(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016095
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】路面データ処理装置、路面データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20250124BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20250124BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
G01B11/30 W
E01C23/01
G08G1/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119141
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 近邦
(72)【発明者】
【氏名】安井 嘉文
【テーマコード(参考)】
2D053
2F065
5H181
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053AA33
2D053AA34
2D053AB06
2D053FA03
2F065AA49
2F065CC40
2F065DD06
2F065FF09
2F065GG04
2F065HH05
2F065MM06
2F065PP22
2F065QQ16
2F065QQ41
2F065SS13
2F065TT03
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC12
5H181CC24
5H181EE02
5H181EE11
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF10
(57)【要約】
【課題】舗装種別を容易に判別することのできる路面データ処理装置、路面データ処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置は、道路の路面の各地点の高さが計測された路面データを取得する取得手段と、路面データを解析して路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析手段と、凹凸指標値の大きさに応じて道路の舗装種別を判定する判定手段と、を備えている。凹凸解析手段は、路面データのうち所定の高周波数成分に基づいて凹凸指標値を算出してもよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の路面の各地点の高さが計測された路面データを取得する取得手段と、
前記路面データを解析して、前記路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析手段と、
前記凹凸指標値の大きさに応じて前記道路の舗装種別を判定する判定手段と、
を備える、路面データ処理装置。
【請求項2】
前記凹凸解析手段は、前記路面データのうち所定の高周波数成分に基づいて前記凹凸指標値を算出する、請求項1記載の路面データ処理装置。
【請求項3】
前記凹凸解析手段は、前記路面データにおける前記高さの分布を周波数領域に変換し、当該周波数領域における所定のカットオフ周波数以上の前記高周波数成分を畳み込み積分して、前記高さの分布の標準偏差を算出することで、前記凹凸指標値を算出する、請求項2記載の路面データ処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記凹凸指標値が所定の凹凸基準値未満である場合に前記道路が密粒舗装であると判定し、前記凹凸指標値が前記凹凸基準値以上である場合に前記道路がポーラス舗装であると判定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の路面データ処理装置。
【請求項5】
前記凹凸解析手段は、前記道路の延在方向に沿って連続する複数の判定単位領域を設定し、
前記判定手段は、前記複数の判定単位領域のそれぞれについて前記舗装種別を判定し、前記路面データを同一の前記舗装種別が連続する区間に区分する、
請求項1記載の路面データ処理装置。
【請求項6】
前記区間のそれぞれを当該区間の前記舗装種別に応じて予め定められたパラメータを用いて解析することによって、前記路面においてひび割れが生じているひび割れ地点を検出するひび割れ検出手段、
を備える請求項5記載の路面データ処理装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記各地点の輝度を含んだ前記路面データを取得し、
当該路面データ処理装置は、前記路面データが示す前記輝度を解析して前記路面の明るさ指標値を算出する明るさ解析手段を備え、
前記判定手段は、前記明るさ指標値が所定の明るさ基準値以下である場合に、前記判定を行う、
請求項1記載の路面データ処理装置。
【請求項8】
道路の路面の各地点の高さが計測された路面データを取得する取得ステップ、
前記路面データを解析して、前記路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析ステップ、
前記凹凸指標値の大きさに応じて前記道路の舗装種別を判定する判定ステップ、
を含む路面データ処理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
道路の路面の各地点の高さが計測された路面データを取得する取得手段、
前記路面データを解析して、前記路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析手段、
前記凹凸指標値の大きさに応じて前記道路の舗装種別を判定する判定手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、路面データ処理装置、路面データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路網が膨大な距離に広がっていくのにしたがって、これらの損傷や老朽化への対応が増大している。損傷や老朽箇所を補修するために、効率よくこれらを検出する要求も高まっている。
【0003】
従来、走行する車両から道路面を撮影して道路面の異常を検出する技術がある。特許文献1では、走行する車両から光切断法により計測した道路面の高さに基づいて路面のひび割れを検出し、ひび割れの三次元位置を示す三次元ひび割れ図を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、道路の舗装には複数の種別がある。これらに対して画一的な基準で異常を検出しようとすると、検出漏れが生じたり、誤検出をしたりする可能性が高まる。したがって、異常の検出基準は、道路の舗装種別に応じて変更される。しかしながら、実際の計測結果から検出基準を変更するためには、舗装種別が特定される必要がある。従来、舗装種別を手作業で入力設定することにより、膨大な手間を要していた。
【0006】
この発明の目的は、舗装種別を容易に判別することのできる路面データ処理装置、路面データ処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示は、
道路の路面の各地点の高さが計測された路面データを取得する取得手段と、
前記路面データを解析して、前記路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析手段と、
前記凹凸指標値の大きさに応じて前記道路の舗装種別を判定する判定手段と、
を備える、路面データ処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に従うと、舗装種別を容易に判別することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】舗装種別の識別について説明する図表である。
【
図3】凹凸の度合の評価領域の設定について説明する図である。
【
図7】ひび割れ検出処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の路面データ処理装置である情報処理装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0011】
情報処理装置1は、制御部11と、記憶部12と、入出力インターフェイス13(I/F)と、表示部14と、操作受付部15などを備える。
【0012】
制御部11は、情報処理装置1の動作を統括制御する。制御部11は、演算処理を行うプロセッサを有する。プロセッサは、単一の汎用CPU(Central Processing Unit)であってもよいし、複数のCPUが並列に又は用途などに応じて独立に演算処理を行うものであってもよい。プロセッサには、特定の演算処理や画像処理などに特化したものが含まれていてもよい。制御部11は、記憶部12からプログラム121などを読み込んで実行することで各種制御処理を行う。
【0013】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)と不揮発性メモリとを有し、各種データを記憶する。RAMは、制御部11に作業用のメモリ空間を提供し一時データを記憶する。不揮発性メモリは、プログラム121や設定データなどを記憶保持する。不揮発性メモリは、例えば、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などであるがこれに限られない。記憶部12は、ROM(Read Only Memory)を有していてもよい。ROMには、初期制御プログラムなどが記憶され得る。
【0014】
入出力インターフェイス13は、情報処理装置1の外部(周辺機器を含む)との間でデータの入出力を行う。入出力インターフェイス13は、接続端子131及び通信部132を有する。接続端子131には、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子やLAN(Local Area Network)コネクタなどが含まれる。通信部132は、例えば、TCP/IPなどのLANに係る通信規約(プロトコル)に従って通信を制御する。
【0015】
周辺機器としては、補助記憶装置であるデータベース装置21、並びにCDROM、DVD及びBlu-ray(登録商標)などの可搬型記憶媒体(光学ディスク)を読み取る光学読取装置22などが含まれていてもよい。また、可搬型記憶媒体に磁気テープが含まれ、この磁気テープを読み取る読取装置が周辺機器に含まれていてもよい。
【0016】
入出力インターフェイス13を介して情報処理装置1が外部から取得可能なデータには、道路高さ計測データ201(路面データ)が含まれる。道路高さ計測データ201は、走行車両に搭載された計測装置により路面に対して照射されたレーザ光の反射光に基づいて光切断法により計測、算出された道路の路面高さのデータが、車両の位置データ及び車両の姿勢データと統合されて、路面の3次元高さの分布データとされたものである。データベース装置21又は可搬型記憶媒体には、道路高さ計測データ201に対応付けられて、計測対象の道路の名称、幅、車線数といった情報が記憶されていてもよい。
【0017】
表示部14は、制御部11の制御に基づいて表示画面に表示を行う。表示画面は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイなどであるが、これらに限られるものではない。
【0018】
操作受付部15は、外部からの入力操作を受け付けて、入力操作に応じた操作信号を制御部11へ出力する。操作受付部15は、例えば、キーボードとポインティングデバイスなどを含む。ポインティングデバイスは、マウスであってもよい。
表示部14及び/又は操作受付部15は、情報処理装置1の周辺機器であって、上記制御部11、記憶部12及び入出力インターフェイス13を含む情報処理装置1の本体(コンピュータ)に取り付けられるものであってもよい。
【0019】
次に、道路高さ計測データ201について説明する。
上記のように、計測装置の路面計測部は、車両の走行方向に対して垂直な道路の幅方向に延びる直線状のレーザ光を照射して、その反射光を撮影し、光切断法により反射位置を特定することで、計測測線に沿った路面の高さ分布を得る。走行車両の位置及び姿勢に基づいて計測測線の地理的位置が定まるので、高さ分布が得られた道路上の位置が特定される。このような高さ分布の特定が、車両の走行中に適宜な時間間隔で行われることで、道路の路面の各地点の高さ分布、すなわち3次元位置の分布が高精度で得られる。特に、このような光切断法による計測は、レーザ光を照射しての計測であるので、レーザ光の照射を行わない通常の撮影による計測と比較して、汚れや影などの外乱によって路面に生じる陰影の影響を受けにくく高精度な解析が可能となる。道路高さ計測データ201は、この道路面の3次元位置の分布データである。
【0020】
走行車両の位置は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)に係る測位衛星からの電波を受信して地球表面における絶対位置を算出する衛星測位により特定される。走行車両の姿勢は、走行車両(計測装置)の道路面に平行な面内での回転、すなわち車両の向き、及び道路面に垂直な方向を含む面内における回転、すなわち車両の傾きを計測することで特定される。これらの計測は、例えば、直交する3軸方向の加速度を計測する加速度センサ、及び直交する3軸方向の角速度を計測するジャイロセンサを用いて行われればよい。
【0021】
このような、レーザ光を用いた光切断法によれば、水平方向に数mmスケール、例えば4mm四方ごとに、高さ分解能が1mm以下の精度で高度分布が得られる。したがって、この光切断法は、微小なひび割れや窪みなども検出することができる。さらに、本実施形態では、後述のように、ポーラスアスファルト舗装における凹凸度合を適切に定量評価する必要があるので、高さ分解能は、ひび割れの検出に必要な精度よりも更に高い必要がある。例えば、計測装置による高さ分解能は、ポーラスアスファルト舗装(ポーラス舗装)における骨材のサイズ(例えば、最大径が5~20mm程度)よりも十分に高く、0.5mm以下である。
【0022】
道路面の舗装材の材質によって、路面の性状が異なるので、この性状に応じてひび割れの大きさも異なる。舗装材としては、コンクリート及びアスファルトが広く用いられている。アスファルト舗装は、大きく分けて、骨材のサイズに応じて密粒アスファルト舗装(密粒舗装)と、ポーラスアスファルト舗装(ポーラス舗装)とがある。ポーラスアスファルト舗装は、その排水性の良さなどから、透水性舗装、排水性舗装、又は高機能舗装とも呼ばれる。
【0023】
アスファルト舗装では、上記骨材のサイズに応じて表面の凹凸に大きな差がある。ポーラスアスファルト舗装は、その骨材の大きさに応じてひび割れがない正常な状態であっても凹凸が大きい。また、生じたひび割れは、軽微であっても骨材の隙間に沿って広くかつ深くなる。一方、密粒アスファルト舗装では、骨材が小さいので、ひび割れがない正常な状態では凹凸が小さい。また、ひび割れが生じても、軽微な状態では、骨材の隙間に沿ってひび割れが狭くかつ浅い。その結果、ひび割れを一律の基準で検出しようとすると、密粒アスファルト舗装ではひび割れを見逃しやすく、ポーラスアスファルト舗装では正常な部分をひび割れと誤認定しやすくなる。コンクリート舗装では、凹凸の大きさは、密粒アスファルト舗装とポーラスアスファルト舗装の中間程度又は密粒アスファルト舗装程度に小さい。したがって、ひび割れの検出では、舗装の種別ごとに検出の基準値を変更する必要がある。
【0024】
舗装種別に応じて基準値を変更するためには、道路面の高さ分布を計測している各位置の舗装の種別が特定されていなければならない。本実施形態では、上記路面の凹凸の大きさなどに着目して、各路面の舗装の種別を特定して、舗装の種別に応じた基準値を設定したうえで、ひび割れの検出を行う。
【0025】
図2には、舗装種別の識別について説明する図表である。
アスファルト舗装とコンクリート舗装とでは、反射光の明るさが大きく異なる。したがって、制御部11は、判定手段として、撮影画像における明るさの違いに基づいて、アスファルト舗装とコンクリート舗装とを区別する。本実施形態では、一定の強度のレーザ光を照射しているので、反射光強度は材質ごとに概ね一定である。明るさは、輝度として表現され得る。輝度は、例えば、最小値(黒色)を0、最大値(白色)を255とする256階調で表されて、上記の道路高さ計測データ201に含まれる。制御部11は、明るさ解析手段として、道路高さ計測データ201を解析し、適宜な範囲(後述の判定単位領域)ごとに輝度値の代表値を明るさ指標値として取得(算出)する。制御部11は、判定手段として、明るさ指標値が基準値よりも大きい場合には、舗装種別をコンクリート舗装と判定し、明るさ指標値が基準値以下の場合には、舗装種別をアスファルト舗装のいずれかであると判定する。
【0026】
また、上記のように、ポーラスアスファルト舗装と密粒アスファルト舗装とでは、表面の凹凸の度合が異なる。したがって、制御部11は、判定手段として、明るさ指標値に基づいて舗装種別がアスファルト舗装のいずれかであると判定された場合に、凹凸の度合を定量的に評価することで、いずれの舗装種別であるかが特定される。上記のように、光切断法による計測は、レーザ光の照射を行わない通常の撮影による計測と比較して、汚れや影などの外乱によって路面に生じる陰影の影響を受けにくく高精度な凹凸解析が可能となる。したがって、光切断法による計測データは、舗装種別の判定にも好適に利用される。
なお、凹凸の度合は、3種類以上に区分されてもよい。例えば、ポーラスアスファルト舗装は、骨材のサイズの差異に応じて更に複数の種類に分割されてもよい。また、コンクリート舗装の場合にも、ポーラスコンクリート舗装を通常のコンクリート舗装から区別してもよい。上記の通り輝度値に基づいてコンクリート舗装を判定した後、当該コンクリート舗装における凹凸の度合がある基準値以上である場合にポーラスコンクリート舗装と判定される。凹凸の度合が基準値未満であれば、通常のコンクリート舗装と判定される。
【0027】
これら舗装種別に応じたひび割れの検出閾値(最小値)がそれぞれ設定される。検出閾値には、深さの検出閾値D1~D3と、長さの検出閾値L1~L3が含まれる。これに加えて、検出閾値には、幅の検出閾値W1~W3が含まれてもよい。上記の通り、ポーラスアスファルト舗装におけるひび割れの検出閾値D1、L1、W1は、それぞれ密粒アスファルト舗装におけるひび割れの検出閾値D2、L2、W2よりも大きい。
【0028】
図3は、凹凸の度合の評価領域の設定について説明する図である。
凹凸の度合は、例えば、道路Wの路面の計測データ(道路高さ計測データ201)のうち、轍などの影響の少ない車線中央付近、すなわちここでは車道中央線Ecと、路側帯の区画線Eeの中間付近における路面の高さ(凹凸)を解析することで求められる。ここでは、例えば、制御部11が取得手段として取得した道路高さ計測データ201に対し、1メートル四方の判定単位領域を道路の延在方向に沿って連続的に並べた判定単位領域群Asを定める。判定単位領域群Asは、適宜な基準位置(舗装種別判定基準位置)から順に判定単位領域As0、As1、As2、…Asiとして特定される。制御部11は、凹凸解析手段として、判定単位領域ごとにそれぞれ路面の高さのばらつきを凹凸の度合として特定する。判定単位領域は、1メートル四方に限られるものではないが、道路面に塗装された標識の幅やマンホールなどの構造物のサイズに比して大きいものであることが好ましい。また、元の計測データにおいて、道路の幅方向と道路の延在方向とで解像度が異なる場合には、低解像度の側に合わせて平均化したデータが用いられてもよい。上記のように水平方向に4mm単位で計測点が並んでいる場合には、1.024メートル四方として、256×256の計測点が各判定単位領域Asiに含まれてもよい。
【0029】
凹凸の度合の評価には、例えば、単位区間における高さのばらつき(標準偏差)を用いることができる。また、凹凸の度合の評価には、平均プロファイル深さ(MPD)が用いられてもよい。ここで、凹凸解析手段は、わだちの影響やゴミ、落ち葉などの影響をなるべく排除して標準偏差を算出する。これらわだち、ゴミや落ち葉などは、舗装路面の凹凸に比して波長が長い。したがって、凹凸解析手段は、路面の凹凸に比して波長の長い成分(所定の低周波数成分)を除いて、すなわち路面の凹凸の幅に対応する所定の高周波数成分に基づいて凹凸を解析する。低周波数成分を除去するフィルタリング(高域通過フィルタ)は、フーリエ変換により空間領域から周波数領域に変換して行われる。上記のように、各判定単位領域Asi内の計測点の数が2のべき乗とされることで、効率よく周波数領域へ変換される。その後、標準偏差の算出は、周波数領域でそのまま畳み込み積分により行われることで、演算の負荷が軽減される。すなわち、二次元周波数空間において、カットオフ周波数に対応するインデックスをkとして、標準偏差σは、以下の数式1の通り、M行×N列の周波数領域においてインデックスが「k~M-k」、「k~N-k」の範囲、すなわち、カットオフ周波数以上の範囲のみで求められる。
σ=((NM-1)-1Σu=k~N-kΣv=k~M-kAs(u、v)・As(N-u、M-v))1/2 … (数式1)
【0030】
凹凸指標値の基準値(凹凸基準値)が適切に設定されることで、制御部11は、判定手段として、舗装種別を判定する。判定手段は、凹凸指標値がこの基準値以上の場合には、ポーラスアスファルト舗装と判定し、凹凸指標値が基準値よりも小さい場合には、密粒アスファルト舗装と判定する。舗装種別の切り替わりは、暫定的な工事個所を除いて基本的に道路の延在方向に沿って生じる。したがって、判定単位領域ごとに凹凸指標値に応じて判定されたアスファルト舗装の種別は、評価された判定単位領域を含む幅方向全体に対して適用される。なお、対応する2車線などが中央分離帯などにより完全に分離している部分などでは、当該2車線を別の道路として各々別個に舗装種別が判定されてもよい。
【0031】
しかしながら、上記のように、道路面に標識やマンホールなどの障害物があると、凹凸度合が大きく影響を受けて、誤判定され得る。一方で、舗装の種別は、通常、判定単位領域に比して十分に大きいスケール、例えば、十~数十メートル又はそれ以上の距離間隔で変化するので、同一の判定が連続する判定単位領域Asiである程度継続することが想定される。すなわち、上記延在方向に連なる判定単位領域Asiにおいて単発的に又は少ない数のみがその前後と異なる舗装の種別と判別された場合には、上記障害物の影響による誤認定と判定することができる。
【0032】
また、このような誤認定を避けるために、本実施形態では、判定対象の判定単位領域Asjを含んで連続する複数の判定単位領域Asiをまとめた判定領域Ajにおける凹凸指標値の代表値により、当該判定対象の判定単位領域Asjにおける舗装の種別を判定する。判定対象の判定単位領域Asjは、判定領域Ajの代表位置として扱われてもよい。例えば、判定対象の判定単位領域Asjに対して前後に5つずつの判定単位領域Asi(j-5≦i≦j+5)を含んだ合計11個の判定単位領域Asiの集合を判定領域Ajとして定める。この判定領域Ajに含まれる各判定単位領域Asiの凹凸指標値の代表値、例えば、平均値又は中央値などを用いて、判定単位領域Asj(判定領域Ajの代表位置)の舗装の種別が判定される。このようにして、連続して同一の判定(ポーラスアスファルト舗装)が得られた複数の判定単位領域Asiを含むポーラスアスファルト舗装の区間と、連続して同一の判定(密粒アスファルト舗装)が得られた複数の判定単位領域Asiを含む密粒アスファルト舗装の区間とが区分される。判定の対象とする判定単位領域Asiが一つずつずれていくので、判定領域Aj(j=0、1、2…)に含まれる判定単位領域Asiの凹凸指標値が、例えば、FIFO(First-in First-Out)により1つずつ追加、削除されていけば、容易に適切に保持されて代表値が求められ得る。
明るさ指標値についても同じように、判定領域Ajに含まれる複数(11個)の判定単位領域Asiの明るさ指標値の代表値に基づいて、判定対象の判定単位領域Asjがアスファルト舗装かコンクリート舗装かについての判定がなされればよい。
【0033】
図4は、舗装種別の判定の第1の例を示す図である。
図4(a)において、車道中央線Ecと一方の路側帯の区画線Eeとの中間付近に沿って、判定単位領域群Asが伸びている。判定対象のある判定単位領域Asoに対し、道路の延在方向に±5個ずつの11個の連続した判定単位領域Asiの集合が、判定単位領域Asoに対応付けられる判定領域Aоとして定められている。
【0034】
図4(b)は、各判定単位領域Asо及び当該判定単位領域Asоに対応する判定領域Aоの明るさ指標値(輝度値の代表値)及び凹凸指標値を道路の延在方向の位置(距離)に対して示した図である。
例えば、判定単位領域Asоがポーラスアスファルト舗装領域Paと密粒アスファルト舗装領域Pbとの境界線B上に位置している場合、短破線で示す各判定単位領域Asоの明るさ指標値は、境界線Bを挟んで変化せず、長破線で示す基準値Lthより低い。これに応じて、実線で示す各判定領域Aоの明るさ指標値(代表値)も基準値Lthより低いままである。したがって、各判定領域Aоが対応付けられている判定単位領域Asоは、いずれもコンクリート舗装の領域ではないと判定される。基準値Lthは、照射光の強さ及び撮影画像の感度などに依存し得るが、例えば、上記256階調の輝度値に対して200などとされる。
一方、短破線で示す各判定単位領域Asоの凹凸指標値は、境界線Bを挟んでポーラスアスファルト舗装領域Paで、密粒アスファルト舗装領域Pbよりも相対的に高くなっている。すなわち、境界線Bを挟んで凹凸指標値は、明確に異なっている。これに応じて、実線で示す各判定領域Aоの凹凸指標値(代表値)は、境界線Bの一方で密粒アスファルト舗装領域Pbの平均的な値から徐々に基準値Fthまで上昇し、更に、境界線Bの他方で基準値Fthからポーラスアスファルト舗装領域Paの平均的な値まで上昇する。したがって、境界線Bの左右での指標値がそれぞれの領域を代表するものであることが分かる。凹凸指標値と長破線で示す適宜な基準値Fthとの大小関係により、いずれのアスファルト舗装であるかの識別が可能である。基準値Fthは、例えば、0.8mmなどである。
【0035】
判定単位領域Asоについて特定された舗装種別の結果は、当該判定単位領域Asоを含み道路の幅方向について全体(全幅)の範囲Cの舗装種別として定められる。すなわち、舗装種別が幅方向について複数混在することは、ここでは想定されない。
【0036】
図5は、舗装種別の判定の第2の例を示す。判定単位領域群Asの設定は、上記第1の例と同一である。
図5(a)に示すように、この第2の例では、2本の境界線B1、B2があり、境界線B1、B2の間がコンクリート舗装領域Pcとなっている。境界線B1の左側及び境界線B2の右側は、それぞれ密粒アスファルト舗装領域Pbである。
【0037】
図5(b)に示すように、コンクリート舗装領域Pcでは、各判定単位領域Asоにおける明るさ指標値(短破線)が密粒アスファルト舗装領域Pbよりも顕著に高い値で継続している。境界線B1、B2間は8m程度あり、これに伴って、実線で示した判定領域Aの明るさ指標値も長破線で示した基準値Lthより大きくなっている。したがって、明るさ指標値の上昇が、局所的な障害物などによるものではなく、舗装種別の連続的な変化に応じたものであることが特定される。
【0038】
一方で、凹凸指標値は、境界線B1、B2を跨いで顕著な変化が見られず、基準値Fthよりも低いままである。各判定領域Aоにおける凹凸指標値の代表値も、基準値Fthより低い状態で継続している。コンクリート舗装領域Pcの凹凸指標値と密粒アスファルト舗装領域Pbの凹凸指標値との差は、系統的には定まらないので、上記のように明るさ指標値が基準値Lthよりも大きい場合には、凹凸指標値を舗装種別の判別に考慮する必要はない。
【0039】
図6は、舗装種別の判定の第3の例を示す。第3の例では、判定単位領域群Asは、上記第1の例及び第2の例とは反対側の車線に設定されているが、設定のしかたは同一である。
図6(a)に示すように、第3の例では、舗装種別は全体で密粒アスファルト舗装であるが、路面上に横断歩道E1及び停止線E2などの道路標識(路面標示)が示されている。
【0040】
路面に形成される道路標識は、白色又は黄色であって光の反射率が高く、この道路標識を含む判定単位領域Asiにおける明るさ指標値は、上昇しやすい。
図6(b)に示すように、横断歩道E1又は停止線E2を含む判定単位領域Asоの明るさ指標値(短破線)は、局所的に高くなって、基準値Lthを超えている。しかしながら、停止線E2を含む判定単位領域Asоは1つのみであり、横断歩道E1を含む判定単位領域Asоも4つ(うち2つは一部のみ)である。したがって、この領域、例えば、
図6(a)における判定単位領域Asoに対応する判定領域Aоにおける明るさ指標値(実線)は、基準値Lthを超えない。すなわち、これらの判定単位領域Asоは、対応する判定領域Aоの指標値に基づいて、コンクリート舗装とは誤認定されない。
【0041】
以上のように、反射光の明るさ(輝度値)及び凹凸の度合(凹凸指標値)に基づいて舗装の種別が判定されると、判定された舗装の種別に応じて予め定められたひび割れの検出閾値(パラメータ)が取得される。制御部11は、ひび割れ検出手段として、取得された検出閾値により各走査による線状の計測点群(計測測線)において他点よりも検出閾値以上高さの低い点をひび割れ地点として検出する。なお、路面の高さが相対的に低い点は、道路面自体の傾きや、わだちなどによる凹凸によるものも含まれ得る。そこで、制御部11は、ひび割れの判定対象地点の周囲の所定範囲内における平均高さ(わだちによる凹凸を除去できる程度の広さに定めた範囲での移動平均値)を当該判定対象地点の高さから差し引いてから検出閾値との比較を行う。これにより、道路面の傾きやわだちなどの緩やかな高さ変化が検出から除外される。
【0042】
ひび割れは、複数の計測地点にわたって連続することが多い。このような連続したひび割れ地点は、同一グループ(ひび割れグループ)として特定、分類される。分類は、例えば、あるひび割れ地点から基準距離以内に他のひび割れ地点があるか否かによって判別される。基準距離は、例えば、予め15mmに定められる。基準距離内に他のひび割れ地点があるひび割れ地点は、当該他のひび割れ地点(複数ある場合にはいずれとも)と同一のグループとされる。このようにグループ化されたひび割れのうち、長さ又はひび割れ地点の数が基準より小さいものに属するひび割れ地点については、ひび割れ検出点から除外してもよい。
【0043】
ひび割れの検出結果は、表示部14などにより表示される。道路面の各計測点の三次元位置が任意の視点から見た二次元面に投影されて、三次元ひび割れ図が生成されて、この三次元ひび割れ図が表示画面に表示される。あるいは、単純に上方から見た平面図(平面直角座標系)のみが表示可能であってもよい。また、道路自体やその周囲の可視光画像が保持されている場合には、これらの画像を重ねて投影、表示させることもできる。このときに、上記で特定されたひび割れグループが各々適宜な色でハイライト表示されてもよい。また、吹き出し表示などにより、各ひび割れグループのひび割れに係る特徴量、例えば、ひび割れ深さ及び幅の最大値や長さなどが表示可能であってもよい。
【0044】
図7は、本実施形態の情報処理装置1で制御部11(取得手段、凹凸解析手段、判定手段、ひび割れ検出手段)が実行するひび割れ検出処理の制御手順を示すフローチャートである。
本実施形態の路面データ処理方法を含むひび割れ検出処理の制御内容は、プログラム121に含まれ、ひび割れ検出対象の道路高さ計測データ201全体をファイル指定する又は道路高さ計測データ201内の一部の領域を指定するとともにユーザによる操作受付部15への実行命令の入力操作を受け付けることで実行される。
【0045】
取得手段は、指定されたファイル又は領域の道路高さ計測データ201を取得する(ステップS1;取得ステップ)。凹凸解析手段は、舗装種別判定基準位置を設定する(ステップS2)。具体的異は、凹凸解析手段は、取得した道路高さ計測データ201における道路の延在方向の始端を舗装種別判定基準位置に定める。
【0046】
凹凸解析手段は、判定単位領域及び判定領域を設定する(ステップS3)。具体的には、凹凸解析手段は、取得した道路高さ計測データ201において、道路の幅方向の中央のデータを中心に幅約1m(例えば、1.024m)の帯状領域を定め、舗装種別判定基準位置を起点に帯状領域を道路の延在方向に約1m(例えば、1.024m)間隔で分割して判定単位領域Asi(i=0、1、2、…)を設定する。そして、凹凸解析手段は、判定対象の判定単位領域Asj(i=5、6、7…)を定めるとともに、各判定単位領域Asjについて、当該判定単位領域Asj及びその前後5個ずつ合計11個の判定単位領域Asiの集合を判定領域Ajと定める。これにより、車線の中央付近に幅約1mの判定単位領域及び判定領域が設定される。
【0047】
凹凸解析手段は、判定単位領域の明るさ指標値を算出し、判定単位領域に対応する判定領域内の明るさ指標値の代表値を算出する(ステップS4)。上記のように、明るさ指標値は輝度値であり、判定単位領域内の各計測点における輝度値の代表値である。判定領域の明るさ指標値は、各判定単位領域の代表値の更に代表値である。なお、代表値を算出する前に、明らかなエラーデータなどは除外されてもよい。この場合、除外された点のデータは、周囲の点のデータにより補間されてもよい。
【0048】
凹凸解析手段は、判定単位領域の凹凸指標値を算出し、判定単位領域に対応する判定領域内の凹凸指標値の代表値を算出する(ステップS5)。判定領域の凹凸指標値は、判定領域内の判定単位領域における各凹凸指標値の代表値である。なお、凹凸指標値を算出する前に、判定単位領域内に路面の高さが異常であるエラー値が含まれている場合には、予めこのエラー値を除去してもよい。除外された点のデータは、周囲の点のデータによって補間されてもよい。
【0049】
判定手段は、判定領域について得られた明るさ指標値及び凹凸指標値に応じた舗装種別を判定する(ステップS6)。判定手段は、判定結果の舗装種別と、判定単位領域の位置情報(衛星測位により特定されたもの)とを対応付けて記憶部12又は外部のデータベース装置21などに記憶させる(ステップS7)。なお、判定手段は、同一の舗装種別が複数の判定単位領域について連続する場合に、その先頭及び最後の判定単位領域の座標を対応付けて記憶することで、同一の舗装種別が連続する区間をより容易に知得するための区分情報を取得してもよい。
【0050】
ひび割れ検出手段は、判定された舗装種別に応じたひび割れ検出の検出閾値を設定する(ステップS8)。検出閾値は、上記のように、(D1、L1、W1)、(D2、L2、W2)、(D3、L3、W3)のいずれかの組である。ひび割れ検出手段は、計測装置による上記判定単位領域を含む計測測線に沿った高さ分布に基づいて、ひび割れを検出する(ステップS9)。上記のように、制御部11は、前後合わせて複数本の計測測線に沿った高さ分布に基づいてひび割れを検出してもよい。ひび割れ検出手段は、検出されたひび割れ3次元位置を記憶部12又はデータベース装置21などに記憶させる(ステップS10)。
【0051】
制御部11は、ひび割れ検出の対象範囲全体でひび割れ検出が終了したか否かを判別する(ステップS11)。ひび割れ検出が終了していないと判別された場合には(ステップS11;NO)、制御部11の処理は、ステップS3に戻る。ひび割れ検出が終了したと判別された場合には(ステップS11;YES)、制御部11は、ひび割れの検出結果を表示部14により表示させる(ステップS12)。あるいは、制御部11は、検出結果を外部の表示装置に表示させる表示制御データを生成して当該外部の表示装置へ出力してもよい。そして、制御部11は、ひび割れ検出処理を終了する。
ステップS2~S5の処理が、本実施形態の路面データ処理方法における凹凸解析ステップに含まれる。
ステップS6~S7の処理が、本実施形態の路面データ処理方法における判定ステップに含まれる。
ステップS8~S10の処理が、本実施形態の路面データ処理方法におけるひび割れ検出ステップに含まれる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、凹凸指標値を算出する際に、周波数領域でハイパスフィルタリングをしたが、これに限られない。例えば、空間領域データを平滑化したデータを元の空間領域データから差し引くことで、高周波数成分のデータを抽出してもよい。データの平滑化は、周波数領域でローパスフィルタをかけることで行われてもよいし、対象地点に対してそれぞれ周囲の所定範囲の移動平均値を算出することで行われてもよい。
【0053】
また、高さの標準偏差を求める際に、周波数領域で畳み込み積分を行わなくてもよい。単純にハイパスフィルタリング後のデータを逆フーリエ変換して空間領域に戻し、判定単位領域ごとに高さの標準偏差を算出してもよい。
【0054】
また、二次元フーリエ変換の代わりにウェーブレット変換を用いて周波数領域への変換や周波数フィルタリングなどが行われてもよい。
【0055】
また、上記のひび割れ検出では、単純に路面の高さの局所的な低下をひび割れの検出閾値と比較したが、これに限られない。例えば、ひび割れの検出に機械学習モデルが利用されてもよい。機械学習モデルは、上記のように舗装種別に応じて各々生成されて用いられてもよいし、舗装種別に応じて適宜重み付けられる複数の組み合わせであってもよい。あるいは、機械学習モデルへの入力変数に舗装種別又は上記の明るさ指標値及び凹凸指標値が含まれてもよい。また、凹凸指標値の代わりに舗装種別を表す識別値などが入力変数に含まれてもよい。この場合には、ひび割れ検出時に別途局所的な平均を求めて差し引くといった前処理がなされなくてもよい。
【0056】
また、上記では、判定単位領域を道路の延在方向に一列に並べたが、二列以上が並列に並べられてもよい。道路の延在方向の各範囲について、複数の判定単位領域の凹凸指標値が併用されて、舗装種別の判定が行われてもよい。
【0057】
また、上記では、11個の判定単位領域Asiを組み合わせた判定領域Aiにおける凹凸指標値として、当該11個の判定単位領域Asiの凹凸指標値の代表値、例えば、平均値又は中央値を用いるものとして説明したが、これに限られない。例えば、11個の凹凸指標値を、中央の判定単位領域Asiからの距離に応じて重み付けして、重み付け平均を算出してもよい。
【0058】
また、判定領域における凹凸指標値(代表値)などを利用する代わりに、個々の判定単位領域において判定された舗装種別の連続性に基づいて、舗装種別の境界が特定されてもよい。すなわち、所定の数以上連続して同一の舗装種別と判定された部分を当該舗装種別の区間であると判定してもよい。
【0059】
また、以上の説明では、本発明の舗装種別の判定及びひび割れの検出制御に係るプログラム121を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDD、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなる記憶部12を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記憶媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【0060】
以上のように、本実施形態の路面データ処理装置である情報処理装置1は、制御部11を備える。制御部11は、取得手段として、道路の路面の各地点の高さが計測された道路高さ計測データ201を取得する。制御部11は、凹凸解析手段として、道路高さ計測データ201を解析して、路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する。制御部11は、判定手段として、凹凸指標値の大きさに応じて道路の舗装種別を判定する。
この情報処理装置1は、道路の高さ計測データ201を用いて容易に道路の舗装種別を判定することができる。したがって、手動で道路の舗装種別を入力設定する必要がない。また、別途舗装種別を判定するためのデータを追加する必要もないので、手間がかからない。さらに、この結果、情報処理装置1は、舗装種別の判定結果に基づいて、舗装種別に応じたひび割れの検出基準を定めて、より精度よくひび割れを検出することができる。
【0061】
また、凹凸解析手段は、道路高さ計測データ201のうち所定の高周波数成分に基づいて凹凸指標値を算出してもよい。これにより、情報処理装置1は、舗装種別の判定において、わだちや路面上の落ち葉などの影響を低減することができる。
【0062】
また、凹凸解析手段は、道路高さ計測データ201における路面の高さの分布を周波数領域に変換し、当該周波数領域における所定のカットオフ周波数以上の高周波数成分を畳み込み積分して、高さの分布の標準偏差を算出することで、凹凸指標値を算出してもよい。このように、情報処理装置1は、ハイパスフィルタリング後の周波数領域データを逆フーリエ変換して空間領域のデータに戻す必要がないので、より手間をかけずに凹凸指標値を得ることができる。
【0063】
また、判定手段は、凹凸指標値が所定の凹凸基準値未満である場合に道路が密粒アスファルト舗装であると判定し、凹凸指標値が凹凸基準値以上である場合に道路がポーラスアスファルト舗装であると判定する。すなわち、情報処理装置1は、凹凸指標値により容易に密粒アスファルト舗装とポーラスアスファルト舗装とを分類することができる。したがって、判定が非常に容易である。
【0064】
また、凹凸解析手段は、道路の延在方向に沿って連続する複数の判定単位領域を設定し、判定手段は、複数の判定単位領域のそれぞれについて舗装種別を判定し、道路高さ計測データ201を同一の舗装種別が連続する区間に区分することができる。このように、道路を舗装種別が同一の領域ごとに区別することができるので、情報処理装置1は、容易に舗装状態の分布を特定することができる。これにより、情報処理装置1は、ひび割れの検出も舗装種別の区分ごとに容易にまとめて判断することができる。
【0065】
また、制御部11は、ひび割れ検出手段として、上記区間のそれぞれを当該区間の舗装種別に応じて予め定められた検出閾値(パラメータ)を用いて解析することによって、路面においてひび割れが生じているひび割れ地点を検出してもよい。情報処理装置1は、このように容易に舗装種別を区分したうえで、各々ひび割れ検出をすることができる。したがって、情報処理装置1は、舗装種別に応じたひび割れのサイズに従って、誤検出や検出漏れを低減させることができる。
【0066】
また、取得手段は、各地点の輝度を含んだ道路高さ計測データ201を取得する。制御部11は、明るさ解析手段として、道路高さ計測データ201が示す輝度を解析して路面の明るさ指標値を算出する。判定手段は、明るさ指標値が所定の明るさ基準値以下である場合に、判定を行う。このように、情報処理装置1は、路面の反射光強度に応じて舗装種別がアスファルト舗装であるかコンクリート舗装であるかを判定することができる。このような判定により、アスファルト舗装であるものを抽出したうえで、上記のように密粒アスファルト舗装かポーラスアスファルト舗装かを判定するので、コンクリート舗装の区間を誤認定するのを避けることができる。
【0067】
また、本実施形態の路面データ処理方法は、以下のステップを含む。(1)道路の路面の各地点の高さが計測された道路高さ計測データ201を取得する取得ステップ。(2)道路高さ計測データ201を解析して、路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析ステップ。(2)凹凸指標値の大きさに応じて道路の舗装種別を判定する判定ステップ。
この路面データ処理方法によれば、道路の高さ計測データ201を用いて容易に道路の舗装種別を判定することができる。したがって、道路の各計測地点に対応する舗装種別を容易に取得することができる。特に、ひび割れの検出に用いられるデータのみで舗装種別も判別できるので、他のデータなどを用意して処理する必要がなく、手間が削減される。
【0068】
また、上記路面データ処理方法に係るプログラム121をコンピュータ(制御部11、記憶部12及び入出力インターフェイス13を含む)にインストールして実行することで、特別な構成を必要とせず、かつ手間をかけずに容易に舗装種別を判別することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 情報処理装置
11 制御部
12 記憶部
121 プログラム
13 入出力インターフェイス
131 接続端子
132 通信部
14 表示部
15 操作受付部
21 データベース装置
22 光学読取装置
201 計測データ
【手続補正書】
【提出日】2024-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示は、
道路の路面の各地点の高さが計測された路面データを取得する取得手段と、
前記道路の延在方向に沿って連続する複数の判定単位領域を設定し、前記判定単位領域ごとに前記路面データを解析して、前記路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析手段と、
前記凹凸指標値の大きさに応じて前記道路の舗装種別を判定する判定手段と、
を備え、
前記判定手段は、前記道路の延在方向について、判定対象の前記判定単位領域を含む複数の連続した判定単位領域の前記凹凸指標値に基づいて、前記判定対象の判定単位領域の舗装種別を判定する、
路面データ処理装置である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の路面の各地点の高さが計測された路面データを取得する取得手段と、
前記道路の延在方向に沿って連続する複数の判定単位領域を設定し、前記判定単位領域ごとに前記路面データを解析して、前記路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析手段と、
前記凹凸指標値の大きさに応じて前記道路の舗装種別を判定する判定手段と、
を備え、
前記判定手段は、前記道路の延在方向について、判定対象の前記判定単位領域を含む複数の連続した判定単位領域の前記凹凸指標値に基づいて、前記判定対象の判定単位領域の舗装種別を判定する、
路面データ処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記判定対象の判定単位領域を含む複数の連続した判定単位領域における前記凹凸指標値の代表値を算出し、前記代表値に基づいて前記判定対象の判定単位領域の舗装種別を判定する、請求項1記載の路面データ処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記代表値が所定の凹凸基準値未満である場合に前記判定対象の判定単位領域が密粒舗装であると判定し、前記代表値が前記凹凸基準値以上である場合に前記判定対象の判定単位領域がポーラス舗装であると判定する、請求項2記載の路面データ処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記判定対象の判定単位領域を含む複数の連続した個々の判定単位領域の前記凹凸指標値に基づいて所定の数以上連続して同一の舗装種別と判定した場合に、前記判定対象の判定単位領域を当該舗装種別であると判定する、請求項1記載の路面データ処理装置。
【請求項5】
前記凹凸解析手段は、前記路面データにおける前記高さの分布を周波数領域に変換し、当該周波数領域における所定のカットオフ周波数以上の高周波数成分を畳み込み積分して、前記高さの分布の標準偏差を算出することで、前記凹凸指標値を算出する、請求項1~4のいずれか一項に記載の路面データ処理装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記連続する複数の判定単位領域のそれぞれを前記判定対象に設定して前記舗装種別を判定し、前記路面データを同一の前記舗装種別が連続する区間に区分し、
当該路面データ処理装置は、前記区間のそれぞれを当該区間の前記舗装種別に応じて予め定められたパラメータを用いて解析することによって、前記路面においてひび割れが生じているひび割れ地点を検出するひび割れ検出手段を備える、
請求項1記載の路面データ処理装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記各地点の輝度を含んだ前記路面データを取得し、
当該路面データ処理装置は、前記路面データが示す前記輝度を解析して前記路面の明るさ指標値を算出する明るさ解析手段を備え、
前記判定手段は、前記明るさ指標値が所定の明るさ基準値以下である場合に、前記判定を行う、
請求項1記載の路面データ処理装置。
【請求項8】
道路の路面の各地点の高さが計測された路面データを取得する取得ステップ、
前記道路の延在方向に沿って連続する複数の判定単位領域を設定し、前記判定単位領域ごとに前記路面データを解析して、前記路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析ステップ、
前記凹凸指標値の大きさに応じて前記道路の舗装種別を判定する判定ステップ、
を含み、
前記判定ステップでは、前記道路の延在方向について、判定対象の前記判定単位領域を含む複数の連続した判定単位領域の前記凹凸指標値に基づいて、前記判定対象の判定単位領域の舗装種別を判定する、
路面データ処理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
道路の路面の各地点の高さが計測された路面データを取得する取得手段、
前記道路の延在方向に沿って連続する複数の判定単位領域を設定し、前記判定単位領域ごとに前記路面データを解析して、前記路面の凹凸の度合を表す凹凸指標値を算出する凹凸解析手段、
前記凹凸指標値の大きさに応じて前記道路の舗装種別を判定する判定手段、
として機能させ、
前記判定手段は、前記道路の延在方向について、判定対象の前記判定単位領域を含む複数の連続した判定単位領域の前記凹凸指標値に基づいて、前記判定対象の判定単位領域の舗装種別を判定する、
プログラム。