(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016151
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】毛髪用止着具及び毛髪用止着具を備えた装身具
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20250124BHJP
A41G 5/00 20060101ALI20250124BHJP
A45D 8/00 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
A41G3/00 J
A41G5/00
A45D8/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119240
(22)【出願日】2023-07-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 有
(72)【発明者】
【氏名】川北 泰宏
(57)【要約】 (修正有)
【課題】適切に毛髪に固定でき長時間継続して毛髪に固定できる毛髪用止着具、及びこの毛髪用止着具を備えた装身具を提供する。
【解決手段】弾性を有するシート部材20と、シート部材20に取り付けられた圧潰可能な管体10と、管体10の内面の一部の領域に配置された毛髪固定部材40とを備え、シート部材の外縁から離間した領域に、管体の全長以上の長さを有し、所定の距離だけ離間して並んだシート部材の両面を貫通した2本の第1の切り込みが形成されており、外面、内面及び両端部で囲まれた管体の外殻部が2本の第1の切り込みに挿通され、シート部材の2本の第1の切り込みの間の切込間領域Q1が管体の中に位置しており、毛髪固定部材はネット部42及び粘着部44を有し、毛髪固定部材は粘着部でシート部材の切込間領域Q1に取り付けられ、ネット部が管体の内面で囲まれた空間に露出している毛髪用止着具2、及びこれを備えた装身具を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するシート部材と、
前記シート部材に取り付けられた圧潰可能な管体と、
前記管体の内面の一部の領域に配置された毛髪固定部材と、を備え、
前記シート部材の外縁から離間した領域に、前記管体の全長以上の長さを有し、所定の距離だけ離間して並んだ、前記シート部材の両面を貫通した2本の第1の切り込みが形成されており、
外面、内面及び両端部で囲まれた前記管体の外殻部が2本の前記第1の切り込みに挿通され、前記シート部材の2本の前記第1の切り込みの間の切込間領域が前記管体の中に位置しており、
前記毛髪固定部材は、ネット部及び粘着部を有し、
前記毛髪固定部材は、前記粘着部で前記シート部材の前記切込間領域に取り付けられ、前記ネット部が前記管体の内面で囲まれた空間に露出していることを特徴とする毛髪用止着具。
【請求項2】
前記毛髪固定部材が、前記管体の中から両外側に延びて、前記シート部材に沿って延在することを特徴とする請求項1に記載の毛髪用止着具。
【請求項3】
前記管体の端部の領域で、前記毛髪固定部材が滑らかな曲面を描くように前記管体の中から両外側へ延びていることを特徴とする請求項2に記載の毛髪用止着具。
【請求項4】
2本の前記第1の切り込みの対向する一方の端部から、それぞれ離間する方向に延びて前記シート部材の外縁まで達する、前記シート部材の両面を貫通した第2の切り込みが形成されており、
前記第1の切り込み及び前記第2の切り込みにより分離され、前記切込間領域で繋がった2つの領域であって、一方が前記管体の中を通過することにより、前記切込間領域が前記管体の中に位置する状態が形成される2つの端部領域を有することを特徴とする請求項1に記載の毛髪用止着具。
【請求項5】
前記管体が前記シート部材に沿うように配置された平坦部を有し、
前記シート部材の前記平坦部が配置された側の面に、前記平坦部も覆うように両面テープの一方の粘着面が貼り付けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の毛髪用止着具。
【請求項6】
請求項5に記載の毛髪用止着具が、前記両面テープの他方の粘着面により取り付けられたことを特徴とする装身具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬毛を有する装身具を被装着者の自毛をはじめとする毛髪に固定するための毛髪用止着具、及びこの毛髪用止着具を備えた装身具に関する。
【背景技術】
【0002】
かつらベースやヘアエクステンションをはじめとする擬毛を有する装身具を被装着の自毛等に固定するための毛髪用止着具として、金属製の圧潰可能な管体を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の毛髪用止着具では、装身具に取り付けられた管体の中に被装着者の自毛を挿入して、管体を圧潰することにより、装身具を被装着の自毛に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の毛髪用止着具では、菅体の内面の全周にわたって、粘着剤でネット部材が取り付けられている。管体を圧潰したとき、ネット部材の網目を介して粘着剤が染み出してきて、毛髪を保持することができる。しかし、菅体の内面の全周から粘着剤が染み出してくるので、管体の外部にまで溢れて、適切に毛髪用止着具を自毛に固定できない虞がある。適切に毛髪用止着具を自毛に固定できない場合、装身具を長時間、継続して装着するのも困難となる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、適切に毛髪に固定でき、長時間、継続して毛髪に固定できる毛髪用止着具、及びこの毛髪用止着具を備えた装身具を提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様は、
弾性を有するシート部材と、
前記シート部材に取り付けられた圧潰可能な管体と、
前記管体の内面の一部の領域に配置された毛髪固定部材と、を備え、
前記シート部材の外縁から離間した領域に、前記管体の全長以上の長さを有し、所定の距離だけ離間して並んだ、前記シート部材の両面を貫通した2本の第1の切り込みが形成されており、
外面、内面及び両端部で囲まれた前記管体の外殻部が2本の前記第1の切り込みに挿通され、前記シート部材の2本の前記第1の切り込みの間の切込間領域が前記管体の中に位置しており、
前記毛髪固定部材は、ネット部及び粘着部を有し、
前記毛髪固定部材は、前記粘着部で前記シート部材の前記切込間領域に取り付けられ、前記ネット部が前記管体の内面で囲まれた空間に露出している毛髪用止着具である。
【0007】
本発明のその他の態様は、
上記の毛髪用止着具が、両面テープの他方の粘着面により取り付けられた装身具である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明では、適切に毛髪に固定でき、長時間、継続して毛髪に固定できる毛髪用止着具、及びこの毛髪用止着具を備えた装身具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る毛髪用止着具を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す毛髪用止着具を上方から見た平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るシート部材を示す平面図である。
【
図5】
図4に示すシート部材に管体が取り付けられたところを示す側面断面図である。
【
図6A】金属製の板状部材を湾曲させて形成された管体を示す側面図である。
【
図6B】
図6Aに示す管体を取り付けるシート部材を示す平面図である。
【
図7】本発明に係る毛髪用止着具の毛髪への装着方法の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態や実施例に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態や実施例では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0011】
(1つの実施形態に係る毛髪用止着具)
はじめに、
図1、
図2及び
図3を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る毛髪用止着具の説明を行う。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る毛髪用止着具を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す毛髪用止着具を上方から見た平面図である。
図3は、
図1の断面A-Aを示す側面断面図である。
【0012】
本実施形態に係る毛髪用止着具2は、弾性を有するシート部材20と、シート部材20に取り付けられた圧潰可能な管体10と、管体10の内面10bの一部の領域に配置された毛髪固定部材40とを備える。毛髪固定部材40は、ネット部42と粘着部44とを有する。
【0013】
本実施形態に係るシート部材20として、ウレタンをはじめとする任意の弾性を有する樹脂シートを採用することができる。シート部材20の厚みとして0.2~1mmを例示することができ、シート部材20の平面形状を矩形とした場合、1辺5~20mmを例示することができる。シート部材20の平面形状を円形とした場合、直径5~20mmを例示することができる。シート部材20の大きさは、容易に保持できる観点と、装着時に露見しにくくする観点から最適な大きさを定めるのが好ましい。
【0014】
本実施形態に係る管体10として、金属製または樹脂製の一体的に成形された管を採用することができる。金属管としては、アルミニウム製のチューブ、銅製のチューブ、銅ニッケル合金製のチューブ等を所定の長さにカットして用いることができる。管体10の肉厚として0.2~0.3mm程度を例示することができ、管体10の内径として2~5mm程度を例示することができ、管体10の全長として2~5mm程度を例示することができる。
【0015】
本実施形態では、シート部材20の外縁20a~20dから離間した領域に、管体10の全長以上の長さを有し、所定の距離だけ離間して並んだ、シート部材20の両面を貫通した2本の第1の切り込み22A、22Bが形成されている。外面10a、内面10b及び両端部10cで囲まれた管体10の外殻部が、2本の第1の切り込み22a、22bに挿通されて、管体10がシート部材20に取り付けられている。よって、シート部材20の2本の第1の切り込み22A、22Bの間の切込間領域Q1が管体10の中に位置している。
【0016】
後述するように、管体10の一部を平坦にした平坦部16を形成して、シート部材20に沿うように配置するのが好ましい。また、装着時に露見するのを防ぐため、金属管の外面を茶色や灰色等の目立たない色に着色するとともに、反射防止材を施すことが好ましい。
【0017】
毛髪固定部材40は、ネット部42と粘着部44とから構成され、粘着部44は、管体10の中に位置するシート部材20の切込間領域Q1に接している(
図3参照)。粘着部44の粘着力により、ネット部42を含む毛髪固定部材40がシート部材20に取り付けられる。ネット部42は、下側の面が粘着部44に接し、上側の面が管体10の内面10bで囲まれた空間に露出している。
【0018】
粘着部44は、粘着剤から構成される粘着層の場合にあり得るし、基体の両面に粘着層を有する両面テープの場合もあり得る。両面テープの場合には、一方の面の粘着層で基体とシート部材20とを接合し、他方の面の粘着層で基体とネット部42とを接合して、毛髪固定部材40がシート部材20に取り付けられる。
【0019】
本実施形態では、毛髪固定部材40が、管体10の中から両外側に延びて、シート部材20に沿って延在している。管体10の外の領域においても、毛髪固定部材40は、粘着部44を介してシート部材20に取り付けられている。これにより、管体10の両端部10cを毛髪固定部材40で覆うように構成されている。
【0020】
毛髪固定部材40の幅は、管体10の内径より短くなっており、毛髪固定部材40の長さは、管体10の全長より長くなっている。毛髪固定部材40の全長は、シート部材20の寸法に応じて任意に定めることができる。ネット部42の厚みとして0.1~0.8mmを例示することができる。粘着部44を含めた毛髪固定部材40の厚みとして、0.2~1mmを例示することができる。ネット部42の網目の形状は任意の形状を採用ですることができ、矩形の網目の場合、1つの網目の長さとして、0.2~0.8mmを例示することができる。
【0021】
ネット部42は、樹脂製の網目を有するシート状の部材であり、網目を粘着部44の粘着剤が通過して、ネット部42の管体10の内面10bで囲まれた空間内に露出した面側に染み出るようになっている。
後述するように、管体10の中に毛髪を挿入させた状態で、管体10を潰して、毛髪用止着具2を毛髪に固定するとき、ネット部42の網目の摩擦力により毛髪を効果的に保持できるとともに、管体10を潰したことにより染み出してきた粘着部44の粘着剤により、毛髪を保持することができる。
【0022】
本実施形態では、毛髪固定部材40が管体10の内面10bの一部の領域にだけ配置されているので、管体10の外部に溢れ出ることのない適量の粘着剤が、ネット部42の網目を介して染み出るようになっている。
【0023】
なお、管体10の中に位置するシート部20の切込間領域Q1は、管体10の外のシート部20の端部領域Q2、Q3よりも、管体10の外殻の厚みの分だけ高くなっている。このため、管体10の中から両外側に延びる毛髪固定部材40にも段差が生じることになる。しかし、本実施形態では、
図1の矢印Cに示すように、管体10の端部10cの領域で、毛髪固定部材40が滑らかな曲面を描くように管体10の中から両外側へ延びているので、段差による問題を抑制できるようになっている。
【0024】
(管体をシート部材に取り付ける方法)
次に、
図4及び
図5を参照しながら、管体10をシート部材20に取り付ける方法の一例を説明する。
図4は、本発明の実施形態に係るシート部材を示す平面図である。
図5は、
図4に示すシート部材に管体が取り付けられたところを示す側面断面図である。
【0025】
図4に示すシート部材20でも、シート部材20の外縁20a~20dから離間した領域に、管体10の全長以上の長さを有し、所定の距離だけ離間して並んだ2本の第1の切り込み22A、22Bが形成されている。2本の第1の切り込み22A、22Bは、略平行に配置されるのが好ましいが、若干斜めに配置されている場合もあり得る。
【0026】
更に、第1の切り込み22Aの一方の端部Sからシート部材20の外縁20aまで、第2の切り込み24Aが形成されている。同様に、第1の切り込み22Bの端部Sと対向する一方の端部S’からシート部材20の外縁20cまで、第2の切り込み24Bが形成されている。2本の第2の切り込み24A、24Bは、それぞれ離間する方向に延びている。第2の切り込み24A、24Bも、シート部材20の一方の面から他方の面まで貫通するように形成されている。第2の切り込み24A、24Bは、それぞれ第1の切り込み22A、22Bに対して略直交した方向に延びるのが好ましいが、若干斜めに交わる場合もあり得る。
【0027】
これにより、略L字形に繋がった第1の切り込み22A及び第2の切り込み24Aと、第1の切り込み22B及び第2の切り込み24Bとが形成されている。シート部材20は、略L字形の第1の切り込み22A及び第2の切り込み24Aと、第1の切り込み22B及び第2の切り込み24Bとで互いに分離され、切込間領域Q1で繋がった2つの端部領域Q2、Q3が形成されている。
図4では、切込間領域Q1が複数の点で示され、端部領域Q2が無地で示され、端部領域Q3が斜線で示されている。
【0028】
2つの端部領域Q2、Q3のうち、1つの端部領域(例えば、Q2)が管体10の中を通過することにより、外面10a、内面10b及び両端部10cで囲まれた管体10の外殻部が第1の切り込み22A、22Bに挿通され、切込間領域Q1が管体10の中に位置する状態となる。このとき、端部領域Q2の一部である第1の切り込み22A、第2の切り込み24A及びシート部材20の外縁20a、20bで囲まれた領域X、及び第1の切り込み22B、第2の切り込み24B及びシート部材20の外縁20b、20cで囲まれた領域Y(
図4で一点鎖線で囲まれた領域)が、スムーズに管体10の中を通過できる様にすることが重要である。このように、第1の切り込み22A、22B及び第2の切り込み24A、24Bにより、容易に管体10をシート部材20に取り付けることができる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る毛髪用止着具2では、2本の第1の切り込み22A、22Bの対向する一方の端部S、S’から、それぞれ離間する方向に延びてシート部材20の外縁20a、20cまで達する、シート部材20の両面を貫通した第2の切り込み24A、24Bが形成されており、第1の切り込み22A、22B及び第2の切り込み24A、24Bにより分離され、切込間領域Q1で繋がった2つの領域であって、一方が管体10の中を通過することにより、切込間領域Q1が管体10の中に位置する状態が形成される2つの端部領域Q2、Q3を有するようになっている。
【0030】
一方の端部領域Q2(Q3)が管体10の中を通過するようにすることにより、切込間領域Q1が管体10の中に位置する状態を容易に形成することができる。よって、容易かつ効率的に毛髪用止着具2を製造することができる。
【0031】
(装身具への取り付け構造)
再び、
図1から
図3を参照しながら、本実施形態に係る毛髪用止着具2の説明を行う。本実施形態では、管体10がシート部材20に沿うように配置された平坦部16を有する。管体10を塑性変形させることにより、略平面形状を有する平坦部16を形成することができる。そして、シート部材20の平坦部16が配置された側の面20Aに、平坦部16を覆うように両面テープ30の一方の粘着面が貼り付けられている。
【0032】
両面テープ30は、本体部32と、本体部32の一方の面に設けられた一方の粘着層34A及び、本体部32の他方の面に設けられた他方の粘着層34Bと、粘着層34A、34Bを覆うカバーシート36で構成される。
図3では、一方の粘着層34Aを覆うカバーシート36が取り外されて、一方の粘着層34Aの粘着面が、シート部材20の平坦部16側の面20A及び平坦部16の面に接触した状態を示す。
【0033】
本実施形態に係る毛髪用止着具2では、2本の第1の切り込み22A、22Bの外側を囲むシート部材20により、管体10の位置が拘束されているが、これに加えて両面テープ30の粘着層34Aにより、確実にシート部材20に対する管体10の位置を固定することができる。本実施形態に係る毛髪用止着具2において、他方の粘着層34Bを覆うカバーシート36を取り外して、他方の粘着層34Bの粘着面により、毛髪用止着具2を容易に確実にかつらベースやヘアエクステンションのような装身具に取り付けることができる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、管体10がシート部材20に沿うように配置された平坦部16を有し、シート部材20の平坦部16が配置された側の面20Aに、平坦部16も覆うように両面テープ30の一方の粘着面が貼り付けられている。この両面テープ30を用いて、毛髪用止着具2を容易にかつらベースやヘアエクステンションのような装身具に取り付けることができる。
【0035】
(その他の実施形態に係る毛髪用止着具)
上記の実施形態では、管体10が一体的に成形された管の場合を示していたが、これに限られるものではない。次に、
図6A、
図6B及び
図6Cを参照しながら、本発明のその他の実施形態に係る毛髪用止着具の説明を行う。
図6Aは、金属製の板状部材を湾曲させて形成された管体を示す側面図である。
図6Bは、
図6Aに示す管体を取り付けるシート部材を示す平面図である。
図6Cは、
図6Bに示すシート部材に
図6Aに示す管体が取り付けられた状態を示す斜視図である
【0036】
図6B、
図6Cに示すように、シート部材20の外縁20a~20dから離間した領域に、2本の第1の切り込み22A、22Bが、互いに離間して並んで形成されている。第1の切り込み22A、22Bは、シート部材20の一方の面から他方の面まで貫通するように形成されている。第1の切り込み22A、22Bの長さBは、管体10の全長以上となっている。
【0037】
第1の切り込み22A、22Bは、略平行に配置されているのが好ましいが、若干斜めに配置されている場合もあり得る。これにより、シート部材20は、2本の第1の切り込み22A、22Bの間に切込間領域Q1を有する。ただし、上記の実施形態のような第2の切り込みは存在しない。
【0038】
例えば、金属製の板状部材に第1の切り込み22Aに通し、板状部材をU字形に湾曲させて、再び第1の切り込み22Bを通して、略O形または略C形に湾曲させることにより管体10を形成することができる。板状部材の両端部が接する箇所を、
図6Aの矢印Bで示す。
【0039】
これにより、
図6Cに示すように、外面10a、内面10b及び両端部10cで囲まれた管体10の外殻部が2本の第1の切り込み22A、22Bに挿通され、シート部材20の2本の第1の切り込み22A、22Bの間の切込間領域Q1が管体10の中に位置する状態が形成される。この場合、2本の第1の切り込み22A、22Bの外側を囲むシート部材20により、管体10の位置が拘束される。
【0040】
以上のように、管体10が板状部材を湾曲させて形成された略O形または略C形の断面形状を有する場合には、シート部材20に2本の第1の切り込み22A、22Bだけが設けられている場合であっても、確実にシート部材20の2本の第1の切り込み22A、22Bの間の切込間領域Q1が管体10の中に位置する状態を形成できる。
【0041】
その後の毛髪固定部材40の取り付け、平坦部16の形成、両面テープ30の取り付けについては、上記の1つの実施形態の場合と同様である。
【0042】
(毛髪用止着具の毛髪への装着方法)
次に、
図7を参照しながら、本発明に係る毛髪用止着具の毛髪への装着方法の説明を行う。
図7は、本発明に係る毛髪用止着具の毛髪への装着方法の一例を模式的に示す図である。
図7では、シート部材20に取り付けられた両面テープ30により、毛髪用止着具2がかつらベースに取り付けらており、このかつらベースを被装着者の頭部に載置し、被装着者の自毛に固定する場合を示す。
【0043】
はじめに、
図7の(a)に示すように、毛髪用止着具2の管体10の中に、被装着者の自毛を挿入する。次に、
図7の(b)に示すように、自毛が挿入された状態で、プライヤー等を用いて、管体10を潰して塑性変形させる。これにより、毛髪用止着具2を自毛に固定することができ、これにより、かつらベースを確実に被装着者の頭部に固定できる。
【0044】
上記の例では、毛髪用止着具2をかつらベースに取り付けて用いる場合を示したが、これに限られるものではない。ヘアエクステンションをはじめとする擬毛を有するその他の任意の装身具に毛髪用止着具2を取り付けて用いる場合もあり得る。また、毛髪用止着具2の管体10に挿通させるのは、被装着者の自毛だけでなく、擬毛をはじめとするその他の毛髪の場合もあり得る。
【0045】
以上のように、本発明の上記の実施形態に係る毛髪用止着具2は、弾性を有するシート部材20と、シート部材20に取り付けられた圧潰可能な管体10と、管体10の内面10bの一部の領域に配置された毛髪固定部材40と、を備え、シート部材20の外縁20a~20dから離間した領域に、管体10の全長以上の長さを有し、所定の距離だけ離間して並んだ、シート部材20の両面を貫通した2本の第1の切り込み22A、22Bが形成されており、外面10a、内面10b及び両端部10cで囲まれた管体10の外殻部が2本の第1の切り込み22A、22Bに挿通され、シート部材20の2本の第1の切り込み22A、22Bの間の切込間領域Q1が管体10の中に位置しており、毛髪固定部材40は、ネット部42及び粘着部44を有し、毛髪固定部材40は、粘着部44でシート部材20の切込間領域Q1に取り付けられ、ネット部42が管体10の内面10bで囲まれた空間に露出している。
【0046】
自毛等の毛髪を管体10内に引き込むとき、管体10内の空間に露出したネット部42の存在により、毛髪が粘着部44に触れることがないので、毛髪をスムーズに管体10内に挿通することができる。
毛髪を管体10内に挿入した後、管体10を圧潰することにより、毛髪を管体10の内面10bで挟み込んで固定することができる。このとき、ネット部42の網目の摩擦力により毛髪を包み込むように保持できるので、より確実に毛髪を固定することができる。
【0047】
更に、毛髪が挿入された状態で管体10を潰すことにより、ネット部42の網目を介して、粘着部44の粘着剤がネット部42の表面側、つまり管体10の内面10bに露出した面側に染み出してくるので、この粘着剤により毛髪を更に強く保持することができる。仮に、粘着部が管体の内面の全周にわたって存在する場合には、ネット部から染み出す粘着剤が管体10の外部に溢れて、適切に毛髪用止着具を毛髪に固定できない虞がある。
【0048】
しかし、上記の実施形態では、毛髪固定部材40が管体10の内面10bの一部の領域にだけ配置されているので、管体10の外部に溢れ出ることのない適量の粘着剤が、ネット部42の網目を介して染み出るので、適切に毛髪用止着具2を毛髪に固定することができる。特に、長時間使用しても、適量な粘着剤の働きにより、毛髪用止着具2を継続して毛髪に固定することができる。また、水に濡れたような場合でも、適量な粘着剤の働きにより、確実に毛髪用止着具2を毛髪に固定し続けることができる。
【0049】
このように、上記の実施形態では、適切に毛髪に固定でき、長時間、継続して毛髪に固定できる毛髪用止着具2を提供することができる。
【0050】
上記の毛髪用止着具2が、両面テープ30の他方の粘着面により取り付けられた、かつらベース、ヘアエクステンションをはじめとする装身具では、適切に頭部に装着することができ、長時間、継続して頭部に装着することができる。
【0051】
更に、上記の実施形態に係る毛髪用止着具2では、毛髪固定部材40が、管体10の中から両外側に延びて、シート部材20に沿って延在している。
【0052】
管体10の端部10cが毛髪固定部材40で覆われるので、毛髪を管体10から引き出すときに、引き出し治具の先端が管体10の端部10cと干渉するといった不具合が生じるのを防ぐことができる。更に、管体10を潰したときに、毛髪が管体10の端部10cのエッジ部で損傷するのを防ぐこともできる。
【0053】
管体10の中に位置するシート部20の切込間領域Q1と、管体10の外のシート部20のQ2、Q3との間では、管体10の外殻の厚みの分だけ段差が生じる。つまり、切込間領域Q1が高くなっている。このため、管体10の中から両外側に延びる髪固定部材40でも段差が生じる。しかし、上記の実施形態では、
図1の矢印Cに示すように、管体10の端部10cの領域で、毛髪固定部材40が滑らかな曲面を描くように管体10の中から両外側へ延びている。この滑らかな曲面の領域により、毛髪を管体10内に挿通させるときに、毛髪を引き抜く治具等が、管体10と干渉するのを効果的に防ぐことができる。
【0054】
(全般的記載)
(1)本発明の第1の態様は、
弾性を有するシート部材と、
前記シート部材に取り付けられた圧潰可能な管体と、
前記管体の内面の一部の領域に配置された毛髪固定部材と、を備え、
前記シート部材の外縁から離間した領域に、前記管体の全長以上の長さを有し、所定の距離だけ離間して並んだ、前記シート部材の両面を貫通した2本の第1の切り込みが形成されており、
外面、内面及び両端部で囲まれた前記管体の外殻部が2本の前記第1の切り込みに挿通され、前記シート部材の2本の前記第1の切り込みの間の切込間領域が前記管体の中に位置しており、
前記毛髪固定部材は、ネット部及び粘着部を有し、
前記毛髪固定部材は、前記粘着部で前記シート部材の前記切込間領域に取り付けられ、前記ネット部が前記管体の内面で囲まれた空間に露出している毛髪用止着具である。
(2)本発明の第2の態様は、第1の態様において、
前記毛髪固定部材が、前記管体の中から両外側に延びて、前記シート部材に沿って延在する毛髪用止着具である。
(3)本発明の第3の態様は、第2の態様において、
前記管体の端部の領域で、前記毛髪固定部材が滑らかな曲面を描くように前記管体の中から両外側へ延びている毛髪用止着具である。
(4)本発明の第4の態様は、第1から第3の何れかの態様において、
2本の前記第1の切り込みの対向する一方の端部から、それぞれ離間する方向に延びて前記シート部材の外縁まで達する、前記シート部材の両面を貫通した第2の切り込みが形成されており、
前記第1の切り込み及び前記第2の切り込みにより分離され、前記切込間領域で繋がった2つの領域であって、一方が前記管体の中を通過することにより、前記切込間領域が前記管体の中に位置する状態が形成される2つの端部領域を有する毛髪用止着具である。
(5)本発明の第5の態様は、第1から第4の何れかの態様において、
前記管体が前記シート部材に沿うように配置された平坦部を有し、
前記シート部材の前記平坦部が配置された側の面に、前記平坦部も覆うように両面テープの一方の粘着面が貼り付けられている毛髪用止着具である。
(6)本発明の第6の態様は、
第5の態様の毛髪用止着具が、前記両面テープの他方の粘着面により取り付けられた装身具である。
【0055】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0056】
2 毛髪用止着具
10 管体
10a 外面
10b 内面
10c 端部
16 平坦部
20 シート部材
20A 面
20a~d 外縁
22A、22B 第1の切り込み
24A、24B 第2の切り込み
30 両面テープ
32 本体部
34A、34B 粘着層
36 カバーシート
40 毛髪固定部材
42 ネット部
44 粘着部
Q1 切込間領域
Q2、Q3 端部領域
S、S’ 端部
X、Y 領域
【手続補正書】
【提出日】2024-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するシート部材と、
前記シート部材に取り付けられた圧潰可能な管体と、
前記管体の内面の一部の領域に配置された毛髪固定部材と、を備え、
前記シート部材の外縁から離間した領域に、前記管体の全長以上の長さを有し、所定の距離だけ離間して並んだ、前記シート部材の両面を貫通した2本の第1の切り込みが形成されており、
外面、内面及び両端部で囲まれた前記管体の外殻部が2本の前記第1の切り込みに挿通され、前記シート部材の2本の前記第1の切り込みの間の切込間領域が前記管体の中に位置しており、
前記毛髪固定部材は、ネット部及び粘着部を有し、
前記毛髪固定部材は、前記粘着部で前記シート部材の前記切込間領域に取り付けられ、前記ネット部が前記管体の内面で囲まれた空間に露出しており、
前記毛髪固定部材が、前記管体の中から両外側に延びて、前記シート部材に沿って延在することを特徴とする毛髪用止着具。
【請求項2】
前記管体の端部の領域で、前記毛髪固定部材が滑らかな曲面を描くように前記管体の中から両外側へ延びていることを特徴とする請求項1に記載の毛髪用止着具。
【請求項3】
2本の前記第1の切り込みの対向する一方の端部から、それぞれ離間する方向に延びて前記シート部材の外縁まで達する、前記シート部材の両面を貫通した第2の切り込みが形成されており、
前記第1の切り込み及び前記第2の切り込みにより分離され、前記切込間領域で繋がった2つの領域であって、一方が前記管体の中を通過することにより、前記切込間領域が前記管体の中に位置する状態が形成される2つの端部領域を有することを特徴とする請求項1に記載の毛髪用止着具。
【請求項4】
前記管体が前記シート部材に沿うように配置された平坦部を有し、
前記シート部材の前記平坦部が配置された側の面に、前記平坦部も覆うように両面テープの一方の粘着面が貼り付けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の毛髪用止着具。
【請求項5】
請求項4に記載の毛髪用止着具が、前記両面テープの他方の粘着面により取り付けられたことを特徴とする装身具。