(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016334
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051300
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2023-0095536
(32)【優先日】2023-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0142878
(32)【優先日】2023-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク、クァン ソー
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】セオ、チャン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン ミ
(72)【発明者】
【氏名】チャエ、ヒュン シク
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC31
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械的強度及び耐湿信頼性に優れた積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層及び誘電体層を挟んで第1方向に交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、第1方向に対向する第1面1及び第2面2、第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面3及び第4面4、第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5面5及び第6面6を含む本体110、第5面及び第6面に配置されるサイドマージン部141、142並びに第3面及び第4面に配置される外部電極を含む。サイドマージン部はポリドーパミンを含み、サイドマージン部が含む複数の誘電体結晶粒の平均サイズは、誘電体層が含む複数の誘電体結晶粒の平均サイズとは異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層を挟んで第1方向に交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含み、前記第1方向に対向する第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、前記第1面~前記第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体と、
前記第5面及び前記第6面に配置されるサイドマージン部と、
前記第3面及び前記第4面に配置される外部電極と、を含み、
前記サイドマージン部はポリドーパミンを含み、
前記サイドマージン部が含む複数の誘電体結晶粒の平均サイズは、前記誘電体層が含む複数の誘電体結晶粒の平均サイズとは異なる、積層型電子部品。
【請求項2】
前記サイドマージン部に含まれたポリドーパミンのうち少なくとも一部は、窒素がドープされた炭化ポリドーパミンである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記サイドマージン部が含む複数の誘電体結晶粒のうち、隣接する誘電体結晶粒の間には結晶粒界が配置され、
前記サイドマージン部に含まれた前記ポリドーパミンは前記結晶粒界に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記サイドマージン部が含む複数の誘電体結晶粒の平均サイズは160nm以上190nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記サイドマージン部は、X線光電子分光法(XPS)を用いた分析の際に、N1sピーク及びC1sピークが検出される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記サイドマージン部に対するラマン分析の際に、1360cm-1~1380cm-1のラマンシフトで第1ピークが検出され、1610cm-1~1630cm-1のラマンシフトで第2ピークが検出される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第1ピークの最大強度に対する前記第2ピークの最大強度の比率は0.01以上1.50以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記第1ピークの半値全幅は80cm-1以上90cm-1以下であり、前記第2ピークの半値全幅は100cm-1以上110cm-1以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層は前記ポリドーパミンを含まない、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層は、前記サイドマージン部に含まれた前記ポリドーパミンの含有量より少ない含有量の前記ポリドーパミンを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
X線光電子分光法(XPS)を用いた分析の際に、前記サイドマージン部はN1sピークが検出され、前記誘電体層はN1sピークが検出されない、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
ラマン分析の際に、前記サイドマージン部は1360cm-1~1380cm-1のラマンシフトで第1ピークが検出され、1610cm-1~1630cm-1のラマンシフトで第2ピークが検出され、前記誘電体層は1360cm-1~1380cm-1のラマンシフト及び1610cm-1~1630cm-1のラマンシフトのうち少なくとも1つでピークが検出されない、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
ラマン分析の際に、前記サイドマージン部は1360cm-1~1380cm-1のラマンシフトで第1ピークが検出され、1610cm-1~1630cm-1のラマンシフトで第2ピークが検出され、前記誘電体層は1360cm-1~1380cm-1のラマンシフトで第3ピークが検出され、1610cm-1~1630cm-1のラマンシフトで第4ピークが検出され、
前記第3ピークの強度は前記第1ピークの強度より低く、前記第4ピークの強度は前記第2ピークの強度より低い、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記サイドマージン部で測定したRGB値が71≦R≦79、71≦G≦79、及び64≦B≦72を満たす、請求項1から13のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。
【0003】
最近、積層セラミックキャパシタの単位体積当たりの容量を確保するために積層セラミックキャパシタは小型化しており、これにより、積層セラミックキャパシタの容量を形成する容量形成部を保護するためのサイドマージン部の厚さが薄くなっている。但し、サイドマージン部の厚さが薄くなるほど、積層セラミックキャパシタの機械的強度が弱くなり、これは積層セラミックキャパシタに発生するクラックや脆性破壊を誘発する原因となり得る。このようなクラック等は、外部からの水分が積層セラミックキャパシタの内部に浸透する経路となり、積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を低下させる原因となる。
【0004】
したがって、積層セラミックキャパシタの機械的強度及び耐湿信頼性が低下することを防止するために、サイドマージン部の強度を向上させることができる方案についての研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの目的の一つは、機械的強度及び耐湿信頼性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0006】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層を挟んで第1方向に交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含み、上記第1方向に対向する第1面及び第2面、上記第1面及び上記第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、上記第1面~上記第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体、上記第5面及び上記第6面に配置されるサイドマージン部、並びに上記第3面及び上記第4面に配置される外部電極を含み、上記サイドマージン部はポリドーパミンを含み、上記サイドマージン部が含む複数の誘電体結晶粒の平均サイズは、上記誘電体層が含む複数の誘電体結晶粒の平均サイズとは異なる積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の様々な効果の一つとして、機械的強度及び耐湿信頼性に優れた積層型電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の本体及びサイドマージン部を概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図2のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図である。
【
図5】(a)ドーパミンヒドロクロリド、(b)ポリドーパミン重合体、及び(c)窒素がドープされた炭化ポリドーパミンの化学構造を概略的に示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態による積層型電子部品のサイドマージン部をX線光電子分光法(XPS)を用いて分析した結果を概略的に示すグラフである。
【
図9】本発明の一実施形態による積層型電子部品のサイドマージン部をラマン分析法を用いて分析した結果を概略的に示すグラフである。
【
図10】本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法を概略的に示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法を概略的に示す斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法を概略的に示す斜視図である。
【
図13】比較例と実施例に対するテープ(tape)テスト結果を示す表である。
【
図14】比較例と実施例の応力(stress)-変形率(strain)曲線を示すグラフである。
【
図15】(a)比較例の信頼性評価結果を示すグラフ及び(b)実施例の信頼性評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0011】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0012】
図面において、第1方向は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0013】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示す斜視図であり、
図2は、
図1の本体及びサイドマージン部を概略的に示す分解斜視図であり、
図3は、
図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図であり、
図4は、
図2のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図であり、
図5は、(a)ドーパミンヒドロクロリド、(b)ポリドーパミン重合体、及び(c)窒素がドープされた炭化ポリドーパミンの化学構造を概略的に示す模式図であり、
図6は、
図4のK1領域の拡大図であり、
図7は、
図4のK2領域の拡大図であり、
図8は、本発明の一実施形態による積層型電子部品のサイドマージン部をX線光電子分光法(XPS)を用いて分析した結果を概略的に示すグラフであり、
図9は、本発明の一実施形態による積層型電子部品のサイドマージン部をラマン分析法を用いて分析した結果を概略的に示すグラフである。
【0014】
以下、
図1~
図9を参照して本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳細に説明する。また、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0015】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、本体110、サイドマージン部141、142、及び外部電極131、132を含むことができる。
【0016】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0017】
本体110は、第1方向に対向する第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に対向する第3面3及び第4面4、第1面1~第4面4と連結され、第3方向に対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0018】
本体110は、誘電体層111及び誘電体層111を挟んで第1方向に交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0019】
誘電体層111は、例えば、ABO3で表されるペロブスカイト型化合物を主成分として含むことができる。ABO3で表されるペロブスカイ型化合物は、例えば、BaTiO3、(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)であってもよい。
【0020】
内部電極121、122は、誘電体層111と第1方向に交互に配置されることができる。すなわち、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122とが、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置されることができる。第1内部電極121と第2内部電極122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0021】
第1内部電極121は、第3面3、第5面5及び第6面6と連結され、かつ第4面4と離隔するように配置されることができる。第2内部電極122は、第4面4、第5面5及び第6面6と連結され、かつ第3面3と離隔するように配置されることができる。
【0022】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、Ni、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、W、Ti及びこれらの合金のうち1つ以上であってもよく、より好ましくはNiを含んでもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はない。誘電体層111の平均厚さtdは、例えば0.1μm~10μmであってもよい。内部電極121、122の平均厚さteは、例えば0.1μm~3.0μmであってもよい。また、誘電体層111の平均厚さtdと内部電極121、122の平均厚さは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。例えば、小型化及び高容量化を達成するために高電圧電装用電子部品の場合、誘電体層111の平均厚さtdは2.8μm未満であってもよく、内部電極121、122の平均厚さteは、1μm未満であってもよい。また、小型化及び高容量化を達成するために、小型IT用電子部品の場合、誘電体層111の平均厚さtdは0.4μm以下であってもよく、内部電極121、122の平均厚さteは0.4μm以下であってもよい。
【0024】
誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteは、それぞれ誘電体層111及び内部電極121、122の第1方向のサイズを意味する。誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの誘電体層111の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定した後、平均値をとることにより誘電体層111の平均厚さtdを測定することができる。また、1つの内部電極121、122の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定した後、平均値をとることにより内部電極121、122の平均厚さteを測定することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。一方、このような平均値の測定をそれぞれ10個の誘電体層111及び10個の内部電極121、122に対して行った後、平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteをさらに一般化することができる。
【0025】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、容量形成部Acの第1方向に対向する両面上にそれぞれ配置される第1カバー部112及び第2カバー部113とを含むことができる。カバー部112、113は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。カバー部112、113は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と類似の構成を有することができる。
【0026】
カバー部112、113の平均厚さtcは特に限定する必要はない。すなわち、カバー部112、113の平均厚さtcは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。例えば、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、カバー部112、113の平均厚さtcは、300μm以下、100μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、カバー部112、113の平均厚さtcは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0027】
カバー部112、113の平均厚さtcは、カバー部112、113の第1方向への平均サイズを意味することができ、本体110の第1方向及び第2方向の断面において、第2方向に等間隔である5個の地点で測定した第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0028】
サイドマージン部141、142は、本体110の第5面5及び第6面6に配置されることができる。具体的に、本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、第5面5に配置される第1サイドマージン部141及び第6面6に配置される第2サイドマージン部142を含むことができる。サイドマージン部141、142は、内部電極121、122を含まないことを除いては、誘電体層111と類似の構成を有することができる。すなわち、サイドマージン部141、142は、ABO3で表されるペロブスカイト型化合物を主成分として含むことができる。
【0029】
サイドマージン部141、142の平均厚さtmは特に限定する必要はない。すなわち、サイドマージン部141、142の平均厚さtmは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。例えば、積層型電子部品の小型化及び高容量化のためにサイドマージン部141、142の平均厚さtmは100μm以下、20μm以下、又は15μm以下であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、サイドマージン部141、142の平均厚さtmは、第1サイドマージン部141及び第2サイドマージン部142のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0030】
サイドマージン部141、142の平均厚さtmは、サイドマージン部141、142の第3方向の平均サイズを意味することができ、本体110の第2方向の中央を通る積層型電子部品100の第1方向及び第3方向の断面において、第1方向に等間隔である5個の地点で測定した第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0031】
外部電極131、132は本体110の外部に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができ、第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6の一部上に延びることができる。外部電極131、132は、第1内部電極121と連結される第1外部電極131、及び第2内部電極122と連結される第2外部電極132を含むことができる。
【0032】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置され、内部電極121、122と連結される第1電極層、及び上記第1電極層上に配置される第2電極層を含むことができる。
【0033】
上記第1電極層は、本体110の第3面3及び第4面4を導電性金属及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することにより形成することができる。上記第1電極層に含まれる導電性金属は、Cu、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Pb及び/又はこれらを含む合金などを含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
一方、上記第1電極層は、金属及びガラスを含む1層のみで構成されてもよいが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記第1電極層は多層構造を有してもよい。例えば、上記第1電極層は、金属及びガラスを含む第1層及び上記第1層上に配置され、金属及び樹脂を含む第2層を含むことができる。
【0035】
上記第2層に含まれる金属は特に限定されず、Ni、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、W、Ti及びこれらの合金からなる群から選択される1つ以上を含むことができる。上記第2層に含まれる樹脂は、接合性確保及び衝撃吸収の役割を果たすことができる。上記樹脂は接合性及び衝撃吸収性を有し、金属粉末と混合してペーストを作製できるものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、エチルセルロース(Ethyl Cellulose)等から選択された1種以上を含むことができる。
【0036】
上記第2電極層は実装特性を向上させることができる。上記第2電極層の種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及び/又はこれらを含む合金などを含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。上記第2電極層は、例えば、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、上記第2電極層は、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0037】
図面では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、サイドマージン部141、142はポリドーパミンを含むことができる。ポリドーパミン(Polydopamine)はドーパミンの重合体であって、ドーパミンの自己高分子化(self-polymerization)によって生成されたポリドーパミンは、共有結合カテコール(catechol)とイミン(imine)官能基を有しており、セラミック粉末などの無機物質やバインダーなどの有機物質といずれも強い結合を形成することができる。
【0039】
後述するように、本発明の一実施形態による積層型電子部品100のサイドマージン部141、142を形成するためのサイドマージン部形成用シートには、
図5の(a)に示すドーパミンヒドロクロリドが添加されることができる。サイドマージン部形成用シートに添加されたドーパミンヒドロクロリドは、自己高分子化によって
図5の(b)に示すポリドーパミン重合体を形成することができる。サイドマージン部形成用シートは、ポリドーパミン重合体を含むことにより、サイドマージン部形成用シートに含まれたセラミック粉末やバインダー等との強い結合を形成することができ、これにより、上記サイドマージン部形成用シートの接着力を向上させることができる。したがって、後述するセラミックチップの側面にサイドマージン部形成用シートを加圧密着させる際に、セラミックチップからサイドマージン部形成用シートが剥離する不良が発生することを防止することができる。
【0040】
サイドマージン部形成用シートに含まれたポリドーパミン重合体の全部又は一部は、積層型電子部品100の本体110及びサイドマージン部141、142を形成するための焼成過程を経ることで、
図5の(c)に示す窒素がドープされた炭化ポリドーパミン(N-doped graphenated polydopamine)に変換されることができる。一実施形態において、サイドマージン部141、142に含まれたポリドーパミンのうち少なくとも一部は、窒素がドープされた炭化ポリドーパミンであり得る。サイドマージン部141、142に含まれた窒素がドープされた炭化ポリドーパミンは、二次元物質であって、サイドマージン部141、142の弾性係数(elastic modulus)と靭性(Toughness)を向上させることができ、これにより、サイドマージン部141、142に生成されたクラックの伝播を抑制することができる。これにより、積層型電子部品100の機械的強度を向上させることができ、究極的に積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0041】
一方、サイドマージン部141、142に含まれた炭化ポリドーパミンによりサイドマージン部141、142の色は暗くなることができる。一実施形態において、サイドマージン部141、142で測定したRGB値は、71≦R≦79、71≦G≦79、及び64≦B≦72を満たすことができる。サイドマージン部141、142の外表面で測定したRGB値のR値、G値、及びB値は、それぞれカバー部112、113の外表面で測定したRGB値のR値、G値、及びB値より小さくてもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
以下、
図6及び
図7を参照してサイドマージン部及び誘電体層についてより詳細に説明する。
図6は、第1サイドマージン部141の一部を拡大して示したものであるが、第1サイドマージン部141と第2サイドマージン部142の構成は実質的に同じであるため、以下の説明は第1サイドマージン部141及び第2サイドマージン部142に対する説明を全て含むものと見なす。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、サイドマージン部141が含む複数の誘電体結晶粒G1の平均サイズは、誘電体層111が含む複数の誘電体結晶粒G2の平均サイズと異なることができる。以下、サイドマージン部141に含まれた誘電体結晶粒及び結晶粒界をそれぞれ第1誘電体結晶粒及び第1結晶粒界と定義することができ、誘電体層111に含まれた誘電体結晶粒及び結晶粒界をそれぞれ第2誘電体結晶粒及び第2結晶粒界と定義することができる。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、サイドマージン部141は、誘電体層を形成するセラミックグリーンシートとは別にサイドマージン部形成用シートを加圧密着及び焼成することによって形成することができる。これにより、誘電体層111を形成するためのセラミックグリーンシートに添加される第1セラミック粉末の平均粒径と、サイドマージン部141を形成するためのサイドマージン部形成用シートに添加される第2セラミック粉末の平均粒径とは互いに異なることができる。第1及び第2セラミック粉末の平均粒径を異ならせることにより、焼成後の複数の第1誘電体結晶粒G1の平均サイズと、複数の第2誘電体結晶粒G2の平均サイズとが異なるように調節することができる。また、サイドマージン部141に含まれた窒素がドープされた炭化ポリドーパミンは、第1誘電体結晶粒G1の粒成長を抑制することができ、これにより、複数の第1誘電体結晶粒G1の平均サイズと複数の第2誘電体結晶粒G2の平均サイズとが異なることができる。
【0045】
サイドマージン部141は、外部の水分や外部の衝撃から誘電体層111を保護する役割を果たし、誘電体層111は積層型電子部品100の容量を実現する役割を果たす。すなわち、本発明の一実施形態によれば、所望の電気的特性や信頼性を実現するために、複数の第1誘電体結晶粒G1の平均サイズと複数の第2誘電体結晶粒G2の平均サイズとを互いに異ならせることができる。
【0046】
例えば、積層型電子部品100の容量を向上させるために、誘電体層111に含まれた複数の第2誘電体結晶粒G2の平均サイズは、サイドマージン部141に含まれた複数の第1誘電体結晶粒G1の平均サイズより大きくてもよい。あるいは、積層型電子部品100の信頼性を改善するために、誘電体層111に含まれた複数の第2誘電体結晶粒G2の平均サイズは、サイドマージン部141に含まれる複数の第1誘電体結晶粒G1の平均サイズより小さくてもよい。
【0047】
サイドマージン部141が含む複数の第1誘電体結晶粒G1の平均サイズは特に限定する必要はないが、例えば、160nm以上190nm以下であってもよい。
【0048】
サイドマージン部141に含まれた複数の第1誘電体結晶粒G1の平均サイズは、例えば、第3方向の中央で切断した積層型電子部品100の第1及び第2方向の断面において、サイドマージン部141の中央領域(例えば、
図4のK1領域)を走査電子顕微鏡(SEM)で50,000倍拡大したイメージを得た後、上記イメージをイメージ分析プログラム、例えば、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得られた誘電体結晶粒サイズの平均値を意味することができる。
【0049】
また、誘電体層111に含まれた複数の第2誘電体結晶粒G2の平均サイズは、例えば、第3方向の中央で切断した積層型電子部品100の第1及び第2方向の断面において、容量形成部Acの中央領域(例えば、
図4のK2領域)に配置された誘電体層111を走査電子顕微鏡(SEM)で50,000倍拡大したイメージを得た後、上記イメージをイメージ分析プログラム、例えば、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得られた誘電体結晶粒サイズの平均値を意味することができる。
【0050】
一実施形態において、サイドマージン部141に含まれたポリドーパミンは結晶粒界GB1に配置されることができる。第1結晶粒界GB1に配置されたポリドーパミンは、クラックの伝播を効果的に遮断することができる。また、窒素ドープされた炭化ポリドーパミンは疎水性(Hydrophobic)を有するため、窒素ドープされた炭化ポリドーパミンが第1結晶粒界GB1に存在すると、水分浸透に対する障壁(barrier)としての役割を果たすことができる。
【0051】
図8を参照すると、一実施形態において、サイドマージン部141、142は、X線光電子分光法(XPS)を用いた分析の際に、N1sピーク及びC1sピークが検出されることができる。サイドマージン部141、142が、窒素がドープされた炭化ポリドーパミンを含む場合、Ba3d5、O1s、Ti2p、C1sピークに加えてN1sピークがさらに検出されることができる。すなわち、XPS分析時にN1s及びC1sピークが同時に検出される場合、サイドマージン部141、142に窒素がドープされた炭化ポリドーパミンが存在すると判断することができる。一方、上記N1sピークの強度(intensity)は395eV以上405eV以下の結合エネルギー(binding energy)において最大値を有し、上記C1sピークの強度(intensity)は280eV以上290eV以下の結合エネルギー(binding energy)において最大値を有することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
サイドマージン部141、142に対するXPS分析はサイドマージン部141、142の外表面に対して行うことができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、積層型電子部品100の第3方向の中央部まで研磨した第1及び第2方向の断面に対して行うこともできる。
【0053】
図9を参照すると、一実施形態において、サイドマージン部141、142に対するラマン分析の際に、1360cm
-1~1380cm
-1のラマンシフトで第1ピークXが検出され、1610cm
-1~1630cm
-1のラマンシフトで第2ピークYが検出されることができる。第1ピークXはDピーク、第2ピークYはGピークを意味することができる。サイドマージン部141、142に対するラマン分析の際に、第1ピークX及び第2ピークYが同時に現れるのはサイドマージン部141、142が二次元構造を有する炭化ポリドーパミン構造を有するためである。
【0054】
一実施形態において、第2ピークYの最大強度に対する第1ピークXの最大強度の比率は、0.01以上1.50以下であり得る。第2ピークYの最大強度に対する第1ピークXの最大強度の比率は、炭化ポリドーパミン内の欠陥や窒素がドープされた程度に応じて異なり得る。
【0055】
一実施形態において、第1ピークXの半値全幅は80cm-1以上90cm-1以下であり、第2ピークYの半値全幅は100cm-1以上110cm-1以下であることができる。半値全幅とは、当該ピークの最大強度の半分であるときのピークの幅を意味することができる。第1ピークXの半値全幅と第2ピークYの半値全幅は、炭化ポリドーパミン内の欠陥や窒素がドープされた程度に応じて異なり得る。
【0056】
サイドマージン部141、142に対するラマン分析は、サイドマージン部141、142の外表面に対して行うことができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、積層型電子部品100の第3方向の中央部まで研磨した第1及び第2方向の断面に対して行うこともできる。
【0057】
一実施形態において、誘電体層111はポリドーパミンを含まなくてもよい。誘電体層111がポリドーパミンを含む場合、誘電体層111の機械的強度は改善できるものの、ポリドーパミンが積層型電子部品100の電気的特性と直接関連する誘電体層111に含まれると、積層型電子部品100の破壊電圧等が劣化するなど、副効果が発生する可能性がある。
【0058】
誘電体層111がポリドーパミンを含まない場合、誘電体層111には窒素が検出されないことがある。また、誘電体層111は、X線光電子分光法(XPS)を用いた分析の際に、N1sピークが検出されないことがある。また、誘電体層111に対するラマン分析の際に、1360cm-1~1380cm-1のラマンシフト及び1610cm-1~1630cm-1のラマンシフトのうち少なくとも1つでピークが検出されないことがある。
【0059】
一実施形態において、誘電体層111は、サイドマージン部141、142に含まれたポリドーパミンの含有量より少ない含有量のポリドーパミンを含むことができる。誘電体層111の機械的強度を改善するために誘電体層111にポリドーパミンを添加する場合、積層型電子部品100の電気的特性が劣化することを防止するためには、サイドマージン部141、142に含まれたポリドーパミンの含有量より少ない含有量のポリドーパミンを添加することが好ましい。誘電体層111がポリドーパミンを含む場合、ポリドーパミンは誘電体層111の第2結晶粒界GB2に配置されることができる。
【0060】
誘電体層111がポリドーパミンを含む場合、誘電体層111に対するラマン分析の際に、1360cm-1~1380cm-1のラマンシフトで第3ピークが検出され、1610cm-1~1630cm-1のラマンシフトで第4ピークが検出されることができる。一方、誘電体層111はサイドマージン部141、142に含まれたポリドーパミンの含有量より少ない含有量のポリドーパミンを含むため、上記第3ピークの強度は第1ピークXの強度より低いことがあり、上記第4ピークの強度は、第2ピークYの強度より低いことがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
図10~
図12は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法を概略的に示す斜視図である。以下、
図10~
図12を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100の製造方法の一例について説明する。
【0062】
まず、第1セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを含む第1セラミックスラリーを製造し、上記第1セラミックスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設ける。第1セラミック粉末は、十分な静電容量が得られる限り、特に限定されないが、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料等を使用することができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)等が挙げられる。
【0063】
次に、
図10に示すように、容量形成部Acを形成するための第1セラミックグリーンシート211a及び第2セラミックグリーンシート211bと、カバー部112、113を形成するための第1カバー部形成用シート212及び第2カバー部形成用シート213とを積層してセラミック積層体を製造することができる。
【0064】
第1セラミックグリーンシート211a上には第1内部電極121を形成するための第1内部電極パターン221が形成されることができ、第2セラミックグリーンシート211b上には第2内部電極122を形成するための第2内部電極パターン222が形成されることができる。具体的に、第1セラミックグリーンシート211a上に所定の間隔を置いて配置された複数の第1内部電極パターン221を形成することができる。複数の第1内部電極パターン221は帯状を有し、互いに平行に形成されることができる。また、第2セラミックグリーンシート211b上に所定の間隔を置いて配置された複数の第2内部電極パターン222を形成することができる。複数の第2内部電極パターン222は帯状を有し、互いに平行に形成されることができる。内部電極パターン221、222は、金属粉末、バインダー、溶剤などを含む内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを用いて印刷することにより形成することができる。
【0065】
一方、カバー部形成用シート212、213はセラミックグリーンシート211と類似の構成を有するが、カバー部形成用シート212、213上には内部電極パターンが形成されない。
【0066】
次いで、製造された上記セラミック積層体を圧着した後、切断線C1、C2に沿って切断する。具体的に、上記セラミック積層体は、第2方向と平行な複数の第1切断線C1、及び第3方向と平行な複数の第2切断線C2に沿って切断されることができる。切断線C1、C2は、第1内部電極パターン221及び第2内部電極パターン222を横切ることができる。
【0067】
これにより、
図11に示すセラミックチップ210を製造することができる。セラミックチップ210は、切断された第1内部電極パターン221及び第2内部電極パターン222が切断されたセラミックグリーンシート211を挟んで交互に配置されることができる。切断された第1内部電極パターン221及び第2内部電極パターン222は、セラミックチップ210の第3方向に対向する両面に露出することができる。
【0068】
次に、サイドマージン部形成用シート241、242を設ける。サイドマージン部形成用シート241、242は、上述したセラミックグリーンシート211と類似の方法で製造されるが、ドーパミンヒドロクロリド、第2セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを混合した第2セラミックスラリーを用いて製造することができる。サイドマージン部形成用シート241、242を形成するための第2セラミックスラリー全体100重量部に対するドーパミンヒドロクロリドの含有量は、0重量部超2重量部以下であることが好ましい。
【0069】
次に、
図12に示すように、セラミックチップ210の第3方向の両面にサイドマージン部形成用シート241、242を加圧密着させる。このとき、自己高分子化により生成されたポリドーパミン重合体は、サイドマージン部形成用シート241、242の接着力を向上させ、セラミックチップ210とサイドマージン部形成用シート241、242との間の剥離が発生する不良を防止することができる。
【0070】
その後、サイドマージン部用シート241、242が貼り付けられたセラミックチップ210を焼成して、
図2に示す本体110及びサイドマージン部141、142を形成することができる。焼成温度は特に限定する必要はないが、例えば、1100℃以上1300℃以下の温度で行われることができる。また、セラミックチップ210を焼成する前に、必要に応じて脱バインダー工程やバレル研磨工程などを行うこともできる。
【0071】
次に、外部電極131、132を形成する。まず、サイドマージン部141、142が形成された本体110を金属粉末及びガラスを含む導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することにより第1電極層を形成することができる。一方、上記第1電極層が金属及びガラスを含む第1層、並びに上記第1層上に配置され、金属及び樹脂を含む第2層を含む場合、上記第2層は金属粉末及び樹脂を含む導電性樹脂組成物を上記第1層上に塗布及び乾燥した後、250℃~550℃の温度で硬化熱処理することにより形成することができる。
【0072】
その後、上記第1電極層上に第2電極層を形成することができる。上記第2電極層を形成する方法は特に限定する必要はなく、例えば、電解めっき法及び/又は無電解めっき法等を用いることができる。
【0073】
但し、上述した製造方法は一例であり、積層型電子部品100の製造方法は上述した製造方法に限定されるものではない。
【0074】
(実験例)
<テープテスト>
上述の製造方法により、実施例及び比較例のサンプルチップを設けた。テープテストにおけるサンプルチップは、サイドマージン部形成用シートが貼り付けられた焼成前のセラミックチップ状態であった。実施例の場合、サイドマージン部形成用シートを形成するための第2セラミックスラリーに、上記第2セラミックスラリー全体100重量部に対してドーパミンヒドロクロリドを1重量部添加した。比較例の場合、サイドマージン部形成用シートを形成するための第2セラミックスラリーにドーパミンヒドロクロリドを添加しなかった。
【0075】
図13は、比較例と実施例に対するテープ(tape)テスト結果を示す表である。第1条件では、サイドマージン部形成用シートに、粘着力が1000gfのテープを第2方向と平行な方向に貼り付けた後、3000mm/sの剥離速度で上記テープを上記サイドマージン部形成用シートから剥離した。第2条件では、サイドマージン部形成用シートに、粘着力が2200gfのテープを第1方向と平行な方向に貼り付けた後、5000mm/sの剥離速度で上記テープを上記サイドマージン部形成用シートから剥離した。その後、比較例と実施例のサンプルチップのうち、サイドマージン部形成用シートがセラミックチップから剥離したサンプルチップの個数を測定した。
【0076】
図13を参照すると、第1条件において、比較例は、合計36個のサンプルチップのうち、サイドマージン部形成用シートの剥離が発生したサンプルチップが7個であったが、実施例はサイドマージン部形成用シートの剥離が発生したサンプルチップは存在しなかった。第2条件において、比較例は、合計80個のサンプルチップのうち、サイドマージン部形成用シートの剥離が発生したサンプルチップが42個であったが、実施例はサイドマージン部形成用シートの剥離が発生したサンプルチップが35個であった。これにより、実施例のサイドマージン部形成用シートは、ポリドーパミンを含むことにより、比較例に比べて接着力に優れることが確認できる。
【0077】
<弾性係数の測定>
次に、サイドマージン部形成用シートの弾性係数(elastic modulus)を測定した。弾性係数は、UTM(Universal Test Machine)を用いて測定した応力(stress)-変形率(strain)曲線グラフの線形勾配によって測定した。
【0078】
図14は、比較例と実施例の応力(stress)-変形率(strain)曲線を示すグラフである。
図14を参照すると、比較例のサイドマージン部形成用シートの弾性係数は36.7Mpaであり、実施例のサイドマージン部形成用シートの弾性係数は38.6Mpaであった。これにより、実施例のサイドマージン部形成用シートは、ポリドーパミンを含むことにより、比較例に比べて弾性係数が高いことが確認できる。
【0079】
<耐湿信頼性テスト>
上述の製造方法により、実施例及び比較例のサンプルチップを設けた。耐湿信頼性テストにおけるサンプルチップは、サイドマージン部形成用シートが貼り付けられたセラミックチップを焼成した後、外部電極まで形成した状態であった。その後、比較例及び実施例のサンプルチップのそれぞれ400個について、温度85℃、湿度85℃、3.75Vの電圧を8時間印加した後、絶縁抵抗IRの変化を測定した。
【0080】
図15は、(a)比較例の信頼性評価結果を示すグラフ及び(b)実施例の信頼性評価結果を示すグラフである。
図15を参照すると、比較例は、実施例とは異なり、絶縁抵抗IRが急激に変化するサンプルチップが多数存在することが確認できる。すなわち、実施例は、比較例に比べて耐湿信頼性に優れることが確認できる。これは、実施例の窒素ドープされた炭化ポリドーパミンが疎水性を有するため、窒素ドープされた炭化ポリドーパミンが結晶粒界に位置すると、水分浸透に対する障壁の役割を果たすことができるためである。
【0081】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定するものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0082】
また、「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記に提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態に説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【0083】
また、「第1、第2」などの表現は、ある構成要素と他の構成要素とを区分するために使用されるものであって、当該構成要素の順序及び/又は重要度などを限定しない。場合によっては、権利範囲を逸脱しない範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と命名されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
141、142:サイドマージン部
G1、G2:誘電体結晶粒
GB1、GB2:結晶粒界