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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025162884
(43)【公開日】2025-10-28
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20251021BHJP
【FI】
A61B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066376
(22)【出願日】2024-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】河原井 慎
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA06
4C316AA09
4C316AA13
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA18
4C316FY01
4C316FY05
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】より高画質の被検眼の画像を取得するための新たな技術を提供する。
【解決手段】眼科装置は、2以上の曲面鏡と、照明光学系と、撮影光学系とを含む。照明光学系は、被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成された開口が形成されたスリットを含み、光源からの光をスリットに照射することにより生成されたスリット状の照明光を2以上の曲面鏡を介して眼底に照射する。撮影光学系は、眼底共役位置に配置されるように構成され、2以上の曲面鏡を介して被検眼からの戻り光を受光するイメージセンサを含む。開口は、長手方向の位置に応じて短手方向の幅が異なるように形成されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の曲面鏡と、
被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成された開口が形成されたスリットを含み、光源からの光を前記スリットに照射することにより生成されたスリット状の照明光を前記2以上の曲面鏡を介して前記眼底に照射する照明光学系と、
前記眼底共役位置に配置されるように構成され前記2以上の曲面鏡を介して前記被検眼からの戻り光を受光するイメージセンサを含む撮影光学系と、
を含み、
前記開口は、長手方向の位置に応じて短手方向の幅が異なるように形成されている、眼科装置。
【請求項2】
前記開口は、前記長手方向の両端部の一方の第1端部における前記短手方向の幅が、前記両端部の他方の第2端部における前記短手方向の幅より大きくなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記開口は、前記長手方向の第1位置における前記短手方向の幅が、前記第1位置より前記第1端部の側の第2位置における前記短手方向の幅以下になるように形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記開口は、前記第2端部における前記短手方向の幅が最小になるように形成されている
ことを特徴する請求項2に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記第1端部は、開口中心を通る前記長手方向を基準として前記短手方向に変位している
ことを特徴とする請求項2に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記開口は、前記開口中心から前記第1端部に向かって曲線状に変化する部分を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記2以上の曲面鏡のそれぞれは、1以上の焦点を有し、2以上の焦点のうち少なくとも1つを共有するように配置される
ことを特徴とする請求項2~請求項6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記2以上の曲面鏡は、楕円凹面鏡を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記2以上の曲面鏡は、第1楕円凹面鏡と第2楕円凹面鏡であり、
前記第1楕円凹面鏡の第1焦点は、前記被検眼の虹彩を配置可能な測定位置と光学的に略共役な位置に配置され、
前記第1楕円凹面鏡の第2焦点は、前記第2楕円凹面鏡の第3焦点に略一致し、
前記第2楕円凹面鏡の第4焦点は、前記測定位置に配置されるように構成される
ことを特徴とする請求項8に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記第1端部は、前記第1楕円凹面鏡の長軸上の前記第1焦点の側の端部であり、
前記第2端部は、前記長軸上の前記第2焦点の側の端部である
ことを特徴とする請求項9に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記長手方向は、前記第1楕円凹面鏡の長軸方向である
ことを特徴とする請求項9に記載の眼科装置。
【請求項12】
前記照明光学系は、前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された光スキャナを含み、前記光スキャナによって前記照明光を偏向することにより前記照明光による前記眼底の照明位置を移動可能に構成される
ことを特徴とする請求項7に記載の眼科装置。
【請求項13】
前記イメージセンサは、ローリングシャッター方式のイメージセンサである
ことを特徴とする請求項12に記載の眼科装置。
【請求項14】
前記スリットは、前記被検眼の視度に応じて前記照明光学系の光軸方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項7に記載の眼科装置。
【請求項15】
前記2以上の曲面鏡によりリレーされた前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置が視野内に含まれるように配置された2以上のカメラと、
前記2以上の曲面鏡と、前記照明光学系と、前記撮影光学系と、前記2以上のカメラとを、前記被検眼に対して相対的に移動する移動機構と、
前記2以上のカメラにより得られた前記被検眼の2以上の前眼部画像に基づいて前記被検眼の3次元位置を特定する3次元位置特定部と、
を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の眼科装置。
【請求項16】
前記虹彩共役位置に配置された反射部材と、
前記虹彩共役位置に配置され、光軸から偏心した位置に開口が形成された撮影絞りと、
を含み、
前記反射部材は、前記照明光学系からの照明光を反射して前記2以上の曲面鏡に導き、前記撮影絞りは、前記開口を通過した前記戻り光を前記撮影光学系に導く
ことを特徴とする請求項15に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼疾患のスクリーニングや治療などを行うための眼科装置には、簡便に広い視野で被検眼の眼底などの撮影(観察)が可能なものが求められている。具体的には、一度の撮影で、撮影画角が80度を超える広角で被検眼の眼底を撮影可能なものが求められている。このような眼科装置として、走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)が知られている。SLOは、光で眼底をスキャンし、その戻り光を受光デバイスで検出することにより眼底の画像を形成する装置である。
【0003】
例えば、特許文献1には、多面鏡と平面鏡と用いた2次元の平行光走査を、走査移動手段によって被検眼に移動させて網膜を広角で走査することが可能な走査検眼鏡が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2及び特許文献3には、スリット状の照明光を用いた眼底スキャンとローリングシャッター方式とを組み合わせて、簡素な構成で、高コントラストの画像を取得することが可能な眼底撮影装置が開示されている。特に、特許文献3には、2つの楕円凹面鏡を介してスリット状の照明光で被検眼の眼底をスキャンすることで、被検眼の広角の眼底画像を取得する手法が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献4には、周辺領域で光量が不足する照射器の光出力を最大化するために、光軸における開口の幅より周辺における開口の幅が広くなるように形成された投影絞りを用いて、網膜を光でスキャンする手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009-543585号公報
【特許文献2】米国特許7831106号明細書
【特許文献3】国際公開第2022/124170号
【特許文献4】特表2017-526474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、被検眼に対して曲面鏡を介してスリット状の照明光を広角に入射した場合、撮影部位における照明光のスリット像が変形し、撮影部位の周辺領域において照明ムラが生じ、被検眼の広角の画像の画質を低下させるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、より高画質の被検眼の画像を取得するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの実施形態の1つの態様は、2以上の曲面鏡と、被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成された開口が形成されたスリットを含み、光源からの光を前記スリットに照射することにより生成されたスリット状の照明光を前記2以上の曲面鏡を介して前記眼底に照射する照明光学系と、前記眼底共役位置に配置されるように構成され前記2以上の曲面鏡を介して前記被検眼からの戻り光を受光するイメージセンサを含む撮影光学系と、を含み、前記開口は、長手方向の位置に応じて短手方向の幅が異なるように形成されている、眼科装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より高画質の被検眼の画像を取得するための新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を示す概略図である。
図2】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図3A】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図3B】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図4A】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図4B】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図5】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図6A】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図6B】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図7】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を示す概略図である。
図8A】実施形態の比較例に係るスリットを説明するための概略図である。
図8B】実施形態の比較例に係るスリットを説明するための概略図である。
図9A】実施形態の比較例に係るスリットを説明するための概略図である。
図9B】実施形態の比較例に係るスリットを説明するための概略図である。
図10】実施形態の比較例に係るスリットを説明するための概略図である。
図11】実施形態に係るスリットを説明するための概略図である。
図12A】実施形態に係るスリットを説明するための概略図である。
図12B】実施形態に係るスリットを説明するための概略図である。
図13】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を示す概略図である。
図14】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を示す概略図である。
図15】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図16】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図17】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を示す概略図である。
図18】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
図19】実施形態に係る眼科装置の制御系の構成の一例を示す概略図である。
図20】実施形態に係る眼科装置の制御系の構成の一例を示す概略図である。
図21】実施形態に係る眼科装置の動作例を示すフロー図である。
図22】実施形態に係る眼科装置の動作例を示すフロー図である。
図23】実施形態に係る眼科装置の動作例を示すフロー図である。
図24】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係る眼科装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0013】
実施形態に係る眼科装置は、2以上の曲面鏡と、2以上の曲面鏡を介してスリット状の照明光を被検者の眼(被検眼)の眼底に照射する照明光学系と、被検眼からの照明光の戻り光をイメージセンサで受光する撮影光学系とを含む。照明光学系は、被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成された開口が形成されたスリットを含み、光源からの光をスリットに照射することによりスリット状の照明光を生成する。撮影光学系は、眼底共役位置に配置されるように構成され被検眼からの戻り光を受光するイメージセンサを含む。スリットに形成された開口は、長手方向の位置に応じて短手方向の幅が異なるように形成されている。
【0014】
ここで、スリットに形成された開口の「長手方向」は、スリットに形成された開口に外接する長方形の長辺がのびる方向(長手方向)を意味する。スリットに形成された開口の「短手方向」は、スリットに形成された開口に外接する長方形の短辺がのびる方向(短手方向)を意味するものとする。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記の開口は、長手方向の両端部の一方の第1端部における短手方向の幅が、両端部の他方の第2端部における短手方向の幅より大きくなるように形成されている。いくつかの実施形態では、上記の開口は、長手方向の第1位置における短手方向の幅が、第1位置より第1端部の側の第2位置における短手方向の幅以下になるように形成されている。いくつかの実施形態では、上記の開口は、第2端部における短手方向の幅が最小になるように形成されている。
【0016】
これにより、より高解像度が求められる光学系を用いた場合でも、撮影部位の周辺領域における照明ムラを解消し、被検者の眼の広角の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記の開口において、第1端部は、開口中心を通る長手方向を基準として短手方向に変位している。いくつかの実施形態では、上記の開口は、開口中心から第1端部に向かって曲線状に変化する部分を含む。
【0018】
この場合、2以上の曲面鏡を用いた光学系の歪みをキャンセルし、イメージセンサの受光面における受光像の歪みを解消することが可能となり、不要光の受光に起因したコントラストの低下を抑制することができるようになる。
【0019】
以下、実施形態に係る眼科装置は、被検眼に対向するように設けられた対物光学系を介して、照射光学系により広角で被検眼にスリット状の光を照射し、受光光学系により対物光学系を介して被検眼からの戻り光を受光するように構成されるものとする。被検眼を撮影する場合、照射光学系は、被検眼に照明光を照射する照明光学系であり、受光光学系は、被検眼からの照明光の戻り光を受光する撮影光学系である。被検眼を広角で撮影することにより、被検眼の広角画像を取得することが可能である。被検眼を広角で計測することにより、被検眼の広い範囲にわたって光学的特性の計測値を取得することが可能である。
【0020】
また、実施形態に係る眼科装置は、被検眼に対して装置光学系を相対的に移動する移動機構を含み、被検眼と装置光学系との位置合わせを可能に構成される。
【0021】
具体的には、対物光学系は、被検眼を配置可能な測定位置を光学的にリレーするように構成される。いくつかの実施形態では、対物光学系は、被検眼に対向して配置される反射部材(例えば、曲面鏡)を含む反射光学系を含む。いくつかの実施形態では、対物光学系は、被検眼に対向して配置される屈折部材(例えば、対物レンズ)を含む屈折光学系を含む。眼科装置は、対物光学系により光学的にリレーされた上記の測定位置と光学的に略共役な位置である測定共役位置が視野内に含まれるように配置された2以上のカメラを有する撮影部を含む。すなわち、2以上のカメラのそれぞれは、測定共役位置を光学的に見込むように配置される。この場合、眼科装置は、第1光路分離部材と、第2光路分離部材とを含むことができる。第1光路分離部材は、測定共役位置に配置され、照射光学系(照明光学系)からの光の光路と被検眼からの戻り光の光路とを分離するように構成される。第2光路分離部材は、対物光学系と第1光路分離部材との間に配置され、被検眼からの光の少なくとも一部を撮影部に導くように構成される。
【0022】
更に、眼科装置は、2以上のカメラにより取得された被検眼の2以上の撮影画像に基づいて被検眼の3次元位置を特定する。例えば、2以上のカメラは、上記の測定位置と光学的に略共役な位置における測定共役面(撮影部の光学系に直交する平面)と撮影光軸とのなす角度が同一であり、且つ、測定共役面の法線方向を基準に対称となるように配置される。いくつかの実施形態では、2以上のカメラのそれぞれは、光学系によりリレーされた測定共役位置を通る撮影基準光軸に交差する2以上の撮影光軸のそれぞれに配置される。ここで、測定位置には、被検眼の瞳孔(瞳孔領域)を配置することが可能である。この場合、眼科装置は、2以上のカメラを用いて取得された被検眼の2以上の前眼部画像に基づいて、被検眼の瞳孔の3次元位置を被検眼の3次元位置として特定することが可能である。
【0023】
いくつかの実施形態では、眼科装置は、特定された被検眼(瞳孔)の3次元位置に基づいて、検者又は被検者が手動で移動機構により被検眼に対して装置光学系を移動することで被検眼に対する装置光学系の位置合わせを可能に構成される。移動機構は、装置光学系(対物光学系、照明光学系、撮影光学系、及び撮影部)を3次元的に移動することにより、被検眼に対して装置光学系を相対的に移動する。
【0024】
いくつかの実施形態では、眼科装置は、特定された被検眼(瞳孔)の3次元位置に基づいて、制御部が移動機構を制御して被検眼に対して装置光学系を移動することで被検眼に対する装置光学系の位置合わせを可能に構成される。
【0025】
これにより、被検眼と対物光学系との距離が短い場合であっても、被検眼の2以上の撮影画像を取得し、取得された2以上の撮影画像に基づいて装置光学系と被検眼との位置合わせを好適に行うことができる。その結果、広角で被検眼の高精細な撮影又は高精度な計測を行うことが可能になる。
【0026】
以下、実施形態に係る眼科装置が、2以上の曲面鏡を有する対物光学系を含み、スリットスキャン方式で被検眼の眼底を照明し、眼底からの照明光の戻り光を受光することにより、広角で眼底を撮影する眼底撮影装置であるものとする。すなわち、眼科装置は、2以上の曲面鏡を介してスリット状の照明光で被検眼の眼底をスキャンし、2以上の曲面鏡を介して眼底からの戻り光をイメージセンサで受光するように構成される。この場合、眼科装置は、眼底と光学的に略共役な位置である眼底共役位置に配置されるように構成された開口が形成されたスリットを含み、光源からの光をスリットに照射することでスリット状の照明光を生成する。また、イメージセンサは、眼底共役位置に配置されるように構成される。
【0027】
なお、実施形態は、眼底を撮影する眼科装置(眼底撮影装置)に限定されるものではなく、眼底を観察する眼科装置(眼底観察装置)に適用することができる。また、被検眼の眼底以外の部位を撮影又は観察する眼科装置にも以下の実施形態を適用することが可能である。更に、被検眼の眼底や眼底以外の部位を計測する眼科装置にも以下の実施形態を適用することが可能である。
【0028】
いくつかの実施形態では、2以上の曲面鏡のそれぞれは1以上の焦点を有し、2以上の曲面鏡は少なくとも1つの焦点を共有するように配置される。例えば、2以上の曲面鏡が有する2以上の焦点が略同一平面(焦点共有面(common plane of focal points))上に配置されるように、2以上の曲面鏡は配置される。
【0029】
例えば、眼科装置は、眼底に投影され照明光により形成されるスリット像の長手方向が、2以上の焦点を含む平面と略平行になるように照明光で眼底を照明し、当該長手方向に交差する方向に照明光で眼底をスキャンする。具体的には、眼科装置は、スリット像の長手方向に直交する方向に照明光で眼底をスキャンする。ここで、スリット像は、スリットに形成された開口の像である。
【0030】
曲面鏡の例として、楕円面鏡、放物面鏡、双曲面鏡、自由曲面鏡、反射面が高次の多項式で表される鏡などがある。曲面鏡が有する反射面は、凹面状の反射面、又は、凸面状の反射面であってよい。この場合、曲面鏡の例として、楕円凹面鏡、楕円凸面鏡、放物凹面鏡、放物凸面鏡、双曲凹面鏡、双曲凸面鏡、凹面状の反射面を有する自由曲面鏡、凸面状の反射面を有する自由曲面、反射面が高次の多項式で表される凹面鏡、反射面が高次の多項式で表される凸面鏡などがある。
【0031】
本明細書において、焦点は、曲面の形状で一意に決まる定点だけでなく、反射面により反射される光線(光束)の集光度が他の位置よりも高い位置を含む場合がある。また、被検眼の瞳孔の位置と虹彩の位置とが実質的に同一の位置として説明する場合がある。
【0032】
焦点共有面は、2以上の曲面鏡が有するすべての焦点が配置される平面であることが望ましい。しかしながら、焦点共有面は、2以上の曲面鏡が有するすべての焦点のうち少なくとも1つを除く2以上の焦点が配置される平面であってもよい。
【0033】
実施形態に係る眼科装置の制御方法は、実施形態に係る眼科装置においてプロセッサ(コンピュータ)により実行される処理を実現するための1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、プロセッサに実施形態に係る眼科装置の制御方法の各ステップを実行させる。すなわち、実施形態に係るプログラムは、コンピュータによってプログラムが実行されるときに、コンピュータに実施形態に係る眼科装置の制御方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムである。実施形態に係る記録媒体(記憶媒体)は、実施形態に係るプログラムが記録(記憶)された、コンピュータによって読み取り可能な非一時的な(non-transitory)任意の記録媒体である。記録媒体は、磁気、光、光磁気、半導体などを利用した電子媒体であってよい。典型的には、記録媒体は、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブなどである。磁気ディスクの例として、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、ZIP等の磁気記憶媒体がある。光磁気ディスクの例として、CD-ROM、DVD-RAM、DVD-ROM、MO等がある。また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
【0034】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0035】
以下、実施形態に係る眼科装置が、主に、2つの曲面鏡として2つの楕円凹面鏡を備える場合について説明する。しかしながら、3以上の曲面鏡を備える眼科装置に対して以下の実施形態を適用することが可能である。
【0036】
また、以下では、説明の便宜上、装置の奥行き方向(前後方向)をZ方向とし、Z方向に直交する水平方向(左右方向)をX方向とし、Z方向に直交する垂直方向(上下方向)をY方向とする。いくつかの実施形態では、Z方向は、被検眼に入射する照明光の光軸方向である。ここで、Z方向のうち被検眼に近付く方向を+Z方向とし、被検眼から離れる方向を-Z方向と表記する場合がある。また、X方向のうち被検者の左眼から右眼に向かう方向を+X方向とし、右眼から左眼に向かう方向を-X方向と表記する場合がある。更に、Y方向のうち被検者の眼から額に向かう方向(上方向)を+Y方向とし、被検者の額から眼に向かう方向(下方向)を-Y方向と表記する場合がある。
【0037】
<光学系>
実施形態に係る眼科装置では、撮影時において2つの楕円凹面鏡の双方の長軸方向が撮影対象の被検者の左眼(左被検眼)と右眼(右被検眼)の配列方向と略平行になるように、2つの楕円凹面鏡が配置される。これにより、被検者の顔に干渉することなく被検眼と楕円凹面鏡との距離を近付けた状態で被検眼を広角で撮影することが可能になる。このような眼科装置は、被検者の左眼及び右眼について順次に眼底を撮影するように構成される。
【0038】
実施形態では、偏向基準角度方向を中心に広い偏向角度範囲で偏向される照明光を2つの楕円凹面鏡(曲面鏡)を介して被検眼に入射させる場合、左眼撮影時と右眼撮影時とにおいて偏向基準角度方向を異ならせる。従って、撮影対象を左眼から右眼に切り換えたり、右眼から左眼に切り換えたりする場合、撮影対象の被検眼に対向する楕円凹面鏡の向きを変更することが望ましい。これにより、楕円凹面鏡の向きの変更に伴う光学系の可動範囲を最小限に抑えることが可能になる。
【0039】
そこで、実施形態に係る眼科装置は、対物光学系としての2つの楕円凹面鏡を所定の回転軸を中心に回動可能に構成し、左眼用の撮影光学系と右眼用の撮影光学系とを備える。ここで、照明光学系は、左眼と右眼とに共通であってもよいし、左眼用の照明光学系と右眼用の照明光学系とを備えてもよい。更に、眼科装置は、左眼撮影時の左眼に対する装置光学系の位置合わせを行うための左眼用アライメント光学系と、右眼撮影時の右眼に対する装置光学系の位置合わせを行うための右眼用アライメント光学系とを含む。
【0040】
すなわち、眼科装置は、左眼と右眼とで共通に設けられた単一の対物光学系と、照明光学系と、撮影光学系とを含み、少なくとも撮影光学系は、左眼用の撮影光学系と、右眼用の撮影光学系とを含む。更に、眼科装置は、左眼用のアライメント光学系と、右眼用のアライメント光学系とを含む。
【0041】
以下、実施形態に係る眼科装置について、具体的に説明する。
【0042】
図1図18に、実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図を示す。図1は、実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例のブロック図である。図2図18は、図1の光学系10の構成例を表す。図2図18において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0043】
実施形態に係る眼科装置1は、光学系10と、移動機構10Dとを含む。光学系10は、スリット状の照明光で被検者の左眼EL又は右眼ERの眼底をスキャンし、眼底からの戻り光を順次に受光する。移動機構10Dは、左眼EL又は右眼ERに対して光学系10を相対的に移動する。移動機構10Dは、光学系10を3次元的に移動することにより、左眼EL又は右眼ERに対して光学系10を相対的に移動する。
【0044】
眼科装置1は、動作モードに応じて撮影動作を切り換えることが可能である。左眼撮影モードのとき、眼科装置1は、移動機構10Dにより左眼ELに対して光学系10を移動することにより左眼ELに対して光学系10の位置合わせを実行する。その後、眼科装置1は、光学系10によりスリット状の照明光で左眼ELの眼底をスキャンし、眼底からの戻り光を順次に受光する。右眼撮影モードのとき、眼科装置1は、移動機構10Dにより右眼ERに対して光学系10を移動することにより右眼ERに対して光学系10の位置合わせを実行する。その後、眼科装置1は、光学系10によりスリット状の照明光で右眼ERの眼底をスキャンし、眼底からの戻り光を順次に受光する。
【0045】
光学系10は、対物光学系20と、照明光学系30と、撮影光学系40L、40Rと、光路分離部材50L、50Rと、固視投影系60L、60Rと、光路切換部材70と、アライメント光学系としての前眼部撮影系80L、80Rとを含む。左眼用のアライメント光学系としての前眼部撮影系80Lは、2つの前眼部カメラ81LL、81LRを含む。右眼用のアライメント光学系としての前眼部撮影系80Rは、2つの前眼部カメラ81RL、81RRを含む。更に、光学系10は、ダイクロイックミラー90L、90Rと、ビームスプリッターBSL、BSRとを含む。
【0046】
対物光学系20は、被検眼の瞳孔を配置可能な測定位置を光学的にリレーするように構成された反射光学系を含む。左眼撮影モードでは、対物光学系20は、左眼ELの瞳孔(虹彩)を配置可能な左眼測定位置を、当該測定位置と光学的に共役な左眼測定共役位置にリレーする。右眼撮影モードでは、対物光学系20は、右眼ERの瞳孔(虹彩)を配置可能な右眼測定位置を、当該測定位置と光学的に共役な右眼測定共役位置にリレーする。
【0047】
照明光学系30は、対物光学系20を介して左眼EL及び右眼ERにスリット状の照明光を順次に照射するように構成される。具体的には、照明光学系30は、左眼撮影モードにおいてスリット状の照明光を偏向しつつ、左眼ELの眼底における所定の照射領域を順次に照明するように構成される。また、照明光学系30は、右眼撮影モードにおいて、スリット状の照明光を偏向しつつ、右眼ERの眼底における所定の照射領域を順次に照明するように構成される。
【0048】
撮影光学系40Lは、左眼撮影モードにおいて、左眼ELの眼底における所定の照射領域からの照明光の戻り光を順次に受光するように構成される。撮影光学系40Rは、右眼撮影モードにおいて、右眼ERの眼底における所定の照射領域からの照明光の戻り光を順次に受光するように構成される。
【0049】
光路分離部材50Lは、上記の左眼測定共役位置に配置され、照明光学系30からの照明光の光路と左眼ELの眼底からの照明光の戻り光の光路とを分離する。光路分離部材50Rは、上記の右眼測定共役位置に配置され、照明光学系30からの照明光の光路と右眼ERの眼底からの照明光の戻り光の光路とを分離する。
【0050】
固視投影系60Lは、左眼撮影モードにおいて、左眼ELの眼底に固視光束を投影するように構成される。固視投影系60Rは、右眼撮影モードにおいて右眼ERの眼底に固視光束を投影するように構成される。
【0051】
光路切換部材70は、照明光学系30により生成され図示しない偏向部材(光スキャナ)により偏向されたスリット状の照明光を光路分離部材50L又は光路分離部材50Rに導くように構成される。光路切換部材70は、左眼撮影モードにおいて、照明光学系30からのスリット状の照明光を光路分離部材50Lに導く。また、光路切換部材70は、右眼撮影モードにおいて、照明光学系30からのスリット状の照明光を光路分離部材50Rに導く。
【0052】
前眼部撮影系80Lにおける2つの前眼部カメラ81LL、81LRは、上記の左眼測定共役位置を見込むように配置され、左眼撮影モードにおいて、光軸から離れた位置から左眼ELの前眼部を実質的に同時に撮影する。前眼部撮影系80Rにおける2つの前眼部カメラ81RL、81RRは、上記の右眼測定共役位置を見込むように配置され、右眼撮影モードにおいて、光軸から離れた位置から右眼ERの前眼部を実質的に同時に撮影する。
【0053】
ダイクロイックミラー90Lは、対物光学系20と光路分離部材50Lとの間に配置され、左眼ELからの光の少なくとも一部を前眼部撮影系80Lに導く。左眼ELからの光は、左眼ELからの照明光の戻り光、又は、図示しない前眼部照明光源により照明された左眼ELからの照明光の戻り光であってよい。ダイクロイックミラー90Rは、対物光学系20と光路分離部材50Rとの間に配置され、右眼ERからの光の少なくとも一部を前眼部撮影系80Rに導く。右眼ERからの光は、右眼ERからの照明光の戻り光、又は、図示しない前眼部照明光源により照明された右眼ERからの照明光の戻り光であってよい。
【0054】
ビームスプリッターBSLは、光路分離部材50Lと撮影光学系40Lとの間に配置され、固視投影系60Lからの固視光束を光路分離部材50Lに向けて反射する。ビームスプリッターBSRは、光路分離部材50Rと撮影光学系40Rとの間に配置され、固視投影系60Rからの固視光束を光路分離部材50Rに向けて反射する。
【0055】
以下、図1の光学系10を構成する各光学系について具体的に説明する。
【0056】
(対物光学系20)
図2は、図1の対物光学系20の構成の説明図を示す。図2において、左眼撮影モードのときの対物光学系20の状態が実線で模式的に表され、右眼撮影モードのときの対物光学系20の状態が破線で模式的に表されている。図2において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0057】
対物光学系20は、第1楕円凹面鏡と、第2楕円凹面鏡とを含み、図示しない回動機構により第1楕円凹面鏡及び第2楕円凹面鏡を所定の回動軸Raを中心に回動可能に構成される。回動軸Raは、第1楕円凹面鏡及び第2楕円凹面鏡の総質量の重心位置を通るZ方向の軸である。これにより、重量バランスを考慮しつつ、回転半径を短くすることができる。いくつかの実施形態では、回動軸Raは、左眼測定位置と右眼測定位置との間の中点を通るように配置される。この場合、回動に伴う後述の光学系10のスライド移動を不要にすることができる。なお、左眼測定位置と右眼測定位置とが同じ位置である場合、回動軸Raは、左眼測定位置及び右眼測定位置を通るように配置される。
【0058】
図2では、第1楕円凹面鏡及び第2楕円凹面鏡について、説明の便宜上、左眼撮影モードのとき第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22と表記し、右眼撮影モードのとき第1楕円凹面鏡21′及び第2楕円凹面鏡22′と表記するものとする。
【0059】
第1楕円凹面鏡21(21′)の反射面は、凹面状の楕円面である。第1楕円凹面鏡21(21′)は、曲面鏡又は凹面鏡の一例である。第1楕円凹面鏡21(21′)は、光学的に共役な2つの焦点(第1焦点F1及び第2焦点F2、又は第1焦点F1′及び第2焦点F2′)を有する。第1焦点F1は、左眼ELの二次瞳共役点(二次左眼測定共役位置)であり、第1焦点F1′は、右眼ERの二次瞳共役点(二次右眼測定共役位置)である。第2焦点F2は、左眼ELの一次瞳共役点(一次左眼測定共役位置)であり、第2焦点F2′は、右眼ERの一次瞳共役点(一次右眼測定共役位置)である。
【0060】
第2楕円凹面鏡22(22′)の反射面は、凹面状の楕円面である。第2楕円凹面鏡22(22′)は、曲面鏡又は凹面鏡の一例である。第2楕円凹面鏡22(22′)は、光学的に共役な2つの焦点(第1焦点F3及び第2焦点F4、又は第1焦点F3′及び第2焦点F4′)を有する。第1焦点F3は、左眼ELの一次瞳共役点(一次左眼測定共役位置)であり、第1焦点F3′は、右眼ERの一次瞳共役点(一次右眼測定共役位置)である。
【0061】
第1楕円凹面鏡21(21′)は、第2焦点F2(F2′)が第2楕円凹面鏡22(22′)の第1焦点F3(F3′)又はその近傍に一致するように配置可能である。いくつかの実施形態では、第1楕円凹面鏡21(21′)は、第2焦点F2(F2′)が第2楕円凹面鏡22(22′)の第1焦点F3(F3′)と光学的に共役な位置(第1焦点F3(F3′)の共役位置)又はその近傍に一致するように配置される。
【0062】
図3Aは、被検者の正面から見たときの左眼撮影モードにおける対物光学系20の状態の模式図である。図3Bは、被検者の上方から見たときの左眼撮影モードにおける対物光学系20の状態の模式図である。
【0063】
左眼撮影モードのとき、回動軸Raを中心に回動された第1楕円凹面鏡及び第2楕円凹面鏡は、第1回転状態になる。このとき、第1楕円凹面鏡21が有する光学的に共役な2つの焦点(第1焦点F1、第2焦点F2)は、図2に示すように配置される。すなわち、第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22は、左眼測定位置(F4)を左眼測定共役位置(F1)にリレーするように構成される。第1楕円凹面鏡21の第1焦点F1又はその近傍には、光路分離部材50Lが配置される。また、ダイクロイックミラー90Lは、第1楕円凹面鏡21によって反射された左眼ELからの光の少なくとも一部を-Y方向に向けて反射し、前眼部撮影系80Lに導くように構成される。
【0064】
図4Aは、被検者の正面から見たときの右眼撮影モードにおける対物光学系20の状態の模式図である。図4Bは、被検者の上方から見たときの右眼撮影モードにおける対物光学系20の状態の模式図である。
【0065】
右眼撮影モードのとき、回動軸Raを中心に回動された第1楕円凹面鏡及び第2楕円凹面鏡は、第2回転状態になる。例えば、第2回転状態は、第1回転状態から回動軸Raを中心に180度回転された状態である。このとき、第1楕円凹面鏡21′が有する光学的に共役な2つの焦点(第1焦点F1′、第2焦点F2′)は、図2に示すように配置される。すなわち、第1楕円凹面鏡21′及び第2楕円凹面鏡22′は、右眼測定位置(F4′)を右眼測定共役位置(F1′)にリレーするように構成される。第1楕円凹面鏡21′の第1焦点F1′又はその近傍には、光路分離部材50Rが配置される。また、ダイクロイックミラー90Rは、第1楕円凹面鏡21′によって反射された右眼ERからの光の少なくとも一部を-Y方向に向けて反射し、前眼部撮影系80Rに導くように構成される。
【0066】
眼科装置1は、被検眼に対する装置光学系の位置合わせを行うための移動機構とは別に、上記の回動機構を含む対物系移動機構を備えることができる。対物系移動機構は、上記の回動機構による回動に連動して、光学系10のうち対物光学系20を除いた光学系をスライド移動するスライド機構を含む。
【0067】
図5は、左眼撮影モードと右眼撮影モードとを切り換える場合に被検者の上面から見たときの光学系10のスライド動作の説明図を示す。
【0068】
上記のスライド機構は、回動機構による第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22の回動に連動して、光学系10のうち対物光学系20を除いた光学系10′を回動軸Ra(図2を参照)に交差する方向に移動する。スライド機構により移動される光学系10′は、照明光学系30、撮影光学系40L、40R、光路分離部材50L、50R、固視投影系60L、60R、光路切換部材70、前眼部撮影系80L、80R、ダイクロイックミラー90L、90R、及びビームスプリッターBSL、BSRを含む。
【0069】
実施形態に係るスライド機構は、所定の垂直方向(Y方向)の回動軸を中心とする円弧状の経路に沿って上記の光学系10′を移動することが可能である。垂直方向の回動軸の例として、左眼測定位置と右眼測定位置との間の中点を通るY方向の回動軸、左眼測定位置に配置される左眼ELの瞳孔を通過するY方向の回動軸、右眼測定位置に配置される右眼ERの瞳孔を通過するY方向の回動軸などがある。例えば、左眼撮影モードから右眼撮影モードに切り換えるとき、スライド機構は、左眼測定位置に配置される左眼ELの瞳孔を通過するY方向の回動軸を中心とする円弧状の経路に沿って光学系10′を移動する。例えば、右眼撮影モードから左眼撮影モードに切り換えるとき、スライド機構は、右眼測定位置に配置される右眼ERの瞳孔を通過するY方向の回動軸を中心とする円弧状の経路に沿って光学系10′を移動する。
【0070】
いくつかの実施形態では、スライド機構は、回動機構による第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22の回動に連動して、を回動軸Raに交差する直線方向に光学系10′を移動する。
【0071】
このようなスライド移動により、左眼撮影モードから右眼撮影モードに切り換えるとき、又は右眼撮影モードから左眼撮影モードに切り換えるときに、第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22の被検者の鼻への接触を回避することができる。
【0072】
(対物光学系20以外の光学系)
図6A及び図6Bに、図1の光学系10の構成例を示す。図6Aは、左眼撮影モードのときの光学系10の構成例を表す。図6Bは、右眼撮影モードのときの光学系10の構成例を表す。図6A及び図6Bにおいて、図1又は図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0073】
<照明光学系30>
照明光学系30は、光源ユニット31と、虹彩絞り32と、リレーレンズ33と、スリット34と、リレーレンズ35と、光スキャナ95と、リレーレンズ36とを含む。
【0074】
光源ユニット31は、可視領域又は赤外領域の波長範囲の光を出力する。
【0075】
図7は、図6A又は図6Bの光源ユニット31の構成例を表す。
【0076】
光源ユニット31は、投影レンズ311と、可視光源312R、312G、312Bと、赤外光源312IRと、ダイクロイックミラー313、314、315とを含む。可視光源312Rは、赤色(R)成分の波長範囲の光を発生する。可視光源312Gは、緑色(G)成分の波長範囲の光を発生する。可視光源312Bは、青色(B)成分の波長範囲の光を発生する。赤外光源312IRは、近赤外線の波長範囲の光を発生する。
【0077】
このような可視光源312R、312G、312B、及び赤外光源312IRのそれぞれは、例えば、LED(Light Emitting Diode)、又はLD(Laser Diode)により構成される。
【0078】
投影レンズ311と赤外光源312IRとの間に、ダイクロイックミラー313、314、315が配置されている。
【0079】
ダイクロイックミラー313は、可視光源312Rが出射する波長範囲の光を投影レンズ311に向けて反射し、可視光源312G、312B、及び赤外光源312IRが出射する波長範囲の光を透過させて投影レンズ311に導く。
【0080】
ダイクロイックミラー314は、可視光源312Gが出射する波長範囲の光をダイクロイックミラー313に向けて反射し、可視光源312B及び赤外光源312IRが出射する波長範囲の光を透過させてダイクロイックミラー313に導く。
【0081】
ダイクロイックミラー315は、可視光源312Bが出射する波長範囲の光をダイクロイックミラー314に向けて反射し、赤外光源312IRが出射する波長範囲の光を透過させてダイクロイックミラー314に導く。
【0082】
可視光源312R、312G、312Bをオンに設定し、赤外光源312IRをオフに設定することで、光源ユニット31は、可視光源312R、312G、312Bからの光を合成することにより得られる白色光を出射することができる。可視光源312R、312G、312Bをオフに設定し、赤外光源312IRをオンに設定することで、光源ユニット31は、赤外光源312IRからの赤外光を出射することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、赤外光源312IRをオン又はオフに設定した状態で、可視光源312R、312G、312Bの少なくとも1つをオンに設定し、且つ、少なくとも1つをオフに設定し、光源ユニット31は、可視光源312R、312G、312Bからの光の合成光を出射することができる。この場合、可視光源312R、312G、312Bのうちオンに設定された可視光源が出射する光の光量を任意に変更することができる。
【0084】
虹彩絞り32には、照明光学系30の光軸から偏心した位置に1以上の開口が形成されている。この実施形態では、虹彩絞り32には、単一の開口が形成されているものとする。虹彩絞り32(具体的には、開口)は、撮影対象の被検眼の虹彩(瞳孔)と光学的に共役な位置又はその近傍である虹彩(瞳孔)共役位置に配置可能である。すなわち、虹彩絞り32は、左眼EL又は右眼ERの虹彩共役位置に配置可能である。虹彩絞り32は、照明絞りとして機能する。すなわち、虹彩絞り32に形成された開口は、撮影対象の被検眼の虹彩における照明光の入射位置(入射形状)を規定する。
【0085】
いくつかの実施形態では、光源ユニット31と虹彩絞り32に形成された開口との間の相対位置を変更可能に構成される。これにより、虹彩絞り32に形成された開口を通過する光の光量分布を変更することができる。
【0086】
スリット34には、1以上の開口が形成されている。この実施形態では、スリット34には、単一の開口が形成されているものとする。スリット34に形成される開口は、その長手方向が第1楕円凹面鏡21の長軸方向(第1焦点F1と第2焦点F2とを結ぶ直線方向)に一致するように形成される。スリット34(具体的には、開口)は、撮影対象の被検眼の眼底と光学的に共役な位置又はその近傍である眼底共役位置に配置可能である。すなわち、スリット34は、左眼EL又は右眼ERの眼底共役位置に配置可能である。スリット34に形成された開口は、撮影対象の被検眼の眼底における照明領域の形状(照射パターン形状)を規定する。
【0087】
ここで、実施形態の比較例に係るスリット34′と対比することで、実施形態に係るスリット34について説明する。
【0088】
図8A図8B図9A、及び図9Bに、実施形態の比較例に係るスリット34′の開口34′aの形状とイメージセンサの受光面におけるスリット像(開口の像)との関係を模式的に示す。
【0089】
図8Aに、実施形態の比較例に係るスリット34′の構成の概要を示す。図8Aは、照明光学系30の光軸Oから見たときのスリット34′の構成例を表す。図8Bは、実施形態の比較例におけるイメージセンサの受光面SRにおけるスリット像SLI0を模式的に表す。
【0090】
図9Aに、実施形態の比較例において被検眼の眼底をスリット状の照明光で後述のスリットスキャン方式に従ってスキャンしたときのイメージセンサの受光面SRにおけるスリット像を模式的に示す。後述のように、後述の光スキャナ95により照明光を偏向することで、眼底が照明光でスキャンされる。図9Aは、照明光の偏向角度が「0度」のときのイメージセンサの受光面SRにおけるスリット像SLI0と、照明光の偏向角度が「α(α>0又はα<0)度」のときのイメージセンサの受光面SRにおけるスリット像SLI1とを模式的に表したものである。偏向角度「0度」は、偏向基準角度である。図9Bに、実施形態の比較例に係るスリット34′を用いて取得された眼底画像の一例を示す。
【0091】
図2図6Bに示すような楕円凹面鏡等の曲面鏡を介してスリット状の照明光を被検眼に入射する場合、スリット34′の開口34′aの形状を長手方向に沿って湾曲させることにより、光学系の歪みをキャンセルすることができる。この光学系の歪みには、対物光学系の光学的な歪みや、後述の光路分離部材50L、50Rによる対物光学系に入射する光と出射する光の瞳分割の偏心度合い(光分割位置の光軸からの偏心度)に起因した歪みが含まれる。
【0092】
すなわち、図8Aに示すようにスリット34′に形成される開口34′aを長手方向SDに沿って湾曲させる。ここで、長手方向SDは、第1楕円凹面鏡21の長軸方向(当該長軸方向と光学的に略平行な方向)である。これにより、図8Bに示すようにイメージセンサ47L(47R)の受光面SRにおけるスリット像SLI0を矩形領域の露光幅EW内で受光させることが可能になる。この結果、露光幅EWを広げることなく、効率良くスリット像を受光することができ、不要なフレアやゴースト等を除去しつつ、ムラのない眼底画像を取得することができる。
【0093】
しかしながら、図9Aに示すように、照明光の偏向角度が偏向基準角度から離れるほど、例えば上記の瞳分割の偏心度合いに起因した歪みの影響を受け、イメージセンサ47L(47R)の受光面SRにおける露光幅EW内でスリット像SLI1を受光できなくなる場合がある。この場合、より高解像度が求められる光学系では、スリット34′に形成された開口34′aの形状を湾曲させるだけでは露光幅EW内でスリット像を受光できず、スキャン領域内の端の画角でスリット像が傾くことにより照明ムラが生じてしまう。その結果、図9Bに示すように、取得された眼底画像IMG0には、照明ムラに起因したアーチファクト(例えば、左上の影の部分)が発生する。
【0094】
図10に、実施形態の比較例におけるイメージセンサ47L(47R)の受光面における受光像の光学シミュレーション結果の一例を示す。図10では、横軸が受光面の水平方向を示し、縦軸が受光面の垂直方向を示する
【0095】
図10は、図9Aに示すように、偏向角度が「α度」である場合のイメージセンサ47L(47R)の受光面SRにおけるスリット像SLI1の光学シミュレーション結果を表す。図10に示すように、偏向角度が「α度」のとき、スリット像SLI1が受光面SRにおける露光幅EW内に収まらない。その結果、図8Bに示すような照明ムラが生じ、眼底画像IMG0の画質を劣化させる。
【0096】
これに対して、実施形態に係るスリット34には、長手方向の位置に応じて短手方向の幅が異なるように開口が形成される。これにより、スキャン領域内の端の画角での照明ムラを解消することが可能になる。スリット34の開口は、長手方向に沿って湾曲していてもよい。
【0097】
図11図12A、及び図12Bに、実施形態に係るスリット34の開口の形状とイメージセンサの受光面におけるスリット像との開口を模式的に示す。
【0098】
実施形態に係るスリット34には、長手方向SDの位置に応じて短手方向BWの幅が異なるように開口34aが形成されている。すなわち、実施形態に係るスリット34には、長手方向SDの両端部の一方である第1端部UPの短手方向BWの幅ΔM1と両端部の他方である第2端部DWの短手方向BWの幅ΔM2とが異なるように開口34aが形成されている。いくつかの実施形態では、開口34aは、更に、長手方向SDに沿って湾曲するように形成されている。
【0099】
いくつかの実施形態では、開口34aは、長手方向SDの第1端部UPにおける短手方向BWの幅ΔM1が、第2端部DWにおける短手方向BWの幅ΔM2より大きくなるように形成されている(ΔM1>ΔM2)。ここで、第1端部UPは、第1楕円凹面鏡21の長軸上の第1焦点F1の側の端部であり、第2端部DWは、第1楕円凹面鏡21の長軸上の第2焦点F2の側の端部である。長手方向SDは、第1楕円凹面鏡21の第1焦点F1と第2焦点F2とを結ぶ直線方向(長軸方向)に対応する。
【0100】
いくつかの実施形態では、開口34aは、長手方向SDの第1位置における短手方向BWの幅が、第1位置より第1端部UPの側の第2位置における短手方向BWの幅以下になるように形成されている。いくつかの実施形態では、開口34aは、第2端部DWにおける短手方向BWの幅が最小になるように形成されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、開口34aにおいて、第1端部UPは、開口中心(光軸Oを通過する位置)を通る長手方向SDを基準として短手方向BWに変位している。例えば、開口34aにおいて、第1端部UPは、左眼測定共役位置(又は右眼測定共役位置)における後述の撮影絞り52L(52R)に形成された開口の光軸からの変位に対応して、短手方向BWに変位する。いくつかの実施形態では、開口34aは、上記の開口中心から第1端部UPに向かって曲線状に変化する部分を含む。
【0102】
図12Aに、実施形態において被検眼の眼底をスリット状の照明光でスリットスキャン方式に従ってスキャンしたときのイメージセンサの受光面SRにおけるスリット像を模式的に示す。図12Aは、照明光の偏向角度が「0度」のときのイメージセンサの受光面SRにおけるスリット像SLI10と、照明光の偏向角度が「α度」のときのイメージセンサの受光面SRにおけるスリット像SLI11とを模式的に表したものである。図12Bに、実施形態に係るスリット34を用いて取得された眼底画像の一例を示す。
【0103】
実施形態によれば、図12Aに示すように、照明光の偏向角度が「0度」のとき、イメージセンサ47L(47R)の受光面SRにおけるスリット像SLI10を矩形領域の露光幅EW内で受光させることが可能になる。更に、照明光の偏向角度が偏向基準角度から離れた「α度」のときでも、イメージセンサ47L(47R)の受光面SRにおける露光幅EW内でスリット像SLI11を受光させることができる。
【0104】
この結果、より高解像度が求められる光学系においても、露光幅EWを広げることなく、効率良くスリット像を受光することができ、不要なフレアやゴースト等を除去しつつ、ムラのない眼底画像を取得することができる。
【0105】
例えば、図12Bに示すように、取得された眼底画像IMG10には、照明ムラに起因したアーチファクトの発生が抑制される。
【0106】
以上のように、光源ユニット31から出射された照明光は、スリット34を通過し、スリット状の照明光の長手方向が第1楕円凹面鏡21の長軸方向に略一致するように第1楕円凹面鏡21の反射面に投影される。第1楕円凹面鏡21の反射面に投影された照明光は、スリット状の照明光として撮影対象の被検眼の眼底に導かれる。
【0107】
スリット34は、図示しない移動機構(具体的には、後述の移動機構34D)により照明光学系30の光軸方向に移動可能である。これにより、撮影対象の被検眼の状態(具体的には、視度(屈折度)又は眼底の形状(眼底曲率))に応じてスリット34の位置を移動することができる。
【0108】
例えば、複数の視度のそれぞれに対して照明光学系30の光軸におけるスリット34の位置があらかじめ関連付けられた第1制御情報が後述の記憶部102に記憶されている。主制御部101は、第1制御情報を参照して視度に対応したスリット34の位置を特定し、特定された位置にスリット34が配置されるように移動機構34Dを制御する。
【0109】
ここで、スリット34の移動に伴い、スリット34に形成された開口を通過する光の光量分布が変化する。このとき、主制御部101は、光源ユニット31を移動する図示しない移動機構を制御することにより、光源ユニット31に含まれる光源の位置及び向きを変更することが可能である。
【0110】
いくつかの実施形態では、スリット34は、撮影対象の被検眼の状態に応じて、光軸方向に移動されることなく開口の位置及び形状の少なくとも1つを変更可能に構成される。このようなスリット34の機能は、例えば液晶シャッターにより実現される。
【0111】
実施形態に係るスリット34は、撮影対象の被検眼に応じて、照明光学系30の光軸に対する交差角度(傾斜角度)を異ならせて照明光学系30の光軸上に配置可能に構成される(図6A図6Bを参照)。
【0112】
具体的には、スリット34は、スリット状の照明光が入射する第1楕円凹面鏡21の長軸方向(2つの焦点を結ぶ線の向き)に対応した交差角度で照明光学系30の光軸上に傾斜配置される。例えば、左眼撮影モードでは、スリット34は、図6Aに示す第1楕円凹面鏡21の長軸方向(第1焦点F1と第2焦点F2とを結ぶ線の向き)とスリット34の出射面が光学的に略平行になるように照明光学系30の光軸上に配置される。また、例えば、右眼撮影モードでは、スリット34は、図6Bに示す第1楕円凹面鏡21の長軸方向(第1焦点F1′と第2焦点F2′とを結ぶ線の向き)とスリット34の出射面が光学的に略平行になるように照明光学系30の光軸上に配置される。ここで、「光学的に略平行」とは、実空間上で一直線に伸びる光軸(光路)上で略平行な状態である場合だけでなく、反射部材等により偏向された光軸から反射部材等を取り除いた仮想的な光軸上で略平行な状態と実質的に等価である場合も含むことを意味する。
【0113】
光スキャナ95は、光源ユニット31からの照明光をスリット34に照射させることにより生成されたスリット状の照明光を偏向する。光スキャナ95(具体的には、偏向面)は、撮影対象の被検眼の虹彩(瞳孔)と光学的に共役な位置又はその近傍である虹彩共役位置に配置可能である。光スキャナ95は、所定の偏向基準角度方向を中心に偏向面の向きを変更する一軸の光スキャナである。光スキャナ95は、スリット状の照明光を1次元的に偏向する。光スキャナ95は、撮影対象の被検眼の眼底に投影されるスリット状の照明光により形成されるスリット像の長手方向に交差する方向(具体的には、直交する方向)に照明光を偏向する。これにより、スリット像が、スリット像の長手方向に交差する方向(スキャン方向)に移動する。
【0114】
光スキャナ95は、例えば、ガルバノスキャナ、MEMS(Micro Electro Mechanical System)スキャナ、ポリゴンミラー、又は、レゾナントスキャナを含む。例えば、光スキャナ95は、所定の偏向基準角度方向を基準に所定の偏向角度範囲で照明光を偏向するガルバノスキャナを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、光スキャナ95は、スリット状の照明光を2次元的に偏向する二軸の光スキャナである。例えば、光スキャナ95は、第1スキャナと、第2スキャナとを含む。第1スキャナは、撮影対象の被検眼の眼底における照射領域を照明光学系30の光軸に直交する水平方向に移動するように照明光を偏向する。第2スキャナは、眼底における照射領域を照明光学系30の光軸に直交する垂直方向に移動するように、第1スキャナにより偏向された照明光を偏向する。
【0116】
以上説明した構成を有する光学系において、光源ユニット31から出射した可視領域又は赤外領域の照明光は、虹彩絞り32に照射され、虹彩絞り32に形成された開口を通過し、リレーレンズ33を透過し、スリット34に導かれる。
【0117】
左眼撮影モードでは、スリット34は、図6Aに示すように、第1楕円凹面鏡21の長軸方向(第1焦点F1と第2焦点F2とを結ぶ線の向き)とスリット34の出射面が光学的に略平行になるように配置される。右眼撮影モードでは、スリット34は、図6Bに示すように、第1楕円凹面鏡21の長軸方向(第1焦点F1′と第2焦点F2′とを結ぶ線の向き)とスリット34の出射面が光学的に略平行になるように配置される。スリット34に形成された開口を通過したスリット状の照明光は、リレーレンズ35を透過し、光スキャナ95により偏向され、リレーレンズ36を透過し、光路切換部材70に導かれる。
【0118】
いくつかの実施形態では、照明光学系30は、光源を備えたプロジェクタを含み、プロジェクタがスリット状の照明光を出力する。この場合、図6A及び図6Bの光源ユニット31、虹彩絞り32、リレーレンズ33、スリット34に代えて、プロジェクタが設けられる。プロジェクタには、透過型液晶パネルを用いたLCD(Liquid Crystal Display)方式のプロジェクタ、反射型液晶パネルを用いたLCOS(Liquid Crystal On Silicon)方式のプロジェクタ、DMD(Digital Mirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式のプロジェクタなどがある。
【0119】
光路切換部材70は、撮影対象の被検眼に応じて、光スキャナ95により偏向されたスリット状の照明光の光路を切り換える。具体的には、光路切換部材70は、撮影モードに応じてスリット状の照明光を、上記の左眼測定共役位置(図6Aの第1焦点F1)又は右眼測定共役位置(図6Bの第1焦点F1′)に導く。
【0120】
光路切換部材70と光路分離部材50Lが配置された左眼測定共役位置との間には、リレーレンズ37L、反射部材38L、リレーレンズ39Lが配置されている。光路切換部材70と光路分離部材50Rが配置された右眼測定共役位置との間には、リレーレンズ37R、反射部材38R、リレーレンズ39Rが配置されている。
【0121】
左眼撮影モードのとき、光路切換部材70は、リレーレンズ36を透過したスリット状の照明光をリレーレンズ37Lに導く。右眼撮影モードのとき、光路切換部材70は、リレーレンズ36を透過したスリット状の照明光をリレーレンズ37Rに導く。このような光路切換部材70の機能は、例えば、フリップミラー等の公知の光路切換部材により実現される。
【0122】
いくつかの実施形態では、照明光学系30は、更に、光路切換部材70、リレーレンズ37L、37R、反射部材38L、38R、リレーレンズ39L、39Rを含む。
【0123】
光路切換部材70と反射部材38L、38Rとにより照明光学系30の光軸の向きを調整することで、光学系10のX方向及びY方向のサイズを縮小することができる。例えば、反射部材38Lにより+X方向に光軸の向きを変更し、反射部材38Rにより-X方向に光軸の向きを変更することで、光学系10のX方向のサイズの縮小化が可能になる。
【0124】
<撮影光学系40L、40R>
撮影光学系40Lは、リレーレンズ45L、結像レンズ46L、イメージセンサ47Lを含む。撮影光学系40Lは、一体的に光軸方向に移動可能に構成される。これにより、イメージセンサ47Lの受光面は、左眼ELの眼底と光学的に共役な位置又はその近傍である眼底共役位置に配置可能である。その結果、左眼ELの状態に適合させ、左眼ELからの戻り光をイメージセンサ47Lの受光面に結像させることができる。いくつかの実施形態では、撮影光学系40Lは、合焦レンズを含み、合焦レンズを光軸方向に移動することでイメージセンサ47Lの受光面を上記の眼底共役位置に配置可能に構成される。
【0125】
左眼ELからの戻り光は、左眼ELに入射した照明光の散乱光(反射光)である。いくつかの実施形態では、左眼ELからの戻り光には、左眼ELに入射した照明光の散乱光(反射光)、及び、左眼ELに入射した照明光を励起光とする蛍光及びその散乱光が含まれる。
【0126】
イメージセンサ47Lは、ピクセル化された受光器としての2次元イメージセンサの機能を実現する。イメージセンサ47Lの受光面(検出面、撮像面)は、上記の眼底共役位置に配置可能である。イメージセンサ47Lは、眼底共役位置において仮想的に移動可能な受光可能領域(受光領域)を設定可能である。
【0127】
例えば、イメージセンサ47Lによる受光結果は、ローリングシャッター方式により取り込まれて読み出される。いくつかの実施形態では、イメージセンサ47Lによる受光結果は、受光可能領域を変更可能又は移動可能なグローバルシャッター方式によって、取り込まれて読み出される。いくつかの実施形態では、後述の制御部は、イメージセンサ47Lを制御することにより受光結果の読み出し制御を行う。いくつかの実施形態では、イメージセンサ47Lは、受光位置を示す情報と共に、あらかじめ決められたライン分の受光結果を自動的に出力することが可能である。
【0128】
このようなイメージセンサ47Lは、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含む。この場合、イメージセンサ47Lは、ロウ方向に配列された複数のピクセル(受光素子)群がカラム方向に配列された複数のピクセルを含む。具体的には、イメージセンサ47Lは、2次元的に配列された複数のピクセルと、複数の垂直信号線と、水平信号線とを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、イメージセンサ47Lは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを含む。
【0130】
このようなイメージセンサ47Lに対してローリングシャッター方式で戻り光の受光結果を取り込む(読み出す)ことにより、ロウ方向に延びる所望の仮想的な開口形状に対応した受光可能領域における像が取得される。このような制御については、例えば、特許文献2又は米国特許第8237835号明細書等に開示されている。
【0131】
光路分離部材50Lと撮影光学系40Lとの間には、反射部材41L、リレーレンズ42L、反射部材43L、ビームスプリッターBSLが配置されている。ビームスプリッターBSLの反射方向には、後述の固視投影系60Lが配置されている。いくつかの実施形態では、撮影光学系40Lは、反射部材41L、リレーレンズ42L、反射部材43L、ビームスプリッターBSLを含む。
【0132】
光路分離部材50Lにより分離された左眼ELからの照明光の戻り光は、反射部材41Lにより反射され、リレーレンズ42Lを透過し、反射部材43Lにより反射され、ビームスプリッターBSLを透過し、撮影光学系40Lに導かれる。撮影光学系40Lに導かれてきた戻り光は、リレーレンズ45Lを透過し、結像レンズ46Lによりイメージセンサ47Lの受光面に結像する。
【0133】
一方、撮影光学系40Rは、撮影光学系40Lと同様の構成を有している。すなわち、撮影光学系40Rは、リレーレンズ45R、結像レンズ46R、イメージセンサ47Rを含む。撮影光学系40Rは、一体的に光軸方向に移動可能に構成される。これにより、イメージセンサ47Rの受光面は、右眼ERの眼底と光学的に共役な位置又はその近傍である眼底共役位置に配置可能である。その結果、右眼ERの状態に適合させ、右眼ERからの戻り光をイメージセンサ47Rの受光面に結像させることができる。いくつかの実施形態では、撮影光学系40Rは、合焦レンズを含み、合焦レンズを光軸方向に移動することでイメージセンサ47Rの受光面を上記の眼底共役位置に配置可能に構成される。
【0134】
右眼ERからの戻り光は、右眼ERに入射した照明光の散乱光(反射光)である。いくつかの実施形態では、右眼ERからの戻り光には、右眼ERに入射した照明光の散乱光(反射光)、及び、右眼ERに入射した照明光を励起光とする蛍光及びその散乱光が含まれる。
【0135】
イメージセンサ47Rは、イメージセンサ47Lと同様に、ピクセル化された受光器としての2次元イメージセンサの機能を実現する。イメージセンサ47Rの受光面(検出面、撮像面)は、上記の眼底共役位置に配置可能である。イメージセンサ47Rは、眼底共役位置において仮想的に移動可能な受光可能領域(受光領域)を設定可能である。
【0136】
イメージセンサ47Rによる受光結果も、イメージセンサ47Lと同様に、ローリングシャッター方式により取り込まれて読み出される。いくつかの実施形態では、イメージセンサ47Rによる受光結果は、受光可能領域を変更可能又は移動可能なグローバルシャッター方式によって、取り込まれて読み出される。いくつかの実施形態では、後述の制御部は、イメージセンサ47Rを制御することにより受光結果の読み出し制御を行う。いくつかの実施形態では、イメージセンサ47Rは、受光位置を示す情報と共に、あらかじめ決められたライン分の受光結果を自動的に出力することが可能である。
【0137】
このようなイメージセンサ47Rは、イメージセンサ47Lと同様に、CMOSイメージセンサを含む。いくつかの実施形態では、イメージセンサ47Rは、例えば、CCDイメージセンサを含む。
【0138】
このようなイメージセンサ47Rに対してローリングシャッター方式で戻り光の受光結果を取り込む(読み出す)ことにより、ロウ方向に延びる所望の仮想的な開口形状に対応した受光可能領域における像が取得される。
【0139】
光路分離部材50Rと撮影光学系40Rとの間には、反射部材41R、リレーレンズ42R、反射部材43R、ビームスプリッターBSRが配置されている。ビームスプリッターBSRの反射方向には、後述の固視投影系60Rが配置されている。いくつかの実施形態では、撮影光学系40Rは、反射部材41R、リレーレンズ42R、反射部材43R、ビームスプリッターBSRを含む。
【0140】
光路分離部材50Rにより分離された右眼ERからの照明光の戻り光は、反射部材41Rにより反射され、リレーレンズ42Rを透過し、反射部材43Rにより反射され、ビームスプリッターBSRを透過し、撮影光学系40Rに導かれる。撮影光学系40Rに導かれてきた戻り光は、リレーレンズ45Rを透過し、結像レンズ46Rによりイメージセンサ47Rの受光面に結像する。
【0141】
反射部材41L、43L、41R、43Rにより撮影光学系40L、40Rの光軸の向きを調整することで、光学系10のX方向及びY方向のサイズの縮小化が可能になる。例えば、反射部材41L、43Lにより+X方向に光軸の向きを変更し、反射部材41R、43Rにより-X方向に光軸の向きを変更することで、撮影光学系40L、40RのX方向のサイズの縮小化が可能になる。例えば、反射部材41L、43Lにより、撮影光学系40Lの光軸の向きをZ方向と略一致するように調整することができる。例えば、反射部材41R、43Rにより、撮影光学系40Rの光軸の向きをZ方向と略一致するように調整することができる。
【0142】
<固視投影系60L、60R>
固視投影系60Lは、左眼撮影モードのとき、左眼ELの眼底に固視光束を投影する。固視投影系60Rは、右眼撮影モードのとき、右眼ERの眼底に固視光束を投影する。
【0143】
固視投影系60Lは、固視投影系60Rと同様の構成を有している。
【0144】
図13は、図6Aの固視投影系60L(図6Bの固視投影系60R)の構成例を表す。
【0145】
固視投影系60Lは、固視光源61Lと、投影レンズ62Lとを含む。固視光源61Lは、左眼ELの眼底と光学的に共役な位置又はその近傍である眼底共役位置に配置可能である。固視光源61Lにより出射された固視光束は、投影レンズ62Lを透過し、ビームスプリッターBSLにより反射され、反射部材43L、リレーレンズ42L、反射部材41Lを通過して光路分離部材50Lに導かれる。光路分離部材50Lに導かれた固視光束は、ダイクロイックミラー90Lを透過し、第1楕円凹面鏡21、第2楕円凹面鏡22を介して左眼ELの眼底に投影される(図6Aを参照)。
【0146】
固視投影系60Rは、固視光源61Rと、投影レンズ62Rとを含む。固視光源61Rは、右眼ERの眼底と光学的に共役な位置又はその近傍である眼底共役位置に配置可能である。固視光源61Rにより出射された固視光束は、投影レンズ62Rを透過し、ビームスプリッターBSRにより反射され、反射部材43R、リレーレンズ42R、反射部材41Rを通過して光路分離部材50Rに導かれる。光路分離部材50Rに導かれた固視光束は、ダイクロイックミラー90Rを透過し、第1楕円凹面鏡21、第2楕円凹面鏡22を介して右眼ERの眼底に投影される(図6Bを参照)。
【0147】
<光路分離部材50L、50R>
光路分離部材50Lは、上記のように、左眼測定位置と光学的に略共役な左眼測定共役位置に配置される。また、光路分離部材50Rは、上記のように、右眼測定位置と光学的に略共役な右眼測定共役位置に配置される。
【0148】
光路分離部材50Lは、光路分離部材50Rと同様の構成を有する。
【0149】
図14に、光路分離部材50Lの構成例を模式的にします。図14は、光路分離部材50Lの断面構造を模式的に表したものである。
【0150】
光路分離部材50Lは、瞳分割ミラーとしての反射部材51Lと、撮影絞り52Lとを含む。撮影絞り52Lには、光軸Oから偏心した位置に開口が形成されている。反射部材51Lは、撮影絞り52Lの第1楕円凹面鏡21の反射面側の面において光軸Oから偏心した位置に設けられる。すなわち、反射部材51L及び撮影絞り52Lのそれぞれは、左眼測定共役位置に配置される。
【0151】
図15は、左眼測定共役位置における共役平面を模式的に表す。
【0152】
共役平面PLは、光軸O上の左眼測定共役位置において当該光軸に直交する仮想的な平面である。共役平面PLでは、虹彩絞り32に形成された開口の像AP1と、撮影絞り52Lに形成された開口の像AP2とが配置される。このとき、撮影絞り52Lに形成された開口の像と、虹彩絞り32に形成された開口の像とが非重複となるように配置される。
【0153】
従って、光路分離部材50Lにおいて、反射部材51Lは、照明光学系30からのスリット状の照明光を反射して対物光学系20(第1楕円凹面鏡21)に導く。撮影絞り52Lは、その開口を通過した戻り光を撮影光学系40Lに導く。
【0154】
同様に、光路分離部材50Rは、瞳分割ミラーとしての反射部材51Rと、撮影絞り52Rとを含む。撮影絞り52Rには、光軸から偏心した位置に開口が形成されている。反射部材51Rは、撮影絞り52Rの第1楕円凹面鏡21の反射面側の面において光軸から偏心した位置に設けられる。すなわち、反射部材51R及び撮影絞り52Rのそれぞれは、右眼測定共役位置に配置される。
【0155】
すなわち、右眼測定共役位置における共役平面では、図15と同様に、虹彩絞り32に形成された開口の像と、撮影絞り52Rに形成された開口の像とが配置される。従って、光路分離部材50Rにおいて、反射部材51Rは、照明光学系30からのスリット状の照明光を反射して対物光学系20(第1楕円凹面鏡21)に導く。撮影絞り52Rは、その開口を通過した戻り光を撮影光学系40Rに導く。
【0156】
<前眼部撮影系80L、80R>
図16は、第2楕円凹面鏡22(22′)の反射面側からみたときの対物光学系20と前眼部撮影系80L、80Rとの位置関係を模式的に表したものである。図16において、図1図2図6A図6Bと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0157】
前眼部撮影系80Lは、図16に示すように、ダイクロイックミラー90Lの反射方向である-Y方向に配置される。前眼部撮影系80Rは、図16に示すように、ダイクロイックミラー90Rの反射方向である-Y方向に配置される。これにより、光学系10の少なくともX方向のサイズの縮小化が可能になる。
【0158】
図17に、前眼部撮影系80L(80R)の構成例を模式的に示す。図17において、図1又は図16と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0159】
前眼部撮影系80Lは、2つの前眼部カメラ81LL、81LRに加えて、光路偏向プリズム82Lと、結像レンズ82LL、82LRとを含む。
【0160】
前眼部カメラ81LL、81LRのそれぞれの受光面(撮像面)は、左眼ELの眼底と光学的に略共役な位置又はその近傍である眼底共役位置に配置可能である。例えば、前眼部カメラ81LL、81LRは、左眼測定共役位置において光軸に垂直な左眼測定共役面と撮影光軸Lref、Rrefとのなす角度が同一であり、且つ、左眼測定共役面の法線方向(光軸方向)を基準に対称となるように配置される。いくつかの実施形態では、前眼部カメラ81LL、81LRを光軸方向に移動することで、受光面(撮像面)を眼底共役位置に配置する。いくつかの実施形態では、ダイクロイックミラー90Lと結像レンズ82LL、82LRのそれぞれとの間に2つ合焦レンズを設け、2つの合焦レンズのそれぞれを光軸方向に移動することで、受光面(撮像面)を眼底共役位置に配置する。
【0161】
例えば、ダイクロイックミラー90Lにより偏向された前眼部撮影系80Lの撮影基準光軸Refは、前眼部カメラ81LL、81LRの基線の中点と通過し、当該基線に垂直な光軸である。前眼部カメラ81LLの撮影光軸Lrefと前眼部カメラ81LRの撮影光軸Rrefとが左眼測定共役位置と光学的に等価な位置を通過するように配置される。すなわち、前眼部カメラ81LL、81LRのそれぞれは、撮影基準光軸Refに交差する撮影光軸Lref、Rrefに配置される。
【0162】
いくつかの実施形態では、図17に示すように、光路偏向プリズム82Lが設けられる。光路偏向プリズム82Lは、例えば、所定の交差角度で交差して稜線を共有する第1偏向面及び第2偏向面を備える三角プリズムである。この場合、ダイクロイックミラー90Lによって反射された戻り光は、光路偏向プリズム82Lの第1偏向面で結像レンズ82LLに向けて偏向され、結像レンズ82LLにより前眼部カメラ81LLの受光面に結像する。また、ダイクロイックミラー90Lによって反射された戻り光は、光路偏向プリズム82Lの第2偏向面で結像レンズ82LRに向けて偏向され、結像レンズ82LRにより前眼部カメラ81LRの受光面に結像する。
【0163】
これにより、前眼部カメラ81LL、81LRの物理的な干渉を回避しつつ、左眼測定共役位置を光学的に見込むように前眼部カメラ81LL、81LRを配置することができる。
【0164】
図18は、対物光学系20における前眼部カメラ81LL、81LRの撮影光軸を模式的に表したものである。図18において、図1図2図16図17と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0165】
図18に示すように、前眼部カメラ81LL、81LRは、左眼ELが配置される左眼測定位置と光学的に等価な左眼測定共役位置(又は左眼測定共役位置と光学的に共役な位置)を見込むように配置される。すなわち、前眼部カメラ81LL、81LRは、照明光学系30及び撮影光学系40Lの光軸から離れた位置から左眼ELを撮影することができる。
【0166】
同様に、前眼部撮影系80Rは、2つの前眼部カメラ81RL、81RRに加えて、光路偏向プリズム82Rと、結像レンズ82RL、82RRとを含む(図17を参照)。
【0167】
前眼部カメラ81RL、81RRのそれぞれの受光面(撮像面)は、右眼ERの眼底と光学的に略共役な位置又はその近傍である眼底共役位置に配置可能である。例えば、前眼部カメラ81RL、81RRは、右眼測定共役位置において光軸に垂直な右眼測定共役面と撮影光軸とのなす角度が同一であり、且つ、右眼測定共役面の法線方向(光軸方向)を基準に対称となるように配置される。いくつかの実施形態では、前眼部カメラ81RL、81RRを光軸方向に移動することで、受光面(撮像面)を眼底共役位置に配置する。いくつかの実施形態では、ダイクロイックミラー90Rと結像レンズ82RL、82RRのそれぞれとの間に2つ合焦レンズを設け、2つの合焦レンズのそれぞれを光軸方向に移動することで、受光面(撮像面)を眼底共役位置に配置する。
【0168】
例えば、ダイクロイックミラー90Rにより偏向された前眼部撮影系80Rの撮影基準光軸Refは、前眼部カメラ81RL、81RRの基線の中点と通過し、当該基線に垂直な光軸である。前眼部カメラ81RLの撮影光軸Lrefと前眼部カメラ81RRの撮影光軸Rrefとが右眼測定共役位置と光学的に等価な位置を通過するように配置される。すなわち、前眼部カメラ81RL、81RRのそれぞれは、撮影基準光軸Refに交差する撮影光軸Lref、Rrefに配置される。
【0169】
いくつかの実施形態では、図17に示すように、光路偏向プリズム82Rが設けられる。光路偏向プリズム82Rは、例えば、所定の交差角度で交差して稜線を共有する第1偏向面及び第2偏向面を備える三角プリズムである。この場合、ダイクロイックミラー90Rによって反射された戻り光は、光路偏向プリズム82Rの第1偏向面で結像レンズ82RLに向けて偏向され、結像レンズ82RLにより前眼部カメラ81RLの受光面に結像する。また、ダイクロイックミラー90Rによって反射された戻り光は、光路偏向プリズム82Rの第2偏向面で結像レンズ82RRに向けて偏向され、結像レンズ82RRにより前眼部カメラ81RRの受光面に結像する。
【0170】
これにより、前眼部カメラ81RL、81RRの物理的な干渉を回避しつつ、右眼測定共役位置を光学的に見込むように前眼部カメラ81RL、81RRを配置することができる。
【0171】
従って、前眼部カメラ81RL、81RRは、前眼部カメラ81LL、81LRと同様に、右眼ERが配置される右眼測定位置と光学的に等価な右眼測定共役位置(又は右眼測定共役位置と光学的に共役な位置)を見込むように配置される。すなわち、前眼部カメラ81RL、81RRは、照明光学系30及び撮影光学系40Lの光軸から離れた位置から右眼ERを撮影することができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22の少なくとも一方は、反射面が凸面状に形成された凸面鏡(例えば、楕円凸面鏡)である。いくつかの実施形態では、第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22の少なくとも一方は、反射面が自由曲面である曲面鏡である。
【0173】
また、眼科装置1には、被検者の顔を支持するための部材(顎受け、額当て等)等の任意の要素やユニットが設けられてもよい。
【0174】
第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22は、実施形態に係る「2つの曲面鏡」の一例である。前眼部撮影系80L又は前眼部撮影系80Rは、実施形態に係る「撮影部」の一例である。光路分離部材50L又は光路分離部材50Rは、実施形態に係る「第1光路分離部材」の一例である。ダイクロイックミラー90L又はダイクロイックミラー90Rは、実施形態に係る「第2光路分離部材」の一例である。虹彩絞り32は、実施形態に係る「照明絞り」の一例である。前眼部撮影系80Lは、実施形態に係る「左眼用撮影部」の一例である。前眼部撮影系80Rは、実施形態に係る「右眼用撮影部」の一例である。撮影光学系40Lは、実施形態に係る「左眼用撮影光学系」の一例である。撮影光学系40Rは、実施形態に係る「右眼用撮影光学系」の一例である。光路分離部材50Lは、実施形態に係る「左眼用光路分離部材」の一例である。光路分離部材50Rは、実施形態に係る「右眼用光路分離部材」の一例である。
【0175】
<制御系>
図19に、実施形態に係る眼科装置1の制御系の構成例を示す。図19において、図1図18と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0176】
眼科装置1の制御系(処理系)は、制御部100を中心に構成される。制御部100は、眼科装置1の各部の制御を行う。
【0177】
制御部100は、主制御部101と、記憶部102とを含む。主制御部101の機能は、例えばプロセッサにより実現される。記憶部102には、眼科装置1を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このコンピュータプログラムには、照明光学系制御用プログラム、撮影光学系制御用プログラム、光スキャナ制御用プログラム、前眼部撮影系制御用プログラム、画像形成用プログラム、データ処理用プログラム、及びユーザーインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部101が動作することにより、制御部100は制御処理を実行する。
【0178】
(主制御部101)
主制御部101は、対物光学系20(対物系移動機構20D)、照明光学系30、撮影光学系40L、40R、固視投影系60L、60R、光路切換部材70、前眼部撮影系80L、80R、移動機構10Dの各部を制御する。更に、主制御部101は、画像形成部200、データ処理部210、及びユーザーザインターフェイス(User Interface:UI)部220を制御する
【0179】
対物光学系20に対する制御には、対物系移動機構20Dに対する制御などがある。
【0180】
対物系移動機構20Dは、所定の回動軸を中心に第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22を回動機構と、回動機構による回動に連動して、光学系10のうち対物光学系20を除く光学系を図5に示すようにスライド移動するスライド機構とを含む。各移動機構は、アクチュエータとしてのパルスモータを含み、主制御部101からの制御を受けて、回動機構による第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22の回動とスライド機構による上記の光学系のスライド移動とを行う。
【0181】
照明光学系30に対する制御には、光源ユニット31に対する制御、移動機構34Dに対する制御、光スキャナ95に対する制御などがある。
【0182】
光源ユニット31に対する制御には、可視光源312R、312G、312B及び赤外光源312IRのそれぞれについて点灯、消灯、光量調整などがある。
【0183】
移動機構34Dは、スリット34を照明光学系30の光軸方向に移動する。主制御部101は、移動機構34Dに対して制御信号を出力することにより、制御信号に対応した移動量及び移動方向にスリット34を移動する。
【0184】
また、移動機構34Dは、照明光学系30の光軸に対するスリット34の出射面の交差角度を変更する回動機構を含む。回動機構は、照明光学系30の光軸に直交する回動軸を中心にスリット34を回動させる。移動機構34Dは、左眼撮影モードのとき、主制御部101からの制御を受け、スリット34の長手方向が図6Aに示す第1回転状態の第1楕円凹面鏡21の長軸方向と光学的に略平行になるようにスリット34を回転させる。また、移動機構34Dは、右眼撮影モードのとき、主制御部101からの制御を受け、スリット34の長手方向が図6Bに示す第2回転状態の第1楕円凹面鏡21の長軸方向と光学的に略平行になるようにスリット34を回転させる。
【0185】
いくつかの実施形態では、左眼撮影モード用に上記の交差角度が固定された第1スリットと、右眼撮影モード用に上記の交差角度が固定された第2スリットとが設けられる。この場合、移動機構34Dは、主制御部101からの制御を受け、第1スリット及び第2スリットのいずれかを照明光学系30の光軸に配置するように構成される。
【0186】
例えば、眼科装置1には、移動機構34Dを駆動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。移動機構34Dは、主制御部101からの制御を受けたアクチュエータにより発生した駆動力を伝達機構から受けて、スリット34を光軸方向に移動したり、上記の回動軸を中心に回動したりする。
【0187】
光スキャナ95に対する制御には、照明光を偏向する偏向面の角度の制御が含まれる。偏向面の角度を制御することで、照明光の偏向方向(スキャン方向)を制御することが可能である。偏向面の角度範囲を制御することで、スキャン範囲(スキャン開始位置及びスキャン終了位置)を制御することが可能である。偏向面の角度の変更速度を制御することで、スキャン速度を制御することが可能である。
【0188】
光路切換部材70に対する制御には、撮影モードに応じた光路切換制御がある。光路切換部材70は、左眼撮影モードのとき、主制御部101からの制御を受け、光スキャナ95により偏向された照明光を光路分離部材50Lに導く。また、光路切換部材70は、右眼撮影モードのとき、主制御部101からの制御を受け、光スキャナ95により偏向された照明光を光路分離部材50Rに導く。
【0189】
撮影光学系40Lに対する制御には、イメージセンサ47Lに対する制御、合焦機構40Ldに対する制御などがある。また、撮影光学系40Rに対する制御には、イメージセンサ47Rに対する制御、合焦機構40Rdに対する制御などがある。
【0190】
イメージセンサ47L、47Rに対する制御には、受光面における受光可能領域の設定制御、ローリングシャッター方式で受光結果を読み出すための制御(例えば、照明パターンのサイズに対応した受光サイズの設定等)が含まれる。また、イメージセンサ47L、47Rの制御には、リセット制御、露光制御、電荷転送制御、出力制御などが含まれる。
【0191】
合焦機構40Ld、40Rdは、撮影光学系40L、40Rを光軸方向に移動する。主制御部101は、合焦機構40Ld、40Rdに対して制御信号を出力することにより、制御信号に対応した移動量及び移動方向に撮影光学系40L、40Rを移動する。例えば、眼科装置1には、合焦機構40Ld、40Rdを駆動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。合焦機構40Ld、40Rdは、主制御部101からの制御を受けたアクチュエータにより発生した駆動力を受けて、撮影光学系40L、40Rを光軸方向に移動する。
【0192】
固視投影系60L、60Rに対する制御には、固視光源61L、61Rに対する制御などがある。
【0193】
固視光源61L、61Rに対する制御には、光源の点灯、消灯、光量調整などがある。
【0194】
前眼部撮影系80L、80Rに対する制御には、前眼部カメラ81LL、81LRの受光面を左眼ELの眼底共役位置に配置する制御、前眼部カメラ81LL、81LRの撮影制御がある。更に、前眼部撮影系80L、80Rに対する制御には、前眼部カメラ81RL、81RRの受光面を右眼ERの眼底共役位置に配置する制御、前眼部カメラ81RL、81RRの撮影制御がある。
【0195】
前眼部カメラ81LL、81LRの受光面を左眼ELの眼底共役位置に配置する制御には、前眼部カメラ81LL、81LRを移動する制御、又は左眼ELからの光を透過する合焦レンズを光軸方向に移動する制御がある。前眼部カメラ81LL、81LRの撮影制御には、各カメラの受光感度の制御、フレームレート(受光タイミング)の制御、2つのカメラの同期制御などがある。
【0196】
前眼部カメラ81RL、81RRを右眼ERの眼底共役位置に配置する制御には、前眼部カメラ81RL、81RRの受光面を移動する制御、又は右眼ERからの光を透過する合焦レンズを光軸方向に移動する制御がある。前眼部カメラ81RL、81RRの撮影制御には、各カメラの受光感度の制御、フレームレート(受光タイミング)の制御、2つのカメラの同期制御などがある。
【0197】
移動機構10Dは、眼科装置1の図1の光学系10(装置光学系)を3次元的に移動する。典型的な例において、移動機構10Dは、光学系10(光学系10を格納する筐体)をX方向(左右方向)に移動するための機構と、Y方向(上下方向)に移動するための機構と、Z方向(奥行き方向、前後方向、作動距離方向)に移動するための機構とを含む。X方向に移動するための機構は、例えば、X方向に移動可能なXステージと、Xステージを移動するX移動機構とを含む。Y方向に移動するための機構は、例えば、Y方向に移動可能なYステージと、Yステージを移動するY移動機構とを含む。Z方向に移動するための機構は、例えば、Z方向に移動可能なZステージと、Zステージを移動するZ移動機構とを含む。各移動機構は、アクチュエータとしてのパルスモータを含み、主制御部101からの制御を受けて動作する。
【0198】
移動機構10Dに対する制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、撮影対象の被検眼の眼球運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとフォーカス調整が実行される。トラッキングは、装置光学系の位置を眼球運動に追従させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0199】
マニュアルアライメントの場合、光学系に対する撮影対象の被検眼の変位がキャンセルされるようにユーザーがUI部220に対して操作することにより光学系10と被検眼とを相対移動させる。例えば、主制御部101は、UI部220に対する操作内容に対応した制御信号を移動機構10Dに出力することにより移動機構10Dを制御して被検眼に対して光学系を相対移動させる。
【0200】
オートアライメントの場合、光学系に対する撮影対象の被検眼の変位がキャンセルされるように主制御部101が移動機構10Dを制御することにより被検眼に対して光学系を相対移動させる。具体的には、特開2013-248376号公報に記載のように、前眼部撮影系80L又は前眼部撮影系80Rの2つの前眼部カメラと被検眼との位置関係に基づく三角法を利用した演算処理が行われる。主制御部101は、光学系に対する被検眼の位置関係が所定の位置関係になるように移動機構10Dを制御する。
【0201】
画像形成部200に対する制御には、イメージセンサ47L又はイメージセンサ47Rにより得られた受光結果から左眼EL又は右眼ERの画像を形成する画像形成制御などがある。
【0202】
データ処理部210に対する制御には、撮影光学系40L、40Rにより取得された画像に対する画像処理制御や、前眼部撮影系80L、80Rにより取得された画像の解析処理制御、被検眼に対する装置光学系の位置合わせ制御(アライメント制御)などがある。
【0203】
UI部220に対する制御には、表示デバイスに対する制御、操作デバイス(入力デバイス)に対する制御などがある。
【0204】
(記憶部102)
記憶部102は、各種のデータを記憶する。記憶部102に記憶されるデータとしては、例えば、イメージセンサ47L、47Rにより得られた受光結果、画像形成部200により形成された画像の画像データ、データ処理部210により得られた処理結果、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。
【0205】
また、記憶部102には、眼科装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0206】
(画像形成部200)
画像形成部200は、主制御部101(制御部100)からの制御を受けてローリングシャッター方式によりイメージセンサ47L又はイメージセンサ47Rから読み出された受光結果に基づいて、任意の開口範囲に対応した受光像を形成することが可能である。画像形成部200は、(仮想的な)開口範囲に対応した受光像を順次に形成し、形成された複数の受光像から左眼EL又は右眼ERの画像を形成することが可能である。画像形成部200により形成された各種の画像(画像データ)は、例えば記憶部102に保存される。
【0207】
例えば、画像形成部200は、プロセッサを含み、記憶部等に記憶されたプログラムに従って処理を行うことで、上記の機能を実現する。
【0208】
(データ処理部210)
データ処理部210は、イメージセンサ47L、47Rから取得された受光結果に対する各種の画像処理、解析処理、アライメント処理を実行する。画像処理には、受光結果に対するノイズ除去処理、受光結果に基づく受光像に描出された所定の部位を識別しやすくするための輝度補正処理がある。アライメント処理には、被検眼に対する装置光学系の位置合わせを行うための処理がある。
【0209】
データ処理部210は、プロセッサを含み、記憶部等に記憶されたプログラムに従って処理を行うことで、上記の機能を実現する。
【0210】
図20に、図19のデータ処理部210の構成例のブロック図を示す。
【0211】
データ処理部210は、瞳孔領域特定部211と、3次元位置特定部212と、アライメント目標位置特定部213とを含む。
【0212】
瞳孔領域特定部211は、前眼部撮影系80Lの前眼部カメラ81LL、81LRにより実質的に同時に撮影することにより得られた左眼ELの一対の前眼部画像(撮影画像)を取得する。瞳孔領域特定部211は、得られた一対の前眼部画像のそれぞれを解析することで、左眼ELの瞳孔に相当する当該前眼部画像中の瞳孔領域(中心位置、重心位置)の位置を特定する。
【0213】
まず、瞳孔領域特定部211は、前眼部画像の画素値(輝度値など)の分布に基づいて、左眼ELの瞳孔に相当する画像領域(瞳孔領域)を特定する。一般に瞳孔は他の部位よりも低い輝度で描画されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定することができる。このとき、瞳孔の形状を考慮して瞳孔領域を特定するようにしてもよい。つまり、略円形かつ低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定するように構成することができる。
【0214】
次に、瞳孔領域特定部211は、特定された瞳孔領域の中心位置を特定する。上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔領域の輪郭を特定し、この輪郭(の近似円または近似楕円)の中心位置を特定し、これを瞳孔中心位置とすることができる。また、瞳孔領域の重心を求め、この重心位置を瞳孔重心位置として特定してもよい。
【0215】
同様に、瞳孔領域特定部211は、前眼部撮影系80Rの前眼部カメラ81RL、81RRにより実質的に同時に撮影することにより得られた右眼ERの一対の前眼部画像を取得する。瞳孔領域特定部211は、得られた一対の前眼部画像のそれぞれを解析することで、左眼ELの瞳孔領域と同様に、右眼ERの瞳孔に相当する当該前眼部画像中の瞳孔領域の位置を特定する。
【0216】
瞳孔領域特定部211は、前眼部カメラ81LL、81LR又は前眼部カメラ81RL、81RRにより逐次に得られた一対の前眼部画像に対し、瞳孔に相当する瞳孔領域を逐次に特定することが可能である。また、瞳孔領域特定部211は、前眼部カメラ81LL、81LR又は前眼部カメラ81RL、81RRにより逐次に得られた一対の前眼部画像に対し1以上の任意の数のフレームおきに瞳孔領域を特定してもよい。
【0217】
3次元位置特定部212は、前眼部カメラ81LL、81LRの位置と、瞳孔領域特定部211により特定された瞳孔領域(中心位置)とに基づいて左眼ELの瞳孔の3次元位置を特定する。3次元位置特定部212は、特開2013-248376号公報に開示されているように、2つの前眼部カメラ81LL、81LRの位置(既知である)と、一対の前眼部画像において瞳孔領域に相当する位置とに対して、公知の三角法を適用する。それにより、3次元位置特定部212は、左眼ELの瞳孔の3次元位置を左眼ELの3次元位置として算出することができる。
【0218】
また、3次元位置特定部212は、前眼部カメラ81RL、81RRの位置と、瞳孔領域特定部211により特定された瞳孔領域(中心位置)とに基づいて右眼ERの瞳孔の3次元位置を特定する。3次元位置特定部212は、2つの前眼部カメラ81RL、81RRの位置(既知である)と、一対の前眼部画像において瞳孔領域に相当する位置とに対して、公知の三角法を適用することにより右眼ERの瞳孔の3次元位置を右眼ERの3次元位置として算出する。
【0219】
アライメント目標位置特定部213は、アライメント目標位置(Xr,Yr,Zr)を特定する。アライメント目標位置(Xr,Yr,Zr)は、眼科装置1の光学系における所定の基準位置を原点とする3次元座標系において定義される3次元位置である。アライメント目標位置のX方向の座標位置Xr、及びY方向の座標位置Yrは、撮影光学系40Lの光軸が左眼ELの軸に略一致するXY平面上の位置、又は撮影光学系40Rの光軸が右眼ERの軸に略一致するXY平面上の位置である。アライメント目標位置のZ方向の座標位置Zrは、左眼ELに対する光学系10の距離が所定の作動距離になる撮影光学系40Lの光軸上の位置、又は右眼ERに対する光学系10の距離が所定の作動距離になる撮影光学系40Rの光軸上の位置である。ここで、作動距離とは、対物光学系20のワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、撮影光学系40L、40Rを用いた測定時(撮影時)における被検眼と光学系10との間の距離に相当する。
【0220】
主制御部101は、アライメント目標位置特定部213により算出されたアライメント目標位置に撮影対象の被検眼が配置されるように移動機構10Dを制御する。
【0221】
(UI部220)
UI部220は、ユーザー(検者又は被検者)と眼科装置1との間で情報のやりとりを行うための機能を備える。UI部220は、表示デバイスと操作デバイスとを含む。表示デバイスは、表示部を含んでよく、それ以外の表示デバイスを含んでもよい。表示デバイスは、各種の情報を表示させる。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイを含み、主制御部101からの制御を受け、上記の情報を表示する。表示デバイスに表示される情報には、制御部100による制御結果に対応した情報、画像形成部200又はデータ処理部210による演算結果に対応した情報(画像)などがある。操作デバイスは、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含む。主制御部101は、操作デバイスに対する操作内容を受け、操作内容に対応した制御信号を各部に出力することが可能である。操作デバイスの少なくとも一部と表示デバイスの少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
【0222】
<動作例>
次に、実施形態に係る眼科装置1の動作例について説明する。
【0223】
図21図23に、実施形態に係る眼科装置1の動作例を示す。図21は、実施形態に係る眼科装置1の動作例のフローチャートを表す。図22は、図21のステップS5及びステップS11の動作例のフローチャートを表す。図23は、図21のステップS6及びステップS12の動作例のフローチャートを表す。記憶部102には、図21図23に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部101は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図21図23に示す処理を実行する。
【0224】
(S1:左眼撮影モード?)
まず、主制御部101は、撮影モードが左眼撮影モードであるか否かを判定する。例えば、主制御部101は、UI部220に対するユーザーの操作内容に基づいて撮影モードの種別を判定する。
【0225】
撮影モードが左眼撮影モードであると判定されたとき(S1:Y)、眼科装置1の動作はステップS2に移行し、ステップS2~ステップS6において左眼ELに対してスリット撮影制御が実行される。撮影モードが左眼撮影モードではないと判定されたとき(S1:N)、眼科装置1の動作はステップS7に移行する。
【0226】
(S2:照明光の光路を切り換え)
ステップS1において撮影モードが左眼撮影モードであると判定されたとき(S1:Y)、主制御部101は、光路切換部材70を制御して、照明光が光路分離部材50Lに導かれるように光路を切り換える。
【0227】
(S3:スリット配置を変更)
続いて、主制御部101は、移動機構34Dを制御し、スリット34の出射面が図6Aに示す第1楕円凹面鏡21の長軸方向と光学的に略平行になるように光軸に対するスリット34の交差角度を変更する。
【0228】
(S4:照明光の照射を開始)
続いて、主制御部101は、光源ユニット31を制御し、照明光の照射を開始させる。例えば、光源ユニット31は、白色光又は赤外光を照明光として照射を開始する。
【0229】
(S5:アライメント処理)
次に、主制御部101は、前眼部撮影系80Lを用いて、左眼ELに対する光学系10のアライメント処理を実行する。ステップS5の詳細については、後述する。
【0230】
(S6:スリット撮影)
続いて、主制御部101は、スリットスキャン方式で、左眼ELの眼底に対して撮影処理を実行する。ステップS6の詳細については、後述する。
【0231】
(S7:右眼撮影モード?)
ステップS1において左眼撮影モードではないと判定されたとき(S1:N)、又は、ステップS6に続いて、主制御部101は、撮影モードが右眼撮影モードであるか否かを判定する。例えば、主制御部101は、UI部220に対するユーザーの操作内容に基づいて撮影モードの種別を判定する。
【0232】
撮影モードが右眼撮影モードであると判定されたとき(S7:Y)、眼科装置1の動作はステップS8に移行し、ステップS8~ステップS12において右眼ERに対してスリット撮影制御が実行される。撮影モードが右眼撮影モードではないと判定されたとき(S7:N)、眼科装置1の動作は終了である(エンド)。
【0233】
(S8:照明光の光路を切り換え)
ステップS7において撮影モードが右眼撮影モードであると判定されたとき(S7:Y)、主制御部101は、光路切換部材70を制御して、照明光が光路分離部材50Rに導かれるように光路を切り換える。
【0234】
(S9:スリット配置を変更)
続いて、主制御部101は、移動機構34Dを制御し、スリット34の出射面が図6Bに示す第1楕円凹面鏡21の長軸方向と光学的に略平行になるように光軸に対するスリット34の交差角度を変更する。
【0235】
(S10:照明光の照射を開始)
続いて、主制御部101は、ステップS4と同様に、光源ユニット31を制御し、照明光の照射を開始させる。
【0236】
(S11:アライメント処理)
次に、主制御部101は、前眼部撮影系80Rを用いて、右眼ERに対する光学系10のアライメント処理を実行する。ステップS11は、前眼部撮影系80Lに代えて前眼部撮影系80Rを用いる点を除いて、ステップS5と同様である。
【0237】
(S12:スリット撮影)
続いて、主制御部101は、スリットスキャン方式で、右眼ERの眼底に対して撮影処理を実行する。ステップS12は、撮影光学系40Lに代えて撮影光学系40Rを用いる点を除いて、ステップS6と同様である。
【0238】
以上で、眼科装置1の動作は終了である(エンド)。
【0239】
図21のステップS5又はステップS11の処理は、図22に示すフローに従って実行される。図22では、左眼ELについてステップS5の処理を説明するが、右眼ERについてステップS11の処理も同様であるため、ステップS11の処理について詳細な説明を省略する。
【0240】
図22では、ステップS21に先行して、既に、前眼部撮影系80Lの前眼部カメラ81LL、81LRが左眼ELの眼底共役位置に配置されているものとする。
【0241】
(S21:前眼部を撮影)
ステップS5では、まず、主制御部101は、前眼部撮影系80Lの前眼部カメラ81LL、81LRを制御して、互いに異なる方向から左眼ELの前眼部の撮影を開始し、実質的に同時に取得された左眼ELの一対の前眼部画像の取得を開始させる。
【0242】
(S22:瞳孔領域を特定)
次に、主制御部101は、瞳孔領域特定部211を制御して、ステップS21において取得された一対の前眼部画像のそれぞれについて瞳孔領域を特定させる。
【0243】
(S23:瞳孔領域の3次元位置を算出)
次に、主制御部101は、3次元位置特定部212を制御して、ステップS22において特定された一対の前眼部画像における瞳孔領域を用いて、上記のように、左眼ELの瞳孔領域の3次元位置を算出させる。
【0244】
(S24:アライメント目標位置を特定)
続いて、主制御部101は、アライメント目標位置特定部213を制御して、上記のように、ステップS23において算出された瞳孔領域の3次元位置に基づいてアライメント目標位置を特定させる。
【0245】
(S25:移動機構を制御)
次に、主制御部101は、移動機構10Dを制御して、ステップS25において算出されたアライメント目標位置に基づいて、左眼ELに対して光学系10を相対移動させる。
【0246】
以上で、ステップS5の処理は終了である(エンド)。
【0247】
図21のステップS6又はステップS12の処理は、図23に示すフローに従って実行される。図23では、左眼ELについてステップS6の処理を説明するが、右眼ERについてステップS12の処理も同様であるため、ステップS12の処理について詳細な説明を省略する。
【0248】
(S31:視度を取得)
ステップS6では、まず、主制御部101は、視度(屈折度)を取得する。例えば、主制御部101は、外部の眼科測定装置又は電子カルテから左眼ELの視度を取得する。いくつかの実施形態では、主制御部101は、合焦機構40Ldを制御して合焦状態を特定し、合焦状態に設定された撮影光学系40Lの光軸上の位置(又は合焦機構40Ldを駆動するアクチュエータの制御結果)から視度を特定する。
【0249】
(S32:スリットを移動)
次に、主制御部101は、ステップS31において取得された左眼ELの視度に応じて、照明光学系30の光軸におけるスリット34の位置を変更する。
【0250】
具体的には、主制御部101は、記憶部102に記憶された第1制御情報を参照して視度に対応したスリット34の位置を特定し、特定された位置にスリット34が配置されるように移動機構34Dを制御する。
【0251】
(S33:固視光束を投影)
続いて、主制御部101は、固視投影系60Lを制御し、左眼ELの眼底に対する固視光束の投影を開始させる。
【0252】
(S34:照明光を照射)
次に、主制御部101は、照明光学系30により生成されたスリット状の照明光に対して、光スキャナ95の偏向制御を開始させることにより、左眼ELの眼底における所望の照射範囲に対する照明光の照射を開始させる。照明光の照射が開始されると、上記のように、スリット状の照明光が所望の照射範囲内で順次に照射される。
【0253】
(S35:受光結果を取得)
主制御部101は、上記のように、ステップS34における眼底の照明光の照射範囲に対応したイメージセンサ47Lの開口範囲におけるピクセルの受光結果を取得する。
【0254】
(S36:次の照射位置?)
主制御部101は、次に照明光で照射すべき照射位置があるか否かを判定する。主制御部101は、順次に移動される照明光の照射範囲があらかじめ決められた眼底の撮影範囲を網羅したか否かを判定することにより、次に照明光で照射すべき照射位置があるか否かを判定することが可能である。
【0255】
次に照明光で照射すべき照射位置があると判定されたとき(S36:Y)、眼科装置1の動作はステップS37に移行する。次に照明光で照射すべき照射位置がないと判定されたとき(S36:N)、眼科装置1の動作はステップS38に移行する。
【0256】
(S37:照明光の偏向角度を変更)
ステップS36において次に照明光で照射すべき照射位置があると判定されたとき(S36:Y)、主制御部101は、光スキャナ95を制御して、光スキャナ95の偏向面を所定の角度だけ偏向角度を変更させる。
【0257】
ステップS37に続いて、ステップS6の処理はステップS34に移行する。
【0258】
(S38:画像を形成)
ステップS36において、次に照明光で照射すべき照射位置がないと判定されたとき(S36:N)、主制御部101は、ステップS34~ステップS37において照明光の照射範囲を変更しつつ繰り返し取得された受光結果から左眼ELの眼底画像を画像形成部200に形成させる。
【0259】
例えば、画像形成部200は、ステップS34~ステップS37の処理の繰返し回数分の互いに照明光の照射範囲(イメージセンサ47Lの受光面における開口範囲)が異なる複数の受光結果を照射範囲の移動順序に基づいて合成する。それにより、左眼ELの眼底の1フレーム分の眼底画像が形成される。
【0260】
いくつかの実施形態では、ステップS34では、隣接する照射範囲との重複領域が設けられるように設定された照射範囲に照明光が照射される。それにより、ステップS38では、互いの重複領域が重なるように眼底画像を合成することで1フレーム分の眼底画像が形成される。
【0261】
以上で、図21のステップS6の処理は終了である(エンド)。
【0262】
図24に、撮影対象の被検眼の眼底を模式的に示す。
【0263】
撮影対象の左眼EL又は右眼ERの眼底Efには、スリット像(スリット34に形成された開口34aの像)が投影される。イメージセンサ47L又はイメージセンサ47Rでは、眼底Efにおける照明光の照明領域に相当するスリット像の移動に同期して、受光面における仮想的な受光可能領域の位置が変更される。
【0264】
具体的には、眼底Efにおけるスリット像の範囲を含むように、眼底Efにおける照明領域に対応してイメージセンサ47L又はイメージセンサ47Rの受光可能領域が設定される。スリット像の長手方向に直交する短手方向にスリット像が移動するようにスキャンされる。例えば、偏向角度が「0度」のとき、眼底Efにおける照明領域に相当するスリット像SL10が投影される。このとき、イメージセンサ47L又はイメージセンサ47Rは、この照明領域に対応して受光可能領域LA10が設定される。その後、偏向角度が「+α度」に変更されると、眼底Efにおける照明領域に相当するスリット像SL11が投影される。このとき、イメージセンサ47L又はイメージセンサ47Rは、この照明領域に対応して受光可能領域LA11が設定される。また、偏向角度が「-α度」に変更されると、眼底Efにおける照明領域に相当するスリット像SL12が投影される。このとき、イメージセンサ47L又はイメージセンサ47Rは、この照明領域に対応して受光可能領域LA12が設定される。このように、眼底Efにおけるスリット像の移動に同期して、イメージセンサ47L又はイメージセンサ47Rは、スリット像の範囲を含むように受光面における受光可能領域を順次に移動させる。
【0265】
実施形態によれば、スリット像の移動範囲にかかわらず、移動範囲の周辺領域における照明ムラを解消することができる。それにより、より高解像度が求められる光学系を用いる場合でも、被検者の眼の広角の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0266】
上記の実施形態では、左眼撮影モードと右眼撮影モードとで対物光学系20を共有する場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。例えば、左眼撮影モード用の対物光学系と右眼撮影モード用の対物光学系とが設けられていてもよい。この場合、左眼ELの撮影又は計測のために2つの楕円凹面鏡(例えば、第1楕円凹面鏡21及び第2楕円凹面鏡22)が設けられ、右眼ERの撮影又は計測のために2つの楕円凹面鏡(例えば、第1楕円凹面鏡21′及び第2楕円凹面鏡22′)が設けられる。
【0267】
上記の実施形態において、撮影光学系40L、40Rは、左眼ELと右眼ERとで共通の単一の撮影光学系であってもよい。また、固視投影系60L、60Rは、40Rは、左眼ELと右眼ERとで共通の単一の固視投影系であってもよい。前眼部撮影系80L、80Rは、左眼ELと右眼ERとで共通の単一の前眼部撮影系であってもよい。
【0268】
また、上記の実施形態において、各前眼部撮影系における2以上のカメラは、測定位置と光学的に略共役な位置における測定共役面と撮影光軸とのなす角度が同一でなくてもよい。また、2以上のカメラは、測定共役面の法線方向を基準に非対称となるように(法線方向と撮影光軸とのなす角度が異なるように)配置されていてもよい。
【0269】
更に、上記の実施形態では、第1楕円凹面鏡21と光路分離部材50L又は光路分離部材50Rとの間に、ダイクロイックミラー90L又はダイクロイックミラー90Rが配置さる場合について説明したが、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、左眼撮影モードにおいて図6Aに示す第1楕円凹面鏡21と第2楕円凹面鏡22との間にダイクロイックミラー90Lが配置されていてもよい。この場合、第1楕円凹面鏡21の第2焦点F2(一次左眼測定共役位置)を見込むように前眼部撮影系80Lを配置することができる。同様に、例えば、右眼撮影モードにおいて図6Bに示す第1楕円凹面鏡21と第2楕円凹面鏡22との間にダイクロイックミラー90Rが配置されていてもよい。この場合、第1楕円凹面鏡21の第2焦点F2′(一次右眼眼測定共役位置)を見込むように前眼部撮影系80Rを配置することができる。
【0270】
[作用]
実施形態に係る眼科装置について説明する。
【0271】
実施形態の第1態様は、2以上の曲面鏡(第1楕円凹面鏡21、第2楕円凹面鏡22)と、照明光学系(30)と、撮影光学系(40L、40R)とを含む、眼科装置(1)である。照明光学系は、被検眼(左眼EL、右眼ER)の眼底(Ef)と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成された開口(34a)が形成されたスリット(34)を含む。照明光学系は、光源(光源ユニット31)からの光をスリットに照射することにより生成されたスリット状の照明光を2以上の曲面鏡を介して眼底に照射する。撮影光学系は、眼底共役位置に配置されるように構成され2以上の曲面鏡を介して被検眼からの戻り光を受光するイメージセンサ(47L、47R)を含む。上記の開口は、長手方向(SD)の位置に応じて短手方向(BW)の幅が異なるように形成されている。
【0272】
このような態様によれば、眼底における照明光の照明範囲の周辺領域における照明ムラを解消することができるため、被検眼の広角の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0273】
実施形態の第2態様では、第1態様において、上記の開口は、長手方向の両端部の一方の第1端部(UP)における短手方向の幅(ΔM1)が、両端部の他方の第2端部(DW)における短手方向の幅(ΔM2)より大きくなるように形成されている。
【0274】
このような態様によれば、簡素な構成で、周辺領域における照明ムラを解消し、被検眼の広角の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0275】
実施形態の第3態様では、第2態様において、上記の開口は、長手方向の第1位置における短手方向の幅が、第1位置より第1端部の側の第2位置における短手方向の幅以下になるように形成されている。
【0276】
このような態様によれば、第2端部から第1端部に向かうほど短手方向の幅が広くなるため、第1端部に対応する位置における収差の影響を軽減することで、周辺領域における照明ムラを解消し、被検眼の広角の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0277】
実施形態の第4態様では、第2態様又は第3態様において、上記の開口は、第2端部における短手方向の幅が最小になるように形成されている。
【0278】
このような態様によれば、より簡素な構成で、周辺領域における照明ムラを解消し、被検眼の広角の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0279】
実施形態の第5態様では、第2態様~第4態様のいずれかにおいて、第1端部は、開口中心を通る長手方向を基準として短手方向に変位している。
【0280】
このような態様によれば、眼底に投影されるスリットの開口の像の歪みをなくしたり、当該歪みを低減したりすることができ、イメージセンサにより取得される画像のコントラストを向上させることが可能になる。
【0281】
実施形態の第6態様では、第5態様において、上記の開口は、開口中心から第1端部に向かって曲線状に変化する部分を含む。
【0282】
このような態様によれば、イメージセンサにより取得される画像のコントラストをより一層向上させることが可能になる。
【0283】
実施形態の第7態様は、第1態様~第6態様のいずれかにおいて、2以上の曲面鏡のそれぞれは、1以上の焦点を有し、2以上の焦点のうち少なくとも1つを共有するように配置される。
【0284】
このような態様によれば、2以上の曲面鏡により照明光を被検眼に導くようにしたので、簡素な構成で、被検眼のより広角の画像を取得することができるようになる。
【0285】
実施形態の第8態様では、第7態様において、2以上の曲面鏡は、楕円凹面鏡(第1楕円凹面鏡21、又は第2楕円凹面鏡22)を含む。
【0286】
このような態様によれば、楕円凹面鏡を用いて、簡素な構成で、被検眼のより広角の画像を取得することができるようになる。
【0287】
実施形態の第9態様では、第8態様において、2以上の曲面鏡は、第1楕円凹面鏡(21)と第2楕円凹面鏡(22)である。第1楕円凹面鏡の第1焦点(F1)は、被検眼の瞳孔を配置可能な測定位置と光学的に略共役な位置(左眼測定共役位置、右眼測定共役位置)に配置される。第1楕円凹面鏡の第2焦点(F2)は、第2楕円凹面鏡の第3焦点(第1焦点F3)に略一致し、第2楕円凹面鏡の第4焦点(第2焦点F4)は、測定位置に配置されるように構成される。
【0288】
このような態様によれば、第1楕円凹面鏡と第2楕円凹面鏡とを用いて、被検眼のより広角の画像を取得することができるようになる。
【0289】
実施形態の第10態様では、第9態様において、第1端部は、第1楕円凹面鏡の長軸上の第1焦点の側の端部であり、第2端部は、長軸上の第2焦点の側の端部である。
【0290】
このような態様によれば、第1楕円凹面鏡の第1端部に対応する位置における収差の影響を軽減することで、第1楕円凹面鏡と第2楕円凹面鏡とを用いて、被検眼のより広角の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0291】
実施形態の第11態様では、第9態様又は第10態様において、長手方向は、第1楕円凹面鏡の長軸方向である。
【0292】
このような態様によれば、第1楕円凹面鏡の長軸方向に直交する短手方向の収差の影響を軽減し、被検眼のより広角の高画質の画像を取得することができるようになる。
【0293】
実施形態の第12態様では、第7態様~第11態様のいずれかにおいて、照明光学系は、被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された光スキャナ(95)を含む。眼科装置は、光スキャナによって照明光を偏向することにより照明光による眼底の照明位置を移動可能に構成される。
【0294】
このような態様によれば、光スキャナによる照明光の偏向制御により、簡素な構成で、高画質の被検眼の眼底を取得することができるようになる。
【0295】
実施形態の第13態様では、第1態様~第12態様のいずれかにおいて、イメージセンサは、ローリングシャッター方式のイメージセンサである。
【0296】
このような態様によれば、簡素な構成で、より高画質の眼底の画像を取得することが可能になる。
【0297】
実施形態の第14態様では、第1態様~第13態様のいずれかにおいて、スリットは、被検眼の視度に応じて照明光学系の光軸方向に移動可能である。
【0298】
このような態様によれば、被検眼の視度にかかわらず、高輝度の照明光で眼底を照明することが可能になる。
【0299】
実施形態の第15態様は、第1態様~第14態様のいずれかにおいて、2以上のカメラ(前眼部カメラ81LL、81LR、又は前眼部カメラ81RL、81RR)と、移動機構(10D)と、3次元位置特定部(212)とを含む。2以上のカメラは、2以上の曲面鏡によりリレーされた被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置が視野内に含まれるように配置される。移動機構は、2以上の曲面鏡と、照明光学系と、撮影光学系と、2以上のカメラとを、被検眼に対して相対的に移動する。3次元位置特定部は、2以上のカメラにより得られた被検眼の2以上の前眼部画像に基づいて被検眼の3次元位置を特定する。
【0300】
このような態様によれば、被検眼の2以上の前眼部画像を取得し、取得された2以上の前眼部画像に基づいて光学系と被検眼との位置合わせを好適に行うことができようになる。その結果、広角で被検眼の高精細な撮影又は高精度な計測を行うことが可能になる。
【0301】
実施形態の第16態様は、第15態様において、反射部材(51L、51R)と、撮影絞り(52L、52R)とを含む。反射部材は、虹彩共役位置に配置される。撮影絞りは、虹彩共役位置に配置され、光軸から偏心した位置に開口が形成される。反射部材は、照明光学系からの照明光を反射して2以上の曲面鏡に導く。撮影絞りは、開口を通過した戻り光を撮影光学系に導く。
【0302】
このような態様によれば、反射部材と撮影絞りとを用いて照明光学系の光路と撮影光学系の光路とを分離するようにしたので、簡素な構成で、光学系のサイズを小さくすることができるようになる。
【0303】
<その他>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0304】
1 眼科装置
10 光学系
10D 移動機構
21 第1楕円凹面鏡
22 第2楕円凹面鏡
30 照明光学系
31 光源ユニット
32 虹彩絞り
34 スリット
40L、40R 撮影光学系
47L、47R イメージセンサ
50L、50R 光路分離部材
70 光路切換部材
80L、80R 前眼部撮影系
81LL、81LR、81RL、81RR 前眼部カメラ
90L、90R ダイクロイックミラー
95 光スキャナ
100 制御部
101 主制御部
102 記憶部
200 画像形成部
210 データ処理部
211 瞳孔領域特定部
212 3次元位置特定部
213 アライメント目標位置特定部
BSL、BSR ビームスプリッター
BW 短手方向
EL 左眼
ER 右眼
EW 露光幅
F1、F3 第1焦点
F2、F4 第2焦点
SD 長手方向
UP 第1端部
DW 第2端部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24