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特開2025-16288配位子の製造方法およびトリアリールアミン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016288
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】配位子の製造方法およびトリアリールアミン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 217/26 20060101AFI20250124BHJP
   C07D 401/10 20060101ALI20250124BHJP
   C07D 219/14 20060101ALI20250124BHJP
   C07D 265/38 20060101ALI20250124BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20250124BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250124BHJP
   C07F 9/64 20060101ALN20250124BHJP
   C07C 217/92 20060101ALN20250124BHJP
   C07C 213/00 20060101ALN20250124BHJP
   C07C 225/32 20060101ALN20250124BHJP
   C07C 221/00 20060101ALN20250124BHJP
【FI】
C07D217/26
C07D401/10
C07D219/14
C07D265/38
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
C07F9/64
C07C217/92
C07C213/00
C07C225/32
C07C221/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119470
(22)【出願日】2023-07-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 務
【テーマコード(参考)】
4C063
4G169
4H006
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB06
4C063CC16
4C063DD12
4C063EE05
4C063EE10
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BE19A
4G169BE19B
4G169CB25
4G169CB77
4G169DA02
4H006AA02
4H006AB78
4H006AB84
4H006AB92
4H006AC52
4H006BA05
4H006BA37
4H006BJ30
4H006BJ50
4H006BP30
4H006BR80
4H039CA41
4H039CD10
4H039CD20
4H050AA02
4H050AB78
4H050AB84
4H050AB92
4H050AC50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】収率に優れ、製造コストを低減できる配位子の製造方法を提供する。
【解決手段】例えば、イソキノリン化合物と、ナフタレン化合物とを、縮合剤の存在下で下記反応を実施することにより配位子を合成する反応工程、

および、前記反応工程で得られた配位子を、ハロゲン系溶媒を含む展開液を用いたクロマトグラフ法によって精製する、精製工程を含む、配位子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
(式(1)中、Rは、環上のいずれの炭素原子に結合していてもよく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、アミノアルキルチオ基またはヘテロアリール基を示す。)
で表されるイソキノリン化合物と、
下記式(2):
【化2】
(式(2)中、Rは、環上のいずれの炭素原子に結合していてもよく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、アミノアルキルチオ基またはヘテロアリール基を示す。)
で表されるナフタレン化合物とを、縮合剤の存在下で反応させることによって、
下記式(3):
【化3】
(式(3)中、Rは式(1)と同義であり、Rは式(2)と同義である。)
で表される配位子を合成する反応工程、および、
前記反応工程で得られた前記式(3)で表される配位子を、ハロゲン系溶媒を含む展開液を用いたクロマトグラフ法によって精製する、精製工程
を含む、配位子の製造方法。
【請求項2】
前記反応工程における反応時の温度が45~85℃であり、時間が1~6時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記式(4):
【化4】
(式(4)中、Zは-C(R)(R)-もしくは酸素原子を示すか、またはZは存在せず、ここで、Zが-C(R)(R)-または酸素原子を示す場合、破線α、βはそれぞれ単結合を示し、Zが存在しない場合、破線α、βはそれぞれ存在しない。
、Rは互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。
、Rは互いに独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
で表されるジアリールアミン化合物と、
下記式(5-1)~(5-3):
【化5】
【化6】
(式(5-2)中、Yはカルボニル基、スルホニル基、またはフェニルホスフィンオキシド基を示す。
mは0または1を示す。
破線γは存在しないか、または単結合を示す。)、および
【化7】
からなる群から選択される式で表される臭化アリール化合物とを、
Cu系触媒および請求項1に記載の製造方法により得られた配位子の存在下で反応させて、
下記式(6-1)~(6-3):
【化8】
【化9】
【化10】
(式(6-1)、(6-2)および(6-3)における、Z、R、R、破線α、βは式(4)と同義であり、Y、m、破線γは式(5-2)と同義である。)
からなる群から選択される式で表されるトリアリールアミン化合物を合成する反応工程を含む、トリアリールアミン化合物の製造方法。
【請求項4】
およびRが水素原子である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
式(4)で表されるジアリールアミン化合物において、
Zが-C(R)(R)-を示し、
およびRがそれぞれ水素原子を示し、
およびRがそれぞれ炭素数1~6のアルキル基を示し、
臭化アリール化合物が式(5-1)で表される化合物であり、
トリアリールアミン化合物が式(6-1)で表される化合物である、
請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配位子の製造方法に関する。また、本発明は、トリアリールアミン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアリールアミン化合物は、有機発光ダイオード、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ等の光学や電子デバイスの必須物質、さらに医薬品骨格の必須物質として幅広く使用されている化学物質である。
【0003】
トリアリールアミン化合物は、従来はPd系触媒を用いた「炭素-窒素クロスカップリング反応」によって製造されており、希少、価格高騰、毒性等の観点から触媒の代替が要望されていた。
【0004】
上記要望を満たすために、Cu系触媒やFe系触媒への注目が高まり、かかる触媒と触媒配位子とを用いたトリアリールアミン化合物の製造方法が報告された。非特許文献1には、Pd系触媒の代替として、Cu系触媒に特定の触媒配位子を組合せることにより、ジアリールアミン化合物が臭化アリールとカップリングして、トリアリールアミン化合物を合成できることが報告されている。さらに、非特許文献1には、前記配位子の製造方法が記載されており、その収率が70%であることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sasa Li, Xia Huang et al., Organic Letter, 2022, 24, pp.5817-5824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1に記載の配位子の製造方法には、配位子の収率に改善の余地があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、収率に優れ、製造コストを低減できる配位子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、今般、式(1)で表されるイソキノリン化合物と式(2)で表されるナフタレン化合物とを縮合剤の存在下で反応させ配位子を得る、その反応工程および/またはその精製工程を工夫することで、配位子の収率を向上できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 下記式(1):
【化1】
(式(1)中、Rは、環上のいずれの炭素原子に結合していてもよく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、アミノアルキルチオ基またはヘテロアリール基を示す。)
で表されるイソキノリン化合物と、
下記式(2):
【化2】
(式(2)中、Rは、環上のいずれの炭素原子に結合していてもよく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、アミノアルキルチオ基またはヘテロアリール基を示す。)
で表されるナフタレン化合物とを、縮合剤の存在下で反応させることによって、
下記式(3):
【化3】
(式(3)中、Rは式(1)と同義であり、Rは式(2)と同義である。)
で表される配位子を合成する反応工程、および、
前記反応工程で得られた前記式(3)で表される配位子を、ハロゲン系溶媒を含む展開液を用いたクロマトグラフ法によって精製する、精製工程
を含む、配位子の製造方法。
[2] 前記反応工程における反応時の温度が45~85℃であり、時間が1~6時間である、[1]に記載の製造方法。
[3] 下記式(4):
【化4】
(式(4)中、Zは-C(R)(R)-もしくは酸素原子を示すか、またはZは存在せず、ここで、Zが-C(R)(R)-または酸素原子を示す場合、破線α、βはそれぞれ単結合を示し、Zが存在しない場合、破線α、βはそれぞれ存在しない。
、Rは互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。
、Rは互いに独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
で表されるジアリールアミン化合物と、
下記式(5-1)~(5-3):
【化5】
【化6】
(式(5-2)中、Yはカルボニル基、スルホニル基、またはフェニルホスフィンオキシド基を示す。
mは0または1を示す。
破線γは存在しないか、または単結合を示す。)、および
【化7】
からなる群から選択される式で表される臭化アリール化合物とを、
Cu系触媒および[1]または[2]に記載の製造方法により得られた配位子の存在下で反応させて、
下記式(6-1)~(6-3):
【化8】
【化9】
【化10】
(式(6-1)、(6-2)および(6-3)における、Z、R、R、破線α、βは式(4)と同様であり、Y、m、破線γは式(5-2)と同様である。)
からなる群から選択される式で表されるトリアリールアミン化合物を合成する反応工程を含む、トリアリールアミン化合物の製造方法。
[4] RおよびRが水素原子である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の製造方法。
[5] 式(4)で表されるジアリールアミン化合物において、
Zが-C(R)(R)-を示し、
およびRがそれぞれ水素原子を示し、
およびRがそれぞれ炭素数1~6のアルキル基を示し、
臭化アリール化合物が式(5-1)で表される化合物であり、
トリアリールアミン化合物が式(6-1)で表される化合物である、
[3]または[4]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
式(1)で表されるイソキノリン化合物と式(2)で表されるナフタレン化合物とを縮合剤の存在下で反応させ、式(3)で表される配位子を得る、反応工程および/または精製工程において、特定の条件とすることで、配位子の収率を向上できる。本発明で得られた配位子を用いて、トリアリールアミン化合物を製造できる上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた配位子の13C-NMRスペクトルを示す。
図2】実施例2で得られたトリアリールアミン化合物の13C-NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[触媒配位子の製造方法]
本発明の触媒配位子の製造方法は、式(1)で表されるイソキノリン化合物と式(2)で表されるナフタレン化合物とを縮合剤の存在下で反応させることによって、式(3)で表される配位子を合成する反応工程および精製工程を含むものである。
【0013】
(イソキノリン化合物)
本発明で用いるイソキノリン化合物は、下記式(1):
【化11】
(式(1)中、Rは、環上のいずれの炭素原子に結合していてもよく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、アミノアルキルチオ基またはヘテロアリール基を示す。)
で表される。
【0014】
における「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子または臭素原子とされる。
【0015】
における「炭素数1~6のアルキル基」としては、炭素数1~6の直鎖状、分岐鎖状、または環状のアルキル基(C1-6アルキル基)が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピル基等が挙げられる。なかでも炭素数1~3のものが好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0016】
における「ハロゲノアルキル基」としては、ハロゲノC1-8アルキル基が好ましく、ハロゲノC1-6アルキル基がより好ましい。具体例としてはクロロメチル基、フルオロメチル基、クロロエチル基、フルオロエチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0017】
における「アルケニル基」としては、炭素数2~8の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基(C2-8アルケニル基)が挙げられ、炭素数2~6のアルケニル基が好ましい。具体例としてはビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-メタリル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等が挙げられる。なかでも炭素数2~4のものが好ましい。
【0018】
における「アルキニル基」としては、炭素数2~8の直鎖状または分岐鎖状のアルキニル基(C2-8アルキニル基)が挙げられ、炭素数2~6のアルキニル基が好ましい。具体例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等が挙げられる。なかでも炭素数2~4のものが好ましい。
【0019】
における「アルコキシ基」としては、炭素数1~8の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基(C1-8アルコキシ基)が挙げられ、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~3のアルコキシ基がより好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。なかでも炭素数1~3のものが好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。
【0020】
における「アルキルチオ基」としては、炭素数1~8の直鎖状または分岐鎖状のアルキルチオ基(C1-8アルキルチオ基)が挙げられ、炭素数1~6のアルキルチオ基が好ましい。具体例としてはメチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、n-プロピルチオ基等が挙げられる。
【0021】
における「アミノアルキルチオ基」としては、アミノC1-8アルキルチオ基が挙げられ、アミノC1-6アルキルチオ基が好ましい。具体例としては、アミノメチルチオ基、アミノエチルチオ基、アミノプロピルチオ基等が挙げられる。
【0022】
における「ヘテロアリール基」としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1~3個を有する5員~6員のヘテロアリール基が挙げられる。具体的には、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジル基等が挙げられる。このうち、フリル基、チエニル基、ピリジル基が好ましい。
【0023】
式(1)におけるRは、好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0024】
はイソキノリン環の1位、3位、4位、5位、6位、7位および8位のいずれに置換していてもよく、5位または6位に置換していることが好ましい。
【0025】
(ナフタレン化合物)
本発明で用いるナフタレン化合物は、下記式(2):
【化12】
(式(2)中、Rは、環上のいずれの炭素原子に結合していてもよく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、アミノアルキルチオ基またはヘテロアリール基を示す。)
で表される。
【0026】
式(2)のRにおけるハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノアルキルチオ基およびヘテロアリール基は、上述の式(1)のRにおけるハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノアルキルチオ基およびヘテロアリール基と同義である。
【0027】
式(1)におけるRは、好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0028】
はナフタレン環の3位、4位、5位、6位、7位および8位のいずれに置換していてもよく、好ましくは、6位または7位に置換していることが好ましい。
【0029】
式(2)で表されるナフタレン化合物の使用量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、式(1)で表されるイソキノリン化合物に対して、例えば、0.3~2.0倍モルが挙げられ、好ましくは0.5~1.5倍モルである。
【0030】
(縮合剤)
式(1)で表されるイソキノリン化合物と式(2)で表されるナフタレン化合物との反応工程で用いられる縮合剤としては、通常のアミド化に用いられるものであれば、特に限定はないが、クロロギ酸アルキル(例えば、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸エチル)、N-アルキルモルホリン(例えば、4-メチルモルホリン、4-エチルモルホリン)、カルボジイミド(例えば、塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド)、ウロニウム、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(例えば、2-イソブトキシ-1-イソブトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン)、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(例えば、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン)およびそれらの組合せが挙げられ、好ましくは、クロロギ酸アルキル、4-エチルモルホリンおよびそれらの組合せとされ、より好ましくは、クロロギ酸イソブチル、4-エチルモルホリンおよびそれらの組合せとされる。
【0031】
縮合剤の使用量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、式(1)で表されるイソキノリン化合物に対して、例えば、1.0~6.0倍モルが挙げられ、好ましくは2.0~4.0倍モルである。ここで、縮合剤として複数の化合物を組み合わせて用いる場合、縮合剤の使用量は複数の化合物の合計を意味する。
【0032】
(配位子)
上記反応工程において合成される反応生成物(配位子)は、下記式(3):
【化13】
で表される配位子である。
【0033】
式(3)中、Rは式(1)と同義であり、Rは式(2)と同義である。
【0034】
上記式(3)で表される配位子の好ましい実施態様としては、下記の式(3-1)で表される化合物が挙げられる。
【化14】
【0035】
本発明の配位子の製造方法において、式(1)で表されるイソキノリン化合物のRと式(2)で表されるナフタレン化合物のRとの組合せに係る好ましい実施態様によれば、RおよびRはそれぞれ水素原子を表す。
【0036】
(イソキノリン化合物とナフタレン化合物との反応工程の反応条件)
式(1)で表されるイソキノリン化合物と式(2)で表されるナフタレン化合物とを縮合剤の存在下で反応させる際の温度としては、特に限定されないが、反応コストの経済性の観点から、好ましくは45~85℃であり、より好ましくは55~75℃である。
【0037】
式(1)で表されるイソキノリン化合物と式(2)で表されるナフタレン化合物とを縮合剤の存在下で反応させる時間としては、特に限定されないが、反応コストの経済性の観点から、例えば、1~6時間であり、好ましくは2~5時間である。
【0038】
イソキノリン化合物とナフタレン化合物との反応工程は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、特に制限されず、慣用の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、o-,m-,p-キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ヘキサフルオロベンゼン、m-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α-トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン等の含フッ素有機溶媒等を用いることができる。これらの中でも、テトラヒドロフラン、ジオキサン等、およびこれらの混合物が好ましい。
【0039】
(配位子の精製工程)
本発明の配位子の製造方法は、上記で合成した配位子をさらに精製する工程を含んでもよい。精製方法は、特に限定されず、従来公知の精製方法を適用することができる。精製方法としては、例えば、クロマトグラフ法(クロマトグラフィーともいう)、再結晶、分液、減圧ろ過、溶媒留去、溶媒による洗浄、超音波洗浄およびそれらの組合せが挙げられる。ハロゲン系溶媒を含む展開液を用いたクロマトグラフ法によって精製(好ましくは、分取)することが好ましい。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、精製工程としては、単離収率の向上の観点から、上記の中でもクロマトグラフ法(好ましくは、分取クロマトグラフィーまたはシリカゲル充填ろ過法)によって配位子を精製(好ましくは、分取)することが好ましい。特に、ハロゲン系溶媒を含む展開液を用いたクロマトグラフ法(好ましくは、分取クロマトグラフィーまたはシリカゲル充填ろ過法)は、配位子のハロゲン系溶媒への溶解性を利用することで、単離収率を向上させることができるため、より好ましい。
ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルムおよび1,2-ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化溶媒等が挙げられ、好ましくは、ジクロロメタンである。ハロゲン系溶媒を含む展開液としては、ハロゲン系溶媒とヘキサンの混合液がより好ましい。
分取クロマトグラフィーの条件としては、例えば、次の条件が挙げられる。
展開溶媒:CHCl/ヘキサン=8/2の混合溶媒
カラム:順相シリカゲル(好ましくは、ユニバーサルカラム(山善(株)製))
機器:Smart Flash AKROS(山善(株)製)
温度:室温
検出波長:254nm
【0041】
本発明の別の実施態様によれば、精製工程としては、クロマトグラフ法を採用した際にはクロマトグラフ法の後に再結晶によって配位子を精製することが好ましい。再結晶に用いる溶媒としては、例えば、上記クロマトグラフ法の展開液と同様の溶媒を用いることができる。再結晶を行う際の温度としては、例えば、-20~50℃が挙げられ、好ましくは、室温である。
【0042】
(用途)
本発明の配位子の製造方法により得られた配位子は、例えば、金属触媒の配位子として好適に使用することができる。特に、トリアリールアミン化合物の合成反応における炭素-窒素クロスカップリング反応用の触媒配位子として、好ましくはCu系触媒の配位子として好適に使用することができる。
【0043】
[トリアリールアミン化合物の製造方法]
本発明によるトリアリールアミン化合物の製造方法は、式(4)で表されるジアリールアミン化合物と、式(5-1)~(5-3)からなる群から選択される式で表される臭化アリール化合物とを、Cu系触媒および上記配位子の存在下で反応させて、式(6-1)~(6-3)からなる群から選択される式で表されるトリアリールアミン化合物を合成する反応工程を含むものである。
【0044】
(ジアリールアミン化合物)
本発明で用いるジアリールアミン化合物は、下記式(4):
【化15】
(式(4)中、Zは-C(R)(R)-もしくは酸素原子を示すか、またはZは存在せず、ここで、Zが-C(R)(R)-または酸素原子を示す場合、破線α、βはそれぞれ単結合を示し、Zが存在しない場合、破線α、βはそれぞれ存在しない。
、Rは互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。
、Rは互いに独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
で表される。
【0045】
、R、R、Rにおける「炭素数1~6のアルキル基」としては、炭素数1~6の直鎖状、分岐鎖状、または環状のアルキル基(C1-6アルキル基)が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピル基等が挙げられる。なかでも炭素数1~3のものが好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0046】
、Rにおける「炭素数1~6のアルコキシ基」としては、炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基(C1-6アルコキシ基)が挙げられ、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~3のアルコキシ基がより好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。なかでも炭素数1~3のものが好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。
【0047】
式(4)におけるZは、好ましくは、-C(R)(R)-または酸素原子であり、より好ましくは、-C(R)(R)-である。
【0048】
式(4)におけるR、Rは、好ましくは、R、Rともに、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、より好ましくは、R、Rともに、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基であり、さらに好ましくは、R、Rともに水素原子である。
【0049】
式(4)におけるR、Rは、好ましくは、R、Rともに、炭素数1~6のアルキル基または水素原子であり、より好ましくは、R、Rともに、炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは、R、Rともに、メチル基である。
【0050】
式(4)中、Z、R、R、RおよびRの組合せに係る好ましい実施態様によれば、Zは、好ましくは、-C(R)(R)-または酸素原子であり、R、Rともに、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基であり、R、Rともに、炭素数1~6のアルキル基または水素原子である。式(4)中、Z、R、R、RおよびRの組合せに係るより好ましい実施態様によれば、Zは、好ましくは、-C(R)(R)-であって、R、Rともに炭素数1~4のアルキル基であり、R、Rともに水素原子である。
【0051】
上記式(4)で表されるジアリールアミン化合物の好ましい実施態様としては、下記の式(4-1)~式(4-3)で表される化合物が挙げられる。
【化16】
【化17】
【化18】
【0052】
(臭化アリール化合物)
本発明で用いる臭化アリール化合物は、下記式(5-1)~(5-3)からなる群から選択される式で表される臭化アリール化合物である。
【化19】
【化20】
(式(5-2)中、Yはカルボニル基、スルホニル基、またはフェニルホスフィンオキシド基を示す。
mは0または1を示す。
破線γは存在しないか、または単結合を示す。)、および
【化21】
【0053】
式(5-2)中、Yは、好ましくはカルボニル基である。
【0054】
式(5-2)中、mが1を示し破線γが単結合を示す場合(すなわち、フルオレン環である場合)、一方のブロモ基は、フルオレン環の1位、2位、3位、4位のいずれに置換していてもよく、他方のブロモ基は、フルオレン環の5位、6位、7位および8位のいずれに置換していてもよく、好ましくは、一方のブロモ基がフルオレン環の3位に置換しており、他方のブロモ基がフルオレン環の6位に置換しているか、一方のブロモ基がフルオレン環の2位に置換しており、他方のブロモ基がフルオレン環の7位に置換しており、より好ましくは、一方のブロモ基がフルオレン環の3位に置換しており、他方のブロモ基がフルオレン環の6位に置換している。
式(5-2)中、mが0または1を示し破線γが存在しない場合、2つのブロモ基は、独立して、それぞれのベンゼン環の2位(オルト位)、3位(メタ位)、および4位(パラ位)のいずれに置換していてもよく、好ましくは、両方のブロモ基がそれぞれのベンゼン環の2位に置換しているか、両方のブロモ基がそれぞれのベンゼン環の4位に置換しているか、一方のブロモ基が一方のベンゼン環の2位に置換しており、他方のブロモ基が他方のベンゼン環の4位に置換している。
【0055】
式(5-2)における、Y、m、破線γおよびブロモ基の位置の組合せに係る好ましい実施態様によれば、Yは、カルボニル基、スルホニル基、またはフェニルホスフィンオキシド基であり、mは1を示し、破線γは存在せず、両方のブロモ基はそれぞれのベンゼン環の4位を置換している。式(5-2)における、Y、m、破線γおよびブロモ基の位置の組合せに係る別の好ましい実施態様によれば、Yは、カルボニル基、スルホニル基、またはフェニルホスフィンオキシド基であり、mは1であり、破線γは単結合を示し、一方のブロモ基はフルオレン環の3位に置換しており、他方のブロモ基はフルオレン環の6位に置換している。式(5-2)における、Y、m、破線γおよびブロモ基の位置の組合せに係る別の好ましい実施態様によれば、mは0(すなわち、2つのベンゼン環の間が単結合)であり、破線γは存在せず、両方のブロモ基はそれぞれのベンゼン環の2位を置換しているか、それぞれのベンゼン環の4位を置換している。
【0056】
上記式(5-2)で表される臭化アリール化合物の好ましい実施態様としては、下記の式(5-2-1)で表される化合物が挙げられる。
【化22】
【0057】
本発明の好ましい実施態様によれば、臭化アリール化合物としては、式(5-1)または式(5-2)の臭化アリール化合物がより好ましく、式(5-1)の臭化アリール化合物がさらに好ましい。
【0058】
式(5-1)~(5-3)からなる群から選択される式で表される臭化アリール化合物の使用量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、式(4)で表されるジアリールアミン化合物に対して、例えば、0.3~1.5倍モルが挙げられ、好ましくは0.5~1.2倍モルである。
【0059】
(Cu系触媒)
式(4)で表されるジアリールアミン化合物と式(5-1)~(5-3)のいずれかで表される臭化アリール化合物との反応工程で用いられるCu系触媒(銅系触媒)としては、前記臭化アリール化合物と前記ジアリールアミン化合物とで炭素-窒素クロスカップリング反応が生じうる触媒であれば、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。かかるCu系触媒としては、例えば、ヨウ化銅(好ましくは、ヨウ化銅(I)(CuI))、酢酸銅(好ましくは、酢酸銅(II)(Cu(CHCOO)))、塩化銅(好ましくは、塩化銅(II)(CuCl))、臭化銅(好ましくは、臭化銅(II)(CuBr))が挙げられ、好ましくは、ヨウ化銅である。
【0060】
Cu系触媒の使用量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、式(4)で表されるジアリールアミン化合物に対して、例えば、0.01~0.4倍モルが挙げられ、好ましくは0.03~0.2倍モルである。
【0061】
(配位子)
式(4)で表されるジアリールアミン化合物と式(5-1)~(5-3)のいずれかで表される臭化アリール化合物との反応工程でCu系触媒とともに用いられる配位子としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、目的物の収率向上の観点から、式(3)で表される配位子が好ましい。
【0062】
配位子の使用量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、式(4)で表されるジアリールアミン化合物に対して、例えば、0.01~0.4倍モルが挙げられ、好ましくは0.03~0.2倍モルである。
【0063】
(塩基)
本発明の一実施態様によれば、式(4)で表されるジアリールアミン化合物と式(5-1)~(5-3)のいずれかで表される臭化アリール化合物との反応工程において、目的物の収率向上の観点から、塩基をさらに存在させることが好ましい。かかる塩基としては、例えば、無機塩基が挙げられ、好ましくは、リン酸カリウム(KPO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸セシウム(CsCO)であり、より好ましくは、リン酸カリウム(KPO)である。
【0064】
塩基の使用量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、式(4)で表されるジアリールアミン化合物に対して、例えば、0.01~4.0倍モルが挙げられ、好ましくは0.5~2.0倍モルである。
【0065】
(トリアリールアミン化合物)
上記反応工程において合成される反応生成物(トリアリールアミン化合物)は、下記式(6-1)~(6-3):
【化23】
【化24】
【化25】
(式(6-1)、(6-2)および(6-3)における、Z、R、R、破線α、βは式(4)と同義であり、Y、m、破線γは式(5-2)と同義である。)
からなる群から選択される式で表されるトリアリールアミン化合物である。
【0066】
上記式(6-1)~式(6-3)で表されるトリアリールアミン化合物の好ましい実施態様としては、下記の式(6-1-1)~式(6-3-1)で表される化合物が挙げられる。
【化26】
【化27】
【化28】
【0067】
本発明のトリアリールアミン化合物の製造方法において、式(4-1)~(4-3)のいずれかで表されるジアリールアミン化合物、式(5-1)、(5-2-1)および(5-3)のいずれかで表される臭化アリール化合物、ならびに式(6-1-1)~(6-3-1)のいずれかで表されるトリアリールアミン化合物の組合せに係る好ましい実施態様によれば、式(4-1)の化合物、式(5-1)の化合物、および式(6-1-1)の化合物の組合せ、式(4-1)~(4-3)のいずれかで表される化合物、式(5-2-1)の化合物、および、式(6-2-1)の化合物の組合せ、ならびに、式(4-3)の化合物、式(5-3)の化合物、および式(6-3-1)の化合物の組合せが挙げられる。
【0068】
(臭化アリール化合物とジアリールアミン化合物との反応工程の反応条件)
式(4)で表されるジアリールアミン化合物と式(5-1)~(5-3)のいずれかで表される臭化アリール化合物とをCu系触媒および配位子の存在下で反応させる際の雰囲気としては、特に限定されないが、触媒の水分巻込みによる活性低下の抑制の観点から、好ましくは不活性気体雰囲気下であり、より好ましくは窒素またはアルゴン雰囲気下である。
【0069】
式(4)で表されるジアリールアミン化合物と式(5-1)~(5-3)のいずれかで表される臭化アリール化合物とをCu系触媒および配位子の存在下で反応させる際の温度としては、特に限定されないが、目的物の収率向上の観点から、好ましくは50~200℃であり、より好ましくは80~150℃である。
【0070】
式(4)で表されるジアリールアミン化合物と式(5-1)~(5-3)のいずれかで表される臭化アリール化合物とをCu系触媒および配位子の存在下で反応させる時間としては、特に限定されないが、例えば、3~15時間であり、好ましくは6~12時間である。また、TLC分析で反応の完了を確認できる。
【0071】
式(4)で表されるジアリールアミン化合物と式(5-1)~(5-3)のいずれかで表される臭化アリール化合物とをCu系触媒および配位子の存在下で反応させる際の湿度としては特に限定されないが、反応系中の湿度は例えば100ppm以下が挙げられ、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは10ppm以下であり、また、1ppm以上であってもよい。反応系中の酸素濃度は特に限定されないが、例えば100ppm以下が挙げられ、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは10ppm以下であり、また、1ppm以上であってもよい。反応系中の水分量および酸素濃度の制御方法は、特に限定されず、例えば、グローブボックス等の密閉容器中で制御することが好ましい。
【0072】
式(4)で表されるジアリールアミン化合物と式(5-1)~(5-3)のいずれかで表される臭化アリール化合物とをCu系触媒および配位子の存在下で反応させる際には、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、特に制限されず、慣用の有機溶媒を用いることができるが、好ましくは、非プロトン性極性溶媒であり、具体的には、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等が挙げられ、好ましくは、スルホランまたはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0073】
(トリアリールアミン化合物の精製工程)
本発明のトリアリールアミン化合物の製造方法は、上記で合成したトリアリールアミン化合物をさらに精製する工程を含んでもよい。精製方法は、特に限定されず、従来公知の精製方法を適用することができる。精製方法としては、例えば、クロマトグラフ法、再結晶、分液、減圧ろ過、溶媒留去、溶媒による洗浄、および超音波洗浄等が挙げられる。
【0074】
本発明の一実施態様によれば、精製工程としては、単離収率の向上の観点から、上記の中でもクロマトグラフ法(好ましくは、分取クロマトグラフィー)によってトリアリールアミン化合物を精製(好ましくは、分取)することが好ましい。クロマトグラフ法で用いられる展開液としては、特に限定されないが、ヘキサン、ペンタン、トルエン、塩化メチレン、酢酸エチル等およびそれらの組合せを含むことが好ましく、より好ましくは、ヘキサンと酢酸エチルとの混合液である。
分取クロマトグラフィーの条件としては、例えば、次の条件が挙げられる。
展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=7/3の混合溶媒
カラム:順相シリカゲル(好ましくは、ユニバーサルカラム(山善(株)製))
機器:Smart Flash AKROS(山善(株)製)
温度:室温
検出波長:254nm
【0075】
(用途)
本発明の製造法により得られたトリアリールアミン化合物は、有機発光ダイオード、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ等の光学および電子デバイスの物質や医薬品骨格として好適に使用することができる。
【実施例0076】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
<配位子(N-(2-メチル-1-ナフタレニル)-1-イソキノリンカルボキサミド、N-(2-Methyl-1-naphthalenyl)-1-isoquinolinecarboxamide)の製造>
24ml脱水テトラヒドロフラン(THF)中のイソキノリン-1-カルボン酸(1.039g、6mmol、1.0当量)の溶液に、氷水浴下でゆっくりとNEM(4-エチルモルホリン、1.92mL、15mmol、2.5当量)およびクロロギ酸イソブチル(780μL、6mmol、1.0当量)を加えた。得られた混合物を氷水浴下で15分間撹拌した後、2-メチルナフタレン-1-アミン(1.131g、7.2mmol、1.2当量)を加えた。得られた混合物を65℃で4時間撹拌し反応させた後、減圧下で濃縮して溶媒を除去し、残渣(粗生成物)を得た(反応式I)。得られた残渣(粗生成物)を分取クロマトグラフィー(展開溶媒はCHCl/ヘキサン=8/2の混合溶媒を使用、カラム:順相シリカゲル(ユニバーサルカラム Lサイズ(山善(株)製)、機器:Smart Flash AKROS(山善(株)製)、温度:室温、検出波長:254nm)で精製し、その後、CHCl/ヘキサン=8/2の混合溶媒を用いて室温下で再結晶を行い、白色結晶の配位子(生成物)を得た(1.593g、収率85.0%)。
【化29】
【0078】
<配位子の13C-NMR測定>
精製後の生成物について、以下の条件で13C-NMR測定を行った。
13C-NMRの測定条件]
・NMR測定装置:分光計AVANCE NEO、マグネットAscend600(BRUKER JAPAN社製)
13C-NMR測定条件:周波数150.89MHz、CDCl溶媒
【0079】
得られた配位子の13C-NMRスペクトルを図1に示した。また、以下の13C-NMRスペクトルデータを得た。スペクトル解析の結果、N-(2-メチル-1-ナフタレニル)-1-イソキノリンカルボキサミドであることを確認した。
【0080】
13C NMR (150.89MHz, CDCl3) δ 164.7, 147.8, 140.3, 137.6, 133.2, 132.8, 130.7, 130.6, 130.1, 128.9, 128.8, 128.1, 128.0, 127.4 (2C), 126.9, 126.5, 125.2, 124.8, 122.6, 18.9
【0081】
[実施例2]
<トリアリールアミン化合物(9,10-ジヒドロ-9,9-ジメチル-10-[4-(4-ピリジニル)フェニル]アクリジン、9,10-Dihydro-9,9-dimethyl-10-[4-(4-pyridinyl)phenyl]acridine)の製造>
テフロンセプタム撹拌子を備えた20mLバイアルに、CuI(9.5mg、0.05mmol、0.05当量)、実施例1で得られた配位子(23.4mg、0.075mmol、0.075当量)およびスルホラン1mLを添加した。得られた混合物を35℃で10分間撹拌した後、リン酸カリウム(318.4mg、1.5mmol、3.0当量)を添加した。得られた混合物を25℃で10分間撹拌した後、4-(4-ブロモフェニル)ピリジン(234.0mg、1.0mmol、1.0当量)および9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン(251.2mg、1.20mmol、1.2当量)を添加した。窒素雰囲気下で湿度10ppm以下および酸素濃度10ppm以下に制御したグローブボックス内において、得られた混合物を20分間窒素でパージして脱気した後、100℃で8時間撹拌し反応させた。冷却後、得られた混合物を水(50mL)に注ぎ、得られた有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムにより脱水し、濃縮し、粗生成物を得た(反応式II)。
粗生成物についてTLC分析(ヘキサン/酢酸エチル=7/3)により反応の完了を確認した後、得られた粗生成物を分取クロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン/酢酸エチル=7/3の混合溶媒を使用、カラム:順相シリカゲル(ユニバーサルカラム Mサイズ(山善(株)製))、機器:Smart Flash AKROS(山善(株)製)、温度:室温、検出波長:254nm)で精製し、白色結晶の生成物(トリアリールアミン化合物)を得た(257mg、収率71%)。
【化30】
【0082】
<トリアリールアミン化合物の13C-NMR測定>
得られたトリアリールアミン化合物について、以下の条件で13C-NMR測定を行った。
13C-NMRの測定条件]
・NMR測定装置:分光計AVANCE NEO、マグネットAscend600(BRUKER JAPAN社製)
13C-NMR測定条件:周波数150.89MHz、CDCl
【0083】
得られたトリアリールアミン化合物の13C-NMRスペクトルを図2に示した。スペクトル解析の結果、9,10-ジヒドロ-9,9-ジメチル-10-[4-(4-ピリジニル)フェニル]アクリジンであることを確認した。
【0084】
[スペクトルデータ(13C NMR (150.89 MHz, CDCl3))]
δ 150.4, 147.4, 142.2, 140.7, 138.0, 132.1, 130.1, 129.5, 126.4, 125.3, 121.6, 120.8, 114.0, 36.0, 31.3
図1
図2