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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016187
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】巻回支援装置及び取付方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20250124BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
H01F41/04 F
H01F30/10 Z
H01F30/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119302
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 由太
(72)【発明者】
【氏名】林 弘樹
(57)【要約】
【課題】巻線の巻回時に、巻線が連通溝内に落ちることを防止できる巻回支援装置を提供する。
【解決手段】隣り合う溝同士の仕切壁に前記溝間の連通溝が周方向に形成された変成器用ボビンを回転させて巻線を巻く回転装置に着脱可能な巻回支援装置1であって、板形状であって、前記仕切壁と対向配置されて前記連通溝を塞ぐ治具部31を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う溝同士の仕切壁に前記溝間の連通溝が周方向に形成された変成器用ボビンを回転させて巻線を巻く回転装置に着脱可能な巻回支援装置であって、
板形状であって、前記仕切壁と対向配置されて前記連通溝を塞ぐ治具部を有する巻回支援装置。
【請求項2】
前記連通溝は、巻回時の前記巻線の入口が開口した第1溝側の第1壁と、前記巻線の出口が開口した第2溝側の第2壁とを含み、
前記治具部は、取り付け時に前記第2壁の前記第2溝側の面と面一をなす主面を有する請求項1に記載の巻回支援装置。
【請求項3】
前記主面には前記第2壁の端部と係合する段差部が形成されている請求項2に記載の巻回支援装置。
【請求項4】
前記治具部は前記巻線よりも硬度が低い材料からなる請求項1から3の何れか一項に記載の巻回支援装置。
【請求項5】
前記治具部を保持する保持部と、
前記回転装置に取り付けられ、前記保持部を着脱可能に挟持する挟持部とを有する請求項1から3の何れか一項に記載の巻回支援装置。
【請求項6】
軸長方向に並設された溝同士の仕切壁に前記溝間を連通する連通溝が周方向に形成された変成器用ボビンを回転させて巻線を巻く回転装置に巻回支援装置を取り付ける取付方法であって、
前記連通溝を塞ぐように、板形状である治具部を前記仕切壁と対向配置する取付方法。
【請求項7】
前記連通溝は、巻回時の前記巻線の入口が開口した第1溝側の第1壁と、前記巻線の出口が開口した第2溝側の第2壁とを含み、
前記治具部の主面が前記第2壁の前記第2溝側の面と面一をなすようにする請求項6に記載の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回支援装置及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧又は変流を目的として、変成器が用いられている。変成器は、環状の枠体と枠体の外周に形成された複数のコイルとを備えることがある。複数のコイルは枠体の軸長方向に並び、互いに隣り合うコイルの間には、全周にわたって絶縁壁が介在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2020-188213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した枠体は、2つの絶縁壁を含んで構成される溝に、巻線を巻回させることによってコイルを形成するが、隣り合う溝間で連続して巻線の巻回ができるよう、隣り合う溝間を連通する連通溝が形成されている。斯かる連通溝は、前記絶縁壁に沿って延び、前記絶縁壁を斜めに貫く。よって、一の溝での巻線の巻回が終了すると、隣り合う他の溝へ斯かる連通溝を介して巻線が移動し、連続して他の溝での巻線の巻回が行われる。
【0005】
巻線の巻回が進むにつれて、前記枠体の径方向におけるコイルの高さが高くなり、巻線が前記連通溝内に落ちるおそれが生じる。
しかし、このような問題について、特許文献1では検討されておらず、対処できない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、巻線の巻回時に、巻線が連通溝内に落ちることを防止できる巻回支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る巻回支援装置は、隣り合う溝同士の仕切壁に前記溝間の連通溝が周方向に形成された変成器用ボビンを回転させて巻線を巻く回転装置に着脱可能な巻回支援装置であって、板形状であって、前記仕切壁と対向配置されて前記連通溝を塞ぐ治具部を有する。
【0008】
本発明に係る取付方法は、軸長方向に並設された溝同士の仕切壁に前記溝間を連通する連通溝が周方向に形成された変成器用ボビンを回転させて巻線を巻く回転装置に巻回支援装置を取り付ける取付方法であって、前記連通溝を塞ぐように、板形状である治具部を前記仕切壁と対向配置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻線の巻回時に、巻線が連通溝内に落ちることを防止できる巻回支援装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一方向から視認したコイルボビンの略示斜視図である。
図2図2のII-II線を切断線とした略示部分拡大縦断面図である。
図3】実施形態1に係る巻回支援装置の斜視図である。
図4】実施形態1に係る巻回支援装置の挟持部を示す斜視図である。
図5図4のV-V線を切断線とした縦断面図である。
図6】実施形態1に係る巻回支援装置の保持部を示す斜視図である。
図7】保持部の正面図、側面図、背面図、平面図、底面図である。
図8】実施形態1に係る巻回支援装置の防止部材を示す斜視図である。
図9】防止部材の正面図、側面図、背面図、平面図、底面図である。
図10】回転装置に挟持部を取り付けた後、防止部材及び保持部を取り付ける方法を説明する説明図である。
図11】回転装置への巻回支援装置の取り付けが完了した状態を示す斜視図である。
図12】回転装置への巻回支援装置の取り付けが完了した状態を模式的に示す部分的断面図である。
図13】回転装置に巻回支援装置が取り付けられた状態で巻線の巻回を行った後の第2溝の断面を示す部分的断面図である。
図14】実施形態2に係る巻回支援装置の防止部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
【0012】
(実施形態1)
本実施形態に係る巻回支援装置は、例えば、変成器用のコイルボビンを回転させて巻線を巻く回転装置に用いられる。
【0013】
図1は、一方向から視認したコイルボビン100の略示斜視図である。コイルボビン100は、樹脂製であり、角丸長方形である枠体200を備える。枠体200の四隅は円弧形に湾曲している。
【0014】
説明の便宜上、以下では、枠体200の軸長方向を前後方向とし、枠体200の長辺に平行な方向を上下方向とし、枠体200の短辺に平行な方向を左右方向として説明する。即ち、図1は、左上方向から視認したコイルボビン100の略示斜視図である。
【0015】
図2は、図1のII-II線を切断線とした略示部分拡大縦断面図である。
【0016】
枠体200の外周面には周方向に延びる樋2dが形成され、該樋2dは枠体200の全周に亘って設けられている。樋2dの底には、径方向外向きに突出した三つの壁2a,2b,2cが形成されている。壁2a,2b,2cは周方向に延び、枠体200の全周に亘って設けられている。壁2aは後側に配置され、壁2cは前側に配置され、壁2bは、壁2a及び壁2cの間に配置される。
【0017】
換言すれば、壁2aと樋2dの後側壁2daとの間に、巻線が巻回される第1溝3adが形成され、壁2aと壁2bとの間に巻線が巻回される、第2溝3abが形成され、壁2bと壁2cとの間に、巻線が巻回される第3溝3bcが形成され、壁2cと樋2dの前側壁2dbとの間に、巻線が巻回される第4溝3cdが形成されている。なお、巻線は、例えば、銅線である。
【0018】
即ち、枠体200の外周面には、軸長方向に、第1溝3ad、第2溝3ab、第3溝3bc及び第4溝3cdがこの順に並設されている。また、壁2aが第1溝3ad及び第2溝3abの仕切壁に相当し、壁2bが第2溝3ab及び第3溝3bcの仕切壁に相当し、壁2cが第3溝3bc及び第4溝3cdの仕切壁に相当する。
枠体200の第1溝3ad~第4溝3cdには一次コイルが設けられ、枠体200の径方向内側と、枠体200の径方向外側とに、二次コイルが夫々設けられる。
【0019】
壁2a,2b,2cの上部側には、夫々連通溝20,21,22が設けられている。連通溝20,21,22は、枠体200の軸長方向に隣り合う溝同士間を連通する。即ち、連通溝20は第1溝3ad及び第2溝3abを連通し、連通溝21は第2溝3ab及び第3溝3bcを連通し、連通溝22は第3溝3bc及び第4溝3cdを連通する。連通溝20,21,22は同じ形状であり、以下では、連通溝20についてのみ説明し、連通溝21,22に対する説明を省略する。
【0020】
壁2aの連通溝20は、第2溝3ab側の前側壁2aa(第1壁)及び第1溝3ad側の後側壁2ab(第2壁)を備える。換言すれば、連通溝20は、枠体200の周方向に沿って上部の壁2aに形成されており、壁2aの上部が、前側壁2aa及び後側壁2abに2分され、前側壁2aa及び後側壁2abが壁2aの厚み方向にて重畳している。前側壁2aa及び後側壁2abは先端に向けて厚みが薄くなっている。連通溝20は第1溝3adに一方の開口端201(入口)が開口しており(図1参照)、第2溝3abに他方の開口端202(出口)が開口している(図12参照)。
【0021】
前側壁2aaの上辺は右側に向かうに従って下降傾斜する。前側壁2aaの下辺は、樋2dの底に沿って、左右に延びる。後側壁2abは、左右に延びる矩形状をなし、前側壁2aaと対向するように配置されている。後側壁2ab及び前側壁2aaは、前後方向に適長離れている。前側壁2aaの右先端には垂直に延びる辺が形成されており、前側壁2aaの上辺が樋2dの底から離れている。
【0022】
後側壁2abの右端部分は、前側壁2aaよりも右側に延び、傾斜面2acに連なる。傾斜面2acは、右側部分が左側部分よりも前に位置するように、傾斜している。後側壁2abの右端部分及び傾斜面2acの前側に、前側壁2aaは配置されていない。
【0023】
前側壁2aa及び後側壁2abの間の底面2kは右側に向かうに従って、前側壁2aaの上辺と同様、下降傾斜する(図12参照)。すなわち、底面2kは、左端が右端よりも高くなるように設けられている。なお、底面2kは、前側壁2aaよりも左右方向に長い。即ち、底面2kは、前側壁2aaの右端よりも右側に延び、傾斜面2acの下辺に連なる。枠体200の右上隅部は、正面視において、径方向外向きに突出した円弧形に湾曲しており、底面2kは、前記円弧形の接線方向に延びる(図12参照)。
【0024】
上述の如く、連通溝20は第1溝3ad及び第2溝3abを連通している。従って、第1溝3adにて巻線が巻回された後、最外周位置の巻線は、連通溝20及び傾斜面2acによって、第2溝3abに案内され、第2溝3abの底面に至り、第2溝3abにて、巻線は巻回される。
【0025】
このようなコイルボビン100(枠体200)に対して、実施形態1に係る巻回支援装置1はコイルボビン100を回転させて巻線を巻く回転装置300(図12参照)に着脱可能に取り付けられ、巻線の巻回時に巻線が、連通溝20,21,22に落ちて不具合が生じることを事前に防止する。
【0026】
図3は、実施形態1に係る巻回支援装置1の斜視図である。巻回支援装置1は、巻線の巻回時にコイルボビン100の連通溝20,21,22に巻線が落ちることを防止する防止部材30と、防止部材30を保持する保持部40と、回転装置300に取り付けられ、保持部40を着脱可能に挟持する挟持部50とを備えている。
【0027】
防止部材30は保持部40にボルトにて固定されており、保持部40は、上述の如く、挟持部50に挟持されており、挟持部50は回転装置300にボルトにて固定される(図10参照)。図3では、説明の便宜上、回転装置300の図示を省略している。
【0028】
図4は、実施形態1に係る巻回支援装置1の挟持部50を示す斜視図であり、図5は、図4のV-V線を切断線とした縦断面図である。
【0029】
挟持部50は、例えば、鉄製であり、一面が回転装置300と当接する、扁平な六面体形状の基部51を有している。挟持部50には、挟持部50を厚み方向に貫通する3つの貫通孔512が形成されており、3つの貫通孔512は等間隔にて隔てられている。各貫通孔512は、前記一面と反対面側に座ぐり511が形成されている。図4では、3つの貫通孔512のうち2つの貫通孔512にボルトBが挿通されている場合を示している。
【0030】
挟持部50は、長手方向の一端部であって、前記反対面上に第1支持ブラケット56が立設されている。第1支持ブラケット56は、矩形厚板形状であり、基部51と同じ幅を有している。第1支持ブラケット56において中間よりも先端側には、第1支持ブラケット56を厚み方向に貫通する貫通孔561が形成されている。
【0031】
第1支持ブラケット56から最寄りの第1貫通孔512に隣り合う第2貫通孔512と、第1貫通孔512から遠方の第3貫通孔512との間には、第1支持ブラケット56に対応する第2支持ブラケット53が立設されている。第2支持ブラケット53は、矩形厚板形状であり、基部51と同じ幅を有している。第2支持ブラケット53は第1支持ブラケット56と対向配置されている。
【0032】
第2支持ブラケット53において中間よりも先端側であって、第1支持ブラケット56の貫通孔561と対向する位置には、第2支持ブラケット53を厚み方向に貫通する貫通孔531が形成されている。第2支持ブラケット53は、第1支持ブラケット56と同じ長さを有しており、第1支持ブラケット56よりも少し薄い厚みを有している。
【0033】
第1貫通孔512及び第2貫通孔512の間には、前記反対面上に、ストッパ54が立設されている。ストッパ54は、後述する係合ブロック55の移動を制限する。
ストッパ54は、矩形厚板形状であり、基部51と同じ幅を有している。ストッパ54は、第1支持ブラケット56及び第2支持ブラケット53よりも少し長い長さを有している。ストッパ54は、両主面が夫々第2支持ブラケット53及び第1支持ブラケット56と対向している。ストッパ54では、基部から先端に向かって矩形の係合切欠541が形成されている。換言すれば、ストッパ54は略U字形状を成している。
【0034】
第1支持ブラケット56の貫通孔561及び第2支持ブラケット53の貫通孔531には、移動丸棒52が遊貫している。即ち、移動丸棒52は、両端部が第1支持ブラケット56及び第2支持ブラケット53に支持され、第1支持ブラケット56及び第2支持ブラケット53の対向方向に移動可能である。移動丸棒52は、第2支持ブラケット53側の一端に抜け止め頭部521が設けられている。以下では、移動丸棒52において、抜け止め頭部521を除く部分を柱部522と称する。また、移動丸棒52では、柱部522の中間部にネジ部523が形成されている(図5参照)。
【0035】
移動丸棒52のネジ部523には、係合ブロック55が螺合している。
係合ブロック55は、略六面体のブロック形状を成している。ストッパ54の幅方向における係合ブロック55の寸法は、ストッパ54の幅と略同じであり、ストッパ54の長さ方向における係合ブロック55の寸法は、ストッパ54よりも小さい。係合ブロック55は、第2支持ブラケット53と対向する第1面と、第1支持ブラケット56と対向する第2面とを有しており、前記第1面及び前記第2面の対向方向に係合ブロック55を貫通する長孔551が形成されている。長孔551の周面には、移動丸棒52のネジ部523と螺合するネジ山部552が形成されている。ネジ部523とネジ山部552との係合によって、移動丸棒52及び係合ブロック55が一体化されており、係合ブロック55は移動丸棒52と一緒に移動する。
【0036】
また、係合ブロック55においては、前記第1面側に切り欠き554が形成されている。切り欠き554は、長孔551の軸長方向と直交する方向、即ちストッパ54の幅方向にて対向する両縁に形成されている。切り欠き554によって、係合ブロック55は前記第1面側の寸法が前記第2面側の寸法よりも小さい。即ち、係合ブロック55は長孔551の軸長方向における断面視で凸形状を成している。よって、凸形状の係合ブロック55は、上述の如く、U字形状のストッパ54と係合する。従って、係合ブロック55の第2支持ブラケット53側への移動がストッパ54によって制限される。換言すれば、係合ブロック55は、ストッパ54と、第1支持ブラケット56との間でのみ移動できる。なお、係合ブロック55がストッパ54と係合する状態で、係合ブロック55の前記第1面側端部が、ストッパ54よりも第2支持ブラケット53側に突出している(図4図5参照)。以下では、係合ブロック55において、ストッパ54よりも第2支持ブラケット53側に突出した部分を突出端部555と称する。
【0037】
そして、係合ブロック55では、長孔551における前記第2面側端に、拡径部553が形成されている。また、移動丸棒52の他端部には、スプリング57が遊嵌している。スプリング57の自然長は、係合ブロック55と第1支持ブラケット56との間隔よりも長く、一端部は拡径部553に収容されている。スプリング57によって、係合ブロック55は、常に第2支持ブラケット53側へ押し付けられる。
【0038】
図6は、実施形態1に係る巻回支援装置1の保持部40を示す斜視図であり、図7は、保持部40の正面図、側面図、背面図、平面図、底面図である。図7Aは側面図、図7Bは正面図、図7Cは背面図、図7Dは平面図、図7Eは底面図である。特に、図7Aは、図6の矢印方向からの側面図である。
【0039】
保持部40は、例えば、アルミニウム製であり、挟持部50に挟持される被挟持部43を有している(図3参照)。被挟持部43は、第2支持ブラケット53と係合ブロック55とによって挟持される。被挟持部43は、六面体のブロック形状であり、第2支持ブラケット53と対向する第1面と、係合ブロック55と対向する第2面とを有している。被挟持部43には、前記第1面及び前記第2面の対向方向に被挟持部43を貫通する貫通切欠431が形成されている。貫通切欠431は、断面視で、被挟持部43の一面側が開放された上心半円アーチ形状を成している。即ち、貫通切欠431は、前記一面と反対面側が半円形状部であり、斯かる半円形状部は、移動丸棒52の柱部522よりも少し大きな径を有している。また、被挟持部43は、前記第2面に、後述の如く、係合ブロック55の突出端部555と係合する凹部432が形成されている。
【0040】
保持部40においては、前記第1面及び前記第2面の対向方向と、前記一面及び前記反対面の対向方向と直交する方向(以下、直交方向と称する)に突出部42が連設されている。突出部42は、側面視で約平行四辺形であり、被挟持部43から前記直交方向に、被挟持部43の前記反対面よりも高く突出している(図7A参照)。
【0041】
前記直交方向における突出部42の端面は矩形であり、前記端面の縁部に防止部材30が固定される固定部41が設けられている。固定部41は、台形であり、被挟持部43の前記第1面及び前記第2面の対向方向における前記第2面寄りの縁部に沿って立設されている。固定部41は、固定部41を厚み方向に貫通する2つの貫通孔411を有しており、2つの貫通孔411は、固定部41の長さ方向に隔てて形成されている。貫通孔411の周面にはネジ山が形成されており、貫通孔411に防止部材30がネジ止めされる(図3参照)。固定部41、突出部42及び被挟持部43は一体形成されている。
【0042】
図8は、実施形態1に係る巻回支援装置1の防止部材30を示す斜視図であり、図9は、防止部材30の正面図、側面図、背面図、平面図、底面図である。図9Aは側面図、図9Bは正面図、図9Cは背面図、図9Dは平面図、図9Eは底面図である。特に、図9Aは、図8の矢印方向からの側面図である。
【0043】
防止部材30は、樹脂製であり、連通溝20,21,22を塞ぐ治具部31と、一端に治具部31が連設され、他端が保持部40に固定される連絡部32とを有している。
【0044】
治具部31は、矩形板形状であって、後述の如く、巻線の巻回時にコイルボビン100の壁2a,2b又は2cと一面を接して対向配置され、連通溝20、連通溝21又は連通溝22を塞ぐ(図12参照)。治具部31の長さは、コイルボビン100の径方向における壁2a,2b,2cの寸法よりも少し長く、治具部31の一端の縁が連絡部32に連設されている。説明の便宜上、以下では、図12の如く、治具部31が壁2aと対向配置され、連通溝20を塞ぐ場合を例に挙げて説明する。
【0045】
治具部31の他端は、連通溝20の底面2Kに対応して一部が斜めに形成されている。即ち、治具部31の他端面313は底面2Kと同様に傾斜している傾斜面を含む。治具部31において、前記一面と反対側の他面312は扁平面であり、他面312では他端面313側の端部に段差部311が形成されている。段差部311は、他端面313の前記傾斜面に係る端部にて他端面313に至るまでの範囲に形成されている。
【0046】
即ち、段差部311は、治具部31の他の部分よりも厚みが薄く、段差部311の形状は、コイルボビン100の連通溝20の前側壁2aaの先端部の形状に対応する形状を有している。よって、巻線の巻回時に、段差部311が前側壁2aaの先端部と係合する(図12参照)。
【0047】
連絡部32は、基部322と、治具部31側に張り出ている連結部321とを有している。基部322はブロック形状であり、一端部に連結部321が連設されている。基部322は一端に近づくにつれて体積が大きくなり、基部322の長さは治具部31よりも短い。連結部321は、板形状であって、治具部31と直交する方向に延びており、治具部31に近づくにつれて幅が広くなるように形成されている。連結部321の先端には、上述の如く、治具部31の一端が連設されている。基部322、連結部321及び治具部31は一体形成されている。
【0048】
基部322には、連結部321の延び方向及び治具部31の長さ方向と交差する方向に基部322を貫通する2つの貫通孔323が形成されている。ボルト(図示せず)を貫通孔323に挿入して保持部40の貫通孔411に螺合させることによって、防止部材30が保持部40に固定される。
【0049】
以下、図を用いて、実施形態1に係る巻回支援装置1を取り付ける取付方法について説明する。図10は、回転装置300に挟持部50を取り付けた後、防止部材30及び保持部40を取り付ける方法を説明する説明図である。
【0050】
まず、作業者は、挟持部50のみを回転装置300に取り付ける。上述の如く、ボルトBを挟持部50の貫通孔512に挿入して回転装置300のネジ穴(図示せず)に螺合させることによって、挟持部50を回転装置300に取り付ける(図5参照)。
【0051】
回転装置300は、巻線を巻回するためにコイルボビン100が取り付けられる、角丸長方形の取り付け板302を有しており、挟持部50は取り付け板302の上部に取り付けられる。取り付け板302には、コイルボビン100の内側と結合する結合突起301が垂直に突設されている。
【0052】
回転装置300に挟持部50が取り付けられた後、作業者は回転装置300にコイルボビン100を取り付け、抜け止め蓋303を用いてコイルボビン100を固定する(図10A)。
以降、作業者は回転装置300を稼働させてコイルボビン100を回転させて、第1溝3ad内に巻線を巻く。
【0053】
第1溝3ad内の巻線の巻回が完了すると、コイルボビン100の回転を中止させて、防止部材30及び保持部40を挟持部50に取り付ける。この際、防止部材30は予め保持部40に固定されている。
【0054】
作業者は、移動丸棒52の抜け止め頭部521を図10Bの矢印方向に押して、係合ブロック55を第1支持ブラケット56側に後退させる。これによって、係合ブロック55の突出端部555も後退するので、ストッパ54から突出しなくなる。
【0055】
このように係合ブロック55が後退した状態で、作業者は、防止部材30及び保持部40の結合体を挟持部50に取り付ける。詳しくは、作業者は、図10Cの矢印方向に、挟持部50の上側から、保持部40の被挟持部43を第2支持ブラケット53及びストッパ54の間に載置する。この際、被挟持部43の貫通切欠431の内側に移動丸棒52の柱部522が収容される。続いて、作業者は、移動丸棒52から手を放し、スプリング57の復元力によって係合ブロック55がストッパ54側に前進してストッパ54と係合する。この際、被挟持部43は第2支持ブラケット53及び係合ブロック55によって挟持され、かつ係合ブロック55の突出端部555は被挟持部43の凹部432と係合する。また、防止部材30の治具部31は、第2溝3ab内にて、連通溝20の近傍に配設される。以降、第2溝3abでの巻線の巻回が開始される。
これによって、回転装置300がコイルボビン100を回転させる際、防止部材30及び保持部40の結合体が遠心力で回転装置300から外れることを防止できる。
【0056】
図11は、回転装置300への巻回支援装置1の取り付けが完了した状態を示す斜視図であり、図12は、回転装置300への巻回支援装置1の取り付けが完了した状態を模式的に示す部分的断面図である。便宜上、図12は、コイルボビン100(壁2a)の上部のみを示しており、治具部31を一点鎖線にて示している。
【0057】
図10のようにして、巻回支援装置1の取り付けが完了した場合、治具部31は、コイルボビン100の壁2aの後側壁2abとその一面を接して、前側壁2aaの端部に配設される。この際、上述の如く、治具部31の段差部311が前側壁2aaの先端部と係合する。
【0058】
詳しくは、段差部311が連通溝20内に収容され、前側壁2aaと後側壁2abとの間に介在し、前側壁2aaの先端部の縁が段差部311及び他面312の段差面と当接する。また、治具部31の他端面313が底面2Kと当接する。そして、治具部31の他面312は、前側壁2aaの第2溝3ab側の面と面一を成す。
【0059】
よって、防止部材30(治具部31)によって連通溝20が塞がれ、第2溝3abでの巻線の巻回時に、連通溝20内に巻線が落ちることを防止できる。以下、詳しく説明する。
【0060】
図13は、回転装置300に巻回支援装置1が取り付けられた状態で巻線Lの巻回を行った後の第2溝3abの断面を示す部分的断面図である。図13において、楕円内の図は、円で囲まれた部分を拡大して示す部分拡大図である。なお、便宜上、第1溝3adに巻回された巻線の図示は省略する。
【0061】
第2溝3ab内で巻線Lの巻回が行われる際、巻線Lは、断面視で俵積みのように、内周側の巻線Lの上に外周側の巻線Lが巻かれる。この際、外周側の巻線Lには、コイルボビン100の軸中心、即ち内周側の巻線Lへの押圧力が発生する。このような押圧力によって、巻線Lが連通溝20内に落ちて整列巻きが崩れてしまうおそれがあり(部分拡大図の矢印参照)、斯かる場合、巻線L同士の接触によって絶縁破壊が発生して不具合が生じる。
【0062】
これに対して、実施形態1に係る巻回支援装置1を用いる場合、巻回支援装置1の防止部材30(治具部31)が連通溝20内に収容されて前側壁2aaと後側壁2abとの間に介在することによって連通溝20が塞がれる(図13の破線の四角参照)。よって、第2溝3abでの巻線の巻回時に、連通溝20内に巻線Lが落ちることを事前に防止できる。
【0063】
また、上述の如く、回転装置300に巻回支援装置1が取り付けられた状態で、前側壁2aaと後側壁2abとの間に治具部31の段差部311が介在するので、巻線Lの巻回時に俵積みされた巻線Lによって連通溝20の前側壁2aaが撓むこともなく、巻線Lが連通溝20内に落ちて整列巻きが崩れることを確実に防止できる。
【0064】
また、上述の如く、実施形態1に係る巻回支援装置1は、回転装置300に巻回支援装置1が取り付けられた状態で、治具部31の他面312は、前側壁2aaの第2溝3ab側の面と面一を成す。よって、巻線Lが連通溝20内に落ちて整列巻きが崩れることを確実に防止できる。
【0065】
また、上述の如く、実施形態1に係る巻回支援装置1は、回転装置300に巻回支援装置1が取り付けられる際、治具部31の段差部311が前側壁2aaの先端部と係合するので、取り付け時における巻回支援装置1の位置決めが容易になる。
【0066】
更に、上述の如く、実施形態1に係る巻回支援装置1は、巻線Lが銅線であるのに対して、防止部材30(治具部31)は巻線Lよりも硬度が低い樹脂からなる。よって、治具部31によって巻線Lが傷つくことを防止できる。
【0067】
そして、上述の如く、実施形態1に係る巻回支援装置1は、防止部材30を保持する保持部40を、挟持部50が着脱可能に挟持する。よって、防止部材30を取り外す作業が容易になる。
【0068】
(実施形態2)
図14は、実施形態2に係る巻回支援装置1の防止部材30を示す斜視図である。
防止部材30は、実施形態1と同様、樹脂製であり、連通溝20,21,22を塞ぐ治具部31と、一端に治具部31が連設され、他端が保持部40に固定される連絡部32とを有している。治具部31は、実施形態1と同じであり、詳しい説明を省略する。
【0069】
連絡部32は、基部322と、治具部31側に張り出ている連結部321Aとを有している。
基部322は、実施形態1と同様、ブロック形状であり、一端部に連結部321Aが連設されている。基部322は一端に近づくにつれて体積が大きくなり、基部322には、基部322を貫通する2つの貫通孔323が形成されている。ボルト(図示せず)を貫通孔323に挿入して保持部40の貫通孔411に螺合させることによって、防止部材30が保持部40に固定される。また、基部322の一端には、段差部324が設けられ、段差部324に連結部321Aが載置されている。
【0070】
連結部321Aは、板形状であって、治具部31と直交する方向に延びており、治具部31に近づくにつれて幅が広くなるように形成されている。連結部321Aの先端には、上述の如く、治具部31の一端が連設されている。
【0071】
また、実施形態2に係る巻回支援装置1は、基部322と治具部31との間の間隔、即ち、連結部321Aの長さを伸び縮ませる伸縮機構327を備えている。伸縮機構327は、基部322側に設けられた係合突起325と、連結部321A側に設けられた係合孔326とを有する。係合突起325は係合孔326に挿嵌されて取り外し可能に固定されている。
【0072】
係合突起325は、基部322の段差部324に突設されている。係合突起325は円柱形状であり、3つの係合突起325が連結部321Aの長さ方向に沿って等間隔にて並設されて列を構成しており、夫々3つの係合突起325からなる2つの列が平行を成している。
【0073】
係合孔326は、連結部321Aに、形成されている。即ち、係合孔326は、連結部321Aを厚み方向に貫通している。各係合孔326は、円孔であり、係合突起325のよりも少し大きい径を有している。連結部321Aには、3つの係合孔326が連結部321Aの長さ方向に沿って等間隔にて並設されて列を構成しており、係合突起325と同様、夫々3つの係合孔326からなる2つの列が平行を成している。
【0074】
このような伸縮機構327を有する実施形態2に係る巻回支援装置1の防止部材30では、連結部321Aの長さを伸び縮みできる。各列において1つの係合突起325が係合孔326と係合する場合、連結部321Aの長さは最も長く、各列の係合突起325の全てが係合孔326と係合する場合、連結部321Aの長さは最も短い。従って、実施形態2に係る巻回支援装置1においては、巻線Lの巻回時に、防止部材30を保持する保持部40を挟持部50に挟持させてから、第1溝3ad、第2溝3ab、第3溝3bc及び第4溝3cdに応じて、連結部321Aの長さを伸び縮ませることができ、巻線Lの巻回の作業性を高めることができる。
【0075】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0076】
実施の形態1,2で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせることにより、新しい技術的特徴を構成することができる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0077】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0078】
1:巻回支援装置、2a,2b,2c:壁(仕切壁)、3ad:第1溝、3ab:第2溝、3bc:第3溝、3cd:第4溝、20,21,22:連通溝、30:防止部材、31:治具部、32:連絡部、40:保持部、50:挟持部、202:開口端(出口)、201:開口端(入口)、100:コイルボビン、300:回転装置、311:段差部、312:他面、327:伸縮機構、L:巻線
図1
図2
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