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  • 特開-樹脂組成物、発泡体及び加飾発泡体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025162962
(43)【公開日】2025-10-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物、発泡体及び加飾発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20251021BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20251021BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
C08J5/04 CEP
C08J9/04 CEP
C08J5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024214307
(22)【出願日】2024-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2024066295
(32)【優先日】2024-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】井上 純香
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 小町
【テーマコード(参考)】
4F072
4F074
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB03
4F072AB14
4F072AB15
4F072AB27
4F072AD04
4F072AG05
4F072AH23
4F072AK04
4F072AK15
4F072AL09
4F072AL17
4F074AA02
4F074AA17
4F074AA24
4F074AA28
4F074AA98
4F074BA03
4F074BA13
4F074BA14
4F074CA26
4F074CC04X
4F074CC04Y
4F074CC22X
4F074CE02
4F074CE98
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA57
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性を高くすることのできる新規な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は、熱可塑性ポリオレフィン、及び、平均アスペクト比が30~1000の繊維質材料、を含む。繊維質材料はセルロースを主成分とし、繊維質材料の含有量が0.1~15質量%の範囲内にある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリオレフィン、及び、平均アスペクト比が30~1000の繊維質材料を含む樹脂組成物であって、
前記繊維質材料はセルロースを主成分とし、
前記繊維質材料の含有量が0.1~15質量%の範囲内にある、樹脂組成物。
【請求項2】
前記繊維質材料の含有量が0.1~4質量%の範囲内にある、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
更に、カルボン酸無水物変性ポリオレフィンを含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸無水物変性ポリオレフィンの量は、0.1~10質量%である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記繊維質材料:前記カルボン酸無水物変性ポリオレフィンの比が1:3~3:1の範囲内である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリオレフィンは、炭素数20以上の分岐鎖を有する長鎖分岐ポリオレフィンを含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリオレフィンに占める前記長鎖分岐ポリオレフィンの質量割合は5質量%以上である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記繊維質材料の平均繊維長が100~2000μmである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物の発泡体。
【請求項10】
請求項9に記載の発泡体と、前記発泡体に積層された加飾層と、を備える、加飾発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、発泡体及び加飾発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の発泡体は、一般に軽量であり、断熱性、絶縁性、吸音性、衝撃吸収性等に優れているため、建材や包装資材、音響など様々な製品に利用されている。発泡体は弾性率や強度といった機械的特性や熱変形温度等の熱的特性は未発泡体よりも劣っているが、気泡を導入することで未発泡体よりも樹脂使用量の低減が図れることから、省資源の面から今後需要がさらに拡大すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-099758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、プラスチック発泡体の気泡径を小さくすることで機械的特性が改善されるとの報告があるが、ポリプロピレンや低密度ポリエチレンは融点を超えると大幅に粘度が低下するため、発泡成形において気泡径の制御が難しい。
【0005】
工業的には架橋剤の添加や電子線照射により分子に分岐構造を持たせることで溶融張力を増加させ、気泡の制御を行う方法もあるが、熱に不融となり、リサイクル性が悪化するなどの側面もある。
【0006】
また、ポリプロピレンなどのポリオレフィンは架橋反応が進行しにくい分子構造を持つため、架橋処理を行うことなくポリオレフィン発泡体の気泡の微細化、物理的特性の向上を可能にすることが求められている。
【0007】
本発明はかかる課題を解決する為に考案されたものであり、発泡体の耐衝撃性を高くすることのできる新規な樹脂組成物、及び、その発泡体等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]可塑性ポリオレフィン、及び、平均アスペクト比が30~1000の繊維質材料、を含む樹脂組成物であって、
前記繊維質材料はセルロースを主成分とし、
前記繊維質材料の含有量が0.1~15質量%の範囲内にある、樹脂組成物。
【0009】
[2]前記繊維質材料の含有量が0.1~4質量%の範囲内にある、[1]に記載の樹脂組成物。
【0010】
[3]更に、カルボン酸無水物変性ポリオレフィンを含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【0011】
[4]前記カルボン酸無水物変性ポリオレフィンの量は0.1~10質量%である、[3]に記載の樹脂組成物。
【0012】
[5]前記繊維質材料:前記カルボン酸無水物変性ポリオレフィン=1:3~3:1の範囲内である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【0013】
[6]前記熱可塑性ポリオレフィンは、炭素数20以上の分岐構造を有する長鎖分岐ポリオレフィンを含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0014】
[7]前記熱可塑性ポリオレフィンに占める前記長鎖分岐ポリオレフィンの質量割合は5質量%以上である、[4]に記載の樹脂組成物。
【0015】
[8]前記繊維質材料の平均繊維長が100~2000μmである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【0016】
[9] [1]~[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物の発泡体。
【0017】
[10] [9]に記載の発泡体と、前記発泡体に積層された加飾層と、を備える、加飾発泡体。
【発明の効果】
【0018】
本発明よれば耐衝撃性を高くすることのできる新規な樹脂組成物及び発泡体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態にかかる発泡体及び加飾発泡体を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(樹脂組成物)
樹脂組成物は、熱可塑性ポリオレフィン、及び、平均アスペクト比が30~1000の繊維系フィラーを含む。
【0021】
(熱可塑性ポリオレフィン)
熱可塑性ポリオレフィンとは架橋していないポリオレフィンのことである。
【0022】
ポリオレフィンの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン及び1種または2種以上のαオレフィンの共重合体、2種以上のαオレフィンの共重合体などの、直鎖ポリオレフィンであり、これらの内の任意の複数種の混合物であってもよい。
【0023】
αオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなどが例示できる。
【0024】
熱可塑性ポリオレフィンは、炭素数20以上の分岐鎖を有さないいわゆる直鎖ポリオレフィンであってもよく、炭素数20以上の分岐鎖を有する長鎖分岐ポリオレフィンであってもよく、任意の比率でこれらを含む混合物であってもよい。
【0025】
熱可塑性ポリオレフィンは、炭素数20以上の分岐鎖を有する長鎖分岐ポリオレフィンを含むことが好ましい。分岐鎖の炭素数の上限は、100000以下であってよく、1000以下でもよく、100以下でもよい。長鎖分岐ポリオレフィンの例は低密度ポリエチレン(LDPE)、長鎖分岐型ポリプロピレン、ポリ乳酸などである。
炭素数20以上の分岐鎖を有するポリオレフィンとしては、ラジカル重合により製造される低密度ポリエチレンや電子線によるグラフト重合ポリオレフィン、もしくはメタロセン触媒により重合される高溶融張力ポリプロピレンなどがあげられるが、ポリプロピレン樹脂との相容性やリサイクル性などの観点から、メタロセン触媒により重合される高溶融張力ポリプロピレンがより好適である。
長鎖分岐ポリオレフィンを含むと、分岐した長鎖が絡みあうことにより、溶融張力が高くなり、発泡時における気泡(セル)の破裂や合泡を抑制することができる。
【0026】
直鎖ポリオレフィンと長鎖分岐ポリオレフィンの合計に占める長鎖分岐ポリオレフィンの割合は、5質量%以上でよく、10質量%以上でもよく、20質量%以上でもよく、50質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、100質量%含んでもよい。なお、熱可塑性ポリオレフィンは直鎖ポリオレフィンを含みかつ長鎖分岐ポリオレフィンを含まなくてもよい。
【0027】
なお、本明細書において、熱可塑性ポリオレフィンは、下記のカルボン酸無水物変性ポリオレフィンを含まない。
【0028】
樹脂組成物において、熱可塑性ポリオレフィンの量は、50質量%以上でよく、60質量%以上でよく、70質量%以上でよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよい。
【0029】
(カルボン酸無水物変性ポリオレフィン)
樹脂組成物は、さらに、カルボン酸無水物変性ポリオレフィンを含んでいることが好適である。
カルボン酸無水物の例は、無水マレイン酸である。カルボン酸無水物変性ポリオレフィンの例は、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。
【0030】
樹脂組成物が、カルボン酸無水物変性ポリオレフィンを含むことで、ポリオレフィンとセルロースを主成分とする繊維質材料との相溶性が向上し、繊維質材料が分散しやすくなり、気泡(セル)が微細化されやすくなる。特に、樹脂組成物に、カルボン酸無水物変性ポリオレフィンを、繊維質材料:カルボン酸無水物変性ポリオレフィン=1/3~3/1となるような範囲内で添加すると、発泡体の強度を保ったまま、繊維質材料と熱可塑性ポリオレフィンの相溶性を向上させることができる。
【0031】
樹脂組成物において、カルボン酸無水物変性ポリオレフィンの量は、0.1質量%以上でもよく、0.15質量%以上でもよく、0.2質量%以上でもよく、0.25質量%以上でもよく、0.5質量%以上でもよく、10質量%以下でもよく、7.5質量%以下でもよく、5質量%以下でもよい。0.1質量%以上だと、ポリオレフィンと繊維質材料の相溶性が向上し、十分に分散する。10質量%以下だと、物性の低下を抑えられる。
【0032】
(セルロースを主成分とする繊維質材料)
樹脂組成物は、セルロースを主成分とする繊維質材料を含有する。
【0033】
セルロースを主成分とする繊維質材料の例は、植物繊維、再生繊維、アセテート系繊維(ジアセテート・トリアセテート)」、パルプ繊維、セルロースファイバである。
【0034】
植物繊維の例は、綿(コットン)、麻等である。
【0035】
アセテート系繊維の例は、アセテート繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維である。
【0036】
再生繊維の例は、レーヨン、キュプラなどである。
【0037】
パルプ繊維は、植物繊維からリグニン及びヘミセルロースを除去してパルプ化した繊維である。
【0038】
セルロースファイバは、パルプ繊維を解繊した繊維である。セルロースファイバの径は1μm以上であってもよく、1μm未満でもよい。セルロースファイバの径は3nm~10μmであってよい。透明性を持たせたい場合は、可視光波長以下である200nm以下とすると好ましい。また、強度を出すためには、1μm以下とすると好ましい。
【0039】
繊維質材料中のセルロースは、フルオレンなどの疎水性の官能基で修飾されていてもよい。
【0040】
セルロースファイバなどのセルロースを主成分とする繊維は、セルロースの他に、ヘミセルロース及びリグニンの少なくとも一方を含むものであってもよい。セルロースは、繊維質材料の50質量%以上を占めていてよく、70質量%以上を占めていてよい。
【0041】
セルロースを主成分とする繊維質材料の平均アスペクト比は30~1000である。平均アスペクト比は、50以上であってよく、100以上であってよく、150以上であってよく、200以上であってよく、400以上であってよく、500以上であってよい。平均アスペクト比は950以下であってもよい。
【0042】
セルロースを主成分とする繊維質材料の平均アスペクト比は(平均繊維長/平均繊維径)で定義される。具体的には、発泡体などの樹脂組成物の透過型電子顕微鏡画像において、任意の20本の繊維について繊維径及び繊維長を取得し、平均繊維長/平均繊維径により求めることができる。
繊維質材料の平均繊維長は、0.1μm以上でもよく、1μm以上でもよく、100μm以上であってもよく、300μm以上であってもよく、500μm以上であってもよく、700μm以上であってもよく、1000μm以上であってもよく、3000μm以下であってもよく、2000μm以下であってもよい。強度の観点から、平均繊維長は100μm以上であることが好適であり、500μm以上であることがより好適である。
【0043】
繊維質材料の平均繊維径は0.003~10μmであってよい。繊維質材料の平均繊維径は0.2μm以上であってよく、0.3μm以上でもよく、0.5μm以上でもよく、5μm以下でもよく、3μm以下でもよい。
【0044】
樹脂組成物においてセルロースを主成分とする繊維質材料の量は、0.1~15質量%である。樹脂組成物においてセルロースを主成分とする繊維質材料の量は0.2質量%以上でもよく、0.5質量%以上でもよく、0.7質量%以上でもよく、1.0質量%以上でもよく、13質量%以下でもよく、10質量%以下でもよい。
【0045】
セルロースを主成分とする繊維質材料の量を0.1質量%以上とする事で、機械的特性を向上する効果が発現しやすい。特に、また、15質量%以下とする事で、セルが細かくなりすぎてセル壁が薄くなり破泡して結果的にセル径が大きくなる傾向を抑制できる。また、セルロースを主成分とする繊維質材料の量を0.1質量%以上4質量%以下とすると、発泡前の樹脂の粘度が好適になり、成形方法によらず、強度の高い発泡体を得ることができる。
【0046】
(着色剤)
樹脂組成物は、着色剤を含んでいてよい。着色剤の例は、染料や顔料である。顔料の例は、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物;鉄-亜鉛酸化物、クロム-アンチモン酸化物、鉄-アルミ酸化物などの複合酸化物;などの無機顔料である。
【0047】
着色剤の種類に応じて、樹脂組成物の色相を適宜、選択することができる。
【0048】
樹脂組成物において着色剤の量は、0.1質量%以上でよく、30質量%以下でもよい。
【0049】
(その他の成分)
樹脂組成物は、他の成分を含有していてもよい。他の成分の例は、エラストマー、紫外線吸収剤、光安定剤、炭酸カルシウム、マイカ、タルク等の無機材料、金属水和物などの難燃剤、顔料、発泡調整剤、リグニン、ヘミセルロース、酸化防止剤、造核剤、帯電防止剤、加工安定剤、スリップ剤、発泡剤である。
【0050】
(樹脂組成物の態様)
樹脂組成物は、上記の各成分のドライブレンド品でもよく、上記の各成分の溶融混練後のメルトブレンド品(例えば、ペレットなどのいわゆるコンパウンド)でもよく、発泡体でもよい。樹脂組成物のドライブレンド品は、上記の各原料を公知の粉体ブレンダーで混合して得ることができる。ドライブレンド品において、樹脂組成物を構成する成分の少なくとも一つが他の成分とあらかじめ溶融混練などによりコンパウンド化(ペレットなど)されていてもよい。
樹脂組成物のメルトブレンド品は、上記のドライブレンドを一軸混練機などで溶融混練し、必要に応じてペレット化することで得ることができる。
(発泡体)
樹脂組成物の発泡体100は、図1に示すように、上記樹脂組成物の固体部10及び気泡(セル)20を有する。固体部10において、上記の樹脂組成物はメルトブレンドである。
【0051】
気泡(セル)20の平均径は0.01mm~10.0mm以下であってよい。ただし、平均径は発泡体の厚み以下である。
【0052】
各気泡(セル)の径はセルの長径及び短径の平均値であり、気泡(セル)の平均径は、走査型電子顕微鏡等により得られる断面画像中から無作為に抽出した10個のセルについての気泡の径の算術平均値として規定される。
【0053】
発泡体は、図1に示すように、多数の気泡(セル)20を有する。発泡体100、解放セル構造であってもよく、閉鎖セル構造であってもよいが、機械的特性の観点から閉鎖セル構造であることが好ましい。
【0054】
(発泡体の形状)
発泡体の形状に特段の限定はなく、板状、ブロック状、シート状、球状、円錐状、多角錐状、円柱状、多角柱状、不定状であってもよい。またそれらの一部を切り取った形でもよく、さらにそれらの組み合わせであってもよい。また表層に凹凸のエンボス加飾が施されていてもよい。発泡剤を含む樹脂組成物を適切な金型内で発泡させることにより、発泡体を所望の形状に成形できる。
【0055】
板状である場合の発泡体の厚みは、0.5mm以上であってよく1.0mm以上であってよく、15.0mm以下であってよく、10.0mm以下であってよい。
【0056】
発泡体の発泡倍率は、0.1~10倍であってよい。
【0057】
(樹脂組成物の発泡体の製造方法)
次に、上記の樹脂組成物の発泡体の製造方法の一例として、化学発泡剤を使用する場合について説明する。なお、物理発泡剤を用いてもよいことはいうまでもない。
【0058】
まず、熱可塑性ポリオレフィン、任意のカルボン酸無水物変性ポリオレフィン、繊維質材料、及び、化学発泡剤を準備する。ポリオレフィンはペレットであることが好適である。繊維質材料も、ポリオレフィンマスターバッチペレットであることが好適である。原料は、架橋剤を有さない。
【0059】
化学発泡剤に特に限定はなく、種々の無機発泡剤、有機発泡剤を使用できる。
【0060】
無機発泡剤の例は、重曹(炭酸水素ナトリウム)である。
【0061】
化学発泡剤の例は、アゾジカルボンアミド(ADC)やアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物、ヒドラジン誘導体などである。これらの化学発泡剤は、加熱により分解してガスを発生することができる。
【0062】
次に、一軸成形機などを用い、各ペレットなどの上記樹脂組成物の各成分と化学発泡剤を溶融及び混練して溶融樹脂を得て、溶融樹脂を金型に注入し、発泡させればよい。なお、溶融樹脂を一度ペレット化して上記樹脂組成物のペレットを得て、その後、当該ペレットを再度溶融して金型に供給してもよい。
【0063】
具体的には、例えば、コアバック式の成形方法であることが好適である。コアバック式では、金型のキャビティに溶融樹脂を供給した後、キャビティ容積を拡大し、発泡を促す。
【0064】
(作用機序)
本実施形態にかかる樹脂組成物によれば、発泡体の耐衝撃性を高めることができる。その理由は明らかではないが、セルロースを主成分としかつ平均アスペクト比の比較的大きな繊維質材料が発泡核剤として作用し、気泡(セル)の径が微細化および均一化し、耐衝撃性が向上することが考えられる。
【0065】
(加飾発泡体)
本発明の加飾発泡体300の一例を、図1を参照して説明する。
【0066】
図1に示すように、加飾発泡体300は、少なくとも、発泡体100と、発泡体100の表面に設けられた加飾層200を備える。
【0067】
加飾層200は、別途成膜された加飾シートであってよく、この場合、加飾シートは、接着剤を介して発泡体100に積層されていてよい。
【0068】
加飾層200は、発泡体100の表面に塗布された塗料の乾燥/硬化物であってもよい。塗料は公知の印刷方法を用いて塗布することができる。
【0069】
加飾層は、任意の模様を有することができる。加飾層の追加により、耐衝撃性等の機械的特性をさらに高めることができる。
【0070】
加飾層は、樹脂、及び、顔料等の着色剤を有することができる。加飾層において着色剤の量は、0.1質量%以上でよく、30質量%以下でもよい。
【実施例0071】
(実施例1~10、13~26、比較例1~4)
表1~3に記載の各実施例及び比較例の材料をドライブレンドし、コアバック駆動型の射出成型機の樹脂投入ホッパーに定量供給を行った。成形機内の一軸混練機内でドライブレンドの溶融及び混練を行って溶融した樹脂組成物を得て、それを金型内に供給して発泡させた。
【0072】
熱可塑性ポリオレフィン(カルボン酸無水物変性ポリオレフィン以外)として、直鎖ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、Y-2000GP)、及び、長鎖分岐ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製MFX3)を、カルボン酸無水物変性ポリオレフィンとしてマレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成工業株式会社製ユーメックス1001)を、繊維質材料としてはセルロースファイバ(スギノマシン製:径は1μm以上)を、化学発泡剤としては重曹を用いた。
長鎖分岐ポリプロピレンの分岐鎖の炭素数は20以上であった。
【0073】
なお、樹脂組成物におけるセルロースを主成分とする繊維のアスペクト比の調整については、例えば、一軸混練機内のスクリュー回転速度、混錬時間、混練回数などの調整により行った。各条件の調整により、繊維長及び/又は繊維径が変更され、これにより、アスペクト比が変更されることになる。
【0074】
表1~3において、直鎖ポリプロピレン、長鎖分岐ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、及び、セルロースファイバ(CF)の量については、化学発泡剤以外の全成分、すなわち、マレイン酸変性ポリプロピレン以外の全ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、セルロースファイバの合計に対する質量割合である。また、化学発泡剤の量については、上記の化学発泡剤以外の全成分の100質量部に対する質量部である。
【0075】
コアバック法:成形金型としては100mmx100mmx2mm(厚さ)の金型を準備した。金型は射出成型機のコアバック駆動に連動して厚さ方向に2mm(成型物の厚み4mmで、2倍発泡に相当)駆動させて、キャビティ容積を拡大させて、成型を行った。充填速度は30mm毎秒、射出時間は2.2秒、保圧は15MPa、金型が開くまでの時間は10秒、金型解放にかかる時間は0.5秒とした。そして、厚さ4mmの発泡体を得た。
【0076】
ショートショット法:成形金型としては100mmx100mmx4mm(厚さ)の金型を準備した。樹脂を金型体積の50%量充填し,気泡を拡大させることで完全充填して成型を行った。そして、厚さ4mmの発泡体を得た。
【0077】
更に実施例11においては、作成した発泡成型体に対して表層のコロナ処理を行った後に、PPプライマースプレー(ロックペイント製、品番:062-4005)を吹付したのちに、アクリルラッカースプレーECO(ロックペイント製)を用いて塗装を行ない、実施例9の発泡体を作製した。
【0078】
更に実施例12においては、同じく発泡成型体の表層にコロナ処理を行った後に、ポリプロピレンをベースにした化粧シート(101エコシート:TOPPAN株式会社製)を、接着剤(ボンドGP100)を介して貼り合わせを行ない、実施例10の発泡体を作製した。
【0079】
(評価)
(耐衝撃性)
デュポン試験機(テスター産業製)にφ12.7の撃ち型を取付ける。サンプルを撃ち型の下にセットし、重さ500gの重り(鉄球)を500mmの高さから落下させる。サンプルの測定位置をずらしながらN=5で試験する。デプスゲージ(ミツトヨ製)を使用してサンプルの凹み量を測定し、その平均値で評価する。なお、凹み量は最も凹んだ部分の天面からの深さを意味する。測定方法としては、デプスゲージを凹んだ部分に当てて測定した。
【0080】
(発泡セル径の測定)
発泡体をカッターで切断し、切断面をマイクロスコープ(キーエンス製)で観察し、2点間距離測定ツールにて10個のセル径を計測し、その平均値で評価する。ただし、セルの形状が正円でない場合は長軸の径を採用することとする。
【0081】
条件及び結果を表1~表4に示す。
【0082】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】
【0083】
実施例1~26では、耐衝撃性を高くすることができた。
【符号の説明】
【0084】
100…発泡体、200…加飾層、300…加飾発泡体。
図1