(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016272
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】鉄道車両用汚物抜き取り装置
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20250124BHJP
B61D 35/00 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
E03F7/00
B61D35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119434
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】513090150
【氏名又は名称】株式会社旭テクノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狹間 克巳
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063EA00
(57)【要約】
【課題】汚水枡からのガスの逆流を防止しつつ、汚水枡の小型化が可能な汚物抜き取り装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る汚物抜き取り装置は、上面に開口部を有する汚水枡と、汚水枡の開口部を覆う蓋と、蓋に取り付けられ、汚水枡に鉄道車両の汚物タンクの排出口にサクションホースを介して接続可能な管状の導入管と、導入管に取り付けられる逆流防止弁とを備える。逆流防止弁は、軸体と、軸体を中心として回転可能であり、導入管の下端を閉鎖する第1の回転位置と、導入管の下端を開放する第2の回転位置との間で回転可能な開閉蓋と、開閉蓋に取り付けられ、開閉蓋に対して導入管の内部から加えられる力の大きさが第1の閾値以下である場合、開閉蓋を第1の回転位置に位置させ、開閉蓋に対して導入管の内部から加えられる力の大きさが第1の閾値より大きい第2の閾値以上である場合、開閉蓋を第2の回転位置に位置させるバランスウェイトとを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用の汚物抜き取り装置であって、
上面に開口部を有する汚水枡と、
前記汚水枡の前記開口部を覆う蓋と、
前記蓋に取り付けられ、前記汚水枡に前記鉄道車両の汚物タンクの排出口にサクションホースを介して接続可能な管状の導入管と、
前記導入管に取り付けられる逆流防止弁とを備え、
前記逆流防止弁は、
前記導入管の外方に配置された軸体と、
前記軸体を中心として回転可能となるように前記軸体に取り付けられ、前記導入管の下端を閉鎖する第1の回転位置と、前記導入管の下端を開放する第2の回転位置との間で回転可能な開閉蓋と、
前記開閉蓋に取り付けられ、前記開閉蓋に対して前記導入管の内部から加えられる力の大きさが第1の閾値以下である場合、前記開閉蓋を前記第1の回転位置に位置させ、前記開閉蓋に対して前記導入管の内部から加えられる力の大きさが前記第1の閾値より大きい第2の閾値以上である場合、前記開閉蓋を前記第2の回転位置に位置させるバランスウェイトとを含む、汚物抜き取り装置。
【請求項2】
前記汚水枡の内部に所定量の汚水を貯留するための貯留部が設けられていない、請求項1に記載の汚物抜き取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の汚物タンクから汚物を抜き取るための汚物抜き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両のトイレに設置される汚物タンクが記載されている。特許文献1に記載の汚物タンクには、汚物タンクに溜まった汚物を排出するための開閉コックが設けられている。
【0003】
図3は、従来の汚物抜き取り装置の概略構成を示す模式図である。
【0004】
汚物抜き取り装置90は、車両基地に設けられており、鉄道車両の汚物タンクから汚物を抜き取るために用いられる。汚物抜き取り装置90は、地中に埋設された汚水枡91と、汚水枡91の上部の開口部を閉鎖する蓋92a及び92bと、蓋92aの中央部に設けられた開口に挿入され、図示しないボルト等の固定手段で蓋92aに固定される管状の汚物抜き取りアーム93と、汚物抜き取りアーム93の外方端部に接続されたサクションホース94と、サクションホース94の先端部に取り付けられたカップラー95とを備える。
図3の例では、サクションホース94は、カップラー95に接続されたチェーン96を用いて車両基地に設けられたフックに吊り下げられている。汚水枡91の内部には、下水道に通じる開口部97と、汚水枡91の内部を区画する隔壁98が設けられている。
【0005】
鉄道車両の汚物タンクから汚物を抜き取る際は、吊り下げ用のチェーン96をフックから取り外し、カップラー95を鉄道車両の汚物タンクの開閉コックに接続し、開閉コックを開く。汚物タンクには工業用水が注入され、汚物タンク内の汚物を抜き取ると共に、汚物タンク内の洗浄を行う。
【0006】
汚水枡91は、トラップ枡であり、隔壁98で区画されたトラップ部99には常時汚水が貯留されている。汚物抜き取りアーム93を通じて汚水枡91内に導入された汚水は、トラップ部99に注入され、トラップ部99から溢れた汚水が開口部97を通じて下水道に流れる。汚物抜き取りアーム93の下端は、トラップ部99に貯留された汚水の水面下内部に配置されており、汚水枡91内の硫化水素やアンモニア等のガスが汚物抜き取りアーム93を通じて放出されることが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
汚水枡内の有毒ガス・有臭ガスの逆流を防止することは不可欠であるため、汚水抜き取り装置には、従来、
図3に示したような汚水枡(トラップ枡)が使用されてきた。汚水抜き取り装置は、車両編成に合わせて複数台埋設することが必要であるが、
図3に示した構造の汚水枡はトラップ部を有するため大型であり、汚水枡の設置スペースが多く必要となる上、設置に要するコストも高くなる。
【0009】
それ故に、本発明は、汚水枡からのガスの逆流を防止しつつ、汚水枡の小型化が可能な汚物抜き取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鉄道車両用の汚物抜き取り装置であって、上面に開口部を有する汚水枡と、汚水枡の開口部を覆う蓋と、蓋に取り付けられ、汚水枡に鉄道車両の汚物タンクの排出口にサクションホースを介して接続可能な管状の導入管と、導入管に取り付けられる逆流防止弁とを備え、逆流防止弁は、導入管の外方に配置された軸体と、軸体を中心として回転可能となるように軸体に取り付けられ、導入管の下端を閉鎖する第1の回転位置と、導入管の下端を開放する第2の回転位置との間で回転可能な開閉蓋と、開閉蓋に取り付けられ、開閉蓋に対して導入管の内部から加えられる力の大きさが第1の閾値以下である場合、開閉蓋を第1の回転位置に位置させ、開閉蓋に対して導入管の内部から加えられる力の大きさが第1の閾値より大きい第2の閾値以上である場合、開閉蓋を第2の回転位置に位置させるバランスウェイトとを含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、汚水枡からのガスの逆流を防止しつつ、汚水枡の小型化が可能な汚物抜き取り装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る汚物抜き取り装置の概略構成を示す模式図
【
図3】従来の汚物抜き取り装置の概略構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態に係る汚物抜き取り装置の概略構成を示す模式図であり、
図2は、
図1に示した”X”部分の拡大断面図である。
【0014】
汚物抜き取り装置100は、車両基地に設けられており、鉄道車両の汚物タンクから汚物を抜き取るために用いられる。汚物抜き取り装置100は、汚水枡1と、蓋2と、導入管3と、逆流防止弁4とを備える。
【0015】
汚水枡1は、コンクリートにより形成され、地中に埋設される。汚水枡1の上面には開口部が設けられている。汚水枡1は、箱形形状を有し、側面に下水道に通じる開口部9が設けられている。
図1に示す汚水枡1には、
図3に示したようなトラップ部を構成する隔壁が設けられていない。
【0016】
蓋2は、金属またはコンクリートからなり、汚水枡1の上部の開口部を覆って塞いでいる。蓋2には、導入管3を挿通させるための開口部が設けられている。
【0017】
導入管3は、鉄道車両の汚物タンクから抜き取った汚物を汚水枡1内に導入するためのパイプ状の部材である。本実施形態では、導入管3は、蓋2の上面近傍から汚水枡1の内部に垂直下方に延びるように構成されている。導入管3の上端には、
図3に示したような汚物抜き取りアーム(
図1の二点鎖線)と、サクションホースと、カップラーとを接続しても良い。
【0018】
逆流防止弁4は、汚水枡1の内部において導入管3に取り付けられており、汚物抜き取り装置100の不使用時に導入管3の下端を閉鎖して、汚水枡1からのガスの逆流を防止する機能を有する。逆流防止弁4は、軸体6と、開閉蓋7と、バランスウェイト8とを有する。
【0019】
軸体6は、導入管3の外方側において略水平方向に延びるように配置されており、ブラケット等を介して導入管3に取り付けられている。
【0020】
開閉蓋7は、軸体6を中心として回転可能となるように軸体6に取り付けられている。開閉蓋7は、導入管3の下端を閉鎖する第1の回転位置(
図2の実線で示す位置)と、導入管3の下端を開放する第2の回転位置(
図2の二点鎖線で示す位置)との間で回転可能である。
【0021】
バランスウェイト8は、軸体6を挟んで開閉蓋7と反対側に配置され、開閉蓋7に接続されている。バランスウェイト8は、開閉蓋7と一体となって軸体6を中心として回転可能である。バランスウェイト8は、導入管3の内部から開閉蓋7に加えられる力の大きさに応じて、開閉蓋7の回転位置を変化させる。導入管3の内部から開閉蓋7に加えられる力は、典型的には、導入管3を流れる汚水により加えられる力である。また、導入管3にサクションホースに接続されたパイプ状の接続部材を挿入してサクションホースを導入管3に接続する構成を採用する場合は、導入管3の内部から開閉蓋7に加えられる力は、接続部材による押圧力であっても良い。
【0022】
導入管3には、逆流防止弁4の周囲を取り囲むように保護カバー5が取り付けられている。保護カバー5は、例えば、導入管3に接続されるブラケット等を介して導入管3に取り付けることができる。保護カバー5を設ける場合、軸体6を保護カバー5に取り付けても良い。
【0023】
図2において実線で示すように、導入管3内に汚水が流入していない状態、または、上述した接続部材が開閉蓋に接触していない状態においては、バランスウェイト8の自重により開閉蓋7には、
図2において軸体6を中心として時計回り方向のモーメントが働く。そのため、開閉蓋7は、実線で示す第1の回転位置において導入管3の下端に押し当てられ、導入管3の下端を閉鎖する。開閉蓋7が導入管3の下端を閉鎖することにより、汚水枡1内の硫化水素やアンモニア等のガスが導入管3を通じて地上に放出されることが防止されている。
【0024】
鉄道車両の汚物タンクから汚物を抜き取る際は、図示しないサクションホースに設けられたカップラーを鉄道車両の汚物タンクの排出口に接続する。サクションホースの他端は、
図3に示したような汚物抜き取りアームを介して導入管3に接続しても良いし、サクションホースの他端に接続されたパイプ状の接続部材等を介して導入管3に接続しても良い。接続部材を用いる場合、ボルト等を用いて接続部材を蓋2に固定しても良いし、接続部材を導入管3の内部に挿入しても良い。鉄道車両の汚物タンクの排出口と導入管とをサクションホースで接続した後、排出口の開閉コックを開く。汚物タンクに工業用水を注入することにより、汚物タンク内の汚水をサクションホースを通じて導入管3の内部に注入する。
【0025】
導入管3に汚水が注入されると、汚水の落下に伴う押圧力が開閉蓋7に加わる。導入管3を流れる汚水によって開閉蓋7に加えられる力の大きさが第1の閾値を超えると、開閉蓋7は軸体6を中心として
図2における反時計回り方向に回転を始める。導入管3を流れる汚水によって開閉蓋7に加えられる力の大きさが第1の閾値を超えた状態では、開閉蓋7によって開放された導入管3の下端から汚水枡1に汚水が流れ込み、汚水枡1の側面に設けられた開口部9を通じて汚水が下水道に流れる。導入管3を流れる汚水の流量が増加すると、開閉蓋7は軸体6を中心として
図2における反時計回り方向に更に回転し、導入管3を流れる汚水によって開閉蓋7に加えられる力の大きさが第1の閾値より大きい第2の閾値を超えると、開閉蓋7は二点鎖線で示す第2の回転位置まで移動し、導入管3の下端を大きく開放した状態となる。
【0026】
汚物タンクへの工業用水の注入を停止して、導入管3への汚水の流入が止まり、導入管3を流れる汚水によって開閉蓋7に加えられる力の大きさが第1の閾値以下となると、開閉蓋7は、バランスウェイト8の自重によって第1の回転位置に復帰し、導入管3の下端を閉鎖した状態となる。
【0027】
尚、サクションホースに上述したパイプ状の接続部材を設け、パイプ状の接続部材を導入管に挿入して、接続部材で開閉蓋を直接押し下げて導入管3の下端を開放しても良い。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る汚物抜き取り装置100は、汚水枡1内に汚水を導入するための導入管3に、バランスウェイト8を有する逆流防止弁4が設けられている。逆流防止弁4の開閉蓋7は、導入管3を流れる汚水や導入管3に挿入された接続部材から加えられる力の大きさが第1の閾値を超えると導入管3の下端を開放し、第1の閾値以下になると導入管3の下端を閉鎖するように構成されている。したがって、本実施形態に係る汚物抜き取り装置100においては、汚物タンクからの汚物の抜き取り時に容易に逆流防止弁4を開いて汚水を汚水枡1に流入させることができ、不使用時には逆流防止弁4で自動的に導入管3の下端を閉鎖することができる。逆流防止弁4によって汚水枡1からのガスの逆流を防止できるため、
図3に示した従来のトラップ枡のようにトラップ部が不要であり、汚水枡1の小型化を図ることができる。
【0029】
車両基地には、1編成の車両に備わる複数の汚物タンクに対応して複数台の汚物抜き取り装置が設けられる。本実施形態に係る汚物抜き取り装置100であれば、汚水枡1を小型化することができるため、汚水枡1の埋設に要するスペースと設置費用を低減することが可能となる。
【0030】
それ故に、本発明によれば、汚水枡からのガスの逆流を防止しつつ、汚水枡の小型化が可能な汚物抜き取り装置を提供できる。
【0031】
尚、上述した第1の閾値及び第2の閾値は、開閉蓋7及びバランスウェイト8のそれぞれの質量、開閉蓋7及びバランスウェイト8のそれぞれの軸体6(回転中心)からの腕の長さ、開閉蓋7を開くために必要な汚水の流量の設計値に基づいて適宜設定することができる。
【0032】
また、本発明は、鉄道車両の汚物タンクから汚物を抜き取るための汚物抜き取り装置だけでなく、鉄道車両以外の車両や航空機の汚物タンクや、トラックに荷積みされた簡易トイレ等の汚物タンクから汚物を抜き取るための汚物抜き取り装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、汚物タンクから汚物を抜き取るための汚物抜き取り装置に利用でき、特に、車両基地に設けられる鉄道車両用の汚物抜き取り装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 汚水枡
2 蓋
3 導入管
4 逆流防止弁
6 軸体
7 開閉蓋
8 バランスウェイト