(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016100
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】特定小型原動機付自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/60 20100101AFI20250124BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20250124BHJP
B62M 6/80 20100101ALI20250124BHJP
【FI】
B62M6/60
B62J45/00
B62M6/80
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119150
(22)【出願日】2023-07-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】523277747
【氏名又は名称】株式会社ENNE
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大祐
(57)【要約】
【課題】ペダルの回転で発電した電力を制御出力して駆動することで、特定小型原動機付自転車としての法定基準を満たしつつ自転車感覚で快適に走行可能な特定小型原動機付自転車を提供すること。
【解決手段】本発明の特定小型原動機付自転車1は、フレーム11と、ハンドル12と、サドル13と、ペダル14と、を有する車体部10と、フレーム11の前後に設けた複数の車輪21を有する車輪部20と、車輪部20と接続した駆動部30と、駆動部30と電気的に接続した制御部40と、を備え、駆動部30が、ペダルの回転によって発電可能な発電機31と、発電機31による電力を蓄電可能なバッテリ32と、バッテリ32の電力により複数の車輪21の内少なくとも1つを回転駆動可能なモータ33と、を有し、制御部40の操作によって、モータ33を、設定速度以下の速度で走行するように駆動させることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定原動機付自転車であって、
フレームと、ハンドルと、サドルと、ペダルと、を有する車体部と、
前記フレームの前後に設けた複数の車輪を有する車輪部と、
前記車輪部と接続した駆動部と、
前記駆動部と電気的に接続した制御部と、を備え、
前記駆動部が、前記ペダルの回転によって発電可能な発電機と、前記発電機による電力を蓄電可能なバッテリと、前記バッテリの電力により前記複数の車輪の内少なくとも1つを回転駆動可能なモータと、を有し、
前記制御部の操作によって、前記モータを、設定速度以下の速度で走行するように駆動させることを特徴とする、
特定原動機付自転車。
【請求項2】
特定原動機付自転車であって、
フレームと、ハンドルと、サドルと、ペダルと、を有する車体部と、
前記フレームの前後に設けた複数の車輪を有する車輪部と、
前記車輪部と接続した駆動部と、
前記駆動部と電気的に接続した制御部と、を備え、
前記駆動部が、前記ペダルの回転によって発電可能な発電機と、前記発電機による電力を蓄電可能なバッテリと、前記バッテリ又は前記発電機の電力により前記複数の車輪の内少なくとも1つを回転駆動可能なモータと、を有し、
前記制御部の操作によって、前記モータを、設定速度以下の速度で走行するように駆動させることを特徴とする、
特定原動機付自転車。
【請求項3】
前記車体部が、前記ペダルの回転に同期して回転するスプロケットと、前記スプロケットから前記発電機に架け廻したチェーンと、を備え、
前記ペダルの回転を、前記スプロケット及び前記チェーンを介して前記発電機に伝達することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の特定原動機付自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定小型原動機付自転車に関し、特にペダルの回転で発電した電力を制御出力して駆動することで、特定小型原動機付自転車としての法定基準を満たしつつ自転車感覚で快適に走行可能な特定小型原動機付自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動自動車の開発に伴う二次電池の性能向上によって、小型の電動乗り物が普及してきている。
ペダルの踏み込みによらずに走行可能な乗り物として、いわゆるフル電動自転車(フルアシスト自転車)が知られている。フル電動自転車は、基準以上のアシスト性能を持った電動自転車であり、ペダルを漕がずに走る電動モペット等を含む。
また、特許文献1には、いわゆる電動キックスケータが開示されている。電動キックスケータは、キックスケータに電動モータを設けた乗り物であり、アクセルの操作により電動で走行することができる。
【0003】
一方、令和5年7月1日から、道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)が施行され、電動機付自転車の区分内に「特定小型原動機付自転車」が新設されている(非特許文献1)。
特定小型原動機付自転車は、原動機付でありながら運転免許証の保持が不要、自転車と同様の走行場所を走行可能、ヘルメットの着用が努力義務である、等の多くの利便性があるため、気軽に利用できる移動手段として、広く普及することが期待されている。
特定小型原動機付自転車と認定されるためには、車体サイズ、原動機の定格出力、最高速度などの一定の基準を満たす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“特定小型原動機付自転車(いわゆる電動キックボード等)に関する交通ルール等について”,[online],警察庁,[令和5年6月29日検索],インターネット<URL:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/tokuteikogata.html>
【非特許文献2】“「ペダル付き特定原付」は走行した時点で道交法違反になる可能性 業界団体が注意喚起”,[online],IT media,[令和5年6月29日検索],インターネット<URL:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2306/27/news183.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術には以下の問題点がある。
<1>フル電動自転車は、道路交通法上は原動機付自転車であるため、運転免許証の所持とヘルメットの着用が求められ、歩道を走行することができない。このため、市街地で気軽に利用することができない。
<2>電動キックスケータは、法定の要件を満たせば特定小型原動機付自転車となるが、全電力を充電に依存するため、頻繁な充電が必要となる。
<3>フル電動自転車も電動キックスケータも、2輪車をアクセルで走行させる構造であるため、バランスをとりにくく、走行時の安定性が低い。
<4>原動機付自転車にペダルを付け、ペダルの回転力を車輪に伝達可能な構造とすると、ペダルの踏み込みにより制限なく人力走行ができ、制限速度を(20km/h)を超えてしまうため、特定小型原動機付自転車の法定要件を満たさなくなる(非特許文献2)。このため、このような原動機付自転車は、歩道を走行できず、ヘルメットを着用し、運転免許証を保持しなければ運転することができず、気軽に利用することができない。
【0007】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決するための、特定小型原動機付自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特定小型原動機付自転車は、フレームと、ハンドルと、サドルと、ペダルと、を有する車体部と、フレームの前後に設けた複数の車輪を有する車輪部と、車輪部と接続した駆動部と、駆動部と電気的に接続した制御部と、を備え、駆動部が、ペダルの回転によって発電可能な発電機と、発電機による電力を蓄電可能なバッテリと、バッテリの電力により複数の車輪の内少なくとも1つを回転駆動可能なモータと、を有し、制御部の操作によって、モータを、設定速度以下の速度で走行するように駆動させることを特徴とする。
【0009】
本発明の特定小型原動機付自転車は、フレームと、ハンドルと、サドルと、ペダルと、を有する車体部と、フレームの前後に設けた複数の車輪を有する車輪部と、車輪部と接続した駆動部と、駆動部と電気的に接続した制御部と、を備え、駆動部が、ペダルの回転によって発電可能な発電機と、発電機による電力を蓄電可能なバッテリと、バッテリ又は発電機の電力により複数の車輪の内少なくとも1つを回転駆動可能なモータと、を有し、制御部の操作によって、モータを、設定速度以下の速度で走行するように駆動させることを特徴とする。
【0010】
本発明の特定小型原動機付自転車は、車体部が、ペダルの回転に同期して回転するスプロケットと、スプロケットから発電機に架け廻したチェーンと、を備え、ペダルの回転を、スプロケット及びチェーンを介して発電機に伝達してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の特定小型原動機付自転車は、以下の効果の内少なくとも1つを備える。
<1>ペダルの踏み込みを速度に影響させないことで、走行速度の上限を制御して「特定小型原動機付自転車」の法定要件を満たすことができる。これによって、運転免許証の保持が不要、自転車と同様の走行場所を走行可能、ヘルメットの着用が努力義務である、等の多くの利便性を享受することができる。
<2>電動機構による安定的な速度と、ペダルを漕ぐことによる自転車のような乗り心地を同時に享受しつつ走行することができる。
<3>ペダルを漕ぐことで走行しながら充電できるため、少ない充電回数で長距離を走行することができる。
<4>任意のタイミングで自転車のようにペダルを漕ぐことができるため、バランスをとりやすく、走行時の安定性が高い。
<5>家庭用電源を使用せずに人力で充電できるため、経済的で環境に優しい。
<6>バッテリの電力をスマートフォンの充電などに外部供給することができる。このため、災害時の非常電源として利用することができる。
<7>ペダルを漕ぐことが適度な運動となるため、利用者の健康に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る特定小型原動機付自転車の説明図
【
図2】本発明に係る特定小型原動機付自転車の説明図
【
図3】本発明に係る特定小型原動機付自転車の構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の特定小型原動機付自転車について詳細に説明する。
【実施例0014】
[特定小型原動機付自転車]
<1>全体の構成(
図1~3)
特定小型原動機付自転車1は、道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)により令和5年7月1日から規定される区分の原動機付自転車である。
特定小型原動機付自転車1は、車体部10と、車体部10の前後に設けた車輪部20と、車輪部20と接続した駆動部30と、駆動部30と電気的に接続した制御部40と、を少なくとも備える。本例では更に灯火部50を備える。
ここで「電気的に接続」とは、駆動部30と制御部40が電気信号を通信可能に接続されていることを意味し、有線接続であるか無線接続であるかを問わない。
本発明の特定小型原動機付自転車1は、制御部40の操作によって駆動部30を制御し、設定速度以下の速度を保持しつつ走行可能な構造に一つの特徴を有する。
【0015】
<1.1>特定小型原動機付自転車の定義
特定小型原動機付自転車は、原動機付自転車のうち、車体の大きさ及び構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものであり、かつ、その運転に関し高い技能を要しないものである車として道路交通法施行規則で定める基準に該当する車両である。
道路交通法施行規則で定める基準は以下の通りである。
[車体の大きさ]
長さ:190cm以下 幅:60cm以下
[車体の構造]
(1)原動機の定格出力が0.60キロワット以下であること
(2)20km/hを超える速度を出すことができないこと
(3)走行中に最高速度の設定を変更することができないこと
(4)AT機構がとられていること
(5)道路運送車両の保安基準に規定する最高速度表示灯を備えること
特定小型原動機付自転車は、原動機を用いつつ、自転車と同様の走行場所を走行でき、しかも運転免許証の所持が必要ない等の多くのメリットを備える。
【0016】
<2>車体部
車体部10は、特定小型原動機付自転車1の基本構造である。
車体部10は、フレーム11と、フレーム11に設けたハンドル12と、フレーム11に設けたサドル13と、フレーム11に回転可能に設けたペダル14と、少なくとも備える。フレーム11には法定のナンバープレートを付設する。
本例では、一般の自転車と同様に、ペダル14の回転に同期して回転するスプロケット15と、スプロケット15から後述する発電機31に架け廻したチェーン16と、を更に備える。
本例ではフレーム11として、アルミニウム合金部材のハブにマグネシウム合金部材を組み合わせた、折り畳み式フレームを採用する。ただしフレーム11はこれに限らず、例えば固定式フレームであってもよい。
車体部10のその他の構造は、一般の自転車の構造として公知であるため、ここでは詳述しない。
【0017】
<3>車輪部
車輪部20は、特定小型原動機付自転車1が走行するための構成要素である。
車輪部20は、フレーム11の前後に設けた複数の車輪21を少なくとも備える。
本例では車輪部20が、前後2輪の車輪21と、各車輪21に付設したディスクブレーキ22を備える。
ディスクブレーキ22は、ハンドル12に設けたブレーキレバーとブレーキワイヤで連結する。ただしブレーキはディスクブレーキ22に限らず、ハブブレーキ又はリムブレーキであってもよい。
【0018】
<4>駆動部
駆動部30は、車輪部20を駆動させる構成要素である。
駆動部30は、ペダル14の回転によって発電可能な発電機31と、発電機31による電力を蓄電可能なバッテリ32と、バッテリ32の電力により車輪21を回転駆動可能なモータ33と、を少なくとも備える。
発電機31とバッテリ32は、電源ケーブルで送電可能に接続する。
バッテリ32とモータ33は、電源ケーブルで送電可能に接続する。
本例では発電機31として、レギュレータを備えたオルタネータを採用し、ペダル14と後方の車輪21の車軸の中間部に設ける。
発電機31は、スプロケット15とチェーン16を介してペダル14と動力伝達可能に連結する。
本例ではモータ33として、定格出力36V250Wの高出力モータを採用し、後方の車輪21の車軸に設ける。
ただし駆動部30の構造は上記に限らず、例えば発電機31を後方の車輪21に設け、モータ33を前方の車輪21に設けてもよい。また、発電機31をペダル14のクランク部分に設けたり車輪21に外付けにしてもよい。
要は発電機31で発電する電力をバッテリ32に充電でき、かつバッテリ32から供給する電力でモータ33を駆動できる構造であればよい。
【0019】
<4.1>バッテリ
本例ではバッテリ32としてリチウムイオン充電池を採用し、フレーム11内に着脱自在に取り付ける。
バッテリ32は、ペダル14の回転によって充電する他、フレーム11から取り外して家庭用電源から直接充電することもできる。
また、本例ではバッテリ32が外部給電機能を備え、バッテリ32に充電ワイヤを接続することによって、スマートフォンやパソコン等の電子機器に充電することができる。
さらに、非常時にはペダル14を回転することでバッテリ32に充電し、バッテリ32をLEDライトやラジオ等の非常電源とすることができる。
【0020】
<5>制御部
制御部40は、駆動部30を制御する構成要素である。
制御部40は、アクセル41と、リミッタ42と、を少なくとも備える。
アクセル41は、モータ33と電気的に接続し、モータ33の駆動量を電子制御する。
本例ではアクセル41を、ハンドル12のスロットル操作と連動させ、スロットル量によってモータ33の駆動量を増減させて、走行速度を制御する。
リミッタ42は、モータ33と電気的に接続し、走行モードに応じてモータ33の駆動量を制御し、特定小型原動機付自転車1の走行速度を制限する。
走行モードは、例えば最高速度(20km/h)と、歩道等走行速度(6km/h)モードの2種類であり、各モードの設定速度を超えた場合にモータ33の出力を100%カットする。
【0021】
<6>灯火部
灯火部50は、運転の便宜に用いる構成要素である。
本例では灯火部50として、フレーム11の前部に設けたライト51と、ハンドル12に設けたウィンカ52と、フレーム11の後部に設けたテールライト53と、の組合せを採用する。
本例ではウィンカ52が最高速度灯を兼ね、方向指示時にはオレンジ色点滅、20km/hモードでは緑色点灯、6km/hモードでは緑点滅に切り替える。
灯火部50の構造は、一般の原動機付自転車又は自転車の構造として公知であるため、ここでは詳述しない。
【0022】
<7>運転方法
特定小型原動機付自転車1は、例えば以下の手順で運転する。なお、本例では予めバッテリ32に充電済みである状態から説明する。
車体部10に搭乗する。ヘルメットの着用は努力義務であるが、安全のためヘルメットを着用することが望ましい。
ハンドル12のスロットルを使ってアクセル41を操作し、モータ33を稼働させて発進する。
アクセル41の操作によってモータ33の回転速度を制御し、走行速度を加減速可能であるが、走行速度が各走行モードにおける制限速度に達すると、リミッタ42がモータ33の出力をカットし、制限速度を超過しないようにコントロールする。
走行と平行して適宜のタイミングでペダル14を踏み込み、自転車感覚でペダル14を回転させる。これによって、スプロケット15及びチェーン16を介して発電機31を回転させ、発電した電力をバッテリ32に供給することができる。
本発明の特定小型原動機付自転車1は、運転者が、モータ33による快適な速度と、ペダル14を漕ぐことによる自転車のような乗り心地を同時に享受しつつ、安定的に走行することができる。