(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016180
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】柱梁接合部プレキャストコンクリート部材および柱梁接合部構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20250124BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/30 G
E04B1/58 508P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119294
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英之
(72)【発明者】
【氏名】田畑 卓
(72)【発明者】
【氏名】古谷 祐希
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB12
2E125AC02
2E125AC15
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG32
2E125AG41
2E125AG45
2E125BA41
2E125BB01
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF03
2E125CA05
2E125CA06
(57)【要約】
【課題】鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造に好適な柱梁接合部プレキャストコンクリート部材および柱梁接合部構造を提供する。
【解決手段】柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5は、鉄骨梁20のうち、鉄筋コンクリート柱10上部に配置される鉄骨梁20の鉄骨梁端部21と、複合構造梁30の鉄骨梁の鉄骨梁端部32の長軸方向の一端部が、鉄骨梁20の鉄骨梁端部21と所定の間隔D1を空けて配設された複合構造梁端部31と、複合構造梁端部31と一体的に上端筋34および下端筋35が配筋されて少なくとも複合構造梁30の鉄骨梁の鉄骨梁端部32の鉄骨梁天端の高さまでコンクリートが打設され、複合構造梁端部31と鉄骨梁20の鉄骨梁端部21とを接合し、鉄筋コンクリート柱10の柱主筋12を挿通可能な挿通孔15が形成された梁交差部40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材端部鉄筋コンクリート梁中央部第1の鉄骨梁からなる複合構造梁と、前記第1の鉄骨梁に交差する方向に架設された第2の鉄骨梁と、鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造に使用するプレキャストコンクリート部材であって、
前記第2の鉄骨梁のうち、前記鉄筋コンクリート柱上部に支持される前記第2の鉄骨梁の鉄骨梁端部と、
前記第1の鉄骨梁の鉄骨梁端部の長軸方向の一端部が、前記第2の鉄骨梁の鉄骨梁端部と所定の間隔を空けて配置された複合構造梁端部と、
前記複合構造梁端部と一体的に少なくとも前記第1の鉄骨梁の鉄骨梁端部の鉄骨梁天端の高さまでコンクリートが打設され、前記複合構造梁端部と前記第2の鉄骨梁の鉄骨梁端部とを接合し、前記鉄筋コンクリート柱の柱主筋を挿通可能な挿通孔が形成された梁交差部と、
を備える、
ことを特徴とする柱梁接合部プレキャストコンクリート部材。
【請求項2】
他の第1の鉄骨梁の鉄骨梁端部の長軸方向の一端部が、前記梁交差部を挟んで前記複合構造梁に対向しつつ前記第2の鉄骨梁の鉄骨梁端部と前記所定の間隔を空けて配設された他の複合構造梁端部をさらに備え、
前記複合構造梁端部から前記梁交差部を介して前記他の複合構造梁端部まで、一体的に少なくとも前記第1の鉄骨梁の鉄骨梁端部の鉄骨梁天端の高さまでコンクリートを打設された、
請求項1に記載の柱梁接合部プレキャストコンクリート部材。
【請求項3】
前記第1の鉄骨梁の梁せいは、前記第2の鉄骨梁の梁せいよりも小さい、
請求項1に記載の柱梁接合部プレキャストコンクリート部材。
【請求項4】
前記第1の鉄骨梁の梁せいは、前記第2の鉄骨梁の梁せいよりも小さい、
請求項2に記載の柱梁接合部プレキャストコンクリート部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の柱梁接合部プレキャストコンクリート部材と、
前記柱主筋が前記挿通孔に挿通された前記鉄筋コンクリート柱と、
を有する、
柱梁接合部構造。
【請求項6】
前記複合構造梁端部の前記コンクリートの上部に現場で打設される後打ちコンクリートは、前記コンクリートより低強度である、
請求項5に記載の柱梁接合部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材および柱梁接合部構造に係り、特に、材端部鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁からなる複合構造梁および鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部プレキャストコンクリート部材および柱梁接合部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の梁スパンを大きく確保するためや工期を短縮する等のために、断面性能の良いH形鋼の鉄骨梁と圧縮力に強い鉄筋コンクリート柱とを組み合わせた複合構造を適用することがある。
【0003】
さらに、現場での施工手間の軽減のために、例えば、特許文献1に示すように、複合構造梁の端部をプレキャストコンクリートとすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の柱梁接合部構造では、XY両方向でラーメン構造を構築するために鉄骨梁3,3の交差部分を鉄骨工場で溶接等により剛接合する。しかしながら、この柱梁接合部構造は、鉄骨が交差する近傍の断面形状が複雑であるため溶接に大きな手間がかかり、また、熟練した溶接工による作業が必要であり、コスト、時間等が大きく掛かってしまう。また、XY両方向で複合構造の梁となっているため、プレキャスト部材の全体の寸法が大きくなり、幅に制限のある運搬用のトラックの荷台に載せるのは困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造に好適な柱梁接合部プレキャストコンクリート部材および柱梁接合部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材として、本発明は、材端部鉄筋コンクリート梁中央部第1の鉄骨梁からなる複合構造梁と、前記第1の鉄骨梁に交差する方向に架設された第2の鉄骨梁と、鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造に使用するプレキャストコンクリート部材であって、前記第2の鉄骨梁のうち、前記鉄筋コンクリート柱上部に配置される前記第2の鉄骨梁の鉄骨梁端部と、前記第1の鉄骨梁の鉄骨梁端部の長軸方向の一端部が、前記第2の鉄骨梁の鉄骨梁端部と所定の間隔を空けて配設された複合構造梁端部と、前記複合構造梁端部と一体的に少なくとも前記第1の鉄骨梁の鉄骨梁端部の鉄骨梁天端の高さまでコンクリートが打設され、前記複合構造梁端部と前記第2の鉄骨梁の鉄骨梁端部とを接合し、前記鉄筋コンクリート柱の柱主筋を挿通可能な挿通孔が形成された梁交差部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
他の第1の鉄骨梁の鉄骨梁端部の長軸方向の一端部が、前記梁交差部を挟んで前記複合構造梁に対向しつつ前記第2の鉄骨梁の鉄骨梁端部と前記所定の間隔を空けて配設された他の複合構造梁端部をさらに備え、前記複合構造梁端部から前記梁交差部を介して前記他の複合構造梁端部まで、一体的に少なくとも前記第1の鉄骨梁の鉄骨梁端部の鉄骨梁天端の高さまでコンクリートを打設されたことが好ましい。
【0009】
前記第1の鉄骨梁の梁せいは、前記第2の鉄骨梁の梁せいよりも小さいことが好ましい。
【0010】
柱梁接合部構造として、本発明は、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材と、前記柱主筋が前記挿通孔に挿通された前記鉄筋コンクリート柱と、を有する。
【0011】
前記複合構造梁端部の前記コンクリートの上部に現場で打設される後打ちコンクリートは、前記コンクリートより低強度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造に好適な柱梁接合部プレキャストコンクリート部材および柱梁接合部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る柱梁接合部プレキャストコンクリート部材を用いた鉄骨梁および複合構造梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造を示す正面断面図、(b)は、(a)のIb-Ib断面線で示した平面断面図である。
【
図2】(a)は、第1実施形態に係る柱梁接合部プレキャストコンクリート部材の正面断面図、(b)は、(a)のIIb-IIb断面線で示した平面断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る柱梁接合部プレキャストコンクリート部材を用いた鉄骨梁および複合構造梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造を含む柱梁構造を示す平面図である。
【
図4】(a)は、鉄骨梁が一方向のみに架け渡される柱梁接合部に使用される柱梁接合部プレキャストコンクリート部材の平面断面図、(b)は、複合構造梁が一方向のみに架け渡される柱梁接合部に使用される柱梁接合部プレキャストコンクリート部材の平面断面図、(c)は、鉄骨梁および複合構造梁がそれぞれ一方向のみに架け渡される柱梁接合部に使用される柱梁接合部プレキャストコンクリート部材の平面断面図である。
【
図5】(a)は、本発明の第2実施形態に係る柱梁接合部プレキャストコンクリート部材を用いた鉄骨梁および複合構造梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造を示す正面断面図、(b)は、(a)のVb-Vb断面線で示した平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る柱梁接合部プレキャストコンクリート部材および柱梁接合部構造について、以下、添付図面を参照して説明する。なお、同一または同等の構成要素には、同一の符号を付す。
【0015】
[第1実施形態]
図1(a)、(b)は、本発明の第1実施形態に係る柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5を用いた柱梁接合部構造1を示している。柱梁接合部構造1は、鉄筋コンクリート柱10と、鉄筋コンクリート柱10上を貫通する鉄骨梁20と、鉄骨梁20に交差する方向に架設された複合構造梁30と、鉄筋コンクリート柱10上部位置の鉄骨梁20が貫通する位置かつ複合構造梁30の長軸方向端部に設けられた鉄筋コンクリート製の梁交差部40とで構成される。柱梁接合部構造1には、
図2(a)、(b)に示す、鉄筋コンクリート柱10上部に配置される梁交差部40と、梁交差部40に接続された鉄骨梁端部21および複合構造梁端部31からなる、予め工場で製作された柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5が使用されている。
【0016】
鉄筋コンクリート柱10(以下、柱10とする。)は、1050mm×1050mmの断面を有する、現場打ちの鉄筋コンクリート製の柱である。
図1(a)、(b)に示すように、柱体11の上端から突出する柱主筋12は、鉄骨梁端部21と干渉しない位置に配筋されている。
【0017】
鉄骨梁20は、H形鋼であり、柱10の柱体11上を貫通するように架設されている。本実施形態では、鉄骨梁20は、梁せいおよび梁幅が900mm×300mmである。鉄骨梁20は、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5の一部を構成する鉄骨梁端部21と、鉄骨梁端部21に接続される鉄骨梁中央部22とからなる。鉄骨梁20は、複合構造梁30に比べて長期許容耐力に余裕がある。このため、
図3に示すように、鉄骨梁20,20間には、所定の間隔で、小梁50が配設されている。なお、
図3では、鉄骨梁20、複合構造梁30の梁スパンは等しく記載しているが、本実施形態では、鉄骨梁20の梁スパンは10.5mであり、複合構造梁30の梁スパンは9.5mである。
【0018】
図1(a)、(b)、
図3に示すように、複合構造梁30は、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5の一部を構成する複合構造梁端部31と、複合構造梁端部31に接続される鉄骨梁中央部39とからなる。複合構造梁30の材端部を構成する複合構造梁端部31は、鉄骨梁20と交差する方向に配設されたH形鋼の鉄骨梁端部32と、柱体11の上端部および他の鉄骨梁端部32の柱体11の上端部側と一体的に鉄骨梁端部32の柱体11の上端部側を覆うように上端筋34および下端筋35のかぶり厚を確保してコンクリートを打設して形成された鉄筋コンクリート梁33と、で構成される。鉄骨梁端部32の柱体11の上端部側は、平面視で、柱10に接しておらず、鉄筋コンクリート梁33および梁交差部40を介して鉄骨梁20および柱10と接合されている。本実施形態では、鉄骨梁端部32の柱体11の上端部側は、鉄骨梁20と500mm程度の間隔D1を空け、柱10と200mm程度の間隔D2を空けて配設されている。鉄骨梁端部32および鉄骨梁中央部39は、梁せいおよび梁幅が800mm×300mmである。鉄筋コンクリート梁33は、梁せいおよび梁幅が1200mm×600mmであり、梁長さが2000mmである。鉄筋コンクリート梁33内には、上端筋34、下端筋35が配筋されている。上端筋34、下端筋35の端部には、定着金物38が取り付けられている。また、スターラップ筋36が所定の間隔を空けて上端筋34、下端筋35を取り囲むように配筋されており、端部37においては、端部37付近の鉄筋コンクリート梁33の補強のために間隔を詰めて配筋されている。なお、鉄筋コンクリート梁33の梁長さは、鉄筋コンクリートに長軸方向端部が覆われる鉄骨梁の梁せいの1.5~3倍の長さであることが好ましい。
【0019】
図2(a)、(b)に示すように、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5は、柱10の柱断面と同一平面寸法の梁交差部40の平行する2面から複合構造梁端部31がそれぞれ延びており、他の平行する2面から鉄骨梁端部21が延びており、複合構造梁端部31と鉄骨梁端部21とが梁交差部40を介して接続されている。梁交差部40では、帯筋13は、鉄骨梁端部21が配設されている高さにおいて、鉄骨梁端部21のウェブ23を貫通して配筋されている。梁交差部40には、柱10の柱主筋12を挿通させる挿通孔15が形成されている。
【0020】
柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5は、鉄骨梁端部21および複合構造梁端部31がそれぞれ二方向に延びている内部柱の柱梁接合部構造1に使用される。
図4(a)に示す柱梁接合部プレキャストコンクリート部材6は、鉄骨梁端部21が一方向だけに延びている(端面Aからは鉄骨梁端部が延びていない)外周柱の柱梁接合部構造2に使用される(
図3)。
図4(b)に示す柱梁接合部プレキャストコンクリート部材7は、複合構造梁端部31が一方向のみに延びている(端面Bからは複合構造梁端部が延びていない)外周柱の柱梁接合部構造3に使用される。
図4(c)に示す柱梁接合部プレキャストコンクリート部材8は、鉄骨梁端部21および複合構造梁端部31がそれぞれ一方向のみに延びている(端面Aからは鉄骨梁端部が延びておらず、端面Bからは複合構造梁端部が延びていない)出隅柱の柱梁接合部構造4に使用される。
【0021】
(柱梁接合部構造1の構成)
図1(a)、(b)に示すように、柱梁接合部構造1では、柱10の柱体11上に載置された梁交差部40を介して、複合構造梁30,30がそれぞれの長軸方向端部を鉄骨梁20の梁幅方向端部に接続されている。一方の複合構造梁30の長軸方向端部の鉄筋コンクリート梁33内部から柱体11上部の梁交差部40内部を鉄骨梁20のフランジの上下を介して他方の複合構造梁30の長軸方向端部の鉄筋コンクリート梁33内部まで上端筋34、下端筋35が所定の間隔で配筋されている。また、鉄筋の配筋後に、一方の複合構造梁30の長軸方向端部から柱体11上部を介して他方の複合構造梁30の長軸方向端部までコンクリートが一体的に打設されることにより、柱梁接合部構造1が一体的に形成されている。
【0022】
以上、本実施形態の柱梁接合部構造1によると、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5に鉄骨梁中央部22,39をボルト接合し、挿通孔15に柱主筋12を挿通した後、グラウト注入することにより容易にラーメン構造を構築できる。また、プレキャストコンクリート部材を用いることにより、大掛かりな仮設部材が不要になり、工期やコストを削減できる。柱梁接合部構造1には、曲げモーメントが大きくなる複合構造梁30の長軸方向の端部に鉄骨梁が無いので、中央鉄骨部分の設計用のモーメントが小さくなり鉄骨梁端部32および鉄骨梁中央部39の断面を小さくでき、コストダウンができる。また、鉄骨梁端部21,32は全て単材で、それぞれの部材長も短いので、コストを大きく削減することができ、プレキャスト工場への納品や工場内でのストックも容易である。さらに、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5は、鉄骨梁端部21の材軸方向の長さが、運搬用トラックやトレーラの荷台幅よりも十分に短いので、現場への運搬が容易になり、運搬効率を高めることができる。また、鉄骨梁同士の溶接が不要であることにより、高度な技術が必要なSグレード、Hグレードのファブでなくても鋼材の加工が可能となり、コストダウンできる。さらに、鉄骨梁端部32は、平面視で、柱10に埋め込まれていないので、柱主筋12を配置する際には、鉄骨梁端部32の配置を考慮せずに鉄骨梁端部21をかわして配置するだけでよいので、両方向の鉄骨梁が柱上で接合される構造に比べて柱主筋12の配筋の自由度が高まり、施工性の向上、施工時間の短縮等ができる。このように、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5および柱梁接合部構造1は、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造に好適な柱梁接合部プレキャストコンクリート部材および柱梁接合部構造を提供することができる。
【0023】
[第2実施形態]
図5(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9を用いた柱梁接合部構造1を示している。柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9は、ハーフプレキャストコンクリート部材であり、複合構造梁端部31のコンクリートが鉄骨梁端部32の鉄骨梁天端32aの上面付近までしか工場打設されておらず、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9を柱体11の上端に載置後に後打ちコンクリート60が現場にて打設される点において第1実施形態と異なっている。柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9は、複合構造梁端部31の上部が鉄骨梁端部32の上端までしか工場にてコンクリートが打設されてないので、スターラップ筋36の上部が鉄骨梁端部32の上端と等しい高さ(鉄筋コンクリート梁33の上端)から突出(露出)している。また、上端筋34も、梁交差部40以外の部分において、スターラップ筋36に囲まれつつ外部に露出している。
【0024】
(柱梁接合部構造1の構成)
図5(a)、(b)に示すように、柱梁接合部構造1では、柱体11上に柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9を載置した後、鉄骨梁端部32に鉄骨梁中央部39が、鉄骨梁端部21に鉄骨梁中央部22がスプライスプレートを介して接続されている。鉄筋コンクリート梁33上に、図示しない床スラブ用の配筋が行われ、床スラブおよび複合構造梁30上部に一体的に後打ちコンクリート60が打設される。後打ちコンクリート60の強度は、鉄筋コンクリート梁33のコンクリート圧縮強度よりも低く、鉄筋コンクリート梁33上に設けられる床スラブに使用するスラブコンクリートの圧縮強度と等しい。
【0025】
本実施形態の柱梁接合部構造1によると、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9が柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5に比べて軽量であるので、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9の運搬等が容易になる。これにより、揚重機の小型化を図ることができ、コストを削減できる。また、後打ちコンクリート60は床スラブと一体的に現場で打設されるため、工期や手間を削減できるとともに、後打ちコンクリート60の圧縮強度は、鉄筋コンクリート梁33の圧縮強度よりも低強度であるので、コストを削減することができる。従って、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9および柱梁接合部構造1は、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部構造に好適な柱梁接合部プレキャストコンクリート部材および柱梁接合部構造を提供することができる。
【0026】
[変形例]
上記第1および第2実施形態では、鉄骨梁端部32は、その一端が柱10と距離D2離れていたが、柱10の表面と鉄骨梁端部32が接触(D2=0)するようにしてもよい。
【0027】
上記第1および第2実施形態では、柱10は、現場打ちの鉄筋コンクリート柱であったが、プレキャストコンクリートやハーフプレキャストコンクリート等の鉄筋コンクリート柱であってもよい。
【0028】
また、上記第1および第2実施形態では、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5~9には、梁交差部40に柱10の柱主筋12を挿通する挿通孔15が形成され、柱10の柱主筋12が上方に突出していたが、例えば、梁交差部から上下に柱主筋が突出しており、柱の上下端に梁交差部の柱主筋と接合される機械式継手等を設けるようにしてもよい。或いは、梁交差部および柱ともに上方に柱主筋が突出し、下方に互いの柱主筋と接合される機械式継手等を設けるようにしてもよい。
【0029】
上記第1および第2実施形態では、複合構造梁端部31,31は、1本の鉄骨梁中央部39を介して接続されていたが、2本以上の鉄骨梁中央部を介して接続されていてもよい。
【0030】
上記第2実施形態では、上端筋34およびスターラップ筋36は、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9の複合構造梁端部31の鉄骨梁端部32まで打設されたコンクリートの上端から露出していたが、露出する部分の上端筋およびスターラップ筋は柱梁接合部プレキャストコンクリート部材を柱10に載置後に、例えば機械式継手等で取り付けるようにしてもよい。
【0031】
また、上記第1実施形態では、柱梁接合部プレキャストコンクリート部材5から8は、プレキャストコンクリート部材であったが、部材の重量を減らす必要がある場合等には、例えば、先端部を除くコンクリート梁断面がU字状のハーフプレキャスト部材としてもよい。第2実施形態の柱梁接合部プレキャストコンクリート部材9についても、先端部を除くコンクリート梁断面がU字状かつ上部のスターラップ筋が露出したハーフプレキャスト部材としてもよい。
【0032】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1,2,3,4 柱梁接合部構造
5,6,7,8,9 柱梁接合部プレキャストコンクリート部材
10 鉄筋コンクリート柱(柱)
11 柱体
12 柱主筋
13 帯筋
15 挿通孔
20 鉄骨梁
21,32 鉄骨梁端部
22,39 鉄骨梁中央部
30 複合構造梁
31 複合構造梁端部
32a 鉄骨梁天端
33 鉄筋コンクリート梁
34 上端筋
35 下端筋
36 スターラップ筋
40 梁交差部
50 小梁
60 後打ちコンクリート