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特開2025-16285イソシアヌレート環を有する多官能アミン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016285
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】イソシアヌレート環を有する多官能アミン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/34 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
C07D251/34 D CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119465
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】間下 ▲琢▼史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明が解決しようとする課題は低温硬化性に優れ、着色や耐熱着色に優れ、エポキシ樹脂の硬化剤として有用な、イソシアヌレート環を含む多官能アミン化合物を提供する事を目的とする。
【解決手段】下記一般式で(I)で表されるイソシアヌレート環を含む多官能アミン化合物。

(Rは互いに独立して、同一又は異なっていてもよい炭化水素であり、nは繰り返し数であり、0≦n<10の実数を表す)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で(I)で表されるイソシアヌレート環を含む多官能アミン化合物。
【化1】
(式(I)中、Rは互いに独立して、同一又は異なっていてもよい炭化水素であり、nは繰り返し数であり、0≦n<10の実数を表す)
【請求項2】
前記式(I)中、Rが下記一般式(II)のいずれか1種以上である請求項1記載の多官能アミン化合物。
【化2】
(式(II)中波線は窒素原子との結合部位である。)
【請求項3】
下記式(III)で表されるアミン前駆体。
【化3】
(式(II)中、Rは互いに独立して、同一又は異なっていてもよい炭化水素であり、Rは三級アルコール残基もしくは4-置換ベンジルアルコール残基を表す。nは繰り返し数であり、0≦n<10の実数を表す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイソシアヌレート環を有する多官能アミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアヌレート環を有する各種化合物は機械強度、寸法安定性、耐熱性や電気特性良い事で塗料や、接着剤、レジストなどで幅広く使用されている。
【0003】
例えば1,3,5-トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート(以下、CIC酸という)を硬化剤として配合したエポキシ樹脂組成物が特許文献1で提案されている。しかしながらCIC酸をエポキシ樹脂の硬化剤として使用する場合、高融点であり、エポキシ樹脂との相溶性が悪いため、均一な硬化物を得るために200℃以上の温度を要するという難点がある。
【0004】
また硬化性エポキシ樹脂組成物としてトリグリシジルイソシアヌレートとフェノール性水酸基をもつ化合物を反応させた化合物と酸無水物硬化剤、硬化促進剤を成分とする光半導体用封止用のエポキシ樹脂組成物が特許文献2で提案されている。しかしこれらも硬化温度が150℃以上必要とする難点がある。
【0005】
またイソシアヌレート環を有するアミン化合物として特許文献3には、メチルニトロフェニルイソシアネートを出発原料として3ステップでイソシアヌレート環を有する下記式(VI)で表されるトリアミンを合成している。このような芳香族アミンはエポキシ樹脂との反応性が高く、耐熱分解性が高いという特徴を持つが、透明性や着色、耐熱黄変性が低いという課題があった。
【0006】
【化1】
【0007】
また特許文献4ではイソアヌレート環含有のアミン化合物が提案されている。しかしながら活性なアミノ基ではなく、立体障害ピペリジル基であるため、光安定化剤としては十分効果がでるものの、硬化剤として使用できるものではなかった。
【0008】
【化2】
(式中、Rは水素原子、メチル基またはオキシル基を示す。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭59-107742号
【特許文献2】WO-2014-196515
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2007 016 272号明細書 (DE 10 2007 016 272 A1)
【特許文献4】特開平6-293754
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題はエポキシ樹脂の硬化剤として使用可能であり、低温硬化性に優れ、着色や耐熱着色に優れる新規なイソシアヌレート環を有する多官能アミン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記の多官能アミン化合物が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]に関する。
[1] 下記一般式で(I)で表されるイソシアヌレート環を含むアミン化合物。
【0012】
【化3】
【0013】
(Rは互いに独立して、同一又は異なっていてもよい炭化水素であり、nは繰り返し数であり、0≦n<10の実数を表す)
【0014】
[2] 前記式(I)中、Rが下記一般式(II)のいずれか1種以上である[1]記載のアミン化合物。
【0015】
【化4】
(式中波線は窒素原子との結合部位である。)
【0016】
[3] 下記式(III)で表されるアミン前駆体。
【0017】
【化5】
【0018】
(Rは互いに独立して、同一又は異なっていてもよい炭化水素であり、Rは三級アルコール残基もしくは4-置換ベンジルアルコール残基を表す。nは繰り返し数であり、0≦n<10の実数を表す)
【発明の効果】
【0019】
本発明のイソシアヌレート環を含むアミン化合物は、低温硬化性に優れ、着色や耐熱着色に優れるためエポキシ樹脂の硬化剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1のGPCチャートを示す。
図2】実施例1の1H-NMRのチャートを示す。
図3】実施例1のIRスペクトルを示す。
図4】実施例2のGPCチャートを示す。
図5】実施例2の1H-NMRのチャートを示す。
図6】実施例2のIRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で、適宜に変形して実施できる。
【0022】
本発明のイソシアヌレート環を含むアミン化合物は下記式(I)で表される構造である。
【0023】
【化6】
【0024】
(Rは互いに独立して、同一又は異なっていてもよい炭化水素であり、nは繰り返し数であり、0≦n<10の実数を表す)
【0025】
前記イソシアヌレート環を有する多官能アミン化合物は、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートと特定のアルコール化合物を反応させることにより、下記一般式(III)で表されるカルバメート体のアミン前駆体を得た後に、酸触媒と反応させる事で合成することができる。
【0026】
【化7】
【0027】
(Rは互いに独立して、同一又は異なっていてもよい炭化水素であり、nは繰り返し数であり、0≦n<10の実数を表す。)
【0028】
前記式(I)及び式(II)中、Rは下記一般式(II)のいずれか1種以上であることが好ましい。
【0029】
【化8】
【0030】
式(II)中、波線は窒素原子との結合部位である。
【0031】
入手性や耐熱性、溶剤溶解性の観点から(A-2)、(A-3)、(A-7)の構造の化合物が好ましい。
【0032】
前記式(I)中nは繰り返し単位を表し、0≦n<10の実数を表し、好ましくは0≦n<9であり、より好ましくは0≦n<8である。nが10以上であると溶剤溶解性や、樹脂との相溶性が低下する恐れがある。
【0033】
カルバメート化の反応において、反応中は無溶剤で実施することも溶剤を使用することもできる。使用できる溶剤は特に限定なく、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶剤、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂肪族溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤などの非水溶性溶剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種以上を併用しても良い。また、前記非水溶性溶剤に加えて非プロトン性極性溶剤を併用することもできる。例えば、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドンなどが挙げられ、2種以上を併用しても良い。
【0034】
上記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートとしては、特に限定なく例えば、テトラメチレンジイソシアネート1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,4-ジフェニルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、o-トリジンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(粗製MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等の1つまたは複数のオリゴマーポリイソシアネートを公知の方法により、三量化させてなるポリイソシアネートが挙げられる。入手性や耐熱性、溶剤溶解性の観点から1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を三量化させてなるポリイソシアネートがより好ましい。
【0035】
上記カルバメート体のアミン前駆体の合成に関して、3級アルコール化合物、4-置換ベンジルアルコールの物質を使用することができる。
【0036】
3級アルコールとしては、例えばtert-ブタノール、1-メチルシクロヘキサノール2-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-キヌクリジニルベンジラート、3-メチルペンタノール、2-メチルイソボルネオ-ル、1-アダンマンタノール、アセトシアノヒドリン、1,3-アダマンタンジオール、ジアセトンアルコール、トリアセトンアルコール、トリフェニルメタノール等が挙げられる。副生成物除去の観点からtert-ブタノールがより好ましい。
【0037】
4-置換ベンジルアルコールとしては、例えば下記の一般式で表される構造を有するベンジルアルコールが好ましい。
【0038】
【化9】
【0039】
式中Rは電子吸引性基であれば特にして限定なく、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、スルホニル基、ホルミル基、ニトロ基、アジド基、シアノ基等が挙げられる。副反応抑制し、精製の容易さからメトキシ基がより好ましい。
【0040】
上記カルバメート化の反応においては無触媒で実施することも公知の触媒を使用することもできる。触媒としては特に限定なく例えばブチルスズジラウレート(DBTL)、ビスマスネオデカノエート、オクタン酸亜鉛のような金属触媒、トリエチルアミン(TEA)、イミダゾール、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、第三級アミンのような塩基性触媒が挙げられる。
【0041】
上記カルバメート化の反応において反応温度は40℃から150℃で行うことができる。60℃~120℃の範囲がより好ましい。反応温度が低すぎると反応時間が長時間かかる恐れがあり、反応温度が高すぎると反応したカルバメート部位の分解が起こる恐れがある。
【0042】
上記アミン前駆体からアミン化合物を得る方法について説明する、アミン前駆体に対して酸触媒を用いることで、前記(I)式で表されるアミン化合物を得ることができる。酸触媒としては特に限定されないが、塩酸、燐酸、硫酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸のほか、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸、活性白土、酸性白土、ホワイトカーボン、ゼオライト、シリカアルミナ等の固体酸、酸性イオン交換樹脂等を用いることができる。これらは単独でも二種以上併用しても良い。使用する酸触媒の量としては生成されるアミン基1.0モルに対して0.01~10.0モルであり、好ましくは0.05~5.0モルである。触媒が少なすぎると、アミン前駆体が残存してしまう恐れがあり、触媒が多すぎると反応後の精製が困難になる恐れがある。
【0043】
前記カルバメート化の反応からアミン化合物を得る反応は、反応ごとに公知の精製工程を経ても良く、精製工程を経由せずワンポットで連続して反応させても良い。
【0044】
上記アミン前駆体からアミン化合物を得る反応において、反応中は無溶剤で実施することも溶剤を使用することもできる。使用できる溶剤は特に限定なく、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶剤、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂肪族溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤などの非水溶性溶剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種以上を併用しても良い。また、前記非水溶性溶剤に加えて非プロトン性極性溶剤を併用することもできる。例えば、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドンなどが挙げられ、2種以上を併用しても良い。
【0045】
用途に応じて、アミン塩酸塩の状態で用いる事も可能であり、水溶液や塩基性水溶液で洗浄することにより、アミン化合物として用いる事もできる。塩基水溶液としては特に限定されないが、水酸化ナトリウムや、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムの水溶液を用いることができる。
【0046】
本発明のアミン前駆体から得られるアミン化合物はエポキシ樹脂の硬化剤として低温硬化性、耐熱性、耐熱黄変性に優れる。有機EL素子の封止剤や高輝度LEDの封止剤、太陽電池等の光学デバイス部材に適している。
【実施例0047】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0048】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
ポリスチレン標準液を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を算出した。
GPC:HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel SuperMultipreHZ-M
連結溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
【0049】
<赤外吸収分光法(IR)>
装置:IRAffinity-1S(島津製作所製)
<アミン価>
JISK-7237に記載された方法を参考に過塩素酸を用いずに測定し、得られた値をアミン当量とした。単位はg/eq.である。
【0050】
実施例1
攪拌装置、温度計及びコンデンサー、窒素ラインを備えた4口フラスコに、トルエン208.0g、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体((EVONIK社製「VESTANAT T-1890/100」、イソシアネート基含有量17.3質量%)242.8g及びp-メトキシベンジルアルコール145.1g(1.05mol)を加えた。窒素を系中に吹き込みながら110℃まで昇温させ、同温度にて10時間反応させた。赤外スペクトルにてイソシアネート基の特性吸収である2250cm-1の吸収が完全に消滅したことを確認し、JISK6806に従い滴定から算出されたイソシアネート量が0であることを確認した。得られた溶液を水洗で5回洗浄し、溶剤留去し、白色固体のアミン前駆体(1)(Rが上記式(A-7)、n=0が7割、n≧1が3割(図1のGPCチャートより))350g(収率92%)を得た。得られたアミン前駆体のGPCチャートを図1に示す。GPC分析による数平均分子量Mnは1232、重量平均分子量Mwは1429であった。IRスペクトル、1H-NMRから化合物が生成していることを確認した。1H-NMRを図2に、IRスペクトルを図3に示す。得られたアミン前駆体(1)100.0gに対してトルエン150.0g加えメタンスルホン酸57.8gを1時間滴下し、その後60℃で1時間反応させた。
冷却後、pHが8になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加えた。析出した固体を有機層に溶解させ、水で5回洗浄した。溶剤を留去しアミン化合物(1)を60g得た。得られたアミン化合物のアミン当量は222g/eq(理論値:アミン当量217)であった。
【0051】
実施例2
攪拌装置、温度計及びコンデンサー、窒素ラインを備えた4口フラスコに、トルエン34.05g、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(東ソー社製「コロネートHXLV」、イソシアネート基含有量23.4質量%)179.5g及びターシャリーブタノール81.4g(1.1mоl)、トリエチレンジアミン11.2g(0.1mоl)を加えた。窒素を系中に吹き込みながら90℃まで昇温させ、同温度にて16時間反応させた。赤外スペクトルにてイソシアネート基の特性吸収である2250cm-1の吸収が完全に消滅したことを確認し、JISK6806に従い滴定から算出されたイソシアネート量が0であることを確認した。得られた溶液を水洗で5回洗浄し、溶剤留去し、白色固体のアミン前駆体(2)(Rが上記式(A-3)、n=0が7割、n≧1が3割(図4のGPCチャートより))221g(収率87%)を得た。得られたアミン前駆体のGPCチャートを図4に示す。GPC分析による数平均分子量Mnは1200、重量平均分子量Mwは1436であった。1H-NMRを図5に、IRスペクトルを図6に示す。IRスペクトル、1H-NMRから化合物が生成していることを確認した。得られたアミン前駆体(2)100.0gに対してトルエン150.0g加えメタンスルホン酸54.3gを1時間滴下し、その後60℃で1時間反応させた。
冷却後、pHが8になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加えた。析出した固体を有機層に溶解させ、水で5回洗浄した。溶剤を留去しアミン化合物(2)を50g得た。得られたアミン化合物のアミン当量は160g/eq(理論値:アミン当量153)であった。
【0052】
参考例3
攪拌装置、温度計及びコンデンサー、窒素ラインを備えた4口フラスコに、トルエン65.4g、N-メチルピロリドン65.4g、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(東ソー社製「コロネートHXLV」イソシアネート基含有量23.4質量%)179.5g)、35%塩酸93.6gを加え、窒素を系中に吹き込みながら60℃まで昇温させ、同温度にて反応させたが、ゲル状固体物質が析出した。
【0053】
実施例3~4、比較例1
上記で得られたアミン化合物(1)、(2)下記式で表されるアミン化合物を用いて表に記載した配合条件で配合したものを樹脂液とした。
【0054】
【表1】
【0055】
アミン化学物(3)下記式で表されるアミン化合物(アミン当量は202g/eq)
【0056】
【化10】
【0057】
<硬化性>
各樹脂液を100℃のホットプレート上で加温し、流動性が無くなった時間を計測した。60分未満を〇、60分以上を×として評価した。
<透過率、耐熱透過率>
各樹脂液を1mm厚のテフロン(登録商標)金型に流し込み100℃2時間、120℃2時間、180℃3時間かけ硬化させた。硬化樹脂を以下の条件で光線透過率を測定した。
測定機器:分光光度計 U-3900H(日立ハイテクサイエンス社製)
測定波長範囲:300nm~800nm
得られた硬化物の400nmの透過率と230℃1時間後の400nmの透過率を測定した。
400nm透過率が60%以上を○、60%未満を×として評価した。
【0058】
【表2】
【0059】
上記結果から、本願発明のアミン化合物は、低温硬化性、透過率(着色)及び耐熱透過率(耐熱着色)に優れることわかった。そのため、本発明のアミン化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤として有用である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6