(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025161360
(43)【公開日】2025-10-24
(54)【発明の名称】光学フィルムの検査装置、検査方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20251017BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064481
(22)【出願日】2024-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古門 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】吉良 隆一
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB03
2G051BA01
2G051BA20
2G051BB01
2G051BB05
2G051CA03
2G051CA04
(57)【要約】
【課題】光学フィルムに発生し得るクラック等の欠陥を精度良く検出可能な光学フィルムの検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置100は、光学フィルム10の法線方向の一方側に配置され、光学フィルムに対して光を照射する第1光源1及び第2光源2と、他方側に配置され、光学フィルムを撮像することで撮像画像を生成する撮像部3と、撮像画像に基づき、光学フィルムに存在する欠陥を検出する画像処理部4と、を備える。第1光源は、光学フィルムの法線方向から見た場合に、第1光源の光軸が光学フィルムの搬送方向に沿うように配置され、第2光源は、第2光源の光軸が搬送方向に対して直交する方向に沿うように配置され、撮像部は、第1光源及び第2光源から出射した光を直接受光しないように配置され、なお且つ、第1光源及び第2光源から光学フィルムに対して照射された光の正透過光を受光しないように配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に搬送される光学フィルムの検査装置であって、
前記光学フィルムの法線方向の一方側に配置され、前記光学フィルムに対して光を照射する第1光源及び第2光源と、
前記光学フィルムの法線方向の他方側に配置され、前記光学フィルムを撮像することで撮像画像を生成する撮像部と、
前記撮像画像に基づき、前記光学フィルムに存在する欠陥を検出する画像処理部と、を備え、
前記第1光源は、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記第1光源の光軸が前記搬送方向に沿うように配置され、
前記第2光源は、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記第2光源の光軸が前記搬送方向に対して直交する方向に沿うように配置され、
前記撮像部は、前記第1光源及び前記第2光源から出射した光を直接受光しないように配置され、なお且つ、前記第1光源及び前記第2光源から前記光学フィルムに対して照射された光の正透過光を受光しないように配置されている、
光学フィルムの検査装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記第1光源及び前記第2光源のうち、前記第1光源のみから前記光学フィルムに対して光を照射した状態で前記光学フィルムを撮像することで第1撮像画像を生成すると共に、前記第2光源のみから前記光学フィルムに対して光を照射した状態で前記光学フィルムを撮像することで第2撮像画像を生成し、
前記画像処理部は、前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像に基づき、前記光学フィルムに存在する欠陥を検出する、
請求項1に記載の光学フィルムの検査装置。
【請求項3】
前記撮像部は、その視軸が前記光学フィルムと交差する点における前記光学フィルムの法線に対して鋭角を成すように配置され、
前記第1光源及び前記撮像部は、前記法線に対して、前記搬送方向の同じ側に配置されている、
請求項1又は2に記載の光学フィルムの検査装置。
【請求項4】
前記撮像部は、その視軸が、前記法線に対して、10°~80°の角度を成すように配置され、
前記第1光源は、その光軸が、前記法線に対して、10°~80°の角度を成すように配置されている、
請求項3に記載の光学フィルムの検査装置。
【請求項5】
前記第1光源が、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記搬送方向に対して直交する方向に沿うように配列された複数の光源から構成されている、及び/又は、前記第2光源が、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記搬送方向に対して直交する方向に沿うように配列された複数の光源から構成されている、
請求項1又は2に記載の光学フィルムの検査装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記欠陥として、クラックを検出する、
請求項1又は2に記載の光学フィルムの検査装置。
【請求項7】
前記光学フィルムが延伸フィルムを含む、
請求項1又は2に記載の光学フィルムの検査装置。
【請求項8】
所定の搬送方向に搬送される光学フィルムの検査方法であって、
前記光学フィルムの法線方向の一方側に、前記光学フィルムに対して光を照射する第1光源及び第2光源を配置し、前記光学フィルムの法線方向の他方側に、前記光学フィルムを撮像することで撮像画像を生成する撮像部を配置する準備工程と、
前記第1光源及び前記第2光源のうち、少なくとも何れか一方の光源から前記光学フィルムに対して光を照射した状態で、前記撮像部で前記光学フィルムを撮像することで撮像画像を生成する撮像画像生成工程と、
前記撮像画像に基づき、前記光学フィルムに存在する欠陥を画像処理部で検出する欠陥検出工程と、を有し、
前記準備工程において、
前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記第1光源の光軸が前記搬送方向に沿うように、前記第1光源を配置し、
前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記第2光源の光軸が前記搬送方向に対して直交する方向に沿うように、前記第2光源を配置し、
前記撮像部が前記第1光源及び前記第2光源から出射した光を直接受光しないように、なお且つ、前記撮像部が前記第1光源及び前記第2光源から前記光学フィルムに対して照射された光の正透過光を受光しないように、前記撮像部を配置する、
光学フィルムの検査方法。
【請求項9】
長尺の光学フィルムを枚葉状に切断する切断工程と、
切断後の枚葉状の前記光学フィルムを検査する検査工程と、を有し、
前記検査工程では、切断後の枚葉状の前記光学フィルムに対して、請求項8に記載の検査方法を実行し、
前記検査工程において前記光学フィルムに存在する欠陥が検出された場合には、当該光学フィルムを廃棄する、
光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムに発生する欠陥を検出するための光学フィルムの検査装置、検査方法及びこの検査方法を用いた光学フィルムの製造方法に関する。特に、本発明は、偏光フィルムや位相差フィルム等の延伸フィルムを含む光学フィルムに発生し得るクラック等の欠陥を精度良く検出可能な、光学フィルムの検査装置、検査方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、偏光フィルムや位相差フィルム等の延伸フィルムを含む光学フィルムは、テレビやパーソナルコンピュータに用いられるのみならず、スマートフォン、スマートウォッチ、車載ディスプレイなど、多種多様のディスプレイ用途に用いられている。
これらの光学フィルムは、ロールツーロール方式で延伸処理や貼り合わせ処理等が施されて長尺の光学フィルムとして製造された後、用途に応じた形状を有する枚葉状に切断される。
【0003】
枚葉状に切断された光学フィルムに欠陥が存在する場合には、これが用いられるディスプレイの表示性能を維持できない。このため、枚葉状に切断された光学フィルムは、透過検査、クロスニコル検査、反射検査等によって検査され、欠陥が検出された場合には、その光学フィルムを廃棄している。
【0004】
ここで、偏光フィルムや位相差フィルム等の延伸フィルムを含む光学フィルムには、枚葉状に切断された後、クラックと称される微細なひび割れ状の欠陥が発生する場合がある。このクラックが密集して発生すると、光学フィルムが用いられるディスプレイの表示性能を維持できないため、検査によって密集したクラックを検出することが望まれている。
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討したところによれば、上記のクラックは、透過検査、クロスニコル検査、反射検査等の従来の検査方法では、精度良く検出できないという問題がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、枚葉状に切断する前の長尺の光学フィルムを検査する透過検査装置の一種として、投光部を2個設け、これら2個の投光部を、受光部に対してフィルム走行方向で上流側及び下流側にずらし、2個の投光部に対して欠陥が無いときに受光部が暗視野状態となり、欠陥があるときに受光部が受光状態となるように配置した検査装置が提案されている(特許文献1の請求項1等)。
具体的には、特許文献1に記載の検査装置では、フィルムの法線方向から見た場合に、2個の投光部は、その光軸が逆向きではあるものの、何れもフィルムの搬送方向に沿うように配置されている(特許文献1の
図1等)。
【0007】
本発明者らが検討したところによれば、特許文献1に記載のような検査装置を枚葉状に切断された光学フィルムに適用したとしても、クラックを精度良く検出できないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、偏光フィルムや位相差フィルム等の延伸フィルムを含む光学フィルムに発生し得るクラック等の欠陥を精度良く検出可能な、光学フィルムの検査装置、検査方法及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らは、透過検査における光源及び撮像部の配置を鋭意検討した。その結果、光源として、第1光源及び第2光源を用意し、光学フィルムの法線方向から見た場合に、第1光源の光軸が光学フィルムの搬送方向に沿うように、第1光源を配置し、第2光源の光軸が光学フィルムの搬送方向に直交する方向に沿うように、第2光源を配置することを考えた。そして、撮像部を、第1光源及び第2光源から出射した光を直接受光しないように配置し、なお且つ、第1光源及び第2光源から光学フィルムに対して照射された光の正透過光を受光しないように配置すると、撮像部によって生成される撮像画像において、クラック等の欠陥に対応する画素領域のコントラストが高まり、欠陥を精度良く検出できることを見出した。すなわち、第1光源、第2光源及び撮像部を特定の配置状態とすることで、従来の透過検査では検出し難いクラック等の欠陥を精度良く検出できることを見出した。
【0011】
本発明は、上記本発明者らの知見によって完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、所定の搬送方向に搬送される光学フィルムの検査装置であって、前記光学フィルムの法線方向の一方側に配置され、前記光学フィルムに対して光を照射する第1光源及び第2光源と、前記光学フィルムの法線方向の他方側に配置され、前記光学フィルムを撮像することで撮像画像を生成する撮像部と、前記撮像画像に基づき、前記光学フィルムに存在する欠陥を検出する画像処理部と、を備え、前記第1光源は、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記第1光源の光軸が前記搬送方向に沿うように配置され、前記第2光源は、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記第2光源の光軸が前記搬送方向に対して直交する方向に沿うように配置され、前記撮像部は、前記第1光源及び前記第2光源から出射した光を直接受光しないように配置され、なお且つ、前記第1光源及び前記第2光源から前記光学フィルムに対して照射された光の正透過光を受光しないように配置されている、光学フィルムの検査装置を提供する。
【0012】
本発明において、「第1光源の光軸」とは、第1光源から出射した光(光束)の中心軸を意味する。「第2光源の光軸」とは、第2光源から出射した光(光束)の中心軸を意味する。
本発明によれば、第1光源、第2光源及び撮像部が特定の配置状態とされるため、本発明者らが知見したように、撮像部によって生成される撮像画像において、クラック等の欠陥に対応する画素領域のコントラストが高まる。このため、画像処理部によって撮像画像に対して2値化処理等の画像処理を施すことで、クラック等の欠陥を精度良く検出可能である。
【0013】
好ましくは、前記撮像部は、前記第1光源及び前記第2光源のうち、前記第1光源のみから前記光学フィルムに対して光を照射した状態で前記光学フィルムを撮像することで第1撮像画像を生成すると共に、前記第2光源のみから前記光学フィルムに対して光を照射した状態で前記光学フィルムを撮像することで第2撮像画像を生成し、前記画像処理部は、前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像に基づき、前記光学フィルムに存在する欠陥を検出する。
【0014】
本発明者らの知見によれば、第1光源及び第2光源の双方から光学フィルムに対して同時に光を照射した状態で光学フィルムを撮像するよりも、何れか一方の光源のみから光学フィルムに対して光を照射した状態で光学フィルムを撮像した方が、何れか一方の光源のみから光を照射した状態でそれぞれ生成される撮像画像(第1撮像画像及び第2撮像画像)のうち、何れかの撮像画像(第1撮像画像又は第2撮像画像)におけるクラック等の欠陥に対応する画素領域のコントラストが高まり易い。換言すれば、コントラストの高まり易さは、クラック等の欠陥の延びる方向に依存し、欠陥の延びる方向に略直交する方向に光軸を有する光源のみから光を照射した状態で光学フィルムを撮像した方が、欠陥に対応する画素領域のコントラストが高まり易い。上記の好ましい構成によれば、第1撮像画像又は第2撮像画像におけるクラック等の欠陥に対応する画素領域のコントラストが高まるため、クラック等の欠陥をより一層精度良く検出可能である。
【0015】
好ましくは、前記撮像部は、その視軸が前記光学フィルムと交差する点における前記光学フィルムの法線に対して鋭角を成すように配置され、前記第1光源及び前記撮像部は、前記法線に対して、前記搬送方向の同じ側に配置されている。
【0016】
上記の好ましい構成において、撮像部の「視軸」は、撮像部の撮像視野の中心軸を意味する。
本発明者らの知見によれば、上記の好ましい構成により、撮像部によって生成される撮像画像において、クラック等の欠陥に対応する画素領域のコントラストが高まるため、クラック等の欠陥をより一層精度良く検出可能である。
【0017】
好ましくは、前記撮像部は、その視軸が、前記法線に対して、10°~80°の角度を成すように配置され、前記第1光源は、その光軸が、前記法線に対して、10°~80°の角度を成すように配置されている。
【0018】
本発明者らの知見によれば、上記の好ましい構成により、撮像部によって生成される撮像画像において、クラック等の欠陥に対応する画素領域のコントラストが高まるため、クラック等の欠陥をより一層精度良く検出可能である。
【0019】
好ましくは、前記第1光源が、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記搬送方向に対して直交する方向に沿うように配列された複数の光源から構成されている、及び/又は、前記第2光源が、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記搬送方向に対して直交する方向に沿うように配列された複数の光源から構成されている。
【0020】
上記の好ましい構成によれば、第1光源及び/又は第2光源が複数の光源から構成されているため、3次元的に見た場合に、第1光源及び/又は第2光源から出射する光の方向を多方向にすることができ、第1光源及び第2光源として単一の光源を用いる場合に比べて、クラック等の欠陥に対応する画素領域のコントラストが高まる可能性がある。また、光学フィルムの種類や検出する欠陥の種類等に応じて、欠陥に対応する画素領域のコントラストが高まるように、複数の光源のうちの予め選択した光源のみから光を出射することも可能となり、検査の自由度が高くなるという利点も有する。
【0021】
本発明は、前記画像処理部が、前記欠陥として、クラックを検出する場合に好適に用いられる。
【0022】
また、本発明は、前記光学フィルムが延伸フィルムを含む場合に好適に用いられる。
【0023】
また、前記課題を解決するため、本発明は、所定の搬送方向に搬送される光学フィルムの検査方法であって、前記光学フィルムの法線方向の一方側に、前記光学フィルムに対して光を照射する第1光源及び第2光源を配置し、前記光学フィルムの法線方向の他方側に、前記光学フィルムを撮像することで撮像画像を生成する撮像部を配置する準備工程と、前記第1光源及び前記第2光源のうち、少なくとも何れか一方の光源から前記光学フィルムに対して光を照射した状態で、前記撮像部で前記光学フィルムを撮像することで撮像画像を生成する撮像画像生成工程と、前記撮像画像に基づき、前記光学フィルムに存在する欠陥を画像処理部で検出する欠陥検出工程と、を有し、前記準備工程において、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記第1光源の光軸が前記搬送方向に沿うように、前記第1光源を配置し、前記光学フィルムの法線方向から見た場合に、前記第2光源の光軸が前記搬送方向に対して直交する方向に沿うように、前記第2光源を配置し、前記撮像部が前記第1光源及び前記第2光源から出射した光を直接受光しないように、なお且つ、前記撮像部が前記第1光源及び前記第2光源から前記光学フィルムに対して照射された光の正透過光を受光しないように、前記撮像部を配置する、光学フィルムの検査方法としても提供される。
【0024】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、長尺の光学フィルムを枚葉状に切断する切断工程と、切断後の枚葉状の前記光学フィルムを検査する検査工程と、を有し、前記検査工程では、切断後の枚葉状の前記光学フィルムに対して、前記検査方法を実行し、前記検査工程において前記光学フィルムに存在する欠陥が検出された場合には、当該光学フィルムを廃棄する、光学フィルムの製造方法としても提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る光学フィルムの検査装置及び検査方法によれば、偏光フィルムや位相差フィルム等の延伸フィルムを含む光学フィルムに発生し得るクラック等の欠陥を精度良く検出可能である。そして、本発明に係る光学フィルムの製造方法によれば、検査工程において、枚葉状の光学フィルムに発生したクラック等の欠陥を本発明に係る検査方法を用いて精度良く検出でき、欠陥を検出した場合には当該光学フィルムを廃棄するため、欠陥が発生している光学フィルムが製品に混ざるリスクを低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置の検査対象である光学フィルム10の概略構成例を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る検査装置100の概略構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図2に示す撮像部3によって生成される第2撮像画像の一例を示す図である。
【
図4】
図2に示す第1光源1の変形例の概略構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図2に示す第2光源2の変形例の概略構成を模式的に示す図である。
【
図6】光学フィルム10の不感帯を解消する方法の一例を説明する図である。
【
図7】検査装置100の変形例の概略構成を模式的に示す側面図である。
【
図8】検査装置100による検査方法を用いた光学フィルム10の製造方法の概略工程の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの検査装置について説明する。なお、各図は、参考的に表したものであり、各図に表された構成要素の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0028】
<光学フィルム10>
最初に、本実施形態に係る検査装置の検査対象である光学フィルム10の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る検査装置の検査対象である光学フィルム10の概略構成例を示す断面図である。
図1(a)は光学フィルム10の一例である光学積層体10Aの概略構成を、
図1(b)は光学フィルム10の他の例である光学積層体10Bの概略構成を示す。なお、
図1において、Xは光学フィルム10の搬送方向である水平方向を、YはX方向に直交する水平方向を、Zは鉛直方向(光学フィルム10の厚み方向)を示す。後述の他の図についても同様である。
【0029】
図1に示す光学フィルム10は、何れも用途に応じた形状(
図1に示す例では矩形)を有する枚葉状に切断されている。
図1(a)に示す光学フィルム10(光学積層体10A)は、偏光子11、保護フィルム12、13、位相差フィルム14、粘着剤層15及び剥離ライナー16が積層されて構成されている。
図1(b)に示す光学フィルム10(光学積層体10B)は、偏光子11、保護フィルム12、13、粘着剤層15、剥離ライナー16及び反射防止層(ARコート)17が積層されて構成されている。
以下、
図1に示す光学フィルム10の各構成要素について概説する。
【0030】
[偏光子11]
偏光子11は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルムで構成される。
樹脂フィルムとしては、偏光子として用いることができる任意の適切な樹脂フィルムを採用することができる。樹脂フィルムは、代表的には、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムである。
PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂を用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。
樹脂フィルムに含まれる二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、又は、二種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、ヨウ素が用いられる。
【0031】
樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであっても、二層以上の積層体であってもよい。
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理及び延伸処理(代表的には、一軸延伸処理)が施されたものが挙げられる。ヨウ素による染色処理は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することによって行われる。一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸後に染色を行ってもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
積層体から構成される偏光子の具体例としては、樹脂基材とこの樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層との積層体、又は、樹脂基材とこの樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体から構成される偏光子が挙げられる。樹脂基材とこの樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体から構成される偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得た後、この積層体を延伸及び染色してPVA系樹脂層を偏光子とすることにより作製することができる。
【0032】
偏光子11の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~10μmであり、特に好ましくは3μm~8μmである。
偏光子11は、好ましくは、波長380nm~780nmの範囲内の何れかの波長で吸収二色性を示す。偏光子11の単体透過率は、好ましくは40.0%~45.0%であり、より好ましくは41.5%~43.5%である。偏光子11の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0033】
[保護フィルム12、13]
保護フィルム12、13としては、任意の適切な樹脂フィルムが用いられる。樹脂フィルムの形成材料としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を意味する。
保護フィルム12、13の厚みは、代表的には10μm~100μmであり、好ましくは20μm~40μmである。
なお、偏光子11と、保護フィルム12、13との積層体が偏光フィルムPFである。
【0034】
[位相差フィルム14]
位相差フィルム14は、例えば、広視野角を付与する補償板であってもよいし、偏光フィルムPFと共に用いられて円偏光を生成するための位相差板(円偏光板)であってもよい。位相差フィルム14の厚みは、例えば、1~200μmである。
位相差フィルム14は、代表的には、上記の特性を実現可能な任意の適切な樹脂に延伸処理(代表的には、一軸延伸処理)を施すことで形成される。位相差フィルム14を形成する樹脂としては、例えば、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリビニルアルコール、ポリフマル酸エステル、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ノルボルネン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂及びポリウレタンが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。好ましくは、シクロオレフィン系のノルボルネン樹脂である。
【0035】
以上に説明した偏光子11、保護フィルム12、13及び位相差フィルム14は、任意の適切な接着剤層(図示せず)を介して、それぞれ貼り合わせられて積層されている。接着剤層を構成する接着剤として、代表的にはPVA系接着剤又は活性化エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0036】
[粘着剤層15]
粘着剤層15は、
図1(a)に示す光学積層体10Aの場合、位相差フィルム14と剥離ライナー16との間に介在し、
図1(b)に示す光学積層体10Bの場合、保護フィルム13と剥離ライナー16との間に介在し、何れの場合も剥離ライナー16を他の構成要素と貼り合わせて積層するための層である。
粘着剤層15を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及び、ポリエーテル系粘着剤が挙げられる。
粘着剤層15の厚みは、例えば10μm~100μmにすることができる。
【0037】
[剥離ライナー16]
剥離ライナー16としては、任意の適切な構成を採用することができる。具体例としては、剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルム、不織布又は紙が挙げられる。剥離剤の具体例としては、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤が挙げられる。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられる。剥離ライナー16の厚みは、例えば10μm~100μmとすることができる。
【0038】
[反射防止層17]
反射防止層17は、
図1(b)に示す光学積層体10Bにおいて、保護フィルム12の偏光子11と反対側の表面に形成される。反射防止層17は、保護フィルム12に反射防止処理(AR処理)が施されることによって形成される。
【0039】
本実施形態に係る検査装置の検査対象である光学フィルム10は、以上に説明したような概略構成を有し、ロールツーロール方式で長尺の光学フィルム10として製造された後、用途に応じた形状を有する枚葉状に切断されている。なお、光学フィルム10の更に詳しい構成については公知であるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
ここで、光学フィルム10には、枚葉状に切断された後、搬送過程における搬送装置との機械的接触など種々の要因によって、クラックと称される微細なひび割れ状の欠陥が発生する場合がある。本発明者らの知見によれば、
図1(a)に示す光学積層体10Aの場合、クラックCは位相差フィルム14に発生し易く、
図1(b)に示す光学積層体10Bの場合、クラックCは反射防止層17に発生し易い。
以下に説明する本実施形態に係る検査装置は、上記のクラックCを検出するのに好適に用いられる。
【0041】
<検査装置100>
次に、本実施形態に係る検査装置100の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る検査装置100の概略構成を模式的に示す図である。
図2(a)は平面図であり、
図2(b)は側面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る検査装置100は、ベルトコンベア等の搬送装置(
図2には図示せず)によって所定の搬送方向(本実施形態ではX方向)に搬送される光学フィルム10の検査装置であって、第1光源1と、第2光源2と、撮像部3と、画像処理部4と、を備える。なお、
図2では図示を省略しているが、第1光源1、第2光源2及び撮像部3は、それぞれ所定の支持手段によって、光学フィルム10の搬送ラインの所定位置で支持されている。
以下、
図2に示す検査装置100の各構成要素について説明する。
【0042】
[第1光源1]
第1光源1は、光学フィルム10の法線N方向の一方側(本実施形態では、
図2(b)に示すように、光学フィルム10の上側)に配置され、光学フィルム10に対して光を照射する。
第1光源1としては、光学フィルム10を透過可能な波長の光を出射し、光学フィルム10全体に光を照射できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、LEDやハロゲンランプを用いることができる。
第1光源1は、光学フィルム10の法線N方向から見た場合に、第1光源1の光軸A1が光学フィルム10の搬送方向(X方向)に沿うように配置されている。そして、第1光源1は、例えば、その光軸A1が、法線Nに対して、10°~80°の角度θ
2を成すように配置されている。
【0043】
[第2光源2]
第2光源2は、第1光源1と同様に、光学フィルム10の法線N方向の一方側(本実施形態では、
図2(b)に示すように、光学フィルム10の上側)に配置され、光学フィルム10に対して光を照射する。
第2光源2としては、第1光源1と同様に、光学フィルム10を透過可能な波長の光を出射し、光学フィルム10全体に光を照射できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、LEDやハロゲンランプを用いることができる。
第2光源2は、光学フィルム10の法線N方向から見た場合に、第2光源2の光軸A2が光学フィルム10の搬送方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)に沿うように配置されている。
【0044】
[撮像部3]
撮像部3は、光学フィルム10の法線N方向の他方側(本実施形態では、
図2(b)に示すように、光学フィルム10の下側)に配置され、光学フィルム10を撮像することで撮像画像を生成する。具体的には、撮像部3は、第1光源1や第2光源2から光学フィルム10に照射され、光学フィルム10を透過した光を受光して結像することで、撮像画像を生成する。
撮像部3としては、第1光源1及び第2光源から出射した光の波長に感度を有する限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、CCDやCMOSを結像素子とするエリアセンサカメラを用いることができる。撮像部3として、エリアセンサカメラを用いる場合、例えば、光学フィルム10全体が入るように、撮像部3の撮像視野が設定される。そして、X方向に搬送される光学フィルム10全体が撮像部3の撮像視野に入ったタイミングで光学フィルム10の搬送を停止する。撮像部3によって停止した光学フィルム10の撮像画像の生成が終了した後に、再び光学フィルム10をX方向に搬送し、次の光学フィルム10全体が撮像部3の撮像視野に入るまで搬送を継続すること(すなわち、間欠搬送を行うこと)が好ましい。ただし、本発明は、これに限るものではなく、撮像部3として、光学フィルム10の搬送方向に対して直交する方向(Y方向)に沿って複数の結像素子が一直線上に配列されたラインセンサを用いる場合には、光学フィルム10の搬送を停止することなく、連続的に搬送して撮像画像を生成することも可能である。
【0045】
撮像部3は、第1光源1及び第2光源2から出射した光を直接受光しないように配置されている。すなわち、第1光源1及び第2光源2から出射した光のうち、光学フィルム10に照射されない光を受光しないように配置されている。また、撮像部3は、第1光源1及び第2光源2から光学フィルム10に対して照射された光の正透過光(光学フィルム10を透過して散乱せずにそのまま直進する光)を受光しないように配置されている。
具体的には、撮像部3は、その視軸Vが光学フィルム10と交差する点における光学フィルム10の法線Nに対して鋭角(角度θ
1)を成すように配置されている。角度θ
1は、例えば、10°~80°に設定される。また、撮像部3は、光学フィルム10の搬送方向について、法線Nに対して、第1光源1と同じ側(
図2(b)に示す例では、法線Nの右側)に配置されている。なお、
図2に示す例では、撮像部3の視軸Vが第1光源1の光軸A1に近くなるように(すなわち、光学フィルム10の搬送方向に近くなるように)、撮像部3が配置されているが、本発明はこれに限るものではなく、撮像部3の視軸Vが第2光源2の光軸A2に近くなるように(すなわち、光学フィルム10の搬送方向に対して直交する方向に近くなるように)、撮像部3が配置されていてもよい。
【0046】
撮像部3は、第1光源1及び第2光源2の双方から光学フィルム10に対して同時に光を照射した状態で光学フィルム10を撮像し、撮像画像を生成することも可能である。ただし、撮像画像におけるクラックCに対応する画素領域のコントラストを高める上では、撮像部3は、第1光源1及び第2光源2のうち、第1光源1のみから光学フィルム10に対して光を照射した状態で光学フィルム10を撮像することで第1撮像画像を生成すると共に、第2光源2のみから光学フィルム10に対して光を照射した状態で光学フィルム10を撮像することで第2撮像画像を生成することが好ましい。
図3は、撮像部3によって生成される第2撮像画像の一例を示す図である。
図3に示すように、クラックCに対応する画素領域は、他の領域に対して明るく、コントラストが高くなっていることが分かる。
【0047】
[画像処理部4]
画像処理部4は、撮像部3と電気的に接続されており、撮像部3によって生成された撮像画像が入力される。画像処理部4は、撮像画像に基づき(例えば、撮像画像に対して2値化処理等の画像処理を施すことで)、光学フィルム10に存在する欠陥(本実施形態では、クラックC)を検出する。撮像部3が第1撮像画像及び第2撮像画像を生成する場合には、画像処理部4は、第1撮像画像及び第2撮像画像のそれぞれに対して画像処理を施すことで、光学フィルム10に存在する欠陥を検出する。
画像処理部4としては、例えば、撮像画像を画像処理して光学フィルム10に存在する欠陥を検出するための画像処理プログラムが記憶されたコンピュータを用いることができる。
【0048】
本実施形態に係る検査装置100は、以上に説明した構成(第1光源1、第2光源2及び撮像部3が特定の配置状態とされた構成)を有するため、撮像部3によって生成される撮像画像において、クラックCに対応する画素領域のコントラストが高まる。このため、画像処理部4によって撮像画像に対して2値化処理等の画像処理を施すことで、クラックCを精度良く検出可能である。
【0049】
なお、
図2では、第1光源1及び第2光源2がそれぞれ単一の光源である場合を例示したが、本発明はこれに限るものではない。第1光源1及び第2光源2のうち、少なくとも何れか一方を複数の光源から構成することも可能である。また、単一の光源であっても、
図2に示すものとは異なり、光学フィルム10の寸法よりも長いライン光源を用いることも可能である。すなわち、第1光源1として光学フィルム10のY方向の寸法よりも長いライン光源を用いたり、第2光源2として光学フィルム10のX方向の寸法よりも長いライン光源を用いることも可能である。
【0050】
図4は、第1光源1の変形例の概略構成を模式的に示す図である。
図4(a)は平面図であり、
図4(b)は側面図である。
図4(a)及び
図4(b)の左図は、第1光源の変形例における各光源の光軸を示す図であり、
図4(a)及び
図4(b)の右図は、それぞれ角度θ
3、θ
4を説明する図である。
図4に示すように、検査装置100が備える第1光源1としては、光学フィルム10の法線方向から見た場合に、光学フィルム10の搬送方向に対して直交する方向(Y方向)に沿うように配列された複数の光源1a、1b、1cから構成されたものを採用することも可能である。
図4では、便宜上、第1光源1が3つの光源1a、1b、1cから構成されている場合を例示しているが、複数の光源である限り、その個数に制限はない。また、
図4では、各光源1a、1b、1cが光学フィルム10の搬送方向(X方向)から見て円弧状に配置されている(所定の円弧に沿って配置されている)が、これに限るものではなく、直線状に配置されてもよい。
図4(a)及び
図4(b)の左図に示すように、各光源1a、1b、1cの光軸A1a、A1b、A1cの方向は、それぞれ異なる可能性があるが、光源1a~1c全体としての光軸(光源1の光軸)は、
図2に示す場合と同様に、光学フィルム10の搬送方向(X方向)に沿ったものとなる。
なお、
図4(a)の右図に示すように、光学フィルム10の法線方向から見た場合に、各光源1a、1b、1cと光学フィルム10の中心Cとを結ぶ直線L(
図4(a)の右図では、代表して光源1aと光学フィルム10の中心Cとを結ぶ直線のみを図示)と、光学フィルム10の搬送方向に対して直交する方向(Y方向)との成す角度をθ
3とし、
図4(b)の右図に示すように、光学フィルム10の搬送方向から見た場合に、各光源1a、1b、1cと光学フィルム10の中心Cとを結ぶ直線L(
図4(b)の右図では、代表して光源1aと光学フィルム10の中心Cとを結ぶ直線のみを図示)と、光学フィルム10の搬送方向に対して直交する方向(Y方向)との成す角度をθ
4とすると、角度θ
3は、45°~135°であることが好ましく、角度θ
4は、10°~170°であることが好ましい。
【0051】
図5は、第2光源2の変形例の概略構成を模式的に示す図である。
図5(a)は平面図であり、
図5(b)は側面図である。
図5に示すように、検査装置100が備える第2光源2としては、光学フィルム10の法線方向から見た場合に、光学フィルム10の搬送方向に対して直交する方向(Y方向)に沿うように配列された複数の光源2a、2b、2cから構成されたものを採用することも可能である。
図5では、便宜上、第2光源2が3つの光源2a、2b、2cから構成されている場合を例示しているが、複数の光源である限り、その個数に制限はない。また、
図5では、各光源2a、2b、2cが光学フィルム10の搬送方向(X方向)から見て円弧状に配置されている(所定の円弧に沿って配置されている)が、これに限るものではなく、直線状に配置されてもよい。
図5に示すように、各光源2a、2b、2cの光軸A2a、A2b、A2cの方向は、それぞれ異なる可能性があるが、光源2a~2c全体としての光軸(光源2の光軸)は、
図2に示す場合と同様に、光学フィルム10の搬送方向に対して直交する方向(Y方向)に沿ったものとなる。
【0052】
また、光学フィルム10を搬送する搬送装置としてベルトコンベアを用いる場合、撮像部3の撮像視野に搬送ベルトが入ってしまうことで、第1光源1及び第2光源2から出射され、光学フィルム10を透過した光の一部が、搬送ベルトで遮られてしまい、撮像部3で受光できない(したがって、光学フィルム10の一部に検査できない不感帯が生じる)状況になるおそれがある。
この場合には、検査装置100及びベルトコンベアをそれぞれ光学フィルム10の搬送方向(X方向)に2つ並べて設置し、各ベルトコンベアが有する搬送ベルトの位置をずらすことで、一方の検査装置100で検査できない光学フィルム10の不感帯を、他方の検査装置100で検査することが考えられる。
【0053】
図6は、光学フィルム10の不感帯を解消する方法の一例を説明する図である。
図6(a)は側面図であり、
図6(b)は平面図である。
図6(b)では、第1光源1、第2光源2及び撮像部3の図示は省略している。
図6に示すように、光学フィルム10の不感帯を解消するには、検査装置100及びベルトコンベア20をそれぞれ光学フィルム10の搬送方向(X方向)に2つ並べて設置する。各ベルトコンベア20は、一対のローラ21と、一対のローラ21間に掛け渡された複数の搬送ベルト22と、を有する。搬送方向上流側に位置する一方のベルトコンベア20aで搬送される光学フィルム10については、搬送方向上流側に位置する一方の検査装置100の第1光源1及び第2光源2から出射され、光学フィルム10を透過した光の一部が、各搬送ベルト22で遮られて、撮像部3で受光できないため、不感帯が生じてしまう。しかしながら、搬送方向下流側に位置する他方のベルトコンベア20bでは、各搬送ベルト22が掛け渡されている位置が、ベルトコンベア20aの各搬送ベルト22に対して、光学フィルム10の搬送方向に直交する方向(Y方向)にずれている(
図6に示す例では、ベルトコンベア20b全体がずれている)。このため、搬送方向下流側に位置する他方の検査装置100の第1光源1及び第2光源2から出射され、搬送方向上流側では不感帯となっていた光学フィルム10の部分を透過した光を、他方の検査装置100の撮像部3で受光できることになり、検査可能である。したがって、搬送方向上流側及び下流側の双方の検査装置100を用いれば、光学フィルム10の不感帯を解消可能である。
なお、
図6では、図示を省略しているが、画像処理部4は、搬送方向上流側の撮像部3及び搬送方向下流側の撮像部3の双方に電気的に接続して共有すれば、敢えて2つ設ける必要はない。
【0054】
さらに、検査装置100として、撮像部3が第1光源1及び第2光源2から出射した光を直接受光しないように、遮蔽板を備える構成を採用することも可能である。
図7は、検査装置100の変形例(遮蔽板を備える検査装置)の概略構成を模式的に示す側面図である。
図7に示す検査装置100は、第1光源1及び第2光源2から出射した光のうち、光学フィルム10に照射されない光が撮像部3に直接受光されないように、当該光(光学フィルム10に照射されない光)を遮る遮蔽板5を備えるため、撮像部3が第1光源1及び第2光源2から出射した光を直接受光しないことを確実にできる。
【0055】
以下、以上に説明した検査装置100による検査方法を用いた光学フィルム10の製造方法について説明する。
図8は、検査装置100による検査方法を用いた光学フィルム10の製造方法の概略工程の一例を示すフロー図である。
図8に示すように本実施形態に係る光学フィルム10の製造方法は、切断工程ST1と、検査工程ST2を、を有する。切断工程ST1では、長尺の光学フィルム10を枚葉状に切断する。検査工程ST2では、切断後の枚葉状の光学フィルム10を検査装置100を用いて検査する。
【0056】
具体的には、検査工程ST2では、準備工程、撮像画像生成工程及び欠陥検出工程を実行する。
準備工程では、光学フィルム10の法線N方向の一方側(前述の
図2(b)に示す例では光学フィルム10の上側)に、光学フィルム10に対して光を照射する第1光源1及び第2光源2を配置し、光学フィルム10の法線N方向の他方側(前述の
図2(b)に示す例では光学フィルム10の下側)に、光学フィルム10を撮像することで撮像画像を生成する撮像部3を配置する。第1光源1、第2光源2及び撮像部3のより具体的な配置条件は、前述の通りである。
そして、撮像画像生成工程では、第1光源1及び第2光源2のうち、少なくとも何れか一方の光源から光学フィルム10に対して光を照射した状態で、撮像部3で光学フィルム10を撮像することで撮像画像を生成する。
最後に、欠陥検出工程では、撮像画像に基づき、光学フィルム10に存在する欠陥を画像処理部4で検出する。
【0057】
本実施形態に係る光学フィルム10の製造方法では、検査工程ST2において光学フィルム10に存在する欠陥が検出されなかった場合(
図8に示すST3において「No」の場合)に、当該光学フィルムを製品として出荷する(
図8に示すST4)。
一方、本実施形態に係る光学フィルム10の製造方法では、検査工程ST2において光学フィルム10に存在する欠陥が検出された場合(
図8に示すST3において「Yes」の場合)には、欠陥が発生している光学フィルム10が製品に混ざるリスクを確実に防止するため、当該光学フィルムを一律に廃棄する(
図8に示すST7)ことも可能である。しかしながら、
図8に示す例では、好ましい態様として、製品歩留まりを少しでも向上させるために、検査工程ST2において光学フィルム10に存在する欠陥が検出された場合であっても、所定の条件に合致すればその一部を製品として出荷する態様を採用している。具体的には、検査工程ST2において光学フィルム10に存在する欠陥が検出された場合(
図8に示すST3において「Yes」の場合)には、当該光学フィルム10をオペレータが目視で検査する目視検査を行う(
図8に示すST5)。そして、その目視検査でも欠陥が検出された場合(
図8に示すST6で「Yes」の場合)には、当該光学フィルム10を廃棄する(
図8に示すST7)。一方、目視検査では欠陥が検出されなかった場合(
図8に示すST6で「No」の場合)には、検査工程ST2での欠陥検出が過検出であったと判断し、当該光学フィルム10を製品として出荷する(
図8に示すST4)。
以上のように、本実施形態に係る光学フィルム10の製造方法によれば、検査工程ST2において、枚葉状の光学フィルム10に発生したクラック等の欠陥を検査装置100による検査方法を用いて精度良く検出でき、欠陥を検出した場合には基本的に当該光学フィルム10を廃棄するため、欠陥が発生している光学フィルム10が製品に混ざるリスクを低減可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・第1光源
2・・・第2光源
3・・・撮像部
4・・・画像処理部
10・・・光学フィルム
100・・・検査装置
C・・・クラック