(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016208
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】スルフィド類からなる香味改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20250124BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20250124BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20250124BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20250124BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20250124BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20250124BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20250124BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20250124BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20250124BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20250124BHJP
C12G 3/06 20060101ALN20250124BHJP
C12C 5/02 20060101ALN20250124BHJP
【FI】
A61K8/46
A23L2/00 B
A23L27/20 D
A23L29/00
A23L2/56
A23L27/00 Z
A23L5/00 H
A61Q13/00 101
C11B9/00 H
A23L23/00
C12G3/06
C12C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119338
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福井 康大
(72)【発明者】
【氏名】大久保 康隆
(72)【発明者】
【氏名】川角 美央
(72)【発明者】
【氏名】宮本 大司
(72)【発明者】
【氏名】長田 茂也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 詩歩
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
4B047
4B115
4B117
4B128
4C083
4H059
【Fターム(参考)】
4B035LC01
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4H059BA64
4H059BA65
4H059BC10
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4H059EA32
(57)【要約】
【課題】香味改善剤を提供する。
【解決手段】メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含む香味改善剤を提供する。当該香味改善剤は、香料組成物用香味改善剤、飲食品用香味改善剤、果実感改善剤、またはビター感改善剤であってよく、さらに、メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、消費財に添加する工程を含む、消費財の香味改善方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含む、香味改善剤。
【請求項2】
前記香味改善剤が、香料組成物用香味改善剤、飲食品用香味改善剤、果実感改善剤、またはビター感改善剤である、請求項1に記載の香味改善剤。
【請求項3】
メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含む、消費財添加用組成物。
【請求項4】
前記消費財添加用組成物が、香料組成物、飲食品用香味改善組成物、果実感改善組成物、またはビター感改善組成物である、請求項3に記載の消費財添加用組成物。
【請求項5】
メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、消費財に添加する工程を含む、消費財の香味改善方法。
【請求項6】
請求項5に記載の消費財の香味改善方法において、前記消費財が飲食品であって、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の合計濃度が0.01ppt~10ppmの範囲となるように前記化合物を添加し、前記飲食品の香味を改善する、消費財の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルフィド類からなる香味改善剤、これを含有する消費財添加用組成物、および消費財の香味付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、飲食品や香粧品における消費者の要求は高度化および多様化しているが、特に、香りに注目が集まっており、香りの特性が製品の訴求力に重要な要素となっている。例えば、配合によって、香りや風味を改善することや、香りや風味に持続性、天然感、コク感などを付与または増強できる香料化合物への要求が高まっている。
【0003】
これまで、香りや風味を改善可能な様々な組成物が提案されているが、例えば、本出願人は、スルフィド類としては、ビス(3-メチル-2-ブテニル) ジスルフィドおよび/または3-メチル-2-ブテニル 3-メチルブチル ジスルフィドを有効成分とする風味改善剤(特許文献1)を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術も十分有用といえるが、多様化している消費財の香味を改善する要望に対応すべく、消費者製品によりよい香味を付与して既存製品の香味との差別化を可能とする、香味改善効果の高い新たな香味改善剤の開発が期待されている。
【0006】
以上より、本発明の課題は、新規な香味改善剤、消費財添加用組成物、および消費財の香味改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドの各スルフィド類が幅広い香味において優れた香味改善効果を奏することを見出し、本願に係る発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
[1] メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含む、香味改善剤。
[2] 前記香味改善剤が、香料組成物用香味改善剤、飲食品用香味改善剤、果実感改善剤、またはビター感改善剤である、[1]に記載の香味改善剤。
[3] メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含む、消費財添加用組成物。
[4] 前記消費財添加用組成物が、香料組成物、飲食品用香味改善組成物、果実感改善組成物、またはビター感改善組成物である、[3]に記載の消費財添加用組成物。
[5] メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、消費財に添加する工程を含む、消費財の香味改善方法。
[6] [5]に記載の消費財の香味改善方法において、前記消費財が飲食品であって、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の合計濃度が0.01ppt~10ppmの範囲となるように前記化合物を添加し、前記飲食品の香味を改善する、消費財の香味改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な香味改善剤、消費財添加用組成物、および消費財の香味改善方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。本明細書において、「~」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、「濃度(ppm、ppb、ppt)」、「%」は特に断りのない限りそれぞれ「質量濃度」、「質量パーセント濃度」を表すものとする。また、本明細書において、「香味」とは、香気(香り)によって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味する。本明細書において、用語「香味改善(香味を改善する)」とは、香味を付与する(新たに加える)および/または香味を増強することを含み、香味を付与乃至増強した結果、香味が改善されることを意味する。また、本明細書において、飲食品の香味を風味と呼ぶこともある。また、本明細書において、「消費財の香味改善」には、上記「香味」の定義の通り、嗅覚および味覚に寄与する「飲食品等の香味改善」と、嗅覚に寄与するが味覚に寄与しない「香粧品等の香気改善」との両方が含まれる。また、本明細書において、「添加」とは、ある対象に噴霧、滴下などによって単に加えること、およびある対象と混ぜ合わせることの、少なくとも1つを含む。
【0011】
(香味改善剤)
本発明の一実施の形態に係る香味改善剤(以下「本件香味改善剤」ということがある。)は、メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含む。以下、これら4つの化合物を総称して「本件化合物」ということがあり、メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィドおよびジプレニルトリスルフィドをそれぞれ本件化合物1、本件化合物2、本件化合物3および本件化合物4ということがある。
【0012】
本件香味改善剤であるメチルプレニルスルフィドは下記式1で表される化合物であり、ジプレニルスルフィドは下記式2で表される化合物であり、メチルプレニルトリスルフィドは下記式3で表される化合物であり、ジプレニルトリスルフィドは下記式4で表される化合物である。
【0013】
【0014】
本件香味改善剤のうち、式1のメチルプレニルスルフィド(本件化合物1)は、ホップ(Chemistry & Industry (London, United Kingdom) (1980), (15), 624-5ほか)から同定された多数の成分の一つとして検出されており、その香気がニンニク、ゴム様、オニオン様の香気を有することが知られている。
【0015】
式2のジプレニルスルフィド(本件化合物2)は、合法的な大麻の使用において、嗜好性を向上する香気成分の一つとして記載されている(米国特許出願公開第2021/0251268号明細書)が、その具体的な賦香効果については知られていない。
【0016】
式3のメチルプレニルトリスルフィド(本件化合物3)は、特公平5-56340号公報にその製造方法が記載されており、このようなトリスルフィド類はニンニク、ローストナッツ、コーヒーなどから香気成分として検出されるものである旨が記載されているが、メチルプレニルトリスルフィドを含有する天然物の記載、メチルプレニルトリスルフィドの香気や賦香効果についての記載はない。
【0017】
式4のジプレニルトリスルフィド(本件化合物4)は、香辛料や香料として使用可能なことが記載されている(中国特許出願公開第101376640号明細書)が、その具体的な賦香効果については知られていない。
【0018】
本件香味改善剤は、メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィドおよびジプレニルトリスルフィドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含むが、当業者が有する通常の知識に基づいて実質的にこれらの本件化合物のみからなるものであってもよい。この場合、例えば、これらの化合物を試薬として購入した際に残存する不純物を含むことは香味改善に影響のない限り問題ない。
【0019】
なお、本件香味改善剤は、各種香味を改善する効果が優れており、共通して果実感および/またはビター感を上げる効果が著しい。そのため、本件組成物は、果実感改善剤またはビター感改善剤として使用することが好適である。
【0020】
本件香味改善剤の添加対象である消費財としては特に限定されないが、香料組成物を始めとする各種香味改善組成物(香味改善組成物の詳細については後述する。)、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品を例示できる。
【0021】
メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィドおよびジプレニルトリスルフィドの入手方法は特に限定されず、例えば当業者に採用可能な任意の方法で合成して得てもよいし、市販品を購入してよい。入手したメチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィドおよびジプレニルトリスルフィドは、さらに必要に応じてカラムクロマトグラフィまたは減圧蒸留などの手段を用いて精製してもよい。
【0022】
本件香味改善剤の添加対象である香味改善組成物における本件香味改善剤の濃度(本件香味改善剤として本件化合物を2種以上含む場合はそれらの合計濃度。以下同じ。)は、香味改善組成物の香味特性および/または香味改善組成物の添加対象に応じて任意に決定できるが、好ましくは、香味改善組成物の全体質量に対して、1ppb~0.1%(1000ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、10ppb~100ppm、100ppb~100ppm、10ppb~10ppm、100ppb~10ppmのいずれかの範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0023】
本件香味改善剤の添加対象である香味改善組成物としては特に限定されないが、特に好ましいものとして、フルーツ香味改善組成物(具体的には、柑橘類であればオレンジ香味改善組成物、レモン香味改善組成物、グレープフルーツ香味改善組成物、ライム香味改善組成物、ユズ香味改善組成物、カボス香味改善組成物、スダチ香味改善組成物、ハッサク香味改善組成物、シークワーサー香味改善組成物、イヨカン香味改善組成物、金柑香味改善組成物、マンダリン香味改善組成物、みかん香味改善組成物が例示でき、その他フルーツとしてはグレープ香味改善組成物(グレープとは赤ブドウ、白ブドウ、黒ブドウを含む。以下同じ。)、ピーチ香味改善組成物、ストロベリー香味改善組成物、マンゴー香味改善組成物、ペアー(洋ナシ)香味改善組成物、アップル香味改善組成物、パイナップル香味改善組成物、メロン香味改善組成物、バナナ香味改善組成物、ライチ香味改善組成物、パッションフルーツ香味改善組成物、キウイ香味改善組成物、サクランボ香味改善組成物、アンズ(アプリコット)香味改善組成物などが例示できる。)、コーヒー香味改善組成物、茶香味改善組成物(具体的には、紅茶香味改善組成物、緑茶香味改善組成物、抹茶香味改善組成物、焙じ茶香味改善組成物、ウーロン茶香味改善組成物が例示できる。)、ビール香味改善組成物、ワイン香味改善組成物、日本酒香味改善組成物、蒸留酒香味改善組成物(具体的には、焼酎香味改善組成物、ウィスキー香味改善組成物が挙げられる。)、チョコレート香味改善組成物、ココア香味改善組成物、カスタード香味改善組成物、キャラメル(カラメル)香味改善組成物、スパイス・ハーブ香味改善組成物(具体的には、シナモン香味改善組成物、カルダモン香味改善組成物、キャラウェイ香味改善組成物、クミン香味改善組成物、クローブ香味改善組成物、コショウ香味改善組成物、コリアンダー香味改善組成物、サンショウ香味改善組成物、シソ香味改善組成物、ショウガ香味改善組成物、スターアニス香味改善組成物、タイム香味改善組成物、ナツメグ香味改善組成物、バジル香味改善組成物、マジョラム香味改善組成物、ローズマリー香味改善組成物、ローレル香味改善組成物が挙げられる。)、香味野菜香味改善組成物(具体的には、ネギ香味改善組成物、タマネギ香味改善組成物、セロリ香味改善組成物、ニンニク香味改善組成物、ニラ香味改善組成物が挙げられる。)、畜肉香味改善組成物(具体的には、チキン香味改善組成物、ポーク香味改善組成物、ビーフ香味改善組成物が挙げられる。)、魚介香味改善組成物(具体的には、カツオブシや煮干しなどの出汁に用いる各種魚節香味改善組成物、アサリ、シジミ、ハマグリ、ホンビノスなどの各種貝類香味改善組成物が挙げられる。)などが挙げられる。
【0024】
また、具体的な食品素材の香味のほかにも、ロースト感、香ばしさ(焙煎や加熱などにより焦げた感覚を含む。)、ビター(苦み)感、調理感(焼く、炒める、茹でる、蒸す等の加熱調理工程を経て得られる複合的かつ好ましい香味を含む。)、塩味感、グリーン感、完熟感(十分に熟れた果実から感じられる甘さを含む独特の濃厚感を含む。)などの改善効果を奏する。
【0025】
また、えぐ味のある食品のえぐ味を軽減する香味改善効果、ピリピリとした刺激感をまろやかに抑える香味改善効果も奏される。
【0026】
特に、本件香味改善剤がメチルプレニルスルフィド(本件化合物1)を有効成分として含む場合は、巨峰などのソフトフルーツ、キウイやパッションフルーツなどの各種トロピカルフルーツ、ビール、コーヒー、チョコレート、ココア、キャラメル、ネギなどの各種香味野菜、魚介、味噌、大豆の各種香味改善組成物が本件香味改善剤の添加対象の好適な例として挙げられ、さらには、えぐ味のある食品のえぐ味を軽減する香味改善組成物も好適な例として挙げられる。
【0027】
特に、本件香味改善剤がジプレニルスルフィド(本件化合物2)を有効成分として含む場合は、清涼感、ビター感、各種ハーブ類の香味、グリーン感、香ばしさ、コショウ感を付与するための各種香味改善組成物が本件香味改善剤の添加対象の好適な例として挙げられる。
【0028】
特に、本件香味改善剤がメチルプレニルトリスルフィド(本件化合物3)を有効成分として含む場合は、巨峰などのソフトフルーツ、キウイなどの各種トロピカルフルーツ、ビール、コーヒー、チョコレート、ココア、キャラメル、ネギやタマネギなどの各種香味野菜の各種香味改善組成物が本件香味改善剤の添加対象の好適な例として挙げられ、さらにコショウ様の刺激のある食品の刺激感を軽減する香味改善組成物も本件香味改善剤の添加対象の好適な例として挙げられる。また、塩味感の増強効果もあることから、塩味を有する飲食品(とりわけ減塩された塩味飲食品)用香味改善組成物も本件香味改善剤の添加対象の特に好適な例として挙げられる。
【0029】
特に、本件香味改善剤がジプレニルトリスルフィド(本件化合物4)を有効成分として含む場合は、果実の完熟感、コーヒー、チョコレート、ココア、キャラメル、ネギなどの各種香味野菜の各種香味改善組成物が本件香味改善剤の添加対象の好適な例として挙げられる。
【0030】
また、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物の添加対象の物品としては特に限定されないが、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財を例示できる。また、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物は、さらに各種の消費財添加用組成物に添加して、当該消費財添加用組成物に香味を付与して当該消費財添加用組成物の香味を改善することもできる。
【0031】
本件香味改善剤を添加可能な飲食品の風味は特に限定されないが、例として、フルーツ風味飲食品(具体的には、柑橘類であればオレンジ風味飲食品、レモン風味飲食品、グレープフルーツ風味飲食品、ライム風味飲食品、ユズ風味飲食品、カボス風味飲食品、スダチ風味飲食品、ハッサク風味飲食品、シークワーサー風味飲食品、イヨカン風味飲食品、金柑風味飲食品、マンダリン風味飲食品、みかん風味飲食品が例示でき、その他フルーツとしてはグレープ風味飲食品(グレープとは赤ブドウ、白ブドウ、黒ブドウを含む。以下同じ。)、ピーチ風味飲食品、ストロベリー風味飲食品、マンゴー風味飲食品、ペアー(洋ナシ)風味飲食品、アップル風味飲食品、パイナップル風味飲食品、メロン風味飲食品、バナナ風味飲食品、ライチ風味飲食品、パッションフルーツ風味飲食品、キウイ風味飲食品、サクランボ風味飲食品、アンズ(アプリコット)風味飲食品などが例示できる。)、コーヒー風味飲食品、茶風味飲食品(具体的には、紅茶風味飲食品、緑茶風味飲食品、抹茶風味飲食品、焙じ茶風味飲食品、ウーロン茶風味飲食品が例示できる。)、ビール風味飲食品(ビールそのもの、およびビール風味のその他飲料(いわゆるビールテイスト飲料等)を含む。)、ワイン風味飲食品、日本酒風味飲食品、蒸留酒風味飲食品(具体的には、焼酎風味飲食品、ウィスキー風味飲食品が挙げられる。)、チョコレート風味飲食品、ココア風味飲食品、カスタード風味飲食品、キャラメル風味飲食品、スパイス・ハーブ風味飲食品(具体的には、シナモン風味飲食品、カルダモン風味飲食品、キャラウェイ風味飲食品、クミン風味飲食品、クローブ風味飲食品、コショウ風味飲食品、コリアンダー風味飲食品、サンショウ風味飲食品、シソ風味飲食品、ショウガ風味飲食品、スターアニス風味飲食品、タイム風味飲食品、ナツメグ風味飲食品、バジル風味飲食品、マジョラム風味飲食品、ローズマリー風味飲食品、ローレル風味飲食品が挙げられる。)、香味野菜風味飲食品(具体的には、ネギ風味飲食品、タマネギ風味飲食品、セロリ風味飲食品、ニンニク風味飲食品が挙げられる。)、畜肉風味飲食品(具体的には、チキン風味飲食品、ポーク風味飲食品、ビーフ風味飲食品が挙げられる。)、魚介風味飲食品(具体的には、カツオブシや煮干しなどの出汁に用いる各種魚節風味飲食品、アサリ、シジミ、ハマグリ、ホンビノスなどの各種貝類風味飲食品が挙げられる。)が挙げられる。)、およびこれらの2種以上の風味を有する各種飲食品が挙げられる。
【0032】
本件香味改善剤を添加可能な香粧品は特に限定されないが、例として、オーデコロン、オードトワレ、オードパルファム、パルファムなどの香水類;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマードなど)などのヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤などの化粧品類;制汗スプレー、デオドラントシート、デオドラントクリーム、デオドラントスティックなどのデオドラント製品;無機塩類系、清涼系、炭酸ガス系、スキンケア系、酵素系、生薬系などの入浴剤;サンタン製品、サンスクリーン製品などの日焼け化粧品類;フェイス用石鹸や洗顔クリームなどの洗顔料、ボディ用石鹸やボディソープ、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤、柔軟剤、台所用洗剤、清掃用洗剤などの保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内や車内などの芳香消臭剤、ルームフレグランスなどの芳香製品;などを挙げることができる。
【0033】
(香味改善組成物)
本発明の一実施の形態に係る香味改善組成物(以下「本件組成物」ということがある。)は、本件化合物(メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群)から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含む。
【0034】
メチルプレニルスルフィドは、前掲の通り、下記式1で表される化合物であり、ジプレニルスルフィドは下記式2で表される化合物であり、メチルプレニルトリスルフィドは下記式3で表される化合物であり、ジプレニルトリスルフィドは下記式4で表される化合物である。
【0035】
【0036】
メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドの入手方法は、前掲「香味改善剤」の項目で述べた通りである。
【0037】
ここで、香味改善組成物とは、天然香料素材の抽出物、精油および/または合成香料素材を含み、香気および/または呈味を改善する組成物等を含む概念である。例えば、「レモン香味改善組成物」とは、レモンの香味を有する組成物、またはそれ自体はレモンの香味を有さないがレモンの香味を有する物品に添加することでレモン香味を改善できる組成物であって、天然香料素材であるレモン抽出物、精油および合成香料素材(代表的にはシトラールおよびその類縁体、ゲラニオール等)、ならびにこれらのいずれか一方または両方を含むレモン香料組成物(フレーバーまたはフレグランス)、レモン呈味付与組成物等が例示できる。
【0038】
なお、本件組成物は、各種香味を改善する効果が優れており、共通して果実感および/またはビター感を上げる効果が著しい。そのため、本件組成物は、果実感改善剤またはビター感改善剤として使用することが好適である。
【0039】
本件組成物中のメチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドの濃度(これらの化合物を2種以上含む場合はそれらの合計濃度。以下同じ。)は、本件組成物の添加対象である消費財の香味特性に応じて任意に決定できるが、好ましくは、消費財の全体質量に対して、0.01ppt~10ppm、より好ましくは0.1ppt~10ppm、さらに好ましくは1ppt~1ppmの範囲内が挙げられる。例えば、下限値を0.01ppt、0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれか、上限値を10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、0.1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内でよいが、これらの濃度範囲に限定されない。より具体的には、下限値を100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれかとし、上限値を10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0040】
本件組成物の添加対象の消費財としては特に限定されないが、他の任意の香味付与組成物(代表的には香料組成物など)、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などを例示でき、中でも飲食品であることが好ましい。消費財の具体例は、前掲「香味改善剤」の項目で述べた通りである。
【0041】
例えば、本件組成物は、他の香味付与組成物に添加して、その香味付与組成物の香味を改善することができる。さらに、その香味付与組成物を本件組成物として飲食品や香粧品などの消費財に添加して、添加対象の消費財の香味を改善することができる。
【0042】
また、本件組成物自体を飲食品や香粧品に添加して、添加対象の香味を改善してもよい。
【0043】
飲食品の場合、フルーツ風味飲食品(具体的には、柑橘類であればオレンジ風味飲食品、レモン風味飲食品、グレープフルーツ風味飲食品、ライム風味飲食品、ユズ風味飲食品、カボス風味飲食品、スダチ風味飲食品、ハッサク風味飲食品、シークワーサー風味飲食品、イヨカン風味飲食品、金柑風味飲食品、マンダリン風味飲食品、みかん風味飲食品が例示でき、その他フルーツとしてはグレープ風味飲食品(グレープとは赤ブドウ、白ブドウ、黒ブドウを含む。以下同じ。)、ピーチ風味飲食品、ストロベリー風味飲食品、マンゴー風味飲食品、ペアー(洋ナシ)風味飲食品、アップル風味飲食品、パイナップル風味飲食品、メロン風味飲食品、バナナ風味飲食品、ライチ風味飲食品、パッションフルーツ風味飲食品、キウイ風味飲食品、サクランボ風味飲食品、アンズ(アプリコット)風味飲食品などが例示できる。)、コーヒー風味飲食品、茶風味飲食品(具体的には、紅茶風味飲食品、緑茶風味飲食品、抹茶風味飲食品、焙じ茶風味飲食品、ウーロン茶風味飲食品が例示できる。)、ビール風味飲食品、ワイン風味飲食品、日本酒風味飲食品、蒸留酒風味飲食品(具体的には、焼酎風味飲食品、ウィスキー風味飲食品が挙げられる。)、チョコレート風味飲食品、ココア風味飲食品、カスタード風味飲食品、キャラメル風味飲食品、スパイス・ハーブ風味飲食品(具体的には、シナモン風味飲食品、カルダモン風味飲食品、キャラウェイ風味飲食品、クミン風味飲食品、クローブ風味飲食品、コショウ風味飲食品、コリアンダー風味飲食品、サンショウ風味飲食品、シソ風味飲食品、ショウガ風味飲食品、スターアニス風味飲食品、タイム風味飲食品、ナツメグ風味飲食品、バジル風味飲食品、マジョラム風味飲食品、ローズマリー風味飲食品、ローレル風味飲食品が挙げられる。)、香味野菜風味飲食品(具体的には、ネギ風味飲食品、タマネギ風味飲食品、セロリ風味飲食品、ニンニク風味飲食品、ニラ風味飲食品が挙げられる。)、畜肉風味飲食品(具体的には、チキン風味飲食品、ポーク風味飲食品、ビーフ風味飲食品が挙げられる。)、魚介風味飲食品(具体的には、カツオブシや煮干しなどの出汁に用いる各種魚節風味飲食品、アサリ、シジミ、ハマグリ、ホンビノスなどの各種貝類風味飲食品が挙げられる。)、およびこれらの2種以上の風味を有する各種飲食品が挙げられる。が好適な例として挙げられる。
【0044】
本件組成物がメチルプレニルスルフィド(本件化合物1)を有効成分として含む場合は、巨峰などのソフトフルーツ、キウイやパッションフルーツなどの各種トロピカルフルーツ、ビール、コーヒー、チョコレート、ココア、キャラメル、ネギなどの各種香味野菜、魚介、味噌、大豆の各風味の飲食品が特に好適な例として挙げられ、さらにえぐ味のある飲食品も、本件組成物に当該飲食品のえぐ味を軽減する効果があることから、特に好適な例として挙げられる。
【0045】
本件組成物がジプレニルスルフィド(本件化合物2)を有効成分として含む場合は、清涼感、ビター感、各種ハーブ類の香味、グリーン感、香ばしさ、コショウ感の少なくとも1種の付与によって香味が改善される各種風味の飲食品が特に好適な例として挙げられる。
【0046】
本件組成物がメチルプレニルトリスルフィド(本件化合物3)を有効成分として含む場合は、巨峰などのソフトフルーツ、キウイなどの各種トロピカルフルーツ、ビール、コーヒー、チョコレート、ココア、キャラメル、ネギやタマネギなどの各種香味野菜の各風味の飲食品が特に好適な例として挙げられ、さらにコショウ様の刺激のある飲食品も、本件組成物に当該飲食品の刺激感を軽減する効果があることから、特に好適な例として挙げられる。また、塩味感の増強効果もあることから、塩味を有する飲食品(とりわけ減塩された塩味飲食品)も特に好適な例として挙げられる。
【0047】
本件組成物がジプレニルトリスルフィド(本件化合物4)を有効成分として含む場合は、果実(特に果実の完熟感の付与によって香味が改善される場合)、コーヒー、チョコレート、ココア、キャラメル、ネギなどの各種香味野菜の各風味の飲食品が特に好適な例として挙げられる。
【0048】
本件組成物を他の香味付与組成物の一態様である香料組成物に添加する場合において、当該香料組成物中の、本件組成物の有効成分である本件化合物の濃度(本件化合物を2種以上含む場合はそれらの合計濃度。以下同じ。)は、香料組成物の香気特性に応じて任意に決定できるが、好ましくは、香料組成物の全体質量に対して、1ppb~0.1%(1000ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、10ppb~100ppm、100ppb~100ppm、10ppb~10ppm、100ppb~10ppmのいずれかの範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0049】
本件組成物は、本件化合物(メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群)のいずれか1つ以上のみで他の成分を含まないように構成してもよいし、メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィドまたはジプレニルトリスルフィドのいずれか1つ以上を所定量含んでいればそれ以外の成分を含んでいてもよい。例えば、本件組成物がメチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィドまたはジプレニルトリスルフィド以外の成分として溶媒および/または他の香味付与成分を含む場合、本件組成物自体を香味改善組成物の一態様である香料組成物として使用することもできる。
【0050】
そのような香味付与成分の例として、各種類の香料化合物、天然精油、香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類などを例示することができる。
【0051】
香料化合物等の例としては、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料(平成12年1月14日発行)」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)」、および「合成香料 化学と商品知識(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)」に記載されているものを挙げる天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
【0052】
合成香料化合物の具体例として、炭化水素化合物としては、α-ピネン、β-ピネン、γ-テルピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5-ウンデカトリエンなどが挙げられる。
【0053】
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3-オクタノール、ヘキサノールなどの飽和アルコール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、プレノール、2,6-ノナジエノールなどの不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、α-ターピネオール、テルピネン-4-オール、ボルネオールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0054】
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナールなどの飽和アルデヒド、(E)-2-ヘキセナール、2,4-オクタジエナールなどの不飽和アルデヒド、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p-トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0055】
ケトン化合物としては、2-ヘプタノン、2-ウンデカノン、1-オクテン-3-オン、アセトイン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン(メチルヘプテノン)などの飽和および不飽和ケトン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンなどのジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α-イオノン、β-イオノン、β-ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
【0056】
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8-シネオールなどが挙げられる。
【0057】
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸オクチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2-メチル酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ酪酸2-メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルピニル、酢酸ネリルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3-メチル-2-フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
【0058】
ラクトン化合物としては、γ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7-デセン-4-オリド、2-デセン-5-オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
【0059】
酸化合物としては、酢酸、酪酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0060】
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
【0061】
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-メチル-1-ブタンチオール、3-メルカプトヘキサノール、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、酢酸3-メルカプトヘキシル、p-メンタ-8-チオール-3-オンおよびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
【0062】
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
【0063】
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼまたはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
【0064】
本件組成物(一態様としての香料組成物)の形態としては、本件組成物その他必要に応じて含まれる他の成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、またはその他固体製剤(固形脂など)などが好ましい。
【0065】
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはプロピレングリコールが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
【0066】
また、乳化製剤とするためには、本件組成物を、水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。本件組成物の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、加工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸およびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、またはカゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物1質量部または本件組成物1質量部に対し、約0.01~約100質量部、好ましくは約0.1~約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化状態を安定させるため、係る乳化液には水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を添加することができる。
【0067】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜添加することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0068】
本件組成物は、上記以外に、必要に応じて、消費財添加用の各種組成物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどの保留剤を含有することができる。
【0069】
(消費財)
本発明の一実施の形態に係る消費財(以下、本件消費財ということがある。)は、本件香味改善剤または本件組成物を所定量含むものである。本件消費財は、本件香味改善剤または本件組成物が有効量添加されているため、本発明によって香味が改善された消費財を提供することができる。
【0070】
本件消費財の具体例は、前掲「香味改善剤」の項目で述べた「本件香味改善剤を添加可能な飲食品」、および「本件香味改善剤を添加可能な香粧品」の通りである。
【0071】
本件消費財において、消費財に対する本件香味改善剤または本件組成物の添加量は、消費財の香味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定でき、有効成分であるメチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドの濃度(これらの化合物を2種以上含む場合はそれらの合計濃度。以下同じ。)を基準として添加量を調製すればよい。メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドの濃度の具体例は、前掲「香味改善剤」の項目で述べた通りである。
【0072】
(消費財の香味改善方法)
本発明の一実施の形態に係る消費財の香味改善方法は、本件化合物(メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドからなる群)から選択される1種または2種以上の化合物を、消費財に添加する工程を含む。
【0073】
本件化合物を消費財に有効量添加することで、その消費財の香味を改善することができる。本件化合物は本件香味改善剤として添加することもできるし、本件組成物の有効成分として添加することもできる。したがって、本実施の形態に係る消費財の香味改善方法は、本件香味改善剤または本件組成物を、消費財に添加する工程を含む、と言い換えることができる。
【0074】
本実施の形態に係る消費財の香味改善方法において、消費財に対する本件化合物の添加量は、本件化合物によって香味が改善される有効量であればよく、消費財の種類や形態に応じて任意に設定することができる。この場合において、消費財中の本件化合物の濃度の例としては、前掲「香味改善剤」の項目で述べた通りである。
【0075】
消費財の香味改善方法において、本件化合物(本件香味改善剤または本件組成物)を消費財に添加する方法は特に限定されない。また、本件化合物(本件香味改善剤または本件組成物)を消費財に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【0076】
本実施の形態に係る消費財の香味改善方法において、好ましくは、前記消費財が飲食品であって、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の合計濃度が0.01ppt~10ppmの範囲となるように前記化合物を添加する。これにより、前記飲食品の香味を好適に改善することができる。特に好ましくは、飲食品の果実感および/または飲食品のビター感を改善することができる。
【0077】
合計濃度の具体例として、0.01ppt~10ppm、より好ましくは0.1ppt~10ppm、さらに好ましくは1ppt~1ppmの範囲内が挙げられる。例えば、下限値を0.01ppt、0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれか、上限値を10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、0.1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内でよいが、これらの濃度範囲に限定されない。より具体的には、下限値を100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれかとし、上限値を10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【実施例0078】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]香料組成物への添加効果
メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドを、レモン香料組成物(香味改善組成物)、グレープ香料組成物(香味改善組成物)、ストロベリー香料組成物(香味改善組成物)に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0080】
市販の本件化合物1~4(すなわち、メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィド)をそれぞれ単独で含む1%エタノール溶液(以下、総称して本件化合物の1%エタノール溶液ということがある。)および本件化合物1~4をそれぞれ単独で含む1%プロピレングリコール溶液(以下、総称して本件化合物の1%プロピレングリコール溶液ということがある。)をそれぞれ調製した。これらの溶液は、以下の実施例でも使用する。
【0081】
[実施例1-1]グレープフルーツ香料組成物の調整
下記表1の処方に従って、グレープフルーツ基本調合香料組成物を調製した。
【0082】
【0083】
グレープフルーツ基本調合香料組成物に、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を、グレープフルーツ基本調合香料組成物中の本件化合物の濃度が下記表4に示す濃度になるように添加し、本発明品1-1~1-12の香料組成物を調製した。そして、得られた本発明品1-1~1-12の香料組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないグレープフルーツ基本調合香料組成物を対照品1-1として、本発明品1-1~1-12を対照品1-1と比べた際の香気についてコメントさせた。
【0084】
[実施例1-2]グレープ香料組成物の調整
下記表2の処方に従って、グレープ(赤ブドウ)基本調合香料組成物を調製した。
【0085】
【0086】
グレープ基本調合香料組成物に、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を、グレープ基本調合香料組成物中の本件化合物の濃度が下記表4に示す濃度になるように添加し、本発明品1-13~1-24の香料組成物を調製した。そして、得られた本発明品1-13~1-24の香料組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないグレープ基本調合香料組成物を対照品1-2として、本発明品1-13~1-24を対照品1-2と比べた際の香気についてコメントさせた。
【0087】
[実施例1-3]ストロベリー香料組成物の調整
下記表3の処方に従って、ストロベリー基本調合香料組成物を調製した。
【0088】
【0089】
ストロベリー基本調合香料組成物に、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を、ストロベリー基本調合香料組成物中の本件化合物の濃度が下記表4に示す濃度になるように添加し、本発明品1-25~1-36の香料組成物を調製した。そして、得られた本発明品1-25~1-36の香料組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないストロベリー基本調合香料組成物を対照品1-3として、本発明品1-25~1-36を対照品1-3と比べた際の香気についてコメントさせた。
【0090】
[実施例1-4]各種香料組成物の官能評価
実施例1-1~1-3(本発明品1-1~1-36)の官能評価の結果を下記表4に示す。
【0091】
【0092】
表4に示すように、本件化合物は、各種香料組成物の香気を改善することが確認された。
【0093】
[実施例2]各種フルーツ風味飲食品への添加効果
メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドを、キウイジュース、パッションフルーツジュースの各種飲料に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0094】
[実施例2-1]キウイジュースの調製
市販のキウイジュースに、本件化合物が下記表5の本発明品2-1~2-16に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品2-1~2-16のキウイジュースを調製した。
【0095】
そして、得られた本発明品2-1~2-16のキウイジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないキウイジュースを対照品2-1として、本発明品2-1~2-16を対照品2-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2-1と比べた果実感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。ここで、果実感とは、実際にキウイ果実を食したように感じられる感覚を含むものとした。
<果実感に関する評価基準>
対照品2-1に比べて著しく増加した:5点
対照品2-1に比べて大きく増加した:4点
対照品2-1に比べてある程度増加した:3点
対照品2-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品2-1と同等である:1点
[実施例2-2]パッションフルーツジュースの調製
市販のパッションフルーツジュースに、本件化合物が下記表5の本発明品2-17~2-32に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品2-17~2-32のパッションフルーツジュースを調製した。
【0096】
そして、得られた本発明品2-17~2-32のパッションフルーツジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないパッションフルーツジュースを対照品2-2として、本発明品2-17~2-32を対照品2-2と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2-2と比べた果実感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。ここで、果実感とは、実際にパッションフルーツ果実を食したように感じられる感覚を含むものとした。
<果実感に関する評価基準>
対照品2-2に比べて著しく増加した:5点
対照品2-2に比べて大きく増加した:4点
対照品2-2に比べてある程度増加した:3点
対照品2-2に比べてわずかに増加した:2点
対照品2-2と同等である:1点
[実施例2-3]各種飲食品の官能評価
実施例2-1~2-2(本発明品2-1~2-32)の官能評価の結果を表5に示す。
【0097】
【0098】
表5に示すように、本件化合物は、各種フルーツ香味を改善することが確認された。
【0099】
[実施例3]各種飲食品への添加効果
メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドを、コーヒー、ミルクココア、キャラメルミルクの各種飲料に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0100】
[実施例3-1]コーヒーの調製
市販の無糖ブラックコーヒーに、本件化合物が下記表6の本発明品3-1~3-16に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品3-1~3-16のコーヒーを調製した。
【0101】
そして、得られた本発明品3-1~3-16のコーヒーについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないコーヒーを対照品3-1として、本発明品3-1~3-16を対照品3-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3-1と比べたビター感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。ここで、ビター感とは、苦みのある香ばしさを想起させる感覚を含むものとした。
<ビター感に関する評価基準>
対照品3-1に比べて著しく増加した:5点
対照品3-1に比べて大きく増加した:4点
対照品3-1に比べてある程度増加した:3点
対照品3-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品3-1と同等である:1点
[実施例3-2]ミルクココアの調製
市販のミルクココアに、本件化合物が下記表6の本発明品3-17~3-32に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品3-17~3-32のミルクココアを調製した。
【0102】
そして、得られた本発明品3-17~3-32のミルクココアについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないミルクココアを対照品3-2として、本発明品3-17~3-32を対照品3-2と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3-2と比べたビター感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。ここで、ビター感とは、苦みのある香ばしさを想起させる感覚を含むものとした。
<ビター感に関する評価基準>
対照品3-2に比べて著しく増加した:5点
対照品3-2に比べて大きく増加した:4点
対照品3-2に比べてある程度増加した:3点
対照品3-2に比べてわずかに増加した:2点
対照品3-2と同等である:1点
[実施例3-3]キャラメルミルクの調製
市販のキャラメルミルクに、本件化合物が下記表6の本発明品3-33~3-48に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品3-33~3-48のキャラメルミルクを調製した。
【0103】
そして、得られた本発明品3-33~3-48のキャラメルミルクについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないキャラメルミルクを対照品3-3として、本発明品3-33~3-48を対照品3-3と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3-3と比べたキャラメル感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。ここで、キャラメル感とは、甘くやや苦みのある香ばしさを想起させる感覚を含むものとした。
<キャラメル感に関する評価基準>
対照品3-3に比べて著しく増加した:5点
対照品3-3に比べて大きく増加した:4点
対照品3-3に比べてある程度増加した:3点
対照品3-3に比べてわずかに増加した:2点
対照品3-3と同等である:1点
[実施例3-4]各種飲食品の官能評価
実施例3-1~3-3(本発明品3-1~3-48)の官能評価の結果を表6に示す。
【0104】
【0105】
表6に示すように、本件化合物は、各種香味を改善することが確認された。
【0106】
[実施例4]各種スープへの添加効果
メチルプレニルスルフィド、ジプレニルスルフィド、メチルプレニルトリスルフィド、ジプレニルトリスルフィドを、香味野菜スープ、ラーメンスープに添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0107】
[実施例4-1]香味野菜スープの調製
市販の粉末香味野菜スープ(鶏ガラ、ネギ、ニンニクを原材料に含むもの)を湯に溶かして香味野菜スープを調製し、そこに、本件化合物が下記表7の本発明品4-1~4-16に対応する各濃度となるように本件化合物の1%エタノール溶液を添加して、本発明品4-1~4-16の香味野菜スープを調製した。
【0108】
そして、得られた本発明品4-1~4-16の香味野菜スープについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していない香味野菜スープを対照品4-1として、本発明品4-1~4-16を対照品4-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品4-1と比べた飲みごたえ感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。ここで、飲みごたえ感とは、香味がより強くなりコクがあると感じられる感覚を含むものとした。
<飲みごたえ感に関する評価基準>
対照品4-1に比べて著しく増加した:5点
対照品4-1に比べて大きく増加した:4点
対照品4-1に比べてある程度増加した:3点
対照品4-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品4-1と同等である:1点
[実施例4-2]醤油スープの調製
市販の粉末醤油ラーメンスープ(魚介だし、鶏だし、タマネギ、コショウを原材料に含む醤油風味のものであって、減塩のため食塩使用量を減らしたもの)を湯に溶かしてラーメンスープを調製し、そこに、本件化合物が下記表7の本発明品4-17~4-32に対応する各濃度となるように本件化合物の1%エタノール溶液を添加して、本発明品4-17~4-32のラーメンスープを調製した。
【0109】
そして、得られた本発明品4-17~4-32のラーメンスープについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないラーメンスープを対照品4-2として、本発明品4-17~4-32を対照品4-2と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品4-2と比べた飲みごたえ感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。ここで、飲みごたえ感とは、香味がより強くなりコクがあると感じられる感覚を含むものとした。
<飲みごたえ感に関する評価基準>
対照品4-2に比べて著しく増加した:5点
対照品4-2に比べて大きく増加した:4点
対照品4-2に比べてある程度増加した:3点
対照品4-2に比べてわずかに増加した:2点
対照品4-2と同等である:1点
[実施例4-3]各種スープの官能評価
実施例4-1~4-2(本発明品4-1~4-32)の官能評価の結果を表7に示す。
【0110】
【0111】
表7に示すように、本件化合物は、各種香味を改善することが確認された。
【0112】
[実施例5] ビールテイスト飲料への添加効果
市販のビールテイスト飲料に、本件化合物が下記表8の本発明品5-1~5-16に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を添加し、本発明品5-1~5-16のビールテイスト飲料を調製した。
【0113】
そして、得られた本発明品5-1~5-12のビールテイスト飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないビールテイスト飲料を対照品5-1として、本発明品5-1~5-16を対照品5-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品5-1と比べた飲みごたえ感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<飲みごたえ感に関する評価基準>
対照品5-1に比べて著しく増加した:5点
対照品5-1に比べて大きく増加した:4点
対照品5-1に比べてある程度増加した:3点
対照品5-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品5-1と同等である:1点
【0114】
【0115】
表8に示すように、本件化合物は、ビール風味を改善することが確認された。
【0116】
[実施例6]香粧品への添加効果
マスカットの香りと冠した市販の洗濯用液体洗剤を用意し、それに対し、本件化合物が100ppbまたは1ppbの濃度となるように本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品6-1~6-4の洗濯用洗剤を調製した。
【0117】
そして、得られた本発明品6-1~6-4について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していない上記市販の洗濯用液体洗剤を対照品6として、本発明品6-1~6-4をそれぞれ対応する対照品6と比べた際の香気の違いについてパネリストにコメントさせた。
【0118】
本発明品6-1~6-4の官能評価の結果を表9に示す。
【0119】
【0120】
表9に示すように、本件化合物は、香粧品においても香気改善に有効であることが確認された。
【0121】
[実施例7]その他の添加対象例
上に挙げた実施例に記載の各種消費財のほか、本発明によって、下記表10に例示するような飲食品の香味に特に好適に改善できる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0122】