(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016059
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】多層延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20250124BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250124BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20250124BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/36
B32B27/28 102
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119075
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】592040859
【氏名又は名称】クリロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳 健治
(72)【発明者】
【氏名】土肥 祐司
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD08
3E086AD19
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB85
3E086CA17
4F100AK03B
4F100AK03G
4F100AK04C
4F100AK42A
4F100AK46A
4F100AK69A
4F100AL07B
4F100AL07G
4F100AT00
4F100BA03
4F100EJ372
4F100EJ373
4F100GB15
4F100JK01
4F100JK09
4F100JK16
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】突刺しによるピンホールが発生しにくいだけでなく、摩擦によるピンホールも発生しにくい多層延伸フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂及びエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂から選択される機能性樹脂を含有する層A1及び層A2と、接着性樹脂を含有する層Bと、シーラント樹脂を含有する層CとがA1/B/A2/Cの順に配置された多層延伸フィルムであって、該フィルムの厚みが25~70μmであり、層A1の厚みが層A1と層A2の合計の10~90%であり、多層延伸フィルムが、式(1)及び(2):
(式(1)及び(2)中、E
iは層iを構成する樹脂のヤング率を表し、t
iは層iの厚みを表し、nは層の総数を表す。)により求められる曲げこわさGを多層延伸フィルムの厚みTの3乗で除したG/T
3値が50N/mm
2以上である、多層延伸フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂及びエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の機能性樹脂を含有する層A1及び層A2と、接着性樹脂を含有する層Bと、シーラント樹脂を含有する層Cとが、外側からA1/B/A2/Cの順に配置された多層延伸フィルムであって、
前記多層延伸フィルムの厚みが25~70μmであり、
前記層A1の厚みが前記層A1と前記層A2との厚みの合計の10~90%であり、
前記多層延伸フィルムについて、下記式(1)及び(2):
【数1】
(式(1)及び(2)中、E
iは層iを構成する樹脂のヤング率を表し、t
iは層iの厚みを表し、nは層の総数を表す。)
により求められる曲げこわさGを前記多層延伸フィルムの厚みTの3乗で除したG/T
3値が50N/mm
2以上であることを特徴とする多層延伸フィルム。
【請求項2】
2枚の前記多層延伸フィルムの層A1の表面同士を接触させて滑らせた場合の動摩擦係数が0.25以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層延伸フィルム。
【請求項3】
前記層A1と前記層A2の厚みの合計が前記多層延伸フィルム全体の厚みの30~70%であることを特徴とする請求項1に記載の多層延伸フィルム。
【請求項4】
前記層A1が2層以上の前記機能性樹脂を含有する層からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の多層延伸フィルム。
【請求項5】
前記層A1を構成する2層以上の前記機能性樹脂を含有する層のうちの最外層の厚みが前記層A1全体の厚みの2~30%であることを特徴とする請求項4に記載の多層延伸フィルム。
【請求項6】
前記層A1及び前記層A2が、それぞれ独立に、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6-66、及びポリアミドMXD6からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミド系樹脂を含有する層であることを特徴とする請求項1に記載の多層延伸フィルム。
【請求項7】
前記層A1及び前記層A2がポリアミド6を含有する層であることを特徴とする請求項6に記載の多層延伸フィルム。
【請求項8】
前記層A1及びA2のうちの少なくとも一方が非晶性ポリアミド樹脂又は3元共重合ポリアミドと、前記非晶性ポリアミド樹脂及び前記3元共重合ポリアミド以外のポリアミド系樹脂とを含有する層であることを特徴とする請求項1に記載の多層延伸フィルム。
【請求項9】
前記層Cがポリオレフィン系樹脂を含有する層であることを特徴とする請求項1に記載の多層延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層延伸フィルムに関し、より詳しくは、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂又はエチレン-ビニルアルコール共重合体を含有する層とシーラント樹脂を含有する層とを備えている多層延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂又はエチレン-ビニルアルコール共重合体を含有する層を備えている多層延伸フィルムは、ピンホールが発生しにくく、包装用フィルムとして多くの分野で利用されている。
【0003】
近年、環境問題の観点から、プラスチック製品の減量化が進められており、包装用フィルムも薄肉化が検討されている。しかしながら、フィルムを薄肉化した場合、フィルム強度が低下するため、ピンホールが発生しやすくなるという問題があった。
【0004】
そこで、特開平5-169603号公報(特許文献1)には、突刺しや屈曲によるピンホールが発生しにくい包装用フィルムとして、ポリアミド樹脂層(A)(A’)、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂層(B)、接着性樹脂層(C)(C’)(C”)及びシール層(D)のいずれかを含み、その積層順序が、(1)A-C-A’、(2)A-C-B-A’、(3)A-C-B-C’-A’、(4)A-C-A’-C’-D、(5)A-C-B-A’-C’-D、又は(6)A-C-B-C’-A’-C”-Dである、多層延伸フィルムが提案されている。
【0005】
また、特開2020-82678号公報(特許文献2)には、ポリアミド610等を含有する最外層と、ポリアミド6等を含有するポリアミド系中間層と、接着性樹脂を含有する接着層と、ポリオレフィン系樹脂を含有する最内層とを備えている、突刺しによるピンホールが発生しにくい多層延伸フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-169603号公報
【特許文献2】特開2020-82678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~2に記載の多層延伸フィルムにおいては、摩擦によるピンホールが発生しやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、突刺しによるピンホールが発生しにくいだけでなく、摩擦によるピンホールも発生しにくい多層延伸フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂及びエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の機能性樹脂を含有する層とシーラント樹脂を含有する層とを備えている多層延伸フィルムにおいて、前記機能性樹脂を含有する層を少なくとも2層形成し、かつ、この2層の前記機能性樹脂を含有する層(層A1と層A2)を接着性樹脂を含有する層Bで接着した層構造(A1/B/A2)を形成し、さらに、多層延伸フィルムの曲げこわさGを膜厚Tの3乗で除したG/T3値を所定の範囲内とすることによって、突刺しによるピンホールが発生しにくくなるだけでなく、摩擦によるピンホールも発生しにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0011】
[1]ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂及びエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の機能性樹脂を含有する層A1及び層A2と、接着性樹脂を含有する層Bと、シーラント樹脂を含有する層Cとが、外側からA1/B/A2/Cの順に配置された多層延伸フィルムであって、
前記多層延伸フィルムの厚みが25~70μmであり、
前記層A1の厚みが前記層A1と前記層A2との厚みの合計の10~90%であり、
前記多層延伸フィルムについて、下記式(1)及び(2):
【0012】
【0013】
(式(1)及び(2)中、Eiは層iを構成する樹脂のヤング率を表し、tiは層iの厚みを表し、nは層の総数を表す。)
により求められる曲げこわさGを前記多層延伸フィルムの厚みTの3乗で除したG/T3値が50N/mm2以上である、多層延伸フィルム。
【0014】
[2]2枚の前記多層延伸フィルムの層A1の表面同士を接触させて滑らせた場合の動摩擦係数が0.25以下である、[1]に記載の多層延伸フィルム。
【0015】
[3]前記層A1と前記層A2の厚みの合計が前記多層延伸フィルム全体の厚みの30~70%である、[1]又は[2]に記載の多層延伸フィルム。
【0016】
[4]前記層A1が2層以上の前記機能性樹脂を含有する層からなるものである、[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載の多層延伸フィルム。
【0017】
[5]前記層A1を構成する2層以上の前記機能性樹脂を含有する層のうちの最外層の厚みが前記層A1全体の厚みの2~30%である、[4]に記載の多層延伸フィルム。
【0018】
[6]前記層A1及び前記層A2が、それぞれ独立に、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6-66、及びポリアミドMXD6からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミド系樹脂を含有する層である、[1]~[5]のうちのいずれか1項に記載の多層延伸フィルム。
【0019】
[7]前記層A1及び前記層A2がポリアミド6を含有する層である、[6]に記載の多層延伸フィルム。
【0020】
[8]前記層A1及びA2のうちの少なくとも一方が非晶性ポリアミド樹脂又は3元共重合ポリアミドと、前記非晶性ポリアミド樹脂及び前記3元共重合ポリアミド以外のポリアミド系樹脂とを含有する層である、[1]~[7]のうちのいずれか1項に記載の多層延伸フィルム。
【0021】
[9]前記層Cがポリオレフィン系樹脂を含有する層である、[1]~[8]のうちのいずれか1項に記載の多層延伸フィルム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、突刺しによるピンホールが発生しにくいだけでなく、摩擦によるピンホールも発生しにくい多層延伸フィルムを得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0024】
本発明の多層延伸フィルムは、特定の機能性樹脂を含有する層A1及び層A2と、接着性樹脂を含有する層Bと、シーラント樹脂を含有する層Cとが、外側からA1/B/A2/Cの順に配置された多層延伸フィルムである。
【0025】
〔機能性樹脂を含有する層A1及び層A2〕
本発明の多層延伸フィルムにおいては、層A1及び層A2を形成する樹脂として、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂及びエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の機能性樹脂を使用する。このような機能性樹脂を含有する層を備えている多層延伸フィルムは、突刺しによるピンホールが発生しにくい。
【0026】
前記ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミドMXD6、共重合ポリアミド6-66、共重合ポリアミド6-610、共重合ポリアミド6-611、共重合ポリアミド6-12、共重合ポリアミド6-612、共重合ポリアミド6-6T、共重合ポリアミド6-6I、共重合ポリアミド6-66-610、共重合ポリアミド6-66-12、共重合ポリアミド6-66-612、共重合ポリアミド66-6T、共重合ポリアミド66-6I、共重合ポリアミド6T-6I、共重合ポリアミド66-6T-6Iが挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのポリアミド系樹脂の中でも、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しにくい傾向にあるという観点や成形加工性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6、共重合ポリアミド6-66が好ましく、ポリアミド6がより好ましい。
【0027】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのポリエステル系樹脂の中でも、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しにくい傾向にあるという観点や成形加工性の観点から、ポリブチレンテレフタレート又はその共重合体が好ましい。
【0028】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂としては、エチレン含有率が32~44モル%のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂が挙げられる。
【0029】
本発明の多層延伸フィルムにおいて、前記層A1及び前記A2は、前記ポリアミド系樹脂、前記ポリエステル系樹脂及び前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂のうちの少なくとも1種の機能性樹脂を含有する層であり、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しにくい傾向にあるという観点から、前記ポリアミド系樹脂を含有する層であることが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6及び共重合ポリアミド6-66のうちの少なくとも1種のポリアミド系樹脂を含有する層であることがより好ましく、ポリアミド6を含有する層であることが特に好ましい。また、このような層A1と層A2を構成する樹脂は、同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0030】
また、本発明の多層延伸フィルムにおいては、前記層A1及び前記層A2のうちの少なくとも一方が非晶性ポリアミド樹脂又は3元共重合ポリアミド樹脂(3種類のポリアミドの共重合体樹脂)と、前記非晶性ポリアミド樹脂及び前記3元共重合ポリアミド樹脂以外のポリアミド系樹脂(以下、「他のポリアミド系樹脂」ともいう)とを含有する層であることが好ましい。これにより、延伸成形性が安定する傾向にある。前記非晶性ポリアミド樹脂としては、例えば、共重合ポリアミド6T-6I、共重合ポリアミド66-6T-6Iが挙げられる。前記3元共重合ポリアミド樹脂としては、例えば、共重合ポリアミド6-66-610、共重合ポリアミド6-66-12、共重合ポリアミド6-66-612、共重合ポリアミド66-6T-6Iが挙げられる。これらの非晶性ポリアミド樹脂及び3元共重合ポリアミド樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの非晶性ポリアミド樹脂及び3元共重合ポリアミド樹脂の中でも、延伸成形性が安定する傾向にあるという観点から、共重合ポリアミド6T-6I、共重合ポリアミド6-66-12が好ましく、共重合ポリアミド6T-6Iがより好ましい。
【0031】
さらに、本発明の多層延伸フィルムにおいて、前記層A1は、1層の前記機能性樹脂を含有する層からなるものであってもよいし、2層以上の前記機能性樹脂を含有する層からなるものであってもよいが、摩擦によるピンホールがより発生しにくくなる傾向にあるという観点から、前記層A1は2層以上の前記機能性樹脂を含有する層からなるものであることが好ましい。また、このような2層以上の前記機能性樹脂を含有する層からなる層A1において、各層を構成する樹脂は、同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0032】
また、本発明の多層延伸フィルムにおいては、最外層(層A1が1層の場合には当該層A1、層A1が2層以上の場合には層A1のうちの最外層)に、アンチブロッキング剤及びスリップ剤のうちの少なくとも1種が含まれていることが好ましい。これにより、多層延伸フィルムの表面の摩擦が低減され、摩擦によるピンホールがより発生しにくくなる傾向にある。前記アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカやゼオライト等の無機粒子が挙げられ、前記スリップ剤としては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミドやエチレンビスベヘン酸アミド等のエチレンビス脂肪酸アミド、モンタン酸ナトリウム等の脂肪酸金属塩が挙げられる。このようなアンチブロッキング剤及びスリップ剤の含有量としては特に制限はないが、前記機能性樹脂100質量部に対して0.1~2.0質量部が好ましく、0.2~0.6質量部がより好ましい。
【0033】
さらに、本発明の多層延伸フィルムにおいては、必要に応じて、前記層A1及び前記層A2に、帯電防止剤、酸化防止剤、耐屈曲ピンホール改良剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0034】
〔接着性樹脂を含有する層B〕
前記接着性樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂等の不飽和脂肪族カルボン酸無水物で変性されたポリオレフィン系樹脂、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体エラストマー等の不飽和脂肪族カルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体エラストマー、無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体等の不飽和脂肪族カルボン酸無水物で変性されたエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレンと不飽和脂肪族カルボン酸との共重合体が挙げられる。
【0035】
〔シーラント樹脂を含有する層C〕
前記シーラント樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂;エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体(EMMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のエチレン系共重合体;ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0036】
本発明の多層延伸フィルムにおいて、前記層Cは、前記シーラント樹脂を含有する層であるが、前記層Cに隣接する層(特に、層A2)との密着性が向上するという観点から、接着性樹脂を更に含有することが好ましい。前記層Cが前記シーラント樹脂と前記接着性樹脂とを含有する層である場合、前記層Cは前記シーラント樹脂と前記接着性樹脂との混合物からなる層であってもよいし、前記シーラント樹脂からなる層と前記接着性樹脂からなる層とが積層された層であってもよい。
【0037】
〔多層延伸フィルム〕
本発明の多層延伸フィルムは、前記機能性樹脂を含有する層A1及び層A2と、前記接着性樹脂を含有する層Bと、前記シーラント樹脂を含有する層Cとが、外側からA1/B/A2/Cの順に配置された多層延伸フィルムである。
【0038】
本発明の多層延伸フィルムは、前記機能性樹脂を含有する層A1と層A2とが前記接着性樹脂を含有する層Bによって接着された層構造〔A1/B/A2〕を有している。これにより、突刺しによるピンホールが発生しにくくなるとともに、摩擦によるピンホールも発生しにくくなる。一方、前記層A1と層A2とが前記層Bによって接着されていない場合、すなわち、多層延伸フィルムが層構造〔A1/A2〕を有している場合には、突刺しによるピンホールは発生しにくいものの、摩擦によるピンホールは発生しやすい。また、前記層A2が形成されていない場合、例えば、前記層A1と前記シーラント樹脂を含有する層Cとが前記層Bによって接着されている場合、すなわち、多層延伸フィルムが層構造〔A1/B/C〕を有している場合には、摩擦によるピンホールが発生しやすい。
【0039】
本発明の多層延伸フィルムにおいては、フィルムの厚みが25~70μmである。このような厚みを有する多層延伸フィルムは、薄肉であり、突刺しによるピンホールが発生しにくい。一方、フィルムの厚みが前記下限未満になると、突刺しによるピンホールが発生しやすくなる。他方、フィルムの厚みが前記上限を超えると、フィルムの薄肉化が不十分である。また、フィルムが十分に薄肉化され、突刺しによるピンホールがより発生しにくくなるという観点から、前記多層延伸フィルムの厚みとしては、30~65μmが好ましく、35~60μmがより好ましく、40~55μmが特に好ましい。
【0040】
また、本発明の多層延伸フィルムにおいては、前記層A1の厚みが、前記層A1と前記層A2との厚みの合計の10~90%である。前記層A1の厚みの割合が前記範囲内にある多層延伸フィルムは、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しにくい。一方、前記層A1の厚みの割合が前記下限未満になると、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しやすくなる。他方、前記層A1の厚みの割合が前記上限を超えると、摩擦によるピンホールが発生しやすくなる。また、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しにくくなるという観点から、前記層A1の厚みの割合としては、前記層A1と前記層A2との厚みの合計の20~80%が好ましく、30~70%がより好ましく、40~60%が特に好ましい。
【0041】
さらに、本発明の多層延伸フィルムにおいては、下記式(1)及び(2):
【0042】
【0043】
(式(1)及び(2)中、Eiは層iを構成する樹脂のヤング率を表し、tiは層iの厚みを表し、nは層の総数を表す。)
により求められる曲げこわさGを前記多層延伸フィルムの厚みTの3乗で除したG/T3値が50N/mm2以上である。このようなG/T3値を有する多層延伸フィルムは、皺が発生しにくく、摩擦によるピンホールが発生しにくい。一方、G/T3値が前記下限未満になると、フィルムに皺が発生しやすく、この皺が擦れることによってピンホール(摩擦によるピンホール)が発生しやすくなる。また、フィルムに皺が発生しにくくなり、摩擦によるピンホールが発生しにくくなるという観点から、G/T3値としては、55N/mm2以上が好ましく、60N/mm2以上がより好ましい。一方、G/T3値の上限としては特に制限はないが、フィルム製造コストの観点から、100N/mm2以下が好ましく、80N/mm2以下がより好ましい。
【0044】
なお、G/T3値は、機能性樹脂を含有する層A1を分割したり、延伸倍率を上げたりすることによって増大させることができ、機能性樹脂を含有する層A1を統合したり、延伸倍率を下げたりすることによって減少させることができる。また、樹脂のヤング率は、後述する方法により測定することができる。
【0045】
また、本発明の多層延伸フィルムにおいては、2枚の前記多層延伸フィルムの表面同士(すなわち、前記層A1の表面同士)を接触させて滑らせた場合の動摩擦係数が0.25以下であることが好ましく、0.20以下がより好ましい。このような動摩擦係数を有する多層延伸フィルムは、摩擦によるピンホールが発生しにくい。
【0046】
さらに、本発明の多層延伸フィルムにおいては、最外層(層A1が1層の場合には当該層A1、層A1が2層以上の場合には層A1のうちの最外層)を構成する樹脂として、前記動摩擦係数が前記範囲内となる樹脂(好ましくは、より小さくなる樹脂)を用いることが好ましい。このような動摩擦係数が前記範囲内となる樹脂としては、ポリアミド6が挙げられる。
【0047】
また、本発明の多層延伸フィルムにおいては、前記層A1と前記層A2との厚みの合計が、前記多層延伸フィルム全体の厚みの30~70%であることが好ましく、40~60%であることがより好ましい。前記層A1と前記層A2との厚みの合計の割合が前記範囲内にある多層延伸フィルムは、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しにくい。一方、前記層A1と前記層A2との厚みの合計の割合が前記下限未満になると、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しやすくなる傾向にあり、他方、前記層A1と前記層A2との厚みの合計の割合が前記上限を超えると、シール強度が不十分になる傾向にある。
【0048】
さらに、本発明の多層延伸フィルムにおいて、前記層A1は1層の前記機能性樹脂を含有する層であっても2層以上の前記機能性樹脂を含有する層であってもよいが、前記層A1が2層以上の前記機能性樹脂を含有する層である場合、その最外層の厚みが前記層A1全体の厚みの2~30%であることが好ましく、5~20%であることがより好ましく、8~15%であることが特に好ましい。前記最外層の厚みの割合が前記範囲内にある多層延伸フィルムは、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しにくい。一方、前記最外層の厚みの割合が前記前記下限未満になると、突刺し及び摩擦によるピンホールが発生しやすくなる傾向にあり、他方、前記最外層の厚みの割合が前記上限を超えると、アンチブロッキング剤の添加量が増えてコストアップする傾向にある。
【0049】
このような本発明の多層延伸フィルムは、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、先ず、G/T3値が所定の範囲内となるように、前記層A1を形成する前記機能性樹脂(層A1が2層以上からなる場合には、各層を形成する前記機能性樹脂)A1、前記層A2を形成する前記機能性樹脂A2、前記層Bを形成する前記接着性樹脂B、及び前記層Cを形成する前記シーラント樹脂Cを選択し、かつ、各層の厚みを設定する[準備工程]。そして、選択した前記機能性樹脂A1と前記接着性樹脂Bと前記機能性樹脂A2と前記シーラント樹脂Cとを、各層が所定の厚みとなるように共押出して、層構成〔A1/B/A2/C〕の多層フィルムを形成する[共押出工程]。次に、この多層フィルムを、各層が設定した厚みとなるように、フィルムの流れ方向(MD)及びこれに垂直な方向(TD)に二軸延伸する[延伸工程]。その後、延伸した多層フィルムに前記機能性樹脂の融点付近の温度で加熱処理を施す[熱処理工程]ことによって、所望の多層延伸フィルムを得ることができる。
【0050】
前記共押出工程における共押出方法としては特に制限はないが、複数の押出機と環状ダイを用いて各層の樹脂(又はその組成物)を共押出して積層した後、水冷インフレーション法によりチューブ状に成形して多層フィルムを得る方法(共押出水冷インフレーション法)が好ましい。
【0051】
前記延伸工程における延伸方法としては特に制限はないが、前記チューブ状の多層フィルムにチューブラー延伸法により縦横同時二軸延伸を施すことが好ましい。多層フィルムに二軸延伸を施すことによって、多層延伸フィルムの機械的強度を向上させることができる。
【0052】
前記熱処理工程においては、延伸した多層フィルムに前記機能性樹脂の融点付近の温度で加熱処理を施す。これにより、延伸による残留応力が緩和され、寸法安定性に優れた多層延伸フィルムを得ることができる。また、このような加熱処理は、前記延伸した多層フィルムをMD及び/又はTDに弛緩させた状態で実施してもよい。
【0053】
前記熱処理工程における加熱処理の方法としては特に制限はないが、例えば、テンターを用いて加熱処理を行うことができる。このとき、最内層同士の融着を防ぐために、チューブ状の多層フィルムの内部に空気を供給して最内層同士の接触を防止しながら加熱処理を施したり、チューブ状の多層フィルムの両端部にスリットを入れ、フィルム間に隙間を設けた状態で加熱処理を施したりすることが好ましい。また、最終的に最内層となる前記層Cが外側となる状態で、共押出や延伸、加熱処理を行い、得られたチューブ状の多層延伸フィルムの両端部にスリットを入れて本発明の多層延伸フィルムを製造してもよい。
【実施例0054】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各樹脂のヤング率は以下の方法に従って測定した。また、実施例及び比較例で使用した樹脂のヤング率を表1に示す。
【0055】
〔ヤング率〕
(試験片の作製方法)
各樹脂について、水冷インフレーション法により成形したフィルムに、チューブラー延伸法によりフィルムの流れ方向(MD)に3倍、これに垂直な方向(TD)に3倍の延伸倍率で縦横同時二軸延伸を施した後、テンターを用いて220℃で加熱処理を行った。加熱処理後のフィルムに温度23℃、相対湿度50%の環境下でJIS K7100に準拠した状態調整を行い、一辺が10mm、一辺と直交する方向に延びる他辺が150mmの長方形状の試験片(厚さ:0.05mm)を作製した。
【0056】
(ヤング率の測定方法)
ヤング率の測定は、島津製作所製「オートグラフAGS-X」を用い、JIS K7127に準拠して行った。温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、試験片を初期の距離80mmの把持具の間に保持した状態から移動させ、ストロークが0.4~1.4mmの応力からヤング率を算出した。
【0057】
【0058】
(実施例1)
外側から層A1/層B/層A2/層Cの順に配置され、層A1が2層からなる多層延伸フィルムを作製した。具体的には、
層A1のうちの最外層の機能性樹脂として、6NYに、アンチブロッキング剤としてシリカ(5400ppm)とスリップ剤としてエチレンビス脂肪酸アミド(2200ppm)とを添加した6NY組成物と、
層A1のうちの内側の層の機能性樹脂として、6NY+ANYと、
層Bの接着性樹脂として、ADと、
層A2の機能性樹脂として、6NYと、
層Cのシーラント樹脂として、mLL+LD+ADと
を使用し、6NY組成物の押出温度を250℃、6NY+ANYの押出温度を260℃、ADの押出温度を220℃、mLL+LD+ADの押出温度を230℃として、共押出水冷インフレーション法により5種5層の共押出を行い、6NY層(3)/6NY+ANY層(23)/AD層(23)/6NY層(26)/mLL+LD+AD層(25)からなる多層フィルムを作製した。なお、各層の括弧内の数値はフィルム全体に対する厚みの割合(単位:%)を表す(以下、同様)。この多層フィルムにチューブラー延伸法によりフィルムの流れ方向(MD)に3倍、これに垂直な方向(TD)に3倍の延伸倍率で縦横同時二軸延伸を施した後、テンターを用いて220℃で加熱処理を行い、6NY層(3)/6NY+ANY層(23)/AD層(23)/6NY層(26)/mLL+LD+AD層(25)からなる多層延伸フィルム(膜厚:50μm)を得た。
【0059】
(実施例2)
層A1のうちの最外層の機能性樹脂として、6NYに、アンチブロッキング剤としてシリカ(5400ppm)とスリップ剤としてエチレンビス脂肪酸アミド(2200ppm)とを添加した6NY組成物と、
層A1のうちの内側の層の機能性樹脂として、6NYと、
層Bの接着性樹脂として、ADと、
層A2の機能性樹脂として、6NY+ANYと、
層Cのシーラント樹脂として、mLL+LD+ADと
を使用した以外は実施例1と同様にして、6NY層(3)/6NY層(23)/AD層(23)/6NY+ANY層(26)/mLL+LD+AD層(25)からなる多層延伸フィルム(膜厚:50μm)を得た。
【0060】
(実施例3)
層A1のうちの最外層の機能性樹脂として、MXD6+6NYに、アンチブロッキング剤としてシリカ(1300ppm)とスリップ剤としてエチレンビス脂肪酸アミド(2400ppm)とを添加したMXD6+6NY組成物と、
層A1のうちの内側の層の機能性樹脂として、6NY+ANYと、
層Bの接着性樹脂として、ADと、
層A2の機能性樹脂として、6NY+ANYと、
層Cのシーラント樹脂として、mLL+LD+ADと
を使用し、MXD6+6NY組成物の押出温度を260℃とした以外は実施例1と同様にして、MXD6+6NY層(3)/6NY+ANY層(23)/AD層(23)/6NY+ANY層(26)/mLL+LD+AD層(25)からなる多層延伸フィルム(膜厚:50μm)を得た。
【0061】
(実施例4)
層A1のうちの最外層の機能性樹脂として、PBTに、アンチブロッキング剤としてシリカ(13000ppm)とスリップ剤としてモンタン酸ナトリウム(6800ppm)とを添加したPBT組成物と、
層A1のうちの内側の層の機能性樹脂として、PBTと、
層Bの接着性樹脂として、ADと、
層A2の機能性樹脂として、6NY+ANYと、
層Cのシーラント樹脂として、mLL+LD+ADと
を使用し、PBT組成物の押出温度を250℃とした以外は実施例1と同様にして、PBT(3)/6NY+ANY層(10)/AD層(23)/6NY+ANY層(39)/mLL+LD+AD層(25)からなる多層延伸フィルム(膜厚:50μm)を得た。
【0062】
(比較例1)
外側から層A1/層B/層Cの順に配置され、層A1が2層からなる多層延伸フィルムを作製した。具体的には、
層A1のうちの最外層の機能性樹脂として、610NYに、アンチブロッキング剤としてシリカ(5000ppm)とスリップ剤としてエチレンビス脂肪酸アミド(47ppm)とを添加した610NY組成物と、
層A1のうちの内側の層の機能性樹脂として、6NY+ANYと、
層Bの接着性樹脂として、ADと、
層Cのシーラント樹脂として、LLと
を使用し、610NY組成物の押出温度を250℃、LLの押出温度を220℃とし、4種4層の共押出を行った以外は実施例1と同様にして、610NY層(3)/6NY+ANY層(53)/AD層(10)/LL層(34)からなる多層延伸フィルム(膜厚:50μm)を得た。
【0063】
(比較例2)
層A1のうちの最外層の機能性樹脂として、6NYに、アンチブロッキング剤としてシリカ(6800ppm)とスリップ剤としてエチレンビス脂肪酸アミド(230ppm)とを添加した機能性樹脂組成物と、
層A1のうちの内側の層の機能性樹脂として、6NY+ANYと、
層Bの接着性樹脂として、ADと、
層A2の機能性樹脂として、6-66NYと、
層Cのシーラント樹脂として、mLL+LD+ADと
を使用し、6-66NYの押出温度を240℃とした以外は実施例1と同様にして、6NY層(4)/6NY+ANY層(24)/AD層(25)/6-66NY層(20)/mLL+LD+AD層(27)からなる多層延伸フィルム(膜厚:50μm)を得た。
【0064】
(比較例3)
層A1のうちの最外層の機能性樹脂として、6NYに、アンチブロッキング剤としてシリカ(4900ppm)とスリップ剤としてエチレンビス脂肪酸アミド(420ppm)とを添加した6NY組成物と、
層A1のうちの内側の層の機能性樹脂として、6NYと、
層Bの接着性樹脂として、ADと、
層Cのシーラント樹脂として、LLと
を使用し、6NY組成物及び6NYの押出温度を250℃とした以外は比較例1と同様にして、6NY層(3)/6NY層(36)/AD層(10)/LL層(51)からなる多層延伸フィルム(膜厚:65μm)を得た。
【0065】
(比較例4)
外側から層A1/層Cの順に配置された多層フィルムを作製した。具体的には、
層A1として、ONYフィルムと、
層Cのシーラント樹脂として、PEと
を使用し、PEの押出温度を180℃として、ONYフィルム上にPEを押出して、ONY層(21)/PE層(79)からなる多層延伸フィルム(膜厚:70μm)を得た。
【0066】
(曲げこわさ)
得られた多層延伸フィルムの曲げこわさGを下記式(1)及び(2):
【0067】
【0068】
(式(1)及び(2)中、Eiは層iを構成する樹脂のヤング率を表し、tiは層iの厚みを表し、nは層の総数を表す。)
により求め、得られたG値を多層延伸フィルムの厚みTの3乗で除してG/T3値を算出した。その結果を表2に示す。
【0069】
(動摩擦係数)
JIS K7125:1999に記載の方法に従って、得られた多層延伸フィルム2枚の最外層の表面同士を接触させて滑らせた場合の動摩擦係数を測定した。その結果を表2に示す。
【0070】
(突刺し強度)
JIS Z0238:1998に記載の方法に従って、得られた多層延伸フィルムをフィルム突刺し強度試験用治具に固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50±5mmの速度で突刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定した。その結果を表2に示す。
【0071】
(輸送包装試験(摩擦によるピンホール発生数))
得られた多層延伸フィルムを200mm×300mmのサイズに製袋し、得られた袋にカットかぼちゃ500gを入れ、真空包装した後、-20℃で冷凍した。この冷凍品を20袋用意し、これらを2つの段ボール箱に10袋ずつ入れ、各段ボール箱ごとに、3軸同時振動発生型輸送包装試験機(アイデックス株式会社製「BF-50UT」)を用いて輸送距離3000kmの条件で輸送包装試験(振動試験)を行った。この輸送包装試験を前記冷凍品20袋(段ボール箱2箱分)について行い、20袋中、破袋した袋数を摩擦によるピンホール発生数として評価した。その結果を表2に示す。
【0072】
【0073】
表2に示したように、ポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂等の機能性樹脂を含有する層とシーラント樹脂を含有する層とを備えている多層延伸フィルムにおいては、前記機能性樹脂を含有する層を少なくとも2層形成し、かつ、この2層の前記機能性樹脂を含有する層(層A1と層A2)を接着性樹脂を含有する層Bで接着した層構造(A1/B/A2)を形成し、さらに、多層延伸フィルムの曲げこわさGを膜厚Tの3乗で除したG/T3値を所定の範囲内とすることによって、突刺しによるピンホールが発生しにくくなるだけでなく、摩擦によるピンホールも発生しにくくなることが確認された(実施例1~4)。また、実施例1~2で得られた多層延伸フィルムと実施例3で得られた多層延伸フィルムを対比すると、表面動摩擦係数を小さくすることによって、摩擦によるピンホールが発生しにくくなることもわかった。
【0074】
一方、前記機能性樹脂を含有する層とシーラント樹脂を含有する層とを備えている多層延伸フィルムであっても、前記機能性樹脂を含有する層A1と前記シーラント樹脂を含有する層Cとを接着性樹脂を含有する層Bで接着した層構造(A1/B/C)を有し、多層延伸フィルムのG/T3値が所定の範囲よりも小さい場合(比較例1、3)には、突刺しによるピンホールは発生しにくいものの、摩擦によるピンホールが発生しやすいことがわかった。特に、表面動摩擦係数が大きくなると、摩擦によるピンホールが発生しやすくなる傾向にあることがわかった。
【0075】
また、前記層構造(A1/B/A2)を有する多層延伸フィルムであっても、多層延伸フィルムのG/T3値が所定の範囲よりも小さい場合(比較例2)には、摩擦によるピンホールが発生しやすいことがわかった。さらに、前記機能性樹脂を含有する層とシーラント樹脂を含有する層とを備えている多層延伸フィルムであっても、前記機能性樹脂を含有する層A1と前記シーラント樹脂を含有する層Cとが接着性樹脂を含有する層Bを介さずに積層された構造(A1/C)を有し、多層延伸フィルムのG/T3値が所定の範囲よりも小さい場合(比較例4)には、摩擦によるピンホールが発生しやすく、突刺しによるピンホールも発生しやすいことがわかった。
以上説明したように、本発明によれば、突刺しによるピンホールが発生しにくいだけでなく、摩擦によるピンホールも発生しにくい多層延伸フィルムを得ることが可能となる。したがって、本発明の多層延伸フィルムは、食品、医薬品、日用品等の各種分野における、各種容器の蓋材、ピロー包装材、パウチ用包装材等として有用であり、特に、真空包装材として有用である。