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  • 特開-ディスペンサ 図1
  • 特開-ディスペンサ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016278
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20250124BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119444
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】519231500
【氏名又は名称】ハンファ精密機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小畑 秀行
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA36
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA12
4F042CB08
(57)【要約】
【課題】アクチュエータの鉛直方向の高さ位置の調整をねじ込み動作によって行う際に、そのアクチュエータの直立性を確保することができるディスペンサを提供する。
【解決手段】液体材料を吐出するノズル32と、ノズル32に液体材料を供給する供給流路33と、先端部が供給流路33内を上下方向に往復動作するタペット34と、タペット34に変位を与える変位拡大機構14と、変位拡大機構14に変位を与えるアクチュエータ15と、アクチュエータ15の鉛直方向の高さ位置をねじ込み動作によって調整する高さ調整機構16とを備えるディスペンサである。アクチュエータ15は、高さ調整機構16の下端部162と転がり接触する上端部151を含む。アクチュエータ15の上端部151は曲率半径R1を有する凸球面であり、高さ調整機構16の下端部162は、曲率半径R1より大きい曲率半径R2を有する凹球面である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を吐出するノズルと、前記ノズルに液体材料を供給する供給流路と、先端部が前記供給流路内を上下方向に往復動作するタペットと、前記タペットに変位を与える変位拡大機構と、前記変位拡大機構に変位を与えるアクチュエータと、前記アクチュエータの鉛直方向の高さ位置をねじ込み動作によって調整する高さ調整機構とを備えるディスペンサであって、
前記アクチュエータは、前記高さ調整機構の下端部と転がり接触する上端部を含み、
前記アクチュエータの上端部は、曲率半径R1を有する凸球面であり、
前記高さ調整機構の下端部は、前記曲率半径R1より大きい曲率半径R2を有する凹球面である、ディスペンサ。
【請求項2】
前記曲率半径R1に対する前記曲率半径R2の比が、1.1以上1.4以下である、請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項3】
前記凸球面及び前記凹球面の表面粗さRaが、それぞれ0.4μm以下である、請求項1又は2に記載のディスペンサ。
【請求項4】
前記変位拡大機構は、円柱形状の支点部材と、前記支点部材に接触する支点部、前記タペットの上端部に接触する作用点部、及び前記アクチュエータの下端部に接触する円柱形状の力点部を有するレバー部材とを含み、
前記アクチュエータの下端部と前記レバー部材の力点部とが転がり接触する、請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項5】
前記支点部材と前記支点部とが転がり接触する、請求項4に記載のディスペンサ。
【請求項6】
前記アクチュエータはピエゾ素子を含む、請求項1に記載のディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料を吐出するディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水、油、レジンなどの液体材料を吐出するディスペンサは、半導体工程や医療分野などの様々な分野に使われている。特に半導体工程においては、アンダーフィル工程にディスペンサが多く使われており、半導体素子のパッケージの内部をレジンで充填する用途にもディスペンサが多く使われている。LED素子の製造工程においては、蛍光物質とレジンとが混合された蛍光液をLEDチップに塗布する工程にディスペンサが使われている。
【0003】
このように液体材料を吐出するディスペンサとしては、タペットの往復動作によってノズルから液体材料を吐出する形式のものが知られており、特許文献1では、液体材料を吐出するノズルと、ノズルに液体材料を供給する供給流路と、先端部が供給流路内を上下方向に往復動作するタペット(プランジャ)と、タペット(プランジャ)に変位を与える変位拡大機構と、変位拡大機構に変位を与えるアクチュエータとを備えるディスペンサ(液体塗布装置)が開示されている。特許文献1には、アクチュエータにピエゾ素子(圧電素子)を用いることも開示されている。
また特許文献2にも、アクチュエータにピエゾ素子(ピエゾスタック)を用いることが開示されている。特許文献2には、ねじ込み動作によってピエゾ素子(ピエゾスタック)の鉛直方向の高さ位置を調整することも開示されている。
【0004】
ところでピエゾ素子には、特に、せん断応力、曲げ応力や引張応力に弱いという短所がある。そのため、ピエゾ素子を含むアクチュエータの鉛直方向の高さ位置の調整をねじ込み動作によって行う場合、その際にアクチュエータの直立性が確保されていないと、ピエゾ素子にせん断応力、曲げ応力や引張応力が作用し、アクチュエータとしての動作精度が低下したり、寿命が短くなったりするなどの問題が発生する。なお、アクチュエータとしてはピエゾ素子を含むもののほか、磁歪素子などを含むものもあるが、この場合も、アクチュエータの直立性の確保は、アクチュエータの動作精度向上や長寿命化などの観点から重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-30865号公報
【特許文献2】特表2020-534145
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、アクチュエータの鉛直方向の高さ位置の調整をねじ込み動作によって行う際に、そのアクチュエータの直立性を確保することができるディスペンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、次のディスペンサが提供される。
液体材料を吐出するノズルと、前記ノズルに液体材料を供給する供給流路と、先端部が前記供給流路内を上下方向に往復動作するタペットと、前記タペットに変位を与える変位拡大機構と、前記変位拡大機構に変位を与えるアクチュエータと、前記アクチュエータの鉛直方向の高さ位置をねじ込み動作によって調整する高さ調整機構とを備えるディスペンサであって、
前記アクチュエータは、前記高さ調整機構の下端部と転がり接触する上端部を含み、
前記アクチュエータの上端部は、曲率半径R1を有する凸球面であり、
前記高さ調整機構の下端部は、前記曲率半径R1より大きい曲率半径R2を有する凹球面である、ディスペンサ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アクチュエータの上端部と高さ調整機構の下端部とが球面で転がり接触することから、アクチュエータの鉛直方向の高さ位置の調整をねじ込み動作によって行う際にそのアクチュエータが鉛直方向に直立するように自動調心される。これによりアクチュエータの直立性を確保することができる。更に本発明によれば、アクチュエータの上端部と高さ調整機構の下端部とが球面で転がり接触することから、アクチュエータの上端部と高さ調整機構の下端部との摩擦による損耗、すなわち摩耗を低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態であるディスペンサを一側面側から見た斜視図。
図2図1のディスペンサの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、本発明の一実施形態であるディスペンサを一側面側から見た斜視図で示している。また、図2には図1のディスペンサを縦断面図で示している。
本実施形態のディスペンサXは、ディスペンサ本体1と、ディスペンサ本体1に着脱可能に装着されるノズルブロック3とを備えている。
【0011】
ディスペンサ本体1は、メインフレーム11の両側面がカバー111で覆われた形状を有し、その内部に後述する各部材が設置されている。なお、メインフレーム11の上面部には、メインフレーム11内に設置されている各部材へ電源を供給するための電源端子12、並びにメインフレーム11内に冷却用のエアを導入し排出するためのエア導入部13A及びエア排出部13Bが設けられている。
【0012】
ノズルブロック3は、メインフレーム11の下面側に着脱可能に装着されている。ノズルブロック3は、ブロック本体31と、液体材料を吐出するノズル32と、ノズル32に液体材料を供給する供給流路33と、先端部が供給流路33内を上下方向に往復動作するタペット34とを含む。
ノズル32は、ノズルナット321により、ブロック本体31の下面側のノズル装着部311に装着されている。
供給流路33は、ブロック本体31の上面部に設けられている液体材料導入部312とノズル32とを連通するように、ブロック本体31内に形成されている。なお、液体材料導入部312には、液体材料を貯留するタンク(図示省略)から液体材料が導入される。
タペット34はタペットホルダ341に保持されており、このタペット34を保持したタペットホルダ341が、ディスペンサ本体1のメインフレーム11の下面部に設けられているタペット装着孔112に装着されており、タペットホルダ341に保持されているタペット34の上端部がメインフレーム11内に突出している。また、タペットホルダ341にはタペット34を上方に向けて弾性的に付勢する第1付勢部材342が組み込まれている。第1付勢部材342としては典型的には圧縮コイルばねを用いることができる。
なお、本実施形態では、ノズルブロック3をディスペンサ本体1に着脱可能に装着するようにしているが、ノズルブロック3の構成をディスペンサ本体1に組み込んで一体化してもよい。
【0013】
図2に表れているようにディスペンサ本体1は、メインフレーム11内に、タペット34に変位を与える変位拡大機構14と、変位拡大機構14に変位を与えるアクチュエータ15と、アクチュエータ15の鉛直方向の高さ位置をねじ込み動作によって調整する高さ調整機構16とを備えている。
変位拡大機構14は、支点部材141とレバー部材142とを含む。支点部材141は円柱形状であり、メインフレーム11に固定されている。レバー部材142は、支点部材141に接触する支点部142a、タペット34の上端部に接触する作用点部142b、及びアクチュエータ15の下端部に接触する力点部142cを有する。本実施形態において力点部142cは、支点部142aと作用点部142bとの間にある。また、レバー部材の作用点部142bとは反対側の端部には、この端部を下方に向けて弾性的に付勢する第2付勢部材143が配置されている。第2付勢部材143としては典型的には圧縮コイルばねを用いることができる。このように変位拡大機構14は「てこ機構」であり、タペット34の上下方向の変位量をアクチュエータ15の上下方向の変位量よりも拡大する機能を担っている。
【0014】
アクチュエータ15は変位拡大機構14に上下方向の変位を与え、その結果としてタペット34を上下方向に往復動作させるための駆動源として用いられ、ピエゾ素子、磁歪素子などを含んで構成することができる。本実施形態においてアクチュエータ15はピエゾ素子を含んで構成している。ピエゾ素子は高速で駆動(伸縮)できる点で特に好ましい。
【0015】
高さ調整機構16は、ねじ込み動作によってアクチュエータ15の鉛直方向の高さ位置を調整するための機構であり、本実施形態では高さ調整ボルト161を含んで構成している。更に本実施形態では、高さ調整ボルト161の下端に連結した下端部162と、アクチュエータ15の上端部151とが転がり接触するように構成されている。すなわち、アクチュエータ15の上端部151は曲率半径R1を有する凸球面であり、高さ調整機構16の下端部162は曲率半径R1より大きい曲率半径R2を有する凹球面である。このように、曲率半径の異なる凸球面と凹球面とを突き合わせることで、高さ調整機構16の下端部162とアクチュエータ15の上端部151とが転がり接触する。
【0016】
ここで、高さ調整機構16の下端部162とアクチュエータ15の上端部151とがスムーズに転がり接触し、かつ高さ調整機構16(高さ調整ボルト161)のねじ込み動作によってアクチュエータ15の鉛直方向の高さ位置の調整を行う際にそのアクチュエータ15が鉛直方向に直立するように自動調心されるようにするためには、上述の曲率半径R1に対する曲率半径R2の比(R2/R1)は1.1以上1.4以下であることが好ましい。R2/R1が1.1未満では転がり接触しにくくなる。一方、R2/R1が1.4超では自動調心されにくくなる。
また、同様にスムーズな転がり接触と自動調心を実現する観点から、上述の凸球面及び凹球面の表面粗さRaはそれぞれ0.4μm以下であることが好ましい。
【0017】
本実施形態では、アクチュエータ15の下端部152とレバー部材の力点部142cとが転がり接触するようにも構成されている。すなわち、本実施形態においてレバー部材の力点部142cは半径R3を有する円柱形状であり、アクチュエータ15の下端部152は半径R3より大きい曲率半径R4を有する凹曲面である。これにより、アクチュエータ15の下端部152とレバー部材の力点部142cとが転がり接触する。このように、高さ調整機構16の下端部162とアクチュエータ15の上端部151とが転がり接触することに加えて、アクチュエータ15の下端部152とレバー部材の力点部142cとが転がり接触するように構成することで、よりスムーズな自動調心を実現することができる。
なお、スムーズな転がり接触と自動調心を実現する観点から、R4/R3は1.1以上1.4以下であることが好ましく、アクチュエータ15の下端部152及びレバー部材の力点部142cの表面粗さRaはそれぞれ0.4μm以下であることが好ましい。
【0018】
更に本実施形態では、支点部材141とレバー部材の支点部142aとが転がり接触するようにも構成されている。すなわち、本実施形態において支点部材141は半径R5を有する円柱形状であり、レバー部材の支点部142aは半径R5より大きい曲率半径R6を有する凹曲面である。これにより、支点部材141とレバー部材の支点部142aとが転がり接触する。このように、支点部材141とレバー部材の支点部142aとが転がり接触するように構成することで、更にスムーズな自動調心を実現することができる。
なお、スムーズな転がり接触と自動調心を実現する観点から、R6/R5は1.1以上1.4以下であることが好ましく、支点部材141及びレバー部材の支点部142aの表面粗さRaはそれぞれ0.4μm以下であることが好ましい。
【0019】
以上のように、本実施形態によれば、アクチュエータ15の上端部151と高さ調整機構16の下端部162とが球面で転がり接触することから、アクチュエータ15の鉛直方向の高さ位置の調整をねじ込み動作によって行う際にそのアクチュエータ15が鉛直方向に直立するように自動調心される。これによりアクチュエータ15の直立性を確保することができると共に、アクチュエータ15の上端部151と高さ調整機構16の下端部162との摩擦による損耗(摩耗)を低減することもできる。なお、アクチュエータ15の自動調心の作用は、アクチュエータ15の動作時にも発揮される。
【0020】
次に、ディスペンサXの動作について説明する。
液体材料導入部312を介して液体材料が導入、充填されている供給流路33内をタペット34の先端部が上方向に移動する際にノズル32近傍に液体材料が供給される。このとき液体材料導入部312に導入される液体材料には、液体材料の粘性等の性状に応じて適切な値の背圧をかけておく。
タペット34の先端部が供給流路33内をノズル32に近接する方向すなわち下方向に移動する際に、ノズル32近傍の液体材料圧力が上昇して液体材料が吐出される。
その後、タペット34の先端部が供給流路33内を上方向に移動すると再びノズル32近傍に液体材料が供給され、更にその後、タペット34の先端部が供給流路33内を下方向に移動するとノズル32から液体材料が吐出される。このようにタペット34の先端部が供給流路33内を上下方向に往復動作することで、ノズル32から液体材料が間欠的に吐出される。
なお、アクチュエータ15の鉛直方向の高さ位置の調整は、タペット34の先端部とノズル32の先端部(開口部)との間隔を調整するために行われる。
【符号の説明】
【0021】
X ディスペンサ
1 ディスペンサ本体
11 メインフレーム
111 カバー
112 タペット装着孔
12 電源端子
13A エア導入部
13B エア排出部
14 変位拡大機構
141 支点部材
142 レバー部材
142a 支点部(凹曲面)
142b 作用点部
142c 力点部
143 第2付勢部材
15 アクチュエータ
151 アクチュエータの上端部
152 アクチュエータの下端部
16 高さ調整機構
161 高さ調整ボルト
162 高さ調整機構の上端部
3 ノズルブロック
31 ブロック本体
311 ノズル装着部
312 液体材料導入部
32 ノズル
321 ノズルナット
33 供給流路
34 タペット
341 タペットホルダ
342 第1付勢部材
図1
図2