(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016189
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】樹脂組成物、フィルム、偏光シート、および、サングラス
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20250124BHJP
C08J 5/20 20060101ALI20250124BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
C08L77/00
C08J5/20 CFG
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119304
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小坂 恵夢
【テーマコード(参考)】
2H149
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA23
2H149AB04
2H149AB26
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2H149EA12
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2H149FA15X
2H149FB01
2H149FD09
2H149FD12
2H149FD25
2H149FD47
4F071AA51
4F071AA51X
4F071AA54
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4J002CL051
4J002CL072
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4J002GP00
(57)【要約】
【課題】 透明性に優れ、かつ、フィルムの製造の際のロール汚れを効果的に抑制できるフィルムを提供可能な樹脂組成物、ならびに、フィルム、偏光シート、および、サングラスの提供。
【解決手段】 脂環式ジアミン単位と、炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位と、アミノカルボン酸単位を含むポリアミド樹脂と、ポリエーテルアミドエラストマーとを含む、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式ジアミン単位と、炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位と、アミノカルボン酸単位を含むポリアミド樹脂と、ポリエーテルアミドエラストマーとを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位が、セバシン酸単位および/またはドデカン二酸単位を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂環式ジアミン単位を構成する脂環式ジアミンが、置換または無置換のシクロヘキサン環を2つ含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂環式ジアミン単位が、式(PA-1)で表される単位を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(PA-1)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基であり、n1は、それぞれ独立に、0~3の整数である。*は他の単位または末端基との結合部位である。)
【請求項5】
前記ポリエーテルアミドエラストマーが、ポリアルキレングリコールブロックとポリアミドブロックを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアルキレングリコールブロックが、ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックおよび/またはポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)ブロックを含む、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記アミノカルボン酸単位を構成するアミノカルボン酸が式(PA-2)で表される、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(PA-2)中、nは、5~20の整数である。)
【請求項8】
前記樹脂組成物における前記ポリアミド樹脂の含有量が80.0~99.9質量%であり、前記ポリエーテルアミドエラストマーの含有量が20.0~0.1質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位が、セバシン酸単位および/またはドデカン二酸単位を含み、
前記脂環式ジアミン単位が、式(PA-1)で表され、
前記ポリエーテルアミドエラストマーが、ポリアルキレングリコールブロックとポリアミドブロックを含み、
前記ポリアルキレングリコールブロックが、ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックおよび/またはポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)ブロックを含み、
前記樹脂組成物における前記ポリアミド樹脂の含有量が80.0~99.9質量%であり、前記ポリエーテルアミドエラストマーの含有量が20.0~0.1質量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(PA-1)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基であり、n1は、それぞれ独立に、0~3の整数である。*は他の単位または末端基との結合部位である。)
【請求項10】
前記ポリアミド樹脂(A)が非晶性樹脂である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物を300μm厚さのフィルムに成形した時のヘイズが3.0%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物を300μm厚さのフィルムに成形した時の全光線透過率が80%以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
偏光シートの保護フィルム用である、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されたフィルム。
【請求項15】
請求項14に記載のフィルムと、偏光膜を含む、偏光シート。
【請求項16】
請求項15に記載の偏光シートを含む、サングラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、フィルム、偏光シート、および、サングラスに関する。特に、ポリアミド樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、剛性、強度などの機械特性や耐熱性などに優れているため、電気・電子、自動車、機械、建材など多岐に渡り利用されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-129271号公報
【特許文献2】特開2013-001906号公報
【特許文献3】特開2012-131977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、ポリアミド樹脂は多岐にわたる分野で利用されているが、一般的に透明性が劣る樹脂であり、透明性が要求される用途には用いられてこなかった。
かかる状況下、本発明者は、ポリアミド樹脂を偏光膜の保護フィルムなどの透明な用途に用いることを検討した。しかしながら、ポリアミド樹脂をフィルム状に成形する場合、フィルムの製造の際に、ロールに汚れが発生することが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、透明性に優れ、かつ、フィルムの製造の際のロール汚れを効果的に抑制できるフィルムを提供可能な樹脂組成物、ならびに、フィルム、偏光シート、および、サングラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、所定のポリアミド樹脂と、ポリエーテルアミドエラストマーを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>脂環式ジアミン単位と、炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位と、アミノカルボン酸単位を含むポリアミド樹脂と、ポリエーテルアミドエラストマーとを含む、樹脂組成物。
<2>前記炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位が、セバシン酸単位および/またはドデカン二酸単位を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記脂環式ジアミン単位を構成する脂環式ジアミンが、置換または無置換のシクロヘキサン環を2つ含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記脂環式ジアミン単位が、式(PA-1)で表される単位を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(PA-1)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基であり、n1は、それぞれ独立に、0~3の整数である。*は他の単位または末端基との結合部位である。)
<5>前記ポリエーテルアミドエラストマーが、ポリアルキレングリコールブロックとポリアミドブロックを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記ポリアルキレングリコールブロックが、ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックおよび/またはポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)ブロックを含む、<5>に記載の樹脂組成物。
<7>前記アミノカルボン酸単位を構成するアミノカルボン酸が式(PA-2)で表される、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(PA-2)中、nは、5~20の整数である。)
<8>前記樹脂組成物における前記ポリアミド樹脂の含有量が80.0~99.9質量%であり、前記ポリエーテルアミドエラストマーの含有量が20.0~0.1質量%である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位が、セバシン酸単位および/またはドデカン二酸単位を含み、
前記脂環式ジアミン単位が、式(PA-1)で表され、
前記ポリエーテルアミドエラストマーが、ポリアルキレングリコールブロックとポリアミドブロックを含み、
前記ポリアルキレングリコールブロックが、ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックおよび/またはポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)ブロックを含み、
前記樹脂組成物における前記ポリアミド樹脂の含有量が80.0~99.9質量%であり、前記ポリエーテルアミドエラストマーの含有量が20.0~0.1質量%である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(PA-1)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基であり、n1は、それぞれ独立に、0~3の整数である。*は他の単位または末端基との結合部位である。)
<10>前記ポリアミド樹脂(A)が非晶性樹脂である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>前記樹脂組成物を300μm厚さのフィルムに成形した時のヘイズが3.0%以下である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12>前記樹脂組成物を300μm厚さのフィルムに成形した時の全光線透過率が80%以上である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13>偏光シートの保護フィルム用である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<14><1>~<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成されたフィルム。
<15><14>に記載のフィルムと、偏光膜を含む、偏光シート。
<16><15>に記載の偏光シートを含む、サングラス。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、透明性に優れ、かつ、フィルムの製造の際のロール汚れを効果的に抑制できるフィルムを提供可能な樹脂組成物、ならびに、フィルム、偏光シート、および、サングラスを提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の熱曲げ成形体の層構成の一例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書における置換基の例としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルケニル基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アシル基またはアミノ基であることが好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、または、アシル基であることがより好ましく、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基またはアルケニル基であることがさらに好ましく、アルキル基であることが一層好ましい。これらの置換基の式量は、15以上であることが好ましく、また、200以下であることが好ましい。式量とは、例えば、メチル基(-CH3)であれば、15である。これらの置換基はさらに置換基を有していてもよいが、置換基を有していない方が好ましい。
【0009】
本明細書におけるフィルムは、長さと幅に対して、厚さが薄く、概ね、平らな成形体をいい、シートも含む趣旨である。また、本明細書における「フィルム」は、単層であっても多層であってもよいが、単層が好ましい。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2023年1月1日時点における規格に基づくものとする。
図1は、縮尺度などは実際と整合していないこともある。
【0010】
本実施形態の樹脂組成物は、脂環式ジアミン単位と、炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位と、アミノカルボン酸単位を含むポリアミド樹脂と、ポリエーテルアミドエラストマーとを含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、透明性に優れ、かつ、フィルムの製造の際のロール汚れを効果的に抑制できるフィルムを提供可能な樹脂組成物が得られる。
ポリアミド樹脂が脂環式ジアミン単位を含むことにより、透明性に優れた樹脂組成物が得られる。
一方、ポリアミド樹脂、特にポリアミド樹脂の分解物は金属に付着しやすい傾向にある樹脂であり、フィルムを製造する際のロール汚れを引き起こしやすい。本実施形態で用いるポリアミド樹脂においては、炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位やアミノカルボン酸単位由来の成分がロールに付着しやすい。本実施形態においては、ポリエーテルアミドエラストマーを配合することにより、フィルムを製造する際のロールへの炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位やアミノカルボン酸単位由来の成分の付着を効果的に抑制できたと推測される。さらに、本実施形態においては、ポリアミド樹脂の炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位とポリエーテルアミドエラストマー(特に、ポリアルキレングリコールブロック)が相溶することにより、透明性も高いレベルで維持できる。
【0011】
<脂環式ジアミン単位と、炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位と、アミノカルボン酸単位を含むポリアミド樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、脂環式ジアミン単位と、炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位と、アミノカルボン酸単位を含むポリアミド樹脂(本明細書において、「ポリアミド樹脂(A)」ということがある)を含む。
【0012】
本実施形態においては、脂環式ジアミン単位を構成する脂環式ジアミンは、5員環の脂環および/または6員環の脂環を含むジアミンであることが好ましい。前記5員環および/または6員環は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。前記脂環式ジアミンは、より好ましくは置換または無置換のシクロヘキサン環を2つ含む。脂環式ジアミン単位は、炭素炭素二重結合および炭素炭素三重結合を含まないことが好ましい。また、脂環式ジアミンは、末端のアミノ基以外は、脂環構造を含む脂肪族炭化水素基のみから構成されることが好ましい。
脂環式ジアミン単位を構成する脂環式ジアミンの分子量は、195以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、また、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。
本実施形態においては、脂環式ジアミン単位が、式(PA-0)で表されることがより好ましい。
【化4】
(式(PA-0)中、Rは、それぞれ独立に、置換基であり、nは、それぞれ独立に、0~5の整数である。Lは単結合または2価の連結基である。*は他の単位または末端基との結合部位である。)
式(PA-0)中、Rは、それぞれ独立に、置換基であり、炭素数1~6の脂肪族基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖または分岐のアルキル基であることがさらに好ましく、メチル基、エチル基またはプロピル基であることが一層好ましく、メチル基であることがより一層好ましい。
式(PA-0)中、nは、それぞれ独立に、0~5の整数であり、1以上の整数であることが好ましく、また、4以下の整数であることが好ましく、3以下の整数であることがより好ましく、2以下の整数であることがさらに好ましく、1以下の整数であることが一層好ましい。
式(PA-0)中、Lは単結合または2価の連結基であり、単結合または2価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、単結合または2価のアルキレン基であることがより好ましく、単結合または炭素数1~3のアルキレン基であることがさらに好ましく、単結合、メチレン基、エチレン基、または、イソプロピレン基であることが一層好ましく、メチレン基であることがより一層好ましい。
*は他の単位または末端基との結合部位である。すなわち、通常は、-C(=O)―と結合して、式(PA-0)中のNHと共にアミド結合を形成しているか、水素原子と結合し、式(PA-0)中のNHと共に末端アミノ基を形成しているか、末端基と結合している。
【0013】
本実施形態においては、脂環式ジアミン単位が、式(PA-1)で表されることがより好ましい。
【化5】
(式(PA-1)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基であり、n1は、それぞれ独立に、0~3の整数である。*は他の単位または末端基との結合部位である。)
【0014】
式(PA-1)中、R1は、炭素数1~5のアルキル基であり、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基またはプロピル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
式(PA-1)中、n1は、0~3の整数であり、1以上の整数であることが好ましく、また、2以下の整数であることが好ましい。
【0015】
脂環式ジアミンの具体例としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等が例示される。
【0016】
ポリアミド樹脂(A)は、脂環式ジアミン単位を、ポリアミド樹脂を構成するジアミン単位の好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上、特に一層好ましくは99モル%以上、また、100モル%以下の割合で含む。脂環式ジアミン単位は、1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0017】
ポリアミド樹脂(A)の原料ジアミン成分として用いることができる脂環式ジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、キシリレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0018】
本実施形態においては、炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位を構成する炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸は、炭素数7~20の直鎖または分岐の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、炭素数7~20の直鎖脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましく、炭素数7~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸であることがさらに好ましい。前記炭素数7~20の直鎖脂肪族ジカルボン酸を構成する炭素数は、8以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、また、18以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましく、13以下であることが一層好ましく、12以下であることがより一層好ましい。炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸は、HOOC-(CH2)n-COOHで表されることが好ましい。ここでのnは5~18の整数である。
本実施形態で用いることができる炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位としては、セバシン酸単位、ウンデカン二酸単位、および、ドデカン二酸単位の少なくとも1種を含むことが好ましく、セバシン酸単位および/またはドデカン二酸単位を含むことがより好ましい。
【0019】
ポリアミド樹脂(A)は、炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位を、ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸単位の好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上、特に一層好ましくは99モル%以上、また、100モル%以下の割合で含む。炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸単位は、1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
上記炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0021】
本実施形態においては、アミノカルボン酸単位を構成するアミノカルボン酸の種類は、特に定めるものはなく、公知のアミノカルボン酸を用いることができる。アミノカルボン酸は、末端のアミノ基およびカルボン酸基以外は、脂肪族炭化水素基のみから構成されることが好ましい。
アミノカルボン酸単位を構成するアミノカルボン酸の分子量は、180以上であることが好ましく、190以上であることがより好ましく、また、400以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、250以下であることがさらに好ましい。
【0022】
アミノカルボン酸単位を構成するアミノカルボン酸が式(PA-2)で表されることが好ましい。
【化6】
(式(PA-2)中、nは、5~20の整数である。)
式(PA-2)中、nは、5~20の整数であり、6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましく、9以上であることが一層好ましく、10以上であることがより一層好ましく、また、18以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましく、13以下であることが一層好ましく、12以下であることがより一層好ましい。
【0023】
なお、ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン単位とジカルボン酸単位とアミノカルボン酸単位を含むが、これら以外のモノマー単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。本実施形態においては、ポリアミド樹脂(A)を構成するモノマー単位のうち、ジアミン単位とジカルボン酸単位とアミノカルボン酸単位の合計数が全モノマー単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン単位とジカルボン酸単位のモル比率は、40:60~60:40であることが好ましく、45:55~55:45であることがより好ましい。
また、本実施形態においては、ポリアミド樹脂(A)を構成する全モノマー単位のうち、アミノカルボン酸単位の割合が、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、また、50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
【0024】
ポリアミド樹脂(A)は、非晶性樹脂であることが好ましい。非晶性樹脂とは、明確な融点を持たない樹脂であり、具体的には、結晶融解エンタルピーΔHmが5J/g未満であることをいい、3J/g以下が好ましく、1J/g以下がさらに好ましい。結晶融解エンタルピーΔHmはJIS K7121およびK7122に準じて、昇温過程における値を測定する。具体的には、ポリアミド樹脂を、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素気流中、室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱したのち、ただちに室温以下まで冷却し、再び室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の値とする。
【0025】
ポリアミド樹脂(A)は、バイオマス原料を用いて製造されたポリアミド樹脂(バイオマスポリアミド樹脂)を用いることも好ましい。バイオマスポリアミド樹脂を用いることにより、環境負荷の低減を図ることができる。ポリアミド樹脂(A)は、また、マスバランス認証(ISCC PLUS)されたモノマー原料を用いることもできる。マスバランス認証とは、工場や生産設備ごとに再生可能な原料やバイオ原料がどの程度使用され、どの程度製品が生産や出荷されたかを定量化し、品質と合わせて保証されたものであることを意味する。
また、ポリアミド樹脂(A)は、リサイクル品(回収品、マテリアルリサイクル品、ケミカルリサイクル品等を含む)、不合格品、ポリアミド樹脂(A)や本実施形態の樹脂組成物の成形の際に出る端材であってもよい。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリアミド樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物100質量%中、80.0質量%以上であることが好ましく、85.0質量%以上であることがより好ましく、87.0質量%以上であることがさらに好ましく、90.0質量%以上であることが一層好ましく、93.0質量%以上であることがより一層好ましく、94.0質量%以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られるフィルムのガラス転移温度がより高くなる傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリアミド樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物100質量%中、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られるフィルムの衝撃強度向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂としては、ポリアミド樹脂(A)以外の脂肪族ポリアミド樹脂および芳香族ポリアミド樹脂が例示される。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド666、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド116、ポリアミド12、ポリアミド612等が例示される。
芳香族ポリアミド樹脂としては、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド66/6T、ポリアミド9T、ポリアミド9MT、ポリアミド10T、ポリアミド6I/6T、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(MXD6等)等が例示される。
【0028】
脂肪族ポリアミド樹脂および芳香族ポリアミド樹脂は、リサイクル樹脂やバイオマス原料を用いて製造されポリアミド樹脂(バイオマス熱可塑性樹脂)を用いることも好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂の含有量は、樹脂組成物100質量%中、10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることがさらに好ましく、1質量%未満であることが一層好ましく、0.1質量%未満であることがさらに好ましい。
【0029】
<ポリエーテルアミドエラストマー>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエーテルアミドエラストマーを含む。ポリエーテルアミドエラストマーを含むことにより、フィルム製造の際のロール汚れを効果的に抑制できる。さらに、ヘイズも低くすることができる。
ポリエーテルアミドエラストマーとは、ポリエーテル構造とポリアミド構造を含むエラストマーである。本実施形態におけるポリエーテルアミドエラストマーは、エステル構造を実質的に含まないものである。実質的にエステル構造を含まないとは、いわゆる、ポリエステルエーテルアミドエラストマーではないことを意味し、より具体的には、エステル構造の含有量が、通常、ポリエーテルアミドエラストマーの1質量%未満であり、0.5質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましく、0.01質量%未満であることがさらに好ましい。
本実施形態で用いるポリエーテルアミドエラストマーは、好ましくは、ポリアルキレングリコールブロックとポリアミドブロックを含む。
【0030】
ポリアルキレングリコールブロックは、-(アルキレン基-O)n2-で表されることが好ましい。前記-(アルキレン基-O)n2-におけるアルキレン基は、直鎖または分岐の炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましい。前記アルキレン基を構成する炭素数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、また、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、5以下であることが一層好ましい。上記-(アルキレン基-O)-の具体例としては、-(CH2O)-、-(CH2CH2O)-、-(CH2CH2CH2O)-、-(CH(CH3)CH2O)-、-(CH2CH2CH2CH2O)-、-(C(CH3)2CH2O)-が例示され、これらの2種以上の組み合わせであってもよい。
前記-(アルキレン基-O)n2-におけるn2は、1~200であることが好ましく、3~100であることがより好ましい。
ポリアルキレングリコールブロックは、ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックおよび/またはポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)ブロックを含むことが好ましい。
【0031】
本実施形態で用いるポリエーテルアミドエラストマーにおけるポリアルキレングリコールの割合は、ポリエーテルアミドエラストマーの全構成単位100モル%に対し、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましく、20モル%以上であることが一層好ましく、用途等に応じて、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、65モル%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、ポリアミド樹脂に添加した際の衝撃強度の向上効果がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いるポリエーテルアミドエラストマーにおけるポリアルキレングリコールの割合は、ポリエーテルアミドエラストマーの全構成単位100モル%に対し、90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましく、75モル%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、非晶性ポリアミド樹脂と相溶しやすい傾向にある。
ポリエーテルアミドエラストマーは、ポリアルキレングリコールを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0032】
ポリアミドブロックは、脂肪族ポリアミドブロックで表されることが好ましく、-(NH(CH2)n3C(=O))n4-で表される脂肪族ポリアミドブロックであることが好ましい。ここで、n3は、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、9以上であることが一層好ましく、10以上であることがより一層好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることが一層好ましく、12以下であることがさらに一層好ましい。
また、上記n3は、ポリアミド樹脂(A)を構成する炭素数7~20の脂肪族ジカルボン酸の炭素数をn5としたとき(例えば、セバシン酸は、n5=10である)、n5とn3の値の差(絶対値)が小さいことが好ましい。より具体的には、|n5-n3|が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
n4は、1~300であることが好ましく、5~100であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態で用いるポリエーテルアミドエラストマーにおけるポリアミドの割合は、ポリエーテルアミドエラストマーの全構成単位100モル%に対し、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましく、25モル%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、非晶性ポリアミドとの相溶性の向上効果がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いるポリエーテルアミドエラストマーにおけるポリアミドの割合は、ポリエーテルアミドエラストマーの全構成単位100モル%に対し、95モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましく、85モル%以下であることがさらに好ましく、80モル%以下であることが一層好ましく、用途等に応じて、70モル%以下、60モル%以下、50モル%以下、40モル%以下、35モル%以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、ポリアミド樹脂に添加した際のガラス転移温度の低下を抑制する効果がより向上する傾向にある。
ポリエーテルアミドエラストマーは、ポリアミドを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0034】
本実施形態で用いるポリエーテルアミドエラストマーの重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、また、100000以下であることが好ましく、80000以下であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリアミド樹脂と混ぜた際の靭性が向上する傾向にある。前記上限値以下とすることにより、ポリアミド樹脂との相溶性がより向上する傾向にある。
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したアクリル換算値である。
【0035】
本実施形態で用いるポリエーテルアミドエラストマーは、ポリアルキレングリコールブロックとポリアミドブロックの合計が、ポリエーテルアミドエラストマー100質量%中、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、また、100質量%以下であることが好ましい。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリエーテルアミドエラストマーの含有量は、樹脂組成物100質量%に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、1.5質量%以上であることが一層好ましく、ロール汚れをより効果的に抑制する観点からは、2.0質量%以上であることがより一層好ましく、3.0質量%以上であることがさらに一層好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリエーテルアミドエラストマーの含有量は、樹脂組成物100質量%に対し、20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以下であることがさらに好ましく、8.0質量%以下であることが一層好ましく、7.0質量%以下であることがより一層好ましく、5.0質量%以下であることがさらに一層好ましく、透明性をより向上させる観点からは、3.0質量%以下であることがよりさらに一層好ましく、2.0質量%以下であることが特に一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエーテルアミドエラストマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物におけるポリアミド樹脂(A)の含有量が80.0~99.9質量%であり、ポリエーテルアミドエラストマーの含有量が20.0~0.1質量%であることが好ましい。
【0038】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)とポリエーテルアミドエラストマーの合計が樹脂組成物100質量%中、90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましく、100質量%以下であることが好ましい。
【0039】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)とポリエーテルアミドエラストマー以外の他の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
他の成分としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、衝撃改良剤、摺動改良剤、色相改良剤、酸トラップ剤等が例示される。
また、本実施形態の樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、国際公開第2021/241471号の段落0047~0103に記載の添加剤、特開2023-61203号公報の段落0041~0056に記載の添加剤を配合することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
他の成分を含有する場合、その含有量は、合計で樹脂組成物の0.001~3質量%であることが好ましく、2質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることがさらに好ましく、0.5質量%未満であることが一層好ましく、0.1質量%未満であることがより一層好ましく、0.01質量%未満であってもよい。
他の成分は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。他の成分を2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0041】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は透明性に優れることが好ましい。
具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、300μm厚に成形したときの全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率の上限は100%が好ましいが、99%以下でも要求性能を満たす。
また、本実施形態の樹脂組成物は、300μm厚に成形したときのヘイズが、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが一層好ましく、1.2%以下であることがより一層好ましく、1.0%以下であることがさらに一層好ましい。ヘイズの下限値は0%であることが好ましいが、0.001%以上でも要求性能を満たす。
全光線透過率およびヘイズは後述する実施例の記載に従って測定される。
【0042】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法が採用される。
例えば、ポリアミド樹脂(A)とポリエーテルアミドエラストマーを添加して、溶融混練することによって得ることができる。より具体的には、ポリアミド樹脂(A)、および、ポリエーテルアミドエラストマー、ならびに、必要に応じ配合される他の成分をV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。
【0043】
<フィルム>
本実施形態のフィルムは、本実施形態のフィルムから形成される。
本実施形態のフィルムの厚さは、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましく、また、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、700μm以下であることがさらに好ましく、600μm以下であることが一層好ましく、500μm以下であることがより一層好ましい。
【0044】
本実施形態のフィルムは、透明性に優れていることが好ましい。
具体的には、本実施形態のフィルムは、全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。前記フィルムの全光線透過率の上限は100%が好ましいが、99%以下でも要求性能を満たす。
また、本実施形態のフィルムは、ヘイズが、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが一層好ましく、1.2%以下であることがより一層好ましく、1.0%以下であることがさらに一層好ましい。ヘイズの下限値は0%であることが好ましいが、0.001%以上でも要求性能を満たす。
全光線透過率およびヘイズは後述する実施例の記載に従って測定される。
【0045】
<巻取体>
本実施形態のフィルムは、芯材に巻き取った巻取体とすることができる。
【0046】
<偏光シート>
本実施形態の樹脂組成物から形成されたフィルムないし本実施形態のフィルムは、好ましくは偏光シートの保護フィルム(偏光膜を保護するフィルム)に好ましく用いられる。
本実施形態において、偏光シートは、本実施形態のフィルムと偏光膜を含み、偏光膜、保護フィルムの順に積層されたシートであることが好ましい。すなわち、本実施形態のフィルムは、偏光シートの保護フィルムの少なくとも一方として好ましく用いられる。保護フィルムは、通常は、接着剤を介して偏光膜に貼り合わされている。本実施形態においては、偏光シートの一方の保護フィルムは、本実施形態のフィルムであってもよいし、他の保護フィルムであってもよい。偏光シートの他方の保護フィルムは、公知の偏光シートの保護フィルムを用いることができ、本実施形態のフィルムと同じものであってもよい。偏光膜は、公知のものを採用でき、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素または二色性有機染料を吸着もしくは含浸させたものが例示される。
本実施形態のフィルム・保護フィルムと偏光膜を貼り合わせる接着剤は、公知の接着剤を用いることができ、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤等が挙げられる。中でも、ウレタン系接着剤が好ましい。
接着剤の厚みは、通常1μm以上であり、また、通常30μm以下である。
また、本実施形態の偏光シートは、保護フィルムの外側に、さらに、マスキングフィルム等が設けられていてもよい。
【0047】
また、本実施形態において、本実施形態の偏光シートは、熱曲げ加工した熱曲げ成形体に好ましく用いられる。
本実施形態のフィルムが偏光シートに用いられる場合、偏光膜のいずれの側に設けられていてもよいし、両側に設けられていてもよい。
第一の形態は、本実施形態のフィルムが熱曲げ加工後に、偏光膜の凹面側に位置するように、例えば、
図1の保護フィルム4の側に位置するように配置されることである。
第二の形態は、本実施形態のフィルムが熱曲げ加工後に、偏光膜の凸面側に位置するように、例えば、
図1の保護フィルム3の側に位置するように配置されることである。
第三の形態は、本実施形態のフィルムが偏光膜の両面に位置するように、例えば、
図1の保護フィルム3・4の両方が本実施形態のフィルムであることである。
なお、
図1において、偏光シートはレンズ1、偏光膜2、保護フィルム3・4は曲げ加工がなされているが、曲げ加工がなされていない場合も本実施形態に含まれることは言うまでもない。
本実施形態の偏光シートに用いる保護フィルムは、延伸されていてもよいし、延伸されていなくてもよい。第一の形態においては、延伸されていることが好ましい。まだ、第二の形態においては、延伸されていないことが好ましい。
【0048】
本実施形態において、偏光シートは、液晶表示装置に使用される偏光シート、偏光レンズ(サングラス、スキーゴーグル、度付き眼鏡レンズ、カメラ用ファインダーレンズ)、様々な計器のカバー、自動車のガラス、電車のガラス、車載用表示パネルや電子機器筐体等の偏光シート、車載用インナーミラー、ヘルメットなどのシルバーミラーとして好ましく用いられ、サングラスとして特に好ましく用いられる。
【実施例0049】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0050】
1.原料
A1:G850、アルケマ社製、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンとセバシン酸とアミノウンデカン酸(アミノウンデカン酸の割合は、17mol%である)から合成されたポリアミド樹脂、非晶性ポリアミド樹脂
B1:9040X1、ポリアミド12 19モル%、PTMG 50モル%、PPO 31モル%から構成されたポリエーテルアミドエラストマー、UBE社製
B2:9048X1、ポリアミド12 30モル%、PTMG 43モル%、PPO 27モル%から構成されたポリエーテルアミドエラストマー、UBE社製
B3:PA-50M、重合脂肪酸ポリアミド樹脂、T&K TOKA社製
【0051】
2.実施例1、2、比較例1、2
<樹脂ペレットの製造>
下記表1に示す組成(表1において含有量は質量部で示した)となるように、各成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30α)の根元から投入し、シリンダー温度280℃にて溶融混練を行い、実施例および比較例のペレットを製造した。
【0052】
<フィルムの製造>
上記で得られたペレットを、バレル直径32mm、スクリューのL/D=31.5のベント付き二軸押出機(日本製鋼所社製、「TEX30α」)からなるTダイ溶融押出機を用いて、吐出量15Kg/h、スクリュー回転数250rpmの条件で、溶融状に押し出し、冷却固化し、フィルムを作製した。シリンダー温度は280℃、ロール温度は120℃で行った。厚み300μmのフィルムを得た。
【0053】
<ロール汚れ>
フィルムを製造するために、原料を30kg消費した後のロールについて、目視にて、以下のとおり評価した。評価は、実施例1を評価「B」として、判断することとし、5人の専門家による多数決とした。
A:ロール汚れは認められなかった
B:ロール汚れは多少認められたが、実用可能レベルであった
C:ロール汚れが発生し、実用レベル外であった
【0054】
<ヘイズおよび全光線透過率の測定>
ヘイズメーターを用いて、D65光源10°視野の条件にて、上記で得られた300μm厚のフィルムについて、ヘイズ(%)、および、全光線透過率(%)を測定した。
ヘイズメーターは、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いた。
【0055】
【0056】
上記表1において、B3は、重合脂肪酸ポリアミド樹脂であり、ポリエーテルアミドエラストマーには該当しない。
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物から形成されたフィルムは、透明性に優れ、かつ、製造の際のロール汚れも効果的に抑制された。
これに対し、ポリアミド樹脂(A)のみを用いた場合(比較例1)、あるいは、ポリエーテルアミドエラストマーの代替物を用いた場合(比較例2)、フィルム製造の際にロール汚れが発生してしまった。