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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016212
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】分離装置、排水桝、及び分離方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
E03F5/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119344
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】392027900
【氏名又は名称】株式会社イトーヨーギョー
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】廣田 義和
(72)【発明者】
【氏名】高岡 薫生
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063DA06
2D063DA07
2D063DB04
(57)【要約】
【課題】メンテナンス負担の軽減を図り得る、合成樹脂の破片を捕捉する分離装置を提供する。
【解決手段】排水桝に設置され、合成樹脂の破片を含む廃水から前記合成樹脂の破片を分離する分離装置であって、隔壁とエルボとを備える。前記隔壁は、前記排水桝の底面に接するように構成された第1端部と、前記排水桝の側壁に接するように構成され、前記第1端部と交差する第2端部と、前記排水桝の前記側壁に接するように構成され、前記第1端部と交差し、前記第2端部と対向する第3端部と、接続孔と、を有する。前記エルボは、流出側開口部分が前記接続孔に接続され、流入側開口部分が前記第1端部の方向に向かう。下記に定義する第1距離は、下記に定義する第2距離よりも大きい。第1距離:前記第1端部から、前記接続孔の周縁部分における前記第1端部に最も近い部分までの距離。第2距離:前記第1端部から、前記エルボの流入側開口部分まで距離。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水桝に設置され、合成樹脂の破片を含む廃水から前記合成樹脂の破片を分離する分離装置であって、隔壁とエルボとを備え、
前記隔壁は、
前記排水桝の底面に接するように構成された第1端部と、
前記排水桝の側壁に接するように構成され、前記第1端部と交差する第2端部と、
前記排水桝の前記側壁に接するように構成され、前記第1端部と交差し、前記第2端部と対向する第3端部と、
接続孔と、を有し、
前記エルボは、
流出側開口部分が前記接続孔に接続され、
流入側開口部分が前記第1端部の方向に向かい、
下記に定義する第1距離は、下記に定義する第2距離よりも大きい、分離装置。
第1距離:前記第1端部から、前記接続孔の周縁部分における前記第1端部に最も近い部分までの距離
第2距離:前記第1端部から、前記エルボの流入側開口部分まで距離
【請求項2】
前記隔壁は、前記第2端部と前記第3端部とが、前記エルボの側とは反対側へ曲げられている請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記隔壁は、下記に定義する第4端部が、前記エルボの側とは反対側へ曲げられている、
請求項2に記載の分離装置。
第4端部:前記排水桝の前記側壁に接するように構成され、前記第1端部に対向する端部
【請求項4】
前記隔壁の前記第1端部から前記第3端部のうち、前記排水桝に接する部分には、透水性の部材が設けられている、請求項2に記載の分離装置。
【請求項5】
前記エルボは、
前記エルボの流入側開口部分に連結される第1フィルタを含む、
請求項1に記載の分離装置。
【請求項6】
前記エルボは、
前記第1フィルタの内側に配置され、前記流入側開口部分から前記第1端部に接近する方向へ、前記第1端部から所定の距離離間した位置まで延伸する延長配管を含む、
請求項5に記載の分離装置。
【請求項7】
前記エルボは、
前記エルボから分岐し、前記第1端部とは反対側へ延伸する枝配管と、
前記枝配管の流入側開口部分に連結される第2フィルタと、を更に含む、
請求項1に記載の分離装置。
【請求項8】
前記隔壁は、
前記第1端部に対向する側に、前記排水桝の側壁に対し開口するように構成された越流端部を有する、
請求項1に記載の分離装置。
【請求項9】
前記隔壁は、
前記越流端部に、前記隔壁から離れる方向に前記第1端部側へ傾斜する第1傾斜板が設けられている、請求項8に記載の分離装置。
【請求項10】
前記隔壁は、
前記第1傾斜板から前記隔壁の鉛直方向に離間し、前記第1傾斜板に平行な複数の第2傾斜板が設けられている、請求項9に記載の分離装置。
【請求項11】
前記隔壁は、前記越流端部から、前記第1端部から離れる方向に向かって延伸される第3フィルタを更に含む、
請求項8に記載の分離装置。
【請求項12】
前記分離装置は、中蓋を更に含み、
前記中蓋は、外縁が前記排水桝の側壁に接し、下記に定義する排水溝の底面と上端との間に位置するように構成され、前記越流端部の周縁に沿った切り欠き部を有し、前記切り欠き部と前記越流端部とが接するように、前記隔壁へ接続される、
請求項8に記載の分離装置。
排水溝:前記排水桝の前記側壁に接続され、前記合成樹脂の破片を含む廃水を前記排水桝に案内する排水溝
【請求項13】
前記前記中蓋は、前記エルボがある側に水路を有し、
前記水路は、前記排水溝の端部に連接可能に構成された流入端と、前記エルボに向かって開く流出孔とを有する、
請求項12に記載の分離装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の分離装置を備えた排水桝であって、
前記分離装置は、前記エルボある側が、前記排水桝において廃水が流入する側へ向けられ、前記エルボがある側の反対側が、前記排水桝において廃水が流出する側へ向けられて配置される、
排水桝。
【請求項15】
合成樹脂の破片を含む廃水から前記合成樹脂の破片を分離する分離方法であって、
前記廃水を請求項14に記載の排水桝へ流入させるステップと、
前記排水桝により前記廃水から合成樹脂の破片を分離させるステップと、
前記合成樹脂の破片が分離された前記廃水を、前記排水桝の排水側開口部から排水させるステップと、を含む、
分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置、排水桝、及び分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋に流出するマイクロプラスチックが、問題となっている。運動施設等に使用される人工芝は、運動施設の使用に伴い人工芝の一部が分断され破片となり、廃水とともに運動施設外へ排出される。このため人工芝の破片は、海洋に流出するマイクロプラスチックの原因の一つとして挙げられている。そこで人工芝の破片を廃水から分離するために、運動施設の排水系統へフィルタを設置することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、運動場の周囲に設けられた側溝と、側溝に流入した雨水が集水される貯留槽と、貯留槽の下側に備えられ、鉛直方向に対して直角に交わる水平面上に、貯留槽の内部空間を貯留空間部と、貯留空間部よりも下側の排水空間部と、に仕切り、雨水を濾過する着脱可能なフィルタと、前記排水空間部に備えられた第一排水部と、前記側溝よりも下側であって、前記貯留空間部の上方に備えられた第二排水部と、を備える貯留排水構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-57057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、人工芝の破片を含む廃水が当該貯留排水構造へ流入した場合、人工芝の破片はフィルタにより、廃水から分離されるものの、短時間で分離された人工芝の破片によりフィルタが詰まるおそれがあり、頻繁にフィルタの清掃をする必要がある。このため、メンテナンス負担の軽減が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の分離装置は、排水桝に設置され、合成樹脂の破片を含む廃水から前記合成樹脂の破片を分離する分離装置であって、隔壁とエルボとを備え、前記隔壁は、前記排水桝の底面に接するように構成された第1端部と、前記排水桝の側壁に接するように構成され、前記第1端部と交差する第2端部と、前記排水桝の前記側壁に接するように構成され、前記第1端部と交差し、前記第2端部と対向する第3端部と、接続孔とを有し、前記廃水と前記合成樹脂の破片が分離された前記廃水とを隔てるための隔壁と、流出側開口部分が前記接続孔に接続され、流入側開口部分が前記第1端部に向かって屈曲し延伸するエルボと、を備え、下記に定義する第1距離は、下記に定義する第2距離よりも大きい。
第1距離:前記第1端部から、前記接続孔の周縁部分における前記第1端部に最も近い部分までの距離
第2距離:前記第1端部から、前記エルボの流入側開口部分まで距離
【0007】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備える分離装置として実現されるだけでなく、上記の分離装置を備えた排水桝、及び上記の分離装置を備えた排水桝を用いた分離方法として実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、メンテナンス負担の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】運動施設の排水設備の概要の一例を示す斜視図である。
図2】実施形態1に係る排水桝の概要の一例を示す概要図である。
図3】実施形態1に係る分離装置の一例の斜視図である。
図4】実施形態1に係る分離装置の断面図である。
図5】実施形態1に係る分離装置を排水桝へ設置する態様を示す斜視図である。
図6】廃水が流入したときの、排水桝の状態の一例を示す模式図である。
図7】排水桝の清掃方法の一例を示す模式図である。
図8】実施形態2に係る分離装置の一例を示す断面図である。
図9】実施形態3に係る分離装置の一例をエルボがある側から見た斜視図である。
図10】実施形態4に係る分離装置の一例をエルボがある側から見た斜視図である。
図11】実施形態5に係る分離装置の一例をエルボがある側から見た斜視図である。
図12】実施形態6に係る分離装置の一例を示す斜視図である。
図13】実施形態7に係る分離装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の分離装置は、排水桝に設置され、合成樹脂の破片を含む廃水から前記合成樹脂の破片を分離する分離装置であって、隔壁とエルボとを備え、前記隔壁は、前記排水桝の底面に接するように構成された第1端部と、前記排水桝の側壁に接するように構成され前記第1端部と交差する第2端部と、前記排水桝の前記側壁に接するように構成され前記第1端部と交差し前記第2端部と対向する第3端部と、接続孔とを有し、前記エルボは、流出側開口部分が前記接続孔に接続され、流入側開口部分が前記第1端部に向い、下記に定義する第1距離は、下記に定義する第2距離よりも大きい。
第1距離:前記第1端部から、前記接続孔の周縁部分における前記第1端部に最も近い部分までの距離。
第2距離:前記第1端部から、前記エルボの流入側開口部分まで距離。
これにより、メンテナンス負担の軽減を図ることができる。
【0012】
(2)上記(1)において、前記隔壁は、前記第2端部と前記第3端部とが、前記エルボの側とは反対側へ曲げられていてもよい。これにより、分離装置は、多様な大きさの排水桝へ分離装置を設置することが可能となる。
【0013】
(3) 上記(2)において、前記隔壁は、下記に定義する第4端部が、前記エルボの側とは反対側へ曲げられていてもよい。
第4端部:前記排水桝の側壁に接するように構成され、前記第1端部に対向する端部。
これにより、分離装置が水没するような大量の廃水が排水桝へ流入しても、合成樹脂の破片を含んだ廃水が流出することが抑制される。
【0014】
(4) 上記(2)において、前記隔壁の前記第1端部から前記第3端部のうち、前記排水桝に接する部分には、透水性の部材が設けられていてもよい。これにより、排水桝へ廃水が長期間流れ込まない場合であっても、排水桝へ廃水が滞留せず、ボウフラ等の発生が抑制される。
【0015】
(5) 上記(1)において、前記エルボは、前記エルボの流入側開口部分に連結される第1フィルタを含んでもよい。これにより、廃水から分離した合成樹脂の破片が排水桝の下流側へ流出することが更に抑制される。
【0016】
(6) 上記(5)において、前記エルボは、前記第1フィルタの内側に配置され、前記流入側開口部分から前記第1端部に接近する方向へ、前記第1端部から所定の距離離間した位置まで延伸する延長配管を含んでもよい。これにより、第1フィルタの底に溜まる土砂を排出することができる。
【0017】
(7) 上記(1)において、前記エルボは、前記エルボから分岐し、前記第1端部とは反対側へ延伸する枝配管と、前記枝配管の流入側開口部分に連結される第2フィルタと、を更に含んでもよい。これにより、より大量の廃水から合成樹脂の破片を分離することができる。
【0018】
(8) 上記(1)において、前記隔壁は、前記第1端部に対向する側に、前記排水桝の側壁に対し開口するように構成された越流端部を有してもよい。これにより、大量の廃水が排水桝へ流入した場合であっても、排水桝から廃水が溢れることが抑制される。
【0019】
(9) 上記(8)において、前記隔壁は、前記越流端部に、前記隔壁から離れる方向に前記第1端部側へ傾斜する第1傾斜板が設けられていてもよい。これにより、オーバフローした廃水が越流端部から流出する場合であっても、合成樹脂の破片が流出することが抑制される。
【0020】
(10) 上記(9)において、前記隔壁は、前記第1傾斜板から前記隔壁の鉛直方向に離間し、前記第1傾斜板に平行な複数の第2傾斜板が設けられていてもよい。これにより、オーバフローした廃水が越流端部から流出する場合であっても、合成樹脂の破片が流出することがさらに抑制される。
【0021】
(11) 上記(8)において、前記隔壁は、前記越流端部から、前記第1端部から離れる方向に向かって延伸される第3フィルタを更に含んでもよい。これにより、オーバフローした廃水が越流端部から流出する場合であっても、合成樹脂の破片が流出することが抑制される。
【0022】
(12) 上記(8)において、前記分離装置は、更に中蓋を含んでもよい。前記中蓋は、外縁が前記排水桝の側壁に接し、下記に定義する排水溝の底面と上端との間に位置するように構成され、前記越流端部の周縁に沿った切り欠き部を有し、前記切り欠き部と前記越流端部とが接するように、前記隔壁へ接続される。
排水溝: 前記排水桝の前記側壁に接続され、前記合成樹脂の破片を含む廃水を前記排水桝に案内する排水溝
これにより、大量の廃水が流入しオーバフローするような場合であっても、一度捉えた合成樹脂の破片の流出が抑制される。
【0023】
(13) 上記(12)において、前記前記中蓋は、前記エルボがある側に水路を有してもよい。前記水路は、前記排水溝の端部に連接可能に構成された流入端と、前記エルボに向かって開く流出孔とを有する。これにより、一度捉えた合成樹脂の破片の逆流が抑制される。
【0024】
(14) 上記(1)から(13)のいずれか一つに記載の分離装置を備えた排水桝は、前記分離装置が、前記エルボある側が、前記排水桝において廃水が流入する側へ向けられ、前記分離装置の前記エルボがある側の反対側が、排水桝において廃水が流出する側へ向けられて配置されている。これに、メンテナンス負担の軽減を図ることができる。
【0025】
(15) 本開示の合成樹脂の破片を含む廃水から前記合成樹脂の破片を分離する分離方法は、前記廃水を上記(14)に記載の排水桝へ流入させるステップと、前記排水桝により前記廃水から合成樹脂の破片を分離させるステップと、前記合成樹脂の破片が分離された前記廃水を、前記排水桝の排水側開口部から排水させるステップと、を含む。これにより、メンテナンス負担の軽減を図ることができる。
【0026】
[用語の定義]
本願において使用する用語の定義は、以下の通りである。
・人工芝:芝に似た形状をポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂で造ったもの。運動施設、一般家庭等で使用される。
・廃水:塵と水が混じった汚れた水。塵は例えば、人工芝等の合成樹脂の破片である。水は例えば、雨水である。
・エルボ:L字形に曲げられた配管。例えば90度に曲げられる。
・バイオフィルム:微生物が固体表面に形成した集合体。水中の固体表面にはぬるぬるした粘着物がしばしば形成されるが、これがバイオフィルムの一例。
【0027】
<実施形態1>
図1は、運動施設の排水設備の概要の一例を示す斜視図である。
以下、本開示を、図面を参照しながら説明する。
【0028】
〔1―1. 排水設備の全体構成〕
近年、人工芝は、天然芝より雨に強く、維持管理コストも安いことから、スポーツスタジアム等に広く使用されている。人工芝は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂を芝の形状、色に似せて製造される。図1に示すように、サッカーコート等の運動施設1は、その中央部分に人工芝2が敷き詰められている。また、運動施設1は、運動施設に降った雨を排水するために、例えば、運動施設1の4辺に沿うよう排水溝3、及び運動施設1の四隅等には排水桝4と、が設けられている。排水溝3は、排水桝4に接続されている。排水溝3と排水桝4とは、その上端が運動施設1の表面に飛び出さないように土中に埋められている。人工芝2の上に降った雨は、排水溝3へ流入し、排水溝3を伝って、排水桝4へ流入する。そして排水桝4へ流入した廃水(雨水)は、運動施設外へ排水される。
【0029】
人工芝2は、その使用あるいは劣化に伴い、一部が分断され合成樹脂の破片となる。運動施設1の人工芝2の上に雨が降った場合、雨はこの合成樹脂の破片を巻き込み、合成樹脂の破片を含んだ廃水として排水溝3に流入する。排水溝3へ流入した廃水は、排水溝3を伝って、排水桝4へ流入する。排水桝4に流入した廃水は、その後運動施設外へ排水される。このため、排水路へ合成樹脂の破片が流出しないように、合成樹脂の破片を含む廃水から合成樹脂の破片を取り除く必要がある。本願開示の分離装置を備える排水桝は、合成樹脂の破片を含む廃水から合成樹脂の破片を取り除くためのものである。
【0030】
〔1-2. 排水桝の構成〕
図2は、実施形態1に係る排水桝の概要の一例を示す概要図である。図2(a)は、排水桝4の正面図である。図2(b)は排水桝4の上面図である。図2(c)は、図2(b)に示すA―A断面から見た断面図である。
図3は、実施形態1に係る分離装置21の一例の斜視図である。図3(a)は、エルボ21bがある側の反対側から見た斜視図である。図3(b)は、エルボ21bがある側から見た斜視図である。
【0031】
図2に示す例では、排水桝4は、一つの底面4aと4つの側壁4bとを含む長方体形状を有する。図2に示す排水桝4は、長方体であるが、これに限定されず、円筒形、あるいは球形であってもよい。図2(a)、(c)に示すように側壁4bの上方には、排水溝3が接続される。排水桝4は、側壁4bの下方に廃水を排出するための排水桝排水孔4cを有する。排水桝排水孔4cは、廃水を運動施設外へ排出するための排水配管22が接続される。排水桝4の上方は開口し、例えばグレーチング(図示せず)により蓋がされる。排水桝の材質は、例えば、コンクリートである。
【0032】
〔1―3. 分離装置の構成〕
排水桝4は、図2及び図3に示すように、その内側に分離装置21を含む。分離装置21は、エルボ21bがある側が、排水桝4の廃水が流入する側へ向けられ、前記エルボ21bがある側の反対側が、前記排水桝4において廃水が流出する側、換言すれば排水桝排水孔4cがある側へ向けられて配置される。分離装置21を含む排水桝4は、合成樹脂の破片を含む廃水から前記合成樹脂の破片を分離する。
【0033】
分離装置21は、隔壁21aとエルボ21bとを含む。隔壁21aは、廃水と合成樹脂の破片が分離された廃水とを隔てるための隔壁である。隔壁21aは、排水桝4の底面4aに接するように構成された第1端部31aと、接続孔32とを有する。エルボ21bは、流出側開口部分33が接続孔32に接続され、流入側開口部分34が第1端部31aの方向に向けられている。隔壁21a、エルボ21bの材料としては、所定の強度があり、耐水性の材料であればよく、例えば合成樹脂である。
【0034】
隔壁21aは、排水桝4の底面4aに接するように構成された第1端部31aと、下記に定義する第2端部と、下記に定義する第3端部とを有する。
第2端部31b:排水桝4の側壁に接するように構成され、第1端部31aと交差し、第3端部31cと対向する端部
第3端部31c:排水桝4の前記側壁に接するように構成され、第1端部31aと交差し、第2端部31bと対向する端部
隔壁21aは、例えば長方形の平板形状を有する。排水桝4が円筒形の形状を有する場合には、隔壁21aの第2端部31b及び第3端部31cとが、排水桝4の側壁へ接することとなる。排水桝4が長方体の形状を有する場合には、隔壁21aが排水桝4の断面形状に倣った形状を有することで、同様に隔壁21aの第2端部31b及び第3端部31cとが、排水桝4の側壁へ接することとなる。
【0035】
図4は、実施形態1に係る分離装置21の断面図である。ここで、分離装置21の下記に定義する第1距離H1は、下記に定義する第2距離H2よりも大きい。このような関係となっている理由は後述する分離装置の動作で説明する。
第1距離H1:第1端部31aから、接続孔32の周縁部分における前記第1端部に最も近い部分32aまでの距離
第2距離H2:第1端部31aから、エルボ21bの流入側開口部分34まで距離
【0036】
隔壁21aの第2端部31bと第3端部31cとは、エルボ21bの側とは反対側へ曲げられていてもよい。第2端部31bと第3端部31cとが、上記のような形状となることで、第2端部31bと第3端部31cとは、同じ方向に向き、排水桝4の同一の側壁に接することが可能になる。これにより、排水桝4に対し分離装置21が横方向にずれても、分離装置21は、排水桝4の排水桝排水孔4cを覆うように設定することが可能である。また、図2図3においては分離装置21の隔壁21aの第2端部31bが含まれる面と、第3端部31cが含まれる面とは、エルボ21bが接続されている面とは直交しているがこれに限定されず、例えばなだらかな曲面でつながっていてもよい。
【0037】
さらに、隔壁21aは、下記に定義する第4端部31dが、エルボ21bの側とは反対側へ曲げられていてもよい。
第4端部31d:排水桝4の側壁に接するように構成され、第1端部31aに対向する端部
【0038】
第4端部31dが、上記のような形状となることで、図3に示すように、第4端部31dを有する面は、隔壁21aの上方を、蓋をする形状となる。これにより、分離装置が水没するような大量の廃水が排水桝へ流入しても、合成樹脂の破片を含んだ廃水が流出することが抑制される。なお、隔壁21aの第4端部31dが、エルボ21bの側とは反対側へ屈曲しない場合、即ち隔壁21aの上方が開口している場合には、捕捉された合成樹脂の破片が隔壁21aを超えて、エルボ21bがある側の反対側へ流出しないように、隔壁21aの第4端部31dを、排水桝4の上方へ延長してもよい。
【0039】
さらに、隔壁21aの第1端部31aから前記第3端部31cのうち、排水桝4に接する部分には、透水性の部材が設けられていてもよい。例えば図3に示すように、透水性の部材35が第1端部31aと、第2端部31bと、前記第3端部31cとに設けられている。透水性の部材は、例えばグラスウールである。第4端部31dが、エルボ21bの側とは反対側へ曲げられている場合には、第4端部31dにも、透水性部材が設けられていてもよい。
【0040】
これにより、排水桝4へ廃水が流入するときに、合成樹脂の破片が、排水桝4の側壁4bと隔壁21aとの隙間から流出することを抑制することができる。また、例えば長期に渡って雨が降らないときには、排水桝に貯留された廃水は、透水性の部材35から抜けて次第に水位は下がり、廃水は滞留せず、ボウフラやバイオフィルムの発生が抑止される。
【0041】
また、エルボ21bは、図3図4に示すように、エルボ21bの流入側開口部分34に連結される第1フィルタ21cを含んでもよい。これにより、廃水から分離した合成樹脂の破片が排水桝の下流側へ流出することが抑制される。
【0042】
〔1―4. 分離装置の設置〕
図5は、実施形態1に係る分離装置21を排水桝4へ設置する態様を示す斜視図である。図5(a)は、図2(b)の断面B-Bにおける、排水桝排水孔4cの側から見た斜視図である。図5(b)は、図2(b)の断面B-Bにおける、分離装置21が設けられている側から見た斜視図である。図5において、分離装置21の第2端部31b、第3端部31c及び第4端部31dとは、エルボ21bがある側の反対側へ曲げられている例が示されている。
【0043】
分離装置21は、分離装置21のエルボ21bがある側が、排水桝4において廃水が流入する側へ、前記エルボがある側の反対側が、前記排水桝において廃水が流出する側へ向けられて、排水桝4へ配置される。分離装置21は、更に排水桝4の底面4aと、側壁4bとに接するように配置される。このため、分離装置21の第1端部31aは排水桝4の底面4aに接し、第2端部31b、第3端部31c、及び第4端部31dとは排水桝の側壁4bに接している。分離装置21の排水桝4への取り付けは、例えば排水桝4の側壁4bの図5における上方にL字金具51bを取り付け、分離装置21に連結する寸切りボルト51a及びナット51cにより固定する。分離装置21を側壁4bに向って押し付ける固定部材はなくてもよい。排水桝4と分離装置21が接する部分に、合成樹脂の破片より小さな隙間があっても、合成樹脂の破片が隙間を埋め、当該隙間をシールする。また排水桝4に貯留される廃水の水圧により、分離装置21は側壁4bへ押し付ける。従って、分離装置4を排水桝4へ取り付ける固定部材は、強固に排水桝4へ取り付けるようなものでなくてもよい。
【0044】
分離装置21の取り付けにあたっては、第1端部31aから第4端部31dに透水性の部材35を取り付けて、分離装置21を排水桝4へ設置してもよい。排水桝4へ廃水が流入するときには、合成樹脂の破片が、排水桝4と分離装置21との隙間から流出することが抑制される。一方、例えば長期に渡って雨が降らないときには、排水桝に貯留された廃水は、透水性の部材35から抜けて次第に水位は下がり、廃水は滞留せず、ボウフラやバイオフィルムの発生が抑止される。
【0045】
〔1―4. 分離装置の動作〕
図6は、廃水が流入したときの、排水桝4の状態の一例を示す模式図である。図6(a)は、排水桝4を正面から見たときの状態である。図6(b)は、図2(b)に示すA―A断面における状態である。
【0046】
運動施設1の人工芝2の上に降った雨は、合成樹脂の破片例えば分断された人工芝を巻き込み合成樹脂の破片を含んだ廃水61となり、まず運動施設1の4辺に沿うよう設けられた排水溝3に流入する。排水溝3へ流入した廃水61は、排水溝3を伝って、図6に示すように排水桝4へ流入する。流入した廃水61は、排水桝4のエルボ21bがある側へ貯留され、貯留された廃水62の水位は次第に上昇する。図4及び図6とに示すように、上昇した水位が、隔壁21aの接続孔32の周縁部分における前記第1端部に最も近い部分32aを超えたときには、廃水62は隔壁21aの接続孔32を超えて、エルボ21bがある側の反対側へ流出する。このため排水桝4における廃水62の水位は、接続孔32の周縁部分における第1端部31aに最も近い部分32aを超えた位置に維持される。隔壁21aの接続孔32を超えた廃水62は、排水桝排水孔4cに接続された排水配管22へ流入する。そして排水配管22は、廃水62を運動施設外へ案内する。
【0047】
一方で、人工芝に使用されるポリエチレン、ポリプロピレン等の大半の合成樹脂の比重は、水の比重よりも小さい。従って、ポリエチレン、ポリプロピレン等である合成樹脂の破片は、水に浮くこととなる。このため図6に示すように、排水桝4内の隔壁21aで隔てられた廃水61が流入する側では、合成樹脂の破片を含んだ廃水61は、排水桝4の下方に合成樹脂の破片が分離された廃水62と、排水桝4の上方に合成樹脂の破片の塊63とに分離される。更にポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂は疎水性であるため、水に浮きやすく、廃水61からの合成樹脂の破片の分離が促進される。
【0048】
また、合成樹脂の破片が分離された廃水62の水位は、接続孔32の周縁部分における第1端部31aに最も近い部分32aを超えた位置に維持されるが、図4で示すように、第1の距離H1が第2の距離H2より大きい関係があるため、エルボ21bの流入側開口部分34は、廃水62の水位の下方に位置し、水中に没することとなる。このため、廃水62の上に浮いた合成樹脂の破片の塊63は、水没した流入側開口部分34に到達することはできず、隔壁21aで隔てられた、エルボ21bがある側に捕捉されることとなる。一方で、合成樹脂の破片が分離された廃水62は、水没した流入側開口部分34からエルボ21bに流入する。そして廃水62はエルボ21bを通って、隔壁21aと側壁4bとによって形成される空間に流入し、排水配管22により運動施設外へ案内される。
【0049】
さらに、エルボ21bがある側に捕捉された合成樹脂の破片の塊63の上に、合成樹脂の破片を含む廃水61が注がれるため、捕捉された合成樹脂の破片の塊63それ自身がフィルタとして機能し、廃水61からの合成樹脂の破片を分離する作用が促進される。
【0050】
以上述べたように、合成樹脂の破片を浮かせて廃水から分離するので、フィルタのように短期間に目詰まりを起こすことはなく、長期に渡り合成樹脂の破片を廃水から分離することができる。さらに分離した合成樹脂の破片の塊が、フィルタとしての機能を果たすので、廃水からの合成樹脂の破片を分離する作用が促進される。この結果、メンテナンス負担の軽減を図ることができる。
【0051】
また、エルボ21bは、図2から図4に示すように、エルボ21bの流入側開口部分34に連結される第1フィルタ21cを含んでもよい。排水溝3へ流入した廃水61は、排水溝3を伝って、図6に示すように排水桝4へ流入する。流入した廃水61は、排水桝4のエルボ21bがある側へ貯留され、排水桝4の貯留された廃水62の水位は次第に上昇する。廃水61が貯留される初期には、廃水62の上に浮いた合成樹脂の破片の塊63の上面が、エルボ21bの流入側開口部分34より下方に位置する場合がある。このような状態で廃水62の水位が上昇した場合、廃水62の上に浮いた合成樹脂の破片が、エルボ21bの流入側開口部分34に入り込み、合成樹脂の破片が、排水桝4の排水桝排水孔4cへ流出するおそれがある。また、合成樹脂の破片を含んだ廃水61が大量に排水桝4へ流入した場合、貯留された廃水61が攪拌され、合成樹脂の破片が、エルボ21bの流入側開口部分34に入り込み、合成樹脂の破片が、排水桝4の排水桝排水孔4cへ流出するおそれがある。
【0052】
このような場合であっても、エルボ21bが、エルボ21bの流入側開口部分34に連結される第1フィルタ21cを含んでいるときには、第1フィルタ21cは合成樹脂の破片を捉え、合成樹脂の破片がエルボ21bの流入側開口部分34に入り込むおそれを抑制する。第1フィルタは、例えば金属製の網である。フィルタの目のピッチは、例えば0.15mmから5.0mmである。合成樹脂の破片の9割を含む最小の破片の大きさが1mmである場合であっても、フィルタの目のピッチが1mmより大きく、例えば2mmであってもよい。合成樹脂の破片は、廃水62に浮くことで分離され、更に合成樹脂の破片の塊63自身によっても捕捉されるからである。なお、第1フィルタ21cの底に、第1フィルタ21cを支える第1フィルタ支持部材21dを設けてもよい。第1フィルタ支持部材21dは、第1フィルタ21cを所定の形状に維持する。
【0053】
〔1―5. 分離装置のメンテナンス〕
分離装置21を備えた排水桝4は、隔壁21aで隔てられたエルボ21bがある側へ分離した合成樹脂の破片を溜める。分離した合成樹脂の破片が所定の量溜まった場合には、溜まった合成樹脂の破片を取り除く必要がある。溜まった合成樹脂の破片を、例えば、塵取りバサミで取り除く。この場合、溜まった合成樹脂の破片の全部を取り除かなくてもよい。取り除かれなかった合成樹脂の破片が、廃水62の上に浮きフィルタとしても機能を果たすからである。また、廃水62の上に浮いた合成樹脂の破片の塊63の直下には、フィルタのような取扱に注意を要する構成はないので、容易に合成樹脂の破片の塊63を取り除くことができる。また大雨が降り、大量の合成樹脂の破片の塊が溜まった場合であっても、塵取りバサミ等で合成樹脂の破片の塊63を取り除き、一時的に排水桝4の機能を回復させることが容易にできる。
【0054】
図7は、排水桝の清掃方法の一例を示す模式図である。溜まった合成樹脂の破片の塊63を、図7で示すような一般的な業務用掃除機71によって吸い取ってもよい。排水桝4の内部を隅々まで清掃する場合には、掃除機で合成樹脂の破片を吸い取った後、分離装置21を排水桝4から取り外し、その後、掃除機で合成樹脂の破片を吸い取ってもよい。分離装置21を排水桝4へ強固に固定しなくてもよいので、容易に分離装置21を排水桝4から取り外すことができる。
【0055】
〔1―6. まとめ〕
上述したように、本開示にかかる分離装置は、合成樹脂の破片を浮かせて廃水から分離するので、フィルタのように短期間に目詰まりを起こすことはなく、長期に渡り合成樹脂の破片を廃水から分離することができる。さらに分離した合成樹脂の破片の塊が、フィルタとしての機能を果たすので、廃水からの合成樹脂の破片を分離する作用が促進される。この結果、メンテナンス負担の軽減を図ることができる。
【0056】
上述したような分離装置を、エルボがある側を、排水桝において廃水が流入する側へ、エルボがある側の反対側を、排水桝において廃水が流出する側へ向けて排水桝に設けることができる。当該排水桝は、合成樹脂の破片を含む廃水から合成樹脂の破片を分離しつつ、メンテナンス負担の軽減を図ることができる。
【0057】
上述したような分離装置を含む排水桝を備えた運動施設等においては、廃水を上述した分離装置を含む排水桝へ流入させるステップと、排水桝により廃水から合成樹脂の破片を分離させるステップと、合成樹脂の破片が分離された廃水を、排水桝の排水側開口部から排水させるステップと、を含む分離方法を実施することで、合成樹脂の破片を含む廃水から合成樹脂の破片を分離しつつ、メンテナンス負担の軽減を図ることができる。
【0058】
<実施形態2>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態2の詳細を説明する。
実施形態2における分離装置21のエルボ21bは、更に延長配管81を含む。延長配管81は第1フィルタ21cの内側に配置され、流入側開口部分34から第1端部31aに接近する方向へ、第1端部31aから所定の距離離間した位置まで延伸する。延長配管81を含む以外は実施形態1と同じである。実施形態1と同一の構成には同一の符号を付し、同一の構成、機能、動作については説明を省略する。
【0059】
図8は、実施形態2に係る分離装置の一例を示す断面図である。図8は、図2(b)の断面A-Aから見た断面図である。
運動施設1の人工芝2の上には、砂が撒かれることがある。人工芝の耐久性を向上させ、重石として人工芝のめくれを防ぐためである。人工芝に撒かれる砂は第1フィルタ21cの目より細かいので、廃水の流れに乗って、第1フィルタ21c内に流入する。しかし、砂は水より比重が重いため、排出されずに、第1フィルタ21cの底に堆積して、排水能力を低下さるおそれがある。第1フィルタ21cの目を小さくすれば砂の侵入を防ぐことはできるが、第1フィルタ21cの目を小さくすると排水能力が低下する。
【0060】
そこで、実施形態2では、第1フィルタ21cの内側に延長配管81が配置される。延長配管81は、流入側開口部分34から第1端部31aに向かって、第1端部31aから所定の距離離間した位置まで延伸する。第1端部31aから所定の距離離間した位置まで延伸する形状は、廃水の水流を延長配管81の下方の開口部に集中させ、第1フィルタ21cの底に溜まった砂82上の廃水の流速を速め、砂82を巻き上げる。巻き上げられた砂82は、延長配管の内側を上昇する廃水の流れに乗って、排水桝排水孔4cがある側へ排出される。第1端部31aから所定の距離離間した位置は、砂82を巻き上げに十分な流速を生じさせるが、砂が詰まらない位置が選ばれる。これにより、第1フィルタ21cの底に溜まる砂82を排出することができる。
【0061】
<実施形態3>
以下、図面を参照して、開示の実施形態3の詳細を説明する。
実施形態3における分離装置21のエルボ21bは、エルボ21bから分岐し、第1端部31aとは反対側へ延伸する枝配管91aと、枝配管91aの流入側開口部分91bに連結される第2フィルタ91cと、を含む。枝配管91aと第2フィルタ91cを含む以外は実施形態1と同じである。実施形態1と同一の構成には同一の符号を付し、同一の構成、機能、動作については説明を省略する。
【0062】
図9は、実施形態3に係る分離装置の一例をエルボがある側から見た斜視図である。
実施形態3は、フィルタを更に設けて排水能力を上げようとするものである。図9に示すように、エルボ21bは、エルボ21bから分岐する枝配管91aを含む。枝配管91aを含むエルボ21bは、例えば全体としてT字形状を有する。なお、T字形状を有する配管は、チーズと称呼される場合がある。そして枝配管91aの流入側開口部分91bには、第2フィルタ91cが接続される。第2フィルタ91cの頭頂部分に、第2フィルタ91cを支える第2フィルタ支持部材91dを設けてもよい。第2フィルタ支持部材91dは、第2フィルタ91cを所定の形状に維持する。
【0063】
第2フィルタ91cのフィルタの目のピッチは、第1フィルタ21cの目のピッチとは独立に選ぶことができる。例えば、第2フィルタ91cのフィルタの目のピッチを、排水能力を優先して第1フィルタ21cのフィルタの目のピッチより大きくしてもよい。第2フィルタ91cから排水している時は、廃水に浮かせて捕捉した合成樹脂の破片の塊63がフィルタとして機能するので、小さな合成樹脂の破片は、合成樹脂の破片の塊63に捕捉される。従って、第2フィルタ91cのフィルタの目のピッチを大きくすることができる。このため、排水能力を更に向上させることができる。また、フィルタを2つ設けることで排水能力が向上するので、底面積の小さい排水桝4を選択することも可能である。
【0064】
<実施形態4>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態4の詳細を説明する。
実施形態4における分離装置21の隔壁21aは、第1端部31aに対向する側に、前記排水桝の側壁に対し開口するように構成された越流端部101を有してもよい。越流端部101を含む以外は実施形態1と同じである。実施形態1と同一の構成には同一の符号を付し、同一の構成、機能、動作については説明を省略する。
【0065】
図10は、実施形態4に係る分離装置の一例をエルボがある側から見た斜視図である。図10(a)は、傾斜板がない場合を示す。図10(b)は、第1傾斜板を含む場合を示す。図10(c)は、更に第2傾斜板を含む場合を示す。
実施形態4は、分離装置21の隔壁21aが、接続孔32より第1端部31aに対向する側に、即ち分離装置21の上方に越流端部101を有する。隔壁21aの越流端部101を、排水溝3の底面の位置まで延長してもよい。
【0066】
大雨が降った場合には、排水桝4へ大量の合成樹脂の破片を含んだ廃水61が流入する。実施形態1の図2に示した分離装置の場合には、所定の排水能力を有する。しかしながら、排水桝4へ所定の排水能力を超える廃水61が流入した場合、排水桝4の水位は次第に上昇し、ついには廃水61が排水桝4の外へ溢れることとなる。換言すれば図1において、運動施設1の人工芝2へ廃水が溢れることとなる。
【0067】
実施形態4において、分離装置21の隔壁21aは、上方に越流端部101を有する。このため排水桝4の水位が上昇しても、水位が隔壁21aの越流端部101を超えた時点で、廃水61は排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流入し、水位は隔壁21aを超えた高さに維持される。この結果、廃水61が排水桝4の外へ溢れだすことが抑止される。
【0068】
排水桝4の水位が上昇し、水位が隔壁21aを超え、廃水61が排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流入した場合には、廃水61は合成樹脂の破片を含んでいるので、合成樹脂の破片も排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流出するおそれがある。そこで、図10(b)に示すように、隔壁21aは、越流端部101に、隔壁21aから離れる方向に第1端部31a側へ傾斜する第1傾斜板102が設けられていてもよい。
【0069】
分離装置21によって、隔壁21aよりエルボ21bがある側に捕捉された合成樹脂の破片の塊63は、絡み合って鳥の巣のように一体化する。そして第1傾斜板102は、庇のような形状を有するため、一体化した合成樹脂の破片の塊63の一端は、第1傾斜板102に捉えられ、第1傾斜板102は合成樹脂の破片の塊63の流出を抑制する。
【0070】
さらに隔壁21aは、図10(c)に示すような第2傾斜板103が設けられていてもよい。第2傾斜板103は、第1傾斜板102から隔壁21aの鉛直方向に離間し、第1傾斜板102に平行な複数の傾斜板である。第1傾斜板102は、一体化した合成樹脂の破片の塊63の一端を捉えて流出を阻止するが、第2傾斜板103は、一体化した合成樹脂の破片の塊63を面で押えて流出を阻止する。一体化した合成樹脂の破片の塊63の絡み合いが解けやすい場合であっても、面で押えるため、合成樹脂の破片の塊63の流出を抑制できる。
【0071】
<実施形態5>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態5の詳細を説明する。
図11は、実施形態5に係る分離装置の一例をエルボがある側から見た斜視図である。図11(a)は、第3フィルタ111の上部が開口している場合、図11(b)は、第3フィルタ111の上部もフィルタとして構成されている場合である。
実施形態5における分離装置21の隔壁21aは、越流端部101から、第1端部31aから離れる方向に向かって延伸される第3フィルタ111を更に含んでもよい。第3フィルタ111を含む以外は実施形態4と同じである。実施形態4と同一の構成には同一の符号を付し、同一の構成、機能、動作については説明を省略する。
【0072】
実施形態4の図10(a)に示す例の排水桝4の場合には、大量の合成樹脂の破片を含んだ廃水61が流入すると、排水桝4の水位が上昇し、水位が隔壁21aの越流端部101を超え、廃水61が排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流出する。廃水61は合成樹脂の破片を含んでいるので、合成樹脂の破片も排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流出するおそれがある。
【0073】
そこで、図11(a)、(b)に示すように、隔壁21aは、越流端部101から、第1端部31aから離れる方向に向かって延伸される第3フィルタ111を更に含んでもよい。第3フィルタ111の上部は、開口していてもよいし、フィルタとして構成されていてもよい。
【0074】
大量の合成樹脂の破片を含んだ廃水61が流入し、排水桝4の水位が上昇し、水位が隔壁21aの越流端部101を超える場合であっても、第3フィルタ111は、排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流出する廃水61から合成樹脂の破片を取り除き、合成樹脂の破片を含まない廃水を排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流出させる。これにより、第3フィルタ111は、合成樹脂の破片の塊63の流出を抑制する。図11(a)に示すように、第3フィルタ111の上部が開口している場合には、大量の廃水61が流入しても、廃水61をオーバフローさせて、廃水61が排水桝4の外へ溢れ出すことを抑止する。図11(b)に示すように、第3フィルタ111の上部が、フィルタとして構成されている場合は、分離装置21が水没するような場合であっても、合成樹脂の破片が排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流出することを抑止する。
【0075】
<実施形態6>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態6の詳細を説明する。
図12は、実施形態6に係る分離装置の一例を示す斜視図である。図12(a)は、エルボ21aがある側の上方から見た斜視図である。図12(b)は、エルボ21bがある側の下方から見た斜視図である。
【0076】
実施形態6における分離装置21は、中蓋を更に含んでもよい。前記中蓋は、外縁が前記排水桝の側壁に接し、下記に定義する排水溝の底面と上端との間に位置するように構成され、前記開口部の周縁に沿った切り欠き部を有し、前記切り欠き部と前記開口部とが接するように、前記隔壁へ接続される。
排水溝:前記排水桝側の側壁に接続され、前記合成樹脂の破片を含む廃水を前記排水桝に案内する排水溝
中蓋を更に含む以外は実施形態4と同じである。実施形態4と同一の構成には同一の符号を付し、同一の構成、機能、動作については説明を省略する。
【0077】
実施形態4の図10(a)に示す例の排水桝4の場合には、大量の合成樹脂の破片を含んだ廃水61が流入すると、排水桝4の水位が上昇する。さらに大量の廃水61が流入すると、ついには排水桝4の水位が隔壁21aを超え、廃水61が排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流出する。廃水61は合成樹脂の破片を含んでいるので、合成樹脂の破片も排水桝4の排水桝排水孔4c側へ流出するおそれがある。
【0078】
そこで、図12(a)、(b)に示すように、分離装置21は、中蓋121を更に含んでもよい。降雨時には、排水桝4の側壁4bに接続される排水溝3は合成樹脂の破片を含んだ廃水61を排水桝4へ案内する。排水桝4へ案内された廃水61は、排水桝4の内側のエルボ21bがある側に流れ落ち、実施形態1で説明した分離装置の動作と同様の動作により、合成樹脂の破片を含んだ廃水61から、合成樹脂の破片が分離される。
【0079】
降雨量が上がり、大量の廃水61が排水桝4へ流入し排水桝4内の水位が上昇した場合であっても、排水桝4内のエルボ21bがある側に対し、中蓋121が蓋をすることとなるため、廃水62に浮く合成樹脂の破片の塊63の上面を中蓋121が押え、隔壁21aの越流端部101から流出することが抑制される。換言すれば、一度捉えた合成樹脂の破片の流出が抑制される。
【0080】
さらに降雨量が上がると、排水溝3において廃水61の水位はさらに上昇するが、上昇した廃水61の水位が中蓋の位置より上方となった場合には、中蓋121の位置より上方の廃水61は、図12(a)の矢印で示すように中蓋121の上方へ案内される。中蓋121の上方へ案内された廃水61は、中蓋121の切り欠き部121aに接する隔壁21aの越流端部101へ流入する。越流端部101へ流入した廃水61は隔壁21aの排水桝排水孔4cがある側を通って、排水配管22へ案内される。
【0081】
なお、中蓋121の切り欠き部121aと、切り欠き部121aに接する隔壁21aの越流端部101とはヒンジ(図示せず)によって接続されてもよい。これにより、中蓋121は、隔壁21aに対し、跳ね上げことが可能となり、合成樹脂の破片の塊63を容易に除去することができる。
【0082】
<実施形態7>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態7の詳細を説明する。
図13は、実施形態7に係る分離装置の一例を示す斜視図である。図13(a)は、エルボ21aがある側上方から見た斜視図である。図13(b)は、エルボ21bがある側下方から見た斜視図である。
【0083】
実施形態7における中蓋は、エルボがある側に水路を有してもよい。前記水路は、前記排水溝の端部に連接可能に構成された流入端と、前記エルボに向かって開く流出孔とを有する。水路を更に含む以外は実施形態6と同じである。実施形態6と同一の構成には同一の符号を付し、同一の構成、機能、動作については説明を省略する。
【0084】
実施形態6の図12(a)に示すように、大量の降雨があった場合には、排水桝4の内側の水位は上昇するが、中蓋121があるため、廃水62に浮く合成樹脂の破片の塊63が、隔壁21aの越流端部101から流出することが抑制される。しかしながら、排水桝4の内側の水位は上昇し、廃水61が中蓋121の位置より上方の廃水61は、中蓋121の上方へ案内されるような場合には、合成樹脂の破片の塊63が、排水溝4へ逆流し、隔壁21aの越流端部101から流出するおそれがある。また、排水溝3が、排水桝4の対向する2つの側壁4a各々に接続されている場合に、著しく一方の排水溝3にのみ大量の廃水61が流入するときがある。このような場合、一方の排水溝4から流入した合成樹脂の破片を含んだ廃水61が、他方の排水溝4へ溢れ出すおそれがある。
【0085】
そこで、図13(a)、(b)に示すように、分離装置21は、水路131を更に含んでもよい。水路131の廃水61が流入する流入端131aは、排水溝3の排水桝4側開口部分の周縁に接するように構成されている。このため、降水量が少ない場合には、排水桝4へ案内された廃水61は、水路131へ全て流入する。また水路131は、エルボ21bに向かって開く流出孔131bを有する。このため、水路131へ流入した廃水61は、流出孔131bから排水桝4の内側のエルボ21bがある側に流れ落ちる。排水桝4の内側のエルボ21bがある側に流れ落ちた廃水61は、実施形態1で説明した分離装置の動作と同様の動作により、合成樹脂の破片を含んだ廃水61から、合成樹脂の破片が分離される。
【0086】
大量の廃水61が流入し、排水溝4における廃水61の水位が中蓋121の位置より上方となるような場合であっても、排水桝4の内部に捉えた合成樹脂の破片の塊63が、排水溝4へ逆流するためには、水路131の流出孔131bを通り、水路131を逆流する必要がある。このため、排水桝4の内部に捉えた合成樹脂の破片の塊63の排水溝4への逆流を抑制することが可能となる。著しく一方の排水溝3にのみ大量の廃水61が流入する場合であっても、一方の排水溝3から流入した合成樹脂の破片を含んだ廃水61は、水路131の流出孔131bを通り、排水桝4へ流れ落ち、他方の排水溝3へ溢れ出すおそれが抑制される。
【0087】
[付記1]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 運動施設
2 人工芝
3 排水溝
4 排水桝
4a 底面
4b 側壁
4c 排水桝排水孔
21 分離装置
21a 隔壁
21b エルボ
21c 第1フィルタ
21d 第1フィルタ支持部材
22 排水配管
31a 第1端部
31b 第2端部
31c 第3端部
31d 第4端部
32 接続孔
33 流出側開口部分
34 流入側開口部分
35 透水性の部材
51a ボルト
51b L字金具
51c ナット
61、62 廃水
63 合成樹脂の破片の塊
71 業務用掃除機
81 延長配管
82 砂
91a 枝配管
91b 流入側開口部分
91c 第2フィルタ
91d 第2フィルタ支持部材
101 越流端部
102 第1傾斜板
103 第2傾斜板
111 第3フィルタ
121 中蓋121
121a 切り欠き部
131 水路
131a 流入端
131b 流出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13