(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016314
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】集積回路
(51)【国際特許分類】
H10B 51/30 20230101AFI20250124BHJP
G11C 11/22 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
H10B51/30
G11C11/22 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023128884
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】511252615
【氏名又は名称】渡辺 重佳
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 重佳
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FR05
5F083GA01
5F083GA05
5F083GA09
5F083KA01
5F083KA05
5F083LA12
5F083LA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高速で低コストの特性を持つMBCFET(Multi Bridge Channel FET)に代表される縦方向に積層された積層型ゲートアラウンド型トランジスタ構造(GAA)が不揮発性特性を実現する集積回路を提供する。
【解決手段】同一平面上の同じ位置に縦方向に積層したチャネル部分の導電型が同じ複数の横型FET(GAA10,11,12)において、前記複数個の横型FETのうち少なくとも1素子にゲート絶縁膜に情報を不揮発に記憶できる絶縁膜を使用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上の同じ位置に縦方向に積層したチャネル部分の導電型が同じ複数の横型FETにおいて、前記複数個の横型FETのうち少なくとも1素子のゲート絶縁膜に情報を不揮発に記憶できる絶縁膜を使用する事により不揮発性機能を実現する集積回路。
【請求項2】
前記請求項1記載の集積回路において、前記横型FETとして4側面をチャネルに用いるゲートアラウンド型を用いる事を特徴とする特許請求項第1項記載の集積回路。
【請求項3】
前記請求項1ないし2記載の集積回路において、前記不揮発性機能として不揮発性メモリを実現する事を特徴する集積回路。
【請求項4】
前記請求項1ないし2記載の集積回路において、前記不揮発性機能として積和演算回路を実現する事を特徴する集積回路。
【請求項5】
前記請求項1ないし2記載の集積回路において、前記不揮発性機能として任意の論理回路の演算結果を記憶する機能を具備する事を特徴する集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ゲートオールアラウンド型トランジスタを用いた集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIは過去ムーアの法則にしたがって平面型トランジスタの微細化が進み、大容量化、低コスト化、高速化、低消費電力化が着実に進められてきた。
【0003】
その結果ロジックLSIの代表であるMPUでは10億個以上の平面型トランジスタを用いたGHz動作が実現され、メモリLSIの中で最も大容量化が進んだ平面型トランジスタを用いたNAND型フラッシュメモリでは64Gbitまで大容量化が進められている(文献1)。
【0004】
しかしながらこの平面型トランジスタの微細化もショートチャネル効果等のため近年限界に近付いている。
【0005】
過去平面型トランジスタの微細化が難しい問題を解決するため、4側面をチャネルに使用できるゲートアラウンド型トランジスタ(以後GAAと略す)や、GAAを縦方向に複数個積層してGAA以上に高速化に適したMBCFET(Multi Bridge Channel FET)などが提案されている。これらにより微細化によらず高速低コストな特性が実現されている。
【0006】
過去提案されている前記GAAもしくはMBCFETに代表される縦方向に積層された積層型GAAでは、ゲート絶縁膜に酸化膜や高誘電体膜を使用するため、高速で低コストな特性は実現できる。しかしながらGAAもしくは積層型GAA単体では不揮発情報を記憶できないため、不揮発性メモリ、論理回路の出力情報をその上部に記憶する不揮発性論理回路、不揮発性素子を用いた積和演算回路等の不揮発性素子を用いた多様なメモリや論理回路を実現する事が出来なかった。
【文献1】
M. Sako et al,” A Low-Power 64Gb MLC NAND-Flash Memory in 15nm CMOS Technology”,ISSCC Dig.Tech.Papers,2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとしている課題】
【0007】
高速、低コストが実現可能なゲートアラウンド型トランジスタ構造(GAA)もしくはそれを積層した積層型GAA単体では、情報を不揮発で記憶する手段及びその手段を用いた不揮発性メモリや不揮発性論理回路は提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
同一平面上の同じ位置に縦方向に積層したチャネル部分の導電型が同じ複数の横型FETにおいて、前記複数個の横型FETのうち少なくとも1素子にゲート絶縁膜に情報を不揮発に記憶できる絶縁膜を使用する事により実現した。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高速で低コストの特性を持つMBCFETに代表される縦方向に積層された積層型GAAが不揮発性特性を実現する事が出来る。その結果低コストでパターン面積の小さな不揮発性メモリ、論理回路の出力情報をその上部に記憶する不揮発性論理回路、低コストで処理能力が向上した不揮発性素子を用いた積和演算回路等の不揮発性素子を用いた多様なメモリや論理回路を実現する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る集積回路の第1実施形態について説明する。
[第1実施形態]
(第1実施形態の構成)
【0011】
以下本発明の第一の実施形態を説明する。
図1に、同一平面上の同じ位置に縦方向に積層したチャネル部分の導電型が同じ複数の横型FETとして強誘電型トランジスタ(FeFET)を使用している。
図1ではGAAを3個積層した積層型GAAを示し、3個のGAA10,11,12全てにFeFETを使用している。
【0012】
図2に、以下本発明の第二の実施形態を説明する。
同一平面上の同じ位置に縦方向に積層したチャネル部分の導電型が同じ複数の横型FETを使用している点では第一の実施形態と同じである。
図2ではGAAを3個積層した積層型GAAのうち1個のGAA20にはFeFETを使用し、残り2個のGAAには。ゲート絶縁膜に酸化膜や高誘電体膜を使用する。
【0013】
以下本発明の第一の実施形態の変形例1を説明する。
図3に、積層型GAAで2層積層した場合を示す。FeFET 30と31で一つ目の積層型GAAを形成し、FeFET 32と33で二個目の積層型GAAを形成している。同一積層型GAA内では積層型GAAのソース電極は上下でそれぞれソース線36、37として縦方向に接続されている。同様に同一積層型GAA内では積層型GAAのドレイン電極は上下でそれぞれビット線38、39として縦方向に接続されている。34と35はそれそれ上層のFeFETのゲート信号(ワード線)、下層のFeFETのゲート信号(ワード線)を示す。
【0014】
縦方向の積層数を増加させ、積層型GAAの個数を増やすと大容量で高速低コストの大容量FeRAMを実現できる。
図3で30を選択されたFeFETとすると34は選択されたワード線、36は選択されたソース線、38は選択されたビット線になる。一方35は非選択なワード線、37は非選択なソース線、39は非選択なビット線になる。
【0015】
この大容量FeRAMではプログラム時に34にプログラム用高電圧VPPを印加し、36、38は接地電位としてFeFET30にプログラムを行う。残りのFeFETには誤書き込みを防ぐため、35に接地電位、37と39には非選択用の中間電圧(例えばVPP/2)を印加する。読出し時には34には低い読み出し電圧、36は接地電位とし、38に30へのプログラム情報を読みだす。
【0016】
以下本発明の第一の実施形態の変形例2を説明する。
図4に、積層型GAAで2層積層した場合を示す。FeFET 40と41で一つ目の積層型GAAを形成し、FeFET 42と43で二個目の積層型GAAを形成している。この構成では不揮発性素子を用いた積和演算回路を実現できる。2個の積層型GAAのソース電極は上層のFeFETへのプログラム及び積和演算への入力信号461、462として使用される。一方、2個の積層型GAAのソース電極は下層のFeFETへのプログラム及び積和演算への入力信号471、472として使用される。ビット線48と49ではそれぞれ異なる積層型GAAでの積和演算結果が出力される。
【0017】
図4ではまずFeFETに積和演算のおける重みをそれぞれのFeFETの抵抗値として記憶するために、FeFET40-43にプログラムを行う。プログラム時には例えばFeFET40にプログラムを行う場合には44に重みの値に対応したプログラム電圧を印加し、461、471、45には接地電圧を印加する。一方、FeFET42と43へのプログラムを防ぐため、462、472には中間電圧を与える。
【0018】
次にプログラムされた情報を用いて積和演算を行う場合には、それぞれ同じ積層場所にあるFeFETのソースには同じ入力電圧(
図4で上層では461と462には同じ入力電圧を印加、下層では471と472に同じ入力電圧を印加)を印加する。ゲート電圧44と45には閾値電圧以上の同じゲート電圧を印加する。その結果ビット線48と49にそれぞれの積層型GAAでの積和演算回路の演算結果が電流値として出力される。
この他にもゲート電圧44と45を共通にし、ビット線48と49の電圧を上層のGAAと下層のGAAで分離する方法も考えられる。その場合にはプログラム時には上下のGAAでヒット線とソース線に別の電圧を印加して(同一FeFETのソース電圧とドレイン電圧は同一にする)FeFETへのプログラム量(閾値電圧の変化)をコントロールする。プログラム後の積和演算時には、上下のGAAに接続されるビット線を接続して積和演算の評価を行う。
【0019】
以下本発明の第一の実施形態の変形例3を説明する。
基本的構成は第一の実施例の第一の変形例と同じ構成をしている積和演算回路である。FeFETへの重みのプログラムは第一の実施例の変形例1と同じである。積和演算に関しては、第一の実施形態の変形例2ではソースから入力しているのに対して変形例3ではゲートから入力しているのが特徴である。つまり積和演算時にはゲート34と35には異なる入力信号を印加する。通常FeFETのドレイン電流は三極管動作の場合、ゲート電圧からプログラム後の閾値電圧を引いた値に比例する。そのためプログラムされる閾値の値が異なる場合にゲート電圧に入力信号を入れる方式では重みと入力電圧を独立して制御するのは困難であると考えられていた。(積和演算では重みと入力信号は独立して制御される必要がある)。
【0020】
そこで変形例3ではFeFETがサブスレッショルド動作する場合にはドレイン電流がゲート電圧、閾値電圧、ドレイン電圧の指数関数で表されるため、ドレイン電流をゲートへの入力電圧と、重みに関する閾値の積の形で表すことが出来る。その結果、従来方式で問題だった重みとゲートへの入力電圧を独立して制御できる特徴がある。
【0021】
以下本発明の第一の実施形態の変形例4を説明する(
図5)。
基本的構成は第一の実施例の第一の変形例と同じ構成をしている積和演算回路である。FeFETへの重みのプログラムは第一の実施例の変形例1と同じである。積和演算に関しては、第一の実施形態の変形例2ではソースから入力しているのに対して変形例4ではゲートから入力しているのが特徴である。つまり積和演算時にはゲート34と35には異なる入力信号を印加する。通常FeFETのドレイン電流は三極管動作の場合、ゲート電圧からプログラム後の閾値電圧を引いた値に比例する。そのためプログラムされる閾値の値が異なる場合にゲート電圧に入力信号を入れる方式では重みと入力電圧を独立して制御するのは困難であると考えられていた。
【0022】
そこで変形例4では評価用FeFET以外に新たに別の基準用FeFET(FeFETアレイ51を構成)を設ける。そして評価用FeFETのプログラム後の閾値電圧を基準用FeFETにも同様にプログラムする。そして積和演算時には基準FeFETの閾値電圧に応じてゲートへの入力信号をコントロールする。ゲート34と35に異なるゲート入力信号を入れる。その結果ドレイン電流が三極管動作する時にも常にゲートへの入力電圧と重みに関する積の形で表すことが可能になる。
【0023】
以上の動作を実現するためには基準用FeFETの閾値電圧を検知する回路52と閾値電圧に応じたゲート入力信号への変換回路53が必要になる。ゲート入力信号への変換回路には解析的な計算で閾値電圧からゲート入力信号へ変換する回路か、両者の関係を参照するテーブル方式等が考えられる。
【0024】
図6に、以下本発明の第二の実施形態の第一の変形例を説明する。
図6では論理回路の出力情報をその上部に記憶する不揮発性論理回路を実現する事が出来る。積層型GAAにおいて縦方向に積層されたGAAによって構成された論理回路67の上に67での演算結果を記憶するFeFET65、その上にFeFET63への書き込み制御用GAAを積層する。63,65、67は一個の積層型GAAを形成するが、その中でFeFETを使用するのは記憶用FeFET65のみになる。
【0025】
回路動作は以下のように行う。初めのプリチャージ時には61と62は読出し用電圧1Vに、66は接地電位に設定する。出力64は1Vにプリチャージされる。その時に書き込み用ワード線66は0Vを印加する。次の読出し時にはプリチャージ信号62を接地電圧にし、66を2Vに設定し、出力64に論理回路67の評価結果を出力する。次のプログラム時は61と62を中間電圧まで昇圧し、64を書き込み電圧VPまで昇圧して評価結果をFeFET68に書き込む。
【0026】
読出し時に出力64が1Vの場合にはプログラム時に64は中間電位まで充電されるためFeFET68にはプログラムされない。一方読出し時に出力64が0Vの場合にはプログラム時に64は0VであるためFeFET68にはプログラムされる。
【実施形態の効果】
【0027】
本発明により、高速で低コストな特性を持つMBCFETに代表される縦方向に積層された積層型GAAが不揮発性特性を実現する事が出来る。その結果低コストでパターン面積の小さな不揮発性メモリ、論理回路の出力情報をその上部に記憶する不揮発性論理回路、低コストで処理能力が向上した不揮発性素子を用いた積和演算回路等の不揮発性素子を用いた多様なメモリや論理回路を実現する事が出来る。
【0028】
不揮発性素子としてFeFETを用いた場合には、1本のビット線に1K個のFeFETが接続される場合には1K層にFeFETを同じ位置に積層した積層型GAAによりメモリセルアレイの面積を1/1Kに縮小できる。FeRAMの面積は大部分メモリセルアレイで占められているため、本発明によりFeRAMの面積を従来の1/1kに縮小できる効果が有る。その結果低コスト化が期待できる。
【0029】
本発明の不揮発性素子を用いた積和演算回路に適用した場合には、1本のビット線に1K個のFeFETが接続される場合には1K層にFeFETを同じ位置に積層した積層型GAAにより積和演算回路の面積を1/1Kに縮小できる。その結果処理能力を変更せずに積和演算回路の面積を1/1Kに縮小出来、これが低コスト化につながる。あるいは積和演算回路のパターン面積を変更しない場合には、本発明により従来の1K倍の入力に対応でき、従来と比較して高性能な積和演算回路を実現できる効果が有る。
【他の実施例】
【産業用の利用可能性】
【0030】
本発明は本実施例に限定されない。不揮発性素子としてスピントランジスタ、PCM等を使用することもできる。積和演算以外の活性化関数の生成、CNN、RNN等のプロトコルの生成に伴うAI関連のコア回路に適用することもできる。その結果システムLSI,ロジックLSI、AI専用LSI,FPGA等の現在商品化されている集積回路全てに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明にかかわる集積回路のゲート絶縁膜に情報を不揮発に記憶できる絶縁膜を使用した積層型GAAの第一の実施例の断面方向から見た回路図である。
【
図2】本発明にかかわる集積回路のゲート絶縁膜に情報を不揮発に記憶できる絶縁膜を使用した積層型GAAの第二の実施例の断面方向から見た回路図である。
【
図3】本発明にかかわる集積回路のゲート絶縁膜に情報を不揮発に記憶できる絶縁膜を使用した積層型GAAの第一の実施例の第1の変形例の断面方向から見た回路図である。
【
図4】本発明にかかわる集積回路のゲート絶縁膜に情報を不揮発に記憶できる絶縁膜を使用した積層型GAAの第一の実施例の第2の変形例の断面方向から見た回路図である。
【
図5】本発明にかかわる集積回路のゲート絶縁膜に情報を不揮発に記憶できる絶縁膜を使用した積層型GAAの第一の実施例の第4の変形例の断面方向から見た回路図である。
【
図6】本発明にかかわる集積回路のゲート絶縁膜に情報を不揮発に記憶できる絶縁膜を使用した積層型GAAの第二の実施例の第1の変形例の断面方向から見た回路図である。
【符号の説明】
【0031】
10-12は3層積層されたFeFETを、20は積層型GAAの中でFeFETを、21、22は通常のゲート酸化膜を用いたGAAを示す。
30-39は実施形態1の第一の変形例の記号を示す。30-33はFeFETを、34、35はゲート入力信号を、36,37はソース線を、38,38はビット線を示す。
40-45、461、462、471、472、48、49は実施形態1の第二の変形例の記号を示す。40-43はFeFETを、44、45はゲート入力信号を、461、462、471、472はソース線を、48,48はビット線を示す。
30-39、51,52,53は実施形態1の第4の変形例の記号を示す。30-33はFeFETを、34、35はゲート入力信号を、36,37はソース線を、38,38はビット線を示す。51は基準用FeFETアレイ、52はFeFETの閾値検出回路、53は閾値電圧からゲート信号への変換回路を示す。
61-68は実施形態2の第一の変形例の記号を示す。68は記憶用FeFETを、63はプリチャージ用GAAを、61は書き込み電源を、62は書き込み信号を、64は出力、66はFeFETのゲート信号、67は論理回路を示す。