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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016296
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】フック装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/06 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
E03C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119491
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】394000415
【氏名又は名称】中央化成品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002778
【氏名又は名称】弁理士法人IPシーガル
(72)【発明者】
【氏名】三上 浩
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BF07
2D060BF08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】支柱などの相手部材がやや反りや曲がりを有するものであっても、ガタツキやスティックスリップ現象を発生させることなく、この相手部材に沿ってスムーズに移動を行うことができるフック装置を提供する。
【解決手段】この発明のフック装置は、相手部材Pに沿って移動可能で、被係止物ないし被係止部を脱着可能に係着する係止部、及び前記相手部材Pを貫通させる貫通孔を有する中空の装置本体2と、前記装置本体2の内部に前記相手部材Pの軸方向に対して所定の角度で傾斜させて配設された傾斜面41aと、前記傾斜面41aと当接して、これに沿って摺動する摺動面31aを有する摺動部材3を備えるもので、前記貫通孔の内周面2bは、一又は複数の回動体11a、11b、11c、11dを備え、前記回動体は、少なくとも前記フック装置の移動方向に平行する方向に回動可能に構成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手部材に沿って移動可能なフック装置であって、
被係止物ないし被係止部を脱着可能に係着する係止部、および前記相手部材を貫通させる貫通孔を有する中空の装置本体と、
前記装置本体の内部に前記相手部材の軸方向に対して所定の角度で傾斜させて配設された傾斜面と、
前記傾斜面と当接する摺動面を有する摺動部材を備え、
前記摺動部材は、前記傾斜面と前記相手部材との間に設けられ、かつ前記傾斜面に沿って摺動し、
前記貫通孔の内周面は、一又は複数の回動体を備え、
前記回動体は、少なくとも前記フック装置が移動する方向に平行する方向に回動可能に構成されていること
を特徴とするフック装置。
【請求項2】
前記傾斜面は、
前記装置本体の内部又は外部に移動可能に配設される操作部材に設けられ、
前記装置本体は、
前記操作部材に対して、弾性付勢力を作用させるように前記装置本体内に配設される弾性部材を備え、
前記操作部材を操作することによって、前記摺動部材が前記相手部材から離れて、前記相手部材との間の摩擦力が減少するか、又はなくなる方向に摺動するよう構成されていること
を特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【請求項3】
前記回動体は、
前記相手部材を挟むように少なくとも一対、対向配置されていること
を特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【請求項4】
前記回動体は、
前記貫通孔の軸線方向の両端部のそれぞれに、前記相手部材を挟むように少なくとも一対ずつ、対向配置されていること
を特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【請求項5】
前記回動体のうち少なくとも一対は、
前記貫通孔の軸線方向の両端部のそれぞれに、前記相手部材を挟むように、前記貫通孔から前記係止部に向かう方向に沿って対向配置されていること
を特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【請求項6】
前記貫通孔の外縁は、前記回動体が配置されている位置の少なくとも一つにおいて、外向きに拡径されていること
を特徴とする請求項3に記載のフック装置。
【請求項7】
前記回動体は、
前記貫通孔の軸線方向の両端部のそれぞれに、前記相手部材を挟むように、前記貫通孔から前記係止部に向かう方向に沿って一対ずつ対向配置され、
前記貫通孔は、
その外縁が、前記係止部側の回動体が配置されている位置において、外向きに拡径されるように形成されていること
を特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【請求項8】
前記係止部側の回動体に対向する回動体は、
前記貫通孔から前記係止部に向かう方向に沿って移動可能に構成されることにより、相手部材と離接可能に構成されていること
を特徴とする請求項7に記載のフック装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、
圧縮コイルばねであること
を特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【請求項10】
前記相手部材は、
支柱であり、
前記被係着物は、
シャワーヘッドであること
を特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フック装置に関するものである。
より詳しくは、被係止物ないし被係止部、特に浴室などで使用されるシャワーヘッドを、係止ないし支持するためのフック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室などにおいては、一般的にシャワー装置を構成するシャワーヘッドの頭部を、着脱可能に支持するためのシャワー用フック装置が設けられている。
このようなフック装置の一例が、特許文献1~6に開示されている。
【0003】
特開2002-106523号公報(特許文献1)においては、スライドのロックを確実に行うことができると共に、スライド操作を円滑に行うことができ、さらには、安定した性能を保持することができるスライドロック装置が提案されている。
【0004】
このスライドロック装置は、図1に示されるように、その全体が相手部材(支柱)の長手方向に沿って移動可能に装着され、弾性部材によって付勢されたストッパが、相手部材との間で摩擦力を発生してスライドをロックするものである。
【0005】
特開2005-180491号公報(特許文献2)においては、一方向には、適度な抵抗で移動させることができ、反対方向には、軽快に移動させることができる、操作フィーリングが向上したスライドロック装置が提案されている。
【0006】
このスライドロック装置は、軸状の相手部材とベースとの間に、ロック駒が圧接状態で挟まれることにより、相手部材とベースとの相対移動が、ロック駒の摩擦力によってロックされ、相手部材の一方向への相対移動によって、前記摩擦力が増大してロック駒が回転し、反対方向への相対移動によって、摩擦力低減方向にロック駒が移動可能としたものである。
【0007】
特開2013-19152号公報(特許文献3)においては、スライドバーとして安価な丸パイプを用いることができるシャワーノズル受け装置が提案されている。
【0008】
特許第3858180号公報(特許文献4)においては、ロック状態を解除するとき、従来のようにボルトを弛める等の作業を必要とせず、手で動かすことができる軸スライドロック装置が提案されている。
【0009】
特許第4678622号公報(特許文献5)においては、ロック力を大きくすることに起因して操作力が大きくなったり、ロック力を大きくするために、ばね力を大きくする必要がなく、確実にロックを行うことができ、しかも、高さ調整を簡単に行うことができるのに加えて、突出量が大きくなることがなく良好なデザイン性を有したスライドロック装置が提案されている。
【0010】
特許第4884250号公報(特許文献6)においては、ロック状態の下で、スライドシャワーフックに保持されているシャワーヘッドを取り出す際、シャワーヘッドの上向きの移動に連れて、スライドシャワーフックが、スライドバーに沿って上向きに移動してしまうことがなく、使い勝手が良好なスライドシャワーフック装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002-106523号公報(特許請求の範囲,図1
【特許文献2】特開2005-180491号公報(特許請求の範囲,図1
【特許文献3】特開2013-19152号公報(特許請求の範囲,図1~3)
【特許文献4】特許第3858180号公報(特許請求の範囲,図1及び3)
【特許文献5】特許第4678622号公報(特許請求の範囲,図4及び5)
【特許文献6】特許第4884250号公報(特許請求の範囲,図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1~6に開示されている装置などの従来のスライドロック装置ないしフック装置では、シャワーヘッドが装着された状態で上下方向への移動を行うと、シャワーヘッドの重心(例えば、持ち手部分)に起因する重心のズレによって、スムーズな移動を困難にする、いわゆるスティックスリップ現象が発生する、という問題があった。
【0013】
また、従来、前記スライドロック装置ないしフック装置が装着される相手部材(支柱)は、必ずしも長手方向に沿って一直線になるように形成されるものではなく、前記相手部材の中には、長手方向に直交する方向にやや反っているものや曲がっているものがあった。
したがって、従来のスライドロック装置ないしフック装置では、相手部材が長手方向に直交する方向にやや反っているものや曲がっているものである場合には、上下方向への移動をスムーズに行うことが困難になる、という問題もあった。
【0014】
この発明はかかる現状に鑑み、支柱などの相手部材がやや反りや曲がりを有するものであっても、ガタツキやスティックスリップ現象を発生させることなく、この相手部材に沿って上昇及び下降のいずれもスムーズに行うことができ、これらの操作を片手で簡単に行うことができ、さらには構造が複雑でないフック装置、特にシャワーヘッド用フック装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、この発明にかかる請求項1に記載の発明は、
相手部材に沿って移動可能なフック装置であって、
被係止物ないし被係止部を脱着可能に係着する係止部、および前記相手部材を貫通させる貫通孔を有する中空の装置本体と、
前記装置本体の内部に前記相手部材の軸方向に対して所定の角度で傾斜させて配設された傾斜面と、
前記傾斜面と当接する摺動面を有する摺動部材を備え、
前記摺動部材は、前記傾斜面と前記相手部材との間に設けられ、かつ前記傾斜面に沿って摺動し、
前記貫通孔の内周面は、一又は複数の回動体を備え、
前記回動体は、少なくとも前記フック装置が移動する方向に平行する方向に回動可能に構成されていること
を特徴とするフック装置である。
【0016】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のフック装置において、
前記傾斜面は、
前記装置本体の内部又は外部に移動可能に配設される操作部材に設けられ、
前記装置本体は、
前記操作部材に対して、弾性付勢力を作用させるように前記装置本体内に配設される弾性部材を備え、
前記操作部材を操作することによって、前記摺動部材が前記相手部材から離れて、前記相手部材との間の摩擦力が減少するか、又はなくなる方向に摺動するよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載のフック装置において、
前記回動体は、
前記相手部材を挟むように少なくとも一対、対向配置されていること
を特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載のフック装置において、
前記回動体は、
前記貫通孔の軸線方向の両端部のそれぞれに、前記相手部材を挟むように少なくとも一対ずつ、対向配置されていること
を特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1に記載のフック装置において、
前記回動体のうち少なくとも一対は、
前記貫通孔の軸線方向の両端部のそれぞれに、前記相手部材を挟むように、前記貫通孔から前記係止部に向かう方向に沿って対向配置されていること
を特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項3に記載のフック装置において、
前記貫通孔の外縁は、前記回動体が配置されている位置の少なくとも一つにおいて、外向きに拡径されていること
を特徴とするものである。
【0021】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1に記載のフック装置において、
前記回動体は、
前記貫通孔の軸線方向の両端部のそれぞれに、前記相手部材を挟むように、前記貫通孔から前記係止部に向かう方向に沿って一対ずつ対向配置され、
前記貫通孔は、
その外縁が、前記係止部側の回動体が配置されている位置において、外向きに拡径されるように形成されていること
を特徴とするものである。
【0022】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項7に記載のフック装置において、
前記係止部側の回動体に対向する回動体は、
前記貫通孔から前記係止部に向かう方向に沿って移動可能に構成されることにより、相手部材と離接可能に構成されていること
を特徴とするものである。
【0023】
この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項1に記載のフック装置において、
前記弾性部材は、
圧縮コイルばねであること
を特徴とするものである。
【0024】
この発明の請求項10に記載の発明は、
請求項1に記載のフック装置において、
前記相手部材は、
支柱であり、
前記被係着物は、
シャワーヘッドであること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
この発明のフック装置は、被係止物ないし被係止部、特にシャワーヘッドを脱着可能に係着するためのものであって、相手部材、特に支柱に沿って移動可能で、被係止物ないし被係止部を脱着可能に係着する係止部、および前記相手部材を貫通させる貫通孔を有する中空の装置本体と、前記装置本体の内部に前記相手部材の軸方向に対して所定の角度で傾斜させて配設された傾斜面と、前記傾斜面と当接する摺動面を有する摺動部材を備えるもので、前記摺動部材は、前記傾斜面と前記相手部材との間に設けられ、かつ前記傾斜面に沿って摺動する。
このフック装置では、前記貫通孔の内周面は、一又は複数の回動体を備え、前記回動体は、少なくとも前記フック装置が移動する方向に平行する方向に回動可能に構成されている。
したがって、前記フック装置を移動させる際には、前記回動体は、前記フック装置が相手部材に沿って移動するのに伴い摩擦力を受けて、相手部材の外表面上で回動する。
よって、前記フック装置の移動の際には、摩擦抵抗が軽減され、ガタツキやスティックスリップ現象の発生がないか又は軽減されるので、前記フック装置の移動をスムーズに行うことが可能である。
【0026】
前記フック装置においては、前記傾斜面を、前記装置本体の内部又は外部に移動可能に配設される操作部材に設け、前記装置本体を、前記操作部材に対して、弾性付勢力を作用させるように前記装置本体内に配設される弾性部材を備えるように構成し、前記操作部材を操作することによって、前記摺動部材が前記相手部材から離れて、前記相手部材との間の摩擦力が減少するか、又はなくなる方向に摺動するよう構成することができる。
このような構成によって、フック装置の構造は、従来に比べて極めて簡単なものとなり、フック装置の部品点数が少なく済み、フック装置を安価に提供することができる。
【0027】
前記フック装置においては、前記回動体を、前記相手部材を挟むように少なくとも一対、好ましくは前記貫通孔から前記係止部に向かう方向に沿って、対向配置することができ、前記貫通孔の軸線方向の両端部のそれぞれに、前記相手部材を挟むように少なくとも一対ずつ、対向配置することができる。
その際、前記貫通孔を、その外縁が、前記係止部側の回動体が配置されている位置において、外向きに拡径されるように形成することができる。
このような構成によって、前記フック装置の移動を、よりスムーズに行うことが可能である。
【0028】
特に、前記回動体を、前記貫通孔の軸線方向の両端部のそれぞれに、前記相手部材を挟むように、前記貫通孔から前記係止部に向かう方向に沿って一対ずつ対向配置し、前記貫通孔を、その外縁が、前記係止部側の回動体が配置されている位置において、外向きに拡径されるように形成することができる。
その際、前記係止部側の回動体に対向する回動体を、前記貫通孔から前記係止部に向かう方向に沿って移動可能に構成した場合には、前記フック装置の移動を、極めてスムーズに行うことが可能である。
【0029】
前記フック装置においては、前記被係着物を、シャワーヘッドとすることができる。
すなわち、前記フック装置は、シャワーヘッド用のフック装置として好適である。
【0030】
さらに、この発明のフック装置は、容易に分解可能なものとすることができるので、メンテナンスや修理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】この発明のフック装置の一実施形態を示した斜視図であって、ボタンを押圧操作していない状態を示すもので、(A)は、上斜視図を示し、(B)は、下斜視図を示すものである。
図2図1に示すフック装置の上面図である。
図3図1に示すフック装置の下面図である。
図4図1に示すフック装置の右側面図である。
図5図1に示すフック装置の前面図(正面図)である。
図6図1に示すフック装置の後面図(背面図)である。
図7図1に示すフック装置の分解斜視図である。
図8図1に示すフック装置の、操作部としてのボタン部分を押圧操作していない状態を示す説明図であって、(A)は、装置本体を構成する右ケース部材を取り外した状態を示し、(B)は、A-A’断面図を示すものである。
図9図1に示すフック装置の、操作部としてのボタン部分を押圧操作した状態を示す説明図であって、(A)は、装置本体を構成する右ケース部材を取り外した状態を示し、(B)は、A-A’断面図を示すものである。
図10図1に示すフック装置のA-A’断面図であって、操作部としてのボタン部分を押圧操作した状態を示すものである。
図11】この発明のフック装置の別の実施形態を示した左側面図である。
図12図11に示すフック装置の分解斜視図である。
図13図11に示すフック装置の装置本体を構成するケース本体の内部の説明図であって、操作部としてのボタン部分を押圧操作していない状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明のフック装置(以下、単に「フック装置」と言う)の一実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
なお、この発明は、図面に示す形態にのみ限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲内において種々改良を加えることができるものである。
【0033】
図1は、この発明にかかるフック装置1の一例を示した斜視図である。
また、図2は、前記フック装置1の上面図で、図3は、前記フック装置1の下面図で、図4は、前記フック装置1の右側面図で、図5は、前記フック装置1の前面図で、図6は、前記フック装置1の後面図である。
なお、この明細書において、前記フック装置1が相手部材に取り付けられている状態においては、前記相手部材から離れる方向(被係止物ないし被係止部を係着又は係止するための係止部材が取り付けられる側)を前方とし、前記相手部材側を後方とする。
【0034】
この発明のフック装置1は、シャワーヘッドなどの被係止物ないし被係止部を係着又は係止するために使用されるもので、操作部(この実施例においては、操作部材4が備えるボタン部分)を操作することによって、前記被係止物ないし被係止部を係着又は係止した状態で、浴室の壁面などに沿って垂直に配される支柱P(相手部材)に沿って移動させ、或いは、前記被係止物ないし被係止部の高さ位置を所望の高さ位置に設定(固定)することができるものである。
【0035】
この実施例において、前記フック装置1は、シャワー装置のシャワーヘッドを係止するためのものであるが、他の装置や物品の支柱部分などの被係止物ないし被係止部を係着又は係止するために使用することも当然可能なものである。
【0036】
この実施例において、前記相手部材は、鉛直な支柱Pであるが、前記相手部材については特段の制限はない。
前記相手部材の素材については特に制限はなく、ステンレス製のパイプなどが好適に使用される。
【0037】
図7は、前記フック装置1の分解斜視図である。
図7において、前記フック装置1は、全体形状として水平方向に長い形状を有するもので、中空の装置本体2で構成されている。
【0038】
図7において、前記装置本体2は、各部材などを収容する中空のケース部材21と、前記被係止物ないし被係止部を脱着可能に係着又は係止する係止部材22を備えている。
前記ケース部材21は、各部材などを収納するために、縦方向(長手方向)に2分割可能に構成され、中空の右ケース部材21aと中空の左ケース部材21bとを、係止片やネジなどの締結手段(図示せず)によって一体に結合して構成されるものである。
【0039】
前記右ケース部材21aの一端側(装置本体2を構成したときの後端側)には、前記左ケース部材21bと結合させた際、前記装置本体2を、前記支柱Pに沿って所定の方向(この実施例においては上下方向)に移動させるための貫通孔(相手部材挿通孔)2aを形成(この実施例においては上下方向に貫通形成)するため、所要の大きさの切欠き211aが形成され、前記左ケース部材21bの一端側にも、前記切欠き211aと相対する切欠き211bが形成されている。
前記貫通孔2aの形状については、特段の制限はなく、相手部材(この実施例においては支柱P)の横断面(長手方向(軸方向)に直交する断面)形状に合わせて形成することができる。
例えば、相手部材が円筒状の支柱(パイプ)であれば、前記貫通孔2aを横断面(軸方向に直交する方向(この実施例においては水平方向)の断面)略円状になるよう形成することができる。
【0040】
なお、図7において、前記貫通孔2aの内周面(相手部材と当接しうる側の面)2bの所定の位置には、後述するように、少なくともフック装置1の移動方向(この実施例において上下方向)に回動可能に構成された回動体が配設されている。
【0041】
前記右ケース部材21aは、その他端側(装置本体2を構成したときの前端側)を切り欠いて、前記係止部材22を収容するための所要の大きさの収容部212aを備えるよう構成され、前記左ケース部材21bも、その他端側を切り欠いて、前記収容部212aと相対する収容部212bが形成されている。
【0042】
図7において、前記係止部材22の左右側面の所定の位置には、相対する一対の軸部22b,22bが突設されている。
一方、前記右側の収容部212aの中央には、前記軸部22bを支持するよう形成された貫通孔からなる係合孔213aが形成されている。さらに、前記左側の収容部212bの前記係合孔213aに対応する位置にも、前記軸部22bを支持するよう形成された貫通孔からなる係合孔213bが形成されている。
したがって、前記係止部材22は、前記軸部22b,22bの軸心を中心として、上下方向に回動可能である。
【0043】
なお、図7において、前記係止部材22は、上下方向の所定の範囲内での段階的な回動と所定の位置での固定が可能となるように構成されている。
【0044】
具体的には、前記係止部材22の左右側面(この実施例においては、その外周縁近傍)には、相対する一対の突出片22c,22cが突設されている。
一方、前記収容部212a,212bには、前記突出片22c,22cを収容して前記突出片22c,22cの所定の範囲での摺動を可能にするよう相対する一対の係合溝214a,214bが形成され、前記係合溝(第一の係合溝)214a,214bの内面には、前記突出片22c,22cを収容した際に前記突出片22c,22cの外面と当接して、その摺動をガイドする係合面215a,215bが形成されている。
前記係合溝214a,214bは、その幅(前後方向長さ)が前記突出片22c,22cの直径と同程度になるように、前記係止部材22の回動方向に沿って形成されている。
したがって、前記係止部材22において、上下方向の所定の範囲での回動が実現されている。
【0045】
さらに、図7において、前記係止部材22は、前記係止部材22の上下方向の角度の調整を可能にする角度調整部材9を介して前記右ケース部材21a及び左ケース部材21bの他端側に装着されている。
【0046】
前記角度調整部材9は、前記係止部材22との当接面9aに対向する面に形成された所要の大きさの空間(図示せず)を有し、弾性部材(第二の弾性部材)6は、その一端(前端)側が前記空間内に、他端(後端)側が保持部(第二の保持部)H2に保持されていることにより、前後方向(装置本体2の長手方向)に伸縮するよう配設されているので、前記弾性部材6の付勢力によって、常時前記係止部材22と密着している。
前記角度調整部材9の当接面9aには、前記係止部材22に向かって突出し、かつ前記支柱Pの軸方向に直交する方向(左右方向)に延びる係合突部9bが、上下方向に所定の間隔を存して複数形成される一方、前記係止部材22の前記角度調整部材9との当接面22dの、前記係合突部9bに対応する位置には、前記支柱Pの軸方向に直交する方向(左右方向)に延びる係合凹部22eが複数形成され、前記係合突部9bは前記係合凹部22eと係合可能に構成されている。
したがって、前記係止部材22の段階的な角度調整が可能となっている。
なお、この実施例において、前記複数の係合突部9bと前記複数の係合凹部22eは、前記係止部材22が角度10°~20°ピッチでの調整が可能となるよう形成されている。
【0047】
前記弾性部材6としては、捻じりコイルばねや板バネなどの圧縮コイルばね以外の各種ばね、又はゴムなどの弾性体或いは各種シリンダ装置なども用いることができる。
【0048】
図7において、前記係止部材22には、開口部を上下方向に形成することにより、前記被係止物ないし被係止部を脱着可能に係着又は係止するための円弧状の係止部22aが形成されている。
【0049】
なお、符号8は、円弧状の圧接部材(第二の圧接部材)である。
前記圧接部材8は、前記被係止物ないし被係止部に圧接されて摩擦力を生じる材質からなる部材(例えば、ゴムなどの弾性を有する樹脂材料)で構成されているもので、前記被係止物ないし被係止部と密着する面が、前記被係止物ないし被係止部の外形に対応した形状を呈している。
したがって、前記係止部材22は、前記被係止物ないし被係止部をしっかりと保持・固定することができる。
【0050】
図7において、前記右ケース部材21aの下部の所定の位置には、前記左ケース部材21bと結合させたときに、操作部、より具体的には、操作部材4が備えるボタン部分42を前記装置本体2から突出させるための開口部が形成されるように、所要の大きさの切欠き216aが形成され、前記左ケース部材21bにも、前記切欠き216aと相対する切欠き216bが形成されている。
【0051】
前記装置本体2(具体的にはケース部材21)の内部には、図7~10に示すように、前記支柱Pの軸方向に対して所定の角度で傾斜させた傾斜面41aが配されるとともに、前記傾斜面41aと前記支柱Pとの間に設けられ、かつ前記傾斜面41aに沿って摺動する摺動部材3が配されている。
【0052】
図7~10において、前記傾斜面41aは、前記装置本体2内において、上方から下方に向かって、前記支柱Pから離れるように、前記支柱Pの軸方向に対して、所定の角度で傾斜するよう形成されている。
前記摺動部材3は、前記装置本体2内の、前記傾斜面41aと前記支柱Pとの間に形成される空間S1内に配されている。
なお、図7~10において、前記空間S1は、前記支柱Pと、前記支柱Pの軸方向に平行する方向の両端部(図7~10において上部と下部)に形成された側壁217a,217bと、前記傾斜面41aによって区画形成されている。
【0053】
前記摺動部材3は、摺動部材本体31で構成されたもので、その前方側の面(係止部材22側の面)には、上方から下方に向かって前記支柱Pから離れる(後方から前方に向かって下り傾斜する)よう、上端から下端に向かって暫時幅が広がるように所定の角度に傾斜させた摺動面31aが形成されている。
【0054】
前記摺動面31aは、前記装置本体2の内部にある前記傾斜面41aと常に接しており、この傾斜面41aに沿って、前記摺動部材3は摺動する。
したがって、例えば、前記摺動部材3自体に、又は前記傾斜面41aに所定の操作部を設け、これを操作すれば、前記摺動部材3が、前記支柱Pと圧接(ないし密着)又は離反する方向に摺動する。
【0055】
このような構成によって、前記摺動部材3は、前記支柱Pと圧接(ないし密着)又は離反し、前記支柱Pとの間の摩擦力が増加又は減少する方向に摺動するので、前記フック装置1の支柱Pへのロック又はロックの解除が実現される。
【0056】
なお、図7~10において、前記摺動部材3は、後述するように、その上下方向の摺動を規制することによって、前記操作部材4の内方又は外方(図7~10において上下方向)への移動に伴う傾斜面41aの移動に伴って、前後方向(フック装置1の長手方向)に摺動するよう構成されている。
【0057】
前記摺動部材本体31の背面(支柱P側の面)、詳しくは前記支柱Pに圧接する面は、図7~10に示すように、円弧状になるよう構成され、前記弾性部材5の付勢力によって、常時前記支柱Pと圧接している。
なお、前記摺動部材本体31の前記支柱Pに圧接する面は、好ましくは、前記支柱Pの外形に対応したものとなるよう構成される。
【0058】
図7~10において、前記傾斜面41aは、操作部材4を構成する操作部材本体41の背面(支柱P側の面)に、上方から下方に向かって前記支柱Pから離れる(前方から後方に向かって上り傾斜する)よう、下端から上端に向かって暫時幅が広がるように所定の角度に傾斜して形成されている。
【0059】
図7~10において、前記操作部材本体41は、前記装置本体2、具体的には前記ケース部材21内に、前記支柱Pの軸方向に沿って延びるよう形成された前側の側壁(係止部材22側の側壁)217cと、前記支柱P(より詳しくは、後述するように、摺動部材3の前面(摺動面31a))との間に形成される空間S2に設けられている。
【0060】
図7~10において、前記操作部材本体41は、所定の形態の操作部(図7~10においてボタン部分)操作部42と一体化されて操作部材4を構成している。
したがって、前記操作部42を操作することによって、前記操作部材4は、前記支柱Pの軸方向に対して平行する方向(上下方向)に摺動する。
なお、この実施例において、前記操作部材4は、前記操作部材本体41の一端に操作部42としてのボタン部分を形成することによって、操作部材本体41と操作部42が一体化した構造を有するが、操作部材本体41と操作部42とを一体に形成せず、それぞれ別体として形成することも可能である。
【0061】
また、この実施例において、前記操作部42については、押しボタン(押圧部材)で構成されているが、レバー部材など、押しボタン以外の公知の操作部材ないし操作手段で構成することも可能である。
【0062】
図7~10において、前記操作部材4は、前記傾斜面41aが前記摺動面31aと常に接した状態で、前記装置本体2内に配設されている。
したがって、前記操作部材4の上下方向への移動に伴って、前記摺動部材3は、前記支柱Pと圧接(ないし密着)又は離反し、前記支柱Pとの間の摩擦力が増加又は減少する方向に摺動する。
その結果、前記フック装置1の支柱Pへのロック(固定)又はロックの解除が実現される。
【0063】
図7~10において、前記摺動部材3は、上下方向の移動が規制されるよう構成されている。
具体的には、前記操作部材4の左右側面には、相対する一対の突出部(第二の突出部)41e,41eが突設され、それぞれが、ケース部材21(右ケース部材21a及び左ケース部材21b)の左右方向の側面の、前記突出部41e,41eに対応する位置に上下方向(支柱Pの軸方向に対して平行する方向)に延びるよう貫通形成された所要の長さの長孔からなる係合溝(第二の係合溝)218,218と係合して、その内部を移動するように構成されている。
さらに、前記摺動部材3の左右側面には、相対する一対の突出部31d,31dが前後方向(装置本体2の長手方向に対して平行する方向)に沿って延びるように突設され、それぞれが、ケース部材21(右ケース部材21a及び左ケース部材21b)の左右方向の側面の、前記突出部31d,31dに対応する位置に前後方向に延びるよう貫通形成された所要の長さの長孔からなる係合溝(第三の係合溝)219,219と係合して、その内部を移動するように構成されている。
したがって、前記摺動部材3は、前記操作部材4の内方又は外方(支柱Pの軸方向に対して平行する方向)への移動に伴って、前後方向に(フック装置1の長手方向に沿って)スムーズに摺動する。
なお、前記摺動部材3の摺動方向については、相手部材(この実施例において支柱P)と圧接(ないし密着)又は離反する、すなわち相手部材との間の摩擦力が増加又は減少する方向に摺動するように構成されている限りにおいて、特段の制限はない。
【0064】
図7~10において、前記摺動部材3には、その左右方向両端縁から前方(前記操作部材4側)に向かって突出するよう延設され、かつ相対する一対の突出片31b,31bが形成され、前記突出片31b,31bのそれぞれには、所要の幅と長さとを有する切欠きを、前記操作部材4の摺動方向の内側の端部(図7及び9において上端)から前記操作部材4の摺動方向の外側(図7及び9において下方)に向けて前記傾斜面41aの傾斜方向に沿って形成してガイド溝(支持軸挿通部)31c,31cが形成されている。
一方、前記操作部材4には、前記ガイド溝(支持軸挿通部)31c,31cによって支持されるよう、その左右側面のそれぞれの所定の位置に、係合突部としての支持軸41d,41dが突設されている。
前記係合溝31c,31cを構成する前記切欠きの幅は、前記支持軸41d,41dの直径と同程度になるよう設定されている。
さらに、前記操作部材4の左右側面のそれぞれには、前記突出片31b,31bを収容して前記突出片31b,31bの傾斜面41aの傾斜方向に沿った摺動を可能にする嵌合凹部41b,41bが形成されるとともに、前記嵌合凹部41bの内面には、前記係合片31bを収容した際に前記突出片31bの外面と当接して、その摺動をガイドする嵌合面41cが形成されている。
前記摺動部材3と前記操作部材4は、前記支持軸41d,41dが前記ガイド溝31c,31cによって支持され、かつ前記突出片31b,31bが前記嵌合凹部41b,41bと嵌合して前記操作部材4を把持するように組み合わされている。
したがって、前記操作部材4に押圧力を加えた場合(操作部材4が内方へ移動する場合)には、前記支持軸41d,41dが前記ガイド溝31c,31c内を、その長軸に沿って移動し、前記支持軸41d,41dの移動に伴って前記摺動部材3も摺動するので、前記摺動部材3は、前記支柱Pから離反し、前記支柱Pとの間の摩擦力が減少する方向に極めてスムーズに摺動する。
【0065】
前記操作部材4の内部には、図7~10に示すように、所要の大きさの空間(収容空間)S3が形成され、この空間S3内に弾性部材5が装着されている。
前記弾性部材5は、前記支柱Pの軸方向に対して平行に配設され、一端(下端)側が前記収容空間S3内に、他端(上端)側が、この他端部を保持可能に構成された保持部(第一の保持部)H1によって保持されている。
したがって、前記操作部材4は、前記弾性部材5の伸縮に伴い、前記支柱Pの軸方向に沿って上下方向に摺動する。
【0066】
具体的には、前記操作部材4は、何ら操作されていない通常の状態にあるときは、前記弾性部材5の付勢力によって、その一端に設けられた操作部としてのボタン部分が前記装置本体2の外部に常時突出した状態にある。
一方、操作(押圧操作)が行われたときには、前記操作部材4は、前記装置本体2の上方(内部)に移動する。
【0067】
前記弾性部材5は、前記操作部材4に対して付勢力を作用させるためのもので、図7~10においては、一定量圧縮した状態で、前記支柱Pの軸方向に対して平行に、前記操作部材4の収容空間S3に挿入されている。
前記弾性部材5は、その一端側(図7~10においては下端部)が前記収容空間S3に当接する一方、他端側(図7~10においては上端部)が前記保持部H1を介して前記空間S1(図7~10においてはその上部)に保持されるもので、これによって、前記弾性部材5の付勢力が前記操作部材4に作用する。
そのため、前記操作部材4は、前記弾性部材5の付勢力によって前記装置本体2の外部に向かって付勢されるので、前記操作部材3が備える操作部42(ボタン部分)は、装置本体2の開口部(切欠き233a,233bによって形成される開口部)から突出した状態になるとともに、前記摺動部材3(及び/又は圧接部材7)を前記支柱Pに圧接ないし密着した状態に保持することができる。
【0068】
この実施例において、前記弾性部材5は、圧縮コイルばねで構成されているが、前記弾性部材としては、板バネなどの圧縮コイルばね以外の各種ばね、又はゴムなどの弾性体、或いは各種シリンダ装置などを用いることができる。
その際、前記弾性部材5の付勢力は、前記フック装置1の上方移動を困難にする程度のものであることが好ましい。
【0069】
この実施例において、前記摺動部材本体31の支柱P側、詳しくは、前記支柱Pに圧接する面には、円弧状の圧接部材7が備えられ、前記弾性部材5の付勢力によって、常時前記支柱Pと密着している。
なお、前記圧接部材7については、前記支柱Pと密着する面を、前記支柱Pの外形に対応したものとすることが好ましい。
【0070】
前記圧接部材7は、前記弾性部材5によって、前記支柱Pに圧接ないし密着して摩擦力を生じる材質からなる部材であればよい。
かかる圧接部材7としては、例えば、ゴムなどの弾性を有する樹脂材料からなるものが挙げられる。
【0071】
なお、前記圧接部材7の前記摺動部材本体31への固定は、接着、溶着、その他の手段により行うことができる。
図7~10において、圧接部材7は、摺動部材本体31の背面側に形成された凹状の嵌合部(図示せず)に嵌合することによって固定されている。
【0072】
さらに、前記圧接部材7については、前記支柱Pにおいて前記摺動部材3が圧接ないし密着する位置、又は前記摺動部材3の支柱P側と前記支柱Pの前記摺動部材3の圧接ないし密着位置の両方に配設してもよい。
【0073】
さらにまた、前記圧接部材7の配設に代えて、凹凸加工など、支柱Pに密着して摩擦力が生じる手段を、前記摺動部材本体31及び/又は支柱Pに施すようにしてもよい。
【0074】
前記圧接部材7の大きさについては、特段の制限はない。
なお、従来、摺動部材に備えられる圧接部材は、摺動部材が傾斜面に沿って摺動するものであったため、その高さ方向の大きさを大きくすることが困難であった。
この発明において、摺動部材3は、左右方向に摺動するよう構成されているので、前記圧接部材7の高さ方向の大きさを、前記フック装置1の高さと同程度にすることができ、このようにすることが好ましい。
このような構成によって、前記圧接部材7が水平方向にスライドすることが抑制又は防止される。
【0075】
この発明において、前記貫通孔2aの内周面(貫通孔2aを区画形成する周壁の内面)2bには、図7に示すように、少なくともフック装置1が移動する方向に平行する方向(この実施例においては上下方向)に回動可能に構成された回動体(11)が配設される。
【0076】
図7において、前記回動体としてのローラ11a,11b,11c,11dは、棒状の軸部材12a,12b,12c,12dに、少なくともフック装置1が移動する方向に平行する方向(この実施例においては上下方向)に回動自在に支持された円筒状のもので構成されたもので、前記貫通孔2aの内周面2bに形成された所要の大きさの空間S4a,S4b,S4c,S4dの内部に配設されている。
【0077】
前記回動体については、少なくとも前記フック装置1が移動する方向に平行する方向に回動自在に構成されている限りにおいて、その形状に特段の制限はない。
前記回動体の形状としては、例えば、円筒状(コロないしローラ)、球状(ボール)などが挙げられる。
なお、この実施例においては、前記回動体は、いずれも円筒体で構成され、その軸線が相手部材(支柱P)の軸線に直交するように配設されている。
【0078】
前記回動体については、前記貫通孔2aの内周面2bに少なくとも一つ配設することができる。
例えば、前記回動体を、前記貫通孔2aの内周面2bに、周方向に沿って所定の間隔を存して2以上配設することができ、また前記フック装置1が移動する方向に平行する方向に沿って2以上配設することもできる。
好ましくは、前記回動体は、貫通孔2aの内周面2bに、フック装置1の移動方向(上下方向)において同じ位置の、貫通孔2aの径方向の対向位置に配置(相手部材を挟むように対向配置)され、より好ましくは、さらに、前記回動体は、前記内周面2bにおいて、前記フック装置1が移動する方向の両端部(この実施例において上端部と下端部)のそれぞれに配設される。
【0079】
図7~10において、回動体としてのローラ11aと11bは、内周面2bにおいて、貫通孔2aの軸方向(上下方向)の上端部に配置されており、貫通孔2aの軸線(L1)を通って左右方向に延びる直線(A1)を挟んで前後方向(前記貫通孔2aから前記係止部22aに向かう方向)に沿って対向している。
また、回動体としてのローラ11cと11dは、内周面2bにおいて、貫通孔2aの軸方向(上下方向)の下端部に配置されており、貫通孔2aの軸線(L1)を通って左右方向に延びる直線(A1)を挟んで前後方向に沿って対向している。
前記ローラ11a,11b,11c,11dは、いずれも貫通孔2aの軸線(L1)と係止部22aを形成する開口部の軸線(L2)を通る直線(A2)上に位置している。
【0080】
前記回動体(複数配設されている場合には、少なくともその一部)については、その外周面が、前記フック装置1の移動の際に、相手部材(この実施例において支柱P)の外周面に接触するように配設されていればよい。
図7~10において、前記ローラ11a,11b,11c,11dは、前記空間S4a,S4b,S4c,S4d内に、その外周が前記貫通孔2aの内周面2bよりもやや突出するように配設されている。
したがって、前記回動体は、前記フック装置1が相手部材に沿って移動するのに伴い摩擦力を受けて、相手部材の外表面上で回動する。
このような構成によって、フック装置1の移動の際には、摩擦抵抗が軽減され、ガタツキやスティックスリップ現象の発生がないか又は軽減されるので、前記フック装置1の移動をスムーズに行うことが可能となる。
【0081】
図7~10において、前記回動体としてのローラ11aと11bは、前記貫通孔2aの内周面2bの上端部に、ローラ11cと11dは、前記内周面2bの下端部に、それぞれ直線A2上に位置するように配置され、前記貫通孔2aの外縁は、ローラ11a(及び11c)(係止部22a側のローラ)が配置されている位置において外向きに拡径されている。この拡径された領域は上下方向に延在している。
すなわち、前記貫通孔2aは、その横断面視で、直線A1から後方側が略円形状を呈する一方、直線A1から前方側が、装置本体2の長手方向に沿って前側(ローラ11a,11cが配設されている側)に長い略半楕円形状を呈している。
したがって、直線A1を挟んで対向配置される回動体の一方(図7~10においてローラ11a,11c)の外周面と相手部材(支柱P)の外周面との間に所要の大きさの隙間が形成される。
このような構成によれば、前記フック装置1を、一方(この実施例において上方)へ移動させたときには、図9に示すように、移動方向側かつ被係止物ないし被係止部が取り付けられる側(上部前側)のローラ11aと、移動方向とは逆方向側かつ被係止物ないし被係止部が取り付けられる側とは反対側(下部後側)のローラ11dが支柱Pに接触(当接)し、他方(この実施例において下方)へ移動させたときには、図10に示すように、移動方向側かつ係止部材22(ないし係止部22a)が設けられる側(下部前側)のローラ11cと、移動方向とは逆方向側かつ係止部材22(ないし係止部22a)が設けられる側とは反対側(上部後側)のローラ11bが支柱Pに接触する。
したがって、前記フック装置1の移動を、極めてスムーズに行うことが可能となる。
なお、図7~10において、前記隙間は、横断面視で、前記貫通孔2aの中心から拡径された外縁までの径方向長さ(半長軸)を、半径よりも0.5~1.0mm程度大きくすることによって形成されている。
【0082】
図7~10においては、前記貫通孔2aの外縁の、前方側のローラ11a,11cが配設される位置を外向きに拡径することにより、前方側のローラ11a,11cの外周面と前記支柱Pの外周面との間に隙間が設けられるようにしているが、この例に限られるものではなく、前記貫通孔2aの、回動体が配置される位置の外縁を、適宜、外向きに拡径することができる。
【0083】
図7~10において、前記圧接部材7は、その支柱Pとの当接面が、前記操作部材4が押圧力を受けていない初期状態(操作部が押圧されていない状態)では、ローラ11a,11cの外周よりも前記支柱P側にやや突出するように構成されている。
このような構成によって、前記操作部材4が押圧力を受けていない初期状態では、前記圧接部材7は、前記支柱Pに強く押し付けられることになる一方、ローラ11a,11cは、いずれも、前記支柱Pと接触しない状態にあるので、前記フック装置1を、前記支柱P(相手部材)に、より確実に固定することが可能となる。
【0084】
前記回動体については、少なくともその一部について、相手部材と離接可能に構成することができる。
図11及び12において、ローラ11b,11dは、装置本体2の後方側(係止部材22が設けられる側とは反対側)の、空間S4a,S4cよりも前後方向に大きくなるよう形成された空間S4b,S4d内に、軸部材12a,12cよりも軸方向に長い軸部材14b,14dに回動自在に配設されている。
前記ケース本体21aの右側面には、内側に向かって所要の深さ切り欠いて、略L字状の板状のプレート13aを配置可能な嵌合凹部220が形成され、前記ケース本体21bの左側面の、前記ケース本体21aの右側面に形成された嵌合凹部220に対応する位置にも、前記略L字状の板状のプレート13aと同様に構成された略L字状の板状のプレート13bを配置することが可能となるよう、内側に向かって所要の深さ切り欠いて形成された嵌合凹部220が設けられている。
前記軸部材14b,14dは、それぞれの一方の端部が、対向配置される前記一対の略L字状のプレート13a,13bの一方の後端部に、他方の端部が他方のプレートの後端部に、支持されている。
前記プレート13a,13bのそれぞれの前方側(ローラ11a,11cが設けられる側)には、上下方向(支柱Pの軸方向に対して平行する方向)に延びるよう貫通形成された所要の長さの長孔からなる係合溝131,131が設けられている。
前記係合溝131,131は、前記操作部材4の左右側面に突設されている突出部41e,41eが係合して、その内部を移動するように構成されている。
前記プレート13a,13bの前方側は、その上下端部が、前記嵌合凹部220,220の上下方向に形成されている側壁によって、上下方向への移動が規制され、前記係合溝131,131は、上方から下方に向かって前記支柱Pから離れる(前方から後方に向かって上り傾斜する)ように形成されている。
前記嵌合凹部220の前方側下端部を下方に所要の深さで切り欠き形成された切欠き132と前記プレート13a(又は13b)によって、係合溝219と同様のものが区画形成されている。
このような構成によって、前記プレート13a,13bは、前記操作部材4が押圧力を受けていない初期状態(操作部が押圧されていない状態)では、後方に位置し、前記操作部材4に押圧力を加えた状態(操作部材4が内方へ移動した状態)では、前方に摺動するので、前記プレート13a,13bの摺動に伴って、前記ローラ11b,11dが前方に(前記貫通孔2aから前記係止部22aに向かう方向に沿って)移動可能である。
したがって、前記操作部材4、具体的にはその操作部42が操作されていないときには、前記ローラ11b,11dは、空間S4b及び/又はS4d内の後方側(前記係止部22aから離れる方向側)に位置して支柱Pから離反し、前記支柱Pと接触しない状態にあるので、フック装置1は、前記支柱Pに、より確実に固定される。
一方、フック装置1を移動させる際、前記操作部材4の操作部42が操作されたときには、前記ローラ11b,11dのうち少なくとも一方が、空間S4b及び/又はS4d内の前方側に移動して前記支柱Pと接触するので、前記フック装置1をスムーズに移動させることができる。
【0085】
つぎに、この発明におけるフック装置1の一実施態様とその作動について説明する。
前記したように、図11及び12に示すフック装置1では、回動体としてのローラ11a,11bが、貫通孔2aの内周面2bの上端部に、ローラ11c,11dが、貫通孔2aの内周面2bの下端部に、それぞれ配置されている。
ローラ11a,11cは、貫通孔2aの軸線(L1)を通って左右方向に延びる直線(A1)を挟んで対向し、同様にローラ11b,11dもこの直線(A1)を挟んで対向し、ローラ11a,11b,11c,11dは、いずれも貫通孔2aの軸線(L1)と係止部22aを形成する開口部の軸線(L2)を通る直線(A2)上に位置している。
前記貫通孔2aの外縁は、ローラ11a,11cが配置されている位置において外向きに拡径されている。この拡径された領域は上下方向に延在している。すなわち、貫通孔2aにおいて、ローラ11b,11dが設けられている側の外縁は、横断面視にて、所定の半径を有する略半円を呈し、ローラ11a,11cが設けられている側の外縁は、横断面視にて、前記半径よりも0.5~1.0mm程度長い半長軸を有する略半楕円を呈している。
さらに、装置本体2の長手方向後側のローラ11b,11dは、プレート13a,13bの摺動に伴って前方に移動可能に構成されている。
【0086】
図13は、図11及び12に示すフック装置1であって、何ら操作されておらず、通常の状態にあるものを示す。
図13において、前記フック装置1は、通常の状態にあり、この状態では、弾性部材5の付勢力が操作部材4、より具体的には突出片31bを介して摺動部材3に伝達されるため、この付勢力によって、前記摺動部材3は、空間S1内の操作部材4の傾斜面41aに沿って後方(図13において前記支柱Pに向かう方向)に摺動し、前記摺動部材3(及び/又は前記摺動部材3が備える圧接部材7)は、支柱Pに密着した状態にある。
そのため、前記摺動部材3(及び/又は前記摺動部材3が備える圧接部材7)と前記支柱Pとの間に摩擦力が発生する。
さらに、この状態において、全ての回動体としてのローラ11a~11dは、前記支柱Pから僅かに離れた状態にあるので、回動体による摩擦力の減少は生じない。
よって、フック装置1は支柱Pの所定の位置にロック(固定)され、上下方向への移動が困難な状態となっている。
なお、この状態においては、前記操作部材4の先端の操作部42(ボタン部分)は、図示のように装置本体2から突出している。
【0087】
一方、前記操作部材4を操作(押圧操作)し、前記弾性部材5の付勢力に抗して前記操作部材4を前記装置本体2内に押し込むと、図9及び10と同様の状態になり、前記操作部材4の上方への押圧力が突出片31bを介して摺動部材3に伝達されるため、傾斜面41aに沿って前方(前記支柱Pから離れる方向)に摺動し、これにより前記摺動部材3(及び/又は前記摺動部材3が備える圧接部材7)が前記支柱Pから、僅かに離れることとなる。
したがって、前記摺動部材3(及び/又は前記摺動部材3が備える圧接部材7)と前記支柱Pの間では、摩擦力が消失するか、あるいは極めて小さくなる。
さらに、少なくとも一部の回動体(図9においてはローラ11a,11d、図10においてはローラ11b,11c)が前記支柱Pに当接した状態にある。
このような状態では、前記摺動部材3(及び/又は前記摺動部材3が備える圧接部材7)によるロック状態が解除され、さらに、前記フック装置1が支柱Pに沿って移動するのに伴い、前記支柱Pと当接しているローラが摩擦力を受けて、前記支柱Pの外表面上で回動する。
したがって、上下いずれの方向に対しても、ガタツキやスティックスリップ現象を発生させることなく、前記フック装置1を極めてスムーズに移動させることができる。
【0088】
かくして、前記フック装置1の高さ調整を、ガタツキやスティックスリップ現象を発生させることなく、容易に行うことができる。
なお、前記操作部材4への操作を解除すると、前記したように前記弾性部材5の付勢力によって、前記摺動部材3(及び/又は前記摺動部材3が備える圧接部材7)と前記支柱Pとの間に摩擦力が発生するため、前記フック装置1は、その所定の位置に固定されることとなる。
【0089】
かかる構成のフック装置1は、図7及び12に示すように、主として装置本体2、摺動部材3、操作部材4、弾性部材5で構成され、前記装置本体2は、係止部材22、右ケース部材2a及び左ケース部材2bで構成されるものとすることができる。
特に、前記フック装置1において、前記操作部材4が有する傾斜面41aは、前記摺動部材3の摺動面31aに直接当接するよう構成することもできる。
したがって、部品点数が少なく、構造も簡単である。
【0090】
さらに、前記フック装置1は、例えば、前記操作部材4(詳しくは、その収容空間S3)に前記弾性部材5を挿入するとともに、必要に応じて前記摺動部材3に圧接部材7を装着し、これらを右ケース部材21a内の所定の空間に配置し、係止部材22と結合させた後、左ケース部材21bを装着し、締結部材などを用いて締結することによって、容易に組み立てることができるものである。
一方、前記フック装置1については、分解することができるので、そのメンテナンスや修理を容易に行うことができる。
【0091】
なお、この実施例においては、前記操作部材4を前記装置本体2の下方に突出するように設けるとともに、前記操作部材4の傾斜面41aの傾斜方向を、上方から下方に向かって前記支柱Pから離れるようにし、かつ前記弾性部材5を前記操作部材4の上端部から挿入した形態について記載したが、これとは逆に、前記操作部材4を前記装置本体2の上方に突出するように設けるとともに、前記前記操作部材4の傾斜面41aの傾斜方向を、下方から上方に向かって前記支柱Pから離れるようにし、かつ前記弾性部材5を前記操作部材4の下端部から挿入しても、この発明の効果が得られるので、このような形態もこの発明に包含される。
【0092】
さらに、他の実施の形態として、操作部材の左右方向への移動に伴って、摺動部材が、支柱と密着又は離反し、前記支柱との間の摩擦力が、増加又は減少する方向に摺動する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
この発明は、被係止物ないし被係止部、特にシャワー装置のシャワーヘッドなどを支持するためのフック装置に関するもので、簡単な構造でありながら、支柱などの相手部材へのロック・解除を簡単かつ確実に行うことができ、フック装置の移動時におけるガタツキやスティックスリップ現象の発生が抑えられている。
したがって、この発明は、被係止物ないし被係止部、特にシャワー装置のシャワーヘッドなどを支持するためのフック装置として、幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0094】
1 フック装置
2 装置本体
2a 貫通孔
2b 内周面
21 ケース部材
21a 右ケース部材
21b 左ケース部材
211a,211b 切欠き
212a,212b 収容部
213a,213b 係合孔
214a,214b 係合溝(第一の係合溝)
215a,215b 係合面
216a,216b 切欠き
217a,217b,217c 側壁
218 係合溝(第二の係合溝)
219 係合溝(第三の係合溝)
220 嵌合凹部
22 係止部材
22a 係止部
22b 軸部
22c 突出片
22d 当接面
22e 係合凹部
3 摺動部材
31 摺動部材本体
31a 摺動面
31b 突出片
31c 支持軸挿通部(ガイド溝)
31d 突出部
4 操作部材
41 操作部材本体
41a 傾斜面
41b 嵌合凹部
41c 嵌合面
41d 支持軸
41e 突出部
42 操作部
5 弾性部材(第一の弾性部材)
6 弾性部材(第二の弾性部材)
7 圧接部材(第一の圧接部材)
8 圧接部材(第二の圧接部材)
9 角度調整部材
9a 当接面
9b 係合突部
11a,11b,11c,11d ローラ(回動体)
12a,12b,12c,12d 軸部材(第一の軸部材)
13a,13b プレート
131 係合溝
132 切欠き
14b,14d 軸部材(第二の軸部材)
H1 保持部(第一の保持部材)
H2 保持部材(第二の保持部材)
P 支柱
S1,S2 空間
S3 収容空間
S4a,S4b,S4c,S4d 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13