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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025162602
(43)【公開日】2025-10-28
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20251021BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20251021BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20251021BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20251021BHJP
   B32B 25/04 20060101ALI20251021BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20251021BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20251021BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20251021BHJP
【FI】
C09D201/00
C09J4/00
C09J11/06
B32B27/00 D
B32B25/04
C09D5/00 D
C09D7/61
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065852
(22)【出願日】2024-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒井 美香子
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 賢明
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB02B
4F100AH02B
4F100AH08
4F100AH08B
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK28B
4F100AK51
4F100AK75
4F100AN00A
4F100AN00C
4F100AN02
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100CB05B
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ54
4F100EJ65
4F100EJ65B
4F100GB32
4F100JB12B
4F100JB14
4F100JK06
4F100JL08B
4F100JL11
4F100JL11B
4J038FA011
4J038FA111
4J038FA281
4J038GA01
4J038HA066
4J038JA66
4J038JB06
4J038JB17
4J038JB28
4J038JB35
4J038JC23
4J038JC24
4J038JC32
4J038JC34
4J038JC35
4J038NA12
4J038PA07
4J038PA17
4J038PA19
4J038PC07
4J040FA011
4J040FA231
4J040FA261
4J040FA291
4J040GA01
4J040HB41
4J040HD23
4J040HD41
4J040JA11
4J040JB02
4J040JB07
4J040KA12
4J040KA13
4J040KA14
4J040LA06
4J040NA15
4J040PA19
4J040PB05
4J040PB06
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、接着剤のゴムへの接着性を向上させるゴム接着用プライマーを提供することにある。
【解決手段】本発明は、バナジウム及び鉄から選択される少なくとも1種の金属を含む、ゴム接着用プライマー組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナジウム及び鉄から選択される少なくとも1種の金属を含む、ゴム接着用プライマー組成物。
【請求項2】
リン酸エステル化合物を更に含む、請求項1に記載のゴム接着用プライマー組成物。
【請求項3】
アクリル系ゴム又はジエン系ゴム用プライマー組成物である、請求項1又は2に記載のゴム接着用プライマー組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のゴム接着用プライマー組成物と、ラジカル重合性化合物及び嫌気硬化触媒を含む嫌気性接着剤とを含む、ゴム用接着剤。
【請求項5】
基材(1)と基材(2)が接着剤層を介して接着された接着積層体であって、
前記基材(1)及び前記基材(2)の少なくとも一方がゴムであり、
前記接着剤層がラジカル重合性化合物の重合物並びにバナジウム及び鉄から選択される少なくとも1種の金属を含む、接着積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品、電気部品等でシール材が使用されている。例えば、自動車エンジンのオイルパン、ミッションケース、モーターケース等にシール材が使用されている。これらの部品とシール材とのずれを防止しするために、シール材と部品とを接着剤を使用して固定する方法が用いられている。シール材の材質としてゴムが一般的に使用されているが、ゴムは難接着材料でありシール材と部品とを強固に接着する接着剤が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)エポキシ化合物を含む主剤と、(B)アミン化合物を含む硬化剤と、からなるオレフィン系ゴム接着用2液エポキシ接着剤が記載されている。特許文献1によれば、当該オレフィン系ゴム接着用2液エポキシ接着剤は、EPDMのようなオレフィン系ゴムに対して、コロナ放電やプライマー塗布等の特別な処理を施さなくても、十分な接着強度を発揮することが可能である。
例えば、特許文献2には、ビスフェノール化合物(A)、共役ジエン系重合体(B)、架橋性アクリレート(C)、及び所定のブロックイソシアネート(D)を含有する活性エネルギー線反応性架橋型接着剤が記載されている。特許文献2よれば、活性エネルギー線反応性架橋型接着剤は、優れた接着性を有しつつ、貯蔵安定性に優れ、環境に対する負荷が低く、ゴムとポリエステル系樹脂材料との接着において良好な接着性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-045450号公報
【特許文献2】特開2009-185126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の接着剤は熱硬化型接着剤であり、特許文献2に記載の接着剤はUV硬化型接着剤であり、それぞれゴムの接着を目的として成されたものである。特許文献1や2に例示されるように、接着剤としてはUV硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、湿気硬化型接着剤等が一般的に知られている。これらの接着剤はそれぞれ使用に制限がある。UV硬化型接着剤にはUV照射装置を用いる必要があり、接着作業をする場所に制約がある。また、UVを照射できない部分は硬化しないことから使用可能な部材にも制限がある。熱硬化型接着剤であっても、加熱炉が必要であり、より簡便な方法が求められている。また、熱硬化型接着剤は硬化に時間を要するため生産効率に問題がある。湿気硬化型接着剤は、硬化に長時間かかり、生産効率に問題がある。また、中心部まで硬化が進んでいるか判断しにくいという問題もある。
このように従来ゴムの接着に使用されていた接着剤には設備や生産性に課題があり、新たな接着剤の適用が求められていた。本発明の目的は、追加の設備導入が不要で接着作業場所が限定されず、且つ、速硬化性を有する接着剤を使用する新たなゴムの接着方法を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、接着剤のゴムへの接着性を向上させるゴム接着用プライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、以下の手段を提供する。
[1] バナジウム及び鉄から選択される少なくとも1種の金属を含む、ゴム接着用プライマー。
[2] リン酸エステル化合物を更に含む、[1]に記載のゴム接着用プライマー。
[3] アクリル系ゴム又はジエン系ゴム用プライマーである、[1]又は[2]に記載のゴム接着用プライマー。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載のゴム接着用プライマー組成物と、ラジカル重合性化合物及び嫌気硬化触媒を含む嫌気性接着剤とを含む、ゴム用接着剤。
[5] 基材(1)と基材(2)が接着剤層を介して接着された接着積層体であって、
前記基材(1)及び前記基材(2)の少なくとも一方がゴムであり、
前記接着剤層がラジカル重合性化合物の重合物並びにバナジウム及び鉄から選択される少なくとも1種の金属を含む、接着積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、嫌気性接着剤の接着強度を向上可能なプライマー組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<プライマー組成物>
プライマー組成物は嫌気性接着剤の硬化を促進するものであり、嫌気性接着剤と組み合わせて使用される。一般的には、プライマー組成物と嫌気性接着剤とは別々の被着体に塗布され、接着時に両方の塗布面を合わせることで、プライマー組成物と嫌気性接着剤とが接触し、嫌気性接着剤の硬化反応が開始し、被着体を強固に接着できる。
【0009】
プライマー組成物は嫌気硬化促進剤、及び任意成分として希釈剤を含む。希釈剤は任意成分であり、プライマー組成物が希釈剤を含まなくてもよい。
【0010】
1.嫌気硬化促進剤
嫌気硬化促進剤は嫌気性接着剤の嫌気硬化の開始に寄与する促進剤である。嫌気硬化促進剤は、バナジウム及び鉄から成る群より選択される少なくとも1種の金属を含む。プライマー組成物がこれらの金属を含む嫌気硬化促進剤を含むことで、併用される嫌気性接着剤にゴムに対する密着性を付与することができる。嫌気硬化促進剤はバナジウム化合物又は鉄化合物から成る群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。このような化合物としてバナジウム又は鉄の無機酸の塩、有機酸の塩、錯塩及びそれらの混合物を挙げることができる。無機酸塩としては硝酸塩、硫酸塩等が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、ナフテン酸塩、ヘキサン酸塩、プロピオン酸塩等が挙げられる。錯塩を形成する配位子としては、アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトン類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のβ-ケトエステル類等が挙げられる。鉄化合物としては、硝酸鉄、硫酸鉄、酢酸鉄、アクリル酸鉄、鉄ヘキソエート、鉄プロピオネート、2-エチルヘキサン酸鉄、ジシクロペンタジエニル鉄、鉄ナフテート等が挙げられる。バナジウム化合物としては、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、バナジルステアレート、バナジウムナフテネート、バナジウムベンゾイルアセトネート、バナジウムシュウ酸塩、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、五酸化バナジウム、五酸化バナジウムとリン酸エステル(例えばリン酸ジブチル)との反応物等が挙げられる。
【0011】
プライマー組成物における嫌気硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.01~30質量%であり、より好ましくは0.02~25質量%であり、特に好ましくは0.05~20質量%である。プライマー組成物における嫌気硬化促進剤の含有量は所望とする条件に合わせて適宜変更してよい。
【0012】
2.希釈剤
希釈剤は室温にて液体のものであればよく、特には限定されない。希釈剤としては、例えば、プレス加工油、有機溶剤並びにラジカル重合性のモノマー及びオリゴマー等が挙げられる。希釈剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上の希釈剤を混合して使用してもよい。
【0013】
プレス加工油は、鋼板等の金属薄板のプレス加工時に一般的に使用されるものであってよい。プレス加工時にプレス加工油を塗布することにより、鋼板表面の付着異物を除去し、プレス加工での金型によるカジリを防止できる。プレス加工油は、例えば、防錆油や金属加工油の基油として一般に使用される鉱物油や合成油を基油として含むものであってよく、これらの鉱物油や合成油の1種類を単独で、又は、複数種類を併用して含んでよい。鉱物油としては、例えば、原油を蒸留して得られる留分を精製したパラフィン系、ナフテン系の精製鉱物油を挙げることができる。また、合成油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、オレフィン系等の炭化水素系合成油、及び、エステル系合成油を挙げることができる。希釈剤がプレス加工油であることで、プライマー組成物が鋼板を積層・接着するために使用される場合において、鋼板を打ち抜き加工する前にプレス加工油を塗布する工程を実施することでプライマー組成物を塗布する工程を省略することが可能となる。
【0014】
有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジクロロメタン、クロロホルム、1.1.1-トリクロロエタン、フレオン等のハロゲン化炭化水素類、n-ヘキサン、トルエン等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。希釈剤の溶解性を上げるために、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶解性の高い有機溶剤を混合して希釈剤として使用してもよい。
【0015】
重合性モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステルとして末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを使用してもよい。末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。詳細には以下で嫌気性接着剤に含まれる末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーと同様であってもよい。
【0017】
本明細書においては、オリゴマーは、重量平均分子量500以上5,000未満の重合体であり、ポリマーは、重量平均分子量5,000以上の重合体であるものとする。なお、本明細書における分子量とは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した重量平均分子量を、標準物質としてポリスチレンを使用して換算した値を意味する。
【0018】
希釈剤の量によりプライマー組成物の粘度を適切な範囲に調整できる。希釈剤の粘度は、好ましくは0.1mPa・s~1,000mPa・sであり、より好ましくは0.15mPa・s~800mPa・sであり、特に好ましくは0.2mPa・s~600mPa・sである。本明細書において、粘度はJIS K 7117:1999に記載される回転粘度計による測定を試験温度25℃下で行って測定される値である。
【0019】
プライマー組成物の粘度は、好ましくは0.1mPa・s~1,000mPa・sであり、より好ましくは0.2mPa・s~900mPa・sであり、特に好ましくは0.3mPa・s~800mPa・sである。
【0020】
プライマー組成物の被着体への塗布は公知の方法で実施されてよい。例えば、プライマー組成物は、ローラー、ディスペンシング、スプレー、インクジェット、又はディッピング等公知の方法で塗布されてよい。
【0021】
3.密着性付与剤
密着性付与剤は、嫌気硬化促進剤とは異なり、直接的に嫌気性接着剤を硬化させるものではないが、嫌気性接着剤の接着力を向上させる成分である。密着性付与剤は好ましくは希釈剤に溶解するものである。密着性付与剤は、プライマー組成物が塗布される被着体に含まれるゴムや金属等の成分と化学的又は物理的に相互作用可能な官能基や元素を含むものが好ましい。このような官能基や元素を含む密着性付与剤では嫌気性接着剤の接着強度を改善する効果が高くなり得る。密着性付与のためには、密着性付与剤が化学的な作用によりゴムや金属等被着体表面を部分的に侵食する化合物や、被着体表面に存在する水酸基と共有結合又は水素結合を形成する化合物であることが望ましい。密着性付与剤を嫌気性接着剤に添加してもよいが、プライマー組成物に添加した場合により接着強度改善効果を高めることができる場合がある。密着性付与剤がプライマー組成物に含まれることで、被着体の表面における密着性付与剤の濃度を高めることができる。これにより密着性付与剤に含まれる官能基又は元素が効率的に被着体と相互作用し、接着強度改善効果を高めることが可能となる。官能基としては-OH、-COOH、―OR、-COOR(Rはアルキル基、好ましくは炭素数1~5のアルキル基)及びSH等が挙げられ、元素としてはアルミニウム、リン、窒素等が挙げられる。さらに、密着性付与剤はラジカル重合性基(エチレン性不飽和結合を有する基)を有してもよい。ラジカル重合性基を密着性付与剤が有することで接着剤の被着体への接着力がさらに向上し得る。
【0022】
具体的な密着性付与剤としては、シランカップリング剤、アルミニウムキレート、リン酸エステル化合物、窒素原子を含有する化合物、チオール含有化合物、有機酸及び有機酸誘導体等が挙げられる。これらの密着性付与剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
シランカップリング剤は1分子中に1個以上のアルコキシシリル基を有する化合物である。シランカップリング剤としては、例えば、アルキルアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、エポキシアルコキシシラン類、ビニルアルコキシシラン類及びアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
アルキルアルコキシシラン類の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン及びn-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
アミノアルコキシシラン類の具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0026】
エポキシアルコキシシラン類の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
ビニルアルコキシシラン類の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びビニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
アルミニウムキレートとしては、少なくとも1つのβ-ケトエノラート陰イオンがアルミニウムに配位した錯体化合物が好ましい。β-ケトエノラート陰イオンの配位数は1、2又は3であってよい。アルミニウムキレートはさらに好ましくはアルコキシ基を有する。金属表面の水酸基とアルミニウムキレートのアルコキシ基とが脱アルコール反応を介して結合し、嫌気性接着剤と金属表面との密着性を高めることができる。アルコキシ基の炭素数は1~10であってよく、好ましくは1~5である。
【0030】
アルミニウムキレート化合物としては、代表的なものとして、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテテート)、アルミニウムジ-n-ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ-sec-ブトキシドモノメチルアセトアセテート等が挙げられる。
【0031】
リン酸エステル化合物は、好ましくは下記一般式(1)又は(2)で表される基を有する。
【0032】
【化1】
【0033】
リン酸エステル化合物は下記一般式(3)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0034】
【化2】
式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基であり、但しアルキル基は(メタ)アクリロキシ基、ビニル基又はアリル基で置換されていてもよく、aは1又は2である。
【0035】
具体的なリン酸エステル化合物としては、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、トリブチルホスフェート、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0036】
窒素原子を含有する化合物は、好ましくは窒素含有官能基(例えば、アミノ基、アミド基、イミド基等)又は窒素含有の複素環構造を含む。この中でも窒素原子を含有するラジカル重合性モノマー及び芳香族アミンが好ましい。
【0037】
具体的な窒素原子を含有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(4-アセチルフェニル)マレイミド、N-(4-メトキシフェニル)マレイミド、N-(4-エトキシフェニル)マレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ブロモフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド等のマレイミド骨格を有するモノマーが挙げられる。その他にもアクリロイルモルフォリンのような(メタ)アクリロイル基が窒素原子と結合したアミド結合を有する化合物が挙げられる。
【0038】
具体的な芳香族アミンとしては、例えば、トルイジン、N,N-ジメチルパラトルイジン、N,N-ジメチルアニリン、アニリン、4-メトキシアニリン、アミノフェノール及びビス(4-アミノフェニル)メタン等が挙げられる。
【0039】
チオール含有化合物としては、例えば、1-ドデカンチオール、1-ブタンチオール、1,3-プロパンジチオール等の脂肪族チオールが挙げられる。3-(トリメルカプトプロピル)トリメトキシシランのようにチオールが含まれるシランカップリング剤も好ましく使用できる。
【0040】
有機酸は好ましくはカルボン酸であり、有機酸誘導体は好ましくはカルボン酸誘導体である。有機酸及び有機酸誘導体の具体例としては、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の1分子中に酸官能基を複数含む化合物、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性基を有する有機酸、及び(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性基を有する有機酸誘導体が挙げられる。有機酸誘導体としてはエステル以外にも酸無水物等を使用できる。これらの中でもラジカル重合性基を有する有機酸及び有機酸誘導体が特に好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、単官能(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステルとして末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを使用してもよい。末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。詳細には以下で嫌気性接着剤に含まれる末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーと同様であってもよい。
【0043】
一部の密着性付与剤は希釈剤として使用することもできる。このような密着性付与剤を「希釈剤の機能を備える密着性付与剤」と呼ぶ。希釈剤の機能を備える密着性付与剤としては、室温にて液体であり低粘度であるものが好ましい。例えば、上に記載した(メタ)アクリル酸エステル及び末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーの中で低粘度(例えば、上記希釈剤と同程度の粘度)のものは希釈剤として使用することも可能であり、希釈剤の機能を備える密着性付与剤である。
【0044】
希釈剤の機能を備える密着性付与剤を使用する場合には希釈剤の使用量を低減でき、場合によっては希釈剤を使用しなくてもよい。このように、希釈剤の機能を備える密着性付与剤を使用する場合にはプライマー組成物中の密着性付与剤の含有量が高くなり得る。従って、プライマー組成物中の密着性付与剤の含有量は、希釈剤の機能を備える密着性付与剤を希釈剤として使用する場合と、その他の場合とに分けて考える必要がある。
【0045】
プライマー組成物における密着性付与剤の含有量は、好ましくは0.01~30質量%であり、より好ましくは0.1~20質量%であり、特に好ましくは1~10質量%である。希釈剤の少なくとも一部を希釈剤の機能を備える密着性付与剤に置き換える場合、プライマー組成物における密着性付与剤の含有量は、特に限定されず、例えば0.1~99.9質量%の範囲内であってよく、好ましくは1~99質量%である。
【0046】
密着性付与剤は、特定の嫌気硬化促進剤との組み合わせにより、特に高い接着強度を嫌気性接着剤に付与することができる。例えば、バナジウムを含む嫌気硬化促進剤とリン酸エステル化合物の組み合わせ等が好ましい組み合わせとして挙げられる。
【0047】
<嫌気性接着剤>
嫌気性接着剤は、金属イオン存在下で酸素が遮断されることで硬化を開始する接着剤である。本実施形態で使用される嫌気性接着剤は特に限定されず、公知のものを使用してよい。例えば、一般に使用されるようにラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤とを含む嫌気性接着剤を使用することができる。嫌気性接着剤は、これらに加えてさらに嫌気硬化触媒を含んでもよい。
【0048】
1.ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物はラジカル重合性基を有する化合物であり、(メタ)アクリル酸エステルであることが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレート等のアクリルモノマー及びアクリルオリゴマーが挙げられる。
【0049】
単官能(メタ)アクリレートとしては、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
嫌気性接着剤は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマーを含んでもよい。
【0052】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマーとしては、特に制限はないが、嫌気硬化性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、イソプレン系(メタ)アクリレート、水添イソプレン系(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル基含有アクリルポリマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートであることがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及びヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物の反応物や、多価アルコールを使用せずに多価イソシアネート及びヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物との反応物が挙げられる。
多価アルコールの具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、多価アルコールと多塩基酸との反応によって得られるポリエステルポリオール、多価アルコールと多塩基酸とε-カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンポリオール、及びポリカーボネートポリオール(例えば、1,6-ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートポリオール等)等が挙げられる。
有機多価イソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、原料ポリオールとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールから製造されたものが、耐侯性や透明性、接着力に優れる点で好ましい。また、原料有機ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートから製造されたものが、耐侯性に優れる点で好ましい。
【0054】
また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリブタジエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、ひまし油骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
2.ラジカル重合開始剤
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物及び光ラジカル発生剤等が挙げられるが、嫌気硬化性の観点から、有機過酸化物が好ましい。
【0057】
有機過酸化物としては、例えば、ハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、ジアリルパーオキサイド類、パーオキシエステル類等の有機過酸化物等が挙げられ、具体的には、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メタンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。保存安定性の観点から、ハイドロパーオキサイド類が好ましく用いられる。
【0058】
また、有機過酸化物としては、嫌気硬化性が優れるという観点から、1時間半減期温度が80℃~300℃の範囲である有機過酸化物が好ましく、100℃~200℃の範囲である有機過酸化物がより好ましい。1時間半減期温度は、ベンゼン中で、過酸化物の濃度0.1mol/Lの条件で熱分解により測定された値である。
【0059】
1時間半減期温度が80℃~300℃の範囲である有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド類が挙げられる。ハイドロパーオキサイド類の具体例としては、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0060】
光ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0061】
アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等が挙げられる。
【0062】
アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤の市販品としては、Omnirad184、Omnirad1173、Omnirad2959、Omnirad127(IGM Resins社製)、ESACUREKIP-150(Lamberti s.p.a.社製)が挙げられる。
【0063】
また、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0064】
アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤の市販品としては、OmniradTPO、Omnirad819(IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。
【0065】
嫌気性接着剤は、ラジカル重合開始剤を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
【0066】
ラジカル重合開始剤の含有量は、嫌気硬化性の観点から、嫌気性接着剤の全質量に対し、0.05質量%~20質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0067】
3.嫌気硬化触媒
嫌気性接着剤は、さらに嫌気硬化触媒を含んでもよい。嫌気硬化触媒は、プライマー組成物中の金属化合物と反応し活性な金属イオンを生成し、この金属イオンとラジカル重合開始剤の反応によるラジカル生成を促進すると考えられているが、この機構は推測であり、本発明を限定するものではない。
【0068】
嫌気硬化触媒としては、サッカリン、アミン化合物、アゾール化合物、メルカプタン化合物、ヒドラジン化合物、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0069】
中でも、サッカリンとヒドラジン化合物又はその塩との併用が、嫌気硬化性の観点から好ましい。
【0070】
アミン化合物としては、例えば、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、1,2,3,4-テトラヒドロキナルジン等の複素環第二級アミン、キノリン、メチルキノリン、キナルジン、キノキサリンフェナジン等の複素環第三級アミン、N,N-ジメチル-アニシジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N’-ジメチル-p-トルイジン等の芳香族第三級アミン等が挙げられる。
【0071】
アゾール化合物としては、例えば、1,2,4-トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ベンゾキサゾール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、3-メルカプトベンゾトリゾール等が挙げられる。
【0072】
メルカプタン化合物としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン等の直鎖型メルカプタン等が挙げられる。
【0073】
ヒドラジン化合物としては、例えば、1-アセチル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2(p-トリル)ヒドラジン、1-ベンゾイル-2-フェニルヒドラジン、1-(1’,1’,1’-トリフルオロ)アセチル-2-フェニルヒドラジン、1,5-ジフェニル-カルボヒドラジン、1-フォーミル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ブロモフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ニトロフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(2’-フェニルエチルヒドラジン)、p-ニトロフェニルヒドラジン、p-トリスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0074】
また、ヒドラジン化合物の塩としては、4-メチルスルホニルフェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン一塩酸塩、p-トリルヒドラジン塩酸塩等が挙げられる。
【0075】
嫌気性接着剤は、嫌気硬化触媒を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
【0076】
嫌気硬化触媒の含有量は、嫌気硬化性の観点から、嫌気性接着剤の全質量に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。また、上限は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0077】
4.密着性付与剤
嫌気性接着剤はプライマー組成物に任意成分として使用される密着性付与剤と同様のものを含んでもよい。ここで、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性化合物は嫌気性接着剤の主成分となり得るものであり、嫌気性接着剤に含まれる密着性付与剤としては除外される。例えば、嫌気性接着剤はシランカップリング剤、アルミニウムキレート及びリン酸エステル化合物から成る群より選択される密着性付与剤を含んでよい。
【0078】
プライマー組成物に含まれる密着性付与剤と嫌気性接着剤に含まれる密着性付与剤とは、同一であっても異なっていてもよい。嫌気性接着剤のみに密着性付与剤を添加することでも嫌気性接着剤の接着力の改善が可能であるが、嫌気性接着剤とプライマー組成物の両方又はプライマー組成物のみが密着性付与剤を含むことで、接着力の改善効果をさらに高めることが可能となる場合がある。嫌気性接着剤における密着性付与剤(但し、ラジカル重合性化合物は除く)の含有量は、好ましくは0.01~8質量%、より好ましくは0.05~5質量%である。
【0079】
プライマー組成物及び嫌気性接着剤に含まれる密着性付与剤(但し、ラジカル重合性化合物は除く)の総量は、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%、特に好ましくは0.02~1質量%である。密着性付与剤の含有量がこれら何れかの範囲内であることで、嫌気性接着剤が高い接着力を奏し得る。プライマー組成物に含まれる密着性付与剤と、嫌気性接着剤に含まれる密着性付与剤(但し、ラジカル重合性化合物は除く)との質量比率は、好ましくは0.005~100で、より好ましくは0.008~80で、特に好ましくは0.01~50でである。ここで、プライマー組成物に含まれる密着性付与剤と、嫌気性接着剤に含まれる密着性付与剤(但し、ラジカル重合性化合物は除く)との質量比率は、式:(プライマー組成物に含まれる密着性付与剤の質量)/(嫌気性接着剤に含まれる密着性付与剤の質量)にて計算される値である。
【0080】
嫌気性接着剤の被着体への塗布は公知の方法で実施されてよい。例えば、プライマー組成物は、ローラー、ディスペンシング、スプレー、インクジェット、又はディッピング等の公知の方法で塗布されてよい。
【0081】
5.その他の成分
前記接着剤組成物には、前述した効果を損なわない範囲で、充填材、各種エラストマー、酸化防止剤、光安定剤、重金属不活性剤、シランカップリング剤、タッキファイヤー、可塑剤、消泡剤、顔料、防錆剤、レベリング剤、分散剤、レオロジー調整剤、難燃剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0082】
<被着体>
プライマー組成物は嫌気性接着剤のゴムへの密着性を向上させることができ、ゴム接着用プライマー組成物として好ましく使用され得る。後述する通り、プライマー組成物及び嫌気性接着剤を使用して接着積層体を製造することができるが、少なくとも一方の被着体がゴムであることが好ましい。プライマー組成物及び嫌気性接着剤を使用して、例えば、ゴムとゴムの接着、ゴムと金属の接着をすることができる。
被着体の少なくとも一方はゴムである。このような被着体はゴム以外の成分を少量含んでもよいが主成分はゴムであり、ゴムの含有量は80質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。他方の被着体は特に限定されないが、ゴム以外の材質としては金属であることが好ましい。被着体は金属以外の成分を少量含んでもよいが金属を主成分とし、金属の含有量は80質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。
【0083】
被着体に用いられるゴムの種類は特に限定されないが、室温(25℃)でゴム弾性を有する固形ゴムを好ましく使用できる。ゴムの具体例としては、アクリルゴム(以下では、ACMとも記載)、エチレンプロピレンジエンゴム(以下では、EPDMとも記載)、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0084】
<接着積層体>
プライマー組成物及び嫌気性接着剤を使用して少なくとも2つの被着体を接着し、接着積層体を製造できる。接着積層体の接着層では、プライマー組成物と嫌気性接着剤とが界面付近で混合され、プライマー組成物と嫌気性接着剤とを含む接着剤が形成される。嫌気性接着剤は上記した成分の何れかを含むものであればよく、例えばラジカル重合性化合物及び嫌気硬化触媒を含むものであってよい。上記した通り、プライマー組成物はゴム接着用プライマー組成物として使用することが好ましく、プライマー組成物と嫌気性接着剤とを含む接着剤もゴムを被着体とすることが好適であり、ゴム用接着剤として使用することが好ましい。
【0085】
接着積層体は、第1の被着体層、嫌気性接着剤の硬化物を含む接着層及び第2の被着体層をこの順に備えるものであってよい。嫌気性接着剤の硬化物はプライマー組成物に含まれる嫌気硬化促進剤及び密着性付与剤等の成分を含んでもよい。
【実施例0086】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0087】
以下表1に記載の原料成分を常温にてミキサーで60分間混合して嫌気性接着剤Aを用意した。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に記載の略称は以下の化合物を表す。
UMA:脂肪族2官能ウレタンメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタアクリレート、三菱ガス化学(株)製
IBXMA:イソボルニルメタクリレート、東京化成工業(株)製
KBM-503:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製「KBM-503」
HOA-MPE:2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、共栄社化学(株)製「HOA-MPE」
安定化剤:
MQ:4-メトキシフェノール、富士フイルム和光純薬(株)製
Omnirad 184:IGM Resins製「Omnirad 184」
パークミルH:クメンハイドロパーオキサイド、日油(株)製「パークミルH」
【0090】
各例において以下表2に記載の原料成分(金属種、密着性付与剤、溶剤)を常温にてミキサーで60分間混合してプライマー組成物を用意した。各例のプライマー組成物に表1の配合の嫌気性接着剤Aを組み合わせてプライマー組成物の評価をした。
【0091】
表2に記載される嫌気硬化促進剤、密着性付与剤についての略称は以下の化合物を指す。
DBP-V:五酸化バナジウムとリン酸ジブチルとの反応物
V(acac)2:バナジルアセチルアセトナート
Fe:トリス(2-エチルヘキサン酸)鉄(III)ミネラルスピリット溶液(Fe:6質量%)
Cu:エチルヘキサン酸銅(II)
Co:2-エチルヘキサン酸コバルト(II)ミネラルスピリット溶液(Co:12質量%)
Mn:2-エチルヘキサン酸マンガン(II)ミネラルスピリット溶液(Mn:8質量%)
(BuO)3PO:リン酸トリブチル
【0092】
(1)密着評価試験
[密着評価試験サンプル作成方法]
30mm×30mmのEPDMゴム又はACMゴムから成る基材を用意しアセトン洗浄して乾燥した。基材にプライマー組成物を塗布し、さらに嫌気性接着剤Aを基材中央に30mm×5mm×1mmで塗布した。この評価に作成したサンプルでは接着剤表面が露出しており嫌気硬化が進みにくいためUV硬化も併用した。アイグラフィックス(株)製のECS-4011GXを用いて、3J/cm(300mW/cm)照射し嫌気性接着剤Aを硬化させた。
【0093】
[密着験評価方法]
基材の接着剤が塗布されていない部分を接着面とは反対側に90°変形させた際に、接着剤が密着して剥がれなかったものをGood、一部剥がれたものをAverage、全て剥がれたものをPoorとして評価した。金属イオンとしてVやFeを使用すると密着性が良好であったが、CuやCo等を使用すると容易に剥がれてしまい、接着剤がゴムと密着していないことが明らかになった。この傾向は密着性付与剤(リン酸トリブチル:(BuO)PO)をプライマー組成物に使用しても変わらなかった。
【0094】
(2)貼り合わせ接着試験
[貼り合わせ試験サンプル作製方法]
30mm×50mmのEPDMゴム又はACMゴムから成る基材を2枚用意しアセトン洗浄して乾燥した。一方の基材にはプライマー組成物を塗布した。他方の基材には嫌気性接着剤Aを塗布した。一方の基材のプライマー組成物を塗布した面と、他方の基材の嫌気硬化型接着剤組成物を塗布した面とを貼り合わせ、ダブルクリップで圧締し、24hr静置し硬化させた。
(株)東洋精機のStrograph20-Cを用い、室温下、10mm/min.でサンプルをせん断方向に引っ張り、せん断強度を測定した。
2枚のサンプルが密着しているものをGood、硬化はしているが容易に剥がれるものをAverage、未硬化であるものをPoorとして評価した。金属イオンとしてVやFeを使用したものは、完全に硬化しており、せん断方向に引っ張っても容易に剥がれることはなかった。しかし、CuやCo等を使用したものは、引っ張るとすぐにはがれてしまった。
【0095】
【表2】