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特開2025-16270データ補正装置、光パルス試験器、光ファイバ測定システム、データ補正方法及びデータ補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016270
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】データ補正装置、光パルス試験器、光ファイバ測定システム、データ補正方法及びデータ補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
G01M11/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119431
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】宗 祥久
(72)【発明者】
【氏名】梯 太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大祐
【テーマコード(参考)】
2G086
【Fターム(参考)】
2G086CC02
(57)【要約】
【課題】ユーザの利便性を高めるデータ補正装置、光パルス試験器、光ファイバ測定システム、データ補正方法及びデータ補正プログラムを提供する。
【解決手段】データ補正装置100は、被測定光ファイバに存在するイベントを測定する光パルス試験器200から測定データを取得する取得部140と、既知イベントと検出イベントとの差分をユーザが確認できるように表示する表示部150と、検出イベントを修正する操作入力をユーザから受け付ける入力部110と、ユーザから受け付けた操作入力に基づいて検出イベントを修正する補正部130とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光ファイバに存在するイベントを測定する光パルス試験器から測定データを取得する取得部と、
前記被測定光ファイバでの存在があらかじめ判明している既知イベントと、前記測定データから検出された検出イベントとの差分をユーザが確認できるように、前記既知イベントと前記検出イベントとを表示する表示部と、
前記検出イベントを修正する操作入力を前記ユーザから受け付ける入力部と、
前記ユーザから受け付けた操作入力に基づいて前記検出イベントを修正する補正部と
を備える、データ補正装置。
【請求項2】
前記表示部は、
前記検出イベントのうち前記既知イベントに含まれないイベントを、前記差分として表示し、
前記既知イベントのうち前記検出イベントに含まれないイベントを、前記差分として表示する、請求項1に記載のデータ補正装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記既知イベントを表示する入力データ表示部と、前記検出イベントを表示する測定データ表示部とを含み、
前記入力データ表示部は、前記検出イベントに含まれず前記既知イベントだけに含まれるイベントを、前記測定データ表示部の空欄に対応づけて表示し、
前記測定データ表示部は、前記既知イベントに含まれず前記検出イベントだけに含まれるイベントを、前記入力データ表示部の空欄に対応づけて表示する、
請求項2に記載のデータ補正装置。
【請求項4】
前記入力データ表示部及び前記測定データ表示部は、前記既知イベント及び前記検出イベントに共通するイベントを表示しない、請求項3に記載のデータ補正装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記測定データの波形を表示する波形表示部を含み、
前記波形表示部は、前記検出イベントのうち修正対象イベントに対応する波形を表示する場合に、前記修正対象イベントの位置を設定できる範囲を表示する、請求項1に記載のデータ補正装置。
【請求項6】
前記波形表示部は、前記修正対象イベントの位置を指定するカーソルを表示し、
前記入力部は、前記カーソルを移動させる操作と、前記カーソルの位置に前記修正対象イベントの位置を設定する操作とを前記ユーザから受け付け、
前記補正部は、前記修正対象イベントの位置を前記カーソルの位置に修正する、
請求項5に記載のデータ補正装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のデータ補正装置を備える光パルス試験器。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のデータ補正装置と、前記データ補正装置に測定データを出力する光パルス試験器とを備える、光ファイバ測定システム。
【請求項9】
被測定光ファイバに存在するイベントを測定する光パルス試験器から測定データを取得することと、
前記被測定光ファイバでの存在があらかじめ判明している既知イベントと、前記測定データから検出された検出イベントとの差分をユーザが確認できるように、前記既知イベントと前記検出イベントとを表示することと、
前記検出イベントを修正する操作入力を前記ユーザから受け付けることと、
前記ユーザから受け付けた操作入力に基づいて前記検出イベントを修正することと
を含む、データ補正方法。
【請求項10】
被測定光ファイバに存在するイベントを測定する光パルス試験器から測定データを取得することと、
前記被測定光ファイバでの存在があらかじめ判明している既知イベントと、前記測定データから検出された検出イベントとの差分をユーザが確認できるように、前記既知イベントと前記検出イベントとを表示することと、
前記検出イベントを修正する操作入力を前記ユーザから受け付けることと、
前記ユーザから受け付けた操作入力に基づいて前記検出イベントを修正することと
をプロセッサに実行させる、データ補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光パルス試験器で測定した光ファイバの測定データを補正するデータ補正装置、データ補正方法及びデータ補正プログラム、並びに、光ファイバを測定する光パルス試験器及び光ファイバ測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、光ファイバに関するイベントを検出する光パルス試験器において、検出されたイベントの妥当性を検討することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-53542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバの接続点又は融着点等のイベントの測定データが実際のイベントの情報と異なることがある。ユーザが実際のイベントの情報をあらかじめ知っている場合、イベントの測定データを手作業で修正する。光ファイバのイベントの数が多い場合、測定データの修正作業が煩雑になる。測定データの修正作業の利便性の向上が求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、光ファイバのイベントの測定データの修正作業の利便性を向上できるデータ補正装置、光パルス試験器、光ファイバ測定システム、データ補正方法及びデータ補正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る(1)データ補正装置は、被測定光ファイバに存在するイベントを測定する光パルス試験器から測定データを取得する取得部と、前記被測定光ファイバでの存在があらかじめ判明している既知イベントと、前記測定データから検出された検出イベントとの差分をユーザが確認できるように、前記既知イベントと前記検出イベントとを表示する表示部と、前記検出イベントを修正する操作入力を前記ユーザから受け付ける入力部と、前記ユーザから受け付けた操作入力に基づいて前記検出イベントを修正する補正部とを備える。
【0007】
既知イベントと検出イベントとの差分が表示されることによって、ユーザは修正対象イベントだけを確認できる。ユーザは、修正対象イベントだけを確認できることによって、測定データから検出した検出イベントの修正操作を、容易に、又は、効率的に実行できる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0008】
一実施形態に係る(2)上記(1)に記載のデータ補正装置において、前記表示部は、前記検出イベントのうち前記既知イベントに含まれないイベントを、前記差分として表示し、前記既知イベントのうち前記検出イベントに含まれないイベントを、前記差分として表示してよい。このようにすることで、ユーザが修正対象イベントをより一層認識しやすくなる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0009】
一実施形態に係る(3)上記(2)に記載のデータ補正装置において、前記表示部は、前記既知イベントを表示する入力データ表示部と、前記検出イベントを表示する測定データ表示部とを含んでよい。前記入力データ表示部は、前記検出イベントに含まれず前記既知イベントだけに含まれるイベントを、前記測定データ表示部の空欄に対応づけて表示してよい。前記測定データ表示部は、前記既知イベントに含まれず前記検出イベントだけに含まれるイベントを、前記入力データ表示部の空欄に対応づけて表示してよい。このようにすることで、ユーザが修正対象イベントをより一層認識しやすくなる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0010】
一実施形態に係る(4)上記(3)に記載のデータ補正装置において、前記入力データ表示部及び前記測定データ表示部は、前記既知イベント及び前記検出イベントに共通するイベントを表示しなくてよい。このようにすることで、ユーザは、既知イベント及び検出イベントで共通しないイベントである修正対象イベントだけを認識できる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0011】
一実施形態に係る(5)上記(1)から(4)までのいずれか1つに記載のデータ補正装置において、前記表示部は、前記測定データの波形を表示する波形表示部を含んでよい。前記波形表示部は、前記検出イベントのうち修正対象イベントに対応する波形を表示する場合に、前記修正対象イベントの位置を設定できる範囲を表示してよい。イベントの位置を設定できる範囲を表示することによって、ユーザがイベントの位置を誤って修正したりイベントを誤った位置に追加したりすることが避けられる。
【0012】
一実施形態に係る(6)上記(5)に記載のデータ補正装置において、前記波形表示部は、前記修正対象イベントの位置を指定するカーソルを表示してよい。前記入力部は、前記カーソルを移動させる操作と、前記カーソルの位置に前記修正対象イベントの位置を設定する操作とを前記ユーザから受け付けてよい。前記補正部は、前記修正対象イベントの位置を前記カーソルの位置に修正してよい。カーソルを操作して検出イベントの位置を設定できることによって、ユーザが簡便に修正操作を実行できる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0013】
幾つかの実施形態に係る(7)光パルス試験器は、上記(1)から(6)までのいずれか1つの記載のデータ補正装置を備える。
【0014】
幾つかの実施形態に係る(8)光ファイバ測定システムは、上記(1)から(6)までのいずれか1つの記載のデータ補正装置と、前記データ補正装置に測定データを出力する光パルス試験器とを備える。
【0015】
幾つかの実施形態に係る(9)データ補正方法は、被測定光ファイバに存在するイベントを測定する光パルス試験器から測定データを取得することと、前記被測定光ファイバでの存在があらかじめ判明している既知イベントと、前記測定データから検出された検出イベントとの差分をユーザが確認できるように、前記既知イベントと前記検出イベントとを表示することと、前記検出イベントを修正する操作入力を前記ユーザから受け付けることと、前記ユーザから受け付けた操作入力に基づいて前記検出イベントを修正することと
を含む。
【0016】
幾つかの実施形態に係る(10)データ補正プログラムは、被測定光ファイバに存在するイベントを測定する光パルス試験器から測定データを取得することと、前記被測定光ファイバでの存在があらかじめ判明している既知イベントと、前記測定データから検出された検出イベントとの差分をユーザが確認できるように、前記既知イベントと前記検出イベントとを表示することと、前記検出イベントを修正する操作入力を前記ユーザから受け付けることと、前記ユーザから受け付けた操作入力に基づいて前記検出イベントを修正することとをプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係るデータ補正装置、光パルス試験器、光ファイバ測定システム、データ補正方法及びデータ補正プログラムによれば、光ファイバのイベントの測定データの修正作業の利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】比較例に係る光パルス試験器の測定データの表示画面である。
図2】光パルス試験器の測定データにおいて自動で検出されなかったイベントの波形を含む波形表示画面の一例である。
図3】光パルス試験器の測定データにおいて自動で誤検出されたイベントの波形を含む波形表示画面の一例である。
図4】本開示の一実施形態に係る光ファイバ測定システムの構成例を示すブロック図である。
図5】表示部に表示する画面の一例である。
図6】本開示の一実施形態に係るデータ補正方法の手順例を示すフローチャートである。
図7】測定データの自動補正の手順例を示すフローチャートである。
図8】測定対象の光ファイバの構成例を示す図である。
図9】測定対象の光ファイバのイベントを、テーブル形式で入力する画面の一例である。
図10】測定対象の光ファイバのイベントを、光ファイバと接続点とを模したアイコンで入力する画面の一例である。
図11】測定対象の光ファイバのイベントの自動検出結果の一例の表である。
図12】測定データを補正する画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、光ファイバの距離を測定したり接続点又は破断点等のイベントを測定したりするための光パルス試験器(OTDR;Optical Time Domain Reflectometer)の測定データを補正するソフトウェア又は装置に関する。
【0020】
光ファイバを光パルス試験器で測定した場合、測定する光の波長に応じて、測定される光ファイバの距離に差が生じることがある。同じ長さの光ファイバを測定した場合でも、波長に応じた屈折率の差に起因して、測定した距離に差が生じることがある。短い距離の間に多数のイベントがある測定経路を複数回繰り返して測定する場合、各イベントの距離がずれることによって集計が困難になることがある。
【0021】
また、光パルス試験器で検出した波形の形状に起因して、光ファイバの接続点又は破断点等のイベントが適切に検出されないことがある。例えば、光ファイバにおいてイベントが検出されるべき位置の波形の変化が小さすぎて、検出されるべきイベントが検出されないことがある。また、光パルス試験器で検出した波形に重畳したノイズに起因してイベントが存在しない位置でイベントが検出されることがある。
【0022】
上述したように、イベントが適切に検出されない場合、ユーザがイベントの検出結果を手動で修正する必要がある。しかしながら、多数の測定データの修正作業は、ユーザの作業負担を増大させる。ユーザは、作業負担を軽減できるように、光ファイバの長さ、又は、各接続点間の距離が事前にわかっている場合に、各イベントの位置を自動的に補正することを望んでいる。
【0023】
そこで、本開示によれば、光パルス試験器の測定データから光ファイバの長さ、接続点又は破断点等をユーザが解析する際に、光ファイバの距離情報を事前に入力することによって、実際の光ファイバの長さに合わせて測定データが自動で補正される。測定データが自動で補正されることによって、ユーザによる解析作業が容易になる。また、光ファイバの各接続点間の実際の距離と測定データにおける解析結果とが異なっていた場合に、異なっている部分をユーザに提示できる。異なっている部分がユーザに提示されることによって、ユーザの確認作業又は修正作業が容易になる。その結果、ユーザの作業負担が軽減される。
【0024】
以下、本開示に係る実施形態が、比較例と対比しながら説明される。
【0025】
(比較例)
光信号によってデータ通信等を行なう光通信システムにおいて、光ファイバが光信号を伝送する媒体として用いられている。光ファイバの敷設、支障移転又は保守等において、光ファイバの長さ、又は、接続箇所の損失若しくは反射等を評価する必要がある。評価のための測定器として光パルス試験器(OTDR:Optical Time Domain Reflectometer)が使用される。光パルス試験器は、被測定光ファイバに光パルスを入射し、後方散乱光又はフレネル反射で入射端に戻ってくる光のパワーを時間領域で測定し、表示又は解析等を実行する装置である。
【0026】
後方散乱光等は、反射点からの距離に比例した遅延時間で入射側に戻る。融着点、コネクタ接続点、分岐点、曲げ点、又は切断点等において後方散乱したりフレネル反射したりした光のパワーを検出した波形は、特徴的な形状を有する。したがって、光のパワーを検出した波形に基づいて、融着点、コネクタ接続点、分岐点、曲げ点、又は切断点等のイベントが検出される。また、被測定光ファイバの始点からイベントまでの距離が測定される。上述したイベントの検出は、光パルス試験器本体で実行されてもよいし、光パルス試験器から測定データを取得して解析するPC(Personal Computer)アプリケーションで実行されてもよい。
【0027】
比較例に係るシステムにおいて、光パルス試験器は、光ファイバを測定した波形に基づいて光ファイバのイベントを検出する。光パルス試験器は、検出した測定データを、図1に示されるように、波形表示部91と、測定データ表示部92とを含む表示部90に表示する。波形表示部91は、光パルス試験器が測定した波形を表示する。波形表示部91において、検出されたイベントにマーカ93が付されている。つまり、検出されたイベントは、マーカ93等のアイコンで模式的に表示されてよい。図1の例において、5つのイベントと光ファイバの終端とが検出されている。測定データ表示部92は、検出されたイベントに関する情報をイベントリストとして表示する。
【0028】
比較例に係るシステムにおいて、検出されたイベントがマーカ93として波形上に描画されることによって、ユーザは、検出されたイベントを表すマーカ93が波形の特徴点に対して正しい位置に付されていることを判断できる。また、検出されたイベントがリスト形式で表示されることによって、ユーザは、被測定光ファイバの接続点等を一覧で確認できる。
【0029】
被測定光ファイバの入射端から各イベントまでの距離は、被測定光ファイバの入射端に光が戻ってくるまでの時間に基づいて算出される。しかし、光ファイバの屈折率の差に起因して実際の光ファイバの長さと、光が戻ってくるまでの時間に基づいて算出した結果とが異なることがある。
【0030】
ユーザは、ファイバの長さ、又は、接続点の位置若しくは異常の箇所をあらかじめ知っている場合、被測定光ファイバの入射端から各イベントまでの距離を、実際のファイバの長さに修正することがある。この場合、ユーザは、手作業で各イベントまでの距離を編集する。しかし、イベントが多数存在する場合又は大量の測定データが存在する場合、作業が非常に煩雑になることがある。また、作業に費やす時間が過大になることがある。また、イベントを検出するアルゴリズムと得られた波形の形状との関係が特定の条件を満たした場合に、イベントが存在するべき箇所においてイベントが検出されない事象、又は、イベントが存在しないはずの箇所にイベントが検出される事象が発生することがある。
【0031】
図2及び図3に例示される波形に基づいて、イベントが適切に検出されていない場合が説明される。図2及び図3の波形のグラフの横軸は光ファイバの始点からの距離を表す。縦軸は光ファイバにおける光の損失の大きさを表す。
【0032】
図2に、イベントが正しく検出されなかった場合の測定波形例が示される。A01、A02及びA03として表される破線の枠で囲まれている箇所は、本来イベントが存在する地点である。A01及びA03として表される破線の枠で囲まれている波形は、段差のような形となっていることから、光ファイバが融着された地点であると考えられる。また、A02として表される破線の枠で囲まれている波形は、大きく立ち上がった形をしていることから、光ファイバ同士がコネクタによって接続された地点であると考えられる。これらの波形の形状がイベントの存在を表すことは、ユーザが目視することによって容易に理解できる。しかし、装置が波形を解析した場合、イベントの検出に失敗することがある。実際に、図2のA02として表される破線の枠で囲まれている部分にイベントに対応するマーカが付されていない。つまり、図2のA02として表される破線の枠で囲まれている部分は、本来イベントが存在するにもかかわらず、イベントとして検出されていない。このようにイベントに対応するマーカが付されていない場合、そのイベントの検出に失敗したと判断される。イベントの検出に失敗した場合、ユーザは、A02として表される波形にイベントを手動で設定する必要がある。
【0033】
図3に、存在しないイベントが検出された場合の測定波形例が示される。B01及びB05として表される破線の枠で囲まれている波形は、段差を有していることから、融着された地点であると考えられる。また、B02として表される破線の枠で囲まれている波形は、立ち上がりの形状を有していることから、コネクタで接続された地点であると考えられる。一方、B03及びB04として表される破線の枠で囲まれている波形は、直線的な形状のままであり特徴的な変化を有していないことから、融着点又は接続点のいずれでもないと考えられる。しかし、イベントに対応するマーカが付されている。つまり、B03及びB04として表される破線の枠で囲まれている波形は、イベントとして誤検出されていると判断される。イベントが誤検出された場合、ユーザは、B03及びB04として表される波形について検出されたイベントを手動で削除する必要がある。
【0034】
ここで、ユーザは、光ファイバのイベントが適切に検出されているかどうかを確認するために、光ファイバの始点から終端までの波形、又は、検出されたイベントリストを確認する必要がある。また、ユーザは、光ファイバのイベントが適切に検出されていないことを発見した場合に、イベントの検出結果を手動で修正する必要がある。光ファイバの測定データが増えるほど、イベントの検出結果の確認作業及びイベントの検出結果の修正作業の負担が増大する。ユーザの作業負担を軽減できるようにユーザの利便性を向上させることが求められる。
【0035】
以下、本開示において、ユーザの利便性を向上できる光ファイバ測定システム及びデータ補正装置100(図4参照)が説明される。本開示の目的は、イベント距離補正機能及びUI(User Interface)によってユーザが理解しやすいイベント距離編集機能を提供することによって、イベント検出機能の利便性を向上させることである。また、本開示において、被測定光ファイバの長さ又は接続点の位置等の情報が既知である場合、事前に各イベントの距離情報をソフトウェアに入力しておくことによって、イベント解析を実行する際に自動で距離が補正される。また、イベント検出結果が事前に入力されたデータと異なっていた場合に、イベントを修正する機能及びユーザへガイド機能を持つGUI(Graphical User Interface)を提供することによって、イベント位置の修正作業の時間が短縮される。
【0036】
(光ファイバ測定システムの構成例)
図4に示されるように、本開示の一実施形態に係る光ファイバ測定システムは、データ補正装置100と、光パルス試験器(OTDR)200とを備える。
【0037】
<データ補正装置100>
データ補正装置100は、表示部150と、操作入力部110と、記憶部120と、イベント補正部130と、取得部140とを備える。
【0038】
表示部150は、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んで構成されてよい。表示部150は、操作入力部110として機能するGUIを表示してユーザからの入力を受け付けるタッチパネルディスプレイとして構成されてもよい。つまり、表示部150は、操作入力部110と一体に構成されてもよい。
【0039】
図5に例示されるように、表示部150は、ファイル一覧154と、波形表示部151と、入力データ表示部152と、測定データ表示部153とを表示する。表示部150が各部に表示する情報の内容は後述される。表示部150は、操作入力部110のGUIとして、十字キー111、イベント設定ボタン112及び確認完了ボタン113を表示してもよい。
【0040】
操作入力部110は、ユーザからの入力を受け付ける入力デバイスを含んで構成されてよい。入力デバイスは、例えば、キーボード又は物理キーを含んでもよいし、タッチパネル若しくはタッチセンサ又はマウス等のポインティングデバイスを含んでもよい。操作入力部110は、上述したように表示部150と一体のタッチパネルディスプレイとして構成されてもよい。操作入力部110は、単に、入力部とも称される。
【0041】
本実施形態において、表示部150は、操作入力部110と一体に構成されるとする。表示部150は、操作入力部110のGUIとして、十字キー111と、イベント設定ボタン112と、確認完了ボタン113とを表示する。表示部150は、ユーザによるタッチ入力を検出してGUIに対する操作入力を受け付ける。
【0042】
記憶部120は、データ補正装置100の動作に用いられる各種情報、又は、データ補正装置100の機能を実現するためのプログラム等を格納する。記憶部120は、データ補正装置100に含まれるプロセッサのワークメモリとして機能してよい。記憶部120は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部120は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを含んで構成されてよい。記憶部120の少なくとも一部は、データ補正装置100の外部に接続される記憶装置として構成されてもよい。
【0043】
取得部140は、光パルス試験器200から測定データを取得する。取得部140は、光パルス試験器200等の他の装置と有線又は無線で通信可能に接続するための通信デバイスを備えてよい。通信デバイスは、例えば、LAN(Local Area Network)又はRS-232C若しくはRS-485等の通信インタフェースを備えてよい。通信デバイスは、これらに限られず、他の種々の通信インタフェースを含んで構成されてよい。
【0044】
イベント補正部130は、取得部140で取得した測定データを補正する。イベント補正部130は、測定データを自動で補正してよいし、操作入力部110から取得したユーザの操作に基づいて測定データを補正してもよい。イベント補正部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成されてよい。イベント補正部130は、プロセッサに所定のプログラムを実行させることによって所定の機能を実現してもよい。イベント補正部130は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用回路を含んで構成されてもよい。イベント補正部130は、単に、補正部とも称される。
【0045】
データ補正装置100は、各構成部を制御する制御部を更に備えてよい。制御部は、例えばCPU等のプロセッサを含んで構成されてよい。制御部は、イベント補正部130と一体に構成されてもよい。
【0046】
データ補正装置100は、デスクトップPC(Personal Computer)又はノートPC等のコンピュータとして実現されてよい。データ補正装置100は、スマートフォン又はタブレット等の携帯端末として実現されてもよい。
【0047】
<光パルス試験器200>
光パルス試験器200は、被測定光ファイバに光パルスを入射し、後方散乱光又はフレネル反射で入射端に戻ってくる光のパワーを時間領域で測定する。後方散乱光等は、散乱点又は反射点からの距離及び光が通過する経路における被測定光ファイバの屈折率に応じた遅延時間で入射端に戻る。光パルス試験器200は、入射端に戻ってきた光のパワーと遅延時間とを対応づけた測定データを出力する。
【0048】
測定データは、光のパワーを検出した波形として表される。融着点、コネクタ接続点、分岐点、曲げ点、又は切断点等の被測定光ファイバのイベントにおいて後方散乱したりフレネル反射したりした光のパワーを検出した波形は、特徴的な形状を有する。光のパワーを検出した波形に含まれる特徴的な形状を解析することによって、融着点、コネクタ接続点、分岐点、曲げ点、又は切断点等の被測定光ファイバのイベントが検出される。また、波形に含まれる特徴的な形状に対応する遅延時間に基づいて、被測定光ファイバの始点からイベントまでの距離が測定される。上述したイベントの検出又はイベントまでの距離の測定は、本開示において、光パルス試験器200から測定データを取得したデータ補正装置100によって実行されるとする。
【0049】
上述したイベントの検出又はイベントまでの距離の測定は、光パルス試験器200本体で実行されてもよい。この場合、データ補正装置100は、光パルス試験器200の一部として構成されてよい。つまり、光パルス試験器200は、データ補正装置100を含んで構成されてよい。
【0050】
(データ補正装置100の動作例)
データ補正装置100は、取得部140で光パルス試験器200から被測定光ファイバの測定データを取得する。データ補正装置100は、測定データから被測定光ファイバのイベントを検出する。測定データから検出された被測定光ファイバのイベントは、検出イベントとも称される。測定データに基づくイベントの検出結果は、検出イベントの種類及び位置を特定する情報を含む。イベントの位置は、被測定光ファイバの入射端からの距離として表される。
【0051】
一方で、データ補正装置100は、被測定光ファイバの経路情報を取得する。被測定光ファイバの経路情報は、被測定光ファイバにおいてあらかじめ存在が判明しているイベントの種類及び位置を特定する情報を含む。被測定光ファイバの経路情報は、あらかじめユーザによって入力されたデータであり、入力データとも称される。言い換えれば、入力データは、あらかじめユーザによって入力された被測定光ファイバの経路情報である。被測定光ファイバにおいてあらかじめ存在が判明しているイベントは、既知イベントとも称される。入力データは、既知イベントを特定する情報を含む。入力データは、データ補正装置100を操作するユーザによって入力されたデータであってもよいし、他のユーザによって入力されたデータであってもよい。入力データは、記憶部120にあらかじめ格納されているとする。入力データは、データ補正装置100の外部の装置に格納されていてもよい。
【0052】
データ補正装置100は、検出イベントの位置を入力データで特定される既知イベントの位置に基づいて補正する。例えば、データ補正装置100は、検出イベントの位置を、その検出イベントに対応する既知イベントの位置に合わせるように補正する。
【0053】
データ補正装置100は、少なくとも一部の検出イベントの位置を、入力データに基づいて補正できないことがある。例えば、検出イベントに対応する既知イベントが存在しないことがある。この場合、データ補正装置100は、検出イベントの位置を、単純に、入力データで特定される既知イベントの位置に合わせるように補正できない。
【0054】
また、既知イベントに対応するイベントが測定データから検出されていないことがある。この場合、データ補正装置100は、検出されていない検出イベントの位置を補正できない。また、データ補正装置100は、自動で検出されなかったイベントを、検出イベントとして自動で追加することもできない。
【0055】
このように、検出イベントと既知イベントとの間に差分が存在する場合、データ補正装置100は、検出イベントを自動で補正できない。
【0056】
データ補正装置100は、補正できなかった検出イベントをユーザに確認させ、必要に応じてユーザによって修正させる。データ補正装置100が補正できなかった検出イベントは、修正対象イベントとも称される。データ補正装置100は、修正対象イベントが存在する場合、修正対象イベントに対応する部分の測定データの波形を表示部150に表示する。ユーザは、表示部150に表示された測定データの波形を見て修正対象イベントを実際に修正する必要があると判断した場合、操作入力部110に修正操作を入力する。データ補正装置100は、操作入力部110で受け付けた修正操作に応じて、修正対象イベントを補正する。データ補正装置100は、ユーザが修正対象イベントについて修正の必要が無いと判断した場合、修正対象イベントを修正せずにそのまま確定させる。
【0057】
以下、データ補正装置100の具体的な動作例が説明される。データ補正装置100は、図6及び図7に例示されるフローチャートの手順を含む、データ補正方法を実行してもよい。データ補正方法は、データ補正装置100を構成するプロセッサに実行させるデータ補正プログラムとして実現されてもよい。データ補正プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0058】
<測定データの自動検出及び自動補正>
図6のフローチャートを参照して、データ補正装置100のイベント補正部130は、取得部140を介して光パルス試験器200から被測定光ファイバの測定データを取得し、測定データの波形に含まれる特徴的な形状をイベントとして検出する(ステップS1)。イベント補正部130は、イベントの位置を表す入射端からイベントまでの距離を、データ補正装置100に設定されている被測定光ファイバの群屈折率(IOR;Index Of Reference)と光の遅延時間とに基づいて算出する。
【0059】
ここで、データ補正装置100に設定されている被測定光ファイバの群屈折率と、実際の被測定光ファイバの群屈折率との間の差異に起因して、検出されたイベントの位置と実際の被測定光ファイバにおけるイベントの位置との間に誤差が生じることがある。イベント補正部130は、測定データを自動で補正する(ステップS2)。つまり、イベント補正部130は、測定データから検出した検出イベントの位置を自動で補正する。
【0060】
イベント補正部130は、測定データから複数のイベントを検出した場合、複数の検出イベントについて順番に自動補正を実行する。イベント補正部130は、自動補正を実行する前に、記憶部120又は外部の装置から、光パルス試験器200が測定した被測定光ファイバの経路情報である入力データを取得する。上述したように、被測定光ファイバの経路情報である入力データは、既知イベントの位置を特定する情報を含む。入力データは、既知イベントの種類を特定する情報を更に含んでもよい。
【0061】
ここで、本実施形態における被測定光ファイバは、図8に例示されるように、光パルス試験器(OTDR)200に接続される入射端から終端(E)までの間にNo.1からNo.5までの5つのイベントが存在する光ファイバであるとする。被測定光ファイバは、異なる6本の光ファイバを含む。6本の光ファイバが5つのイベントで接続されている。
【0062】
図8の被測定光ファイバに存在する5つのイベントのそれぞれの位置を特定する入力データは、図9に例示されるようにテーブル形式の入力インタフェースを用いて入力されてよい。入力データは、図10に例示されるようにGUIを用いて入力されてもよい。図10に例示されるGUIは、被測定光ファイバの経路に含まれる接続点等のイベントを表すアイコン114、被測定光ファイバの終端においてイベントを追加するためのアイコン115、及びイベントまでの距離を入力する入力枠116を含む。アイコン114は、イベントの種類を変更可能に構成されてもよい。アイコン115は、イベントの種類を指定して追加できるように構成されてもよい。GUIの態様は上述した例に限られず他の態様で実現されてもよい。
【0063】
データ補正装置100は、データ補正装置100において入力データの入力を受け付けてもよい。データ補正装置100は、外部の装置において入力された入力データを取得してもよい。
【0064】
イベント補正部130は、測定データの自動補正を、図7のフローチャートの手順として実行する。イベント補正部130は、測定データの自動補正を開始する(ステップS11)。つまり、イベント補正部130は、測定データから検出した検出イベントの位置の自動補正を開始する。イベント補正部130は、測定データから複数のイベントが検出された場合、複数の検出イベントについて、被測定光ファイバの入射端から順番に自動補正の対象のイベントとして選択し、対象のイベントが補正可能であるか判定する(ステップS12)。イベント補正部130は、対象のイベントが入力データで特定される既知イベントに対応づけられる場合、対象のイベントが補正可能であると判定する。
【0065】
イベント補正部130は、対象のイベントが補正可能である場合(ステップS12:YES)、対象のイベントについて自動補正を実行する(ステップS13)。具体的に、イベント補正部130は、対象のイベントの位置を入力データで特定される既知イベントの位置に合わせるように補正する。つまり、イベント補正部130は、対象のイベントの位置を入力データどおりに補正する。イベント補正部130は、ステップS13の手順の実行後、ステップS15の手順に進む。
【0066】
イベント補正部130は、対象のイベントが補正可能でない場合(ステップS12:NO)、対象のイベントをエラーとしてマークする(ステップS14)。イベント補正部130は、ステップS14の手順の実行後、ステップS15の手順に進む。
【0067】
イベント補正部130は、被測定光ファイバの終端まで対象のイベントの補正を完了したかを判定する(ステップS15)。つまり、イベント補正部130は、被測定光ファイバの測定データから検出した全ての検出イベントについて補正可能か判定し、補正可能なイベントの自動補正を完了したかを判定する。
【0068】
イベント補正部130は、被測定光ファイバの終端までの補正を完了していない場合(ステップS15:NO)、次のイベントを自動補正の対象のイベントとして選択し、ステップS12以降の手順を実行する。イベント補正部130は、被測定光ファイバの終端までの補正を完了した場合(ステップS15:YES)、測定データの自動補正を終了する(ステップS16)。
【0069】
イベント補正部130は、測定データの自動補正の終了時に、自動補正後の測定データのファイルを保存する。イベント補正部130は、自動補正後の測定データを、記憶部120又は外部の装置に格納することによって保存してよい。
【0070】
イベント補正部130は、少なくとも1つのイベントについて補正できなかった場合、補正できなかったイベントを含む測定データを区別できるように、補正できなかったイベントを含む測定データにエラーが有ることを表す識別子を関連づけて保存してもよい。
【0071】
入力データで特定される既知イベントに対応するイベントが測定データから検出されないことがある。つまり、少なくとも一部の既知イベントが測定データから検出されないことがある。この場合、イベント補正部130は、検出されなかったイベントが存在する測定データを区別できるように、検出されなかったイベントが存在する測定データにエラーが有ることを表す識別子を関連づけて保存してもよい。
【0072】
イベント補正部130は、測定データが入力データどおりに補正された場合、かつ、入力データで特定される全ての既知イベントが測定データから検出された場合に、その測定データにエラーが無いことを表す識別子を関連づけて保存してもよい。
【0073】
イベント補正部130は、自動補正後の測定データのファイルを、その測定データの自動補正を実行するために用いた入力データとともに保存してよい。測定データの自動補正を実行するために用いた入力データは、その測定データの対応入力データとも称される。
【0074】
自動補正の一実施例として、図11のテーブルとして例示される検出イベントの位置を図9の入力データで特定される既知イベントの位置に合わせるように自動補正が実行されると仮定する。図11の自動補正前のNo.1、2及び3の検出イベントは、図9のNo.1、2及び3の既知イベントに対応する。また、図11の自動補正前のNo.4の検出イベントは、図9のNo.5の既知イベントに対応する。イベント補正部130は、図11の自動補正前のNo.1、2、3及び4の検出イベントの位置を、図9のNo.1、2、3及び5の既知イベントの位置に合わせて補正する。
【0075】
一方で、図11のNo.5の検出イベントは、図9の入力データに含まれるいずれの既知イベントにも対応しない。つまり、図9の入力データは、図11のNo.5の検出イベントに対応する既知イベントを含んでいない。イベント補正部130は、図11の自動補正前のNo.5の検出イベントについて自動補正を実行できないと判定し、No.5の検出イベントをエラーとしてマークする。また、イベント補正部130は、自動補正後の検出イベントを含む測定データを保存する場合に、補正できなかった検出イベントを含む測定データとしてエラーが有ることを表す識別子を関連づけてよい。
【0076】
また、図11の検出イベントは、図9の入力データに含まれるNo.4の既知イベントに対応するイベントを含んでいない。イベント補正部130は、自動補正後の測定データを保存する場合に、検出されなかったイベントが存在する測定データとしてエラーが有ることを表す識別子を関連づけてよい。
【0077】
イベント補正部130は、ステップS16の手順の実行後、図6のフローチャートに戻ってステップS2の自動補正の手順の実行を終了し、ステップS3の手順に進む。
【0078】
<測定データの手動補正>
イベント補正部130は、入力データと測定データとが一致するか判定する(ステップS3)。具体的に、イベント補正部130は、自動補正後の測定データから検出された全ての検出イベントと、対応入力データに含まれる全ての既知イベントとが共通する場合に、入力データと測定データとが一致すると判定する。逆に、イベント補正部130は、検出イベントに含まれるものの既知イベントに含まれないイベントが存在する場合、入力データと測定データとが一致しないと判定する。また、イベント補正部13は、検出イベントに含まれず既知イベントに含まれるイベントが存在する場合も、入力データと測定データとが一致しないと判定する。イベント補正部130が入力データと測定データとが一致すると判定した場合(ステップS3:YES)、データ補正装置100は、図6のフローチャートの手順の実行を終了する。つまり、データ補正装置100は、測定データの補正を完了する。
【0079】
イベント補正部130が入力データと測定データとが一致しないと判定した場合(ステップS3:NO)、データ補正装置100は、修正対象の測定データを表示部150に表示する(ステップS4)。修正対象の測定データは、入力データに一致しない測定データである。また、修正対象の測定データは、修正対象イベントを含む測定データである。
【0080】
データ補正装置100は、ユーザが修正対象の測定データのファイルを選択する入力を操作入力部110で受け付け、選択された測定データと対応入力データとを表示部150に表示する。
【0081】
データ補正装置100は、図12に例示されるように、選択された測定データと対応入力データとを表示部150に表示してよい。表示部150は、測定データのファイル、測定データの波形、入力データ、又は、測定データに基づくイベントの検出結果を画面に表示する。つまり、表示部150に表示される画面は、ファイル一覧154と、波形表示部151と、入力データ表示部152と、測定データ表示部153とを含む。また、表示部150に表示される画面は、操作入力部110のGUIである、十字キー111、イベント設定ボタン112及び確認完了ボタン113を更に含む。
【0082】
ファイル一覧154は、自動補正後の測定データのファイルをリスト形式で表示する。ファイル一覧154は、ファイル名に関連づけて、そのファイルの測定データにエラーが有るか無いかをOK又はNG等の形式で表示してよい。エラーが有る測定データは、修正対象イベントを含む修正対象の測定データである。測定データにエラーが有るか無いかが表示されることによって、ユーザは、修正対象イベントを含む修正対象の測定データのファイルを見つけやすい。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0083】
波形表示部151は、測定データの波形を表示する。測定データの波形を表すグラフの縦軸は、被測定光ファイバの散乱点で散乱したり反射点で反射したりして入射端に戻ってきた光のパワーである。横軸は、被測定光ファイバの入射端から光の散乱点又は反射点までの距離である。
【0084】
入力データ表示部152は、入力データで特定される既知イベントの位置を表示する。既知イベントの位置は、被測定光ファイバの入射端から各既知イベントまでの距離として表される。被測定光ファイバの既知イベントは、図9のNo.1からNo.5までの5つのイベントであるとする。No.Eとして表示されているイベントは、被測定光ファイバの終端を意味する。
【0085】
測定データ表示部153は、測定データから検出された検出イベントに関する情報を表示する。測定データ表示部153は、検出イベントに関する情報として、図12の表示例において検出イベントの位置及び区間屈折率を表示する。検出イベントの位置は、被測定光ファイバの入射端から各検出イベントまでの距離として表される。区間屈折率は、被測定光ファイバにおける、補正後の各イベントを含む区間の群屈折率である。
【0086】
データ補正装置100は、選択された測定データと対応入力データとを、検出イベントと既知イベントとが対応するように表示部150に表示する。
【0087】
入力データ表示部152及び測定データ表示部153は、測定データの検出イベントと対応入力データの既知イベントとで共通するイベントを横に並べて表示してよい。図12の表示例において、測定データの検出イベントと対応入力データの既知イベントとで共通するイベントは、No.1、2、3及び5の4つのイベントとして入力データ表示部152及び測定データ表示部153に表示されている。入力データ表示部152に表示されているNo.1、2、3及び5の4つの既知イベントは、図9のNo.1、2、3及び4の4つの既知イベントのそれぞれに対応する。測定データ表示部153に表示されているNo.1、2、3及び5の4つの検出イベントは、図11のNo.1、2、3及び4の4つの検出イベントのそれぞれに対応する。
【0088】
入力データで特定される既知イベントのうち測定データから検出されていない未検出のイベントが存在する場合、測定データ表示部153は、未検出のイベントに対応する欄を空欄として表示する。入力データ表示部152は、未検出のイベントに対応する既知イベントを、測定データ表示部153の空欄の横に並べて表示する。図12の表示例において、C01として示される破線の矩形で囲まれているように、測定データ表示部153のNo.4の欄が空欄である。測定データ表示部153の空欄は、入力データ表示部152のNo.4の既知イベントが測定データから未検出のイベントであることを表す。つまり、測定データ表示部153の空欄は、測定データに未検出のイベントが存在することを表す。
【0089】
測定データから検出されている検出イベントのうち既知イベントに含まれない誤検出のイベントが存在する場合、入力データ表示部152は、誤検出のイベントに対応する欄を空欄として表示する。測定データ表示部153は、入力データ表示部152の空欄の横に並べて誤検出のイベントを表示する。図12の表示例において、C02として示される破線の矩形で囲まれているように、測定データ表示部153においてNo.6の検出イベントが表示されている。これに対して、入力データ表示部152のNo.6のイベントの欄が空欄である。入力データ表示部152の空欄は、既知イベントに含まれないイベントが測定データから誤検出されたことを表す。つまり、入力データ表示部152の空欄は、測定データに誤検出のイベントが存在することを表す。
【0090】
以上述べてきたように、表示部150は、既知イベントと検出イベントとの差分をユーザが確認できるように、既知イベントと検出イベントとを表示する。このようにすることで、ユーザが修正対象イベントを認識しやすい。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0091】
表示部150は、検出イベントのうち既知イベントに含まれないイベント、及び、既知イベントのうち検出イベントに含まれないイベントを、差分として表示してよい。このようにすることで、ユーザが修正対象イベントをより一層認識しやすくなる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0092】
表示部150は、入力データによって特定される既知イベントを表示する入力データ表示部152と、測定データから検出された検出イベントを表示する測定データ表示部153とを含んでよい。入力データ表示部152は、検出イベントに含まれず既知イベントだけに含まれるイベントを、測定データ表示部153の空欄に対応づけて表示してよい。測定データ表示部153は、既知イベントに含まれず検出イベントだけに含まれるイベントを、入力データ表示部152の空欄に対応づけて表示してよい。このようにすることで、ユーザが修正対象イベントをより一層認識しやすくなる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0093】
入力データ表示部152及び測定データ表示部153は、既知イベント及び検出イベントに共通するイベントを表示しなくてよい。このようにすることで、ユーザは、既知イベント及び検出イベントで共通しないイベントである修正対象イベントだけを認識できる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0094】
C01及びC02として示される破線の矩形で囲まれているNo.4の未検出のイベント及びNo.6の誤検出のイベントは、修正対象イベントに該当する。修正対象イベントは、修正対象でないイベントと区別できるように異なる態様で表示されてよい。図12の表示例において、修正対象イベントのNo.の欄の数字にアスタリスク(*)が付されている。修正対象イベントは、例えば表示欄の背景にハッチング又は色を付した態様で表示されてよい。修正対象イベントは、これらの態様に限られず、他の種々の態様で表示されてよい。
【0095】
図6のフローチャートに戻って、データ補正装置100は、操作入力部110でユーザによる検出イベントの修正操作を受け付ける(ステップS5)。つまり、データ補正装置100は、操作入力部110でユーザが検出イベントを修正する操作入力を受け付ける。具体的に、データ補正装置100は、入力データ表示部152及び測定データ表示部153に表示されているイベントの中から、ユーザが修正対象イベントを選択する入力を操作入力部110で受け付ける。データ補正装置100は、選択された修正対象イベントに対応する部分の測定データの波形を波形表示部151に表示する。
【0096】
図12の表示例において、波形表示部151は、修正対象イベントに対応する部分の測定データの波形とともに、イベントの修正後の位置を指定するためのカーソル162を表示する。検出イベントの位置の設定は、検出イベントの位置の修正、検出イベントの追加を含む。操作入力部110は、十字キー111でカーソル162を移動させる操作入力を受け付け、イベント設定ボタン112で検出イベントの位置をカーソル162の位置に設定する操作入力を受け付ける。カーソル162を操作して検出イベントの位置を設定できることによって、ユーザが簡便に修正操作を実行できる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0097】
波形表示部151は、検出イベントの位置を設定できる範囲を表すイベント設定範囲161の縦線を更に表示してよい。イベント設定範囲161を表示することによって、ユーザがイベントの位置を誤って修正したりイベントを誤った位置に追加したりすることが避けられる。
【0098】
ユーザは、修正対象イベントが未検出のイベントである場合、波形の形状の特徴に基づいて、イベントが検出されるべき位置を判断する。ユーザは、イベントが検出されるべきと判断した位置にカーソル162を移動させてイベント設定ボタン112をタップしたりクリックしたり押下したりすることによってイベントを追加する位置を指定する。データ補正装置100のイベント補正部130は、ユーザによって指定された位置に測定データのイベントを新たに追加する。イベント補正部130は、新たに追加したイベントの位置がそのイベントに対応する既知イベントの位置に合うように、区間屈折率を算出する。
【0099】
ユーザは、修正対象イベントが誤検出のイベントである場合、波形の形状の特徴に基づいて修正対象イベントを削除するかそのまま残すかを判断する。例えば、修正対象イベントに対応する部分の波形が直線等の特徴的でない形状を有する場合、ユーザは、修正対象イベントが実際に誤検出のイベントであると判断し、修正対象イベントを削除する操作を入力する。イベント補正部130は、修正対象イベントを削除する操作に応じて、測定データのイベントから修正対象イベントを削除する。
【0100】
修正対象イベントに対応する部分の波形が段差又はスパイク等の特徴的な形状を有する場合、ユーザは、修正対象イベントが誤検出のイベントではなく、これまで判明していなかった、例えば断線等の想定外のイベントであると判断してよい。この場合、ユーザは、修正対象イベントをそのまま残すように、修正対象イベントを削除する操作を入力しない。
【0101】
図6のフローチャートに戻って、データ補正装置100は、測定データの表示を更新する(ステップS6)。具体的に、データ補正装置100は、新たに設定した修正対象イベント、又は、削除した修正対象イベントの表示を、入力データ表示部152及び測定データ表示部153に反映させる。
【0102】
データ補正装置100は、ユーザによる測定データの確認が完了したか判定する(ステップS7)。データ補正装置100は、ユーザが確認完了ボタン113をタップしたりクリックしたり押下したりした場合に、確認が完了したと判定してよい。データ補正装置100は、ユーザの修正操作によって入力データと測定データとが一致した場合に、確認が完了したと判定してもよい。
【0103】
データ補正装置100は、確認が完了していないと判定した場合(ステップS7:NO)、ステップS4の手順に戻って、次の修正対象イベントに対するユーザの修正操作を受け付ける。
【0104】
データ補正装置100は、確認が完了したと判定した場合(ステップS7:YES)、修正が完了した測定データを被測定光ファイバの測定結果として保存する(ステップS8)。データ補正装置100は、測定結果を記憶部120又は外部の装置に格納することによって保存してよい。被測定光ファイバの測定結果は、被測定光ファイバの検査報告等で用いられてよい。データ補正装置100は、ステップS8の手順の実行後、図6のフローチャートの実行を終了する。データ補正装置100は、ステップS8の手順の実行後、ステップS4の手順に戻って、次の測定データのファイルの選択操作を受け付けてもよい。
【0105】
<小括>
以上述べてきたように、本開示に係るデータ補正装置100は、光パルス試験器200による被測定光ファイバの測定データから被測定光ファイバのイベントを自動で検出できる。また、データ補正装置100は、入力データで特定される既知イベントの位置に合わせて測定データから検出した検出イベントの位置を自動で補正できる。
【0106】
例えば、図11の自動補正前のNo.1の検出イベントは、入射端からの距離が2.00139kmであり、かつ、区間屈折率が1.48であるとして解析されていた。一方で、図12の測定データ表示部153に表示されている自動補正後のNo.1の検出イベントは、入射端からの距離が2.00000kmであり、かつ、区間屈折率が1.48103であるとして補正されている。つまり、イベント補正部130は、距離の補正に整合するように区間屈折率を補正することによって、入射端から検出イベントまでの距離を入力データで特定される既知イベントの位置に合わせるように補正できる。
【0107】
したがって、本開示に係るデータ補正装置100によれば、光ファイバの屈折率の差によって、測定データから算出した光ファイバの長さと実際の光ファイバの長さとが異なる場合があるという問題点が解消される。
【0108】
また、本開示に係るデータ補正装置100は、被測定光ファイバの測定データから検出した検出イベントと入力データで特定される既知イベントとの差分を表示する。ユーザは、差分を確認することによって、全ての検出イベントを確認せずに、差分に対応する修正対象イベントだけを確認すればよい。ユーザは、修正対象イベントだけを確認できることによって、測定データから検出した検出イベントの修正操作を、容易に、又は、効率的に実行できる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0109】
(他の実施形態)
光ファイバ測定システム及びデータ補正装置100の他の実施形態が説明される。
【0110】
<データ補正装置100の態様>
上述してきた実施形態において、データ補正装置100が光パルス試験器200と別の装置として構成される態様が説明されてきた。データ補正装置100の機能は、光パルス試験器200の一部の機能として実現されてもよい。つまり、データ補正装置100の機能は、光パルス試験器200の本体のファームウェアによって実現されてよい。データ補正装置100の機能が光パルス試験器200の一部の機能として実現される場合、被測定光ファイバを光パルス試験器200で測定する作業の準備段階において、被測定光ファイバでの存在があらかじめ判明しているイベントを特定する入力データが光パルス試験器200に入力されてよい。入力データが事前に光パルス試験器200に入力されていることによって、被測定光ファイバの測定作業の現場におけるイベント編集の工数、又は、確認若しくは検査の対象とするイベントが自動で検出されない場合の測定データの修正の工数等が削減される。
【0111】
<測定データと入力データとの差分の表示態様>
上述したように、表示部150の入力データ表示部152及び測定データ表示部153は、測定データから検出された検出イベントと対応入力データで特定される既知イベントとを、互いに対応するように表示する。入力データ表示部152及び測定データ表示部153は、検出イベントと既知イベントとを対応づけて表示するために横に並べて表示してもよいし縦に並べて表示してもよい。入力データ表示部152及び測定データ表示部153は、検出イベントと既知イベントとの対応関係をユーザが認識できる限りにおいて、横又は縦に並べる態様に限られず他の態様で検出イベントと既知イベントとを表示してよい。
【0112】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0113】
100 データ補正装置
110 操作入力部(111:十字キー、112:イベント設定ボタン、113:確認完了ボタン、114、115:アイコン、116:入力枠)
120 記憶部
130 イベント補正部
140 取得部
150 表示部(151:波形表示部、152:入力データ表示部、153:測定データ表示部、154:ファイル一覧、161:イベント設定範囲、162:カーソル)
200 光パルス試験器(OTDR)
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