを繰り返すことによって、ガス中の特定成分の分離を行っているがこの限りではない。例えば、成分分離回収装置1は、圧力変動吸着法(PSA)によって特定成分の吸着と脱離とを繰り返すことによって、ガス中の特定成分の分離を行ってもよい。
【0086】
上記各実施の形態では、吸着工程からパージ工程に進む判断として、吸着時間が予め定めた破過到達時間以上になったか否かを例に挙げて説明したが、この限りではない。例えば、各固定層の後段の排ガス供給源81から供給される排ガスが通過する管に設けた特定成分の濃度を測定する濃度センサの値によって判断してもよい。破過時間に到達した場合、固定層の容器内に充填された吸着材に特定成分が吸着されずに特定成分が通過するため、吸着塔として機能する固定層の後段の濃度センサの値が上昇する。濃度センサの値が上昇することで、破過時間に到達したと判断し、吸着工程からパージ工程に進んでもよい。
【0087】
上記各実施の形態では、第1固定層10および第2固定層20の2つの固定層を備える成分分離回収装置1を例に挙げて説明したが、3つ以上の固定層を備える成分分離回収装置1でもよい。本発明の実施の形態では、吸着塔として機能する固定層の吸着工程およびパージ工程が脱離塔として機能する固定層の脱離工程および再生工程よりも早く完了することが想定される。2つの固定層を備える場合では、吸着塔として機能する固定層および脱離塔として機能する固定層の機能を同時に反転させる必要があるが、3つ以上の固定層を備える場合、各固定層の機能が完了次第、随時固定層の機能を反転してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 :成分分離回収装置
10 :第1固定層
11 :吸着材
12 :容器
20 :第2固定層
21 :吸着材
22 :容器
30 :液化貯留タンク
40 :パージタンク
50 :圧縮機
60 :温度センサ
71a~71m:管
72a~72m:弁
81 :排ガス供給源
82 :外界
83 :再生用熱源
Z1 :吸着帯
Z2 :飽和帯
Z3 :空間