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  • 特開-加工不良判断装置 図1
  • 特開-加工不良判断装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016128
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】加工不良判断装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/14 20060101AFI20250124BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
G01N29/14
B30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119190
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】391009833
【氏名又は名称】株式会社ナ・デックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上田 衛
(72)【発明者】
【氏名】笹辺 正喜
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AC05
2G047BA05
2G047BC07
2G047GG20
2G047GG28
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】 加工不良判断装置等の一例を開示する。
【解決手段】 加工不良判断装置は、パンチが加工対象物に接触した時からパンチが最もダイスに近接した時までについて、加工開始後移動量毎の検出波の平均値を利用して加工対象物Wに加工不良が発生したかを判断する。これにより、加工不良が発生したか否かを的確に判断することが可能となり得る。なお、加工開始後移動量とは、単位移動量に自然数を乗算した値をいう。単位移動量とは、計測対象移動量より小さい移動量をいう。計測対象移動量とは、パンチが降下して加工対象物Wに接触した時から当該パンチが最もダイスに近接した時までの当該パンチの移動量をいう。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の加工対象物を塑性変形させるためのパンチ及びダイスを備えるプレス装置に適用され、前記加工対象物に加工不良が発生したか否かを判断する加工不良判断装置において、
加工対象物が変形又は破壊する際に発する弾性波を検出する弾性波検出器と、
前記弾性波検出器の検出信号を利用して、前記加工対象物に加工不良が発生したかを判断する加工不良判断部とを備え、
前記弾性波検出器の検出値を検出波とし、
前記パンチが前記加工対象物に接触した時から前記パンチが最も前記ダイスに近接した時までの当該パンチの移動量を計測対象移動量とし、
前記計測対象移動量より小さい移動量を単位移動量とし、
前記単位移動量に自然数を乗算した値を加工開始後移動量としたとき、
前記加工不良判断部は、
前記パンチが前記加工対象物に接触した時から前記パンチが最も前記ダイスに近接した時までについて、前記加工開始後移動量毎に、複数の前記検出波の平均値、最頻値、中央値、最大値又は最小値である測定データを演算する機能、及び
前記測定データと予め記憶されている良品についての測定データとを比較することにより、前記加工対象物に加工不良が発生したか否かを判断する機能
を発揮可能である加工不良判断装置。
【請求項2】
金属製の加工対象物を塑性変形させるためのパンチ及びダイスと、
加工対象物が変形又は破壊する際に発する弾性波を検出する弾性波検出器とを備えるプレス装置に適用され、
前記弾性波検出器の検出信号を利用して、前記加工対象物に加工不良が発生したかを判断する加工不良判断部として機能するコンピュータに組み込まれるソフトウェアにおいて、
前記弾性波検出器の検出値を検出波とし、
前記パンチが前記加工対象物に接触した時から前記パンチが最も前記ダイスに近接した時までの当該パンチの移動量を計測対象移動量とし、
前記計測対象移動量より小さい移動量を単位移動量とし、
前記単位移動量に自然数を乗算した値を加工開始後移動量としたとき、
前記コンピュータを、
前記パンチが前記加工対象物に接触した時から前記パンチが最も前記ダイスに近接した時までについて、前記加工開始後移動量毎に、複数の前記検出波の平均値、最頻値、中央値、最大値又は最小値である測定データを演算する機能、及び
前記測定データと予め記憶されている良品についての測定データとを比較することにより、前記加工対象物に加工不良が発生したか否かを判断する機能
を実現させるためのプレス装置用ソフトウェア。
【請求項3】
金属製の加工対象物を塑性変形させるためのパンチ及びダイスを備えるプレス装置において、
加工対象物が変形又は破壊する際に発する弾性波を検出する弾性波検出器と、
前記弾性波検出器の検出信号を利用して、前記加工対象物に加工不良が発生したかを判断する加工不良判断部とを備え、
前記弾性波検出器の検出値を検出波とし、
前記パンチが前記加工対象物に接触した時から前記パンチが最も前記ダイスに近接した時までの当該パンチの移動量を計測対象移動量とし、
前記計測対象移動量より小さい移動量を単位移動量とし、
前記単位移動量に自然数を乗算した値を加工開始後移動量としたとき、
前記加工不良判断部は、
前記パンチが前記加工対象物に接触した時から前記パンチが最も前記ダイスに近接した時までについて、前記加工開始後移動量毎に、複数の前記検出波の平均値、最頻値、中央値、最大値又は最小値である測定データを演算する機能、及び
前記測定データと予め記憶されている良品についての測定データとを比較することにより、前記加工対象物に加工不良が発生したか否かを判断する機能
を発揮可能であるプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレス加工対象物に加工不良が発生したか否かを判断する加工不良判断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の加工不良判断装置では、加工対象物の成形加工時に発生する弾性波を第1AEセンサ及び第2AEセンサにて検出するとともに、第1AEセンサにて検出された弾性波の積分値と第2AEセンサにて検出された弾性波の積分値との比を、予め測定された良品についての比と比較することにより、プレス成形の良否を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-285949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレス製品の量産機では、1ショットずつの速度がばらつくため、AEセンサにて検出すべきデータ数が絶えず変化する。
このため、特許文献1に記載の発明のごとく、検出値に基づく値と予め測定された良品についての値とを単純に比較するのみでは、加工不良が発生したか否かを的確に判断することが難しい。本開示は、当該点に鑑みた加工不良判断装置等の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
金属製の加工対象物を塑性変形させるためのパンチ(2)及びダイス(3)を備えるプレス装置に適用され、加工対象物に加工不良が発生したか否かを判断する加工不良判断装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、加工対象物が変形又は破壊する際に発する弾性波を検出する弾性波検出器(4)と、弾性波検出器(4)の検出信号を利用して、加工対象物に加工不良が発生したかを判断する加工不良判断部(5)とである。
【0007】
加工不良判断部(5)は、パンチ(2)が加工対象物に接触した時からパンチ(2)が最もダイス(3)に近接した時までについて、加工開始後移動量毎に、複数の検出波の平均値、最頻値、中央値、最大値又は最小値である測定データを演算する機能、及び測定データと予め記憶されている良品についての測定データとを比較することにより、加工対象物に加工不良が発生したか否かを判断する機能を発揮可能であることが望ましい。
【0008】
なお、弾性波検出器(4)の検出値を検出波とし、パンチ(2)が加工対象物に接触した時からパンチ(2)が最もダイス(3)に近接した時までの当該パンチ(2)の移動量を計測対象移動量とし、計測対象移動量より小さい移動量を単位移動量とし、単位移動量に自然数を乗算した値を加工開始後移動量とする。
【0009】
これにより、当該加工不良判断装置では、パンチ(2)が加工対象物に接触した時からパンチ(2)が最もダイス(3)に近接した時までについて、加工開始後移動量毎の検出波の平均値を利用して加工対象物に加工不良が発生したかを判断することが可能となるので、加工不良が発生したか否かを的確に判断することが可能となり得る。
【0010】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るプレス装置の模式図である。
図2】「加工不良の判断制御」を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0013】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0014】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された加工不良判断装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位のうち少なくとも1つを備える。
【0015】
(第1実施形態)
<1.プレス装置の概要>
本実施形態は、プレス装置に本開示に係る加工不良判断装置及びプレス装置用ソフトウェア一例が適用されたものである。
【0016】
本実施形態に係るプレス装置1は、図1に示されるように、パンチ2、ダイス3、AE(アコースティック・エミッション)センサ4、AE解析装置5、及び表示器6等を少なくとも備える。
【0017】
パンチ2及びダイス3は、金属製の加工対象物Wを塑性変形させるプレス加工機を構成する。パンチ2は、ダイス3に近接しながら加工対象物Wを押圧することにより、ダイス3と協働して当該加工対象物Wを塑性変形させる。
【0018】
AEセンサ4は、加工対象物Wが変形又は破壊する際に発する弾性波(アコースティック・エミッション波:AE波)を検出する弾性波検出器の一例である。AE解析装置5は、AEセンサ4の検出信号を利用して、加工対象物Wに加工不良が発生したかを判断する加工不良判断部を構成する。
【0019】
本実施形態に係るAE解析装置5は、CPU、ROM及びRAM等を有するコンピュータにて構成されている。そして、加工不良の判断機能は、ROM等の不揮発性記憶装置に予め記憶されたソフトウェアが、CPU、つまりAE解析装置5にて実行されることにより実現される。
【0020】
なお、AEセンサ4から出力された検出信号は、所定のインタフェース(図示せず。)を介してAE解析装置5に入力される。表示器6は、AE解析装置5による判断結果を、利用者が認識可能な形態で表示する。
【0021】
<2.AE解析装置による加工不良の判断>
<2.1 用語の定義>
<検出波(detection wave)>
検出波とは、AEセンサ4の検出値をいう。
【0022】
<計測対象移動量(Amount of movement to be measured)>
計測対象移動量とは、パンチ2が降下して加工対象物Wに接触した時から当該パンチ2が最もダイス3に近接した時までの当該パンチ2の移動量をいう。
【0023】
なお、以下の説明では、パンチ2の移動量として、当該パンチ2の変位に連動して回転する部材の回転角を用いる。具体的には、パンチ2が最もダイス3に離間した時を0°とし、パンチ2が最もダイス3に近接した時を180°とする。
【0024】
なお、AE解析装置5には、パンチ2の移動量(本実施形態では、上記の回転角)を検出するセンサ(図示せず。)の検出値が入力されている。AE解析装置5は、当該回転角をそのまま「パンチ2の移動量」として利用する。
【0025】
そして、「パンチ2が加工対象物に接触した時」に対応する移動量、つまり回転角は、予め試験又は数値シミレーション等にて確認された値が用いられる。したがって、例えば、パンチ2が降下して加工対象物Wに接触した時が145°である場合の計測対象移動量は、35°(=180°-145°)となる。
【0026】
<単位移動量(Unit travel amount)>
単位移動量とは、計測対象移動量より小さい移動量をいう。本実施形態では、単位移動量としては1°を採用している。
【0027】
<加工開始後移動量(Amount of movement after starting machining)>
加工開始後移動量とは、単位移動量に自然数を乗算した値をいう。例えば、単位移動量が1°である場合の加工開始後移動量は、1°、2°、3°・・・35°となる。
【0028】
<2.2 加工不良判断の概要>
AE解析装置5は、加工不良の判断をする際には、先ず、データ取得機能を実施する。次に、AE解析装置5は、比較機能を実施して加工不良の有無を判断する。
【0029】
なお、プレス機は、パンチ2の上下動を繰り返すことにより、加工対象物Wを連続的にプレス加工する。そして、移動量が0°~360°を1サイクル(以下、1ショットという。)としたとき、AE解析装置5は、データ取得機能及び比較機能を1ショット毎に実行する。
【0030】
<データ取得機能>
データ取得機能とは、パンチ2が加工対象物に接触した時(例えば、145°)からパンチ2が最もダイス3に近接した時(例えば、180°)までにおける、加工開始後移動量毎の測定データ(measurement data)を演算する機能である。
【0031】
具体的には、AE解析装置5は、予め決められた周期で検出波を取得可能である。当該1周期当たりのパンチ2の移動量は、単位移動量より小さい。このため、AE解析装置5は、パンチ2が単位移動量(本実施形態では、1°)だけ移動する間に、検出波を複数回(例えば、n回)検出する。
【0032】
そこで、AE解析装置5は、加工開始後移動量が1°であるとき、つまりパンチ2が145°から146°まで移動する間に取得した検出波の平均値を、加工開始後移動量が1°のときの測定データとする。
【0033】
具体的には、パンチ2が145°から146°まで移動する間に取得した検出値が、a1、a2、a3・・anである場合には、(a1+a2+a3+・・+an)/nを加工開始後移動量が1°のときの測定データとする。
【0034】
同様に、AE解析装置5は、加工開始後移動量が2°であるとき、つまりパンチ2が146°から147°まで移動する間に取得した検出波の平均値を、加工開始後移動量が2°のときの測定データとする。
【0035】
具体的には、パンチ2が146°から147°まで移動する間に取得した検出値が、b1、b2、b3・・bnである場合には、(b1+b2+b3+・・+bn)/nを加工開始後移動量が2°のときの測定データとする。
【0036】
同様に、AE解析装置5は、加工開始後移動量が3°であるとき、つまりパンチ2が147°から148°まで移動する間に取得した検出波の平均値を、加工開始後移動量が3°のときの測定データとする。
【0037】
具体的には、パンチ2が147°から148°まで移動する間に取得した検出値が、c1、c2、c3・・cnである場合には、(c1+c2+c3+・・+cn)/nを加工開始後移動量が3°のときの測定データとする。
【0038】
つまり、検出波の平均値とは、パンチ2が単位移動量だけ移動する間にAEセンサ4が検出した検出値の平均値である。そして、AE解析装置5は、加工開始後移動量が1°~35°において、加工開始後移動量毎に測定データを演算した後、それらの測定データを記憶装置(図示せず。)に記憶させる。
【0039】
<比較機能>
比較機能とは、「データ取得機能によって取得された測定データ」と「予め記憶されている良品についての測定データ(以下、良品データという。)」とを比較することにより、加工対象物Wに加工不良が発生したか否かを判断する機能である。
【0040】
良品データは、加工開始後移動量毎に予め測定されたデータである。つまり、良品データは、加工開始後移動量毎に関連付けられた良品の測定データの集合である。なお、本実施形態に係る良品データは、加工開始後移動量毎に予め決められた閾値である。
【0041】
<2.3 加工不良の判断の詳細>
図2は、AE解析装置5が1ショット毎に実行する「加工不良の判断制御」を示すフローチャートである。当該判断制御を実行するためのソフトウェアは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0042】
当該判断制御が起動されると、AE解析装置5は、起動信号がAE解析装置5に入力されたか否かを判断する(S1)。なお、起動信号とは、パンチ2が加工対象物に接触した時に発せられる信号である。
【0043】
起動信号がAE解析装置5に入力されると(S1:YES)、AE解析装置5は、検出波の情報を取得するとともに(S3)、パンチ2が単位移動量だけ移動する間に検出された検出値の平均値、つまり測定データを演算する(S5)。
【0044】
このとき、AE解析装置5は、加工開始後移動量毎に演算した測定データと当該加工開始後移動量とを関連付けた後、それらの測定データを記憶装置(図示せず。)に記憶させる。
【0045】
なお、「測定データと加工開始後移動量とを関連付ける」とは、例えば、加工開始後移動量が1°であるとき、つまりパンチ2が145°から146°まで移動する間についての測定データと加工開始後移動量「1°」とを関連付けることをいう。
【0046】
次に、AE解析装置5は、加工開始後移動量毎に、「(S5にて)取得された測定データ」それぞれと「対応する加工開始後移動量についての閾値」とを比較する(S7)。そして、複数の測定データの中に、閾値以上となる測定データが発見されたときには(S9:NG)、AE解析装置5は、表示器6に「加工不良が発生した」旨の警告を表示させた後(S11)、本制御を終了させる。
【0047】
複数の測定データそれぞれが対応する閾値未満であるとき、つまり、計測対象移動量内において、閾値以上となる測定データが発見されなかったときには(S9:OK)、AE解析装置5は、警告を表示することなく、本制御を終了させる。
【0048】
<3.本実施形態に係るプレス装置の特徴>
本実施形態に係るプレス装置1では、パンチ2が加工対象物Wに接触した時からパンチ2が最もダイス3に近接した時までについて、加工開始後移動量毎の検出波の平均値を利用して加工対象物Wに加工不良が発生したかを判断する。これにより、加工不良が発生したか否かを的確に判断することが可能となり得る。
【0049】
すなわち、一般的に、プレス装置では、1ショットずつの速度がばらつくの対して、AEセンサ4は、予め決められた周期でAE波を検出するので、AEセンサ4にて検出されたデータ数の総量が絶えず変化する。
【0050】
このため、不良品のデータ数も絶えず変化するため、データの総量を用いてプレス製品の良否を判断すると、加工不良が発生したか否かを的確に判断することが難しい。つまり、良品についての閾値を決定する際に用いたデータ総量と、判断対象となる加工時のデータ総量とが異なっていると、的確な判断結果を得ることが難しい。
【0051】
これに対して、本実施形態では、加工開始後移動量毎の検出波の平均値、つまりパンチ2が単位移動量だけ移動する間にAEセンサ4が検出した検出値の平均値を利用して加工対象物Wに加工不良が発生したかを判断する。
【0052】
したがって、良品についての閾値を決定する際に用いたデータ総量と、判断対象となる加工時のデータ総量とが相違していても、当該相違の影響度が小さくなり得る。したがって、本実施形態では、的確な判断結果を得ることが可能となり得る。
【0053】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、弾性波検出器として、AEセンサ4が用いられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ピエゾ素子センサ、歪みセンサ、静電容量センサ、渦電流センサ、又はレーザー干渉計弾性波検出器が構成されていてもよい。
【0054】
上述の実施形態では、単位移動量が1°であったので、加工開始後移動量は、1°、2°、3°・・35°となった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、単位移動量が5°である場合には、加工開始後移動量は、5°、10°、15°・・35°となる。また例えば、単位移動量が0.5°である場合には、加工開始後移動量は、0.5°、1°、1.5°・・35°となる。
【0055】
上述の実施形態では、パンチ2が単位移動量だけ移動する間にAEセンサ4が検出した検出値の平均値を測定データとした。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、(a)パンチ2が単位移動量だけ移動する間にAEセンサ4が検出した検出値の最頻値、中央値、最大値又は最小値を測定データとしてもよい。
【0056】
上述の実施形態に係るAEセンサ4は、パンチ2が単位移動量だけ移動する間に複数の検出値を取得した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、パンチ2が単位移動量だけ移動する間に弾性波を連続的に検出する構成であってもよい。
【0057】
なお、当該構成では、例えば、(b)パンチ2が単位移動量だけ移動する間に検出した検出値の積算値を、当該単位移動量だけ移動するために必要な時間で除算した値を測定データとしてもよい。
【0058】
換言すれば、当該開示に係るデータ取得機能は、「加工開始後移動量毎に、パンチ2が単位移動量だけ移動する間にAEセンサ4が検出した検出値を利用した測定データを演算する機能」であってもよい。
【0059】
なお、上記場合における「予め記憶されている良品についての測定データ、つまり図2中の閾値は、良品について、上記場合(a)又は(b)と同一の手法にて測定された測定データである必要がある。
【0060】
上述の実施形態では、計測対象移動量として、パンチ2が降下して加工対象物Wに接触した時から当該パンチ2が最もダイス3に近接した時までの当該パンチ2の移動量が採用されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0061】
すなわち、当該開示は、例えば、「パンチ2が降下して加工対象物Wに接触した時」に代えて、「予め試験等にて決められた時」としてもよい。「予め試験等にて決められた時」とは、例えば、加工対象物Wの塑性変形量が「亀裂等が発生し易い変形量」となる状態である。
【0062】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1… プレス装置
2… パンチ
3… ダイス
4… AEセンサ
5… AE解析装置
6… 表示器
図1
図2