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特開2025-16178携帯用加工機、および、携帯用加工機のベースに取り付けるための長尺定規アダプタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016178
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】携帯用加工機、および、携帯用加工機のベースに取り付けるための長尺定規アダプタ
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20250124BHJP
   B23D 47/02 20060101ALI20250124BHJP
   B23D 51/02 20060101ALI20250124BHJP
   B23D 45/16 20060101ALI20250124BHJP
   B27B 9/04 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B23D47/02
B23D51/02
B23D45/16
B27B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119292
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒井 心一
【テーマコード(参考)】
3C040
3C064
【Fターム(参考)】
3C040BB01
3C040LL05
3C040LL18
3C064AA06
3C064AA20
3C064AB01
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA12
3C064BB84
3C064BB85
3C064CA55
3C064CB71
3C064CB84
3C064CB85
(57)【要約】
【課題】 使いやすさが改善されたガタつき調整機構を備える携帯用加工機、および、携帯用加工機のベースに取り付けるための長尺定規アダプタを提供する。
【解決手段】 携帯用加工機または長尺定規アダプタは、長手方向に延在するガイド溝であって、長尺定規の突条を嵌め込むためのガイド溝と、突条とガイド溝とのクリアランスによって生じる、ガイド溝の幅方向におけるガタつきが低減されるように、長手方向における携帯用加工機による加工の進行を案内するための案内装置と、を備える。案内装置は、ガイド溝の上方から下方に向けてガイド溝内に突出し、上下方向に変位可能に構成された第1の爪部と、側方からガイド溝内に突出する第1の位置と、第1の位置よりもガイド溝から遠ざかる方向に退避した位置と、の間で変位可能に構成された第2の爪部と、を備える。第1の爪部および第2の爪部は、第1の爪部の上方に向けた変位に応じて、第2の爪部が第2の位置から第1の位置に向けて変位するように構成される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用加工機、または、携帯用加工機のベースに取り付けるための長尺定規アダプタであって、
長手方向に延在するガイド溝であって、長尺定規の突条を嵌め込むためのガイド溝と、
前記突条と前記ガイド溝とのクリアランスによって生じる、前記ガイド溝の幅方向におけるガタつきが低減されるように、前記長手方向における前記携帯用加工機による加工の進行を案内するための案内装置と
を備え、
前記案内装置は、前記ガイド溝の上方から下方に向けて前記ガイド溝内に突出し、上下方向に変位可能に構成された第1の爪部と、側方から前記ガイド溝内に突出する第1の位置と、前記第1の位置よりも前記ガイド溝から遠ざかる方向に退避した第2の位置と、の間で変位可能に構成された第2の爪部と、を備え、
前記第1の爪部および前記第2の爪部は、前記第1の爪部の上方に向けた変位に応じて、前記第2の爪部が前記第2の位置から前記第1の位置に向けて変位するように構成された
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯用加工機または長尺定規アダプタあって、
前記案内装置は、前記長手方向に延在する軸部を備え、
前記第1の爪部および前記第2の爪部の各々は、前記軸部を中心として回転するように構成された単一部材の一部分である
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯用加工機または長尺定規アダプタあって、
前記軸部は、前記上下方向に変位可能に支持され、
前記案内装置は、前記軸部を下方に向けて付勢する第1の付勢部材を備える
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯用加工機または長尺定規アダプタあって、
前記案内装置は、前記第1の爪部を回転方向に付勢する第2の付勢部材を備えた
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯用加工機または長尺定規アダプタあって、
前記第1の付勢部材および前記第2の付勢部材の各々は、スプリングの形態である
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の携帯用加工機または長尺定規アダプタあって、
前記第1の付勢部材は、前記軸部の上方に配置されたコンプレッションスプリングの形態である
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【請求項7】
請求項4に記載の携帯用加工機または長尺定規アダプタあって、
前記第2の付勢部材は、前記第1の爪部の上方に配置されたコンプレッションスプリングの形態である
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【請求項8】
請求項5に記載の携帯用加工機または長尺定規アダプタあって、
前記第2の付勢部材のばね荷重は、前記第1の付勢部材のばね荷重よりも小さい
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【請求項9】
請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の携帯用加工機または長尺定規アダプタあって、
前記軸部から前記第1の爪部までの距離は、前記軸部から前記第2の爪部までの距離よりも長い
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【請求項10】
請求項5に記載の携帯用加工機または長尺定規アダプタあって、
前記案内装置は、前記単一部材を収容する収容体を備え、
前記収容体は、
前記第1の付勢部材のための第1のバネ座、および、前記第2の付勢部材のための第2のバネ座と、
前記軸部を保持する保持部と、
前記単一部材と当接することによって、前記単一部材の回転角度を規制するストッパと
のうちの少なくとも2つを備える
携帯用加工機または長尺定規アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用加工機、および、携帯用加工機のベースに取り付けるための長尺定規アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用マルノコ(以下、単にマルノコと呼ぶ)と称される切断機は、ベースと、本体部と、を備えている。本体部は、電動モータと、電動モータによって回転駆動される略円形の刃具と、を備えている。本体部はベースに対して一方側に配置されるが、刃具の一部は、ベースを超えて他方側に突出する。かかる切断機を使用する際、ユーザは、刃具が回転した状態で、ベースの下面を被切断材に当接させ、切断機を前方へ移動させる。これによって、ベースを超えて突出した刃具が被切断材を切断する。
【0003】
このような切断作業を補助するために、マルノコとともに長尺定規が使用されることがある。例えば、マルノコのベースの底面に、切断方向に延在する直線状のガイド溝が形成されている場合には、このガイド溝に嵌まり込む直線状の突条が長手方向に沿って形成された長尺定規を使用することができる。具体的には、使用者は、長尺定規の突条がベースのガイド溝に嵌まり込むように長尺定規およびマルノコを配置し、この状態を保ちながらマルノコを切断方向に移動させる。これにより、被切断材を切断開始位置から切断終了位置までまっすぐに切断することが可能である。マルノコのベースの底面に、切断方向に延在する直線状のガイド溝が形成されていない場合には、ガイド溝を備える長尺定規アダプタをベースに取り付けることによって、同様の作業を行うことができる。
【0004】
上述のように長尺定規を使用する場合、携帯用加工機のベース、または、長尺定規アダプタのガイド溝と、その中に嵌まり込む長尺定規の突条と、の間には、摺動性を確保するためのクリアランスが確保される。このクリアランスが大きすぎると、両者の間で切断方向に直交する方向にガタつきが生じる恐れがある。そのようなガタつきは、携帯用加工機の直進性能を損なうことにつながる。
【0005】
このようなことから、ガタつきを調整するための技術が開発されている。例えば、下記の特許文献1は、C字状のゴム等を用いた弾性リングを用いて、ベースのガイド溝と長尺定規の突条とのクリアランスを低減する技術を開示している。具体的には、ベースのガイド溝の側方の一部が切り欠かれており、その切り欠き部分を介して突条に隣接するように弾性リングが配置される。弾性リングの中央には、つまみネジが配置される。つまみネジを締め付けると、弾性リングは、つまみネジの基部によって径方向外側に向けて押圧され、その径が大きくなる。その結果、弾性リングと突条とのクリアランスが小さくなり、ガタつきを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-334886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の技術は、使いやすさの面で改善の余地を残している。具体的には、つまみネジを締めるほど、弾性リングの弾性力が大きくなり、操作荷重が大きくなる。クリアランスは、ゼロか、ごく僅かにすることが望ましいが、操作荷重が大きくなると、弾性リングが突条に当接して操作荷重が大きくなるポイントを判断しにくい。また、弾性リングが突条に当接したときにつまみネジを持つ指先に「コツ」という触感を感じることができるが、この場合、すぐに操作を止めたとしても、既に弾性リングは突条を押圧している可能性が高い。このため、クリアランスの最適な調整が難しい。このような問題は、マルノコに限らず、長尺定規と共に使用される種々の携帯用加工機、および、携帯用加工機のベースに取り付けるための長尺定規アダプタに共通する。
【0008】
本明細書は、携帯用加工機、または、携帯用加工機のベースに取り付けるための長尺定規アダプタを開示する。この携帯用加工機または長尺定規アダプタは、長手方向に延在するガイド溝であって、長尺定規の突条を嵌め込むためのガイド溝と、突条とガイド溝とのクリアランスによって生じる、ガイド溝の幅方向におけるガタつきが低減されるように、長手方向における携帯用加工機による加工の進行を案内するための案内装置と、を備えていてもよい。案内装置は、ガイド溝の上方から下方に向けてガイド溝内に突出し、上下方向に変位可能に構成された第1の爪部と、側方からガイド溝内に突出する第1の位置と、第1の位置よりもガイド溝から遠ざかる方向に退避した第2の位置と、の間で変位可能に構成された第2の爪部と、を備えていてもよい。第1の爪部および第2の爪部は、第1の爪部の上方に向けた変位に応じて、第2の爪部が第2の位置から第1の位置に向けて変位するように構成されてもよい。
【0009】
典型的には、第2の爪部は、第2の位置にあるとき、ガイド溝内に突出しない。ただし、第2の爪部は、第2の位置にあるとき、第1の位置にあるときよりも短い距離だけ、側方からガイド溝内に突出していてもよい。上記の携帯用加工機または長尺定規アダプタによれば、第2の爪部が第2の位置にある状態で長尺定規の突条をガイド溝に嵌め込み始めたときは、第2の爪部は、突条に干渉しない。したがって、大きな操作荷重を必要とする作業が発生せず、嵌め込みの初期手順を円滑に行うことができる。そして、第1の爪部が突条に当接し、嵌め込み手順を更に進めると、第1の爪部が突条によって上方に向けて変位する。それによって、第2の爪部は、第2の位置から第1の位置に向けて変位する。したがって、ガタつきの原因となるガイド溝の幅方向のクリアランスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】長尺定規とともに使用される一実施形態によるマルノコの使用状態を示す斜視図である。
図2】ベースおよび案内装置の斜視図であり、他の部品は取り除かれている。
図3】ベースおよび案内装置の斜視図であり、他の部品は取り除かれている。
図4】案内装置の斜視図である。
図5】収容体の斜視図である。
図6】案内部材の斜視図である。
図7】案内装置の動作を示す部分断面図である。
図8】案内装置の動作を示す部分断面図である。
図9】案内装置の動作を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された装置、その製造方法および使用方法を提供するために、他の特徴や発明とは別に、または共に用いることができる。
【0012】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記および下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立および従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0013】
本明細書および/または特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施形態および/または特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲およびグループまたは集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0014】
1つまたはそれ以上の実施形態において、案内装置は、長手方向に延在する軸部を備えていてもよい。第1の爪部および第2の爪部の各々は、軸部を中心として回転するように構成された単一部材の一部分であってもよい。この構成によれば、簡単な構成で、第1の爪部の変位力を第2の爪部の変位に効率的に伝達できる。したがって、長尺定規の突条と第1の爪部とが当接した後も、嵌め込みに関する大きな操作抵抗が作用することなく、はめ込み作業を進めることができる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、軸部は、上下方向に変位可能に支持されてもよい。案内装置は、軸部を下方に向けて付勢する第1の付勢部材を備えていてもよい。この構成によれば、第2の爪部が長尺定規の突条に当接した状態で、第1の爪部がさらに上方に向けて変位させようとする方向に作用しても、軸部は、第1の付勢部材の付勢力に抗って上方に変位できる。したがって、第2の爪部が突条の側面を、突条と第2の爪部との摺動性が損なわれるほどに過剰に押圧することがない。
【0016】
1つまたはそれ以上の実施形態において、軸部を下方に向けて付勢する第1の付勢部材と、第1の爪部を回転方向に付勢する第2の付勢部材と、を備えていてもよい。この構成によれば、第1の付勢部材および第2の付勢部材の付勢力を調節することによって、単一部材の回転による、第1の爪部の上方への変位と、軸部の上方への変位と、のバランスを調節しやすい。したがって、第2の爪部が突条の側面を過剰に押圧しないようにするための軸部の変位を、より円滑にできる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1の付勢部材および第2の付勢部材の各々は、スプリングの形態であってもよい。この構成によれば、第1の付勢部材および第2の付勢部材の付勢力を調節しやすい。
【0018】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1の付勢部材は、軸部の上方に配置されたコンプレッションスプリングの形態であってもよい。この構成によれば、ガイド溝の上方のデッドスペースを有効活用して、コンパクトなレイアウトを実現できる。換言すれば、第1の付勢部材の配置に起因する大型化を避けることができる。なお、「軸部の上方」とは、軸部の真上であることに限定されず、第1の付勢部材の上下方向の位置が軸部の上下方向の位置よりも上側に位置していればよい。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第2の付勢部材は、第1の爪部の上方に配置されたコンプレッションスプリングの形態であってもよい。この構成によれば、ガイド溝の上方のデッドスペースを有効活用して、コンパクトなレイアウトを実現できる。なお、「第1の爪部の上方」とは、第1の爪部の真上であることに限定されず、第2の付勢部材の上下方向の位置が第1の爪部の上下方向の位置よりも上側に位置していればよい。
【0020】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1の付勢部材および第2の付勢部材の各々は、スプリングの形態であってもよい。第2の付勢部材のばね荷重は、第1の付勢部材のばね荷重よりも小さくてもよい。この構成によれば、第2の爪部が突条の側面に当接するまでは、軸部の上方への変位よりも、第1の爪部の上方への変位が優先的に生じる。このため、第2の爪部を突条の側面に当接させるための単一部材の動作をより効率化できる。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、軸部から第1の爪部までの距離は、軸部から第2の爪部までの距離よりも長くてもよい。この構成によれば、単一部材の回転力を第1の爪部によって効率的に発生させることができる。また、嵌め込み作業が完了し、第2の爪部と突条の側面とが当接している状態において、第2の爪部に側方からの力が作用しても、第2の爪部は回転しにくくなる。したがって、クリアランスが大きくなる方向への第2の爪部の変位を抑制できる。
【0022】
1つまたはそれ以上の実施形態において、案内装置は、単一部材を収容する収容体を備えていてもよい。収容体は、第1の付勢部材のための第1のバネ座、および、第2の付勢部材のための第2のバネ座と、軸部を保持する保持部と、単一部材と当接することによって、単一部材の回転角度を規制するストッパと、のうちの少なくとも2つを備えていてもよい。この構成によれば、部品点数を減らすことができるとともに、携帯用加工機または長尺定規アダプタの組み立て工数を低減できる。
【0023】
以下、図面を参照して、例示的な一実施形態による携帯用マルノコ(以下、単にマルノコと呼ぶ)10についてより詳細に説明する。
【0024】
以下の説明では、ユーザがマルノコ10を手に持って被切断材を切断するときにマルノコを進行させる側(後述する刃具31によって切断が進められる側)を前側とし、その反対方向を後側と定義する。また、このとき、鉛直方向上方に位置する側を上側と定義し、その反対側を下側と定義する。さらに、前後方向と上下方向とに直交する方向を左右方向と定義する。左右方向のうち、後側から前側を見たときの右側を右側と定義し、その反対側を左側と定義する。
【0025】
図1に示すように、マルノコ10は、長尺定規100とともに使用され得る。長尺定規100は、その長手方向に延在する突条110を備えている。長尺定規100の長手方向は、前後方向に一致する。
【0026】
図1に示すように、マルノコ10は、ベース20と本体部30とを備えている。図1~3に示すように、ベース20は、上下方向に見て、略矩形形状を有している。ベース20は、長尺定規100上に載置可能な平坦な下面を備えている。ベース20は、その左側縁部寄りの位置に、ガイド溝21を備えている。ガイド溝21は、ベース20の前側縁部から後側縁部まで前後方向に延在している。ガイド溝21は、長尺定規100の突条110が嵌まり込むことができる形状および大きさを有している。
【0027】
本体部30は、基本的には、ベース20に対して上側に配置される。本体部30は、左右方向に延在する回転軸線を中心として回転可能に構成された刃具31を備えている。刃具31の一部は、ベース20よりも下側に突出している。
【0028】
図1に示すように、被切断材の上に長尺定規100を載置し、さらに、長尺定規100の突条110がベース20のガイド溝21に嵌まり込むように、長尺定規100上にマルノコ10を載置し、マルノコ10を前進させることで、被切断材をまっすぐに切断することができる。
【0029】
図2および図3に示すように、ガイド溝21の上方には案内装置40が配置される。詳しくは後述するが、案内装置40は、突条110とガイド溝21とのクリアランスによって生じる、ガイド溝21の幅方向(左右方向)におけるガタつきが低減されるように、前後方向におけるマルノコ10による切断の進行を案内するために設けられる。本実施形態では、案内装置40は、ベース20の左側かつ前側の縁部付近に配置される。ただし、案内装置40は、ガイド溝21の上方の任意の位置に配置され得る。
【0030】
図3に示すように、ベース20は、ガイド溝21を形成する底面および側面、ならびに、それらに左右方向に連続するベース20の底面が部分的に切り欠かれた切欠部22を備えている。案内装置40は、この切欠部22に部分的に収容される。
【0031】
図4に示すように、案内装置40は、案内部材50と、軸部60と、収容体80と、を備えている。図4に示すように、収容体80は、その内部に案内部材50を収容する。図4および図5に示すように、収容体80は、略直方体の箱形状を有しており、下側に向けて開口している。収容体80の下側縁部には、切欠部82が形成されている。切欠部82の形状は、ベース20のガイド溝21の形状と一致している。図3に示すように、収容体80は、ガイド溝21と切欠部82とが連続するように配置される。つまり、図1に示すようにマルノコ10を使用するとき、長尺定規100の突条110は、切欠部82の内側を前後方向に延在する。
【0032】
図5に示すように、収容体80の前側側面および後側側面の各々は、長孔81を有している(図5では、前側側面の長孔81のみが見えている)。2つの長孔81は、前側側面および後側側面を前後方向にそれぞれ貫通している。長孔81の長手方向は、上下方向に一致する。
【0033】
図6に示すように、案内部材50は、第1の爪部51と第2の爪部52と貫通孔53とバネ座54,55とを備えている。図3,4,6に示すように、第1の爪部51と第2の爪部52とは、左右方向に対向しており、案内部材50の下側に位置している。第1の爪部51は下方に向けて突出しており、第2の爪部52は側方(より具体的には、右側)に向けて突出している。バネ座54,55は、第1の爪部51および第2の爪部52と反対側に配置されている。図4に示すように、貫通孔53および収容体80の2つの長孔81には、前後方向に延在する軸部60が挿入されている。軸部60は、長孔81に沿って上下方向に変位可能に収容体80によって保持されている。案内部材50は、軸部60を中心として回転可能である。
【0034】
図7に示すように、収容体80の上側内面には、バネ座83,84が形成されている。案内部材50と収容体80の間には、第1の付勢部材71と第2の付勢部材72とが配置されている。本実施形態では、第1の付勢部材71および第2の付勢部材72は、コンプレッションスプリングの形態である。第1の付勢部材71は、バネ座54とバネ座83とに係合した状態で、軸部60(貫通孔53)の上方に配置されている(図7では、貫通孔53内の軸部60は図示が省略されている)。第1の付勢部材71は、圧縮状態で配置されており、軸部60を下方に向けて常に付勢している。
【0035】
第2の付勢部材72は、バネ座55とバネ座84とに係合した状態で、第1の爪部51の上方に配置されている。第2の付勢部材72は、圧縮状態で配置されており、第1の爪部51を回転方向(第1の爪部51が下方に向かう方向)に常に付勢している。
【0036】
本実施形態では、第2の付勢部材72のばね荷重は、第1の付勢部材71のばね荷重よりも小さい。ただし、第1の付勢部材71および第2の付勢部材72のばね荷重は、後述する案内装置40の動作を実現できる限りにおいて、任意に設定され得る。また、第1の付勢部材71および第2の付勢部材72の少なくとも一方は、上述した方向への付勢力を提供できる限りにおいて、任意の形態に変形され得る。例えば、第2の付勢部材72は、軸部60の周りに配置されたトーションスプリングの形態に変更され得る。
【0037】
図7に示すように、第1の爪部51、第2の爪部52、および貫通孔53(軸部60、すなわち、案内部材50の回転中心)は、右から第1の爪部51、第2の爪部52、貫通孔53の順に位置している。このため、軸部60から第1の爪部51までの距離は、軸部60から第2の爪部52までの距離よりも長くなっている。
【0038】
上述した案内装置40において、案内部材50の第1の爪部51は、案内部材50が軸部60を中心として回転することによって、上下方向に変位可能である。第1の爪部51がとり得る最下方位置は、図7に示すように、案内部材50の左側側面56と、収容体80の左側内側面85と、が当接することによって規定される。つまり、左側内側面85は、案内部材50の回転角度を規制するストッパとして機能する。
【0039】
図4,7~9に示すように、第1の爪部51は、案内部材50の回転角度位置、および、軸部60の上下方向位置にかかわらず、ベース20のガイド溝21の上方から下方に向けてガイド溝21内に突出する。一方、第2の爪部52は、第1の位置と第2の位置との間で変位可能である。第2の爪部52は、第1の位置にあるとき、側方からガイド溝21内に突出しており、第2の位置にあるとき、第1の位置よりもガイド溝21から遠ざかる方向に退避している。本実施形態では、第2の爪部52は、第2の位置にあるとき、ガイド溝21内に突出しない。このため、以下では、第1の位置を突出位置とも呼び、第2の位置を非突出位置とも呼ぶ。第1の爪部51が初期位置(図7に示す位置)にあるときは、第2の爪部52は非突出位置にある。これに対して、案内部材50の回転によって第1の爪部51が上方に変位すると、第2の爪部52は、非突出位置から突出位置に向けて変位し、第1の爪部51の変位量が所定量を超えると、突出位置まで変位する(図8および図9参照)。
【0040】
このような案内装置40は、以下のように動作することによって、ガイド溝21の幅方向(左右方向)におけるガタつきを低減できる。まず、マルノコ10を長尺定規100上に載置する前には、案内部材50(第1の爪部51および第2の爪部52)は、図7に示す初期位置にある。そして、ユーザが、長尺定規100の突条110がベース20のガイド溝21内に嵌まるようにマルノコ10を上方から下方に向けて長尺定規100に所定の程度近づけると、第1の爪部51が突条110の上面111に当接する(図7参照)。この時点では、第1の爪部51と上面111とは当接しているに過ぎず、上面111から第1の爪部51へは力は作用していない。
【0041】
そして、ユーザがマルノコ10を長尺定規100にさらに近づけると、上面111が第1の爪部51を上向きに押圧する。これによって、第1の爪部51を上向きに変位させる方向へのモーメントが案内部材50に作用する。その結果、案内部材50は、第2の付勢部材72の付勢力に抗って、軸部60を中心として回転し、それに伴って、第1の爪部51が上方に向けて変位(回転)する。第1の爪部51と第2の爪部52とは、単一部材である案内部材50の一部分であるから、第1の爪部51の回転とともに第2の爪部52も、図7に示す非突出位置から突出位置に向けて回転する。第2の付勢部材72のばね荷重は第1の付勢部材71のばね荷重よりも小さいので、この状態では、第1の爪部51の回転が優先的に生じ、軸部60は上下方向にほぼ変位しない。したがって、第2の爪部52を非突出位置から突出位置へ効率的に変位させることができる。
【0042】
そして、ユーザがマルノコ10を長尺定規100にさらに近づけて、案内部材50の回転が進むと、第2の爪部52は、ガイド溝21の側方からガイド溝21内に突出し始める。そして、案内部材50の回転がさらに進むと、図8に示すように、第2の爪部52が突条110の側面112に当接する。この時点では、第2の爪部52と側面112とは接触しているに過ぎず、第2の爪部52から側面112へは力は作用していない。この時点までは、第2の爪部52は、突条110に干渉しないので、大きな操作荷重を必要とする作業が発生せず、嵌め込みの初期手順を円滑に行うことができる。
【0043】
そして、ユーザがマルノコ10を長尺定規100にさらに近づけて最終位置に配置すると、案内部材50の回転がさらに進み、図9に示すように、第2の爪部52と側面112との当接が維持された状態で、軸部60が第1の付勢部材71の付勢力に抗って、上方へ変位する。つまり、第2の爪部52は既に側面112に当接しているので、それ以上回転することができず、案内部材50が上方に逃げることになる。案内部材50が上方に逃げるので、第2の爪部52と側面112との当接が維持されているにもかかわらず、第2の爪部52は側面112に大きな力を横向きに作用させることはない。
【0044】
このような案内部材50の動作によれば、ユーザは、マルノコ10を長尺定規100上に載置するという簡単な動作を行うだけで、過剰な力が作用することがない第2の爪部52と側面112との適度な当接関係を構築できる。その結果、突条110に対する係る良好な摺動性を確保しつつ、突条110とガイド溝21とのクリアランスに起因するガタつきを効果的に低減できる。しかも、案内部材50が初期位置から最終位置へ変位するいずれの過程においても、第1の付勢部材71または第2の付勢部材72の付勢力に抗う力が必要なだけであり、大きな操作荷重を必要としない。
【0045】
また、案内部材50によれば、第1の爪部51と第2の爪部52とは単一部分の一部品であるから、第1の爪部51の動作と第2の爪部52の動作とを容易かつ簡単な構成で実現できる。
【0046】
また、案内部材50によれば、第1の付勢部材71および第2の付勢部材72の付勢力を調節することによって、案内部材50の回転による、第1の爪部51の上方への変位と、軸部60の上方への変位と、のバランスを調節しやすい。また、第1の付勢部材71および第2の付勢部材72としてコンプレッションスプリングを採用しているので、ガイド溝21の上方のデッドスペースを有効活用して、コンパクトなレイアウトを実現できる。
【0047】
また、軸部60から第1の爪部51までの距離は、軸部60から第2の爪部52までの距離よりも長いので、案内部材50の回転力を第1の爪部51によって効率的に発生させることができる。また、図9に示す最終位置において、第2の爪部52に側方からの力が作用しても、第2の爪部52は回転しにくい。したがって、クリアランスが大きくなる方向への第2の爪部52の変位を抑制できる。
【0048】
また、収容体80は、バネ座83,84によって第1の付勢部材71および第2の付勢部材72をそれぞれ保持する機能と、軸部60を保持する機能と、案内部材50と当接することによって、案内部材50の回転角度を規制する機能と、を同時に果たすことができる。したがって、部品点数を減らすことができるとともに、組み立て工数を低減できる
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各形態要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0050】
例えば、上述の実施形態は、第1の爪部の上方に向けた変位に応じて、第2の爪部が非突出位置から突出位置に向けて変位する任意の構成に変更され得る。例えば、案内部材50に代えて、第1の爪部51の機能を有する部材と、第2の爪部52の機能を有する部材と、が連動する構成が採用されてもよい。
【0051】
さらに、第2の爪部52は、第2の位置にあるとき、長尺定規100の突条110と干渉しない程度に側方からガイド溝21内に突出していてもよい。
【0052】
さらに、上述した種々の形態は、マルノコ10に限らず、長尺定規の突条を嵌め込むためのガイド溝を有するベースを備える種々の携帯用加工機、例えば、カッタ、ジグソー、ルータに適用可能である。さらに、携帯用加工機のベースがガイド溝を有していない場合には、ベースには、ガイド溝を有する長尺定規アダプタが取り付けられることがある。上述した種々の形態は、そのような長尺定規アダプタにも適用可能である。
【0053】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。マルノコ10は「携帯用加工機」の一例である。ガイド溝21は「ガイド溝」の一例である。案内装置40は「案内装置」の一例である。案内部材50は「単一部材」の一例である。第1の爪部51は「第1の爪部」の一例である。第2の爪部52は「第2の爪部」の一例である。軸部60は「軸部」の一例である。第1の付勢部材71は「第1の付勢部材」の一例である。第2の付勢部材72は「第2の付勢部材」の一例である。収容体80は「収容体」の一例である。バネ座83は「第1のバネ座」の一例である。バネ座84は「第2のバネ座」の一例である。長孔81は「保持部」の一例である。左側内側面85は「ストッパ」の一例である。
【符号の説明】
【0054】
10...マルノコ
20...ベース
21...ガイド溝
22...切欠部
30...本体部
31...刃具
40...案内装置
50...案内部材
51...第1の爪部
52...第2の爪部
53...貫通孔
54,55...バネ座
56...左側側面
60...軸部
71...第1の付勢部材
72...第2の付勢部材
80...収容体
81...長孔
82...切欠部
83,84...バネ座
85...左側内側面
100...長尺定規
110...突条
111...上面
112...側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9