(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025162851
(43)【公開日】2025-10-28
(54)【発明の名称】受光素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10F 30/20 20250101AFI20251021BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20251021BHJP
H01L 21/74 20060101ALI20251021BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20251021BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L21/265 601J
H01L21/74
H01L21/265 Z
H01L21/76 N
H01L21/265 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066314
(22)【出願日】2024-04-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2023年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、経済安全保障重要技術育成プログラム/高感度小型多波長赤外線センサ技術の開発/高感度小型多波長赤外線センサ開発およびフィールド実証委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪口 康博
(72)【発明者】
【氏名】稲田 博史
(72)【発明者】
【氏名】スンダララジャン バーラセカラン
【テーマコード(参考)】
5F032
5F149
【Fターム(参考)】
5F032AA28
5F032AA43
5F032AA44
5F032AA46
5F032BA01
5F032CA15
5F032DA60
5F149AA03
5F149AA04
5F149AB07
5F149AB17
5F149BA05
5F149BA30
5F149BB01
5F149BB03
5F149BB20
5F149CB04
5F149CB05
5F149CB06
5F149CB10
5F149CB15
5F149CB20
5F149DA21
5F149DA35
5F149EA04
5F149FA05
5F149GA06
5F149JA10
5F149LA01
5F149XB24
5F149XB37
5F149XB51
(57)【要約】
【課題】素子を外部から分離することが可能であり、かつリーク電流を低減することが可能な受光素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】面内で互いに隣接する第1領域と第2領域とを有する受光素子であって、第1の導電型を有する第1半導体層と、受光層と、第2の導電型を有する第2半導体層と、を具備し、前記第2領域は前記第1領域の外に位置し、前記第1領域および前記第2領域において、前記第1半導体層、前記受光層、前記第2半導体層は順番に積層され、前記第2半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分には、イオンが注入されている受光素子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内で互いに隣接する第1領域と第2領域とを有する受光素子であって、
第1の導電型を有する第1半導体層と、
受光層と、
第2の導電型を有する第2半導体層と、を具備し、
前記第2領域は前記第1領域の外に位置し、
前記第1領域および前記第2領域において、前記第1半導体層、前記受光層、前記第2半導体層は順番に積層され、
前記第2半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分には、イオンが注入されている受光素子。
【請求項2】
グリッド状に配置された複数の前記第1領域を有し、
前記第2領域は、互いに隣り合う2つの前記第1領域の間に設けられている請求項1に記載の受光素子。
【請求項3】
前記第2半導体層と前記受光層との間に設けられ、前記第1の導電型を有する第3半導体層を具備する請求項1または請求項2に記載の受光素子。
【請求項4】
前記第3半導体層と前記受光層との間に設けられ、前記第2の導電型を有する第4半導体層を具備し、
前記第4半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分には、前記イオンが注入されている請求項3に記載の受光素子。
【請求項5】
前記第2半導体層のキャリア濃度は前記第4半導体層のキャリア濃度より高く、
前記第2半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分に注入される前記イオンの濃度は、前記第4半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分に注入される前記イオンの濃度より高い請求項4に記載の受光素子。
【請求項6】
前記第2半導体層のうち前記イオンが注入された部分の幅は、前記第4半導体層のうち前記イオンが注入された部分の幅よりも大きい請求項4に記載の受光素子。
【請求項7】
前記第3半導体層と前記受光層との間に設けられ、超格子構造を有する第5半導体層を具備する請求項3に記載の受光素子。
【請求項8】
前記受光層は多重量子井戸構造を有し、
前記第2領域における前記受光層の前記イオンの濃度は1×1017cm-3以下である請求項1または請求項2に記載の受光素子。
【請求項9】
面内で互いに隣接する第1領域と第2領域とを有する受光素子の製造方法であって、
前記第1領域および前記第2領域において、第1の導電型を有する第1半導体層に、受光層と、第2の導電型を有する第2半導体層とを順番に積層する工程と、
前記第2半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分にイオンを注入する工程と、を有する受光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は受光素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
III-V族化合物半導体を用いた受光素子が開発されている(特許文献1から特許文献4)。受光素子は、例えば近赤外域に感度を有し、通信、撮像装置、センサなどに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-211155号公報
【特許文献2】特開2011-101032号公報
【特許文献3】特開2010-239166号公報
【特許文献4】特開2006-295216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
受光素子を外部から分離することが求められる。例えば複数の受光素子を1次元または2次元に並べたアレイセンサでは、複数の受光素子の間を分離することで、クロストークなどを低減することができる。受光素子をメサ形状とすることで、分離が可能である。しかし、メサの側面にリークパスが発生し、リーク電流が増加してしまう。そこで、素子を外部から分離することが可能であり、かつリーク電流を低減することが可能な受光素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る受光素子は、面内で互いに隣接する第1領域と第2領域とを有する受光素子であって、第1の導電型を有する第1半導体層と、受光層と、第2の導電型を有する第2半導体層と、を具備し、前記第2領域は前記第1領域の外に位置し、前記第1領域および前記第2領域において、前記第1半導体層、前記受光層、前記第2半導体層は順番に積層され、前記第2半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分には、イオンが注入されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、素子を外部から分離することが可能であり、かつリーク電流を低減することが可能な受光素子およびその製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は第1実施形態に係る受光素子を例示する断面図である。
【
図2】
図2はプロトンの濃度を例示する模式図である。
【
図3】
図3はプロトンの濃度を例示する模式図である。
【
図4】
図4は受光素子のバンド構造の計算結果を例示する模式図である。
【
図5A】
図5Aは受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図5B】
図5Bは受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図6A】
図6Aは受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図6B】
図6Bは受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図7】
図7は第2実施形態に係る受光素子を例示する平面図である。
【
図10】
図10は受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図11】
図11は受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図12】
図12は受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図13】
図13は受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図14】
図14は受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図15】
図15は受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図16】
図16は受光素子の製造方法を例示する断面図である。
【
図17】
図17は第3実施形態に係る受光素子を例示する断面図である。
【
図18】
図18は受光素子のバンド構造の計算結果を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0009】
本開示の一形態は、(1)面内で互いに隣接する第1領域と第2領域とを有する受光素子であって、第1の導電型を有する第1半導体層と、受光層と、第2の導電型を有する第2半導体層と、を具備し、前記第2領域は前記第1領域の外に位置し、前記第1領域および前記第2領域において、前記第1半導体層、前記受光層、前記第2半導体層は順番に積層され、前記第2半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分には、イオンが注入されている受光素子である。イオンの注入により、第2半導体層のうち第2領域に含まれる部分において、キャリアが補償される。第2領域によって第1領域を外から分離することができる。第2領域が第1領域の外に位置しているため、第1領域のpn接合は露出しない。リークパスが形成されにくく、リーク電流を低減することができる。
(2)上記(1)において、グリッド状に配置された複数の前記第1領域を有し、前記第2領域は、互いに隣り合う2つの前記第1領域の間に設けられてもよい。アレイ型の素子において、複数の第1領域の間を分離することができる。リーク電流を低減することができる。
(3)上記(1)または(2)において、前記第2半導体層と前記受光層との間に設けられ、前記第1の導電型を有する第3半導体層を具備してもよい。第1領域において、第2半導体層と第3半導体層とでpn接合が形成される。第2領域が第1領域の外に位置しているため、第1領域のpn接合は露出しない。リークパスが形成されにくく、リーク電流を低減することができる。
(4)上記(3)において、前記第3半導体層と前記受光層との間に設けられ、前記第2の導電型を有する第4半導体層を具備し、前記第4半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分には、前記イオンが注入されてもよい。第4半導体層のうち第2領域に含まれる部分において、キャリアが補償される。第2領域によって第1領域を外から分離することができる。第1領域のpn接合は露出しない。リークパスが形成されにくく、リーク電流を低減することができる。第4半導体層が設けられていることで、受光素子の感度が向上する。
(5)上記(4)において、前記第2半導体層のキャリア濃度は前記第4半導体層のキャリア濃度より高く、前記第2半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分に注入される前記イオンの濃度は、前記第4半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分に注入される前記イオンの濃度より高くてもよい。イオンの注入により、第2半導体層の第2領域に含まれる部分においてキャリアが補償される。第4半導体層の第2領域に含まれる部分においてキャリアが補償される。
(6)上記(4)または(5)において、前記第2半導体層のうち前記イオンが注入された部分の幅は、前記第4半導体層のうち前記イオンが注入された部分の幅よりも大きくてもよい。空乏層が第2領域に達しにくい。暗電流を低減することができる。
(7)上記(3)において、前記第3半導体層と前記受光層との間に設けられ、超格子構造を有する第5半導体層を具備してもよい。イオンを第2半導体層に注入すればよい。イオン注入の工程が1回でよいため、工程が簡略化される。第5半導体層が設けられていることで、受光素子の感度が向上する。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記受光層は多重量子井戸構造を有し、前記第2領域における前記受光層の前記イオンの濃度は1×1017cm-3以下でもよい。受光層の多重量子井戸構造が破壊されにくい。
(9)面内で互いに隣接する第1領域と第2領域とを有する受光素子の製造方法であって、前記第1領域および前記第2領域において、第1の導電型を有する第1半導体層に、受光層と、第2の導電型を有する第2半導体層とを順番に積層する工程と、前記第2半導体層のうち前記第2領域に含まれる部分にイオンを注入する工程と、を有する受光素子の製造方法である。イオンの注入により、第2半導体層のうち第2領域に含まれる部分において、キャリアが補償される。第2領域によって第1領域を外から分離することができる。第2領域が第1領域の外に位置しているため、第1領域のpn接合は露出しない。リークパスが形成されにくく、リーク電流を低減することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る受光素子およびその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る受光素子100を例示する断面図である。受光素子100は光を吸収し、電気信号を出力する。受光素子100は、例えば波長が0.8μmから2.5μmまでの近赤外域に感度を有する。受光素子100は、上面入射型の素子であり、
図1における上方向から入射する光を検知する。受光素子100は、メサを有しておらず、例えば平面状である。Z軸は、受光素子100の半導体層が積層される方向を表す。XY平面は、半導体層の主面に平行である。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに直交する。
【0012】
図1に示すように、受光素子100は基板20、バッファ層22、受光層24、半導体層26(第4半導体層)、半導体層28(第3半導体層)、およびコンタクト層30(第2半導体層)を有する。基板20の上に、バッファ層22、受光層24、半導体層26、半導体層28、およびコンタクト層30が、この順番で積層されている。基板20とバッファ層22とは第1半導体層に対応する。
図1の例ではn型が第1の導電型に対応する。p型が第2の導電型に対応する。
【0013】
受光素子100は領域10(第1領域)と領域12(第2領域)とを有する。
図1において、領域12には交差した斜線が付されている。XY平面内において、領域10は受光素子100の中央に位置する。領域10の平面形状は例えば円形である。XY平面内で、領域12は領域10に隣接し、領域10を囲み、受光素子100の端部に位置する。領域10は素子として機能する部分である。領域12は素子を外から分離する機能を有する。
【0014】
コンタクト層30の受光層24とは反対の面に、絶縁膜32が設けられている。絶縁膜32はコンタクト層30の上面を覆い、かつ開口部を有する。電極36は絶縁膜32の開口部に設けられ、コンタクト層30の上面に接触する。領域10に光が入射されるように、領域10の中央に電極36は設けられていない。電極36の一部は領域10の上に位置し、別の一部は領域12の上に位置する。基板20の下面に電極34が設けられている。
【0015】
基板20は例えばn+型インジウムリン((n+)-InP)で形成されている。基板20の厚さは例えば650μmである。基板20のバンドギャップエネルギーは例えば1.35eVである。基板20には例えば硫黄(S)がドープされている。基板20のキャリア濃度は例えば2×1018cm-3である。バッファ層22は例えばn-型アルミニウムインジウム砒素((n-)-AlInAs)で形成されている。バッファ層22の厚さは例えば2000nmである。バッファ層22のバンドギャップエネルギーは例えば1.51eVである。バッファ層22には例えばシリコン(Si)がドープされている。バッファ層22のキャリア濃度は基板20のキャリア濃度より低く、例えば2×1015cm-3である。
【0016】
受光層24は多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)を有し、複数のインジウムガリウム砒素(InGaAs)層と複数のガリウム砒素アンチモン(GaAsSb)層とを有する。InGaAs層とGaAsSb層とはノンドープの半導体層であり、交互に積層されている。InGaAs層の層数およびGaAsSb層の層数は、それぞれ例えば250層である。InGaAs層の厚さおよびGaAsSb層の厚さは、例えば5nmである。
【0017】
半導体層26は、例えばp-型インジウムガリウム砒素((p-)-InGaAs)で形成されている。半導体層26の厚さは例えば100nmである。半導体層26には例えばベリリウム(Be)がドープされている。キャリア濃度は例えば2×1016cm-3である。半導体層28は、例えばn-型InGaAs((n-)-InGaAs)で形成されている。半導体層28の厚さは例えば700nmである。半導体層28はノンドープである。キャリア濃度は例えば1×1015cm-3である。コンタクト層30は、例えばp+型InGaAs((p+)-InGaAs)で形成されている。コンタクト層30の厚さは例えば200nmである。コンタクト層30には例えばBeがドープされている。キャリア濃度は例えば1×1019cm-3である。半導体層26、半導体層28およびコンタクト層30それぞれのバンドギャップエネルギーは、基板20のバンドギャップエネルギーより小さく、例えば0.75eVである。受光素子100の半導体層は、上記以外の化合物半導体層などで形成されてもよい。
【0018】
絶縁膜32は例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、および酸窒化シリコン(SiON)などの絶縁体で形成されている。電極34および電極36は金属で形成されている。
【0019】
受光素子100のうち領域10にはイオンが注入されていない。コンタクト層30および半導体層26のうち領域10に含まれる部分は、p型の導電型を示す。受光層24のコンタクト層30とは反対に、n型のバッファ層22と基板20とが設けられている。Z軸方向において、領域10にpin(positive-intrinsic-negative)接合が形成されている。領域10の直径D1は例えば500μm以上であり、1000μm以上でもよい。領域10の直径D1が、受光素子100の受光径である。領域12にはプロトンなどのイオンが注入されているため、pin接合が形成されにくい。
【0020】
半導体層26、半導体層28およびコンタクト層30のうち領域12に含まれる部分には、イオンが注入されている。注入されるイオンは例えば水素イオン(プロトン、H+)である。コンタクト層30のうち領域12に含まれる部分の幅W1は、例えば50μmである。半導体層28および半導体層26のうち領域12に含まれる部分の幅W2は、幅W1より小さく、例えば40μmである。
【0021】
図2および
図3はプロトンの濃度を例示する模式図である。縦軸は絶縁膜32の表面からの深さを表す。深さ0は絶縁膜32の表面の位置を表す。深さの数値が大きいほど、表面から
図1の下方向の位置を表す。横軸は注入されるプロトンの濃度を表す。
図2と
図3とではプロトンの注入深さが異なる。
【0022】
図2の例では、深さが0.75μmから1.0μmの間の位置に、プロトン濃度のピークがある。濃度のピークは、コンタクト層30中のp型キャリア濃度以上であり、例えば1×10
18cm
-3以上、2×10
19cm
-3以下である。ピークより深い位置ではプロトン濃度が低下する。深さ約1.2μmにおけるプロトン濃度は、半導体層26のキャリア濃度と同程度であり、1×10
16cm
-3のオーダーである。
【0023】
領域12における受光層24、バッファ層22および基板20には、意図的にはプロトンが注入されない。ピークの位置から受光層24に近づくほど、プロトン濃度は低下する。プロトンの注入エネルギーなどに応じて、プロトンが受光層24まで達する可能性はある。受光層24に注入されるプロトンの濃度は1×1017cm-3以下である。受光層24におけるプロトン濃度はゼロでもよい。
【0024】
図3の例では深さが約0.5μmの位置に、プロトンの濃度のピークがある。濃度のピークは、コンタクト層30のp型キャリア濃度と同程度であり、例えば1×10
19cm
-3以上、3×10
19cm
-3以下である。
【0025】
領域12におけるコンタクト層30および半導体層26のp型キャリアは、プロトンによって補償される。コンタクト層30のうち領域12に含まれる部分のp型キャリア濃度は、コンタクト層30のうち領域10に含まれる部分のp型キャリア濃度より低い。半導体層26のうち領域12に含まれる部分のp型キャリア濃度は、半導体層26のうち領域10に含まれる部分のp型キャリア濃度より低い。コンタクト層30および半導体層26のうち領域12に含まれる部分は、n型の導電型を有してもよいし、高抵抗になってもよい。領域12におけるコンタクト層30のp型またはn型のキャリア濃度は1×1016cm-3以下である。領域10に比べて、領域12にはpin接合が形成されにくい。
【0026】
受光素子100の動作時、受光素子100に逆バイアス電圧を印加する。電極34に正の電圧を入力し、電極36に負の電圧を入力する。逆バイアス電圧を印加することで、領域10に空乏層が広がる。上面から受光素子100に入射する光は、絶縁膜32、コンタクト層30などを透過し、受光層24に入射する。絶縁膜32は反射防止膜としても機能し、光を透過させる。受光層24は、光を吸収し、キャリア(ホールおよび電子)を発生させる。キャリアは空乏層にかかる電界によってドリフトし、光電流として出力される。
【0027】
図4は受光素子100のバンド構造の計算結果を例示する模式図であり、領域10におけるバンド構造を表す。横軸は深さ方向の位置を表す。縦軸はエネルギーを表す。
図4中の下側の線は価電子帯のエネルギーEvを表す。上側の線は伝導帯のエネルギーEcを表す。+記号はホールを表す。-記号は電子を表す。
図4は、温度が250K、印加電圧が-1Vのときの計算結果である。受光層24で発生した電子は基板20に向かって流れ、ホールはコンタクト層30に向かって流れる。受光層24と半導体層28との間にp-型の半導体層26を設けることで、価電子帯における受光層24と半導体層28との層の間のエネルギー障壁が低くなり、ホールが流れやすくなる。受光素子100の感度が向上する。
【0028】
上記のように、領域10は光を検出する素子として機能する。領域12にはpin接合が形成されにくいため、素子として機能しにくい。領域12は領域10を外部から分離する機能を有する。領域10において、コンタクト層30と半導体層28とでpn接合が形成される。半導体層28と半導体層26とでpn接合が形成される。半導体層26と受光層24との間にもpn接合が形成されるが、領域12が存在するため、pn接合は受光素子100の両側の端面には到達しない。このためリーク電流が発生しない。pn接合が露出すると、リークパスが形成され、リーク電流が増加しやすい。
図1に示すように、領域12が領域10の外に位置するため、pn接合が露出しない。リークパスが形成されにくく、リーク電流が低減される。
【0029】
(製造方法)
図5Aから
図6Bは受光素子100の製造方法を例示する断面図である。
図5Aに示すように、例えば有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Depostion)により、基板20、バッファ層22、受光層24、半導体層26、半導体層28、およびコンタクト層30を順番にエピタキシャル成長する。
【0030】
図5Bに示すように、例えばプラズマCVD法(PECVD:Plasma Enhansed CVD)により、コンタクト層30の上面に絶縁膜40を形成する。絶縁膜40はSiO
2、SiN、SiONなどの絶縁体で形成されている。絶縁膜40の上面に、例えば厚さが1μmのフォトレジスト42を形成する。フォトリソグラフィにより、フォトレジスト42のうち領域12上の部分を取り除く。領域12はフォトレジスト42に覆われていない。フォトレジスト42から露出する部分の幅はW2である。領域10はフォトレジスト42および絶縁膜40に覆われている。
【0031】
領域12の半導体層26にプロトンを注入する。プロトンの注入エネルギーは例えば135keVである。プロトンの注入量は例えば1e14/cm
2以上、3e14/cm
2以下である。
図2の例のように、深い位置にプロトンが注入され、半導体層26のp型キャリアが補償される。プロトン注入後、絶縁膜40およびフォトレジスト42を除去する。
【0032】
図6Aに示すように、コンタクト層30の上面に絶縁膜46を形成する。絶縁膜46の上面にフォトレジスト48を形成する。フォトリソグラフィを行い、フォトレジスト48のうち領域12上の部分を取り除く。フォトレジスト48から露出する部分の幅はW1である。領域10はフォトレジスト48および絶縁膜46に覆われている。
【0033】
領域12のコンタクト層30にプロトンを注入する。この工程では、3回連続でプロトンの注入を行う。3回の注入の条件の例を以下に示す。
プロトンの注入エネルギー25keV、プロトンの注入量1e14/cm
2
プロトンの注入エネルギー40keV、プロトンの注入量1e14/cm
2
プロトンの注入エネルギー55keV、プロトンの注入量1e14/cm
2
上記3回のプロトン注入はどの順番で行ってもよい。この工程により、
図3の例のように、浅い位置にプロトンが注入され、コンタクト層30のp型キャリアが補償される。プロトン注入後、絶縁膜46およびフォトレジスト48を除去する。
【0034】
図6Bに示すように、PECVD法などにより、コンタクト層30の上面に絶縁膜32を形成する。エッチングなどにより、絶縁膜32に開口部を形成する。開口部から、コンタクト層30のうち領域10に含まれる部分が露出する。真空蒸着およびリフトオフにより、開口部に電極36を形成する。電極36はコンタクト層30のうち領域10に含まれる部分に接触する。基板20の下面に電極34を形成する。電極34は基板20に接触する。以上の工程で受光素子100が形成される。
【0035】
第1実施形態によれば、受光素子100は領域10と領域12とを有する。領域12は領域10の外に位置する。領域10にイオンは注入されていない。領域10はpin接合を有し、光を検出する。領域12にはプロトンなどのイオンが注入されている。プロトンの注入によって、コンタクト層30および半導体層26のうち領域12に含まれる部分のp型キャリアが補償される。コンタクト層30および半導体層26のうち領域12に含まれる部分は、例えばn型または高抵抗となる。領域10は領域12に囲まれており、領域12によって外部から分離される。
【0036】
領域10において、p+型のコンタクト層30とn-型の半導体層28とがpn接合を形成する。n-型の半導体層28とp-型の半導体層26とがpn接合を形成する。第1実施形態によれば、
図1に示すように、領域12が領域10の外に位置しているため、領域10中のpn接合は露出しない。リーク電流を低減することができる。
【0037】
図5Aに示すように、基板20の上に、バッファ層22、受光層24、半導体層26、半導体層28、およびコンタクト層30を順番にエピタキシャル成長する。基板20は例えば4インチ以上の大口径ウェハとしてもよい。ウェハから複数の受光素子100を低コストで製造することができる。
【0038】
受光層24の上に、p-型の半導体層26、n-型の半導体層28、p+型のコンタクト層30が順番に積層されている。受光素子100の感度が向上する。
図4に示したように、受光層24と半導体層28との間に半導体層26が設けられていることで、受光層24と半導体層28との間のエネルギー障壁が低くなる。ホールが受光層24からコンタクト層30まで流れやすくなることで、感度が向上する。例えば逆バイアス電圧の大きさが1V以下でも、光の検出が可能である。領域10における半導体層26のp型キャリア濃度は例えば5×10
15cm
-3以上、5×10
16cm
-3以下とする。暗電流が低減される。
【0039】
コンタクト層30のp型キャリア濃度は半導体層26のp型キャリア濃度よりも高い。キャリア濃度に応じて、これらの層に注入されるプロトンの濃度を制御する。コンタクト層30に注入されるプロトンの濃度は、半導体層26に注入されるプロトンの濃度よりも高い。プロトンの注入によって、コンタクト層30および半導体層26のp型キャリアを補償することができる。
【0040】
コンタクト層30に注入されるプロトンの濃度が高すぎると、コンタクト層30のうちプロトン注入された部分のn型キャリア濃度が高くなる。コンタクト層30のうち領域10に含まれる部分と、コンタクト層30のうち領域12に含まれる部分との間でpn接合が形成される。pn接合が表面に露出し、リークパスが形成される。コンタクト層30に注入されるプロトンの濃度が低すぎると、領域12においてもコンタクト層30がp型となる。コンタクト層30と半導体層28とでpn接合が形成される。pn接合が側面に露出し、リークパスが形成される。
【0041】
コンタクト層30に注入されるプロトンの濃度は、プロトン注入前のコンタクト層30のp型キャリア濃度と同程度である。プロトンによってp型キャリアが補償され、表面および側面にリークパスが形成されにくくなる。コンタクト層30のp型キャリア濃度は例えば1×1019cm-3である。この場合、コンタクト層30に注入するプロトンの濃度の最大値は、例えば1×1019cm-3以上、3×1019cm-3以下とする。
【0042】
半導体層26に注入されるプロトンの濃度は、半導体層26のp型キャリア濃度と同程度である。半導体層26より深い位置におけるプロトンの濃度は、半導体層26およびコンタクト層30における濃度より低い。受光層24にプロトンが注入されると、受光層24の量子井戸構造が破壊される恐れがある。受光層24に注入されるプロトンの濃度は1×1017cm-3以下である。受光層24にはプロトンが注入されなくてもよい。受光層24に注入されるプロトン濃度が低いことで、量子井戸構造が壊れにくくなる。
【0043】
図5Bおよび
図6Aに示すように、プロトンは図中の上から下に向けて注入される。注入エネルギーを制御することで、プロトンの注入深さを変化させる。注入エネルギーが高いほど、プロトンの注入深さが大きくなる。注入エネルギーを変えて、2回の注入を行えばよい。例えば注入エネルギーを135keVとすることで、半導体層26にプロトンを注入する。例えば注入エネルギーを45keVとすることで、コンタクト層30にプロトンを注入する。
【0044】
コンタクト層30のうちプロトンが注入された部分の幅W1は、半導体層26のうちプロトンが注入された部分の幅W2より大きい。領域10の幅はコンタクト層30と同じ位置では狭く、半導体層26と同じ位置では広い。領域10に空乏層が発生する。空乏層はZ軸方向にも、XY平面内にも広がる。領域10は半導体層26と同じ位置では広いため、空乏層が半導体層26のうちプロトンが注入された部分に達しにくい。暗電流を低減することができる。
【0045】
<第2実施形態>
図7は第2実施形態に係る受光素子200を例示する平面図である。
図8は受光素子200を例示する断面図であり、
図7の線A-Aに沿った断面を図示している。第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。受光素子200は、受光素子アレイであり、例えばイメージセンサとして機能する。受光素子200は、裏面入射型の素子であり、
図8における下方向から入射する光を検知する。
【0046】
図7に示すように、受光素子200は中央部50と外周部52とを有する。XY平面において、中央部50は受光素子200の中央に位置する。外周部52は、受光素子200の外周に位置し、中央部50を囲む。中央部50と外周部52との間に凹部54が設けられている。凹部54は中央部50を囲む。
【0047】
複数の領域10は、中央部50に設けられ、2次元グリッド状に配置されている。複数の領域10は、X軸方向およびY軸方向に周期的に配置されている。1つの領域10が1つの画素に対応する。画素数は例えば320×256個である。領域12は、中央部50に設けられ、互いに隣り合う2つの領域10の間に位置し、領域10の間を分離する。
【0048】
図8に示すように、中央部50および外周部52は凹部54よりもZ軸方向に突出している。中央部50および外周部52では、基板20の上にバッファ層22、受光層24、半導体層26、半導体層28およびコンタクト層30が、この順番で積層されている。凹部54にバッファ層22、受光層24、半導体層26、半導体層28およびコンタクト層30は設けられていない。基板20が凹部54の底面を形成する。外周部52および凹部54にはプロトンが注入されていない。
【0049】
コンタクト層30のうち領域12に含まれる部分の幅W3は、例えば8μmである。半導体層28および半導体層26のうち領域12に含まれる部分の幅W4は、幅W3より小さく、例えば4μmである。
【0050】
外周部52の幅W5は例えば50μmである。凹部54の幅W6は例えば20μmである。複数の領域12のうち最も外に位置するものから、凹部54の側面までの距離D2は例えば30μmである。領域10のピッチPは、1つの領域12から隣の領域12までの距離に等しく、例えば30μmである。
【0051】
絶縁膜32は、中央部50の上面および側面、凹部54の底面、外周部52の側面および上面を覆う。絶縁膜32は中央部50の複数の領域10と重なる位置に開口部を有し、かつ凹部54に開口部を有する。複数の領域10のそれぞれに電極36が設けられている。電極36にはバンプ38が設けられている。電極36およびバンプ38は、領域10のコンタクト層30に電気的に接続されている。
【0052】
配線37は、絶縁膜32のうち外周部52を覆う部分から、凹部54内部の絶縁膜32の開口部まで設けられている。電極36は、絶縁膜32の開口部において基板20に接触している。電極36のうち外周部52の上の部分にバンプ38が設けられている。凹部54に設けられた電極36と外周部52上に設けられた電極36とは、配線37によって接続される。外周部52上の電極36およびバンプ38は、基板20に電気的に接続されている。基板20のバッファ層22とは反対の面に絶縁膜33が設けられている。
【0053】
バンプ38は、インジウム(In)などの金属で形成されている。絶縁膜32および絶縁膜33は酸化シリコンなどの絶縁体で形成されている。絶縁膜33は反射防止膜(AR)であり、入射される赤外光の例えば90%以上を透過させる。
【0054】
(光検出装置210)
図9は光検出装置210を例示する断面図である。光検出装置210は受光素子200とIC(集積回路)チップ201とを有する。ICチップ201は読み出し回路(Read out IC)を備える。ICチップ201の1つの面に、複数の電極56が設けられている。受光素子200はICチップ201にフリップチップボンディングされている。受光素子200の電極36が設けられた面が、ICチップ201の電極56が設けられた面に対向する。複数の電極36は、バンプ38によって電極56に接続されている。
【0055】
受光素子200は、絶縁膜33を透過する光を吸収し、光電流を出力する。光電流はICチップ201によって読み出される。
【0056】
(製造方法)
図10から
図16は受光素子200の製造方法を例示する断面図である。
図10に示すように、例えばMOCVD法により、基板20、バッファ層22、受光層24、半導体層26、半導体層28、およびコンタクト層30を順番にエピタキシャル成長する。
【0057】
図11に示すように、例えばPECVD法により、コンタクト層30の上面に絶縁膜60を形成する。絶縁膜60はSiO
2、SiN、SiONなどの絶縁体で形成されている。絶縁膜60の上面に、例えば厚さが1μmのフォトレジスト62を形成する。フォトリソグラフィにより、フォトレジスト62のうち領域12上の部分を取り除く。領域10はフォトレジスト62および絶縁膜60に覆われている。
【0058】
領域12の半導体層26にプロトンを注入する。プロトンの注入エネルギーは例えば135keVである。プロトンの注入量は例えば1e14/cm
2以上、3e14/cm
2以下である。
図2の例のように、深い位置にプロトンが注入され、半導体層26のp型キャリアが補償される。プロトン注入後、絶縁膜60およびフォトレジスト62を除去する。
【0059】
図12に示すように、コンタクト層30の上面に絶縁膜64を形成する。絶縁膜64の上面にフォトレジスト66を形成する。フォトリソグラフィを行い、フォトレジスト66のうち領域12上の部分を取り除く。領域10はフォトレジスト66および絶縁膜64に覆われている。
【0060】
領域12のコンタクト層30にプロトンを注入する。注入エネルギーおよび注入量を変えて、3回連続でプロトン注入を行う。
図3の例のように、浅い位置にプロトンが注入され、コンタクト層30のp型キャリアが補償される。プロトン注入後、絶縁膜64およびフォトレジスト66を除去する。
【0061】
図13に示すように、PECVD法などにより、コンタクト層30の上面に
絶縁膜67を形成する。絶縁膜67の上面にフォトレジスト68を形成する。フォトリソグラフィにより、フォトレジスト68に開口部を形成する。開口部からは絶縁膜67が露出する。
【0062】
図14に示すように、フォトレジスト68に覆われていない部分において、コンタクト層30、半導体層28、半導体層26、受光層24およびバッファ層22をエッチングすることで、凹部54を形成する。フォトレジスト68および絶縁膜67は除去する。
【0063】
図15に示すように、PECVD法などにより、絶縁膜32を形成する。基板20の下面には絶縁膜33を形成する。
図16に示すように、絶縁膜32のうちコンタクト層30の上および凹部54の内部に開口部を形成する。真空蒸着およびリフトオフにより、電極36および配線37を形成する。絶縁膜32のうち外周部52を覆う部分に電極36を設け、かつ凹部54内に別の電極36を設ける。これらの電極が配線37によって接続される。電極36上にバンプ38を設ける。以上の工程で受光素子200が形成される。受光素子200をICチップ201にフリップチップボンディングすることで、光検出装置210が製造される。
【0064】
第2実施形態によれば、受光素子200は受光素子アレイであり、複数の領域10と、領域12とを有する。複数の領域10は中央部50にグリッド状に配置されている。領域10は光を検知する素子として機能する。領域12は互いに隣り合う2つの領域10の間に設けられ、プロトンが注入されている。領域12によって複数の領域10の間が分離される。領域12は領域10の外に位置しており、領域10中のpn接合は露出しない。リーク電流を低減することができる。
【0065】
受光素子200の領域10は、2次元グリッド状に配置されてもよいし、1次元グリッド状に配置されてもよい。領域10の個数は320×256個以下でもよいし、320×256個以上でもよい。
【0066】
<第3実施形態>
図17は第3実施形態に係る受光素子300を例示する断面図である。第1実施形態または第2実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0067】
受光素子300は、p-型の半導体層26を有しておらず、超格子層27(第5半導体層)を有している。超格子層27は、受光層24と半導体層28との間に設けられている。超格子層27は複数のインジウムガリウム砒素層(InGaAs層)と複数のガリウム砒素アンチモン層(GaAsSb層)とを含み、超格子構造を有する。InGaAs層およびGaAsSb層はノンドープの層であり、交互に積層されている。
【0068】
受光素子300は領域10と領域12とを有する。領域12は領域10の外に位置し、領域10を囲む。領域12の幅は例えば8μmである。コンタクト層30のうち領域12に含まれる部分には、プロトンが注入されている。半導体層28および超格子層27には、プロトンが意図的には注入されない。すなわち、領域12において、コンタクト層30のp型キャリア濃度がプロトンによって補償され、例えばコンタクト層30がn型または高抵抗となればよい。領域10にプロトンは注入されていない。半導体層28は領域10および領域12においてn-型である。超格子層27は領域10および領域12において超格子構造を有する。
【0069】
図18は受光素子300のバンド構造の計算結果を例示する模式図であり、領域10におけるバンド構造を表す。
図18は、温度が250K、印加電圧が-1Vのときの計算結果である。受光層24と半導体層28との間に超格子構造の超格子層27を設けることで、価電子帯における受光層24と半導体層28との間のエネルギー障壁が低くなる。ホールが流れやすくなる。受光素子300の感度が向上する。
【0070】
(製造方法)
図19Aおよび
図19Bは受光素子300の製造方法を例示する断面図である。
図19Aに示すように、基板20の上面に、バッファ層22、受光層24、超格子層27、半導体層28、およびコンタクト層30をエピタキシャル成長する。
【0071】
図19Bに示すように、コンタクト層30の上面に絶縁膜70を形成する。絶縁膜70の上面にフォトレジスト72を形成する。フォトリソグラフィを行い、フォトレジスト72のうち領域12上の部分を取り除く。領域10はフォトレジスト72および絶縁膜70に覆われている。
【0072】
領域12のコンタクト層30にプロトンを注入する。プロトンの注入エネルギーは例えば45keVである。プロトンの注入量は例えば1e14/cm
2以上、3e14/cm
2以下である。
図3の例のように、浅い位置にプロトンが注入され、コンタクト層30のp型キャリアが補償される。プロトン注入後、絶縁膜70およびフォトレジスト72を除去する。プロトンの注入を1回行えばよく、2回目の注入は実施しない。
【0073】
PECVD法などにより、コンタクト層30の上面に絶縁膜32を形成する。真空蒸着およびリフトオフにより、電極36および電極34を形成する。以上の工程で受光素子300が形成される。
【0074】
第3実施形態によれば、領域10にはプロトンが注入されていない。領域10は素子として機能し、光を検出する。領域12にはプロトンが注入されている。プロトンの注入によって、コンタクト層30のうち領域12に含まれる部分のp型キャリアが補償される。領域10は領域12に囲まれており、領域12によって外部から分離される。
【0075】
領域10において、p+型のコンタクト層30とn-型の半導体層28とがpn接合を形成する。領域12が領域10の外に位置しているため、領域10中のpn接合は露出しない。リーク電流を低減することができる。
【0076】
受光層24の上に、超格子層27、n-型の半導体層28、p+型のコンタクト層30が順番に積層されている。
図18に示したように、受光層24と半導体層28との間のエネルギー障壁が低くなる。ホールが受光層24からコンタクト層30まで流れやすくなることで、感度が向上する。例えば逆バイアス電圧の大きさが1V以下でも、光の検出が可能である。
【0077】
領域12のコンタクト層30にプロトンを注入すればよいため、工程が簡略化される。半導体層28および超格子層27には、意図的なプロトン注入は行わない。プロトン注入された部分に、空乏層が達しにくい。暗電流を低減することができる。
【0078】
受光素子200のようなアレイ型センサにおいて、受光層24と半導体層28との間に超格子構造の超格子層27を設けてもよい。超格子層27を有するアレイ型センサを、ICチップ201に実装することで、光検出装置を製造してもよい。
【0079】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
10、12 領域
20 基板
22 バッファ層
24 受光層
26、28 半導体層
27 超格子層
30 コンタクト層
32、33、40、46、60、64、67、70 絶縁膜
34、36、56 電極
37 配線
38 バンプ
42、48、62、66、68、72 フォトレジスト
50 中央部
52 外周部
54 凹部
100、200、300 受光素子
201 ICチップ
210 光検出装置