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特開2025-16335水位予測モデル構築方法、水位予測モデル構築プログラム、予測水位データ出力方法、予測水位データ出力プログラム、テストデータ補間方法、テストデータ補間プログラム、水位予測的中率算出方法及び水位予測的中率算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016335
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】水位予測モデル構築方法、水位予測モデル構築プログラム、予測水位データ出力方法、予測水位データ出力プログラム、テストデータ補間方法、テストデータ補間プログラム、水位予測的中率算出方法及び水位予測的中率算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/10 20060101AFI20250124BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20250124BHJP
   E02B 3/00 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
G01W1/10 P
G01W1/00 Z
E02B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054188
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023119104
(32)【優先日】2023-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023198768
(32)【優先日】2023-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小井▲土▼ 亜希
(72)【発明者】
【氏名】置田 耕大
(72)【発明者】
【氏名】小松 知滉
(72)【発明者】
【氏名】小礒 康正
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】福島 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】大▲がんな▼ 洸太
(57)【要約】
【課題】本開示は、感潮域においても、非感潮域と同様に、非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルを用いることにより、水位予測モデルを容易に構築する。
【解決手段】本開示は、感潮域での水位に対して、河口域での干潮及び満潮の影響と、上流域での水位及び降雨の影響とは、ほぼ独立であることに着目した。そして、感潮域水位データEから潮位データTを減算し、感潮域水位データEを潮汐の影響を除去したみなし水位データに変換する。さらに、みなし水位データ、上流域水位データU及び雨量データRを用いて、非感潮域と同様に潮汐の影響を除去した水位予測モデルMを構築する。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感潮域の水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、(1)前記水位予測地点での当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す感潮域水位データと、(2)前記水位予測地点より下流にある潮位観測地点又は潮位予測地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの観測潮位又は予測潮位を示す潮位データと、を抽出する感潮域データ抽出ステップと、
前記訓練用データとして、(3)前記水位予測地点より上流地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す上流域水位データと、(4)前記水位予測地点及び前記水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻、当該時刻より過去及び当該時刻より将来のうちの少なくともいずれかの雨量を示す雨量データと、のうちの少なくともいずれかを抽出する上流域データ抽出ステップと、
前記感潮域水位データから前記潮位データを減算し、前記感潮域水位データを潮汐の影響を除去したみなし水位データに変換するみなし水位データ変換ステップと、
潮汐の影響を除去した前記みなし水位データと、前記上流域水位データ及び前記雨量データのうちの少なくともいずれかと、を用いて、前記水位予測地点での潮汐の影響を除去した水位を予測するための水位予測モデルを構築する水位予測モデル構築ステップと、
を備えることを特徴とする水位予測モデル構築方法。
【請求項2】
前記みなし水位データ変換ステップは、前記感潮域水位データから(前記潮位データ+前記潮位観測地点での観測基準面の標高のデータ)を減算し、又は、前記感潮域水位データから(前記潮位データ+前記潮位予測地点での潮位表基準面の標高のデータ)を減算し、前記感潮域水位データを潮汐の影響を除去した前記みなし水位データに変換する
ことを特徴とする、請求項1に記載の水位予測モデル構築方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水位予測モデル構築方法が備える各処理ステップを、コンピュータに実行させるための水位予測モデル構築プログラム。
【請求項4】
請求項1に記載の水位予測モデル構築方法により構築された前記水位予測モデルを用いて、前記水位予測地点での潮汐の影響を考慮した水位を予測するにあたり、
前記水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、前記みなし水位データ、前記上流域水位データ及び前記雨量データのうちの少なくともいずれかを前記水位予測モデルに入力し、前記水位予測地点での当該時刻の潮汐の影響を除去したみなし予測水位データを前記水位予測モデルから出力するみなし予測水位データ出力ステップと、
前記テストデータとして、前記水位予測地点より下流にある前記潮位予測地点での、当該時刻の予測潮位を示す予測潮位データを抽出する予測潮位データ抽出ステップと、
前記みなし予測水位データに前記予測潮位データを加算し、前記みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した予測水位データに変換する予測水位データ変換ステップと、
を備えることを特徴とする予測水位データ出力方法。
【請求項5】
前記予測水位データ変換ステップは、前記みなし予測水位データに(前記予測潮位データ+前記潮位予測地点での潮位表基準面の標高のデータ)を加算し、前記みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した前記予測水位データに変換する
ことを特徴とする、請求項4に記載の予測水位データ出力方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の予測水位データ出力方法が備える各処理ステップを、コンピュータに実行させるための予測水位データ出力プログラム。
【請求項7】
請求項4に記載の予測水位データ出力方法を用いるなかで、前記水位予測地点での前記感潮域水位データが欠測したときに、前記水位予測地点での欠測時刻の前記感潮域水位データを補間するにあたり、前記予測水位データ変換ステップが欠測時刻より任意時間前の予測時刻に変換した、前記水位予測地点での予測時刻より前記任意時間後の欠測時刻の前記予測水位データで補間するテストデータ補間ステップ、
を備えることを特徴とするテストデータ補間方法。
【請求項8】
前記みなし予測水位データ出力ステップは、前記上流地点での水位も予測するための前記水位予測モデルに、前記テストデータとして、前記上流域水位データ及び前記雨量データのうちの少なくともいずれかを入力し、前記上流地点での当該時刻の前記みなし予測水位データ(前記上流地点では、潮汐の影響を受けない)も出力し、
前記テストデータ補間ステップは、前記上流地点での前記上流域水位データが欠測したときに、前記上流地点での欠測時刻の前記上流域水位データを補間するにあたり、前記みなし予測水位データ出力ステップが欠測時刻より前記任意時間前の予測時刻に出力した、前記上流地点での予測時刻より前記任意時間後の欠測時刻の前記みなし予測水位データ(前記上流地点では、潮汐の影響を受けない)で補間する
ことを特徴とする、請求項7に記載のテストデータ補間方法。
【請求項9】
前記テストデータ補間ステップは、前記水位予測地点及び前記上流地点のうちの少なくともいずれかでの前記雨量データが欠測したときに、当該地点での欠測時刻の前記雨量データを補間するにあたり、当該地点での欠測時刻の雨量予報データで補間する
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載のテストデータ補間方法。
【請求項10】
前記テストデータ補間ステップは、前記潮位観測地点での前記潮位データが欠測したときに、前記潮位観測地点での欠測時刻の前記潮位データを補間するにあたり、前記潮位観測地点での欠測時刻の天文潮汐データ(潮汐予報データ)で補間する
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載のテストデータ補間方法。
【請求項11】
前記テストデータ補間ステップが設定している前記任意時間は、前記予測水位データ変換ステップが前記予測水位データに変換する時間間隔に等しい時間である
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載のテストデータ補間方法。
【請求項12】
請求項7又は8に記載のテストデータ補間方法が備える各処理ステップを、コンピュータに実行させるためのテストデータ補間プログラム。
【請求項13】
請求項1に記載の水位予測モデル構築方法が構築した前記水位予測モデルの検証のための検証用データとして、前記感潮域水位データ、前記潮位データ、前記上流域水位データ、過去観測雨量を示す前記雨量データ及び検証対象時刻より将来の予報雨量を示す前記雨量データを抽出し、前記感潮域水位データから前記潮位データを減算し、前記感潮域水位データを潮汐の影響を除去した前記みなし水位データに変換する検証用データ抽出ステップと、
前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための前記みなし水位データ、前記上流域水位データ、過去観測雨量を示す前記雨量データ及び予報雨量を示す前記雨量データを入力し、前記水位予測地点での当該複数時刻の潮汐の影響を除去したみなし予測水位データを出力し、前記みなし予測水位データに前記潮位データを加算し、前記みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した予測水位データに変換する予測水位データ出力ステップと、
前記水位予測地点での当該複数時刻の前記予測水位データのうちの、前記水位予測地点での当該複数時刻の観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、前記水位予測地点での水位の予測的中率として算出する水位予測的中率算出ステップと、
を順に備えることを特徴とする水位予測的中率算出方法。
【請求項14】
前記検証用データ抽出ステップは、前記検証用データとして、当該検証対象時刻より将来の将来観測雨量を示す前記雨量データも抽出し、
前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位を検証するための前記みなし水位データ、前記上流域水位データ、過去観測雨量を示す前記雨量データ及び将来観測雨量を示す前記雨量データを入力し、前記水位予測地点での水位の予測誤差の確率分布を算出し、前記水位予測的中率算出ステップでの前記観測水位データに対する前記予測水位データの誤差幅を設定する水位予測誤差幅設定ステップ、
を前記検証用データ抽出ステップと前記予測水位データ出力ステップとの間に備える
ことを特徴とする、請求項13に記載の水位予測的中率算出方法。
【請求項15】
前記水位予測的中率算出ステップは、前記水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、前記予測水位データ出力ステップでの予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、前記水位予測地点での水位の予測的中率を算出する
ことを特徴とする、請求項13又は14に記載の水位予測的中率算出方法。
【請求項16】
前記水位予測的中率算出ステップは、前記感潮域水位データ、前記潮位データ、予測潮位を示す予測潮位データ、前記上流域水位データ、過去観測雨量を示す前記雨量データ及び予報雨量を示す前記雨量データに基づく前記水位予測地点での予測対象時刻の水位の予測時に、前記水位予測地点での当該予測対象時刻の前記予測水位データとともに、前記水位予測地点での水位の予測的中率を出力する
ことを特徴とする、請求項13又は14に記載の水位予測的中率算出方法。
【請求項17】
請求項13又は14に記載の水位予測的中率算出方法が順に備える各処理ステップを、コンピュータに順に実行させるための水位予測的中率算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感潮域の水位予測地点での水位を学習するとともに予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューラルネットワーク等の機械学習モデルを用いて、河川域の水位予測地点での水位を学習するとともに予測する技術が、特許文献1等に開示されている。
【0003】
まず、水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、水位予測地点での当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す予測地点水位データと、水位予測地点より上流地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す上流域水位データと、水位予測地点及び水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻、当該時刻より過去及び当該時刻より将来のうちの少なくともいずれかの雨量を示す雨量データと、を抽出する。そして、予測地点水位データ、上流域水位データ及び雨量データを用いて、水位予測地点での水位を予測するための水位予測モデルを構築する。
【0004】
次に、訓練用データを用いて構築された水位予測モデルを用いて、水位予測地点での水位を予測する。つまり、水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、水位予測地点での当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す予測地点水位データと、水位予測地点より上流地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す上流域水位データと、水位予測地点及び水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻、当該時刻より過去及び当該時刻より将来のうちの少なくともいずれかの雨量を示す雨量データと、を水位予測モデルに入力する。そして、水位予測地点での当該時刻の予測水位データを水位予測モデルから出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-095240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の水位予測処理の課題を図1に示す。図1の上段では、干潮及び満潮の影響がない非感潮域での水位及び雨量の時間変化を示す。すると、非感潮域での雨量が増加したことに伴って、非感潮域での水位が上昇していることが分かる。図1の下段では、干潮及び満潮の影響がある感潮域での水位及び雨量の時間変化を示す。すると、感潮域での雨量が増加していなくても、感潮域での水位が上昇と下降とを繰り返していることが分かる。
【0007】
よって、感潮域においては、非感潮域と異なり、特許文献1の非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルを用いたとしても、水位の予測精度を向上させることができない。しかし、感潮域においても、非感潮域と同様に、特許文献1の非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルを用いてもよいならば、水位予測モデルを容易に構築することができる。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、感潮域においても、非感潮域と同様に、非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルを用いることにより、水位予測モデルを容易に構築するとともに、水位の予測精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、感潮域での水位に対して、河口域での干潮及び満潮の影響と、上流域での水位及び降雨の影響とは、ほぼ独立であることに着目した。そして、感潮域水位データから潮位データを減算し、感潮域水位データを潮汐の影響を除去したみなし水位データに変換する。さらに、みなし水位データ、上流域水位データ及び雨量データを用いて、非感潮域と同様に潮汐の影響を除去した水位予測モデルを構築する。
【0010】
具体的には、本開示は、感潮域の水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、(1)前記水位予測地点での当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す感潮域水位データと、(2)前記水位予測地点より下流にある潮位観測地点又は潮位予測地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの観測潮位又は予測潮位を示す潮位データと、を抽出する感潮域データ抽出ステップと、前記訓練用データとして、(3)前記水位予測地点より上流地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す上流域水位データと、(4)前記水位予測地点及び前記水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻、当該時刻より過去及び当該時刻より将来のうちの少なくともいずれかの雨量を示す雨量データと、のうちの少なくともいずれかを抽出する上流域データ抽出ステップと、前記感潮域水位データから前記潮位データを減算し、前記感潮域水位データを潮汐の影響を除去したみなし水位データに変換するみなし水位データ変換ステップと、潮汐の影響を除去した前記みなし水位データと、前記上流域水位データ及び前記雨量データのうちの少なくともいずれかと、を用いて、前記水位予測地点での潮汐の影響を除去した水位を予測するための水位予測モデルを構築する水位予測モデル構築ステップと、を備えることを特徴とする水位予測モデル構築方法である。
【0011】
この構成によれば、感潮域においても、非感潮域と同様に、非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルを用いることにより、水位予測モデルを容易に構築することができる。
【0012】
また、本開示は、前記みなし水位データ変換ステップは、前記感潮域水位データから(前記潮位データ+前記潮位観測地点での観測基準面の標高のデータ)を減算し、又は、前記感潮域水位データから(前記潮位データ+前記潮位予測地点での潮位表基準面の標高のデータ)を減算し、前記感潮域水位データを潮汐の影響を除去した前記みなし水位データに変換することを特徴とする水位予測モデル構築方法である。
【0013】
この構成によれば、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、の差分を考慮したうえで、潮汐の影響をみなし水位データからほぼ完全に除去することができる。
【0014】
また、本開示は、以上に記載の水位予測モデル構築方法が備える各処理ステップを、コンピュータに実行させるための水位予測モデル構築プログラムである。
【0015】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0016】
前記課題を解決するために、感潮域での水位に対して、河口域での干潮及び満潮の影響と、上流域での水位及び降雨の影響とは、ほぼ独立であることに着目した。そして、みなし水位データ、上流域水位データ及び雨量データを水位予測モデルに入力し、潮汐の影響を除去したみなし予測水位データを水位予測モデルから出力する。さらに、みなし予測水位データに潮位データを加算し、みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した予測水位データに変換する。
【0017】
具体的には、本開示は、以上に記載の水位予測モデル構築方法により構築された前記水位予測モデルを用いて、前記水位予測地点での潮汐の影響を考慮した水位を予測するにあたり、前記水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、前記みなし水位データ、前記上流域水位データ及び前記雨量データのうちの少なくともいずれかを前記水位予測モデルに入力し、前記水位予測地点での当該時刻の潮汐の影響を除去したみなし予測水位データを前記水位予測モデルから出力するみなし予測水位データ出力ステップと、前記テストデータとして、前記水位予測地点より下流にある前記潮位予測地点での、当該時刻の予測潮位を示す予測潮位データを抽出する予測潮位データ抽出ステップと、前記みなし予測水位データに前記予測潮位データを加算し、前記みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した予測水位データに変換する予測水位データ変換ステップと、を備えることを特徴とする予測水位データ出力方法である。
【0018】
この構成によれば、感潮域においても、非感潮域と同様に、非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルを用いたとしても、水位の予測精度を向上させることができる。
【0019】
また、本開示は、前記予測水位データ変換ステップは、前記みなし予測水位データに(前記予測潮位データ+前記潮位予測地点での潮位表基準面の標高のデータ)を加算し、前記みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した前記予測水位データに変換することを特徴とする予測水位データ出力方法である。
【0020】
この構成によれば、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、の差分を考慮したうえで、潮汐の影響を予測水位データ中でほぼ完全に考慮することができる。
【0021】
また、本開示は、以上に記載の予測水位データ出力方法が備える各処理ステップを、コンピュータに実行させるための予測水位データ出力プログラムである。
【0022】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0023】
さらなる課題を解決するために、テストデータとして、水位予測地点での感潮域水位データが欠測したときに、水位予測地点での欠測時刻の感潮域水位データを補間するにあたり、欠測時刻より任意時間前の予測時刻に降雨・実水位状況を反映させたうえで変換した、水位予測地点での予測時刻より任意時間後の欠測時刻の予測水位データで補間することとした。
【0024】
具体的には、本開示は、以上に記載の予測水位データ出力方法を用いるなかで、前記水位予測地点での前記感潮域水位データが欠測したときに、前記水位予測地点での欠測時刻の前記感潮域水位データを補間するにあたり、前記予測水位データ変換ステップが欠測時刻より任意時間前の予測時刻に変換した、前記水位予測地点での予測時刻より前記任意時間後の欠測時刻の前記予測水位データで補間するテストデータ補間ステップ、を備えることを特徴とするテストデータ補間方法である。
【0025】
この構成によれば、水位予測地点での水位テストデータが欠測したときでも、降雨・実水位状況を反映させたうえで、水位予測地点での水位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0026】
また、本開示は、前記みなし予測水位データ出力ステップは、前記上流地点での水位も予測するための前記水位予測モデルに、前記テストデータとして、前記上流域水位データ及び前記雨量データのうちの少なくともいずれかを入力し、前記上流地点での当該時刻の前記みなし予測水位データ(前記上流地点では、潮汐の影響を受けない)も出力し、前記テストデータ補間ステップは、前記上流地点での前記上流域水位データが欠測したときに、前記上流地点での欠測時刻の前記上流域水位データを補間するにあたり、前記みなし予測水位データ出力ステップが欠測時刻より前記任意時間前の予測時刻に出力した、前記上流地点での予測時刻より前記任意時間後の欠測時刻の前記みなし予測水位データ(前記上流地点では、潮汐の影響を受けない)で補間することを特徴とするテストデータ補間方法である。
【0027】
この構成によれば、水位予測地点より上流地点での水位テストデータが欠測したときでも、降雨・実水位状況を反映させたうえで、水位予測地点より上流地点での水位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0028】
また、本開示は、前記テストデータ補間ステップは、前記水位予測地点及び前記上流地点のうちの少なくともいずれかでの前記雨量データが欠測したときに、当該地点での欠測時刻の前記雨量データを補間するにあたり、当該地点での欠測時刻の雨量予報データで補間することを特徴とするテストデータ補間方法である。
【0029】
この構成によれば、水位予測地点及び上流地点での雨量テストデータが欠測したときでも、雨量予報データを反映させたうえで、水位予測地点及び上流地点での雨量テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0030】
また、本開示は、前記テストデータ補間ステップは、前記潮位観測地点での前記潮位データが欠測したときに、前記潮位観測地点での欠測時刻の前記潮位データを補間するにあたり、前記潮位観測地点での欠測時刻の天文潮汐データ(潮汐予報データ)で補間することを特徴とするテストデータ補間方法である。
【0031】
この構成によれば、潮位観測地点での潮位テストデータが欠測したときでも、天文潮汐データ(潮汐予報データ)を反映させたうえで、潮位観測地点での潮位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0032】
また、本開示は、前記テストデータ補間ステップが設定している前記任意時間は、前記予測水位データ変換ステップが前記予測水位データに変換する時間間隔に等しい時間であることを特徴とするテストデータ補間方法である。
【0033】
この構成によれば、欠測時刻より短時間(水位予測の時間間隔)前の予測時刻に、降雨・実水位状況を反映させたうえで変換した、水位予測地点での予測時刻より短時間(水位予測の時間間隔)後の欠測時刻の、予測水位データで補間することができる。
【0034】
また、本開示は、以上に記載のテストデータ補間方法が備える各処理ステップを、コンピュータに実行させるためのテストデータ補間プログラムである。
【0035】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0036】
実運用上、テストデータとして、感潮域水位データ、潮位データ、予測潮位データ、上流域水位データ、「過去観測」雨量を示す雨量データ及び「予報」雨量を示す雨量データを抽出する。しかし、「予報」雨量を示す雨量データは、「将来観測」雨量を示す雨量データと比べて、精度が低いため、「予測」水位データは、「観測」水位データと比べて、大きく外れることがある。
【0037】
前記課題を解決するために、検証段階では、検証用データとして、感潮域水位データ、潮位データ、上流域水位データ、「過去観測」雨量を示す雨量データ及び「将来観測」雨量を示す雨量データを抽出し、水位の予測誤差の確率分布を算出し、観測水位データに対する予測水位データの誤差幅を設定する。そして、検証用データとして、「将来観測」雨量を示す雨量データを「予報」雨量を示す雨量データに置き換え、予測水位データのうちの観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、水位の予測的中率として算出する。
【0038】
予測段階では、テストデータとして、実運用上は感潮域水位データ、潮位データ、予測潮位データ、上流域水位データ、「過去観測」雨量を示す雨量データ及び「予報」雨量を示す雨量データを抽出し、予測水位データとともに、水位の予測的中率を出力する。ここで、各発令基準毎に、及び/又は、各N時間後予測毎に、水位の予測的中率を出力する。
【0039】
具体的には、本開示は、以上に記載の水位予測モデル構築方法が構築した前記水位予測モデルの検証のための検証用データとして、前記感潮域水位データ、前記潮位データ、前記上流域水位データ、過去観測雨量を示す前記雨量データ及び検証対象時刻より将来の予報雨量を示す前記雨量データを抽出し、前記感潮域水位データから前記潮位データを減算し、前記感潮域水位データを潮汐の影響を除去した前記みなし水位データに変換する検証用データ抽出ステップと、前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための前記みなし水位データ、前記上流域水位データ、過去観測雨量を示す前記雨量データ及び予報雨量を示す前記雨量データを入力し、前記水位予測地点での当該複数時刻の潮汐の影響を除去したみなし予測水位データを出力し、前記みなし予測水位データに前記潮位データを加算し、前記みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した予測水位データに変換する予測水位データ出力ステップと、前記水位予測地点での当該複数時刻の前記予測水位データのうちの、前記水位予測地点での当該複数時刻の観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、前記水位予測地点での水位の予測的中率として算出する水位予測的中率算出ステップと、を順に備えることを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0040】
この構成によれば、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、テストデータとして、「予報」雨量を示す雨量データを抽出するときでも、検証段階において、水位の予測的中率を算出することにより、予測水位データの信頼性を可視化することができる。
【0041】
また、本開示は、前記検証用データ抽出ステップは、前記検証用データとして、当該検証対象時刻より将来の将来観測雨量を示す前記雨量データも抽出し、前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位を検証するための前記みなし水位データ、前記上流域水位データ、過去観測雨量を示す前記雨量データ及び将来観測雨量を示す前記雨量データを入力し、前記水位予測地点での水位の予測誤差の確率分布を算出し、前記水位予測的中率算出ステップでの前記観測水位データに対する前記予測水位データの誤差幅を設定する水位予測誤差幅設定ステップ、を前記検証用データ抽出ステップと前記予測水位データ出力ステップとの間に備えることを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0042】
この構成によれば、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、検証段階において、水位の予測誤差の確率分布を算出し、観測水位データに対する予測水位データの誤差幅を設定し、水位の予測的中率を算出することができる。
【0043】
また、本開示は、前記水位予測的中率算出ステップは、前記水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、前記予測水位データ出力ステップでの予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、前記水位予測地点での水位の予測的中率を算出することを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0044】
この構成によれば、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、テストデータとして、「予報」雨量を示す雨量データを抽出するときでも、検証段階において、水位の予測的中率を算出することにより、各発令基準の到達判断を支援することができる。
【0045】
また、本開示は、前記水位予測的中率算出ステップは、前記感潮域水位データ、前記潮位データ、予測潮位を示す予測潮位データ、前記上流域水位データ、過去観測雨量を示す前記雨量データ及び予報雨量を示す前記雨量データに基づく前記水位予測地点での予測対象時刻の水位の予測時に、前記水位予測地点での当該予測対象時刻の前記予測水位データとともに、前記水位予測地点での水位の予測的中率を出力することを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0046】
この構成によれば、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、テストデータとして、「予報」雨量を示す雨量データを抽出するときでも、予測段階において、水位の予測的中率を出力することにより、予測水位データの信頼性を可視化することができる。
【0047】
また、本開示は、以上に記載の水位予測的中率算出方法が順に備える各処理ステップを、コンピュータに順に実行させるための水位予測的中率算出プログラムである。
【0048】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0049】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0050】
このように、本開示は、感潮域においても、非感潮域と同様に、非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルを用いることにより、水位予測モデルを容易に構築するとともに、水位の予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】従来技術の水位予測処理の課題を示す図である。
図2】本開示の水位予測装置の構成を示す図である。
図3】本開示の水位予測処理の手順を示す図である。
図4】本開示の水位予測モデルの訓練段階の処理を示す図である。
図5】本開示のみなし水位データへの変換処理の具体例を示す図である。
図6】本開示の水位予測モデルのテスト段階の処理を示す図である。
図7】本開示の予測水位データへの変換処理の具体例を示す図である。
図8】従来技術及び本開示の水位予測処理の実例を示す図である。
図9】従来技術及び本開示の水位予測処理の実例を示す図である。
図10】比較例の水位テストデータ補間処理の具体例を示す図である。
図11】本開示の水位予測装置の構成を示す図である。
図12】本開示のテストデータ補間処理の手順を示す図である。
図13】本開示の水位テストデータ補間処理の具体例を示す図である。
図14】本開示の雨量テストデータ補間処理の具体例を示す図である。
図15】本開示の潮位テストデータ補間処理の具体例を示す図である。
図16】本開示の水位予測装置の構成を示す図である。
図17】本開示の水位予測的中率算出処理の手順を示す図である。
図18】本開示の水位予測誤差幅設定処理の具体例を示す図である。
図19】本開示の水位予測的中率算出処理の具体例を示す図である。
図20】本開示の水位予測的中率出力処理の実例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0053】
(本開示の水位予測処理の概要)
本開示の水位予測装置の構成を図2に示す。本開示の水位予測処理の手順を図3に示す。ニューラルネットワーク等の機械学習モデルを用いて、感潮域の水位予測地点での水位を学習するとともに予測する技術が、本開示の以下の説明で開示される。
【0054】
水位予測装置Wは、水位予測モデル構築方法(ステップS1~S4)を実行するために、訓練用データ抽出部1、みなし水位データ変換部2及び水位予測モデル構築部3を備え、水位予測モデルMを構築し、図3に示した水位予測モデル構築プログラム(ステップS1~S4)を、コンピュータにインストールすることにより、実現することができる。
【0055】
水位予測装置Wは、予測水位データ出力方法(ステップS5~S8)を実行するために、テストデータ抽出部4及び予測水位データ変換部5を備え、構築された水位予測モデルMを適用し、図3に示した予測水位データ出力プログラム(ステップS5~S8)を、コンピュータにインストールすることにより、実現することができる。
【0056】
本開示では、感潮域での水位に対して、河口域での干潮及び満潮の影響と、上流域での水位及び降雨の影響とは、ほぼ独立であることに着目した。つまり、河口域での干潮及び満潮に対して、河口域での台風又は低気圧の影響は多少存在すると考えられるが、上流域での海水と比べてはるかに少量の降雨の影響はほぼ存在しないと考えられる。
【0057】
そこで、水位予測モデル構築方法(ステップS1~S4)では、感潮域水位データEから潮位データTを減算し、感潮域水位データEを潮汐の影響を除去したみなし水位データに変換する。さらに、みなし水位データ、上流域水位データU及び雨量データRを用いて、非感潮域と同様に潮汐の影響を除去した水位予測モデルMを構築する。
【0058】
一方で、予測水位データ出力方法(ステップS5~S8)では、みなし水位データ、上流域水位データU及び雨量データRを水位予測モデルMに入力し、潮汐の影響を除去したみなし予測水位データを水位予測モデルMから出力する。さらに、みなし予測水位データに予測潮位データAを加算し、みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した予測水位データPに変換する。
【0059】
以下では、最初に、本開示の水位予測モデルMの訓練段階の処理(ステップS1~S4)を説明し、次に、本開示の水位予測モデルMのテスト段階の処理(ステップS5~S8)を説明し、最後に、従来技術及び本開示の水位予測処理の実例を説明する。
【0060】
(本開示の水位予測モデルの訓練段階の処理)
本開示の水位予測モデルMの訓練段階の処理(ステップS1~S4)を図4に示す。本開示のみなし水位データへの変換処理の具体例を図5に示す。
【0061】
訓練用データ抽出部1は、感潮域の水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、水位予測地点での当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す感潮域水位データEと、水位予測地点より下流にある潮位観測地点又は潮位予測地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの観測潮位又は予測潮位を示す潮位データTと、を抽出する(ステップS1)。
【0062】
訓練用データ抽出部1は、感潮域の水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、水位予測地点より上流地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す上流域水位データUと、水位予測地点及び水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻、当該時刻より過去及び当該時刻より将来のうちの少なくともいずれかの雨量を示す雨量データRと、を抽出する(ステップS2)。ただし、訓練用データ抽出部1は、上流域水位データUと、雨量データRと、のうちの、いずれか一方のみを抽出してもよく、いずれもの両方を抽出してもよい。
【0063】
ここで、訓練用データ抽出部1は、訓練用データとして、感潮域の水位予測地点での洪水時の水位と比べて、相関が高い期間の雨量及び水位のデータを抽出することが望ましく、相関が低い期間の雨量及び水位のデータを棄却することが望ましい。
【0064】
例えば、訓練用データ抽出部1は、訓練用データとして、(1)水位不変動期間を棄却する水位ピーク判別閾値を設定したうえで、水位のデータの抽出期間を選択してもよく、(2)水位不変動期間を棄却する水位ピーク抽出幅を設定したうえで、水位のデータの抽出期間を選択してもよく、(3)水位上昇・下降期間を抽出する所定水位期間を設定したうえで、水位のデータの抽出期間を選択してもよく、(4)降雨が水位予測地点に到達する時間を考慮した所定雨量期間を設定したうえで、雨量のデータの抽出期間を選択してもよく、(5)降雨が土壌内又は貯水池等から河川へと流出する時間を考慮した所定累加期間を設定したうえで、雨量のデータの抽出期間を選択してもよい(特許文献1を参照)。
【0065】
みなし水位データ変換部2は、感潮域水位データEから潮位データTを減算し、感潮域水位データEを潮汐の影響を除去したみなし水位データに変換する(ステップS3)。
【0066】
水位予測モデル構築部3は、潮汐の影響を除去したみなし水位データと、上流域水位データU及び雨量データRと、を用いて、感潮域の水位予測地点での潮汐の影響を除去した水位を予測するための水位予測モデルMを構築する(ステップS4)。
【0067】
図4の最右欄では、標高0mは、東京湾平均海面等の標高である。図4の最左欄及びその隣接欄では、水位観測所の観測基準面の標高は、標高0mである。図4の最右欄の隣接欄では、検潮所の観測基準面又は潮位表基準面の標高は、標高0mであるとは限らない。そこで、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、をソフトウェア上で等しく揃える。なお、予測潮位は、太陽、地球及び月の位置並びに海底の地形のみを考慮しているが、観測潮位は、河口域での台風又は低気圧もさらに考慮しており高精度である。
【0068】
図4の最右欄の隣接欄から最左欄の隣接欄へと、みなし水位データ変換部2は、感潮域水位データEから(潮位データT+潮位観測地点での観測基準面の標高のデータ=標高補正後の潮位データ)を減算し、又は、感潮域水位データEから(潮位データT+潮位予測地点での潮位表基準面の標高のデータ=標高補正後の潮位データ)を減算し、感潮域水位データEを潮汐の影響を除去したみなし水位データに変換する(ステップS3)。
【0069】
図4の最左欄及びその隣接欄では、水位予測モデル構築部3は、ステップS3で感潮域水位データEから変換されたみなし水位データ、上流域水位データU及び雨量データRを水位予測モデルMに入力したときに、潮汐の影響を除去したみなし水位データを水位予測モデルMから出力するように、感潮域の水位予測地点での潮汐の影響を除去した水位を予測するための水位予測モデルMを構築する(ステップS4)。
【0070】
図5では、感潮域水位データE、潮位データT、みなし水位データ及び雨量データRの時間変化を示す。すると、雨量データRが増加したことに伴って、感潮域水位データEが上昇しているとともに、雨量データRが増加していなくても、感潮域水位データEが上昇と下降とを繰り返していることが分かる。そして、潮位データTは、雨量データRとほぼ独立して、上昇と下降とを繰り返していることが分かる。さらに、みなし水位データは、潮汐の影響をほぼ完全に除去されており、雨量の影響のみを維持していることが分かる。
【0071】
ここで、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、をソフトウェア上で等しく揃えずに、水位予測モデルMを構築することもできる(本開示の水位予測モデルMのテスト段階の処理では、みなし予測水位データを予測水位データPに逆変換するため)。しかし、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、をソフトウェア上で等しく揃えれば、水位予測モデルMを高精度に構築することができる。
【0072】
このように、感潮域においても、非感潮域と同様に、非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルMを用いることにより、水位予測モデルMを容易に構築することができる。そして、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、の差分を考慮したうえで、潮汐の影響をみなし水位データからほぼ完全に除去することができる。
【0073】
(本開示の水位予測モデルのテスト段階の処理)
本開示の水位予測モデルMのテスト段階の処理(ステップS5~S8)を図6に示す。本開示の予測水位データへの変換処理の具体例を図7に示す。
【0074】
テストデータ抽出部4は、感潮域の水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、水位予測地点での当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す感潮域水位データEと、水位予測地点より下流にある潮位観測地点又は潮位予測地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの観測潮位又は予測潮位を示す潮位データTと、水位予測地点より上流地点での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位を示す上流域水位データUと、水位予測地点及び水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻、当該時刻より過去及び当該時刻より将来のうちの少なくともいずれかの雨量を示す雨量データRと、を抽出する(ステップS5)。ただし、テストデータ抽出部4は、上流域水位データUと、雨量データRと、のうちの、いずれか一方のみを抽出してもよく、いずれもの両方を抽出してもよい。
【0075】
テストデータ抽出部4は、感潮域の水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、水位予測地点より下流にある潮位予測地点での、当該時刻の予測潮位を示す予測潮位データAを抽出する(ステップS7、当該時刻の観測潮位は未観測)。
【0076】
水位予測モデルMは、感潮域の水位予測地点での潮汐の影響を考慮した水位を予測する前に、みなし水位データ、上流域水位データU及び雨量データRを入力し(ステップS5)、水位予測地点での当該時刻の潮汐の影響を除去したみなし予測水位データを出力する(ステップS6)。
【0077】
予測水位データ変換部5は、みなし予測水位データに予測潮位データAを加算し、みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した予測水位データPに変換する(ステップS8、当該時刻の観測潮位は未観測)。
【0078】
図6の最右欄では、標高0mは、東京湾平均海面等の標高である。図6の最左欄及びその隣接欄では、水位観測所の観測基準面の標高は、標高0mである。図6の最右欄の隣接欄では、検潮所の潮位表基準面の標高は、標高0mであるとは限らない。そこで、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、をソフトウェア上で等しく揃える。なお、当該時刻の予測潮位は、予測可能であるが、当該時刻の観測潮位は、未観測である。
【0079】
図6の最左欄及びその隣接欄では、水位予測モデルMは、感潮域の水位予測地点での潮汐の影響を考慮した水位を予測する前に、みなし水位データ、上流域水位データU及び雨量データRを入力し(ステップS5)、水位予測地点での当該時刻の潮汐の影響を除去したみなし予測水位データを出力する(ステップS6)。
【0080】
図6の最右欄の隣接欄から最左欄の隣接欄へと、予測水位データ変換部5は、みなし予測水位データに(予測潮位データA+潮位予測地点での潮位表基準面の標高のデータ=標高補正後の予測潮位データ)を加算し、みなし予測水位データを潮汐の影響を考慮した予測水位データPに変換する(ステップS8、当該時刻の観測潮位は未観測)。
【0081】
図7では、みなし予測水位データ、予測潮位データA、予測水位データP及び雨量データRの時間変化を示す。すると、雨量データRが増加したことに伴って、みなし予測水位データが上昇しているものの、雨量データRが増加していなければ、みなし予測水位データが上昇と下降とを繰り返していないことが分かる。そして、予測潮位データAは、雨量データRとほぼ独立して、上昇と下降とを繰り返していることが分かる。さらに、予測水位データPは、雨量の影響及び潮汐の影響をほぼ完全に考慮されていることが分かる。
【0082】
ここで、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、をソフトウェア上で等しく揃えずに、水位予測モデルMを構築することもできる(本開示の水位予測モデルMのテスト段階の処理では、みなし予測水位データを予測水位データPに逆変換するため)。しかし、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、をソフトウェア上で等しく揃えれば、水位予測モデルMを高精度に構築することができる。
【0083】
このように、感潮域においても、非感潮域と同様に、非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルMを用いたとしても、水位の予測精度を向上させることができる。そして、水位観測所の基準面の標高と、検潮所の基準面の標高と、の差分を考慮したうえで、潮汐の影響を予測水位データP中でほぼ完全に考慮することができる。
【0084】
(従来技術及び本開示の水位予測処理の実例)
従来技術及び本開示の水位予測処理の実例を図8、9に示す。従来技術では、潮汐の影響を維持した予測地点水位データと、上流域水位データU及び雨量データRと、を用いて、水位予測モデルMを構築する。本開示では、潮汐の影響を除去したみなし水位データと、上流域水位データU及び雨量データRと、を用いて、水位予測モデルMを構築する。
【0085】
図8では、非降雨時における、実水位データ、予測潮位データA(6時間後の予測結果)、予測水位データP(6時間後の予測結果)及び雨量データRの時間変化を示す。すると、従来技術では、予測水位データPは、実水位データと大きく異なることが分かる。一方で、本開示では、予測水位データPは、実水位データとほぼ一致していることが分かる。
【0086】
図9では、降雨時における、実水位データ、予測潮位データA(6時間後の予測結果)、予測水位データP(6時間後の予測結果)及び雨量データRの時間変化を示す。すると、従来技術では、予測水位データPは、実水位データと大きく異なるとともに、実水位データと異なり氾濫危険水位に到達していないことが分かる。一方で、本開示では、予測水位データPは、実水位データとほぼ一致しているとともに、実水位データと比べて氾濫危険水位に数時間程度前に到達しており、避難誘導の指示発令を可能とすることが分かる。
【0087】
(比較例の水位テストデータ補間処理の手順)
ところで、テストデータとして、水位予測地点での感潮域水位データEが欠測することがあり得る。これは、水位観測所のテレメータからの入力データについて、符号エラーが検出されることがあり、正常な受信がされないからである。すると、テストデータを水位予測モデルMに入力することができず、水位予測地点での水位を予測することができない。そこで、水位予測地点での感潮域水位データEを補間することが考えられる。
【0088】
比較例の水位テストデータ補間処理の具体例を図10に示す。水位予測地点での感潮域水位データEが欠測したときに、水位予測地点での欠測時刻の感潮域水位データEを補間するにあたり、水位観測所のテレメータが欠測時刻より前の時刻及び/又は後の時刻に送信した、水位予測地点での欠測時刻より前の時刻及び/又は後の時刻の感潮域水位データEを参照する。
【0089】
図10の第1段では、現時刻の30分後の12時30分の水位を予測するために、現時刻の1時間前の11時の水位データ3.0mと、現時刻の30分前の11時30分の水位データ4.0mと、現時刻である12時の水位データ5.0mと、をテストデータとして抽出する。図10の第2~4段では、テストデータとして、一部の水位データが欠測する。
【0090】
図10の第2段では、11時の水位データ3.0mと、11時30分の水位データ4.0mと、が欠測しており、12時の水位データ5.0mが観測されている。そこで、11時の水位データ3.0mと、11時30分の水位データ4.0mと、として、12時の水位データ5.0mを時間シフトして、水位データ5.0mを大きく誤って補間する。
【0091】
図10の第3段では、11時30分の水位データ4.0mと、12時の水位データ5.0mと、が欠測しており、11時の水位データ3.0mが観測されている。そこで、11時30分の水位データ4.0mと、12時の水位データ5.0mと、として、11時の水位データ3.0mを時間シフトして、水位データ3.0mを大きく誤って補間する。
【0092】
図10の第4段では、11時30分の水位データ4.0mが欠測しており、11時の水位データ3.0mと、12時の水位データ5.0mと、が観測されている。そこで、11時30分の水位データ4.0mとして、11時の水位データ3.0mと、12時の水位データ5.0mと、の間の線形補間をして、水位データ4.0mをほぼ正しく補間する。
【0093】
図10の第4段では、欠測時刻より前の時刻及び後の時刻の両方の感潮域水位データEを参照するため、降雨状況が反映される。図10の第2、3段では、欠測時刻より前の時刻及び後の時刻の一方の感潮域水位データEを参照するため、降雨状況が反映されない。
【0094】
(本開示の水位テストデータ補間処理の手順)
本開示の水位予測装置の構成(特に、テストデータ補間処理)を図11にも示す。本開示のテストデータ補間処理の手順を図12に示す。本開示の水位テストデータ補間処理の具体例を図13に示す。水位予測装置Wは、テストデータ補間部6も備え、図12に示したテストデータ補間プログラムもコンピュータにインストールし実現することができる。
【0095】
本開示の水位テストデータ補間処理(特に、ステップS14)を行なうにあたり、上流地点での水位も予測するための水位予測モデルMは、テストデータとして、上流域水位データU及び雨量データRのうちの少なくともいずれかを入力し、上流地点での当該時刻のみなし予測水位データ(上流地点では、潮汐の影響を受けない)も出力する。
【0096】
テストデータ補間部6は、水位予測地点での感潮域水位データEが欠測したときに(ステップS11)、水位予測地点での欠測時刻の感潮域水位データEを補間する(ステップS12)。
【0097】
ここで、テストデータ補間部6は、予測水位データ変換部5が欠測時刻より任意時間前の予測時刻に変換した、水位予測地点での予測時刻より任意時間後の欠測時刻の予測水位データPで補間する(ステップS12)。
【0098】
なお、テストデータ補間部6が設定している任意時間は、予測水位データ変換部5が予測水位データPに変換する時間間隔に等しい時間である。つまり、短時間後の雨量予報は高精度であり、テストデータ補間部6が設定している任意時間は短時間である。
【0099】
テストデータ補間部6は、上流地点での上流域水位データUが欠測したときに(ステップS13)、上流地点での欠測時刻の上流域水位データUを補間する(ステップS14)。
【0100】
ここで、テストデータ補間部6は、水位予測モデルMが欠測時刻より任意時間前の予測時刻に出力した、上流地点での予測時刻より任意時間後の欠測時刻のみなし予測水位データ(上流地点では、潮汐の影響を受けない)で補間する(ステップS14)。
【0101】
なお、上流地点での上流域水位データUが欠測したときには、水位予測地点での感潮域水位データEが欠測していなくても、水位予測地点での予測水位データPを出力できないため、上流地点での欠測時刻の上流域水位データUを、上流地点でのみなし予測水位データ(上流地点では、潮汐の影響を受けない)で補間する。
【0102】
また、テストデータ補間部6が設定している任意時間は、水位予測モデルMがみなし予測水位データを出力する時間間隔に等しい時間である。つまり、短時間後の雨量予報は高精度であり、テストデータ補間部6が設定している任意時間は短時間である。
【0103】
テストデータ抽出部4は、水位予測モデルMに、テストデータ(テストデータ補間部6が補間した、欠測時刻の感潮域水位データE及び上流域水位データUを含み、欠測時刻の雨量データR及び潮位データTは後述)を入力する(ステップS19)。予測水位データ変換部5は、水位予測モデルMから、水位予測地点での当該時刻の予測水位データPを出力し、水位予測モデルMは、上流地点での当該時刻のみなし予測水位データ(上流地点では、潮汐の影響を受けない)を出力する(ステップS20)。
【0104】
図13の第1段では、現時刻の30分後の12時30分の水位を予測するために、現時刻の1時間前の11時の水位データ3.0mと、現時刻の30分前の11時30分の水位データ4.0mと、現時刻である12時の水位データ5.0mと、をテストデータとして抽出する。図13の第3~5段では、テストデータとして、一部の水位データが欠測する。
【0105】
図13の第2段では、その時々の現時刻の30分後の水位を予測した結果として、現時刻の1時間前の11時の予測水位データ2.9mと、現時刻の30分前の11時30分の予測水位データ3.9mと、現時刻である12時の予測水位データ4.8mと、を出力する。図13の第2段では、テストデータ補間部6が設定している任意時間は30分である。
【0106】
図13の第3段では、11時の水位データ3.0mと、11時30分の水位データ4.0mと、が欠測しており、12時の水位データ5.0mが観測されている。そこで、11時の水位データ3.0mと、11時30分の水位データ4.0mと、として、11時の予測水位データ2.9mと、11時30分の予測水位データ3.9mと、でそれぞれ補間して、水位データ2.9m及び3.9mをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0107】
図13の第4段では、11時30分の水位データ4.0mと、12時の水位データ5.0mと、が欠測しており、11時の水位データ3.0mが観測されている。そこで、11時30分の水位データ4.0mと、12時の水位データ5.0mと、として、11時30分の予測水位データ3.9mと、12時の予測水位データ4.8mと、でそれぞれ補間して、水位データ3.9m及び4.8mをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0108】
図13の第5段では、11時30分の水位データ4.0mが欠測しており、11時の水位データ3.0mと、12時の水位データ5.0mと、が観測されている。そこで、11時30分の水位データ4.0mとして、11時30分の予測水位データ3.9mで補間して、水位データ3.9mをほぼ正しく補間する。
【0109】
このように、水位予測地点での水位テストデータが欠測したときでも、降雨・実水位状況を反映させたうえで、水位予測地点での水位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0110】
そして、水位予測地点より上流地点での水位テストデータが欠測したときでも、降雨・実水位状況を反映させたうえで、水位予測地点より上流地点での水位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0111】
さらに、欠測時刻より短時間(水位予測の時間間隔)前の予測時刻に、降雨・実水位状況を反映させたうえで変換した、水位予測地点での予測時刻より短時間(水位予測の時間間隔)後の欠測時刻の、予測水位データで補間することができる。
【0112】
(本開示の雨量テストデータ補間処理の手順)
本開示の雨量テストデータ補間処理の具体例を図14に示す。テストデータ補間部6は、水位予測地点及び上流地点のうちの少なくともいずれかでの、雨量データRが欠測したときに(ステップS15)、水位予測地点及び上流地点のうちの少なくともいずれかでの、欠測時刻の雨量データRを補間する(ステップS16)。
【0113】
ここで、テストデータ補間部6は、水位予測地点及び上流地点のうちの少なくともいずれかでの、欠測時刻の雨量予報データRDで補間する(ステップS16)。
【0114】
なお、上流地点での雨量データRが欠測したときには、水位予測地点での雨量データRが欠測していなくても、水位予測地点での予測水位データPを出力できないため、上流地点での欠測時刻の雨量データRを、上流地点での雨量予報データRDで補間する。
【0115】
テストデータ抽出部4は、水位予測モデルMに、テストデータ(テストデータ補間部6が補間した、欠測時刻の感潮域水位データE、上流域水位データU及び雨量データRを含み、欠測時刻の潮位データTは後述)を入力する(ステップS19)。予測水位データ変換部5は、水位予測モデルMから、水位予測地点での当該時刻の予測水位データPを出力し、水位予測モデルMは、上流地点での当該時刻のみなし予測水位データ(上流地点では、潮汐の影響を受けない)を出力する(ステップS20)。
【0116】
図14の第1段では、現時刻の30分後の12時30分の水位を予測するために、現時刻の1時間前の11時の雨量データ30mmと、現時刻の30分前の11時30分の雨量データ40mmと、現時刻である12時の雨量データ50mmと、をテストデータとして抽出する。図14の第3~5段では、テストデータとして、一部の雨量データが欠測する。
【0117】
図14の第2段では、雨量予報データRD(降水短時間予報)として、現時刻の1時間前の11時の雨量予測データ29mmと、現時刻の30分前の11時30分の雨量予測データ39mmと、現時刻である12時の雨量予測データ48mmと、を入力する。
【0118】
図14の第3段では、11時の雨量データ30mmと、11時30分の雨量データ40mmと、が欠測しており、12時の雨量データ50mmが観測されている。そこで、11時の雨量データ30mmと、11時30分の雨量データ40mmと、として、11時の雨量予測データ29mmと、11時30分の雨量予測データ39mmと、でそれぞれ補間して、雨量データ29mm及び39mmをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0119】
図14の第4段では、11時30分の雨量データ40mmと、12時の雨量データ50mmと、が欠測しており、11時の雨量データ30mmが観測されている。そこで、11時30分の雨量データ40mmと、12時の雨量データ50mmと、として、11時30分の雨量予測データ39mmと、12時の雨量予測データ48mmと、でそれぞれ補間して、雨量データ39mm及び48mmをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0120】
図14の第5段では、11時30分の雨量データ40mmが欠測しており、11時の雨量データ30mmと、12時の雨量データ50mmと、が観測されている。そこで、11時30分の雨量データ40mmとして、11時30分の雨量予測データ39mmで補間して、雨量データ39mmをほぼ正しく補間する。
【0121】
このように、水位予測地点及び上流地点での雨量テストデータが欠測したときでも、雨量予報データを反映させたうえで、水位予測地点及び上流地点での雨量テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0122】
(本開示の潮位テストデータ補間処理の手順)
本開示の潮位テストデータ補間処理の具体例を図15に示す。テストデータ補間部6は、潮位観測地点での潮位データTが欠測したときに(ステップS17)、潮位観測地点での欠測時刻の潮位データTを補間する(ステップS18)。
【0123】
ここで、テストデータ補間部6は、潮位観測地点での欠測時刻の天文潮汐データAD(潮汐予報データ)で補間する(ステップS18)。
【0124】
テストデータ抽出部4は、水位予測モデルMに、テストデータ(テストデータ補間部6が補間した、欠測時刻の感潮域水位データE、上流域水位データU、雨量データR及び潮位データTを含む)を入力する(ステップS19)。予測水位データ変換部5は、水位予測モデルMから、水位予測地点での当該時刻の予測水位データPを出力し、水位予測モデルMは、上流地点での当該時刻のみなし予測水位データ(上流地点では、潮汐の影響を受けない)を出力する(ステップS20)。
【0125】
図15の第1段では、現時刻の30分後の12時30分の水位を予測するために、現時刻の1時間前の11時の潮位データ3.0mと、現時刻の30分前の11時30分の潮位データ4.0mと、現時刻である12時の潮位データ5.0mと、をテストデータとして抽出する。図15の第3~5段では、テストデータとして、一部の潮位データが欠測する。
【0126】
図15の第2段では、天文潮汐データAD(潮汐予報データ)として、現時刻の1時間前の11時の潮位予測データ2.9mと、現時刻の30分前の11時30分の潮位予測データ3.9mと、現時刻である12時の潮位予測データ4.8mと、を入力する。
【0127】
図15の第3段では、11時の潮位データ3.0mと、11時30分の潮位データ4.0mと、が欠測しており、12時の潮位データ5.0mが観測されている。そこで、11時の潮位データ3.0mと、11時30分の潮位データ4.0mと、として、11時の潮位予測データ2.9mと、11時30分の潮位予測データ3.9mと、でそれぞれ補間して、潮位データ2.9m及び3.9mをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0128】
図15の第4段では、11時30分の潮位データ4.0mと、12時の潮位データ5.0mと、が欠測しており、11時の潮位データ3.0mが観測されている。そこで、11時30分の潮位データ4.0mと、12時の潮位データ5.0mと、として、11時30分の潮位予測データ3.9mと、12時の潮位予測データ4.8mと、でそれぞれ補間して、潮位データ3.9m及び4.8mをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0129】
図15の第5段では、11時30分の潮位データ4.0mが欠測しており、11時の潮位データ3.0mと、12時の潮位データ5.0mと、が観測されている。そこで、11時30分の潮位データ4.0mとして、11時30分の潮位予測データ3.9mで補間して、潮位データ3.9mをほぼ正しく補間する。
【0130】
このように、潮位観測地点での潮位テストデータが欠測したときでも、天文潮汐データ(潮汐予報データ)を反映させたうえで、潮位観測地点での潮位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0131】
(本開示の水位予測装置の構成)
本開示の水位予測装置の構成を図16に示す。本開示の水位予測的中率算出処理の手順を図17に示す。水位予測装置Wは、図2、11に加えて、検証用データ抽出部7、水位予測誤差幅設定部8及び水位予測的中率算出部9を備える。検証用データ抽出部7、水位予測誤差幅設定部8及び水位予測的中率算出部9は、図17に示した水位予測的中率算出プログラムを、コンピュータにインストールし実現することができる。
【0132】
訓練用データ抽出部1(図16に不図示)は、水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、感潮域水位データE、潮位データT、上流域水位データU及び過去の観測雨量を示す雨量データRと、将来の観測雨量を示す雨量データRと、を抽出する。ここで、訓練用データ抽出部1は、水位変動時等の感潮域水位データE、潮位データT、上流域水位データU、過去の観測雨量を示す雨量データR及び将来の観測雨量を示す雨量データRを抽出してもよく、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時等の感潮域水位データE、潮位データT、上流域水位データU、過去の観測雨量を示す雨量データR及び将来の観測雨量を示す雨量データRを抽出してもよい。水位予測モデル構築部3は、訓練用データを用いて、水位予測モデルMを構築する。
【0133】
テストデータ抽出部4は、水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータTDとして、感潮域水位データE、潮位データT、予測潮位データA、上流域水位データU及び過去の観測雨量を示す雨量データRと、将来の予報雨量を示す雨量データRと、を抽出する。ここで、テストデータ抽出部4は、実運用上、将来の観測雨量を示す雨量データRを抽出しないで、予報雨量を示す雨量データRを抽出している。予測水位データ変換部5は、水位予測モデルMを用いて、予測水位データPを出力する。
【0134】
しかし、「予報」雨量を示す雨量データRは、「将来の観測」雨量を示す雨量データRと比べて、精度が低いため、「予測」水位データPは、「観測」水位データと比べて、大きく外れることがある。そこで、本開示では、「予測」水位データPの信頼性を可視化する。
【0135】
検証段階では、検証用データVDとして、感潮域水位データE、潮位データT、上流域水位データU、「過去の観測」雨量を示す雨量データR及び「将来の観測」雨量を示す雨量データRを抽出し、水位の予測誤差確率分布Dを算出し、観測水位データに対する予測水位データPの誤差幅を設定する。そして、検証用データVDとして、「将来の観測」雨量を示す雨量データRを「予報」雨量を示す雨量データRに置き換え、予測水位データPのうちの観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、水位予測的中率Hとして算出する。
【0136】
予測段階では、テストデータTDとして、実運用上は感潮域水位データE、潮位データT、予測潮位データA、上流域水位データU、「過去の観測」雨量を示す雨量データR及び「予報」雨量を示す雨量データRを抽出し、予測水位データPとともに、水位予測的中率Hを出力する。ここで、各発令基準毎に、及び/又は、各N時間後予測毎に、水位予測的中率Hを出力する。
【0137】
ここで、訓練用データは、水位学習のための既知のデータであり、水位予測的中率Hをほぼ100%とするため、水位予測的中率Hの算出に適用することができない。そして、テストデータTDは、水位予測のための未知のデータであるが、特定の降雨の状況に特化したデータであるため、水位予測的中率Hの算出に適用することができない。一方で、検証用データVDは、水位予測モデルMの検証のための未知のデータであり、特定の降雨の状況に特化しないデータであるため、水位予測的中率Hの算出に適用することができる。
【0138】
(本開示の水位予測誤差幅設定処理の具体例)
本開示の水位予測誤差幅設定処理の具体例を図18に示す。検証用データ抽出部7は、本開示の水位予測モデル構築処理で構築した水位予測モデルMの検証のための検証用データVDとして、感潮域水位データE、潮位データT、上流域水位データU及び過去の観測雨量を示す雨量データRと、検証対象時刻より将来の観測雨量を示す雨量データRと、を抽出する(ステップS21)。そして、みなし水位データ変換部2(図16に不図示)は、感潮域水位データEから潮位データTを減算し、感潮域水位データEをみなし水位データに変換する(ステップS21)。ここで、検証用データ抽出部7は、水位予測誤差幅設定処理では、予報雨量を示す雨量データRを抽出していない。
【0139】
検証用データ抽出部7は、水位予測モデルMに検証用データVDとして、水位予測地点での複数時刻の水位を検証するためのみなし水位データ、上流域水位データU、過去の観測雨量を示す雨量データR及び将来の観測雨量を示す雨量データRを入力する(ステップS22)。そして、水位予測モデルMは、水位予測地点での当該複数時刻のみなし予測水位データを出力し、予測水位データ変換部5は、みなし予測水位データに潮位データTを加算し、みなし予測水位データを予測水位データPに変換する(ステップS22)。さらに、水位予測誤差幅設定部8は、水位予測地点での水位の予測誤差確率分布Dを算出し、水位予測的中率算出ステップS25での観測水位データに対する予測水位データPの誤差幅を設定する(ステップS23)。ここで、水位予測誤差幅設定部8は、水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、予測水位データ出力ステップS22での予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、予測誤差確率分布Dを算出し、予測水位データPの誤差幅を設定する(ステップS23)。
【0140】
図18の「各N時間後の予測誤差」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、水位予測地点での水位の予測誤差確率分布Dが算出される。図18の「各N時間後の誤差幅」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、予測誤差確率分布Dのうちの、elоw-min以上elоw-max以下と、emid-min以上emid-max以下と、ehigh-min以上ehigh-max以下と、が誤差幅内となるように、観測水位データに対する予測水位データPの誤差幅が設定される。ここで、予測誤差確率分布Dの最小値及び最大値を0%及び100%として、0.1%≦ehigh-min≦emid-min≦elоw-min≦20%と、80%≦elоw-max≦emid-max≦ehigh-max≦99.9%と、が満たされる。つまり、予測水位データPの誤差幅は、高水位ほど広く設定され、低水位ほど狭く設定され、中水位では中間に設定される。予測水位データPの誤差幅の上振れ幅及び下振れ幅は、予測誤差確率分布Dの分布形状に応じて、等しくてもよく異なってもよい。
【0141】
なお、ehigh-min、emid-min、elоw-min、elоw-max、emid-max、ehigh-maxは、暫定的には以上のように設定されるが、最終的には以下のように設定される。まず、水位予測モデルMにテストデータとして、みなし水位データ、上流域水位データ及び解析雨量を示す雨量データ(レーダを雨量計で補間)が入力される。次に、高水位、低水位及び中水位のそれぞれについて、予測水位データのうちの80%以上が、予測水位データの誤差幅内に収まるように、ehigh-min、emid-min、elоw-min、elоw-max、emid-max、ehigh-maxが設定される。
【0142】
このように、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、検証段階において、水位の予測誤差確率分布Dを算出し、観測水位データに対する予測水位データPの誤差幅を設定し、水位予測的中率Hを算出する準備をすることができる。
【0143】
そして、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、テストデータTDとして、「予報」雨量を示す雨量データRを抽出するときでも、検証段階において、水位予測的中率Hを算出する準備をすることにより、各発令基準の到達判断を支援する準備ができる。
【0144】
(本開示の水位予測的中率算出処理の具体例)
本開示の水位予測的中率算出処理の具体例を図19に示す。検証用データ抽出部7は、本開示の水位予測モデル構築処理で構築した水位予測モデルMの検証のための検証用データVDとして、感潮域水位データE、潮位データT、上流域水位データU及び過去の観測雨量を示す雨量データRと、検証対象時刻より将来の予報雨量を示す雨量データRと、を抽出する(ステップS21)。そして、みなし水位データ変換部2(図16に不図示)は、感潮域水位データEから潮位データTを減算し、感潮域水位データEをみなし水位データに変換する(ステップS21)。ここで、検証用データ抽出部7は、水位予測的中率算出処理では、将来の観測雨量を示す雨量データRを抽出していない。
【0145】
検証用データ抽出部7は、水位予測モデルMに検証用データVDとして、水位予測地点での複数時刻の水位を検証するためのみなし水位データ、上流域水位データU、過去の観測雨量を示す雨量データR及び予報雨量を示す雨量データRを入力する(ステップS24)。そして、水位予測モデルMは、水位予測地点での当該複数時刻のみなし予測水位データを出力し、予測水位データ変換部5は、みなし予測水位データに潮位データTを加算し、みなし予測水位データを予測水位データPに変換する(ステップS24)。さらに、水位予測的中率算出部9は、水位予測地点での当該複数時刻の予測水位データPのうちの、水位予測地点での当該複数時刻の観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、水位予測地点での水位予測的中率Hとして算出する(ステップS25)。ここで、水位予測的中率算出部9は、水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、予測水位データ出力ステップS24での予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、水位予測的中率Hを算出する(ステップS25)。
【0146】
図19の「各N時間後の予測データ」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、水位予測地点での当該複数時刻の予測水位データPが出力される。0m以上発令基準水位A未満の観測水位について、誤差幅内に収まるデータは80個であり、誤差幅を下回るデータは10個であり、誤差幅を上回るデータは10個である。発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位について、誤差幅内に収まるデータは30個であり、誤差幅を下回るデータは15個であり、誤差幅を上回るデータは15個である。発令基準水位B以上の観測水位について、誤差幅内に収まるデータは10個であり、誤差幅を下回るデータは10個であり、誤差幅を上回るデータは10個である。
【0147】
図19の「各N時間後の予測的中率」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、水位予測地点での水位予測的中率Hが算出される。0m以上発令基準水位A未満の観測水位について、水位予測的中率は80/(80+10+10)×100=80%である。発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位について、水位予測的中率は30/(30+15+15)×100=50%である。発令基準水位B以上の観測水位について、水位予測的中率は10/(10+10+10)×100=33%である。
【0148】
なお、テストデータTDが蓄積されたとしても、水位予測モデルMは更新されないため、水位予測的中率Hは更新の必要がない。また、訓練用データが蓄積されたときには、水位予測モデルMは更新されてもよく、水位予測的中率Hも更新されてもよい。
【0149】
このように、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、テストデータTDとして、「予報」雨量を示す雨量データRを抽出するときでも、検証段階において、水位予測的中率Hを算出することにより、予測水位データPの信頼性を可視化することができる。
【0150】
そして、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、テストデータTDとして、「予報」雨量を示す雨量データRを抽出するときでも、検証段階において、水位予測的中率Hを算出することにより、各発令基準の到達判断を支援することができる。
【0151】
(本開示の水位予測的中率出力処理の実例)
本開示の水位予測的中率出力処理の実例を図20に示す。水位予測的中率算出部9は、感潮域水位データE、潮位データT、予測潮位データA、上流域水位データU、過去の観測雨量を示す雨量データR及び予報雨量を示す雨量データRに基づく水位予測地点での予測対象時刻の水位の予測時に、水位予測地点での当該予測対象時刻の予測水位データPとともに、水位予測地点での水位予測的中率Hを出力する(ステップS26)。ここで、水位予測的中率算出部9は、水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、水位予測的中率Hを出力する(ステップS26)。
【0152】
図20では、発令基準水位として、L、L、L、L、L、Lが設定される。検証段階では、発令基準水位L~L、L~L、L~L、L~L、L~Lの観測水位について、水位予測的中率はそれぞれH01%、H12%、H23%、H34%、H45%と算出される。予測段階では、1日目の12時頃、2日目の14時頃、3日目の8時頃、4日目の12時頃の予測水位(6時間後予測)について、水位予測的中率はそれぞれH01%(的中)、H23%(はずれ)、H45%(的中)、H01%(的中)と出力される。
【0153】
このように、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、テストデータTDとして、「予報」雨量を示す雨量データRを抽出するときでも、予測段階において、水位予測的中率Hを出力することにより、予測水位データPの信頼性を可視化することができる。
【0154】
そして、機械学習を用いて、感潮域の水位を予測するにあたり、テストデータTDとして、「予報」雨量を示す雨量データRを抽出するときでも、予測段階において、水位予測的中率Hを出力することにより、各発令基準の到達判断を支援することができる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本開示の水位予測モデル構築方法、水位予測モデル構築プログラム、予測水位データ出力方法及び予測水位データ出力プログラムによれば、感潮域においても、非感潮域と同様に、非感潮域の水位予測地点での水位予測モデルを用いることにより、水位予測モデルを容易に構築するとともに、水位の予測精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0156】
W:水位予測装置
M:水位予測モデル
1:訓練用データ抽出部
2:みなし水位データ変換部
3:水位予測モデル構築部
4:テストデータ抽出部
5:予測水位データ変換部
6:テストデータ補間部
7:検証用データ抽出部
8:水位予測誤差幅設定部
9:水位予測的中率算出部
E:感潮域水位データ
T:潮位データ
U:上流域水位データ
R:雨量データ
A:予測潮位データ
VD:検証用データ
TD:テストデータ
P:予測水位データ
D:予測誤差確率分布
H:水位予測的中率
RD:雨量予報データ
AD:天文潮汐データ
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