(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016167
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】ペースト注入器
(51)【国際特許分類】
A61C 5/62 20170101AFI20250124BHJP
【FI】
A61C5/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119269
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川名 麻梨子
(72)【発明者】
【氏名】安宅 謙介
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 智
(72)【発明者】
【氏名】大平 宗幸
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA17
4C052HH08
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、外観からペースト収納室内のペーストの残量を知ることができるペースト注入器を提供する。
【解決手段】ペースト注入器1は、シリンジ3と、プランジャ5とを備えている。シリンジ3は、長手方向に延び、内部に長手方向Xに沿って延びると共にペーストが充填されたペースト収納室49を有し、排出口51と充填口53が形成されている。プランジャ5は、押圧部67と、押圧部67から立ち上がりペースト収納室49に挿入される棒状部69と、を有している。棒状部69には、長手方向Xに沿って、所定の間隔で、棒状部69を補強する補強用リブ78A~78Eが複数設けられている。補強用リブ78B~78Eは、ペースト収納室49内のペーストの残量が、予め規定された量になったときに充填口53と重複する位置に形成されている。
【選択図】
図30
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延び、内部に前記長手方向に沿って延びると共にペーストが充填されたペースト収納室を有し、一方の端部に前記ペースト収納室の一端を開放する排出口が形成され、他方の端部に前記ペースト収納室の他端を開放する充填口が形成されたシリンジと、
使用者が指で押圧する押圧部と、前記押圧部から立ち上がり前記ペースト収納室に挿入される棒状部と、を有し、前記充填口から前記ペースト収納室に挿入されて前記長手方向に沿って移動し、前記排出口から前記ペーストを押し出すプランジャと、を備え、
前記棒状部には、前記長手方向に沿って、所定の間隔で、前記棒状部を補強する補強用リブが複数設けられており、
前記複数の補強用リブのうち少なくとも一部は、前記ペースト収納室内の前記ペーストの残量が、予め規定された量になったときに前記充填口と重複する位置に形成されている
ことを特徴とするペースト注入器。
【請求項2】
前記ペーストは、一回の使用量が予め規定されており、
前記押圧部に最も近い位置に設けられている前記補強用リブは、前記ペースト収納室内の前記ペーストの残量が前記使用量の一回分のとき、前記充填口と重複する位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のペースト注入器。
【請求項3】
前記複数の補強用リブの前記長手方向と直交する断面形状は、前記ペースト収納室の前記長手方向と直交する断面形状より小さく、前記ペースト収納室の断面形状に相似した形状である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のペースト注入器。
【請求項4】
前記棒状部の前記長手方向と直交する断面形状は、前記長手方向と直交する厚み方向に延びる厚み方向壁部と、前記長手方向及び前記厚み方向と直交する幅方向に延びる幅方向壁部の組み合わせからなる十字状に形成されており、
前記複数の補強用リブは、前記厚み方向壁部及び前記幅方向壁部の間の間隙部に形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のペースト注入器。
【請求項5】
前記プランジャは、前記棒状部の先端部に緩く係合した弾性体ホルダを有しており、
前記弾性体ホルダは、前記プランジャを前記ペースト収納室に挿入した後、前記プランジャが前記充填口に向かって引き戻されたとき、前記棒状部から分離する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のペースト注入器。
【請求項6】
歯科材料であるペーストの注入に使用されることを特徴とする請求項1または2に記載のペースト注入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト注入器に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状の歯科材料を所望の位置に吐出するためのペースト注入器が知られている。ペースト注入器は、長手方向に延び、ペーストが充填されるペースト収納室を有するシリンジと、シリンジ内に挿入されて長手方向に移動可能なプランジャと、を備えている。ペースト注入器として、例えば、特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2018/057503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ペースト注入器は、シリンジの材質や、シリンジに貼付されたラベル等によって、外観からは、ペースト収納室内のペーストの残量がわかりづらい、という課題があった。特に、ペースト注入器が、予めペースト収納室内に複数回分のペーストが充填された状態で出荷されて使用されるものの場合、使用者は、使用前に、ペーストの残量を把握しておきたい、というニーズが存在していた。
【0005】
本発明の目的は、簡易な構成で、外観からペースト収納室内のペーストの残量を知ることができるペースト注入器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のペースト注入器は、長手方向に延び、内部に前記長手方向に沿って延びると共にペーストが充填されたペースト収納室を有し、一方の端部に前記ペースト収納室の一端を開放する排出口が形成され、他方の端部に前記ペースト収納室の他端を開放する充填口が形成されたシリンジと、使用者が指で押圧する押圧部と、前記押圧部から立ち上がり前記ペースト収納室に挿入される棒状部と、を有し、前記充填口から前記ペースト収納室に挿入されて前記長手方向に沿って移動し、前記排出口から前記ペーストを押し出すプランジャと、を備えている。そして、前記棒状部には、前記長手方向に沿って、所定の間隔で、前記棒状部を補強する補強用リブが複数設けられており、前記複数の補強用リブのうち少なくとも一部は、前記ペースト収納室内の前記ペーストの残量が、予め規定された量になったときに前記充填口と重複する位置に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
このようにすることで、本発明のペースト注入器は、簡易な構成で、外観からペースト収納室内のペーストの残量を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態のペースト注入器の正面図である。
【
図3】シリンジの先端部に固定されたスタティックミキサーを、長手方向に延びる中心軸を通る位置で幅方向に切断した断面図である。
【
図8】
図4Cに示したVIII-VIII線断面図の要部である。
【
図12】環状溝部にOリングを取り付けた状態の弾性体ホルダを、ネック部の部分で長手方向と直交する幅方向に切断した断面図である。
【
図13】環状溝部にOリングを取り付けた状態の弾性体ホルダを、シリンジのペースト収納室内に挿入した状態で、ネック部の部分で長手方向と直交する幅方向に切断した場合の断面図(模式図)と、その際の正面方向及び側面方向から見た場合の断面図(模式図)である。
【
図14A】ミキシングチップ本体部の斜視図である。
【
図14B】ミキシングチップ本体部の底面図である。
【
図28】スタティックミキサーをシリンジに被せて固定する前段階の様子を示す図である。
【
図29】ミキサー外装体のみが回転した後のスタティックミキサーの底面図である。
【
図30】ペースト注入器を長手方向に延びる中心軸を通る位置で幅方向に切断した断面図であり、ペーストの残量が、約75%であることを示す図である。
【
図31】ペースト注入器を長手方向に延びる中心軸を通る位置で幅方向に切断した断面図であり、ペーストの残量が、約50%であることを示す図である。
【
図32】ペースト注入器を長手方向に延びる中心軸を通る位置で幅方向に切断した断面図であり、ペーストの残量が、約25%であることを示す図である。
【
図33】ペースト注入器を長手方向に延びる中心軸を通る位置で幅方向に切断した断面図であり、ペーストの残量が、予め規定された一回分の使用量であることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のペースト注入器の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
<全体構成>
図1は、ペースト注入器1の正面図であり、
図2は、ペースト注入器1の分解斜視図である。本実施の形態では、
図2に示すように、ペースト注入器1に対して、長手方向(X)、幅方向(Y)、厚み方向(Z)を定義する。
【0011】
図1に示すように、ペースト注入器1は、シリンジ3と、プランジャ5と、スタティックミキサー7と、ガイドチップ9とを備えている。ペースト注入器1は、シリンジ3内に個別に充填された2種類のペーストをプランジャ5で押し出して、スタティックミキサー7により使用直前に混ぜ合わせて歯科材料として調製しながら、ガイドチップ9を介して、所望の位置(患部や歯の被せ物等)に注入するものである。なお、ガイドチップ9は、必要に応じてスタティックミキサー7に対して嵌め殺し状態で装着されるノズル部材である。ペースト注入器1は、ガイドチップ9がスタティックミキサー7に取り付けられていなくても使用可能である。
【0012】
ペースト注入器1は、保管時や搬送時では、シリンジ3の先端部(後述するシリンジ本体41の一方の端部41A)に、スタティックミキサー7に代えて、
図2に示すキャップ11が固定される。本明細書では、シリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)に着脱可能に装着されるスタティックミキサー7及びキャップ11をまとめて、装着部材Mと呼ぶ。シリンジ3、プランジャ5、装着部材M(スタティックミキサー7またはキャップ11)は、
図2に示した長手方向Xに延び、各部材の中心を通る中心軸CAを一致させた状態で組み合わされる。
【0013】
シリンジ3は、内部に予めペーストが充填され、プランジャ5が挿入された状態で流通される。プランジャ5は、プランジャ本体13と、プランジャ本体13の先端に緩く係合する弾性体ホルダ15と、弾性体ホルダ15に取り付けられる円環状のOリング(弾性体)17とから構成されている。ここで「緩く係合する」とは、シリンジ3とOリング17との摩擦力によって、プランジャ本体13から弾性体ホルダ15が外れる程度の係合力で係合することである。そして、弾性体ホルダ15とOリング17により、プランジャ5の先端部が形成されている。なお、プランジャ5は、プランジャ本体13と弾性体ホルダ15に分離しない、一体のものであってもよいのはもちろんである。この場合には、プランジャ5の先端部に直接、円環状のOリング17が取り付けられればよい。
【0014】
スタティックミキサー7は、ミキシングチップ本体部19と、ミキサーハウジング21と、ミキサー外装体23とから構成されている。なお、本実施の形態では、スタティックミキサー7は、使い捨てのものである。
【0015】
キャップ11は、キャップ内側部材25と、キャップ外装体27とから構成されている。
【0016】
[ペーストの流路]
図3は、シリンジ3の先端部に固定されたスタティックミキサー7を、長手方向Xに延びる中心軸CAを通る位置で幅方向Yに切断した断面図である。
【0017】
スタティックミキサー7内には、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21によって、ペーストの流路が形成される。ペーストの流路は、ペースト通路29及びペースト通路29´と、中間通路31と、ミキシング通路33から構成されている。ペースト通路29,29´は、中心軸CAを中心にした円周上に並び、幅方向Yに沿って対称に配置され、それぞれ長手方向Xに延びている。ミキシング通路33は、ペースト通路29,29´よりペースト流れ方向の下流に位置し、長手方向Xに延びる中心軸CAを中心にして延びている。中間通路31は、ペースト通路29,29´と、ミキシング通路33をつなぐ通路である。
【0018】
ペースト通路29は、シリンジ3のペースト収納室49から排出されたペーストが流れる通路である。ペースト通路29は、ペーストが流入する流入孔29Aと、ペーストが流出する流出孔29Bを有しており、ミキシングチップ本体部19内に形成されている。ここで、流入孔29Aの開口面積は、流出孔29Bの開口面積よりも大きい。さらに、流出孔29Bの開口中心点は、流入孔29Aの開口中心点よりも中心軸CAに近い位置に設定されている。
【0019】
ペースト通路29の内周面は、厚み方向Zに直交する断面で見たときに中心軸CAから離れた遠位面29Cと、中心軸CAに近い近位面29Dを有している。遠位面29Cには、流入孔29Aからペースト通路29の途中位置までの領域に、テーパ部が形成されている。すなわち、遠位面29Cは、流入孔29Aからペースト通路29の途中までの部分が、流出孔29Bに向かうにつれて次第に中心軸CAに近づくテーパ状に形成されている。なお、後述の
図15に示すように、テーパ部の角度、つまり、遠位面29Cと流入孔29Aの中心点を通って長手方向Xに延びる直線C1とでなす角θは、ここでは45°に設定されている。そして、遠位面29Cのうち、テーパ部から流出孔29Bまでの領域が、中心軸CAに対して平行に延び、中心軸CAに沿っている。
【0020】
近位面29Dは、流入孔29Aから流出孔29Bに至るまで中心軸CAに対して平行に延び、中心軸CAに沿っている。つまり、ペースト通路29の中心軸CA(長手方向X)に直交する断面の面積は、流入孔29Aからペースト通路29の途中位置までは一定の割合で次第に小さくなるが、ペースト通路29の途中位置から流出孔29Bまでは、流出孔29Bの開口面積と同じ大きさになる。
【0021】
このように、遠位面29Cが有するテーパ部が、流入孔29Aからペースト通路29の途中位置までの領域に形成されたことで、ペースト注入器1は、ペースト通路29内での気泡溜りの形成を抑制しつつ、遠位面29Cが流入孔29Aから流出孔29Bに至るまで中心軸CAに近づくテーパ状に形成されている場合に比べて、ペースト通路29内に流れるペーストの量を減らすことができ、また、ペースト通路29内に残留するペーストの量を減らすことができる。
【0022】
ペースト通路29´は、シリンジ3のペースト収納室49´から排出されたペーストが流れる通路である。ペースト通路29´は、ペースト通路29と同様の構成をしているため、ペースト通路29の各部の符号に「´」を付して、説明を省略する。
【0023】
そして、ペースト通路29とペースト通路29´は、同等の大きさに形成されており、中心軸CAを中心に幅方向Yに沿って対称形状を呈している。すなわち、流入孔29Aと流入孔29A´は同一の開口面積に設定され、流出孔29Bと流出孔29B´は同一の開口面積に設定されている。また、中心軸CAに沿って見たときの中心軸CAから流入孔29Aの中心までの距離と、中心軸CAから流入孔29A´までの距離は同一である。また、中心軸CAに沿って見たときの中心軸CAから流出孔29Bの中心までの距離と、中心軸CAから流出孔29B´までの距離は同一である。さらに、遠位面29Cのテーパ部の傾斜角度と、遠位面29C´のテーパ部の傾斜角度は同一角度である。
【0024】
中間通路31は、流出孔29B,29B´から流出したペーストを合流位置JPまで導く通路である。本実施の形態では、流出孔29Bと流出孔29B´の間に、逆流防止壁35が設けられている。逆流防止壁35は、中間通路31を流出孔29B側と流出孔29B´側とに区画し、一方の流出孔29B(29B´)から出たペーストが他方の流出孔29B´(29B)に流入することを防ぐ。ここでは、逆流防止壁35は、流出孔29B,29B´が形成されたミキシングチップ本体部19の端面から起立し、中心軸CAに沿って合流位置JPまで延びている。逆流防止壁35は、根本部分にペーストを合流位置JPに向ける湾曲面35A,35A´が形成されている。
【0025】
ミキシング通路33は、合流位置JPで合流したペーストが混合されながら通る通路であり、長手方向Xに延びる中心軸CAを中心にして延びている。ミキシング通路33は、ミキサーハウジング21の円筒状に延びるエレメントハウジング部37と、逆流防止壁35の端部から延び、エレメントハウジング部37に挿入されたエレメント群39から構成されている。
【0026】
[装着部材の固定]
装着部材Mであるスタティックミキサー7またはキャップ11は、シリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)に着脱可能に装着される。以下では、その固定構造について説明する。
【0027】
ここで、装着部材Mは、内側部材IMと、外装体OMとから構成されている。装着部材Mがスタティックミキサー7の場合、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21が内側部材IMを構成し、ミキサー外装体23が外装体OMを構成する。また、装着部材Mがキャップ11の場合、キャップ内側部材25が内側部材IMを構成し、キャップ外装体27が外装体OMを構成する。
【0028】
スタティックミキサー7では、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21(内側部材IM)が、ミキサー外装体23(外装体OM)の内側に配置されている。また、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21は、ミキサー外装体23に対して、中心軸CAを中心にして、その周りを所定角度範囲内で相対回転可能に構成されている。また、キャップ11でも同様に、キャップ内側部材25(内側部材IM)が、キャップ外装体27(外装体OM)の内側に配置されている。そして、キャップ内側部材25は、キャップ外装体27に対して、中心軸CAを中心にして、その周りを所定角度範囲内で相対回転可能に構成されている。
【0029】
そして、シリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)が中心軸CAに沿って内側部材IMを介して外装体OMに挿入されたとき、内側部材IMはシリンジ3に対して回転不能になるが、外装体OMはシリンジ3に対して回転可能である。この状態で外装体OMが中心軸CAを中心にして回転することで、シリンジ3に対して外装体OMのみが回転し、装着部材Mはシリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)に係合構造を介して固定される。
【0030】
係合構造は、シリンジ3に形成された係合部45と外装体OMであるミキサー外装体23に形成された被係合部107からなる係合組、或いは、シリンジ3に形成された係合部45と外装体OMであるキャップ外装体27に形成された被係合部129からなる係合組を三組以上(本実施の形態では三組)有している。係合部45、被係合部107及び被係合部129の詳細な構成は後述する。
【0031】
<各部材の詳細>
[シリンジ]
図4Aはシリンジ3の正面図、
図4Bは側面図、
図4Cは平面図、
図4Dは底面図である。また、
図5は、
図4Cに示したV-V線断面図であり、
図6は、
図4Aに示したVI-VI線端面図であり、
図7は、シリンジの先端部の斜視図であり、
図8は、
図4Cに示したVIII-VIII線断面図の要部である。
【0032】
シリンジ3は、長手方向Xに延びる筒状体であり、シリンジ本体41と、2つの突出部43,43´と、係合部45と、指掛け部47と、を備えている。
【0033】
シリンジ本体41は、内部に、ペーストが充填される複数(ここでは2つ)のペースト収納室49及びペースト収納室49´が形成されている。2つのペースト収納室49,49´は、シリンジ本体41の内部で、幅方向Yに沿って並んでおり、同形状に形成されている。シリンジ本体41の一方の端部41Aには、長手方向Xと直交する幅方向Yに切断した形状が円形の円形壁部41aが形成されており、他方の端部41Bには、指掛け部47が形成されている。
【0034】
2つの突出部43,43´は、シリンジ本体41の一方の端部41A(円形壁部41a)の端面から長手方向Xに突出し、先端がそれぞれ排出口51,51´となる筒状部である。突出部43の内周部はペースト収納室49の一部を構成し、突出部43´の内周部はペースト収納室49´の一部を構成している。なお、2つの突出部43,43´は、円形壁部41aから起立した起立壁41cを介して連結され、傾きが規制されている。
【0035】
図7及び
図8に示すように、円形壁部41aには、表面(一方の端部41Aの端面)に凹部41bが形成されている。凹部41bは、円形壁部41aの周縁部と突出部43,43´との間に形成され、適宜段差が設けられている。円形壁部41aの表面に凹部41bが形成されたことで、シリンジ3を樹脂で成形する際のヒケの発生が防止される。また、ヒケの発生が防止されることで、突出部43,43´の傾きを抑制できる。
【0036】
係合部45は、装着部材Mをシリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)に固定する係合構造を構成し、装着部材M(スタティックミキサー7及びキャップ11)の被係合部(被係合部107及び被係合部129)と係合する部分である。係合部45は、
図4Cに示されたように、シリンジ本体41の円形壁部41aの外周面に形成された3つの突起片45A,45B,45Cで構成されている。
【0037】
突起片45A,45B,45Cは、外装体OMの回転方向に沿って並ぶと共に、中心軸CAに沿って見たとき、外装体OMの回転中心である中心軸CAを中心点とした非点対称になっている。なお、「点対称」は、一般的に対称点を中心として図形を180°回転したときに元の図形と重なることをいうが、ここでの「非点対称」とは、中心軸CAを中心点にしてシリンジ3が回転したとき、360°回転したとき以外、突起片45A,45B,45C同士が重ならないことをいう。
【0038】
そして、突起片45A,45B,45Cは、外装体OMの回転方向に沿って非等間隔で並んでいる。ここでは、突起片45Aから突起片45Bまでの回転方向の距離と、突起片45Aから突起片45Cまでの回転方向の距離とは同じ長さである。一方、突起片45Bから突起片45Cまでの回転方向の距離は、突起片45Aから突起片45Bまでの距離及び突起片45Aから突起片45Cまでの距離よりも短くなっている。
【0039】
さらに、突起片45A,45B,45Cは、それぞれ中心軸CAに沿って見たときに異なる形状を呈している。すなわち、突起片45Aの回転方向の長さは、突起片45B及び突起片45Cの回転方向の長さより長い。一方、突起片45B及び突起片45Cの回転方向の長さは同じであるが、円形壁部41aの外周面から突出する方向が異なっている。
【0040】
なお、突起片45Bと突起片45Cは、中心軸CA及び突起片45Aの周方向中心位置を通る対称軸ASに対して、線対称の形状をしている。
【0041】
指掛け部47は、シリンジ本体41の他方の端部41Bの外周面から幅方向Y及び厚み方向Zに延びるフランジ状の部分である。指掛け部47は、
図4C及び
図4Dに示すように、外周形状が略六角形に構成されている。なお、指掛け部47には、少なくとも一方の端部41A側の表面47aに、シボ加工が施されてもよい。表面47aにシボ加工が施されることで、使用時に指が滑ることを防止できると共に、ゲート痕を目立たなくして外観の品質向上を図ることができる。
【0042】
シリンジ本体41の外周面は、
図6に示すように、一対の幅方向外周面57,57´と、一対の厚み方向外周面59,59´と、4カ所の連結外周面61と、を有している。
【0043】
一対の幅方向外周面57,57´は、シリンジ本体41の外周面のうち、厚み方向Zに沿って互いに反対側に位置する面である。幅方向外周面57,57´は、それぞれ長手方向X及び幅方向Yに沿って平らな平坦部57Aを有している。また、幅方向外周面57,57´には、長手方向Xに延びると共に、平坦部57Aよりもへこんだ溝状のへこみ部57Bがそれぞれ形成されている。へこみ部57Bは、シリンジ本体41の内部に形成された2つのペースト収納室49,49´の間に位置し、平坦部57Aはへこみ部57Bによって幅方向Yに沿って二つに分割されている。また、へこみ部57Bは、深くなるにしたがって幅方向Yの長さが次第に狭くなる断面楔状を呈している。
【0044】
一対の厚み方向外周面59,59´は、シリンジ本体41の外周面のうち、幅方向Yに沿って互いに反対側に位置する面である。厚み方向外周面59,59´は、所定の曲率半径で幅方向Yの外方に湾曲しており、ここではR5の曲面に設定されている。
【0045】
連結外周面61は、シリンジ本体41の外周面のうち、幅方向外周面57と厚み方向外周面59の間、幅方向外周面57´と厚み方向外周面59の間、幅方向外周面57と厚み方向外周面59´の間、幅方向外周面57´と厚み方向外周面59´の間にそれぞれ設定された面である。連結外周面61は、所定の曲率半径(例えば曲率半径R1~R5、本実施の形態ではR2.5)で湾曲し、幅方向外周面57と厚み方向外周面59、幅方向外周面57´と厚み方向外周面59、幅方向外周面57と厚み方向外周面59´、幅方向外周面57´と厚み方向外周面59´を、それぞれ滑らかに連続する。連結外周面61と一対の厚み方向外周面59,59´は、異なる曲率半径に設定された複数の曲面を組み合わせて形成されている。なお、連結外周面61と一対の厚み方向外周面59,59´は、同一曲率半径に設定された曲面によって形成されてもよい。
【0046】
ペースト収納室49は、一方の端部49A(突出部43)に、ペースト収納室49の一端を開放し、プランジャ5によって押し出されたペーストが排出される排出口51を有し、他方の端部49Bに、ペースト収納室49の他端を開放する充填口53を有している。ペースト収納室49は、一方の端部49Aにおいて、ペースト収納室49に挿入されたプランジャ5の先端部(弾性体ホルダ15の頂部83)が嵌る先細り形状を有している。また、他方の端部49Bの内周面には、ペースト収納室49に挿入されたプランジャ5が抜け落ちることを防ぐ、抜止突起55が設けられている。なお、ペースト収納室49´は、ペースト収納室49と同様の構成をしているため、ペースト収納室49の各部と同一の符号を付して、説明を省略する。
【0047】
ペースト収納室49は、
図6に示すように、長手方向Xと直交する方向で切断した断面形状が、長軸方向LAが厚み方向Zに沿い、短軸方向SAが幅方向Yに沿う楕円形状になっている。なお、「楕円形状」とは、幾何学で定義される楕円形のほか、楕円形に近似する形状、例えば長円形(オーバル、二つの半円を二本の直線で結んだ形状)、楕円弓形(楕円の一部を直線に沿って切り欠いた形状)、扁平楕円(楕円形を長軸または短軸方向につぶした形状)、小判形等を含む概念である。本実施の形態では、ペースト収納室49の内周面は、長手方向X及び厚み方向Zに沿って平らな一対の内側平坦面部63,63´と、所定の曲率で湾曲した一対の内側湾曲面部65,65´と、によって構成されている。
【0048】
一対の内側平坦面部63,63´は、ペースト収納室49の内部空間を挟んで幅方向Yに沿って対向する。また、一対の内側湾曲面部65,65´は、ペースト収納室49の内部空間を挟んで厚み方向Zに対向すると共に、一対の内側平坦面部63,63´を滑らかに連続する。これにより、本実施の形態では、ペースト収納室49の内周面の断面形状が、扁平楕円を呈する。
【0049】
また、本実施の形態では、ペースト収納室49の内周面の楕円形状の長軸方向LAの長さ寸法T1は、短軸方向SAの長さ寸法W1を1とした場合に、1.1~2.0の範囲内であることが好ましい。本実施の形態では、長軸方向LAの長さ寸法T1は、短軸方向SAの長さ寸法W1を1として、1.3に設定されている。また、長軸方向LAの長さ寸法T1は、具体的には5mm~20mmであることが好ましく、短軸方向SAの長さ寸法W1は、4.5mm~10mmであることが好ましい。
【0050】
【0051】
プランジャ本体13は、押圧部67と、2本の棒状部69及び棒状部69´とを備えている。
【0052】
押圧部67は、使用者が指2本(例えば、人差し指と中指)でシリンジ3を挟み、且つ、指掛け部47に指を掛けた状態で、シリンジ3内にプランジャ5を押し込むために、指(例えば、親指)で押圧する部分である。
図9Dに示すように、押圧部67は、外周形状が厚み方向Zに長い楕円形状をしており、厚み方向Zの中央部に2本の棒状部69,69´が幅方向Yに並んで配置されている。これにより、本実施の形態のプランジャ本体13は、押圧部の外周形状が幅方向Yに長い楕円形状であって、厚み方向Zの中央部に幅方向Yに並んで2本の棒状部69,69´が配置されているプランジャ本体と比べて、使用者が押圧部67を押したときに力が集中する位置から2本の棒状部69,69´までのそれぞれの距離に差が生じにくい。そのため、使用者が押圧部67を押す力が、各棒状部69,69´に略均等に伝達されやすく、本実施の形態のプランジャ本体13は、ペースト収納室49からのペーストの排出量とペースト収納室49´からのペーストの排出量を略均等にすることができる。さらに、押圧部67は、使用者が指で押圧しやすいように、棒状部69,69´が延びる方向に底面が湾曲している。
【0053】
棒状部69,69´は、押圧部67から長手方向Xに沿って平行に延びる棒状の部分である。本実施の形態では、棒状部69,69´は、押圧部67の長軸方向(幅方向Y)に沿って所定の間隔をあけて並んでおり、ペースト収納室49,49´にそれぞれ同時に挿入される。ここで、棒状部69と棒状部69´は同形状を呈しており、いずれもペースト収納室49,49´の双方に挿入可能である。つまり、棒状部69がペースト収納室49に挿入されたときは、棒状部69´がペースト収納室49´に挿入され、棒状部69がペースト収納室49´に挿入されたときは、棒状部69´がペースト収納室49に挿入される。
【0054】
棒状部69は、
図10に示すように、幅方向Yの断面形状が、厚み方向Zに延びる厚み方向壁部71Aと、幅方向Yに延びる幅方向壁部71Bの組み合わせからなる十字状に形成されている。厚み方向壁部71Aの厚み方向Zの長さ寸法αは、幅方向壁部71Bの幅方向Yの長さ寸法βよりも大きくなっている。棒状部69では、ペースト収納室49(49´)に挿入されたとき、厚み方向壁部71Aと幅方向壁部71Bの交差位置がペースト収納室49(49´)の中心に位置する。さらに、厚み方向壁部71Aの厚み方向Zの長さ寸法αが、ペースト収納室49(49´)の長軸方向LAの最大長さよりも僅かに短く、幅方向壁部71Bの幅方向Yの長さ寸法βが、ペースト収納室49(49´)の短軸方向SAの最大長さよりも僅かに短くなるように設定されている。これにより、棒状部69は、ペースト収納室49(49´)内に挿入されると、厚み方向壁部71Aの先端がペースト収納室49(49´)の内側湾曲面部65,65´に沿い、幅方向壁部71Bの先端がペースト収納室49(49´)の内側平坦面部63,63´に沿う。
【0055】
また、棒状部69は、
図9Aに示すように、幅方向壁部71Bの長手方向Xの一方の端部には、幅方向Yに突出するように形成された一対の突出部73,73と、一対の肉抜き部75,75とが形成されている。これにより、棒状部69をペースト収納室49(49´)内に挿入すると、幅方向壁部71Bは、一対の突出部73,73が内側平坦面部63,63´に接触し、一対の肉抜き部75,75が形成された部分が撓む。これにより、棒状部69は、幅方向Yの位置決めがなされ、がたつきが防止される。また、同様に、棒状部69のがたつき防止を目的として、厚み方向壁部71A及び幅方向壁部71Bのそれぞれの先端には、長手方向Xに所定の間隔をあけて複数の突出部77が形成されている。
【0056】
棒状部69は、先端に、弾性体ホルダ15が緩く係合するホルダ係合部79が形成されている。ホルダ係合部79は、弾性体ホルダ15の底面81Aに接触する先端壁部79Aと、先端壁部79Aから長手方向Xに延び出て、弾性体ホルダ15の底面81Aに形成された被係合孔81Bに差し込まれる係合突起79Bを備えている。
図9Cに示すように、先端壁部79Aは、外周形状が、ペースト収納室49(49´)の断面形状に沿う楕円形状になっている。棒状部69がペースト収納室49(49´)内に挿入されたとき、突出部73,73や突出部77が抜止突起55(55´)を乗り越えると、抜止突起55(55´)が突出部73等に引っ掛かり、プランジャ5が抜け落ちるのを防止するようになっている。
【0057】
棒状部69には、長手方向Xに沿って、所定の間隔で、棒状部69を補強する補強用リブ78が複数設けられている。本実施の形態では、補強用リブ78は、棒状部69の先端側から順に、第1補強用リブ78A、第2補強用リブ78B、第3補強用リブ78C、第4補強用リブ78D、第5補強用リブ78Eの5つ設けられている。第1補強用リブ78A~第5補強用リブ78Eのそれぞれは、厚み方向壁部71A及び幅方向壁部71Bの間の間隙部にまたがって形成されている。これにより、第1補強用リブ78A~第5補強用リブ78Eのそれぞれの長手方向Xと直交する断面形状は、ペースト収納室49の長手方向Xと直交する断面形状より小さく、ペースト収納室49の断面形状に相似した形状になっている。
【0058】
本実施の形態では、第1補強用リブ78Aは、先端壁部79Aから9mm離れた位置に形成されている。また、第2補強用リブ78Bは、先端壁部79Aから27.6mm離れた位置に形成されている。また、第3補強用リブ78Cは、先端壁部79Aから41.2mm離れた位置に形成されている。また、第4補強用リブ78Dは、先端壁部79Aから54.7mm離れた位置に形成されている。また、第5補強用リブ78Eは、先端壁部79Aから64.7mm離れた位置に形成されている。すなわち、第2補強用リブ78Bと第3補強用リブ78Cの間の距離を基準とすると、第1補強用リブ78Aと第2補強用リブ78Bの間の距離はわずかに長く、第3補強用リブ78Cと第4補強用リブ78Dの間の距離はほぼ同じであり、第4補強用リブ78Dと第5補強用リブ78Eの間の距離は短くなっている。
【0059】
後述のように、第2補強用リブ78B~第5補強用リブ78Eのそれぞれは、棒状部69がペースト収納室49内に挿入された状態で、ペースト収納室49内のペースの残量を示す、インジケータとしても機能する。
【0060】
棒状部69´は、棒状部69と同様の構成をしているため、棒状部69の各部の符号に「´」を付して、説明を省略する。
【0061】
[弾性体ホルダ]
図11Aは、弾性体ホルダ15の斜視図であり、
図11Bは、底面図である。
【0062】
弾性体ホルダ15は、プランジャ本体13の先端のホルダ係合部79,79´に1つずつ緩く係合され、プランジャ5の先端部を構成するものである。弾性体ホルダ15は、胴部81と、頂部83と、ネック部85とを有している。胴部81は、幅方向Yの断面形状が楕円形状の部分である。胴部81の底面81Aには、ホルダ係合部79の係合突起79B又はホルダ係合部79´の係合突起79B´が差し込まれる被係合孔81Bが形成されている。胴部81の外周面81Cは、ペースト収納室49(49´)の内周面(内側平坦面部63,63´及び内側湾曲面部65,65´)の楕円形状に沿う楕円形状を有している。頂部83は、先端に向かうにしたがって細くなる形状を有している。ネック部85は、胴部81と頂部83の間に形成された楕円形状の部分である。ネック部85と、ネック部85を挟んで対向する胴部81及び頂部83によって、Oリング17が取り付けられる環状溝部81Dが形成されている。
【0063】
胴部81の楕円形状は、ペースト収納室49(49´)の断面形状より小さく、また、ペースト収納室49(49´)の断面形状に相似した断面形状であり、ペースト収納室49(49´)の内周面の楕円形状に沿うものである。このため、弾性体ホルダ15がペースト収納室49(49´)に挿入されたとき、胴部81の外周面81Cからペースト収納室49(49´)の内周面までの距離は、胴部81の全周にわたって一定になる。また、本実施の形態では、ペースト収納室49(49´)と同様に、胴部81の楕円形状の長軸方向の長さ寸法T2は、短軸方向の長さ寸法W2を1とした場合に、1.1~2.0の範囲内であることが好ましい。具体的には、本実施の形態では、長軸方向の長さ寸法T2は、短軸方向の長さ寸法W2を1として、1.3に設定されている。
【0064】
ネック部85の楕円形状は、胴部81の楕円形状より小さく、胴部81の楕円形状に相似した断面形状である。つまり、ネック部85の楕円形状は、ペースト収納室49(49´)の断面形状に相似した断面形状である。このため、弾性体ホルダ15がペースト収納室49(49´)に挿入されたとき、ネック部85の外周面85Cからペースト収納室49(49´)の内周面までの距離は、ネック部85の全周にわたって一定になる。また、本実施の形態では、ネック部85の楕円形状の長軸方向の長さ寸法と短軸方向の長さ寸法との比率は、胴部81の楕円形状と同じ比率に設定されている。
【0065】
図12は、環状溝部81DにOリング17を取り付けた状態の弾性体ホルダ15を、ネック部85の部分で長手方向Xと直交する幅方向Yに切断した断面図である。ここで、Oリング17は、円環状であるが、ネック部85が楕円形状を呈している。そのため、Oリング17は、環状溝部81Dに取り付けられると、長軸方向(厚み方向Z)に引き伸ばされて、楕円形状となる。楕円形状になったOリング17の長軸方向の長さ寸法T3は、胴部81の楕円形状の長軸方向の長さ寸法T2よりも大きい。また、楕円形状になったOリング17の短軸方向の長さ寸法W3は、胴部81の楕円形状の短軸方向の長さ寸法W2よりも大きい。そのため、Oリング17は、環状溝部81Dからはみ出た状態で固定される。
【0066】
また、Oリング17のうち、長軸方向(厚み方向Z)に引き伸ばされる領域aには、長軸方向(厚み方向Z)に引き伸ばされない領域bよりも強い引張力が作用する。これにより、
図12に示されたように、領域aにおけるOリング17の線径ΔAは、領域bにおける線径ΔBよりも細くなり、Oリング17は、周方向の位置によって線径に違いが生じる。なお、「Oリング17の線径」とは、Oリング17の断面太さである。そして、周方向の位置によってOリング17の線径に違いが生じることで、環状溝部81DからのOリング17のはみ出し量が異なり、線径が細い部分(例えば領域a)ほど、環状溝部81Dからのはみ出し量が少なくなる。
【0067】
さらに、楕円形状になったOリング17の長軸方向の長さ寸法T3は、ペースト収納室49或いはペースト収納室49´の内周面の楕円形状の長軸方向の長さ寸法T1よりわずかに大きい。また、楕円形状になったOリング17の短軸方向の長さ寸法W3は、ペースト収納室49或いはペースト収納室49´の内周面の楕円形状の短軸方向の長さ寸法W1よりわずかに大きい。そのため、弾性体ホルダ15をシリンジ3のペースト収納室49(49´)内に挿入すると、Oリング17は、ペースト収納室49(49´)の内周面に接触し、ペースト収納室49(49´)の内周面とネック部85の外周面85Cとに挟まれて圧縮される。
【0068】
図13は、環状溝部81DにOリング17を取り付けた状態の弾性体ホルダ15を、シリンジ3のペースト収納室49内に挿入した状態で、ネック部85の部分で長手方向Xと直交する幅方向Yに切断した場合の断面図(模式図)と、その際の正面方向及び側面方向から見た場合の断面図(模式図)である。
図13では、環状溝部81Dからはみ出していてペースト収納室49に挿入されることで圧縮されるOリング17の部分をグレーに着色して表現しており、圧縮される前のOリング17の状態を破線で示している。
【0069】
図13に示すように、環状溝部81DにOリング17を取り付けた状態でプランジャ5をシリンジ3に挿入すると、Oリング17は、ペースト収納室49の内周面(内側平坦面部63,63´及び内側湾曲面部65,65´)及びネック部85の外周面85Cに挟まれて圧縮される。ここで、Oリング17は、周方向の位置によって線径に違いが生じており、線径が細い部分ほど、環状溝部81Dからのはみ出し量が少なくなっている。
【0070】
このため、
図13に示したように、Oリング17の周方向の位置によって、ネック部85の外周面85Cからペースト収納室49の内周面までの距離Gdと、Oリング17の線径Wrとの差(ΔX1,ΔX2)の大きさが異なる。このため、ペースト収納室49に挿入されたときのOリング17の圧縮率には、周方向の位置に応じて差が生じる。
【0071】
すなわち、楕円形状になっているOリング17のうち、線径が太い領域bの方が、線径の細い領域aよりも環状溝部81Dからのはみ出し量が多く、領域bにおける差ΔX2の方が、領域aにおける差ΔX1よりも大きくなる。そのため、シリンジ3に挿入された際、Oリング17は、領域bの方が領域aよりもペースト収納室49の内部に向かって押し込まれることになり、領域bにおける圧縮率の方が、領域aにおける圧縮率よりも大きくなる。この結果、楕円形状になっているOリング17の長軸方向(厚み方向Z)の圧縮率の方が、Oリング17の短軸方向(幅方向Y)の圧縮率よりも大きくなる。
【0072】
そして、周方向の位置によってOリング17の圧縮率に差があることで、Oリング17の周方向の位置によって、Oリング17とペースト収納室49(49´)の内周面との間に生じる摩擦力に差が生じる。すなわち、楕円形状に伸ばされたOリング17の長軸方向の頂点17Aとペースト収納室49(49´)の内周面との間の摩擦力が、楕円形状に伸ばされたOリング17の短軸方向の頂点17Bとペースト収納室49(49´)の内周面との間の摩擦力よりも大きくなる。そのため、ペースト収納室49(49´)の断面形状である楕円形状、及び、プランジャ5の断面形状である楕円形状の長軸方向の寸法を、短軸方向の寸法に対して調整することで、ペースト収納室49(49´)の内周面と弾性体(Oリング17)の間のシール性を保ちながら、プランジャ5の長手方向への移動しやすさを調整しやすい。
【0073】
また、Oリング17の長軸方向の圧縮率(領域bにおける圧縮率)は約10~14%であり、短軸方向の圧縮率(領域aにおける圧縮率)は約3~7%であることが好ましい。具体的には、本実施の形態では、長軸方向の圧縮率は12%であり、短軸方向の圧縮率は5%である。
圧縮率C(%)は、下記式により求められる:
C=(Wr-Gd)/Wr×100
但し、
Wr:弾性体(Oリング)の線径[mm]
Gd:ネック部の外周面からペースト収納室の内周面までの距離[mm]
【0074】
なお、弾性体ホルダ15は、プランジャ本体13の先端のホルダ係合部79(79´)に緩く係合する。このため、弾性体ホルダ15は、Oリング17を取り付けた状態で、プランジャ本体13と共にシリンジ3のペースト収納室49(49´)内に挿入されると、プランジャ本体13が押し込まれることで、プランジャ本体13と共にペースト収納室49(49´)内を長手方向Xに移動する。一方、プランジャ本体13が引き戻されると、プランジャ本体13から分離され、ペースト収納室49(49´)内に取り残されるようになっている。これにより、誤ってプランジャ5が引き戻されても、排出口51,(51´)からペースト収納室49(49´)内に空気が取り込まれることがない。
【0075】
[スタティックミキサー]
(ミキシングチップ本体部)
図14Aは、ミキシングチップ本体部19の斜視図であり、
図14Bは底面図である。また、
図15は、
図14Bに示したXV-XV線断面図である。
【0076】
ミキシングチップ本体部19は、ミキサーハウジング21と組み合わせて、装着部材Mであるスタティックミキサー7の内側部材IMを構成する部材である。ミキシングチップ本体部19は、基部87と、2つの挿入部89,89´と、一対の回転係合片91,91´と、逆流防止壁35と、エレメント群39とを備えている。
【0077】
基部87は、外装体OMであるミキサー外装体23の内側に嵌まる円柱状の部位である。基部87の外周部には、径方向外側に延びるフランジ部87Cが形成されている。ミキシングチップ本体部19は、フランジ部87Cが後述のミキサー外装体23の内周面に形成された溝(周方向溝103)に嵌ることで、ミキサー外装体23に対して、中心軸CAを中心にして、相対的に回転可能な状態で固定される。
【0078】
2つの挿入部89,89´及び一対の回転係合片91,91´は、基部87のシリンジ3と対向する第1端面87Aに形成され、第1端面87Aから長手方向Xに延びている。2つの挿入部89,89´は、スタティックミキサー7がシリンジ3に取り付けられた際、シリンジ3の2つの突出部43,43´にそれぞれ挿入される。挿入部89の内部にはペースト通路29が形成され、挿入部89´の内部にはペースト通路29´が形成されている。一対の回転係合片91,91´は、後述のミキサー外装体23の被係合溝(一対の第1被係合溝105A,105A´、または、一対の第2被係合溝105B,105B´)にそれぞれ係合する部分である。
【0079】
逆流防止壁35は、基部87の第1端面87Aの反対側の第2端面87Bの中央部から、中心軸CAに沿って延びている。逆流防止壁35の先端が、ペーストの合流位置JPとなり、エレメント群39は、逆流防止壁35の先端から延びている。エレメント群39は、中心軸CAに沿って並んだ複数(本実施の形態では、8つ)のエレメントによって構成されている。
【0080】
ペースト通路29は、挿入部89及び基部87を連続して貫通して形成されている。流入孔29Aは、挿入部89の端面に形成されており、また、流出孔29Bは、基部87の第2端面87Bに形成されている。同様に、ペースト通路29´は、挿入部89´及び基部87を連続して貫通して形成されている。流入孔29A´は、挿入部89´の端面に形成されており、また、流出孔29B´は、基部87の第2端面87Bに形成されている。
【0081】
なお、上述のように、ペースト通路29の内周面は、厚み方向Zに直交する断面で見たときに中心軸CAから離れた遠位面29Cと、中心軸CAに近い近位面29Dを有している。そして、遠位面29Cと流入孔29Aの中心点を通って長手方向Xに延びる直線C1とでなす角θは、ここでは45°に設定されている。
【0082】
(ミキサーハウジング)
図16Aは、ミキサーハウジング21の斜視図であり、
図16Bは底面図である。また、
図17は、
図16Bに示したXVII-XVII線断面図である。
【0083】
ミキサーハウジング21は、ミキシングチップ本体部19と組み合わせて、装着部材Mであるスタティックミキサー7の内側部材IMを構成する部材である。ミキサーハウジング21は、基部ハウジング部93と、エレメントハウジング部37とを備えている。
【0084】
基部ハウジング部93は、ミキサーハウジング21をミキシングチップ本体部19に被せた場合に、ミキシングチップ本体部19の基部87の第2端面87Bを覆う円形の端壁部93Aと、端壁部93Aの縁部から立ち上がり、基部87を取り囲んで先端がフランジ部87Cに接するまで延びる周壁部93Bを備えている。
【0085】
端壁部93Aの内壁には、流出孔29B,29B´と対向する位置に凹部93Cが設けられている。ミキサーハウジング21をミキシングチップ本体部19に被せることで、内側部材IMの内部に基部87と逆流防止壁35と凹部93Cとで区画される中間通路31が形成される(
図3参照)。
【0086】
エレメントハウジング部37は、基部ハウジング部93の端壁部93Aの中央部に形成された貫通孔から長手方向Xに延び、先端が開放した円筒状の部分である。エレメントハウジング部37は、ミキサーハウジング21をミキシングチップ本体部19に被せた際、内部にエレメント群39が挿入され、ミキシング通路33が形成される。エレメントハウジング部37の外周部には、ガイドチップ9を固定するためのガイドチップ係合溝37Aが形成されている。
【0087】
【0088】
ミキサー外装体23は、装着部材Mであるスタティックミキサー7の外装体OMを構成する筒状部材である。ミキサー外装体23内に、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21からなる内側部材IMが収納されることで、装着部材Mであるスタティックミキサー7が構成される。また、ミキサー外装体23は、シリンジ3に対して中心軸CAを中心にして相対的に回転する。
【0089】
ミキサー外装体23は、外周形状が正六角形状の頂壁部95と、頂壁部95の縁部から立ち上がる第1周壁部97と、第1周壁部97から段差を介して連続して延びる第2周壁部99を備えている。また、ミキサー外装体23の内部には、頂壁部95及び第1周壁部97によって囲まれた第1空間S1と、第2周壁部99によって囲まれた第2空間S2とが形成されている(
図19及び
図20参照)。そして、第1空間S1内には、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21からなる内側部材IMが、中心軸CAを中心に回転可能な状態で嵌る。また、第2空間S2内には、内側部材IMが収納された状態で、シリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)が挿入される(
図3参照)。
【0090】
頂壁部95は、ミキサーハウジング21の端壁部93Aを覆う部分であり、シリンジ3が挿入される開口部に対向する(
図3参照)。頂壁部95の中央部には、エレメントハウジング部37を外部に露出するための頂部貫通筒101が形成されている。頂部貫通筒101は、頂壁部95から突出した円筒部分であり、頂壁部95を貫通している。ミキサー外装体23内に、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21からなる内側部材IMが収納された際、エレメントハウジング部37が頂部貫通筒101を貫通する。また、頂壁部95の表面には、後述するへこみ107Aの位置を示す矢印AR1が刻印されている(
図16B参照)。また、へこみ107Aは、後述する被係合部107の一つである。
【0091】
第1周壁部97は、中心軸CAに沿って見たとき、
図18Cに示されたように、外周面が正六角形状を呈する。また、第1周壁部97の内周面は、中心軸CAに沿って見たとき、
図18Dに示されたように、円形を呈している。そして、第1周壁部97の内周面には、周方向溝103と、一対の第1被係合溝105A,105A´と、一対の第2被係合溝105B,105B´と、が形成されている。
【0092】
周方向溝103は、
図3に示されたように、ミキシングチップ本体部19のフランジ部87Cが嵌るへこみであり、周方向(内側部材IMの回転方向)に延びている。
【0093】
一方の第1被係合溝105A及び第2被係合溝105Bは、一方の回転係合片91が係合するへこみである。他方の第1被係合溝105A´及び第2被係合溝105B´は、他方の回転係合片91´が係合するへこみである。一対の第1被係合溝105A,105A´及び一対の第2被係合溝105B,105B´は、所定の間隔をあけて周方向(内側部材IMの回転方向)に沿って並んで配置されている。ここでは、一対の第1被係合溝105A,105A´は、中心軸CAを挟んで厚み方向Zに対向する位置に形成されている。一対の第2被係合溝105B,105B´は、中心軸CAを挟んで厚み方向Zとは周方向にずれた向きで対向する位置に形成されている。
【0094】
スタティックミキサー7として組み立てられた際、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21は、ミキサー外装体23に対して中心軸CAを中心として相対回転する。このとき、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21と、ミキサー外装体23との回転方向の位置関係に応じて、一方の回転係合片91は、一方の第1被係合溝105Aまたは第2被係合溝105Bのいずれかと係合し、他方の回転係合片91´は、他方の第1被係合溝105A´または第2被係合溝105B´のいずれかと係合する。これにより、ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21とミキサー外装体23の相対的な回転方向の位置が定まる。
【0095】
第2周壁部99は、中心軸CAに沿って見たとき、
図18Cに示されたように、外周面が中心軸CAを中心とする円弧状に湾曲すると共に、一部が外方に向かって尖ったしずく形状を呈する。第2周壁部99の外周面のうち、尖った部分を先鋭部99aとし、先鋭部99aの先端と、頂壁部95に形成された矢印AR1の指す方向とが一致している。また、先鋭部99aには、第2周壁部99の端面99B(シリンジ3が挿入されるミキサー外装体23の開口部)から中心軸CAに沿って突出する突起部99bが形成されている。そのため、突起部99bは、被係合部107のうちの一つであるへこみ107Aが形成された位置に対し、中心軸CAを中心とした周方向に一致する位置に形成される。
【0096】
そして、第2周壁部99の内周面には、段差部98と、第2段差部98Aと、3つのへこみ107A,107B,107Cで構成された被係合部107と、が形成されている。
【0097】
段差部98は、第1周壁部97と第2周壁部99との境界に形成され、ミキサー外装体23の内径を頂壁部95に向かって狭める段状の凹凸である。段差部98は、周方向(内側部材IMの回転方向)に延び、スタティックミキサー7がシリンジ3の先端に取り付けられた際、シリンジ3の円形壁部41aが突き当たる(
図3参照)。
【0098】
第2段差部98Aは、ミキサー外装体23の内径を頂壁部95に向かって狭める段状の凹凸であり、段差部98よりも第2周壁部99の端面99Bに近い位置に形成されている。第2段差部98Aは、周方向(内側部材IMの回転方向)に延び、スタティックミキサー7がシリンジ3の先端に取り付けられた際、シリンジ3のペースト収納室49,49´の外周面に形成された段差部分49cが突き当たる(
図3参照)。
【0099】
また、被係合部107は、装着部材Mをシリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)に固定する係合構造を構成し、シリンジ3の係合部45(3つの突起片45A,45B,45C)と係合する部分である。
【0100】
へこみ107A,107B,107Cは、それぞれ第1溝部107Aa,107Ba,107Caと、第2溝部107Ab,107Bb,107Cbと、を有している。また、第2溝部107Ab,107Bb,107Cbにそれぞれ対応する位置には、第2周壁部99を貫通する窓部109A,109B,109Cが形成されている。つまり、第2溝部107Ab,107Bb,107Cbは、窓部109A,109B,109Cの縁によって構成される。そして、第1溝部107Aa,107Ba,107Caは、第2段差部98Aに開放し、長手方向X(中心軸CA)に沿って段差部98まで延びている。
【0101】
また、へこみ107A,107B,107Cは、ミキサー外装体23の回転方向に沿って並ぶと共に、中心軸CAに沿って見たとき、ミキサー外装体23の回転中心である中心軸CAを中心点とした非点対称になっている。そして、へこみ107A,107B,107Cは、ミキサー外装体23の回転方向に沿って非等間隔で並んでいる。すなわち、へこみ107Aは、第2周壁部99の内周面のうち、中心軸CAに沿って見たとき、第1周壁部97の外周面の隅角部に対応する位置に形成されている。また、へこみ107B及び107Cは、第2周壁部99の内周面のうち、中心軸CAに沿って見たとき、第1周壁部97の外周面の平面部に対応する位置に形成されている(
図18D、
図21参照)。さらに、へこみ107Aは、係合部45である突起片45Aが挿入可能な形状を呈し、へこみ107Bは、係合部45である突起片45Bが挿入可能な形状を呈し、へこみ107Cは、係合部45である突起片45Cが挿入可能な形状を呈している。そして、へこみ107A,107B,107Cは、それぞれ中心軸CAに沿って見たとき互いに異なる形状を呈している。
【0102】
さらに、ミキサー外装体23には、第2段差部98Aの縁部から中心軸CAに沿って立ち上がり、ミキサー外装体23の開口部を形成する円筒壁部98Bが形成されている。円筒壁部98Bは、スタティックミキサー7がシリンジ3の先端に取り付けられた際、ペースト収納室49,49´の外周面に形成された段差部分49cの周囲を取り囲む円筒状の壁面である。円筒壁部98Bが第2段差部98Aの縁部から立ち上がることで、第1溝部107Aa,107Ba,107Caは、それぞれ円筒壁部98Bの内側で開放することになる。すなわち、円筒壁部98Bは、被係合部107よりも中心軸CAに沿って突出している。
【0103】
[キャップ]
キャップ11は、ペースト注入器1の保管時や搬送時に、スタティックミキサー7に代えて、シリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)に固定されるものである。スタティックミキサー7と共通する構成については、同じ部材名称を付し、説明を省略することがある。
【0104】
(キャップ内側部材)
図22Aは、キャップ内側部材25の斜視図であり、
図22Bは底面図である。また、
図23は、
図22Bに示したXXIII-XXIII線断面図である。
【0105】
キャップ内側部材25は、装着部材Mであるキャップ11の内側部材IMを構成する部材であり、スタティックミキサー7の内側部材IMであるミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21に対応する部材である。
【0106】
キャップ内側部材25は、ミキシングチップ本体部19と同様、基部111と、2つの挿入部113,113´と、一対の回転係合片115,115´とを備えている。
【0107】
基部111は、外装体OMであるキャップ外装体27の内側に嵌まる円柱状の部位である。基部111の外周部には、径方向外側に延びるフランジ部117Cが形成されている。キャップ内側部材25は、フランジ部117Cが後述のキャップ外装体27の内周面に形成された溝(周方向溝125)に嵌ることで、キャップ外装体27に対して、中心軸CAを中心にして、相対的に回転可能な状態で固定される。
【0108】
2つの挿入部113,113´及び一対の回転係合片115,115´は、基部111のシリンジ3と対向する第1端面111Aに形成され、第1端面111Aから長手方向Xに延びている。2つの挿入部113,113´は、キャップ11がシリンジ3に取り付けられた際、シリンジ3の2つの突出部43,43´にそれぞれ挿入される。挿入部113,113´は、ミキシングチップ本体部19の場合と異なり、シリンジ3の排出口51,51´を封鎖するための柱形状を呈しており、内部に通路は形成されていない。一対の回転係合片115,115´は、後述のキャップ外装体27の被係合溝(一対の第1被係合溝127A,127A´、または、一対の第2被係合溝127B,127B´)にそれぞれ係合する部分である。
【0109】
基部111の第1端面111Aの反対側の第2端面111Bには、一対の有底凹部117,117が形成されている。
【0110】
【0111】
キャップ外装体27は、装着部材Mであるキャップ11の外装体OMを構成する筒状部材であり、スタティックミキサー7の外装体OMであるミキサー外装体23に対応する部材である。キャップ外装体27内にキャップ内側部材25が収納されることで、装着部材Mであるキャップ11が構成される。また、キャップ外装体27は、シリンジ3に対して中心軸CAを中心にして相対的に回転する。
【0112】
キャップ外装体27は、外周形状が正六角形状の頂壁部119と、頂壁部119の縁部から立ち上がる第1周壁部121と、第1周壁部121から段差を介して連続して延びる第2周壁部123を備えている。また、キャップ外装体27の内部には、頂壁部119及び第1周壁部121によって囲まれた第1空間S1と、第2周壁部123によって囲まれた第2空間S2とが形成されている(
図25及び
図26参照)。そして、第1空間S1内には、キャップ内側部材25からなる内側部材IMが、中心軸CAを中心に回転可能な状態で嵌る。また、第2空間S2内には、内側部材IMが収納された状態で、シリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)aが挿入される。
【0113】
頂壁部119は、第1空間S1を閉鎖する部分である。頂壁部119は、ミキシングチップ本体部19の場合と異なり、湾曲した板部材からなり、中央部に頂部貫通筒は形成されていない。また、頂壁部119の表面には、後述するへこみ129Aの位置を示す矢印AR1が刻印されている(
図24C参照)。
【0114】
第1周壁部121は、中心軸CAに沿って見たとき、
図24Cに示されたように、外周面が正六角形状を呈する。また、第1周壁部121の内周面は、中心軸CAに沿って見たとき、
図24Dに示されたように、円形を呈している。そして、第1周壁部121の内周面には、周方向溝125と、一対の第1被係合溝127A,127A´と、一対の第2被係合溝127B,127B´と、が形成されている。
【0115】
周方向溝125は、キャップ内側部材25のフランジ部117Cが嵌まるへこみであり、周方向(キャップ内側部材25の回転方向)に延びている。
【0116】
一方の第1被係合溝127A及び第2被係合溝127Bは、一方の回転係合片115が係合するへこみである。他方の第1被係合溝127A´及び第2被係合溝127B´は、他方の回転係合片115´が係合するへこみである。一対の第1被係合溝127A,127A´及び一対の第2被係合溝127B,127B´は、所定の間隔をあけて周方向(キャップ内側部材25の回転方向)に沿って並んで配置されている。ここでは、一対の第1被係合溝127A,127A´は、中心軸CAを挟んで厚み方向Zに対向する位置に形成されている。一対の第2被係合溝127B,127B´は、中心軸CAを挟んで厚み方向Zとは周方向にずれた向きで対向する位置に形成されている。
【0117】
キャップ11として組み立てられた際、キャップ内側部材25は、キャップ外装体27に対して中心軸CAを中心として相対回転する。このとき、キャップ内側部材25と、キャップ外装体27との回転方向の位置関係に応じて、一方の回転係合片115は、一方の第1被係合溝127Aまたは第2被係合溝127Bのいずれかと係合し、他方の回転係合片115´は、他方の第1被係合溝127A´または第2被係合溝127B´のいずれかと係合する。これにより、キャップ内側部材25とキャップ外装体27の相対的な回転方向の位置が定まる。
【0118】
第2周壁部123は、中心軸CAに沿って見たとき、
図24Cに示されたように、外周面が中心軸CAを中心とする円弧状に湾曲すると共に、一部が外方に向かって尖ったしずく形状を呈する。第2周壁部123の外周面のうち、尖った部分を先鋭部123aとし、先鋭部123aの先端と、頂壁部119に形成された矢印AR1の指す方向とが一致している。また、先鋭部123aには、第2周壁部123の端面123B(シリンジ3が挿入されるキャップ外装体27の開口部)から中心軸CAに沿って突出する突起部123bが形成されている。そのため、突起部123bは、被係合部129のうちの一つであるへこみ129Aが形成された位置に対し、中心軸CAを中心とした周方向に一致する位置に形成される。
【0119】
そして、第2周壁部123の内周面には、段差部120と、第2段差部120Aと、3つのへこみ129A,129B,129Cで構成された被係合部129と、が形成されている。
【0120】
段差部120は、第1周壁部121と第2周壁部123との境界に形成され、キャップ外装体27の内径を頂壁部119に向かって狭める段状の凹凸である。段差部120は、周方向(内側部材IMの回転方向)に延び、キャップ11がシリンジ3の先端に取り付けられた際、シリンジ3の円形壁部41aが突き当たる。
【0121】
第2段差部120Aは、キャップ外装体27の内径を頂壁部119に向かって狭める段状の凹凸であり、段差部120よりも第2周壁部123の端面123Bに近い位置に形成されている。第2段差部120Aは、周方向(内側部材IMの回転方向)に延び、キャップ11がシリンジ3の先端に取り付けられた際、シリンジ3のペースト収納室49,49´の外周面に形成された段差部分49cが突き当たる。
【0122】
また、被係合部129は、装着部材Mをシリンジ3の先端部(シリンジ本体41の一方の端部41A)に固定する係合構造を構成し、シリンジ3の係合部45(3つの突起片45A,45B,45C)と係合する部分である。
【0123】
へこみ129A,129B,129Cは、それぞれ第1溝部129Aa,129Ba,129Caと、第2溝部129Ab,129Bb,129Cbと、を有している。また、第2溝部129Ab,129Bb,129Cbにそれぞれ対応する位置には、第2周壁部123を貫通する窓部131A,131B,131Cが形成されている。つまり、第2溝部129Ab,129Bb,129Cbは、窓部131A,131B,131Cの縁によって構成される。そして、第1溝部129Aa,129Ba,129Caは、第2段差部120Aに開放し、長手方向X(中心軸CA)に沿って段差部120まで延びている。
【0124】
また、へこみ129A,129B,129Cは、キャップ外装体27の回転方向に沿って並ぶと共に、中心軸CAに沿って見たとき、キャップ外装体27の回転中心である中心軸CAを中心点とした非点対称になっている。そして、へこみ129A,129B,129Cは、キャップ外装体27の回転方向に沿って非等間隔で並んでいる。すなわち、へこみ129Aは、第2周壁部123の内周面のうち、中心軸CAに沿って見たとき、第1周壁部121の外周面の隅角部に対応する位置に形成されている。また、へこみ129B及び129Cは、第2周壁部123の内周面のうち、中心軸CAに沿って見たとき、第1周壁部121の外周面の平面部に対応する位置に形成されている(
図24D、
図27参照)。さらに、へこみ129Aは、係合部45である突起片45Aが挿入可能な形状を呈し、へこみ129Bは、係合部45である突起片45Bが挿入可能な形状を呈し、へこみ129Cは、係合部45である突起片45Cが挿入可能な形状を呈している。そして、へこみ129A,129B,129Cは、それぞれ中心軸CAに沿って見たとき互いに異なる形状を呈している。
【0125】
さらに、キャップ外装体27には、第2段差部120Aの縁部から中心軸CAに沿って立ち上がり、キャップ外装体27の開口部を形成する円筒壁部120Bが形成されている。円筒壁部120Bは、キャップ11がシリンジ3の先端に取り付けられた際、ペースト収納室49,49´の外周面に形成された段差部分49cの周囲を取り囲む円筒状の壁面である。円筒壁部120Bが第2段差部120Aの縁部から立ち上がることで、第1溝部129Aa,129Ba,129Caは、それぞれ円筒壁部120Bの内側で開放することになる。すなわち、円筒壁部120Bは、被係合部129よりも中心軸CAに沿って突出している。
【0126】
[装着部材を固定するまでの詳細]
図28及び
図29を用いて、装着部材Mをシリンジ3に固定するまでの詳細を、スタティックミキサー7を例に説明する。
図28は、スタティックミキサー7をシリンジ3に被せて固定する前段階の様子を示す図である。
図28では、スタティックミキサー7は底面を示してあり、シリンジ3は、指掛け部47を省略した平面を示してある。また、
図28及び
図29では、内側部材IMをグレーに着色して図示してある。
【0127】
図28に示すように、シリンジ3に固定する前のスタティックミキサー7は、一方の回転係合片91が一方の第2被係合溝105Bと係合し、他方の回転係合片91´が他方の第2被係合溝105B´と係合した状態にある。すなわち、ミキサー外装体23の幅方向Yと内側部材IMの幅方向Yとが一致していない状態にある。この状態で、シリンジ3の3つの突起片45A,45B,45Cに、へこみ107A,107B,107Cの第1溝部107Aa,107Ba,107Caの位置をそれぞれ対向させた場合に限って、ミキサー外装体23の第2周壁部99に囲まれた第2空間S2内にシリンジ3の円形壁部41aを挿入可能である。そして、このときに限り、シリンジ3の突出部43がミキシングチップ本体部19の挿入部89に対向し、シリンジ3の突出部43´がミキシングチップ本体部19の挿入部89´に対向する。
【0128】
なお、使用者は、頂壁部95の表面の矢印AR1と、突起片45Aを合わせることで、突起片45Aとへこみ107Aの位置合わせを行うことができる。この結果、突起片45Aにへこみ107Aの第1溝部107Aaが対向し、突起片45Bにへこみ107Bの第1溝部107Baが対向し、突起片45Cにへこみ107Cの第1溝部107Caが対向し、突出部43に挿入部89が対向し、突出部43´に挿入部89´が対向する。
【0129】
また、本実施の形態では、ミキサー外装体23の開口部に、第2段差部98A及び円筒壁部98Bが形成されており、これを利用して、突起片45と被係合部107の位置合わせも可能である。すなわち、突起片45と被係合部107の位置合わせをしない状態でミキサー外装体23にシリンジ3の円形壁部41aを挿入すると、シリンジ3の円形壁部41aが第2段差部98A及び円筒壁部98Bに接触し、第2空間S2内まで入らない状態となる。これにより、ミキサー外装体23の中心軸CAと、シリンジ3の中心軸CAとの位置を一致させ、両者の位置ずれを抑制した状態で、係合部45と(被係合部107)とを係合可能にすることができる。この状態で、中心軸CAを中心に、ミキサー外装体23をシリンジ3に対して相対的に回転させて、シリンジ3の円形壁部41aが第2空間S2内まで入る位置(すなわち、突起片45Aとへこみ107A、突起片45Bとへこみ107B、突起片45Cとへこみ107Cの位置が合う位置)を探ることができる。
【0130】
そして、第2空間S2内にシリンジ3の円形壁部41aを挿入すると、突出部43に挿入部89が挿入され、突出部43´に挿入部89´が挿入される。その結果、内側部材IM(ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21)の回転方向位置がシリンジ3に対して固定される。また、突起片45Aは、へこみ107Aの第1溝部107Aaに挿入されて、段差部98に突き当たる。また、突起片45Bは、へこみ107Bの第1溝部107Baに挿入されて、段差部98に突き当たる。また、突起片45Cは、へこみ107Cの第1溝部107Caに挿入されて、段差部98に突き当たる。
【0131】
そして、この状態でミキサー外装体23が、中心軸CAを中心にして回転すると、内側部材IM(ミキシングチップ本体部19及びミキサーハウジング21)は回転せずに、外装体OMであるミキサー外装体23のみが回転し、
図29の状態になる。
【0132】
図29は、ミキサー外装体23のみが回転した後のスタティックミキサー7の底面図である(挿入されているシリンジ3の図示は省略している)。ミキサー外装体23のみが回転すると、一方の回転係合片91が一方の第1被係合溝105Aと係合し、他方の回転係合片91´が他方の第1被係合溝105A´と係合した状態になる。また、突起片45Aは、第1溝部107Aaの端部から段差部98に沿って第2溝部107Abに入り込み、窓部109Aから外部に露出する。また、突起片45Bは、第1溝部107Baの端部から段差部98に沿って第2溝部107Bbに入り込み、窓部109Bから外部に露出する。また、突起片45Cは、第1溝部107Caの端部から段差部98に沿って第2溝部107Cbに入り込み、窓部109Cから外部に露出する。
【0133】
これにより、突起片45A,45B,45Cがそれぞれへこみ107A,107B,107Cに係合した状態になり、スタティックミキサー7とシリンジ3が相互に固定される。
【0134】
[補強用リブを用いたペースト残量表示]
図30乃至
図33は、ペースト注入器を長手方向Xに延びる中心軸CAを通る位置で幅方向Yに切断した断面図である。
図30乃至
図33を用いて、棒状部69(69´)に形成された第2補強用リブ78B~第5補強用リブ78E(78B´~78E´)のそれぞれがペースト収納室49,49´内のペーストの残量を示す、インジケータとしても機能することを説明する。なお、
図30乃至
図33では、棒状部69´に係合される弾性体ホルダ及びOリングの符号に「´」を付している。
【0135】
ペースト注入器1に充填されたペーストは、予め、一回当たりのおよその使用量が定められている。本実施の形態では、スタティックミキサー7は、使い捨てであるため、所望の位置に吐出させるペーストの量に、ペーストの流路(ペースト通路29及びペースト通路29´と、中間通路31と、ミキシング通路33)内に残存するペーストの量を加えた量を、一回当たりのペーストの使用量としている。そして、ペースト注入器1は、出荷時、シリンジ3のペースト収納室49,49´に、予め、それぞれ複数回分の使用量の別種類のペーストが充填された上で、シリンジ3の充填口53,53´から、プランジャ5が挿入されて、封止された状態になっている(
図1参照)。本実施の形態では、ペースト注入器1の出荷時、ペースト収納室49,49´には、約15回分の使用量のペーストが充填されている。そして、プランジャ5がシリンジ3内に押し込まれることにより、Oリング17(17´)が取り付けられた弾性体ホルダ15(15´)がペースト収納室49(49´)内を排出口51(51´)に向かって移動し、ペースト収納室49(49´)内からペーストが排出される。このとき、ペーストの使用が進むと、プランジャ5がシリンジ3内を排出口51,51´に向かって移動し、充填口53(53´)と重複する補強用リブ78(78´)が、第2補強用リブ78B(78B´)、第3補強用リブ78C(78C´)、第4補強用リブ78D(78D´)、第5補強用リブ78E(78E´)の順に変化する。言い換えれば、ペースト収納室49(49´)内のペーストの残量に応じて、充填口53(53´)と重複する補強用リブ78(78´)の種類が変化する。このため、本実施の形態のペースト注入器1は、充填口53(53´)と重複する位置に存在する補強用リブ78(78´)によって、ペースト収納室49(49´)内のペーストの残量を示すことができる。
【0136】
ただし、一回当たりのペーストの使用量は、使用者や、使用状況によって変動するものであり、厳密に規定されているものではない。このため、本実施の形態では、第2補強用リブ78B~第5補強用リブ78E(78B´~78E´)が充填口53(53´)と重複することで示されるペーストの残量は、残量をおよそのパーセンテージで示すものである。
【0137】
また、本実施の形態では、第5補強用リブ78E(78E´)が充填口53(53´)と重複したときのペーストの残量は、使用量の一回分である。すなわち、本実施の形態のペースト注入器1は、第5補強用リブ78E(78E´)が充填口53(53´)と重複することで、ペースト収納室49(49´)内のペーストの残量が使用量の一回分であることを示すことができる。そして、第5補強用リブ78E(78E´)が充填口53(53´)の位置を越えてペースト収納室49(49´)内に入ったペースト注入器1は、使用終了となる。
【0138】
具体的には、本実施の形態では、ペーストの残量が、約75%であるときに、第2補強用リブ78B(78B´)が充填口53(53´)と重複する(
図30参照)。また、ペーストの残量が、約50%であるときに、第3補強用リブ78C(78C´)が充填口53(53´)と重複する(
図31参照)。また、ペーストの残量が、約25%であるときに、第4補強用リブ78D(78D´)が充填口53(53´)と重複する(
図32参照)。そして、ペーストの残量が、使用量の一回分とき、第5補強用リブ78E(78E´)が充填口53(53´)と重複する位置に存在する(
図33参照)。
【0139】
これにより、本実施の形態のペースト注入器1は、充填口53(53´)と重複する位置に第2補強用リブ78B(78B´)が存在する場合は、ペーストの残量が、約75%であることを示すことができる(
図30参照)。また、充填口53(53´)と重複する位置に第3補強用リブ78C(78C´)が存在する場合は、ペーストの残量が、約50%であることを示すことができる(
図31参照)。また、充填口53(53´)と重複する位置に第4補強用リブ78D(78D´)が存在する場合は、ペーストの残量が、約25%であることを示すことができる(
図32参照)。充填口53(53´)と重複する位置に第5補強用リブ78E(78E´)が存在する場合は、ペーストの残量が使用量の一回分であることを示すことができる(
図33参照)。
【0140】
なお、第4補強用リブ78D(78D´)と第5補強用リブ78E(78E´)の間の距離が、第2補強用リブ78B(78B´)と第3補強用リブ78C(78C´)の間の距離よりも短いのは、第2補強用リブ78B(78B´)と第3補強用リブ78C(78C´)の間は、ペーストの残量の75%~50%の25%分の距離であるのに対し、第4補強用リブ78D(78D´)と第5補強用リブ78E(78E´)の間は、ペーストの残量の25%~使用量の一回分の25%分に満たない距離であるためである。
【0141】
<ペースト注入器の作用>
以下、ペースト注入器の作用を説明する。
【0142】
本実施の形態のペースト注入器1は、棒状部69(69´)には、長手方向Xに沿って、所定の間隔で、棒状部69(69´)を補強する補強用リブ78(78´)が複数(第1補強用リブ78A~第5補強用リブ78E(78A´~78E´))設けられており、このうち、第2補強用リブ78B~第5補強用リブ78E(78B´~78E´)は、ペースト収納室49(49´)内のペーストの残量が、予め規定された量になったときに充填口53(53´)と重複する位置に形成されている。
【0143】
このように第1補強用リブ78A~第5補強用リブ78E(78A´~78E´)を設けることで、第1補強用リブ78A~第5補強用リブ78E(78A´~78E´)で棒状部69(69´)を補強することができる。また、第2補強用リブ78B~第5補強用リブ78E(78B´~78E´)と充填口53(53´)の位置関係によって、外観からペースト収納室49(49´)内のペーストの残量を知ることができる。すなわち、第2補強用リブ78B~第5補強用リブ78E(78B´~78E´)が、ペーストの残量のインジケータの役割も果たすことができる。
【0144】
第1補強用リブ78A~第5補強用リブ78E(78A´~78E´)を設ける位置は任意に設定することができる。例えば、ペーストの一回の使用量が予め規定されている場合に、そのペーストの残量をパーセンテージで示すようにしてもよいし、使用できる残り回数を示すようにしてもよい。
【0145】
また、例えば、押圧部67に最も近い位置に設けられている第5補強用リブ78E(78E´)は、ペースト収納室49(49´)内のペーストの残量が使用量の一回分のとき、充填口53(53´)と重複する位置に形成してもよい。このようにすれば、最後の一回分の使用中に、治療等に必要な量のペーストがミキシングチップまたはその先端に装着したガイドチップから吐出される前にペースト収納室49,49´内のペーストが尽きてしまうことを防止して、使用者が安心してペースト注入器1を使用することができる。なお、一回当たりのペーストの使用量は、使用者や、使用状況によって変動するものである。そのため、第5補強用リブ78E(78E´)が充填口53(53´)と重複したときのペーストの残量である「使用量の一回分」を、予め定めた一回当たりのおよそのペーストの使用量よりも余裕をもった量に設定することも可能である。
【0146】
複数の補強用リブ78(78´)の長手方向Xと直交する断面形状は、ペースト収納室49(49´)の長手方向Xと直交する断面形状より小さく、ペースト収納室49(49´)の断面形状に相似した形状であってもよい。これにより、複数の補強用リブ78(78´)を大きく構成でき、棒状部69(69´)を補強し、且つ、ペースト収納室49(49´)内のペーストの残量を示す表示の視認性を向上させることができる。
【0147】
棒状部69(69´)の長手方向Xと直交する断面形状が、長手方向Xと直交する厚み方向Zに延びる厚み方向壁部71A(71A´)と、長手方向X及び厚み方向Zと直交する幅方向Yに延びる幅方向壁部71B(71B´)の組み合わせからなる十字状に形成されている場合、複数の補強用リブ78(78´)は、厚み方向壁部71A(71A´)及び幅方向壁部71B(71B´)の間の間隙部に形成されていてもよい。このようにすれば、複数の補強用リブ78(78´)によって、十字状の棒状部69(69´)を補強することができる。また、複数の補強用リブ78(78´)が十字状の棒状部69(69´)と直交するように設けられているため、複数の補強用リブ78(78´)を目視しやすく、ペースト収納室49(49´)内のペーストの残量を示す表示の視認性を向上させることができる。
【0148】
プランジャ5は、棒状部69(69´)の先端部に緩く係合した弾性体ホルダ15(15´)を有しており、弾性体ホルダ15(15´)は、プランジャ5をペースト収納室49(49´)に挿入した後、プランジャ5が充填口53(53´)に向かって引き戻されたとき、棒状部69(69´)から分離するようになっていてもよい。このようにすれば、誤ってプランジャ5が引き戻されても、ペースト収納室49(49´)内に弾性体ホルダ15(15´)が残され、排出口51,(51´)からペースト収納室49(49´)内に空気が取り込まれることがない。また、ペースト収納室49(49´)内に空気が取り込まれていないため、再度、棒状部69(69´)をペースト収納室49(49´)内に挿入し、弾性体ホルダ15(15´)に係合させれば、複数の補強用リブ78(78´)が示すペーストの残量の表示に誤差が生じにくい。
【0149】
さらに、ペースト注入器1は、歯科材料の注入に使用されるものである。このため、ペースト注入器1は、歯科材料を所望の位置に注入することができる。
【0150】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【0151】
例えば、上記例では、棒状部69に対して、補強用リブを長手方向に沿って第1補強用リブ78A~第5補強用リブ78Eの5つ設けたが、補強用リブを増やしてもよいし、減らしてもよいのはもちろんである。また、例えば、最後の一回分を示す補強用リブのみにすることも可能である。
【0152】
また、上記例では、シリンジは、2つのペースト収納室(49,49´)を有する例を示したが、本発明のペースト注入器は、ペースト収納室は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。ペースト収納室が1つの場合には、ペースト収納室に収納するペーストは、1種類で用いるものでよいのは勿論である。
【0153】
なお、以上の実施の形態の説明に関し、さらに以下を開示する。
(1)長手方向に延び、内部に前記長手方向に沿って延びると共にペーストが充填されたペースト収納室を有し、一方の端部に前記ペースト収納室の一端を開放する排出口が形成され、他方の端部に前記ペースト収納室の他端を開放する充填口が形成されたシリンジと、
使用者が指で押圧する押圧部と、前記押圧部から立ち上がり前記ペースト収納室に挿入される棒状部と、を有し、前記充填口から前記ペースト収納室に挿入されて前記長手方向に沿って移動し、前記排出口から前記ペーストを押し出すプランジャと、を備え、
前記棒状部には、前記長手方向に沿って、所定の間隔で、前記棒状部を補強する補強用リブが複数設けられており、
前記複数の補強用リブのうち少なくとも一部は、前記ペースト収納室内の前記ペーストの残量が、予め規定された量になったときに前記充填口と重複する位置に形成されている
ことを特徴とするペースト注入器。
(2)前記ペーストは、一回の使用量が予め規定されており、
前記押圧部に最も近い位置に設けられている前記補強用リブは、前記ペースト収納室内の前記ペーストの残量が前記使用量の一回分のとき、前記充填口と重複する位置に形成されている
ことを特徴とする(1)に記載のペースト注入器。
(3)前記複数の補強用リブの前記長手方向と直交する断面形状は、前記ペースト収納室の前記長手方向と直交する断面形状より小さく、前記ペースト収納室の断面形状に相似した形状である
ことを特徴とする(1)または(2)に記載のペースト注入器。
(4)前記棒状部の前記長手方向と直交する断面形状は、前記長手方向と直交する厚み方向に延びる厚み方向壁部と、前記長手方向及び前記厚み方向と直交する幅方向に延びる幅方向壁部の組み合わせからなる十字状に形成されており、
前記複数の補強用リブは、前記厚み方向壁部及び前記幅方向壁部の間の間隙部に形成されている
ことを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のペースト注入器。
(5) 前記プランジャは、前記棒状部の先端部に緩く係合した弾性体ホルダを有しており、
前記弾性体ホルダは、前記プランジャを前記ペースト収納室に挿入した後、前記プランジャが前記充填口に向かって引き戻されたとき、前記棒状部から分離する
ことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のペースト注入器。
(6) 歯科材料であるペーストの注入に使用されることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか1つに記載のペースト注入器。
【符号の説明】
【0154】
1 ペースト注入器
3 シリンジ
5 プランジャ
7 スタティックミキサー
9 ガイドチップ
11 キャップ
13 プランジャ本体
15 弾性体ホルダ
17 Oリング(弾性体)
19 ミキシングチップ本体部
21 ミキサーハウジング
23 ミキサー外装体
25 キャップ内側部材
27 キャップ外装体
29,29´ ペースト通路
29A,29A´ 流入孔
29B,29B´ 流出孔
29C,29C´ 遠位面
29D,29D´ 近位面
31 中間通路
33 ミキシング通路
35 逆流防止壁
37 エレメントハウジング部
39 エレメント群
41 シリンジ本体
41a 円形壁部
41b 凹部
43,43´ 突出部
45 係合部
45A,45B,45C 突起片
47 指掛け部
49,49´ ペースト収納室
51,51´ 排出口
53,53´ 充填口
55 抜止突起
57,57´ 幅方向外周面
59,59´ 厚み方向外周面
61 連結外周面
63,63´ 内側平坦面部
65,65´ 内側湾曲面部
67 押圧部
69,69´ 棒状部
71A 厚み方向壁部
71B 幅方向壁部
73,73´ 突出部
75,75´ 肉抜き部
77,77´ 突出部
78,78´ 補強用リブ
78A,78A´ 第1補強用リブ
78B,78B´ 第2補強用リブ
78C,78C´ 第3補強用リブ
78D,78D´ 第4補強用リブ
78E,78E´ 第5補強用リブ
79,79´ ホルダ係合部
81 胴部
83 頂部
85 ネック部
87,1087 基部
87A 第1端面
87B 第2端面
87C フランジ部
89,89´ 挿入部
91,91 回転係合片
93 基部ハウジング部
93A 端壁部
93B 周壁部
93C 凹部
95 頂壁部
97 第1周壁部
98 段差部
99 第2周壁部
99A 長辺部
99B 端面
99a 先鋭部
99b 突起部
101 頂部貫通筒
103 周方向溝
105A,105A´ 第1被係合溝
105B,105B´ 第2被係合溝
107 被係合部
107Aa,107Ba,107Ca 第1溝部
107Ab,107Bb,107Cb 第2溝部
109A,109B,109C 窓部
111 基部
113,113´ 挿入部
115,115´ 回転係合片
117 有底凹部
119 頂壁部
120 段差部
121 第1周壁部
123 第2周壁部
123A 長辺部
123B 端面
123a 先鋭部
123b 突起部
125 周方向溝
127A,127A´ 第1被係合溝
127B,127B´ 第2被係合溝
129 被係合部
129Aa,129Ba,129Ca 第1溝部
129Ab,129Bb,129Cb 第2溝部
131A,131B,131C 窓部
M 装着部材
IM 内側部材
OM 外装体
CA 中心軸
X 長手方向
Y 幅方向
Z 厚み方向