(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016055
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】ロックボルト工の充填材注入システム
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20250124BHJP
E21D 20/02 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
E21D20/00 L
E21D20/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119070
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂根 一聡
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 賢吾
(57)【要約】
【課題】ロックボルト工における充填材注入工程において、充填材の注入度合いを注入作業中の作業者が的確に把握できる充填材注入システムを提供する。
【解決手段】山岳トンネル1の地山2に形成されたロックボルト孔5にロックボルト3を挿し込むにあたって、充填材注入システム9によって、ロックボルト孔5に充填材6を注入する。充填材注入システム9は、充填材6を吐出する注入ポンプ10と、注入ポンプか10ら延びる注入管30と、充填材6の注入流量を計測する流量計31と、充填材6の積算注入量の閾値S
6を設定する設定手段43と、流量計31による計測値から閾値S
6に対する注入度合Rを算出する算出部41と、算出された注入度合Rに応じた視覚情報を出力する報知手段50とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山岳トンネルの地山に形成されたロックボルト孔にロックボルトを挿し込むロックボルト工における前記ロックボルト孔に充填材を注入する充填材注入システムにおいて、
前記充填材を吐出する注入ポンプと、
前記注入ポンプから延びる注入管と、
前記充填材の注入流量を計測する流量計と、
前記充填材の積算注入量の閾値を設定する設定手段と、
前記流量計による計測値から前記閾値に対する注入度合を算出する算出部と、
算出された前記注入度合に応じた視覚情報を出力する報知手段と、
を備えたことを特徴とするロックボルト工の充填材注入システム。
【請求項2】
前記報知手段が、複数段の発光部を有する表示灯であり、前記注入度合に応じて点灯する発光部が設定されている請求項1に記載の充填材注入システム。
【請求項3】
前記算出部と前記報知手段とが、無線通信部を介して無線接続されている請求項1又は2に記載の充填材注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネルの地山に形成されたロックボルト孔にロックボルトを挿し込むロックボルト工に関し、特に、挿し込みの前又は後のロックボルト孔に充填材を注入する充填材注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、山岳トンネルの構築においては、掘削した地山の安定化のために、トンネル掘削面から地山にロックボルトを挿し込むロックボルト工が行われる。ロックボルト工は、地山に形成したロックボルト孔にモルタル等の充填材を注入する工程を含む(特許文献1等参照)。
【0003】
注入工程では、注入ポンプから延びる注入管の先端部をロックボルト孔の奥端まで挿し込んでから、注入ポンプによってモルタル等の充填材を圧送する。これによって、充填材が注入管の先端部から吐出されてロックボルト孔内に注入される。注入しながら、注入管を漸次手元側へ引く。ロックボルト孔におけるトンネル掘削面へ開口する手元側開口から充填材が溢れ出たとき、充填材がロックボルト孔に充填されたと判断して、注入ポンプを停止する。その後、ロックボルト孔にロックボルトを挿入する。
ロックボルト孔にロックボルトを挿入した後、ロックボルト孔の内周とロックボルトとの間隙に充填材を充填する場合もある。
【0004】
特許文献1には、注入ポンプに流量計を設けて、充填材の充填量を取得することによって、施工不良の有無や周辺地山の状態の判断に役立てることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のロックボルト工における注入工程においては、ロックボルト孔への充填材の充填量を計測器で計測することなく、作業者の経験や勘で、注入中の注入管を手元側へ引く度合いを調整していた。このため、注入管を速く引き過ぎてロックボルト孔内に注入不足の部分が出来たり、注入し過ぎだったりすることが有り得た。
特許文献1によれば、システムの管理者は充填材の充填量を把握できるが、注入作業中の作業者に注入度合いを報知させることは記載されていない。
本発明は、かかる事情に鑑み、ロックボルト工における充填材注入工程において、充填材の注入度合いを注入作業中の作業者が的確に把握できるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るシステムは、山岳トンネルの地山に形成されたロックボルト孔にロックボルトを挿し込むロックボルト工における前記ロックボルト孔に充填材を注入する充填材注入システムにおいて、
前記充填材を吐出する注入ポンプと、
前記注入ポンプから延びる注入管と、
前記充填材の注入流量を計測する流量計と、
前記充填材の積算注入量の閾値を設定する設定手段と、
前記流量計による計測値から前記閾値に対する注入度合を算出する算出部と、
算出された前記注入度合に応じた視覚情報を出力する報知手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記報知手段が、複数段の発光部を有する表示灯であり、前記注入度合に応じて点灯する発光部が設定されている。
注入度合いごとに点灯する発光部の数が増減してもよい。
注入度合ごとに対応する1の発光部が点灯して残余の発光部は消灯してもよい。
前記報知手段が、注入度合いをグラフや数値で示すモニタを含んでいてもよい。
【0009】
さらに好ましくは、前記算出部と前記報知手段とが、無線通信部を介して無線接続されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロックボルト工における充填材注入工程において、充填材の注入度合いを注入作業中の作業者が的確に把握でき、注入操作に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るロックボルト工の充填材注入システムの概要を示す解説図である。
【
図2】
図2は、前記充填材注入システムの構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係るロックボルト工の充填材注入システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図1は、施工中の山岳トンネル1を示したものである。山岳トンネル1においては、吹付けコンクリート(図示せず)を吹き付けたトンネル掘削面1aから地山2内へロックボルト3が打ち込まれている。
【0013】
ロックボルト工においては、ドリルジャンボ4によって地山2にロックボルト孔5が削孔される。形成されたロックボルト孔5には、充填材注入システム9によってモルタル6(充填材)が注入されたうえで、ロックボルト3が挿し込まれる。
【0014】
図1に示すように、施工中の山岳トンネル1内に4tトラック等の運搬車両8が乗り入れられている。運搬車両8はドリルジャンボ4の近くに配車されている。運搬車両8の荷台に充填材注入システム9が積載されている。充填材注入システム9は、注入ポンプ10と、注入管30と、中央制御盤40と、表示灯50,60を備えている。
【0015】
図2に示すように、注入ポンプ10は、一般的なコンクリート打設ポンプによって構成され、ポンプ部11と、ミキサー12と、オンオフスイッチ13を含む。ミキサー12の上部にホッパー14(原料投入部)が設けられている。
【0016】
ミキサー12に水供給路20が接続されている。水供給路20には、水圧計21と、水温計22と、水流量計23とが設けられている。
なお、水圧計21や水温計22は省略してもよい。
【0017】
ポンプ部11は、ミキサー12から筒状に延び出ており、その内部にはスクリュー11aが設けられている。
【0018】
オンオフスイッチ13によって、注入ポンプ10の運転開始及び停止の操作がなされる。
注入ポンプ10の運転によって、ホッパー14に投入されたセメント6a(モルタル原料)と、水供給路20からの水6wとが、ミキサー12において練り混ぜられることによって、モルタル6が出来る。モルタル6は、ポンプ部11のスクリュー11aの回転によって押し出される。
【0019】
図1に示すように、注入管30が、ポンプ部11の下流端の吐出ポート11pからドリルジャンボ4の高所作業台4dへ延び、そこから注入対象のロックボルト孔5へ挿し入れられている。注入ポンプ10とロックボルト孔5の手元側開口5aとは、通常、数メートル~数十メートル程度離れている。
【0020】
図2に示すように、吐出ポート11pと注入管30との間又は注入管30の中途部には、モルタル流量計31(充填材流量計)及び注入圧計32(充填材圧力計)が介在されている。流量計31は、注入ポンプ10からのモルタル6の圧送流量を測定する。好ましくは、流量計31は、流体(導体)の流れと磁界とによる電磁誘導作用によって発生した起電力(電圧)を検知する電磁流量計である。より好ましくは、流量計31は、検知電圧すなわちモルタル流量の計測値をデジタル信号で出力するデジタル流量計である。
【0021】
注入圧計32は、モルタル6の注入圧力を測定する。好ましくは、注入圧力計32は、測定圧力をデジタル信号で出力するデジタル圧力計である。
なお、注入圧計32は省略してもよい。
【0022】
図2に示すように、中央制御盤40には、処理部41と、信号変換部42と、設定デバイス43とが設けられている。処理部41及び信号変換部42は、防塵及び防水仕様の密閉ボックス44に収容されている。
【0023】
図2に示すように、処理部41は、例えばパーソナルコンピューター(以下「PC」と表記)によって構成され、CPU41aと、記憶部41mを含む。処理部41と信号変換部42とがイーサネットケーブル45にて接続されている。なお、処理部41は、PCに限らず、プログラマブルロジックコントローラ(以下「PLC」と表記)にて構成されていてもよい。PLCは、信号変換部4を含んでいてもよい。
【0024】
信号変換部42は、例えばイーサネットスイッチにて構成されている。信号変換部42を介して、処理部12と、各種の入出力機器とが、信号伝達可能に接続されている。信号変換部42ひいては処理部12と接続された入力機器としては、オンオフスイッチ13、モルタル流量計31、モルタル圧力計32、水圧計21、水温計22、水流量計23、設定デバイス43等が含まれる。信号変換部42ひいては処理部12と接続された出力機器としては、表示灯(報知手段)50,60等が含まれる。
【0025】
設定デバイス43は、制御目標値の設定入力を受け付ける設定入力部43aと、入力された制御目標値の出力部43bとを含む。制御目標値は、各ロックボルト孔5へのモルタル6(充填材)の積算注入量の閾値である。設定デバイス43は、積算注入量の閾値を設定する設定手段を構成する。好ましくは、設定デバイス43は、設定入力部43aが閾値を数値(デジタル)で受け付けて、出力部43bが閾値をデジタル信号で出力するデジタル設定デバイスである。出力部43bが、信号変換部42に接続されている。
【0026】
図1に示すように、設定デバイス43は、密閉ボックス44の外部に配置されている。したがって、設定デバイス43を操作する際に、密閉ボックス44を開け閉めする必要が無く、密閉ボックス44内の処理部41及び信号変換部42が粉塵や水の侵入で破壊されるのを回避できる。
好ましくは、設定デバイス43は、防塵及び防水仕様になっている。
【0027】
図2に示すように、表示灯50は、各ロックボルト孔5へのモルタルの注入度合の報知用であり、上下に3段(複数段)の発光部51,52,53を含む。点灯中の発光部51~53の数によって、注入度合が判別される。これら発光部51~53は、互いに発光色が異なっている。例えば、上段の発光部51は赤色、中段の発光部52は黄色、下段の発光部53は青色ないしは緑色にそれぞれ発光されるが、本発明はこれに限らない。好ましくは、表示灯50は、発光部51~53が回転される回転表示灯である。
【0028】
表示灯60は、上下に2段(複数段)の発光部61,62を含む。上段の発光部61は、モルタル積算注入量の計測中か否かの報知用であり、計測時は点灯し、非計測時は消灯される。下段の発光部62は、注入ポンプ1が運転中か否かの報知用であり、運転時は点灯し、停止時は消灯される。これら発光部61,62は、互いに発光色が異なっている。例えば、上段の発光部61は青色、下段の発光部62は白色にそれぞれ発光されるが、本発明はこれに限らない。好ましくは、表示灯60は、発光部61,62が回転される回転表示灯である。
【0029】
表示灯50,60は、トンネル1内のモルタル注入現場の見通しの良い場所に配置されている。例えば、表示灯50,60は、運搬車両8に立設された支柱59,69の上端部にそれぞれ設けられている。
なお、本発明においては、注入度合報知用の表示灯50があればよく、計測状態及び運転状態の表示灯60は省略してもよい。
【0030】
ロックボルト工においては、充填材注入システム9が、次のように作動されることによって、ロックボルト孔5へのモルタル(充填材)の充填が行われる。
<閾値設定工程>
予め、注入対象のロックボルト孔5におけるモルタル6(充填材)の積算注入量の閾値S6を、設定デバイス43によって設定しておく。閾値S6は、例えばロックボルト孔6の容積すなわち削孔ビットの直径と削孔深さとの積などに基づいて導出される。閾値S6がロックボルト孔6の容積と同等であってもよい。ロックボルト孔6に挿し入れられるロックボルト3の断面積を考慮して、閾値S6を設定してもよい。設定した閾値S6を設定デバイス43の設定入力部43aに数値入力する。
【0031】
入力された閾値S6が、設定デバイス43の出力部43bから信号変換部42を経て、処理部41に送られる。処理部41は、その閾値S6を記憶部41mの閾値記憶領域に保存する。
好ましくは、閾値設定工程は、注入対象のロックボルト孔5の長さや断面積が変更される都度、実行される。
【0032】
<注入管挿し入れ工程>
図1に示すように、注入管操作担当の作業者Bは、例えばドリルジャンボ4の高所作業台4dに乗って、注入管30を注入対象のロックボルト孔5の手元側開口5aから該ロックボルト孔5の内部へ挿し込む。注入管30の先端部をロックボルト孔5の奥端部まで挿し込んだら合図を出す。
【0033】
<注入ポンプ運転開始工程>
注入ポンプ操作担当の作業者Aは、合図に応じて、注入ポンプ10のオンオフスイッチ13によって運転開始の操作を行なう。
このとき、運転開始信号が、信号変換部42を介して処理部41に入力される。処理部41は、運転中表示指令を、信号変換部42を介して状態表示灯60へ出力し、運転状態表示用発光部62を点灯させる。
【0034】
<注入工程>
注入ポンプ10の運転によって、モルタル6が注入ポンプ10から注入管30内へ圧送され、注入管30の先端部から吐出されて、ロックボルト孔5内に注入される。作業者Bは、注入しながら、注入管30を漸次手元側へ引く。これによって、モルタル6が、ロックボルト孔5内の奥端部から手元側へ向かって充填されていく。
【0035】
なお、作業者Aが圧基準の設定をした場合、注入ポンプ10の運転中であっても、注入圧計32による測定圧力が所定の大きさ未満のときは、以下の注入量積算処理は行われず、計測状態表示用発光部61は点灯されないようにしてもよい。注入圧力が所定の大きさ未満になるときとしては、実際の注入前の試運転工程や、注入作業後のポンプ洗浄工程で、注入管30の先端部が解放されている状態が挙げられる。
【0036】
注入工程において、作業者Bは、注入管30を手元側へ漸次引きながら、好ましくは注入管30の先端部がロックボルト孔5内の注入済モルタル6’内に挿し込まれた状態を保つようにする。これによって、注入管30の内圧(モルタル注入圧)が充填開始時より一定値以上上昇して所定の大きさ(例えば0.3MPa程度)になる。該モルタル注入圧が、注入圧計32によって測定され、信号処理部42を介して処理部41に入力される。これによって、処理部41は、モルタル6の注入工程の実行中と判断して、以下の注入量積算処理を行なうとともに、計測中表示信号を、信号変換部42を介して状態表示灯60へ出力し、計測状態表示用発光部61を点灯させる。
【0037】
<流量計測工程>
注入工程中、モルタル流量計31によって、モルタル6の流量(L/min)が計測される。計測されたモルタル流量が、信号変換部42を経て処理部41に入力される。処理部41は、入力されたモルタル流量を積算することで、注入中のロックボルト孔5におけるモルタル6の現時点の積算注入量Q6(L)を算出する。
【0038】
<注入度合算出工程>
更に、処理部41(算出部)は、記憶部41mの閾値記憶領域から閾値S6を読み出し、下式によって現在積算注入量Q6と閾値S6との比Rを算出する。
R=Q6/S6 (式1)
比Rは、注入中のロックボルト孔5における、閾値S6に対するモルタル注入度合を示す。
【0039】
<報知工程>
処理部41は、算出された比Rすなわちモルタルの注入度合に応じた出力信号を、信号変換部42を介して、表示灯50へ出力する。これによって、表示灯50の発光部51,52,53がオンオフ操作される。
【0040】
例えば、算出された注入度合が、R=3分の1未満のときは、表示灯50のすべての発光部51~53が消灯されている。注入度合が、R=3分の1以上3分の2未満のときは、発光部51が点灯され、残りの発光部52,53は消灯される。注入度合が、R=3分の2以上1未満のときは、2つの発光部51,52が点灯され、発光部53は消灯される。注入度合が、R=1以上のときは、3つの発光部51,52,53が点灯される。
【0041】
つまり、算出された注入度合が3分の1に達したら、1段目の発光部51が点灯され、注入度合が3分の2に達したら、発光部51に加えて2段目の発光部52が点灯され、注入度合が1(100%)に達したら、発光部51,52に加えて3段目の発光部53が点灯される。
表示灯50は、算出された注入度合に応じた発光による視覚情報を出力する報知手段を構成する。
【0042】
注入管操作担当の作業者Bは、表示灯50の点灯状況を見ることによって、注入作業中のロックボルト孔5におけるモルタル6の注入度合をリアルタイムで的確に把握できる。その点灯状況に応じて、注入管30の手元側への引き具合を調節する。これによって、作業者Bは、勘に頼ることなく、注入管30を適切な速度で手元側へ引くことができる。すなわち、注入管30を引くのが早過ぎてロックボルト孔30内に注入不足の部分が出来るのを防止でき、かつ、注入管30を引くのが遅すぎて注入し過ぎになるのを防止できる。
表示灯50を高所に配置しておくことによって、表示灯50がドリルジャンボ4等によって隠れて作業者B側から見えにくくなるのを回避でき、作業者Bが表示灯50を確実に視認することができる。
【0043】
注入ポンプ操作担当の作業者Aは、表示灯50の点灯状況を見ることによって、注入ポンプ10の運転停止の時期が近いか否かを判断できる。運転停止の時期が近いと判断されたときは、作業者Aが、作業者Bの停止の合図を見逃さないよう、特に注意を払うことができる。
表示灯50が注入度合を発光からなる視覚情報として出力することで、トンネル内の騒音が大きい環境でも、作業者A,Bが注入度合を確実に把握することができる。
【0044】
3つの発光部51~53がすべて点灯し、手元側開口5aからモルタル6が溢れ出たとき、作業者Bが停止の合図を出す。
これに応じて、作業者Aは、注入ポンプ10のオンオフスイッチ13によって運転停止の操作を行なう。
【0045】
運転停止の信号は、信号変換部42を介して、処理部41に入力される。
これに応じて、処理部41は、運転停止時の積算注入量Q6をそのロックボルト孔5へのトータルの注入量として記憶部41mに保存するとともに、積算注入量Q6をリセットする。更に、処理部41は、全消灯指令を、信号変換部42を介して表示灯50へ出力する。これによって、表示灯50のすべての発光部51~53が消灯される。また、処理部41からの指令によって、表示灯60の計測状態表示用発光部61が消灯されるとともに、運転状態表示用発光部62が消灯される。
【0046】
なお、注入工程中、水圧計21による測定水圧と、水温計22による測定水温と、水流量計23による測定水量とが、それぞれ信号変換部42を介して処理部41に入力され、処理部41は、これら水圧、水温及び水流量のデータをトータル注入量のデータとともに記憶部41mに保存する。
保存されたデータは、作業日報等の帳票の作成に用いられる。
【0047】
作業者Bは、モルタル充填済のロックボルト孔5の手元側開口5aから注入管30を引き抜く。
続いて、ドリルジャンボ4の操作によって、モルタル充填済のロックボルト孔5にロックボルト3が打ち込まれる。
このようにして、削孔したロックボルト孔5ごとにモルタル6が充填されたうえでロックボルト3が打ち込まれる。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して、説明を省略する。
<第2実施形態(
図3)>
図3に示すように、本発明の第2実施形態においては、注入度合表示灯50がドリルジャンボ4の高所作業台4dに設けられている。表示灯50に無線通信部72(受信部)が接続されている。中央制御盤40の信号変換部42には、無線通信部71(発信部)が接続されている。
【0049】
処理部41からの点灯指令又は消灯指令は、信号変換部42を経て、無線発信部71から発信される。これを無線受信部72が受信して、表示灯50に入力する。これによって、発光部51~53の点灯及び消灯が制御される。図示は省略するが、表示灯50には、電池等の自立用電源が設けられている。
高所作業台4d上の注入管操作担当の作業者Bのすぐ近くに注入度合表示灯50が配置されているから、作業者Bに注入度合を確実に報知させることができる。
なお、運転状態及び計測状態の表示灯60についても、高所作業台4dに配置され、無線にて点滅制御されるようになっていてもよい。
【0050】
本発明は、前記実施形態に限定されず、種々の改変をなすことができる。
例えば、注入度合の表示灯50の発光部は、3つに限らず、4つ以上~多数でもよく、2つでもよく、1つだけでもよい。
実施形態においては、注入度合が大きくなるにしたがって表示灯50の発光部が上段から下段へ順次点灯されるようになっているが、注入度合いが大きくなるにしたがって下段の発光部から上段の発光部へ順次点灯されるようになっていてもよい。
表示灯50の複数の発光部が横方向(水平方向)又は斜め方向に並んでいてもよい。
注入度合の報知手段は、作業者が視覚で感知でき、かつ注入度合が判別可能な視覚情報を出力するものであればよく、発光部を有する表示灯50に限らず、注入度合を電光文字で表示する電光掲示板等であってもよい。
本発明に係る充填材注入システムは、ロックボルト孔5にモルタルを注入した後、ロックボルト3を挿し込む前注入方式に限らず、ロックボルト孔5にロックボルト3を挿し込んだ後、モルタル注入を行なう後注入方式にも適用可能である。
充填材は、モルタルに限らず、ウレタン系等の発泡樹脂であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば山岳トンネルにおけるロックボルト工に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 山岳トンネル
1a トンネル掘削面
2 地山
3 ロックボルト
4 ドリルジャンボ
4d 高所作業台
5 ロックボルト孔
5a 手元側開口
6 モルタル(充填材)
8 運搬車両
9 充填材注入システム
10 注入ポンプ
11 ポンプ部
12 ミキサー
13 オンオフスイッチ
14 ホッパー(原料投入部)
20 水供給路
30 注入管
31 モルタル流量計(充填材流量計)
32 注入圧計(充填材圧力計)
40 中央制御盤
41 処理部
42 信号変換部
43 設定デバイス
43a 設定入力部
43b 出力部
44 密閉ボックス
45 イーサネットケーブル
50 注入度合いの表示灯(報知手段)
51,52,53 発光部
59 支柱
71,72 無線通信部