(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016139
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】造水システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/04 20230101AFI20250124BHJP
C02F 1/16 20230101ALI20250124BHJP
【FI】
C02F1/04 A
C02F1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119215
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 充志
【テーマコード(参考)】
4D034
【Fターム(参考)】
4D034AA01
4D034BA03
4D034CA12
4D034CA13
4D034CA14
4D034DA04
(57)【要約】
【課題】掃気空気冷却水の廃熱を有効利用できる造水システムを提供する。
【解決手段】船舶に取り入れられた海水を淡水化する造水システム1であって、造水システム1は、海水を加熱して蒸発させる加熱器3、及び、海水の蒸発により発生する蒸気を冷却して凝縮させる復水器4を備える造水装置2と、船舶用内燃機関(ディーゼルエンジン10)に供給される掃気空気を掃気空気冷却水との熱交換により冷却するように構成された掃気空気冷却器14と、加熱器3に供給される海水を掃気空気冷却器14から排出される掃気空気冷却水の少なくとも一部との熱交換により加熱するように構成された給水加熱器5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に取り入れられた海水を淡水化する造水システムであって、
海水を加熱して蒸発させる加熱器、及び、海水の蒸発により発生する蒸気を冷却して凝縮させる復水器を備える造水装置と、
船舶用内燃機関に供給される掃気空気を掃気空気冷却水との熱交換により冷却するように構成された掃気空気冷却器と、
前記加熱器に供給される海水を前記掃気空気冷却器から排出される掃気空気冷却水の少なくとも一部との熱交換により加熱するように構成された給水加熱器と、
を備える、造水システム。
【請求項2】
前記復水器は、海水の蒸発により発生する蒸気を前記船舶に取り入れられた海水との熱交換により冷却するように構成されており、
前記復水器において前記蒸気と熱交換した後の海水が前記給水加熱器において加熱される、請求項1に記載の造水システム。
【請求項3】
前記掃気空気冷却水が清水である、請求項1に記載の造水システム。
【請求項4】
前記加熱器は、海水を前記内燃機関の冷却に使用されたジャケット冷却水との熱交換により加熱するように構成されている、請求項1に記載の造水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水を淡水化する造水システムに関し、船舶の主機関であるディーゼルエンジンなどの内燃機関における廃熱を利用した造水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、船舶に搭載したディーゼルエンジンなどの内燃機関からの廃熱を熱源として利用して、海から汲み上げた海水を真空下などの減圧下で蒸発させて淡水を製造することが従来から行われている。例えば特許文献1に記載の造水装置では、ディーゼルエンジンに供給される掃気空気の冷却に使用された掃気空気冷却水を造水装置に導き、造水装置において、掃気空気冷却水の廃熱を海水の蒸発に利用している。造水装置では、海水を掃気空気冷却水との熱交換により蒸発させ、発生した蒸気を冷却して凝縮することで、海水を淡水化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、掃気空気の冷却に使用された掃気空気冷却水の温度は、掃気空気冷却水が清水の場合で約60℃程度であり、掃気空気冷却水が海水の場合は清水の場合よりも一般的に低い。造水装置では、減圧下において海水を蒸発させているものの、約60℃の掃気空気冷却水では海水を効率よく蒸発させることが困難である。そのため、掃気空気冷却水の廃熱を造水装置における造水の主な熱源に利用した場合、十分な量の淡水(清水)を得るための熱量が足りずに造水装置の性能が低下するという課題がある。もしくは、十分な量の淡水(清水)を得るために海水及び掃気空気冷却水の熱交換の際の伝熱面積を大きく確保すると、造水装置が大型化するという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決することに着目してなされたものであり、掃気空気冷却水の廃熱を有効利用できる造水システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の項1に記載の造水システムを主題とする。
【0007】
項1.船舶に取り入れられた海水を淡水化する造水システムであって、
海水を加熱して蒸発させる加熱器、及び、海水の蒸発により発生する蒸気を冷却して凝縮させる復水器を備える造水装置と、
船舶用内燃機関に供給される掃気空気を掃気空気冷却水との熱交換により冷却するように構成された掃気空気冷却器と、
前記加熱器に供給される海水を前記掃気空気冷却器から排出される掃気空気冷却水の少なくとも一部との熱交換により加熱するように構成された給水加熱器と、
を備える、造水システム。
【0008】
また本発明の造水システムは、上記項1に記載の造水システムの好ましい態様として、以下の項2に記載の造水システムを包含する。
【0009】
項2.前記復水器は、海水の蒸発により発生する蒸気を前記船舶に取り入れられた海水との熱交換により冷却するように構成されており、
前記復水器において前記蒸気と熱交換した後の海水が前記給水加熱器において加熱される、項1に記載の造水システム。
【0010】
また本発明の造水システムは、上記項1から項2に記載の造水システムの好ましい態様として、以下の項3に記載の造水システムを包含する。
【0011】
項3.前記掃気空気冷却水が清水である、請求項1又は2に記載の造水システム。
【0012】
また本発明の造水システムは、上記項1から項3に記載の造水システムの好ましい態様として、以下の項4に記載の造水システムを包含する。
【0013】
項4.前記加熱器は、海水を前記内燃機関の冷却に使用されたジャケット冷却水との熱交換により加熱するように構成されている、項1から3のいずれか一項に記載の造水システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の造水システムによれば、掃気空気冷却水の廃熱を有効利用して、造水装置の性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る造水システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本発明の造水システムは、船舶において推進力を発生させる主機関である内燃機関からの廃熱を、造水装置における海水の淡水化に利用することで、造水装置の性能向上を実現するものである。内燃機関は、例えばディーゼルエンジンである。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る造水システム1の概略構成図である。造水システム1は、加熱器3及び復水器4を備えた造水装置2と、ディーゼルエンジン10に供給される掃気空気を冷却する掃気空気冷却器14と、給水加熱器5と、を少なくとも備える。
【0018】
ディーゼルエンジン10は、燃料油及び燃料ガスの少なくともいずれかを主燃料とし、主燃料を掃気空気とともに燃焼させる内燃機関である。ディーゼルエンジン10は、第一循環流路15により、ディーゼルエンジン10を冷却するための冷却水(ジャケット冷却水)が循環している。
【0019】
第一循環流路15は、ディーゼルエンジン10にジャケット冷却水を供給する管路であり、ポンプ19の駆動によりジャケット冷却水は第一循環流路15を循環する。第一循環流路15には、流量調整弁20及び冷却器21が接続されている。流量調整弁20は、ディーゼルエンジン10に供給されるジャケット冷却水の流量を調整する。流量調整弁20には流量計が備えられていてもよい。冷却器21は、ディーゼルエンジン10から排出されて高温となったジャケット冷却水を冷却する。冷却器21は、例えば熱交換器であり、セントラル冷却器から冷却水が供給される。冷却器21では、ジャケット冷却水が冷却水との熱交換により冷却される。
【0020】
過給機11は、ディーゼルエンジン10に掃気空気を供給する。過給機11は、ディーゼルエンジン10が主燃料を燃焼させることにより排出される排出ガスにより駆動されるタービン12と、タービン12の回転動力によって外気を圧縮する圧縮機13とを備える。過給機11は、圧縮された外気を掃気空気としてディーゼルエンジン10に供給する。
【0021】
掃気空気冷却器14は、過給機11からディーゼルエンジン10に供給される掃気空気を冷却する。掃気空気は、断熱圧縮されて高温となっているため、空気密度(単位体積当たりの重量)を高めるなどの目的で、掃気空気冷却器14において冷却されてからディーゼルエンジン10に供給される。掃気空気冷却器14は、例えば熱交換器であり、第二循環流路17により、掃気空気を冷却するための冷却水(掃気空気冷却水)が循環している。掃気空気冷却水には、清水又は海水が用いられる。
【0022】
第二循環流路17は、掃気空気冷却器14に掃気空気冷却水を供給する管路であり、掃気空気冷却水は循環ポンプ22の駆動により第二循環流路17を循環する。第二循環流路17は、流量調整弁23及び冷却器24が接続されている。流量調整弁23は、掃気空気冷却器14に供給される掃気空気冷却水の流量を調整する。流量調整弁23には流量計が備えられていてもよい。冷却器24は、掃気空気冷却器14において掃気空気を冷却して高温となった掃気空気冷却水を冷却する。冷却器24は、例えば熱交換器であり、セントラル冷却器から冷却水が供給される。冷却器24では、掃気空気冷却水が冷却水との熱交換により冷却される。
【0023】
造水装置2は、海水を加熱して蒸気を発生させた後、気液分離し、気液分離後の蒸気を凝縮することによって淡水を生成する。造水装置2内は、例えば水エゼクタなどの減圧手段により、減圧(真空)状態に保持されている。造水装置2は、海水を淡水化するものであれば特に限定されない。造水装置2は、例えば、フラッシュ式の造水装置(例えば特開2009-90228号公報)、プレート式の造水装置(例えば特開平9-299927号公報)、多管式の造水装置(例えば特開2013-166141号公報)、膜蒸留式の造水装置(例えば特開平6-7644号公報)など、を例示できる。造水装置2は、単効用式の蒸発濃縮装置であってもよいし、二重効用以上の多重効用式の蒸発濃縮装置であってもよい。
【0024】
造水装置2において、加熱器3は、造水装置2に導入される海水を加熱して蒸発させる。加熱器3には、海水供給流路6により、淡水の原料となる海水が供給される。加熱器3は、特に限定されないが、例えばチューブラー式の熱交換器を備えている。加熱器3には、海水を蒸発させるための熱源として、特に限定されないが、例えばディーゼルエンジン10の冷却に使用されたジャケット冷却水が供給される。加熱器3では、供給される海水がジャケット冷却水との熱交換により加熱され、温度が上昇した後に蒸発する。海水の蒸発により発生した蒸気は、復水器4に供給される。
【0025】
ジャケット冷却水は、ディーゼルエンジン10を冷却した後の温度が約80℃から90℃である。そのため、減圧下においてはジャケット冷却水により海水を加熱することで効果的に海水を蒸発させることができる。そのため、ジャケット冷却水を造水装置2における造水の主な熱源に利用することで、十分な量の淡水(清水)を得ることができる。
【0026】
加熱器3は、第一バイパス流路16により、ディーゼルエンジン10を冷却した後のジャケット冷却水が循環している。第一バイパス流路16は、ディーゼルエンジン10の冷却により高温となったジャケット冷却水を加熱器3に導く管路である。ジャケット冷却水の一部は、第一バイパス流路16を介して、第一循環流路15から分流した後に加熱器3を通過して第一循環流路15に還流する。
【0027】
第一バイパス流路16には、温度センサ25及び流量調整弁26が接続されている。流量調整弁26は、第一循環流路15から第一バイパス流路16へ分流するジャケット冷却水(加熱器3に供給されるジャケット冷却水)の流量を調整する。流量調整弁26には流量計が備えられていてもよい。温度センサ25は、加熱器3に供給されるジャケット冷却水の温度を測定する。温度センサ25で検出されたジャケット冷却水の温度に基づき、加熱器3に供給されるジャケット冷却水の流量が調整される。
【0028】
造水装置2において、復水器4は、海水の蒸発により発生する蒸気を冷却して凝縮させる。復水器4は、特に限定されないが、例えばチューブラー式の熱交換器を備えている。復水器4には、蒸気を凝縮させるための熱源として、特に限定されないが、海水導入流路7により、海から汲み上げて船舶に取り入れられた海水が供給される。海から汲み上げた海水が造水装置2に導入されると、海水は復水器4に供給される。復水器4では、海水の蒸発により発生した蒸気が海水との熱交換により冷却され、温度が低下した後に凝縮する。蒸気の凝縮により発生した淡水(蒸留水)は、ポンプにより造水装置2の外部に排出された後、貯水タンクにて貯留される。
【0029】
復水器4において蒸気と熱交換した後の海水は、一部が船舶外などの系外に排出され、一部は原料海水として海水供給流路6を通って加熱器3に供給される。
【0030】
給水加熱器5は、海水供給流路6に設けられ、復水器4から加熱器3に供給される海水を加熱する。淡水の原料となる海水の温度を上昇させて加熱器3に供給することで、加熱器3において海水の蒸発までの温度上昇に必要な熱(顕熱)の量を抑制でき、実質的な造水量に寄与する海水の蒸発に必要とする熱(潜熱)の量を大きくすることができる。これにより、加熱器3の熱効率の向上を図ることができ、造水量の増加などの造水装置2の性能を向上でき、造水装置2の小型化も図ることができる。
【0031】
給水加熱器5は、特に限定されないが、例えばチューブラー式の熱交換器である。給水加熱器5には、海水の温度を上昇させるための熱源として、掃気空気の冷却に使用された掃気空気冷却水が供給される。給水加熱器5では、供給される海水が掃気空気冷却水との熱交換により加熱され、温度が上昇する。温度が上昇した海水は原料海水として加熱器3に供給される。
【0032】
掃気空気冷却水は、清水の場合、掃気空気を冷却した後の温度が約60℃である。一方、掃気空気冷却水は、海水の場合、掃気空気を冷却した後の温度が一般的には約45℃から50℃である。掃気空気冷却水が海水の場合、掃気空気を冷却した後の温度が高温になり過ぎると、スケールの発生が顕著になるおそれがある。掃気空気冷却水が流れる熱交換器に、スケールが多量に付着すると、熱交換器の性能低下につながる。そのため、掃気空気冷却水が海水の場合には、掃気空気を冷却した後の温度は約45℃から50℃に制限される。よって、給水加熱器5により淡水の原料となる海水の温度をできる限り上昇させて加熱器3に供給するためには、掃気空気冷却水は清水であることが好ましい。
【0033】
給水加熱器5は、第二バイパス流路18により、掃気空気を冷却した後の掃気空気冷却水が循環している。第二バイパス流路18は、掃気空気の冷却により高温となった掃気空気冷却水を給水加熱器5に導く管路である。掃気空気冷却水の少なくとも一部は、第二バイパス流路18を介して、第二循環流路17から分流した後に給水加熱器5を通過して第二循環流路17に還流する。
【0034】
第二循環路17には、温度センサ27及び流量調整弁28が接続されている。流量調整弁28は、第二循環流路17から第二バイパス流路18へ分流する掃気空気冷却水(給水加熱器5に供給される掃気空気冷却水)の流量を調整する。流量調整弁28には流量計が備えられていてもよい。温度センサ27は、給水加熱器5に供給される掃気空気冷却水の温度を測定する。温度センサ27で検出された掃気空気冷却水の温度に基づき、給水加熱器5に供給される掃気空気冷却水の流量が調整される。
【0035】
上述した実施形態の造水システム1によれば、ディーゼルエンジン10に供給される掃気空気の冷却に使用された掃気空気冷却水の少なくとも一部を給水加熱器5に供給し、給水加熱器5において、掃気空気冷却水と造水装置2の加熱器3に供給される原料海水との熱交換により、原料海水の温度を上昇させている。これにより、造水装置2の加熱器3には、より高い温度の原料海水が供給され、加熱器3においては効率よく原料海水を加熱して蒸発させることができるので、造水装置2の性能を向上できる。
【0036】
このように、上述した実施形態の造水システム1では、掃気空気冷却水の廃熱を原料海水に回収させることで造水装置2の性能を向上しており、掃気空気冷却水の廃熱を有効利用できる。
【0037】
また、上述した実施形態の造水システム1によれば、ディーゼルエンジン10の冷却に使用されたジャケット冷却水の少なくとも一部を造水装置2の加熱器3に供給し、加熱器3において、ジャケット冷却水と原料海水との熱交換により、原料海水を蒸発させている。よって、上述した実施形態の造水システム1では、ジャケット冷却水の廃熱を有効利用できる。
【0038】
以上、本発明の造水システムの一つの実施形態について説明したが、上述した実施形態は、あくまでも例示であって制限的なものではない。そのため、本発明の造水システムは上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0039】
例えば上述した実施形態において、給水加熱器5は造水装置2の外部に設けられているが、造水装置2の内部に設けられていてもよい。
【0040】
例えば上述した実施形態において、造水装置2は、例えばチューブラー式の熱交換器を備えた予熱器を備えていてもよい。具体的には、造水装置2の復水器4において蒸気の凝縮に利用した海水の一部を予熱器に供給して蒸気との熱交換により海水を予熱し、予熱した海水を給水加熱器5に供給し、その後、原料海水として加熱器3に供給してもよい。
【0041】
例えば上述した実施形態において、造水装置2の加熱器3における海水の蒸発の主な熱源は、必ずしもジャケット冷却水の廃熱である必要はなく、ボイラーからの蒸気であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 造水システム
2 造水装置
3 加熱器
4 復水器
5 給水加熱器
10 ディーゼルエンジン(内燃機関)
14 掃気空気冷却器