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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016098
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】既存杭の除去システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
E02D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119146
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】507022617
【氏名又は名称】木田重機興業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】木田 勝治
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050DA03
2D050DB06
(57)【要約】
【課題】地盤に埋設されているコンクリート製の既存杭をより効率的に除去できる既存杭の除去システムおよび方法を提供する。
【解決手段】地盤中の既存杭Pの上端部にケーシング1を外挿した後、ケーシング1と削孔ユニット(ハンマー3やハンマーロッド5など)とを一体化して回転駆動し、ホース10により供給したエアによってハンマー3に上下打撃力を付与して、既存杭Pの上端部に円柱穴Phを形成し、削孔ユニットに代えて切断ユニット16をケーシング1の内部に設置し、円柱穴Phに拡縮ビット17を挿入して、ケーシング1と切断ユニット16とを一体化して回転駆動し、かつ、拡縮ビット17を拡径させて円柱穴Phの周壁を切断して筒状体P1を形成し、拡径状態の拡縮ビット17に筒状体P1を載置して切断ユニット16を上方移動させて筒状体P1をケーシング1の内部から取り出す。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部にケーシングビットを有するケーシングと、このケーシングの外周面を保持してケーシングを回転駆動させる回転駆動装置と、ハンマービットが装着されたハンマーが下端に取付けられたハンマーロッドを有する削孔ユニットと、拡縮移動する拡縮ビットを有する切断ユニットとを備えて、
前記削孔ユニットと前記切断ユニットとが前記ケーシングの内部に選択的に設置される構成にした既存杭の除去システムであって、
前記ケーシングを前記回転駆動装置により回転駆動するとともに下方移動させて、地盤に埋設されている既存杭の上端部に外挿させた状態にした後、
前記削孔ユニットが前記ケーシングの内部に設置された削孔モードでは、前記ケーシングと前記削孔ユニットとを一体化して前記回転駆動装置によりを回転駆動するとともに、前記ハンマーロッドに接続されたホースを通じて供給したエアによって前記ハンマーに上下打撃力を付与しながら、前記ハンマービットにより前記既存杭の上端部に所定深さの円柱穴が形成され、
前記切断ユニットが前記ケーシングの内部に設置された切断モードでは、前記円柱穴に縮径状態の前記拡縮ビットを挿入し、前記ケーシングと前記切断ユニットとを一体化して前記回転駆動装置によりを回転駆動するとともに、前記拡縮ビットを拡径させて前記円柱穴の周壁を切断することで筒状体が形成され、
一体化していた前記ケーシングと前記切断ユニットとを分離させて、拡径状態の前記拡縮ビットに前記筒状体を載置して前記切断ユニットを上方移動させて前記筒状体とともに前記ケーシングの内部から取り出され、
前記削孔モードでの前記円柱穴が形成される工程および前記切断モードでの前記筒状体が形成されて前記ケーシングの内部から取り出される工程が必要回数行われる既存杭の除去システム。
【請求項2】
前記ケーシングの内部で前記ハンマーロッドに外挿されてロッド周方向の回転を規制されつつ上下方向に移動可能なウエイトおよびスリーブ体と、前記ウエイトまたは前記スリーブ体の一方に設置されて前記ハンマーロッドの外周面と前記ケーシングの内周面との間でロッド半径方向に移動可能なライナとを有し、
前記ケーシングが長手方向中途の位置に、前記ケーシングの内周面に突出して周方向に離間して配置された複数の載置部を有し、
前記削孔モードでは、前記スリーブ体が前記ウエイトから下方に吊り下げられた状態で設置され、それぞれの前記載置部に載置された前記スリーブ体に対して前記ウエイトが下方移動することにより、前記ライナがロッド半径方向外側に移動して前記ケーシングの内周面を押圧した状態になって、前記ケーシングと前記削孔ユニットとが一体化する請求項1に記載の既存杭の除去システム。
【請求項3】
前記切断ユニットが外周側に突出して周方向に間隔をあけて配置された複数の連結部を有し、
前記ケーシングが長手方向中途に位置に、それぞれの前記載置部と間隔をあけた下方に前記ケーシングの内周面に突出する係合突起を有し、それぞれの前記載置部と前記係合突起との上下の隙間によって複数の係合溝が形成されていて、
前記切断モードでは、それぞれの前記連結部が前記係合突起に載置された状態で前記ケーシングを一方向に回転駆動することにより、それぞれの前記連結部と対応する位置にある前記係合溝とが嵌合して連結されて、前記ケーシングと前記切断ユニットとが一体化し、
前記切断ユニットと一体化している前記ケーシングを、他方向に回転駆動することにより、それぞれの前記連結部と対応する位置にある前記係合溝との連結が解除されて、一体化していた前記ケーシングと前記切断ユニットとが分離される請求項2に記載の既存杭の除去システム。
【請求項4】
前記ケーシングが複数本のケーシング部を接続することで形成されていて、複数本の前記ケーシング部のうちの1本のケーシング部に、それぞれの前記載置部、前記係合突起およびそれぞれの前記係合溝が形成されている請求項3に記載の既存杭の除去システム。
【請求項5】
ハンマービットが装着されているハンマーが下端に取付けられたハンマーロッドを有する削孔ユニットと、拡縮移動する拡縮ビットを有する切断ユニットとを、下端部にケーシングビットを有するケーシングの内部に選択的に設置して、
回転駆動装置により、前記ケーシングの外周面を保持して回転駆動するとともに下方移動させて、前記ケーシングを地盤に埋設されている既存杭の上端部に外挿させた状態にした後、
前記削孔ユニットを前記ケーシングの内部に設置した削孔モードでは、前記ケーシングと前記削孔ユニットとを一体化して前記回転駆動装置によりを回転駆動するとともに、前記ハンマーロッドに接続されたホースを通じて供給したエアによって前記ハンマーに上下打撃力を付与しながら、前記ハンマービットにより前記既存杭の上端部に所定深さの円柱穴を形成し、
前記切断ユニットを前記ケーシングの内部に設置した切断モードでは、前記円柱穴に縮径状態の前記拡縮ビットを挿入し、前記ケーシングと前記切断ユニットとを一体化して前記回転駆動装置によりを回転駆動するとともに、前記拡縮ビットを拡径させて前記円柱穴の周壁を切断することで筒状体を形成し、
一体化していた前記ケーシングと前記切断ユニットとを分離して、拡径状態の前記拡縮ビットに前記筒状体を載置して前記切断ユニットを上方移動させて前記筒状体とともに前記ケーシングの内部から取り出し、
前記削孔モードでの前記円柱穴を形成する工程および前記切断モードでの前記筒状体を形成して前記ケーシングの内部から取り出す工程を必要回数行う既存杭の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存杭の除去システムおよび方法に関し、さらに詳しくは、地盤に埋設されているコンクリート製の既存杭をより効率的に除去できるシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルディングなどの構造物を支持するために、地盤にはコンクリート製の杭が埋設されている。構造物を取り壊す際には、構造物を支持しているこれらの既存杭も除去する必要がある。従来、地盤に埋設されている既存杭を除去する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【0003】
特許文献1、2では、オーガーを用いて既存杭を上部から順次破砕する方法が提案されている。しかしながら、オーガーによる回転駆動力だけでは、既存杭を粉砕するには多大な時間を要する。また、既存杭に対してオーガーの回転軸が芯振れし易く、安定的に作業を進めるには不利である。
【0004】
特許文献3、4で提案されている方法では、筒状ケーシングの内部で切断刃(切断ビット)を用いて既存杭の除去作業が行われるので、安定的に作業を進めることが可能である。しかしながら、これら文献で提案されている方法では、既存杭を長手方向中途の位置で切断する際に、切断刃(切断ビット)の刃先を既存杭の外周面から内周側に向かって変更させながら切断作業が行われる。このように切断刃(切断ビット)の刃先の向きを変えながら切断作業を行なう場合は、切断装置や切断刃(切断ビット)に過大な負荷が作用するため、既存杭の外径が大きくなると切断が困難になる。また、過大な負荷を回避するために、切断刃(切断ビット)の刃先の向きを変更する速度を遅くすると、切断作業に要する時間が長くなる。それ故、地盤に埋設されているコンクリート製の既存杭をより効率的に除去するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-203040号公報
【特許文献2】特開2019-123993号公報
【特許文献3】特開2005-314871号公報
【特許文献4】特開2008-303642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、地盤に埋設されているコンクリート製の既存杭をより効率的に除去できる既存杭の除去システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の既存杭の除去システムは、下端部にケーシングビットを有するケーシングと、このケーシングの外周面を保持してケーシングを回転駆動させる回転駆動装置と、ハンマービットが装着されたハンマーが下端に取付けられたハンマーロッドを有する削孔ユニットと、拡縮移動する拡縮ビットを有する切断ユニットとを備えて、前記削孔ユニットと前記切断ユニットとが前記ケーシングの内部に選択的に設置される構成にした既存杭の除去システムであって、前記ケーシングを前記回転駆動装置により回転駆動するとともに下方移動させて、地盤に埋設されている既存杭の上端部に外挿させた状態にした後、前記削孔ユニットが前記ケーシングの内部に設置された削孔モードでは、前記ケーシングと前記削孔ユニットとを一体化して前記回転駆動装置によりを回転駆動するとともに、前記ハンマーロッドに接続されたホースを通じて供給したエアによって前記ハンマーに上下打撃力を付与しながら、前記ハンマービットにより前記既存杭の上端部に所定深さの円柱穴が形成され、前記切断ユニットが前記ケーシングの内部に設置された切断モードでは、前記円柱穴に縮径状態の前記拡縮ビットを挿入し、前記ケーシングと前記切断ユニットとを一体化して前記回転駆動装置によりを回転駆動するとともに、前記拡縮ビットを拡径させて前記円柱穴の周壁を切断することで筒状体が形成され、一体化していた前記ケーシングと前記切断ユニットとを分離させて、拡径状態の前記拡縮ビットに前記筒状体を載置して前記切断ユニットを上方移動させて前記筒状体とともに前記ケーシングの内部から取り出され、前記削孔モードでの前記円柱穴が形成される工程および前記切断モードでの前記筒状体が形成されて前記ケーシングの内部から取り出される工程が必要回数行われることを特徴とする。
【0008】
本発明の既存杭の除去方法は、ハンマービットが装着されているハンマーが下端に取付けられたハンマーロッドを有する削孔ユニットと、拡縮移動する拡縮ビットを有する切断ユニットとを、下端部にケーシングビットを有するケーシングの内部に選択的に設置して、回転駆動装置により、前記ケーシングの外周面を保持して回転駆動するとともに下方移動させて、前記ケーシングを地盤に埋設されている既存杭の上端部に外挿させた状態にした後、前記削孔ユニットを前記ケーシングの内部に設置した削孔モードでは、前記ケーシングと前記削孔ユニットとを一体化して前記回転駆動装置によりを回転駆動するとともに、前記ハンマーロッドに接続されたホースを通じて供給したエアによって前記ハンマーに上下打撃力を付与しながら、前記ハンマービットにより前記既存杭の上端部に所定深さの円柱穴を形成し、前記切断ユニットを前記ケーシングの内部に設置した切断モードでは、前記円柱穴に縮径状態の前記拡縮ビットを挿入し、前記ケーシングと前記切断ユニットとを一体化して前記回転駆動装置によりを回転駆動するとともに、前記拡縮ビットを拡径させて前記円柱穴の周壁を切断することで筒状体を形成し、
一体化していた前記ケーシングと前記切断ユニットとを分離して、拡径状態の前記拡縮ビットに前記筒状体を載置して前記切断ユニットを上方移動させて前記筒状体とともに前記ケーシングの内部から取り出し、前記削孔モードでの前記円柱穴を形成する工程および前記切断モードでの前記筒状体を形成して前記ケーシングの内部から取り出す工程を必要回数行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記削孔ユニットによる前記削孔モードでは、回転駆動されるハンマービットと、ハンマーによる上下打撃力によって、既存杭の上端部に迅速に前記円筒状の穴を形成することができる。前記切断ユニットによる前記切断モードでは、切断ユニットに過大な負荷が生じることなく、前記円柱穴の周壁を切断して前記筒状体を形成することができる。そして、前記削孔ユニットおよび前記切断ユニットは、前記ケーシングと一体化することで、軸振れが抑制されて安定的に回転駆動される。したがって、前記削孔モードと前記切断モードとを組合わせることで、太径の既存杭であっても効率的に地盤から除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】既存杭の除去システムの実施形態の全体構成を、ケーシングの内部を透視して正面視で例示する説明図である。
図2】地盤に埋設されている既存杭の上端部にケーシングを外挿した状態を、ケーシングの内部を透視して正面視で例示する説明図である。
図3図1のケーシングの内部に設置された削孔ユニットを正面視で例示する説明図である。
図4図3のハンマーおよびハンマーロッドを例示する説明図であり、図4(A)は上面図、図4(B)は正面図である。
図5図3のウエイトおよびスリーブ体の組み付け状態を正面視で例示する説明図である。
図6図5のウエイトを例示する説明図であり、図6(A)は正面図、図6(B)は底面図である。
図7図5のスリーブ体の周辺を例示する説明図であり、図7(A)は上面図、図7(B)は正面図である。
図8図1の切断ユニットの内部構造を正面視で例示する説明図である。
図9図8の切断ユニットの上面図である。
図10図8のA-A断面図である。
図11図8の拡縮ビットを拡径位置に移動させた状態を例示する説明図である。
図12図11のB-B断面図である。
図13図1のケーシングの内部の拡大図である。
図14図13のウエイトをさらに下方移動させた状態を正面視で例示する説明図である。
図15図14のケーシングを回転駆動するとともにハンマーロッドを下方移動させて既存杭の上端部を削孔し始めた状態を例示する説明図である。
図16図15の削孔工程を所定深さまで進めた状態を例示する説明図である。
図17】削孔工程の終了後に削孔ユニットを上方移動させてケーシングの内部から取り出す状態を例示する説明図である。
図18】削孔ユニットを取り出した図17のケーシングに切断ユニットを挿入した状態を例示する説明図である。
図19図18の切断ユニットをケーシングと一体化する状態を例示する説明図である。
図20】切断ユニットとケーシングとを一体化する過程を上面視で模式的に例示する説明図であり、図20(A)はケーシングの係合溝付近と切断ユニットの連結部とを別々に例示し、図20(B)はそれぞれの連結部を係合突起に載置してケーシングを回転駆動した状態を例示し、図20(C)はそれぞれの連結部が対応する係合溝に嵌合して互いが連結した状態を例示する。
図21図19のケーシングを回転駆動しつつ、既存杭の上端部に形成した削孔に挿入した拡縮ビットを拡径移動させて、既存杭の上端部を切断する状態を例示する説明図である。
図22図21の既存杭の上端部を切断した後に、ケーシングおよび切断ユニットを上方移動させている状態を例示する説明図である。
図23図22のケーシングを反対方向に回転駆動して、一体化していた切断ユニットとケーシングとを分離している状態を例示する説明図である。
図24図23の切断ユニットとともに切断した既存杭の上端部(筒状体)をケーシングの内部から取り出す状態を例示する説明図である。
図25図24のケーシングを回転駆動して下方移動させる状態を例示する説明図である。
図26】ケーシングおよび削孔ユニットを回転駆動して地盤を掘削している状態をケーシングの内部を透視して正面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の既存杭の除去システムおよび方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に例示する既存杭の除去システムの実施形態は、地盤に埋設されているコンクリート製の既存杭Pを除去するために使用される。既存杭Pは一般的には鉄筋コンクリート製である。この除去システムは、円筒状のケーシング1と、このケーシング1の外周面を保持してケーシング1を回転駆動させる回転駆動装置20と、ハンマー3およびハンマーロッド5を含む削孔ユニットと、切断ユニット16とを備えている。削孔ユニットと切断ユニット16とは選択的にケーシング1の内部に設置される構成になっている。図1に例示するように、ハンマー3およびハンマーロッド5を含む削孔ユニットがケーシング1の内部に設置されると削孔モードになり、図18に例示するように、切断ユニット16がケーシング1の内部に設置されると切断モードになる。
【0013】
ケーシング1の下端部には、ケーシングビット2aが周方向に間隔をあけて設けられている。また、ケーシング1の下端部にはケーシング1の内側に突出する載置部2cが周方向に間隔をあけて設けられていて、この載置部2cの下端面にはインサイドカッタ2bが下方に突設されている。
【0014】
図2に例示するようにケーシング1の長手方向中途の位置には、別の載置部2cが複数設けられている。これら載置部2cは、ケーシング1の内周面に突出して周方向に離間して配置されている。ケーシング1の長手方向中途の位置にはさらに、それぞれの載置部2cと間隔をあけた下方位置にケーシング1の内周面に突出する係合突起2dが設けられている。係合突起2dは周方向に連続して円環状に形成されている。それぞれの載置部2cは、下方に位置する係合突起2dに向かって斜めに延在して係合突起2dに接合している。即ち、それぞれの載置部2cと係合突起2dの上面どうしは斜面によって連続している。
【0015】
それぞれの載置部2cと係合突起2dとに挟まれた上下の隙間が係合溝2eになっている。したがって、周方向に延在する複数の係合溝2eがケーシング1の長手方向中途の位置に形成されていて、それぞれの係合溝2aの一端は開口し他端は閉じている。図20(A)に例示するように、この実施形態では周方向に間隔をあけて載置部2cおよび係合溝2eがそれぞれ4個備わっているが、載置部2cおよび係合溝2eは複数備わっていればよい。
【0016】
ケーシング1は、ボルト等の締結手段によって上下に接続される複数のケーシング部1a、1b、1cにより構成されていて、ケーシングビット2aは最下段のケーシング部1aの下端部に設けられている。ケーシング1の長手方向中途の位置にあるケーシング部1bには、それぞれの載置部2cと、係合突起2dと、それぞれの係合溝2eとが形成されている。ケーシング1を構成するケーシング部1a、1b、1cの本数は、3本に限らず、既存杭Pの長さなどに応じて任意の本数にすることができる。
【0017】
回転駆動装置20は、駆動モータ20aと駆動モータ20aにより回転駆動される回転歯車20bと、回転歯車20bとともに回転する複数のチャック片22と、油圧シリンダからなる4本の支持脚21とを有している。複数のチャック片22は、回転駆動装置20を上下に貫通するケーシング1の外周側を囲むように環状に配置されている。それぞれのチャック片22は、配置された環状の半径方向に進退移動して環状を拡縮できるように構成されている。
【0018】
それぞれのチャック片22を、ケーシング1の外周面に向かって移動させることにより、ケーシング1の外周面を保持する。また、支持脚21のシリンダの進退移動により、それぞれのチャック片22は上下移動する。ケーシング1の外周面をそれぞれのチャック片22で保持した状態で、回転駆動装置20を作動させるとケーシング1はその筒軸心を中心にして回転駆動される。この回転駆動装置20により、ケーシング1を一方向(時計回り)に回転駆動することも、他方向(反時計回り)に回転駆動することもできる。
【0019】
図3に例示するように、この実施形態では除去システムはさらに、ケーシング1の内部でハンマーロッド5に外挿されるウエイト8およびスリーブ体12と、ウエイト8またはスリーブ体12の一方に設置されるライナ14とを有している。したがって、この実施形態では、削孔ユニットは、ハンマー3、ハンマーロッド5、ウエイト8、スリーブ体12およびライナ14により構成されている。ライナ14はスリーブ体12に設置されているが、ウエイト8にライナ14を設置された仕様にすることもできる。
【0020】
次に、削孔ユニットを構成するハンマー3、ハンマーロッド5、ウエイト8、スリーブ体12およびライナ14について詳述する。
【0021】
円柱状のハンマー3は、下端部にハンマービット4を有している。ハンマー3は、円筒状のハンマーロッド5の下端に取付けられている。ハンマーロッド5は、複数本のロッドを接続して構成することもできる。
【0022】
ハンマー3には注入路3a、ハンマーロッド5には注入路7aが設けられている。注入路3a、7aにより、ハンマー3の下端からハンマーロッド5の上端部まで連通する注入路が形成されている。ハンマー3の側面には、上下に延在する排出溝3bが形成されている。
【0023】
ハンマーロッド5の上端にはスイベルジョイント9が接続されていて、スイベルジョイント9にはホース接続部11を介してホース10が連結されている。スイベルジョイント9の上端には、係止孔9aが設けられている。係止孔9aには、クレーン等の吊りワイヤ23が係止される。したがって、クレーン等により吊りワイヤ23をコントロールすることで、ハンマー3の上下位置をコントロールすることができる。
【0024】
地上のエア供給源に接続されたホース10から注入路7a、3aを通じてエアが供給され、供給されたエアの圧力によりハンマー3には上下打撃力が付与される。また、供給されたエアの圧力により、掘削物が排出溝3bを通じて上方移動してケーシング1の内部に蓄積するように構成されている。
【0025】
図4に例示するように、ハンマー3の側面には下端から上端に延在する排出溝3bが形成されている。排出溝3bはハンマー3の周方向に間隔をあけて複数配置することが好ましく、この実施形態では、周方向に等間隔で4つの排出溝3bが配置されている。ハンマーロッド5には筒軸方向に延在する嵌合キー6aが設けられている。嵌合キー6aは、ハンマーロッド5の外周面から外側に突出していて、ロッド周方向に間隔をあけて複数配置されている。この実施形態では、ハンマーロッド5のロッド周方向に等間隔で2本の嵌合キー6aが配置されているが、嵌合キー6aの数は例えば2本~6本にする。
【0026】
ハンマーロッド5の下端部には、嵌合キー6aに加えて筒軸方向に延在するウエイト保持キー6bが設けられている。ウエイト保持キー6bは、ハンマーロッド5の外周面から外側に突出していて、ロッド周方向に間隔をあけて複数配置されている。ウエイト保持キー6bは、ハンマーロッド5aのロッド周方向に隣り合う嵌合キー6aの間に配置されている。この実施形態では、ハンマーロッド5のロッド周方向に等間隔で2本のウエイト保持キー6bが配置されているが、配置するウエイト保持キー6aの数は例えば2本~6本にする。
【0027】
嵌合キー6aはハンマーロッド5の下端から上端まで筒軸方向全長に渡って延在しているが、ウエイト保持キー6bはハンマーロッド5の下端から筒軸方向中途の位置まで延在している。即ち、ウエイト保持キー6bは、ハンマーロッド5の筒軸方向中途の位置に上端面を有している。
【0028】
図5に例示するように、ケーシング1の内部では、スリーブ体12がウエイト8から下方に吊り下げられた状態で設置される。スリーブ体12を構成する筒状部12aは、ウエイト8に挿入される。この実施形態では、ウエイト8とスリーブ体12とはスプリング15aによって上下に接続されている。スプリング15aは周方向に間隔をあけて複数本(4本)配置されている。スプリング15aによって、スリーブ体12に対してウエイト8を下方移動させる付勢力を付与しているが、スプリング15aは必要に応じて設ければよい。
【0029】
また、ウエイト8の下面には水平方向に延在する連結ピン15bによってピン結合された上側クサビ片13aが吊り下げられている。上側クサビ片13aは周方向に間隔をあけて複数(4個)配置されている。
【0030】
図6に例示するようにウエイト8は円筒状である。ウエイト8の上端部には、その内周面の半径方向内側に突出する係止部8bが設けられている。この係止部8bの下端から上端まで延在するキー溝8aが設けられている。キー溝8aは嵌合キー6aに対応するので、嵌合キー6aと同数のキー溝8aが周方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0031】
ウエイト8の内周面にはさらに、ウエイト8の下端から係止部8bまで延在するストッパ用溝8cが設けられている。即ち、ストッパ溝8cの上端は係止部8bによって塞がれている。ストッパ溝8cには、スリーブ体12に設けられた後述するストッパ12eが嵌合する。ストッパ12eがストッパ溝8cに嵌合された後にストッパ溝8cの下端部に留め具が後付けされる。ウエイト8の下面には周方向に間隔をあけてスプリング15aや上側クサビ片13を取り付ける取付け部が設けられている。
【0032】
図7に例示するようにスリーブ体12は、筒状部12aと筒状部12aの下端に接続されたフランジ部12bとを有している。フランジ部12bは、筒状部12aの外周側に突出した円環状に形成されている。
【0033】
筒状部12aの内周面には下端から上端まで延在するキー溝12dが設けられている。キー溝12dは、周方向に間隔をあけて複数配置されている。この実施形態では、筒状部12aの周方向に等間隔で4本のキー溝12dが配置されている。キー溝12dには嵌合キー6aおよびウエイト保持キー6bが嵌合するので、嵌合キー6aおよびウエイト保持キー6bの合計数と同数のキー溝12dが設けられる。
【0034】
筒状部12aの上端部には、半径方向外側に突出するストッパ12eが周方向に間隔をあけて配置されている。ウエイト8に設けられたストッパ用溝8cにストッパ12eを嵌合させて筒状部12aがウエイト8に挿入され、キー溝8aとキー溝12dとの周方向位置も一致した状態になる。ストッパ用溝8cにストッパ12eを嵌合させることにより、スリーブ体12はウエイト8に対して筒軸方向(上下方向)にのみ移動可能になって周方向の移動が規制される。ウエイト8にはストッパ用溝8cの下端部に留め具が取り付けられるので、スリーブ体12がウエイト8に対して下方移動してもストッパ12eがその留め具によって下方移動を阻止される。それ故、スリーブ体12はスプリング15aが無くてもウエイト8から分離することはない。
【0035】
フランジ部12bの上面には、クサビ保持部12cが周方向に間隔をあけて配置されている。この実施形態では、周方向に等間隔で4つのクサビ保持部12cが配置されているが、クサビ保持部12cの数は例えば2個~6個にする。
【0036】
クサビ保持部12cには、下側クサビ片13bが保持されている。下側クサビ片13bは上側クサビ片13aと対となる部材であり、下側クサビ片13bと上側クサビ片13aとは互いの対向させた傾斜面どうしを当接させた状態で上側クサビ片13aが下方移動可能に設けられる。
【0037】
平面視で下側クサビ片13bの外周面に円弧状のライナ14が取り付けられている。ライナ14は、クサビ保持部12cにガイドされて、ハンマーロッド5のロッド半径方向に移動する下側クサビ片13bとともにロッド半径方向に移動する。フランジ部12bの上面にはさらに、スプリング15aを固定する取り付け部が周方向に間隔をあけて配置されている。
【0038】
図5に例示するようにスリーブ体12は、筒状部12aがウエイト8に挿入される。この状態のウエイト8およびスリーブ体12が、ケーシング1の内部では図3に例示するようにハンマーロッド5に外挿される。この状態では、嵌合キー6aはキー溝8aおよびキー溝12dに嵌合し、ウエイト保持キー6bはキー溝12dだけに嵌合する。
【0039】
このようにして、ケーシング1の内部でハンマーロッド5に外挿されたウエイト8およびスリーブ体12がロッド周方向の回転を規制されつつ上下方向に移動可能になる。また、ライナ14は、ハンマーロッド5の外周面とケーシング1の内周面との間でロッド半径方向に移動可能になる。
【0040】
次に、切断ユニット16について詳述する。
【0041】
図8図10に例示するように切断ユニット16は、拡縮ビット17と、拡縮ビット17を拡縮移動させる拡縮機構18と、連結部19とを有している。切断ユニット16の上端部に連結部19が配置され、切断ユニット16の下端部に拡縮ビット17が配置されている。連結部19と拡縮ビット17との間に拡縮機構18が配置されている。尚、切断ユニット16は、概ね全体を覆うハウジングを有しているが、切断ユニット16の構造を理解し易くするために、図面ではハウジングを省略している。
【0042】
拡縮機構18は、油圧シリンダなどのアクチュエータ18aと、アクチュエータ18aのシリンダロッドの先端部に連結されたリンク部18bとを有している。リンク部18bは公知の種々のリンク構造を用いることができる。拡縮ビット17は、リンク部18bの下端に連結されている。
【0043】
図9に例示するように、切断ユニット16の軸心を中心して周方向に等間隔をあけて4個の板状の連結部19が設けられている。連結部19は4個に限らず、複数個が周方向に間隔をあけて設けられていればよい。
【0044】
図10に例示するように、平面視で切断ユニット16の対向する2つの領域に、拡縮ビット17が配置されている。それぞれの領域には、3個の拡縮ビット17が周方向に並んで設置されている。それぞれの領域に設置された拡縮ビット17は一体的に平面視で半径方向に移動する(拡縮移動する)。即ち、それぞれの領域に設置された拡縮ビット17は、互いに近接および離反移動する。図10では互いの領域の拡縮ビット17が近接した位置にあって、それぞれの拡縮ビット17は縮径状態になっている。
【0045】
拡縮ビット17が配置される領域は、2つの領域に限らず3つ以上でもよく、周方向に等間隔で配置された複数領域にすることが好ましい。それぞれの領域に設置される縮径ビット17は、3個に限らず、1個、2個、或いは4個以上にすることもできる。
【0046】
アクチュエータ18aのシリンダロッドが、図8に例示する後退位置から図11に例示するように前進すると、リンク部18bの作用によってそれぞれの拡縮ビット17が半径方向外側に移動する(拡径移動する)。即ち、それぞれの領域に配置された拡縮ビット17は、図12に例示するように互いに離反移動して、それぞれの拡縮ビット17は拡径状態になる。したがって、アクチュエータ18aのシリンダロッドを後退させると、それぞれの拡縮ビット17は、図10に例示するように縮径状態になる。
【0047】
切断ユニット16の上端には、削孔ユニットと同様に、スイベルジョイントなどの回転自在な連結具が接続されていて、この連結具にはクレーン等の吊りワイヤ23が係止される。また、この連結具には、アクチュエータ18aを作動させる作動油を供給するホースが接続される。クレーン等により吊りワイヤ23をコントロールすることで、切断ユニット16の上下位置がコントロールされる。
【0048】
以下、この除去システムを用いて、地盤に埋設されている既存杭Pを除去する手順の一例を説明する。
【0049】
まず、図2に例示するように、ケーシング1を既存杭Pの上端部に外挿させた状態にする。そこで、ケーシング1を回転駆動装置20によって一方向に回転駆動するとともに下方移動させて、地盤に埋設されている既存杭Pの外周側の地盤を、回転駆動されるケーシングビット2a、インサイドカッタ2bにより削孔する。これにより、ケーシング1を既存杭Pの上端部に外挿させ、ケーシング1の長手方向中途の位置にある載置部2c、係合突起2dおよび係合溝2eは、既存杭Pの上端面よりも上方に位置させる。
【0050】
次いで、このケーシング1の内部に削孔ユニットを設置した削孔モードでの工程と、ケーシング1の内部に切断ユニット16を設置した切断モードでの工程を順に行う。そして、削孔モードでの工程と切断モードでの工程を順に行う1セットを、必要なセット数だけ実施する。
【0051】
削孔モードでは、図1に例示するように、ハンマーロッド5を吊りワイヤ23により吊り下げて、地盤に埋設したケーシング1の内部に削孔ユニットを挿入する。吊り下げられたハンマーロッド5にはウエイト8およびスリーブ体12が外挿され、ウエイト8およびスリーブ体12のロッド周方向の回転を規制しつつ上下方向に移動可能にする。ウエイト保持キー6bの上端面をウエイト8の係止部8bに係止させることで、ウエイト8はハンマーロッド5の上下方向中途の位置でハンマーロッド5から吊り下げられる。これにより、スリーブ体12はウエイト8から下方に吊り下げられた状態で設置される。ウエイト8とフランジ部12bとの間で伸ばされるスプリング15aによってスリーブ体12は所定位置に吊り下げられる。
【0052】
ウエイト8の下方に突出する上側クサビ片13aがクサビ保持部12cに埋入し、クサビ保持部12cに保持されている下側クサビ片13bに当接しているが、下側クサビ片13bに対して十分に下方移動してない。そのため、下側クサビ片13bはハンマーロッド5のロッド半径方向外側にほとんど移動していない。それ故、ライナ14は、フランジ部12bの外縁よりも半径方向内側に位置している。ハンマー3はフランジ部12bよりも下方に突出した位置にある。
【0053】
図13に例示するように、フランジ部12bを、ケーシング1の長手方向中途の位置にある載置部2cに載置する。載置部2cおよび係合突起2dは、ハンマー3およびハンマーロッド5に干渉しないように配置されている。
【0054】
次いで、図14に例示するようにハンマーロッド5をさらに下方移動させると、ウエイト8の重量およびスプリング15aの付勢力によってウエイト8が下方移動する。フランジ部12bが載置部2cに載置されているのでスリーブ体12は上下移動しない。そのため、下方移動する上側クサビ片13aの傾斜面が下側クサビ片13bの傾斜面を押圧して、ライナ14がロッド半径方向外側に移動する。これにより、ライナ14がケーシング1の内周面を押圧した状態になってライナ14を介してケーシング1およびハンマー3が一体化する。即ち、ケーシング1と削孔ユニットが一体化する。
【0055】
次いで、ハンマーロッド5を適宜、下方移動させてハンマー3を所定の深度に設置する。回転駆動装置20のチャック片22により、ケーシング1の外周面を保持した状態にしておく。この状態で、図15に例示するように回転駆動装置20を稼働させて、削孔ユニットと一体化させたケーシング1を一方向に回転駆動するとともに、ホース10から注入路7aを通じてエアを供給して、供給したエアの圧力によりハンマー3に上下打撃力を付与する。その結果、ハンマービット4によって、既存杭Pの上端部に円柱穴Phの形成が始まる。
【0056】
引き続き、図16に例示するように、削孔ユニットと一体化させたケーシング1を一方向に回転駆動しながら、ハンマーロッド5をさらに下方移動させることで、ハンマービット4によって、既存杭Pの上端部に所定深さの円柱穴Phを形成する。円柱穴Phの所定深さや外径は任意の所望値に設定する。円柱穴Phの外周には、既存杭Pの外径から円柱穴Phの内径を差引いた値の1/2の厚さの周壁が形成されることになる。
【0057】
この削孔モードでは、回転駆動されるハンマービット4による切削力と、ハンマー3による上下打撃力とによって、より短時間で所定深さの円柱穴Phが形成される。また、この実施形態のようにスプリング15aによってスリーブ体12に対してウエイト8を下方移動させる付勢力が付与される構成にすると、ライナ14をより強くケーシング1の内周面に押圧させることができる。これに伴い、ケーシング1と削孔ユニットとをより強固に一体化させて、より安定的に円柱穴Phを形成することができる。
【0058】
所定深さの円柱穴Phを形成した後は、削孔ユニットと一体化させたケーシング1の回転駆動を停止する。そして、図17に例示するように、削孔ユニットを吊りワイヤ23によって吊上げてケーシング1の内部から取り出す。ケーシング1の内周面を押圧しているライナ14をロッド半径方向内側に移動させて、ケーシング1と削孔ユニットとの一体化を解除するには、ハンマーロッド5を上方移動させるだけでよい。詳述すると、ハンマーロッド5を上方移動させて、ウエイト保持キー6bの上端面をウエイト8の係止部8bに係止させて、スリーブ体12に対してウエイト8を上方移動させる。これにより、上側クサビ片13aが下側クサビ片13bに対して上方移動するので、ライナ14をロッド半径方向外側に押圧する押圧力がなくなり、一体化しているケーシング1と削孔ユニットとを分離させることができる。即ち、この実施形態では、ハンマーロッド5の上下移動だけで、ライナ14を介したケーシング1と削孔ユニットとの一体化および一体化の解除を行うことができる。そのため、作業効率を向上させるには有利になっている。
【0059】
次いで、図18に例示するように、ケーシング1の内部に切断ユニット16を設置して切断モードでの工程を行う。切断モードでは、切断ユニット16を吊りワイヤ23によって吊下げてケーシング1に挿入する。この時、拡縮ビット17は縮径状態にしておいて円柱穴Phに挿入する。拡縮ビット17は、円柱穴Phのできるだけ深い位置まで挿入させる。また、切断ユニット16を吊りワイヤ23によって吊下げつつ、それぞれの連結部19をケーシング1の長手方向中途の位置にある係合突起2dに載置する。
【0060】
この状態で、図19に例示するようにケーシング1を一方向に回転駆動することで、切断ユニット16とケーシング1とを一体化する。切断ユニット16とケーシング1とを一体化する過程を詳述すると、まず、図20(A)に例示する切断ユニット16をケーシング1に挿入する。ケーシング1のそれぞれの載置部2cの下方に係合溝2eが存在している。そして、図20(B)に例示するように、それぞれの連結部19を係合突起2dに載置する。そして、ケーシング1が一方向に回転駆動されると、それぞれの連結部19の周方向位置は実質的に変わらないが、それぞれの係合溝2eの周方向に移動して周方向位置が変わる。その結果、図20(C)に例示するように、それぞれの連結部19は、対応する位置にある係合溝2eに入り込んで、連結部19と係合溝2eとが嵌合して連結される。これにより、ケーシング1と切断ユニット16とが一体化する。
【0061】
次いで、図21に例示するように、切断ユニット16と一体化したケーシング1を一方向に回転駆動するとともに、拡縮ビット17を拡径させる。即ち、アクチュエータ18aを作動させてそのシリンダロッドを前進させて拡縮ビット17を拡径させながら、拡縮ビット17を回転駆動する。これより、円柱穴Phの周壁が拡縮ビット17によって切断される。円柱穴Phの周壁が既存杭Pの外周面まで切断されると、円柱穴Phの周壁が既存杭Pとは分離されて筒状体P1が形成される。筒状体P1が形成されると、切断ユニット16と一体化させたケーシング1の回転駆動を停止する。
【0062】
それぞれの拡縮ビット17は、回転駆動されながら拡径移動するが、この拡径移動は単純に直線的に移動するだけで拡縮ビット17の刃先に向きを変えるような移動ではない。そのため、それぞれの拡縮ビット17や切断ユニット16に過大な負荷が作用することを回避するには有利である。それ故、それぞれの拡縮ビット17の拡径速度を極端に遅くする必要がないので切断作業を短縮するには有利になる。また、それぞれの拡縮ビット17の拡径移動量を大きくするだけで、太径の既存杭Pの外周面まで切断することができる。
【0063】
次いで、図22に例示するように、支持脚21のシリンダを後退移動させるとともに、吊りワイヤ23を吊上げてケーシング1および切断ユニット16を若干、上方移動させる。これにより、筒状体P1を上方移動させて既存杭Pとは確実に分離させる。
【0064】
次いで、図23に例示するように、切断ユニット16を吊りワイヤ23によって吊下げた状態でケーシング1を他方向(反時計回り)に回転駆動して、一体化していたケーシング1と切断ユニット16とを分離する。両者を分離させる過程を詳述すると、図20で例示したケーシング1と切断ユニット16とを一体化させる手順と逆の手順を行なえばよい。即ち、図20(C)に例示する状態で、ケーシング1を他方向に回転駆動すると、それぞれの連結部19は連結している係合溝2eから抜き出され両者の連結が解除される。その結果、ケーシング1と切断ユニット16とが分離する。このように、ケーシング1を他方向に回転駆動するだけで、容易にケーシング1と切断ユニット16とを分離させることができる。それぞれの連結部19と係合溝2eとの連結を解除する際には、切断ユニット16を吊りワイヤ23によって吊下げて、それぞれの係合溝2eに対して切断ユニット16の荷重があまり作用しないようにするとよい。
【0065】
この実施形態では、係合突起2dの上面とそれぞれの載置部2cの上面とが傾斜面によって連続していて、それぞれの係合溝2eが係合突起2dに対して上方に突出している。ケーシング1を他方向に回転駆動することで、連結している係合溝2eから抜き出されたそれぞれの連結部19は、係合突起2dの上面に沿って周方向に移動し、周方向に隣り合う係合溝2eに相当する位置にある傾斜面(段差)に当接する。そのため、ケーシング1を過大に他方向に回転駆動させることなく、それぞれの連結部19を、連結している係合溝2eから確実に抜き出すには有利になる。
【0066】
次いで、図24に例示するように、それぞれの拡縮ビット17を拡径状態に維持することで、それぞれの拡縮ビット17に筒状体P1を載置する。この状態で、切断ユニット16を吊りワイヤ23によって上方移動させて、筒状体P1とともにケーシング1の内部から取り出す。その後、それぞれの拡縮ビット17を縮径状態にして、筒状体P1を切断ユニット16から取外す。筒状体P1とともにケーシング1が内部から取り出されたケーシング1は、支持脚21のシリンダを前進移動させることにより、下方移動させて再度、地盤中に押し込む。
【0067】
上述した削孔モードでの工程と、切断モードでの工程を順に行う1セットによって、既存杭Pからは1本の筒状体P1が除去されるので、このセットを必要行うことで、既存杭Pのすべての地盤から除去することができる。既存杭Pの一部を地盤中に残存させてもよい場合は、実施するセット数を少なくすればよい。
【0068】
次の削孔モードでの工程を行う場合は、図25に例示するように、ケーシング1を回転駆動装置20によって一方向に回転駆動するとともに下方移動させて、ケーシング1を既存杭Pの上端部に外挿させた状態にすればよい。即ち、図2に例示した状態と同様の状態にして、削孔モードでの工程と切断モードでの工程を順に行う。
【0069】
この除去システムによれば、削孔ユニットによる削孔モードでは、回転駆動されるハンマービット4と、上下打撃力が付与されたハンマー3によって、既存杭Pの上端部に迅速に所定深さの円柱穴Phを形成することができる。切断ユニット16による切断モードでは、切断ユニット16に過大な負荷が生じることなく、円柱穴Phの周壁を切断して筒状体P1を形成することができる。そして、削孔ユニットおよび切断ユニット16は、ケーシング1と一体化することで、軸振れが抑制されて安定的に回転駆動される。そのため、上述した削孔モードと切断モードとを組合わせることで、太径の既存杭Pであっても効率的に地盤から除去することが可能になる。
【0070】
この除去システムは、図26に例示するように地盤に縦孔を形成する削孔システムとして用いることができる。即ち、先の実施形態で示したケーシング1の長手方向中途に接続されているケーシング部1bを除いてケーシング1を構成する。地盤に縦孔を形成するには、ケーシング1の内部に削孔ユニットを設置して、フランジ部12bをケーシング1の下端にある載置部2cに載置する。そして、それぞれのライナ14がケーシング1の内周面を押圧した状態にして削孔ユニットとケーシング1とを一体化させる。この状態で、削孔ユニットと一体化したケーシング1を一方向に回転駆動して地盤の掘削を始める。回転駆動装置20の回転駆動とともに、支持脚21のシリンダを徐々に収縮させてケーシング1を下方移動させる。
【0071】
ホース10からは注入路7aを通じてエアを供給して、供給したエアの圧力によりハンマー3に上下打撃力を付与しつつ、回転駆動するケーシングビット2a、インサイドカッタ2bおよびハンマービット4により地盤を掘削する。掘削された掘削物は、注入路7a、3aを通じて供給されたエアの圧力により、排出溝3bを通じて上方移動してケーシング1の内部に蓄積される。ケーシング1の内部に蓄積された掘削物は縦孔を構築した後にハンマーグラブ等によって地上に排出される。
【0072】
即ち、この除去システムは、図26に例示するように、ケーシング1を長手方向中途の位置に、載置部2c、係合突起2dおよび係合溝2eが存在しない仕様にするだけで、削孔システムとして機能させることができる。そのため、既存杭の除去のための設備と、地盤掘削のための設備とが共用化されて、設備に関するコストを低減するにも寄与する。
【符号の説明】
【0073】
1 ケーシング
1a、1b、1c ケーシング部
2a ケーシングビット
2b インサイドカッタ
2c 載置部
2d 係合突起
2e 係合溝
3 ハンマー
3a 注入路
3b 排出溝
4 ハンマービット
5 ハンマーロッド
6a 嵌合キー
6b ウエイト保持キー
7a 注入路
8 ウエイト
8a キー溝
8b 係止部
8c ストッパ用溝
9 スイベルジョイント
9a 係止孔
10 ホース
11 ホース接続部
12 スリーブ体
12a 筒状部
12b フランジ部
12c クサビ保持部
12d キー溝
12e ストッパ
13a 上側クサビ片
13b 下側クサビ片
14 ライナ
15a スプリング
15b 連結ピン
16 切断ユニット
17 拡縮ビット
18 拡縮機構
18a アクチュエータ(油圧シリンダ)
18b リンク部
19 連結部
20 回転駆動装置
20a 駆動モータ
20b 回転歯車
21 支持脚
22 チャック片
23 吊りワイヤ
P 既存杭
P1 筒状体
Ph 円柱穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26