(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016249
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の評価方法、電池ユニットの製造方法、評価装置及び製造支援装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20250124BHJP
【FI】
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119391
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 恒良
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM07
5H029CJ30
5H029HJ01
5H029HJ05
5H029HJ08
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を精度よく評価することが可能なリチウムイオン二次電池の評価方法、電池ユニットの製造方法、評価装置及び製造支援装置を提供すること。
【解決手段】本開示のリチウムイオン二次電池の評価方法は、リチウムイオン二次電池の電極体を構成する正極及び負極の製造データを取得する工程と、前記正極及び負極の前記製造データから、前記正極及び前記負極における電解液の液流れ量を推定する工程と、推定された前記正極の前記液流れ量と前記負極の前記液流れ量とから前記電極体の液流れ比率を算出する工程と、算出された前記液流れ比率に基づいて、前記リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を予測する工程と、を含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池の電極体を構成する正極及び負極の製造データを取得する工程と、
前記正極及び負極の前記製造データから、前記正極及び前記負極における電解液の液流れ量を推定する工程と、
推定された前記正極の前記液流れ量と前記負極の前記液流れ量とから前記電極体の液流れ比率を算出する工程と、
算出された前記液流れ比率に基づいて、前記リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を予測する工程と、を備える、
リチウムイオン二次電池の評価方法。
【請求項2】
前記液流れ量を推定する工程は、前記正極又は前記負極の前記液流れ量を目的変数とし前記正極又は前記負極の前記製造データを説明変数とする重回帰式を用いて、前記液流れ量を推定する、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の評価方法。
【請求項3】
前記正極の前記製造データは、前記正極に含まれる正極活物質の粒子形状、正極用ペーストの目付量及び前記正極用ペースト内の各材料の密度のうちの少なくとも1つを含む、
請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の評価方法。
【請求項4】
前記負極の前記製造データは、前記負極に含まれる負極活物質の平均粒径及び負極用ペーストの塗布量のうちの少なくとも1つを含む、
請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の評価方法。
【請求項5】
前記リチウムイオン二次電池の予測された前記ハイレート劣化特性に基づいて、前記リチウムイオン二次電池を使用する環境の劣化に関連する条件の適正範囲を特定する工程をさらに備える、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の評価方法。
【請求項6】
前記リチウムイオン二次電池の予測された前記ハイレート劣化特性に基づいて、前記リチウムイオン二次電池を使用する環境の温度の適正範囲を特定する工程をさらに備える、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の評価方法。
【請求項7】
複数のリチウムイオン二次電池が連結された電池ユニットの製造方法であって、
前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれの電極体を構成する正極及び負極の製造データを取得する工程と、
前記正極及び負極の前記製造データから、前記正極及び前記負極における電解液の液流れ量を推定する工程と、
推定された前記正極の前記液流れ量と前記負極の前記液流れ量とから前記電極体の液流れ比率を算出する工程と、
算出された前記液流れ比率に基づいて、前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれのハイレート劣化特性を予測する工程と、
前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれのハイレート劣化特性と、前記電池ユニットが設置される位置の環境情報とに基づいて、前記リチウムイオン二次電池を連結する順序を決定する工程と、
決定された前記順序で前記複数のリチウムイオン二次電池を連結する工程と、を備える、
電池ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記環境情報は、前記電池ユニットが設置される位置の温度情報を含む、
請求項7に記載の電池ユニットの製造方法。
【請求項9】
リチウムイオン二次電池の電極体を構成する正極及び負極の製造データを取得可能な取得部と、
前記正極及び負極の前記製造データから、前記正極及び前記負極における電解液の液流れ量を推定可能な推定部と、
推定された前記正極の前記液流れ量と前記負極の前記液流れ量とから前記電極体の液流れ比率を算出可能な算出部と、
算出された前記液流れ比率に基づいて、前記リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を予測可能な特性予測部と、を備える、
評価装置。
【請求項10】
複数のリチウムイオン二次電池が連結された電池ユニットの製造を支援する製造支援装置であって、
前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれの電極体を構成する正極及び負極の製造データと、前記電池ユニットが設置される位置の環境情報とを取得可能な取得部と、
前記正極及び負極の前記製造データから、前記正極及び前記負極における電解液の液流れ量を推定可能な推定部と、
推定された前記正極の前記液流れ量と前記負極の前記液流れ量とから前記電極体の液流れ比率を算出可能な算出部と、
算出された前記液流れ比率に基づいて、前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれのハイレート劣化特性を予測可能な特性予測部と、
前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれのハイレート劣化特性と、前記環境情報とに基づいて、前記リチウムイオン二次電池を連結する順序を決定する順序決定部と、を備える、
製造支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン二次電池の評価方法、電池ユニットの製造方法、評価装置及び製造支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池では、大電流の充放電(以下、「ハイレート充放電」ともいう)が繰り返し行われると、局所的に内部抵抗が増加することが知られている。この内部抵抗の増加は、以下のようなメカニズムで発生すると考えられている。まず、ハイレート充放電により電極体の体積が変化する。この電極体の体積変化により、電極体からの電解液の流出、電極体への電解液の再流入等の電解液の流れが発生する。この電解液の流れにより、電極体内部の塩濃度に偏りが生じ、内部抵抗が局所的に増加する。なお、このような内部抵抗の増加は、例えば時間経過に伴って上述した塩濃度の偏りが改善されれば解消され得る。
【0003】
上述した内部抵抗の増加は、電池性能の一時的な低下(以下、「ハイレート劣化」ともいう)につながる。このため、内部抵抗の増加を抑制するための手法が種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
下記特許文献1には、負極合材層と、セパレータを挟んで負極合材層と対向する正極合材層と、電解液と、を備え、負極合材層は、中空シリカ粒子を3質量%以上7質量%以下含み、中空シリカ粒子の平均粒子径は、50nm以上110nm以下であり、負極合材層の平均細孔径は、正極合材層の平均細孔径の1.0倍以上1.83倍以下である、リチウムイオン二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のように、リチウムイオン二次電池の製造時に電極体の材質等を工夫すれば、ハイレート劣化を抑制でき得る。しかし、既に製造された後のリチウムイオン二次電池に対して、上述のような電極体の材質等の工夫を実施することは難しい。
【0007】
例えば、ハイレート劣化特性が良好なリチウムイオン二次電池は、ハイレート充放電が頻繁に行われる用途や環境温度が高い地域での使用であっても安定した出力等を得ることができる。これに対し、ハイレート劣化特性が良好でないリチウムイオン二次電池を、ハイレート充放電が頻繁に行われる用途や環境温度が高い地域で使用すると、ハイレート劣化が頻繁に発生し、出力の不安定化やこれに伴う電池寿命の短縮といった問題が発生しやすい。
【0008】
一方で、ハイレート劣化特性が良好でないリチウムイオン二次電池であっても、ハイレート充放電の頻度の少ない用途や環境温度が相対的に低い地域での使用であれば、ハイレート劣化が生じ難く、出力の不安定化等の問題も比較的発生し難い。このことから、製造された後のリチウムイオン二次電池においても、その性能に合わせた用途等で使用すれば上述した各種の問題の発生が抑えられる可能性がある。前述した性能に合わせた用途等での使用を実現するためには、リチウムイオン二次電池の性能、特にハイレート劣化特性を精度よく評価することが重要である。
【0009】
本開示は、上述した点を考慮し、リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を精度よく評価することが可能なリチウムイオン二次電池の評価方法、電池ユニットの製造方法、評価装置及び製造支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法は、リチウムイオン二次電池の電極体を構成する正極及び負極の製造データを取得する工程と、前記正極及び負極の前記製造データから、前記正極及び前記負極における電解液の液流れ量を推定する工程と、推定された前記正極の前記液流れ量と前記負極の前記液流れ量とから前記電極体の液流れ比率を算出する工程と、算出された前記液流れ比率に基づいて、前記リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を予測する工程と、を含む。
【0011】
このようなリチウムイオン二次電池の評価方法においては、リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を精度よく予測することができる。これにより、リチウムイオン二次電池の使用用途等を、ハイレート劣化特性を考慮して決定することができ、リチウムイオン二次電池のハイレート劣化の発生を抑えることができる。
【0012】
本開示の第2の態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法は、上記第1の態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法において、前記液流れ量を推定する工程は、前記正極又は前記負極の前記液流れ量を目的変数とし前記正極又は前記負極の前記製造データを説明変数とする重回帰式を用いて、前記液流れ量を推定する。
【0013】
このようなリチウムイオン二次電池の評価方法においては、正極及び負極の液流れ量を精度よく推定できる。
【0014】
本開示の第3の態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法は、上記第2の態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法において、前記正極の前記製造データは、前記正極に含まれる正極活物質の粒子形状、正極用ペーストの目付量、前記正極用ペースト内の各材料の密度の少なくとも1つを含む。
【0015】
このようなリチウムイオン二次電池の評価方法においては、正極の液流れ量をより精度よく推定できる。
【0016】
本開示の第4の態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法は、上記第2又は第3の態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法において、前記負極の前記製造データは、前記負極に含まれる負極活物質の平均粒径、負極用ペーストの塗布量の少なくとも1つを含む。
【0017】
このようなリチウムイオン二次電池の評価方法においては、負極の液流れ量をより精度よく推定できる。
【0018】
本開示の第5の態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法は、上記第1乃至第4のいずれかの態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法において、前記リチウムイオン二次電池の予測された前記ハイレート劣化特性に基づいて、前記リチウムイオン二次電池を使用する環境の劣化に関連する条件の適正範囲を特定する工程をさらに含む。
【0019】
このようなリチウムイオン二次電池の評価方法においては、リチウムイオン二次電池毎の劣化条件の適正範囲を考慮して使用用途等を選定することができる。
【0020】
本開示の第6の態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法は、上記第1乃至第5のいずれかの態様に係るリチウムイオン二次電池の評価方法において、前記リチウムイオン二次電池の予測された前記ハイレート劣化特性に基づいて、前記リチウムイオン二次電池を使用する環境の温度の適正範囲を特定する工程をさらに含む。
【0021】
このようなリチウムイオン二次電池の評価方法においては、リチウムイオン二次電池毎に最適な環境温度での使用を実現できる。
【0022】
本開示の第7の態様に係る電池ユニットの製造方法は、複数のリチウムイオン二次電池が連結された電池ユニットの製造方法であって、前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれの電極体を構成する正極及び負極の製造データを取得する工程と、前記正極及び負極の前記製造データから、前記正極及び前記負極における電解液の液流れ量を推定する工程と、推定された前記正極の前記液流れ量と前記負極の前記液流れ量とから前記電極体の液流れ比率を算出する工程と、算出された前記液流れ比率に基づいて、前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれのハイレート劣化特性を予測する工程と、前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれのハイレート劣化特性と、前記電池ユニットが設置される位置の環境情報とに基づいて、前記リチウムイオン二次電池を連結する順序を決定する工程と、決定された前記順序で前記複数のリチウムイオン二次電池を連結する工程と、を含む。
【0023】
このような電池ユニットの製造方法においては、各リチウムイオン二次電池の配置を工夫することで、ハイレート劣化の発生が抑制された電池ユニットを提供することができる。
【0024】
本開示の第8の態様に係る電池ユニットの製造方法は、上記第7の態様に係る電池ユニットの製造方法において、前記環境情報は、前記電池ユニットが設置される位置の温度情報を含む。
【0025】
このような電池ユニットの製造方法においては、例えば相対的に高温となる領域にハイレート劣化が発生しにくいリチウムイオン二次電池を配置することで、電池ユニットの性能低下を抑制することができる。
【0026】
本開示の第9の形態に係る評価装置は、リチウムイオン二次電池の電極体を構成する正極及び負極の製造データを取得可能な取得部と、前記正極及び負極の前記製造データから、前記正極及び前記負極における電解液の液流れ量を推定可能な推定部と、推定された前記正極の前記液流れ量と前記負極の前記液流れ量とから前記電極体の液流れ比率を算出可能な算出部と、算出された前記液流れ比率に基づいて、前記リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を予測可能な特性予測部と、を含む。
【0027】
このような評価装置においては、リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を精度よく予測することができる。これにより、リチウムイオン二次電池の使用用途等を、ハイレート劣化特性を考慮して決定することができ、リチウムイオン二次電池のハイレート劣化の発生を抑えることができる。
【0028】
本開示の第10の態様に係る製造支援装置は、複数のリチウムイオン二次電池が連結された電池ユニットの製造を支援する製造支援装置であって、前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれの電極体を構成する正極及び負極の製造データと、前記電池ユニットが設置される位置の環境情報とを取得可能な取得部と、前記正極及び負極の前記製造データから、前記正極及び前記負極における電解液の液流れ量を推定可能な推定部と、推定された前記正極の前記液流れ量と前記負極の前記液流れ量とから前記電極体の液流れ比率を算出可能な算出部と、算出された前記液流れ比率に基づいて、前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれのハイレート劣化特性を予測可能な特性予測部と、前記複数のリチウムイオン二次電池のそれぞれのハイレート劣化特性と、前記環境情報とに基づいて、前記リチウムイオン二次電池を連結する順序を決定する順序決定部と、を含む。
【0029】
このような製造支援装置においては、各リチウムイオン二次電池の配置を工夫することで、ハイレート劣化の発生が抑制された電池ユニットの製造を支援することができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を評価することが可能なリチウムイオン二次電池の評価方法、電池ユニットの製造方法、評価装置及び製造支援装置を提供することができる。これにより、各リチウムイオン二次電池の性能に合わせた適切な形態での使用を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本開示の一実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法における評価対象としてのリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すリチウムイオン二次電池の電極体の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】
図1に示すリチウムイオン二次電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1に示すリチウムイオン二次電池の電極体の液流れ量の測定方法の一例を説明するための模式図である。
【
図5】
図1に示すリチウムイオン二次電池の電極体の液流れ量の推定値と実測値の相関性を示すグラフである。
【
図6】液流れ比率とハイレート抵抗変化率との関係を示すグラフである。
【
図7】本開示の一実施の形態に係る評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図7に示す評価装置の制御部の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図9】本開示の一実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の一実施の形態に係る電池ユニットの製造方法により製造される電池ユニットの一例を示した概略平面図である。
【
図11】
図10に示す電池ユニットが設置される位置の温度分布の一例を示したグラフである。
【
図12】本開示の一実施の形態に係る製造支援装置の制御部の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図13】本開示の一実施の形態に係る電池ユニットの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0033】
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法等を説明する前に、本実施の形態における評価対象としてのリチウムイオン二次電池及びその製造方法について、簡単に説明する。
【0034】
図1は、本開示の一実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法における評価対象としてのリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す斜視図である。本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法にてその性能を評価するリチウムイオン二次電池10としては、例えば
図1に示すように、扁平角型のセル電池を採用することができる。なお、リチウムイオン二次電池10の具体的な形状は特に限定されず、扁平角型以外の形状のものであってもよい。
【0035】
リチウムイオン二次電池10は、
図1に示すように、上側に開口した角型の電池ケース20と、蓋体30とを含んでいてよい。電池ケース20及び蓋体30の材料としては、アルミニウムやアルミニウム合金等が使用できる。
【0036】
電池ケース20は、内部に空間を有する箱状の部材で構成することができる。そしてこの電池ケース20の内部には、捲回型の電極体40と電解液22とを収容することができる。また、蓋体30は、電池ケース20の開口を封鎖するものであって、溶接等により電池ケース20に接合され得る。
【0037】
図2は、
図1に示すリチウムイオン二次電池の電極体の構成の一例を示す概略図である。電池ケース29内に収容される電極体40は、
図2に示すように、正極の一例としての正極板42、負極の一例としての負極板44、及び、セパレータ46で構成された極板群で構成することができる。正極板42、負極板44及びセパレータ46の各々は、長尺状のシート部材で構成することができる。なお、以下では、正極板42及び負極板44を、電極板と総称する場合がある。
【0038】
正極板42は、正極集電体42Aと、端部を除いて正極集電体42Aの片面又は両面に形成された正極活物質層42Bとを含んでいてよい。負極板44は、負極集電体44Aと、端部を除いて負極集電体44Aの片面又は両面に形成された負極活物質層44Bとを含んでいてよい。なお、電解液22、正極板42、負極板44及びセパレータ46の材料については後述する。
【0039】
正極板42と負極板44とは、セパレータ46を介して積層され、各々の長手方向に沿って捲回されていてよい。電極体40の捲回方向と直交する巻軸方向の一方の端部には、正極集電体42A(すなわち、正極活物質層42Bが形成されていない部分)が露出している。また、電極体40の巻軸方向の他方の端部には、負極集電体44A(すなわち、負極活物質層44Bが形成されていない部分)が露出している。
【0040】
蓋体30には、電力の充放電に使用する正極端子32Pと負極端子32Nとが設けられていてよい。正極端子32Pは、正極集電板38Pに接合され、正極集電板38Pは、正極板42の正極集電体42Aに接合され得る。負極端子32Nは、負極集電板38Nに接合され、負極集電板38Nは、負極板44の負極集電体44Aに接合され得る。また、蓋体30には、電池内の内圧が所定の圧力を超えると開放される安全弁34と、電解液を注入するための注液口36とが設けられていてよい。正極端子32P、負極端子32N、正極集電板38P及び負極集電板38Nの材料としては、アルミニウムやアルミニウム合金等が使用できる。
【0041】
正極板42の正極集電体42Aとしては、例えばアルミニウム箔を使用することができる。正極活物質層42Bは、例えば、正極活物質、導電材及びバインダを含んでいてよい。正極活物質には、例えば、三元(ニッケル(N)、マンガン(M)、コバルト(C))系正極材を採用できる。より詳しくは、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)等を用いることができる。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等を用いることができる。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を用いることができる。
【0042】
負極板44の負極集電体44Aとしては、例えば銅箔を使用することができる。負極活物質層44Bは、例えば、負極活物質、バインダ及び増粘剤を含んでいてよい。負極活物質としては、例えば、炭素系材料を採用できる。より詳しくは、黒鉛(グラファイト)等からなる粉末状の炭素材料を用いることができる。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンラバー(SBR)等を用いることができる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を用いることができる。
【0043】
電解液22は、非水溶媒に支持塩を含有させた溶液である。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を用いることができる。支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiI等のリチウム塩を用いることができる。
【0044】
セパレータ46は、正極板42と負極板44との間を絶縁すると共に、電解液22を透過させる多孔質の絶縁膜で構成することができる。セパレータ46としては、多孔性ポリエチレン膜や多孔性ポリプロピレン膜等の多孔性ポリオレフィン膜を用いることができる。
【0045】
以下に、主に
図3を参照して、リチウムイオン二次電池の製造方法の一例を説明する。
【0046】
図3は、
図1に示すリチウムイオン二次電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。リチウムイオン二次電池を製造する際は、
図3に示すように、先ず、正極材料及び負極材料を準備する(工程S10)。正極材料及び負極材料の準備に際し、後述する製造データの一部として、当該正極材料及び負極材料の物性データ(詳しくは、物質の粒子形状や平均粒径等)を記録しておくと良い。本実施の形態では、正極材料に三元系正極材(NMC)を、負極材料に炭素系材料を採用している。
【0047】
次に、混錬工程を行う(工程S12)。この混錬工程では、正極材料及び負極材料の各々について、活物質、導電材、バインダ等を混合して、正極用ペーストと負極用ペーストとを作成する。このような混合物は「合材」とも呼ばれる。また、作成された各ペーストの目付量や塗布量等を、後述する製造データの一部として記録しておくと良い。
【0048】
混練工程が終了すると、次に、塗工工程を行う(工程S14)。この塗工工程では、アルミニウム箔からなる正極集電体42Aの片面又は両面に正極用ペーストを塗布して乾燥し、正極活物質層42Bを形成する。これにより正極板42を得ることができる。同様に、銅箔からなる負極集電体44Aの片面又は両面に負極用ペーストを塗布して乾燥し、負極活物質層44Bを形成する。これにより負極板44を得ることができる。
【0049】
次に、得られた正極板42と負極板44の各々に、プレス工程を行う(工程S16)。プレス工程では、正極板42と負極板44の各々をプレスして所定の厚みに調整する。プレス工程が実施された後、正極板42と負極板44とは、所定の大きさにカットされる。
【0050】
所定の大きさにカットされた複数の正極板42及び負極板44が得られると、次に、電極ペア決定工程を行う(工程S18)。電極ペア決定工程では、複数の製造ロットにて製造された正極板42と負極板44とが、電極体40を形成するために2個ずつペアにされる。
【0051】
正極板42及び負極板44のペアが決定すると、次に、電極体形成工程を行う(工程S20)。電極体形成工程では、所定の大きさに切り揃えられた正極板42と負極板44を、セパレータ46を介して交互に積層して電極体40を形成する。このとき、正極板42、負極板44及びセパレータ46が相互に圧接されて、所望の形状に整形される。
【0052】
電極体40が形成されると、次に、セル組立工程を行う(工程S22)。セル組立工程では、以下のようにして電池セルを組み立てる。先ず、電極体40の正極集電体42Aに正極集電板38Pを、負極集電体44Aに負極集電板38Nを、それぞれ溶接する。次いで、正極集電板38P及び負極集電板38Nが取り付けられた電極体40を、電池ケース20に収納する。電池ケース20と蓋体30とを溶接により接合する。この段階では、まだ蓋体30の注液口36は開放されている。
【0053】
次に、セル乾燥工程を行う(工程S24)。このセル乾燥工程では、加熱等により電極体40の水分が除去される。続いて、電解液注入/気密封止工程を行う(工程S26)。この工程では、電解液22を電池ケース20内に充填し、その後、注液口36を気密封止する。これにより、リチウムイオン二次電池10が得られる。
【0054】
リチウムイオン二次電池10が得られると、次に、活性化工程を行う(工程S28)。活性化工程では、リチウムイオン二次電池10に対して初充電を行い、続いて高温化で一定時間保存する高温エージング処理を行う。そして最後に、検査工程を行う(工程S30)。検査工程では、リチウムイオン二次電池10に対して各種検査を行い、一連の製造工程は終了する。
【0055】
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法は、上述した一連の製造工程を経て製造されたリチウムイオン二次電池10の性能を評価する。より詳しくは、リチウムイオン二次電池10のハイレート劣化特性を評価することで、リチウムイオン二次電池10の適切な用途等を特定しようとするものである。
【0056】
上記を踏まえ、本実施の形態では、リチウムイオン二次電池10のハイレート劣化特性を予測するために、正極板42及び負極板44の液流れ量を推定する。ここで、液流れ量とは、電極体からの電解液の流出及び電極体への電解液の流入を含む電解液の流れの量を表す指標である。換言すると、液流れ量とは、正極板42及び負極板44の電解液の流れ易さを示す指標ということもできる。
【0057】
図4は、
図1に示すリチウムイオン二次電池の電極体の液流れ量の測定方法の一例を説明するための模式図である。液流れ量の実測値は、例えば、以下のようにして測定することができる。先ず、
図4(A)に示すように、円筒状の巻き芯に52に電極板(ここでは、正極板42とする)とセパレータ46とを巻き付けて測定サンプル50を作製する。このとき、巻き芯52の開口端部はゴム栓56で塞ぐ。次に、
図4(B)に示すように、測定サンプル50を測定ケース54に収容する。このとき、Oリング58を用いて測定サンプル50と測定ケース54との隙間から電解液が漏れないようにする。
【0058】
次に、測定ケース54に電解液を注入し、測定サンプル50に電解液を含浸させる。含浸後に、所定の圧力を印加し、測定サンプル50から流出する単位時間当たりの電解液の量を測定する。圧力値を種々変更して、単位時間当たりの電解液の流出量を測定する。そして、圧力に対する単位時間当たりの電解液の流出量を表す直線を求め、この直線の傾きを「液流れ量」とする。この方法で求めた液流れ量の単位は、例えば「g/kPa」である。
【0059】
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法においては、製造された後のリチウムイオン二次電池10の液流れ量を推定するため、上述した実測方法は採用できない。そこで、本実施の形態では、液流れ量の推定値を求める。以下では、液流れ量の実測値を「液流れ量(実測値)」と表し、液流れ量の推定値を「液流れ量(推定値)」と表す。液流れ量(推定値)は、正極と負極の各々について用意された推定式を用いて算出することができる。この推定式は、目的変数を液流れ量(推定値)とし、説明変数を製造工程で得られた製造データの各項目とする重回帰式とすることができる。製造工程で得られた製造データには、製造条件を表すデータと物性データとが含まれ得る。なお、本実施の形態では、上述した推定式を用いて液流れ量を推定する場合を例示したが、他の手法、例えば機械学習等を用いて液流れ量を推定することもできる。
【0060】
正極用の推定式に使用される製造データとしては、正極活物質の粒子形状、正極用ペーストの目付量、正極用ペースト内の各材料の密度のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。また、この製造データは、上述したもののみならず、正極活物質の比表面積、正極用ペーストの塗工面及びプレス後の合材密度のうちの少なくとも1つを用いることもできる。
【0061】
負極用の推定式に使用される製造データとしては、負極活物質の平均粒径(D50)、負極用ペーストの塗布量の少なくとも1つを含んでいてよい。また、この製造データは、上述したもののみならず、負極用ペーストの塗工面、目付量及びプレス後の厚みのうちの少なくとも1つを用いることができる。また、正極用及び負極用の推定式に使用可能なその他の製造データとしては、合材に含まれる各材料の混合比率、ペーストの粘度等を挙げることができる。
【0062】
複数のサンプルについて、液流れ量(実測値)と製造データとを取得し、これらのデータを用いて重回帰式をフィッティングして、重回帰式の定数と偏回帰係数とを求める。偏回帰係数は、各説明変数に対する感度を表している。一般に、重回帰式のフィッティングには、説明変数の個数の約10倍のサンプル数が必要である。フィッティングにより定数と偏回帰係数が決定された重回帰式を、推定式として使用する。この推定式に製造データを代入することで、液流れ量(推定値)が算出される。
【0063】
図5は、
図1に示すリチウムイオン二次電池の電極体の液流れ量の推定値と実測値の相関性を示すグラフである。また、液流れ量(推定値)と液流れ量(実測値)との相関性を求めて、推定式の妥当性を検証するとよい。相関性は、
図5に示すように、液流れ量(推定値)と液流れ量(実測値)との重相関係数Rの二乗である決定係数R
2で表すことができる。決定係数R
2は1に近いほど相関性が高い。決定係数R
2が0.5以上であれば十分な相関性を有していると言うことができ、推定式は妥当であると判断される。液流れ量(推定値)の信頼性の観点から、決定係数R
2は0.7以上が好ましい。決定係数R
2が0.5未満の場合には、サンプル数を増やしてフィッティングをやり直す、説明変数を見直す等により、推定式を再設定することが好ましい。
【0064】
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法では、正極及び負極の液流れ量の推定が完了すると、次に、推定された液流れ量から液流れ比率を算出する。ここで、液流れ比率とは、正極板42の液流れ量(推定値)に対する負極板44の液流れ量(推定値)の比率である。換言すると、流れ比率とは、正極板42及び負極板44における電解液22の浸透速度の比を表したものである。
【0065】
図6は、液流れ比率とハイレート抵抗変化率との関係を示すグラフである。
図6から分かる通り、液流れ比率とハイレート抵抗変化率との間には正の相関が認められる。ここで、ハイレート抵抗変化率とは、ハイレート充放電を実施した際の抵抗値の変化率を示したものである。したがって、このハイレート抵抗変化率が低いものはハイレート劣化が発生し難く、ハイレート劣化特性が良いといえる。反対に、このハイレート抵抗変化率が高いものはハイレート劣化が発生し易く、ハイレート劣化特性が相対的に不良であるといえる。このことから、液流れ比率が低い、具体的には1に近いものほどハイレート劣化特性が相対的に良好であり、液流れ比率が高いものほどハイレート劣化特性が相対的に良好でないといえる。なお、液流れ比率が1を下回る場合には、
図6に示すような相関が認められるか不明であるため、本実施の形態において評価するリチウムイオン二次電池10は、正極板42の液流れ量は負極板44の液流れ量と同等か、僅かに小さくなるように調整されているものとする。
【0066】
本実施の形態では、液流れ比率に基づいて、ハイレート劣化特性を予測する。具体的な予測方法は、例えば、
図6に示すグラフにおいて、液流れ比率に基づいて特定されるハイレート抵抗変化率が相対的に低い領域(例えば
図6中の領域A1)にプロットされるものをハイレート劣化特性が良好なリチウムイオン二次電池10A(
図10参照)と評価する。同様に、液流れ比率に基づいて特定されるハイレート抵抗変化率が相対的に高い領域(例えば
図6中の領域A2)にプロットされるものをハイレート劣化特性が良好でないリチウムイオン二次電池10B(
図10参照)と評価する。なお、
図6に示すように、液流れ比率とハイレート劣化特性とは密接に関連しているため、予め液流れ比率とハイレート劣化特性との関係を実験的に特定し、当該特定結果を反映した判定テーブルを準備することで、ハイレート劣化特性の予測を行うようにしてもよい。
【0067】
一連の評価が完了したリチウムイオン二次電池10は、ハイレート劣化特性を踏まえて好ましい用途等を選ぶことができ、性能に合った形態での使用を実現することができる。具体的には、ハイレート劣化特性が相対的に良好なリチウムイオン二次電池は、環境温度が高温である地域や、ハイレート充放電を頻繁に実施する用途であってもハイレート劣化が生じにくい。したがって、例えば温暖な地域を走行する車両の電源としての利用等に適しているといえる。反対に、ハイレート劣化が相対的に良好でないリチウムイオン二次電池は、環境温度が低温である地域やハイレート充放電を行う頻度が低い用途であれば、ハイレート劣化を抑制しつつ使用することができる。したがって、例えば寒冷地を走行する車両の電源や、自宅用の蓄電池としての利用に適しているといえる。
【0068】
上述のような用途等に合った使用を促進するために、製造後のリチウムイオン二次電池10に上述した評価を実行し、評価結果としての性能を考慮して、出荷する仕向地を決定するとよい。
【0069】
以下には、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法を実現可能な、本実施の形態に係る評価装置60について、
図7及び
図8を主に参照して以下に説明する、
【0070】
図7は、本開示の一実施の形態に係る評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態に係る評価装置60は、
図7に示すように、制御部62、表示部76、入力部78、通信部80及び記憶部82を含むものであってよい。
【0071】
制御部62は、例えば周知のコンピュータで構成することができる。少なくとも1つのプロセッサとして機能するCPU(Central Processing Unit)64と、ROM(Read Only Memory)66と、RAM(Random Access Memory)68と、ストレージの一例としての不揮発性のメモリ70と、入出力部(I/O)72とを含んでいてよい。また、前述した各種構成は、内部バスを介して相互に通信可能に接続されていてよい。
【0072】
CPU64は、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりすることができるものであってよい。ROM66は、各種プログラム及び各種データを格納することができるものであってよい。RAM68は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶することができるものであってよい。メモリ70は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリといった記録媒体で構成することができ、オペレーティングシステムを含む各種プログラムやリチウムイオン二次電池10の評価のために必要な各種データ等が少なくとも一時的に格納されていてよい。また、I/O72は、表示部76、入力部78、通信部80及び記憶部82といった評価装置60の各種構成要素とデータの送受信を行うものであってよい。
【0073】
表示部76、入力部78、通信部80及び記憶部82の各々は、I/O72に接続されることで、制御部62に電気的に接続されている。このうち、表示部76は、LCD(液晶ディスプレイ)やOELD(有機ELディスプレイ)といったディスプレイ装置で構成でき、リチウムイオン二次電池10の評価結果等を表示するのに用いることができる。入力部78は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置で構成でき、取得部90で取得する製造データや環境情報の入力を受け付けるために利用できる。通信部80は、通信回線に接続するための通信インタフェース(I/F)で構成でき、製造データや環境情報の受信、評価結果の送信等に用いることができる。そして、記憶部82は、HDD等の外部記憶装置で構成できる。
【0074】
図8は、
図7に示す評価装置の制御部の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。制御部62は、
図8に示すように、機能的構成(あるいはソフトウェア構成)として、リチウムイオン二次電池10の電極体40を構成する正極板42及び負極板44の製造データを取得可能な取得部90と、正極板42及び負極板44の製造データから、正極板42及び負極板44における電解液22の液流れ量を推定可能な推定部92と、推定された正極板42の液流れ量と負極板44の液流れ量とから電極体40の液流れ比率を算出可能な算出部94と、算出された流れ比率に基づいて、リチウムイオン二次電池10のハイレート劣化特性を予測可能な特性予測部96と、を少なくとも含む。なお、これらの各機能部は、上述した制御部62内のCPU64が、所定の制御プログラムを実行することにより実現することができる。また、これらの各機能部により実現される評価プロセスについては、以下に説明するリチウムイオン二次電池の評価方法の説明において詳述する。
【0075】
次に、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法について、主に
図9を参照して説明する。なお、以下の説明においては、一連の評価プロセスを上述した評価装置60にて実行する場合を例示する。したがって、以下の説明は、評価装置60の機能や効果の説明を兼ねている。また、以下に説明するリチウムイオン二次電池の評価方法は、評価装置60の制御部62内のCPU64が所定の動作を実行させる制御プログラムを実行することにより実施されるものであってよい。この制御プログラムは、メモリ70や記憶部82といった非一時的なコンピュータ読取可能媒体に格納され提供され得る。
【0076】
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法は、少なくとも、リチウムイオン二次電池10の電極体40を構成する正極板42及び負極板44の製造データを取得する工程(工程S40)と、正極板42及び負極板44の製造データから、正極板42及び負極板44における電解液22の液流れ量を推定する工程(工程S42)と、推定された正極板42の液流れ量と負極板44の液流れ量とから電極体40の液流れ比率を算出する工程(工程S44)と、算出された液流れ比率に基づいて、リチウムイオン二次電池10のハイレート劣化特性を予測する工程(工程S46)と、を含む。以下、一連のプロセスについてさらに詳述する。
【0077】
図9は、本開示の一実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法の一例を示すフローチャートである。以下の説明では、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法を、製造された後であって且つ出荷前のリチウムイオン二次電池の仕向地を決定する際に利用した場合について説明する。
【0078】
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法を用いて出荷前のリチウムイオン二次電池の仕向地を特定する場合には、先ず、取得部90を動作させて、評価対象である一のリチウムイオン二次電池10の製造データを取得する(工程S40)。ここで取得される製造データは、例えば製造条件を表すデータと物性データとが含まれていてよい。また、この製造データは種々の方法で取得でき、例えば入力部78を介してユーザが直接入力したり、通信部80を介して図示しないサーバ等から取得したりすることができる。製造データの具体的な例はすでに説明した通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0079】
次に、推定部92を動作させ、取得した製造データから、正極板42及び負極板44それぞれの液流れ量を推定する(工程S42)。この液流れ量の推定に際しては、正極及び負極のそれぞれに対して予め準備された推定式を用いることができる。推定式には、上述した重回帰式によるものを採用できる。この場合、得られる液流れ量は、上述した液流れ量(推定値)である。
【0080】
正極板42及び負極板44の液流れ量の推定が完了すると、次に算出部94を動作させ、得られた液流れ量から電極体40の液流れ比率を算出する(工程S44)。そして、特性予測部96において、算出された液流れ比率に基づいて、ハイレート劣化特性を予測する(工程S46)。液流れ比率の算出方法及びハイレート劣化特性の予測方法については、既に上で述べた通りである。工程S46の実施により、リチウムイオン二次電池の評価のための一連のプロセスが完了する。
【0081】
ハイレート劣化特性の予測が完了すると、リチウムイオン二次電池10に適した用途等を特定するために、リチウムイオン二次電池10の使用環境における劣化に関連する条件(以下、「劣化条件」ともいう)の適正範囲及び温度の適正範囲の特定を行う(工程S48)。
【0082】
ここで、劣化条件とは、リチウムイオン二次電池10の充放電に関する機能の劣化に関連する条件を指すものである。例えば、使用頻度や充電頻度等を挙げることができる。ここで、リチウムイオン二次電池10は、その劣化が進行し、劣化率(あるいは容量維持率)が高くなると、ハイレート劣化の発生頻度も上昇する。したがって、劣化が進行しやすい環境では、ハイレート劣化特性が良好なリチウムイオン二次電池を使用するとよい。本実施の形態では、リチウムイオン二次電池10の適正な劣化条件を特定する。
【0083】
また、環境温度は、リチウムイオン二次電池10使用時における周囲温度を指すものである。環境温度が高いとハイレート劣化が発生しやすい。したがって、例えば温暖な地域では、ハイレート劣化特性が良好なリチウムイオン二次電池を使用するとよい。本実施の形態では、リチウムイオン二次電池10の適正な環境温度の範囲を特定する。
【0084】
上述の点を踏まえて、工程S48では、リチウムイオン二次電池10の適正な劣化条件及び環境温度を特定する。なお、本実施の形態では、適正な劣化条件及び環境温度の両方を特定する場合を例示したが、いずれか一方のみを特定するようにしてもよい。
【0085】
次に、特定された適正な劣化条件及び環境温度に基づいて、出荷の仕向地を決定する(工程S50)。仕向地は、例えばハイレート劣化特性が良好なリチウムイオン二次電池10Aであれば、温暖な地域や車両用蓄電池の製造工場等を選択するとよい。同様に、ハイレート劣化特性が良好でないリチウムイオン二次電池10Bであれば、寒冷地や住宅用蓄電池の製造工場等を選択するとよい。
【0086】
以上説明した通り、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法及び評価装置60によれば、リチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性を精度よく予測できるため、リチウムイオン二次電池の性能を高精度に評価することができる。加えて、リチウムイオン二次電池の製造後に上述した評価を実施することで、リチウムイオン二次電池の使用用途や使用環境等を、ハイレート劣化特性を考慮して決定することができる。そのため、出荷後のリチウムイオン二次電池においてハイレート劣化が発生することを未然に抑えることができる。また、ハイレート劣化の発生に起因してユーザが想定するよりも早くリチウムイオン二次電池の劣化等が進行することを抑制することもできる。
【0087】
リチウムイオン二次電池を例えば車両の蓄電池として利用する場合、所望の出力や容量を確保するために、リチウムイオン二次電池を複数個連結して電池ユニットとして利用することがある。このような場合には、リチウムイオン二次電池の性能を正確に把握しておくことで優れた効果が期待できる。そこで以下には、上述したリチウムイオン二次電池の評価方法及び評価装置に関連した、本実施の形態に係る電池ユニットの製造方法及び製造支援装置について説明を行う。
【0088】
図10は、本開示の一実施の形態に係る電池ユニットの製造方法により製造される電池ユニットの一例を示した概略平面図である。本実施の形態に係る電池ユニットの製造方法にて製造される電池ユニット100は、
図10に示すように、上述したリチウムイオン二次電池10を複数個、例えば30個連結(スタック)し、各リチウムイオン二次電池10の電極を図示しないバスバーを用いて電気的に接続することで構成することができる。このように組み立てられた電池ユニット100は、例えば車両に搭載することができる。
【0089】
図11は、
図10に示す電池ユニットが設置される位置の温度分布の一例を示したグラフである。
図11における横軸は電池ユニット100を構成するリチウムイオン二次電池10(cell)の配列を示し、縦軸は各リチウムイオン二次電池10が設置される位置の環境温度である。
【0090】
ここで、車両の適所に搭載された電池ユニット100は、一般に、動作時に発生する熱や周囲の部材からの熱の影響を受ける。このとき、車両用のもののように電池ユニット100が比較的大型であると電池ユニット100の各部で環境温度が異なるといったことが起こり得る。具体的には、電池ユニット100が、例えば
図11に示すような環境温度下での使用が想定されることもある。このような場合、電池ユニット100を構成する複数のリチウムイオン二次電池10のうち、リチウムイオン二次電池10の連結方向における両端部に近い位置に配置されるもの(
図11のグラフ上の横軸方向の両端部付近にプロットされた点)が、同じく連結方向における中央部に配置されるもの(
図11のグラフ上の横軸方向の中央部付近にプロットされた点)に比べて高温な環境下で動作することになる。
【0091】
上述の条件で使用される電池ユニット100を構成する複数のリチウムイオン二次電池10の性能が仮に全く同一であるとすると、連結方向における両端部に近い位置に配置されるリチウムイオン二次電池は、相対的にハイレート劣化が発生する頻度が高くなる。そこで、本実施の形態に係る電池ユニットの製造方法及び当該電池ユニットの製造を支援する製造支援装置では、上述の点を考慮した製造方法及び製造支援を提案する。
【0092】
図12は、本開示の一実施の形態に係る製造支援装置の制御部の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施の形態に係る製造支援装置は、電池ユニット100の製造を支援するための各種情報を提供することが可能な装置であってよい。また、この製造支援装置は、例えば上述した評価装置60のハードウェア構成と、制御部の具体的な構造を除いて、同様の構成で実現することができる。さらに、製造支援装置の制御部62Aは、評価装置60の制御部62と同様に、周知のコンピュータで構成することができる。
【0093】
製造支援装置の制御部62Aの機能的構成は、
図12に示すように、複数のリチウムイオン二次電池10のそれぞれの電極体40を構成する正極板42及び負極板44の製造データと電池ユニット100が設置される位置の環境情報とを取得可能な取得部90Aと、正極板42及び負極板44の製造データから、正極板42及び負極板44における電解液22の液流れ量を推定可能な推定部92と、推定された正極板42の液流れ量と負極板44の液流れ量とから電極体40の液流れ比率を算出可能な算出部94と、算出された液流れ比率に基づいて、複数のリチウムイオン二次電池10のそれぞれのハイレート劣化特性を予測可能な特性予測部96と、複数のリチウムイオン二次電池10のそれぞれのハイレート劣化特性と環境情報とに基づいて、リチウムイオン二次電池を連結する順序を決定する順序決定部98と、を少なくとも含む。
【0094】
上述した各種機能部のうち、推定部92、算出部94及び特性予測部96に関しては、上述した評価装置60のものと同様であるので、詳細は説明を省略する。他方、取得部90Aは、製造データに加えて、電池ユニット100が設置される位置の環境情報をも取得することができる。ここで、環境情報とは、電池ユニット100が設置される位置の各種情報を指し、少なくとも電池ユニット100が設置される位置の温度情報を含み得る。
【0095】
また、順序決定部98は、電池ユニット100を構成する複数のリチウムイオン二次電池10の連結順序を決定するものである。この連結順序の決定には、各リチウムイオン二次電池10のハイレート劣化特性に加えて、取得部90Aで取得した環境情報を利用する。
【0096】
次に、本実施の形態に係る電池ユニットの製造方法について、主に
図13を参照して説明する。なお、以下の説明においては、一連の製造プロセスを上述した製造支援装置の支援に基づいて実行する場合を例示する。したがって、以下の説明は、製造支援装置の機能や効果の説明を兼ねている。また、以下に説明する電池ユニットの製造方法は、製造支援装置の制御部62A内のCPU64が所定の動作を実行させる制御プログラムを実行することにより実施されるものであってよい。
【0097】
本実施の形態に係る電池ユニットの製造方法は、複数のリチウムイオン二次電池10が連結された電池ユニット100の製造する方法であって、少なくとも、複数のリチウムイオン二次電池10のそれぞれの電極体40を構成する正極板42及び負極板44の製造データを取得する工程(工程S102)と、正極板42及び負極板44の製造データから、正極板42及び負極板44における電解液22の液流れ量を推定する工程(工程S104)と、推定された正極板42の液流れ量と負極板44の液流れ量とから電極体40の液流れ比率を算出する工程(工程S106)と、算出された液流れ比率に基づいて、複数のリチウムイオン二次電池10のそれぞれのハイレート劣化特性を予測する工程(工程S108)と、複数のリチウムイオン二次電池10のそれぞれのハイレート劣化特性と、電池ユニット100が設置される位置の環境情報とに基づいて、リチウムイオン二次電池を連結する順序を決定する工程(工程S112)と、決定された順序で複数のリチウムイオン二次電池10を連結する工程(工程S114)と、を含む。以下、一連のプロセスについてさらに詳述する。
【0098】
図13は、本開示の一実施の形態に係る電池ユニットの製造方法の一例を示すフローチャートである。以下では、
図10に示すような複数のリチウムイオン二次電池10を連結してなる電池ユニット100であって、
図11に示すような環境で使用されるものを製造する場合について説明する。
【0099】
本実施の形態に係る電池ユニットの製造方法を用いて電池ユニット100を製造する場合には、先ず、電池ユニット100として組み立てられる複数、例えば30個のリチウムイオン二次電池10を特定する。このとき特定される複数個のリチウムイオン二次電池10は、その性能にばらつきがあってよい。これに関連して、各リチウムイオン二次電池10の正極板42及び負極板44の製造ロットは共通していなくてよい。
【0100】
なお、本実施の形態では、電池ユニット100を構成するリチウムイオン二次電池10を事前に特定する場合を例示するが、当該特定のタイミングは変更することができる。例えば、電池ユニット100を構成するリチウムイオン二次電池10の個数を超える多数のリチウムイオン二次電池10に対し後述する一連の評価プロセスを実施した後、当該多数のリチウムイオン二次電池10の中から、電池ユニット100を構成するリチウムイオン二次電池10を選定するようにしてもよい。
【0101】
電池ユニット100を構成するリチウムイオン二次電池10が特定されると、次に、リチウムイオン二次電池10の評価プロセスを実行する。この評価プロセスは、上述したリチウムイオン二次電池の評価方法にて説明したものと概ね同一である。簡単に説明すると、先ず、取得部90Aを動作させて、特定された複数のリチウムイオン二次電池10の製造データをそれぞれ取得する(工程S102)。次に推定部92を動作させて、取得した製造データから、正極板42及び負極板44それぞれの液流れ量を推定する(工程S104)。
【0102】
正極板42及び負極板44の液流れ量の推定が完了すると、次に算出部94にて、得られた液流れ量から電極体40の液流れ比率を算出する(工程S106)。そして、特性予測部96を動作させて、算出された液流れ比率に基づいて各リチウムイオン二次電池10のハイレート劣化特性を予測する(工程S108)。上述した一連の評価プロセスが、工程S100において特定された複数のリチウムイオン二次電池10の全てに対して実行されることにより、各リチウムイオン二次電池10のハイレート劣化特性の評価結果を取得することができる。
【0103】
各リチウムイオン二次電池10のハイレート劣化特性の評価結果に基づき、本実施の形態では、各リチウムイオン二次電池10を、ハイレート劣化特性の良好なリチウムイオン二次電池10Aと、ハイレート劣化特性の良好でないリチウムイオン二次電池10Bの2つに分類する。また、分類結果は、例えば表示部76を介して電池ユニット100の組み立てを行う作業者等に提供されるとよい。あるいは、電池ユニット100の組み立て作業がマニピュレータ等を含む組立用ロボットにより実施される場合には、通信部80を介して分類結果のデータを当該ロボットのコントローラ等に提供するとよい。なお、複数のリチウムイオン二次電池10の分類手法はこれに限定されない。したがって、例えば上述した手法に代えてより細分化した分類に分けてもよいし、分類自体を省略してもよい。
【0104】
電池ユニット100を構成する複数のリチウムイオン二次電池10の評価が完了すると、次に取得部90Aを動作させて、電池ユニット100が設置される位置の環境情報を取得する(工程S110)。環境情報は、電池ユニット100が設置される位置の温度情報を含んでいてよく、具体的には、
図11に示すような温度情報を含み得る。また、環境情報は、入力部78や通信部80を利用して取得することができる。
【0105】
次に、順序決定部98において、特性予測部96で予測したハイレート劣化特性と環境情報とを用いて複数のリチウムイオン二次電池10の連結順序を決定する(工程S112)。具体的には、環境情報として取得した電池ユニット100が設置される位置の温度分布を基準に、各リチウムイオン二次電池10のハイレート劣化特性の予測結果に基づいて2つに分類されたリチウムイオン二次電池10A、10Bの配置を決定する。
【0106】
図11によれば、電池ユニット100のうち、各リチウムイオン二次電池10の連結方向における両端部に近い位置が、連結方向における中央部に対応する位置に比べて温度が高くなる傾向があることが特定できる。したがって、各リチウムイオン二次電池10の連結順序は、
図10に示すように、ハイレート劣化特性の良好なリチウムイオン二次電池10Aが連結方向における両端部に近い位置に配置され、ハイレート劣化特性の良好でないリチウムイオン二次電池10Bが連結方向における中央部に配置されるように決定するとよい。ここで決定した連結順序は、表示部76や通信部80等を介して作業者等に提供される。
【0107】
複数のリチウムイオン二次電池10の連結順序が決定すると、決定された前記順序に従って複数のリチウムイオン二次電池10を連結して、電池ユニット100の組み立てを行う(工程S114)。この組み立て作業は、作業者あるいは組立用ロボット等によって実現でき、リチウムイオン二次電池10の連結作業に加えて、バスバーの取り付け等の作業をも含む。電池ユニット100の組み立て作業は、上述した複数のリチウムイオン二次電池10の連結作業を含んでいれば、他の詳細な作業内容については特に限定されない。
【0108】
以上説明した通り、本実施の形態に係る電池ユニットの製造方法及び製造支援装置によれば、電池ユニットに含まれる複数のリチウムイオン二次電池の配置を、環境情報とリチウムイオン二次電池のハイレート劣化特性とを考慮して決定できる。したがって、例えば電池ユニット100が設置される位置のうち、比較的温度が高くなる位置にはハイレート劣化特性が相対的に高いリチウムイオン二次電池が配置されるように調整できるため、電池ユニット100に生じるハイレート劣化の頻度を抑制することができるようになる。
【0109】
なお、本実施の形態では、電池ユニット100の設置される位置の温度として、リチウムイオン二次電池10の連結方向における両端部の温度が相対的に高くなる場合を例示した。しかし、例えばリチウムイオン二次電池10自体からの熱が伝わることで、連結方向における中央部の温度が相対的に高くなる場合もある。このような場合には、ハイレート劣化特性の良好なリチウムイオン二次電池10Aを連結方向における中央部に配置すれば上述した実施の形態のものと同様の効果が得られるであろう。
【0110】
また、上述した電池ユニット100には、扁平角型のリチウムイオン二次電池10の最も大きな平面が対向するように連結したものを例示したが、電池ユニット100の連結構造はこれに限定されない。
【0111】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0112】
10 リチウムイオン二次電池
22 電解液
40 電極体
42 正極板(正極の一例)
42A 正極集電体
42B 正極活物質層
44 負極板(負極の一例)
44A 負極集電体
44B 負極活物質層
46 セパレータ
60 評価装置
62、62A 制御部
90、90A 取得部
92 推定部
94 算出部
96 特性予測部
98 順序決定部
100 電池ユニット