(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016336
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250124BHJP
H01C 7/04 20060101ALI20250124BHJP
H01C 7/06 20060101ALI20250124BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20250124BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01C7/04
H01C7/06
H01F27/02 120
H01F27/32 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058061
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】10-2023-0095529
(32)【優先日】2023-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0139246
(32)【優先日】2023-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、クァン ソー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ホ サム
(72)【発明者】
【氏名】バエク、ラク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヒョ スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン ミ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E034
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE00
5E001AG01
5E001AJ02
5E001AJ04
5E034DA07
5E034DB11
5E034DC01
5E034DE16
5E070AA01
5E070DA15
5E070DA20
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC31
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG32
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械的強度及び耐湿信頼性に優れた積層型電子部品を提供する。
【解決手段】層型電子部品である積層セラミックキャパシタは、第1方向に交互に配置される誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Ac並びに容量形成部の第1方向に対向する両面上に配置されるカバー部112、113を含む本体110と、本体の外部に配置され、内部電極と連結される外部電極131、132と、を含み、カバー部はポリドーパミンを含む。ポリドーパミン(Polydopamine)はドーパミンの重合体であって、ドーパミンの自己高分子化(self-polymerization)によって生成され、共有結合カテコール(catechol)とイミン(imine)官能基を有しており、セラミック粉末などの無機物質やバインダーなどの有機物質といずれも強い結合を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、並びに前記容量形成部の前記第1方向に対向する両面上に配置されるカバー部を含む本体と、
前記本体の外部に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を備え、
前記カバー部はポリドーパミンを含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記カバー部に含まれたポリドーパミンのうち少なくとも一部は、窒素がドープされた炭化ポリドーパミンである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記カバー部を構成する元素の総含有量(at%)のうち窒素の含有量(at%)は、0at%を超え、3at%以下である、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記カバー部は、複数の誘電体結晶粒及び隣接する誘電体結晶粒の間に配置される結晶粒界を含み、
前記カバー部に含まれたポリドーパミンは前記結晶粒界に配置される、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記カバー部は、複数の誘電体結晶粒及び隣接する誘電体結晶粒の間に配置される結晶粒界を含み、
前記カバー部に含まれた複数の誘電体結晶粒の平均サイズは、170nm以上200nm以下である、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記カバー部は、X線光電子分光法を用いた分析の際に、N1sピーク及びC1sピークが検出される、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記カバー部に対するラマン分析の際に、1360cm-1から1380cm-1のラマンシフトで第1ピークが検出され、1610cm-1から1630cm-1のラマンシフトで第2ピークが検出される、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記第2ピークの最大強度に対する前記第1ピークの最大強度の比率は、0.01以上1.50以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第1ピークの半値全幅は80cm-1以上90cm-1以下であり、前記第2ピークの半値全幅は100cm-1以上110cm-1以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層はポリドーパミンを含まない、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層は、前記カバー部に含まれたポリドーパミンの含有量より少ない含有量のポリドーパミンを含む、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
X線光電子分光法を用いた分析の際に、前記カバー部はN1sピークが検出され、前記誘電体層はN1sピークが検出されない、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
ラマン分析の際に、前記カバー部は1360cm-1から1380cm-1のラマンシフトで第1ピークが検出され、1610cm-1から1630cm-1のラマンシフトで第2ピークが検出され、前記誘電体層は1360cm-1から1380cm-1のラマンシフト及び1610cm-1から1630cm-1のラマンシフトのうち少なくとも1つでピークが検出されない、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
ラマン分析の際に、前記カバー部は1360cm-1から1380cm-1のラマンシフトで第1ピークが検出され、1610cm-1から1630cm-1のラマンシフトで第2ピークが検出され、前記誘電体層は1360cm-1から1380cm-1のラマンシフトで第3ピークが検出され、前記1610cm-1から1630cm-1のラマンシフトで第4ピークが検出され、
前記第3ピークの強度は前記第1ピークの強度より低く、前記第4ピークの強度は前記第2ピークの強度より低い、請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。
【0003】
最近、積層セラミックキャパシタの単位体積当たりの容量を確保するために積層セラミックキャパシタが小型化しており、これにより、積層セラミックキャパシタの容量を形成する容量形成部を保護するためのカバー部の厚さが薄くなっている。但し、カバー部の厚さが薄くなるほど、積層セラミックキャパシタの機械的強度が弱くなり、これは積層セラミックキャパシタに発生するクラックや脆性破壊を誘発する原因となり得る。このようなクラック等は、外部からの水分が積層セラミックキャパシタの内部に浸透する経路となり、積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を低下させる原因となる。
【0004】
したがって、積層セラミックキャパシタの機械的強度及び耐湿信頼性が低下することを防止するために、カバー部の硬度及び靭性を向上させることができる方案についての研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの目的の一つは、機械的強度及び耐湿信頼性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0006】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、並びに上記容量形成部の上記第1方向に対向する両面上に配置されるカバー部を含む本体と、上記本体の外部に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記カバー部はポリドーパミンを含む積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の様々な効果の一つとして、機械的強度及び耐湿信頼性に優れた積層型電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の本体を概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図である。
【
図5】(a)ドーパミンヒドロクロリド、(b)ポリドーパミン重合体、及び(c)窒素がドープされた炭化ポリドーパミンの化学構造を概略的に示す模式図である。
【
図8】
図6のK3領域の拡大図であって、本発明の一実施形態による積層型電子部品のカバー部がクラックの伝播を抑制する様子を概略的に示すものである。
【
図9】本発明の一実施形態による積層型電子部品のカバー部を、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析した結果を概略的に示すグラフである。
【
図10】本発明の一実施形態による積層型電子部品のカバー部を、ラマン分析法を用いて分析した結果を概略的に示すグラフである。
【
図11】比較例と実施例の硬度(Hardness)を測定した結果を示すグラフである。
【
図12】比較例と実施例の靭性(Toughness)を測定した結果を示すグラフである。
【
図13】(a)比較例の信頼性評価結果を示すグラフ及び(b)実施例2の信頼性評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0011】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0012】
図面において、第1方向は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0013】
[積層型電子部品]
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示す斜視図であり、
図2は、
図1の本体を概略的に示す分解斜視図であり、
図3は、
図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図であり、
図4は、
図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図であり、
図5は、(a)ドーパミンヒドロクロリド、(b)ポリドーパミン重合体、及び(c)窒素がドープされた炭化ポリドーパミンの化学構造を概略的に示す模式図であり、
図6は、
図3のK1領域の拡大図であり、
図7は、
図3のK2領域の拡大図であり、
図8は、
図6のK3領域の拡大図であって、本発明の一実施形態による積層型電子部品のカバー部がクラックの伝播を抑制する様子を概略的に示すものであり、
図9は、本発明の一実施形態による積層型電子部品のカバー部を、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析した結果を概略的に示すグラフであり、
図10は、本発明の一実施形態による積層型電子部品のカバー部を、ラマン分析法を用いて分析した結果を概略的に示すグラフである。
【0014】
以下、
図1~
図10を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳細に説明する。また、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0015】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、本体110と外部電極131、132とを含むことができる。
【0016】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0017】
本体110は、第1方向に対向する第1面及び第2面1、2、上記第1面及び第2面1、2と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面3、4、第1面から第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面5、6を有することができる。
【0018】
本体110は、第1方向に交互に配置される誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Acを含むことができる。容量形成部Acを形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0019】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートを焼成することにより、形成することができる。セラミック粉末は十分な静電容量が得られる限り特に限定されないが、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)等が挙げられる。
【0020】
内部電極121、122は、誘電体層111を挟んで第1方向に交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。すなわち、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122とが誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置されることができる。第1内部電極121と第2内部電極122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0021】
第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3側において第1外部電極131と連結されることができる。第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4側において第2外部電極132と連結されることができる。
【0022】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、Ni、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、W、Ti及びこれらの合金のうち1つ以上であってもよく、より好ましくはNiを含んでもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
内部電極121、122は、上記セラミックグリーンシート上に所定の厚さで導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することによって形成されることができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はない。誘電体層111の平均厚さtdは、例えば0.1μmから10μmであってもよい。内部電極121、122の平均厚さteは、例えば0.1μmから3.0μmであってもよい。また、誘電体層111の平均厚さtdと内部電極121、122の平均厚さは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。例えば、小型化及び高容量化を達成するために高電圧電装用電子部品の場合、誘電体層111の平均厚さtdは2.8μm未満であってもよく、内部電極121、122の平均厚さteは、1μm未満であってもよい。また、小型化及び高容量化を達成するためには、小型IT用電子部品の場合、誘電体層111の平均厚さtdは0.4μm以下であってもよく、内部電極121、122の平均厚さteは0.4μm以下であってもよい。
【0025】
誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteは、それぞれ誘電体層111及び内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味する。誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの誘電体層111の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定した後、平均値をとることにより、誘電体層111の平均厚さtdを測定することができる。また、1つの内部電極121、122の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定した後、平均値をとることにより、内部電極121、122の平均厚さteを測定することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。一方、このような平均値の測定をそれぞれ10個の誘電体層111及び10個の内部電極121、122について行った後、平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteをさらに一般化することができる。
【0026】
本体110は、容量形成部Acの第1方向に対向する両面上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。本体110は、第1面1側に配置された第1カバー部112及び第2面2側に配置された第2カバー部113を含むことができる。カバー部112、113は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。カバー部112、113は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と類似の構成を有することができる。
【0027】
カバー部112、113の平均厚さtcは特に限定する必要はない。すなわち、カバー部112、113の平均厚さtcは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。例えば、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、カバー部112、113の平均厚さtcは、300μm以下、100μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、カバー部112、113の平均厚さtcは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0028】
カバー部112、113の平均厚さtcは、カバー部112、113の第1方向への平均サイズを意味することができ、本体110の第1方向及び第2方向の断面において等間隔である5個の地点で測定した第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0029】
カバー部112、113は、内部電極パターンを形成していないカバー部形成用セラミックグリーンシートを容量形成部Acの第1方向に対向する両面上に1層以上積層した後、焼成することにより形成することができる。
【0030】
本体110は、容量形成部Acの第3方向に対向する両面上に配置されるマージン部114、115を含むことができる。本体110は、第5面5側に配置された第1マージン部114及び第6面6側に配置された第2マージン部115を含むことができる。マージン部114、115は、本体110を第1方向及び第3方向に切断した断面において、内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0031】
マージン部114、115は、内部電極121、122を含まないことを除いては、誘電体層111と類似の構成を有することができる。マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0032】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除いて、内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することにより形成されたものであってもよい。あるいは、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極121、122が本体の第5面及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層、又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの第3方向に対向する両面上に積層することにより、マージン部114、115を形成することもできる。
【0033】
マージン部114、115の平均厚さtmは特に限定する必要はない。すなわち、マージン部114、115の平均厚さtmは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。例えば、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、マージン部114、115の平均厚さtmは、100μm以下、20μm以下、又は15μm以下であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、マージン部114、115の平均厚さtmは、第1マージン部114及び第2マージン部115のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0034】
マージン部114、115の平均厚さtmは、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができ、本体110の第1方向及び第3方向の断面において等間隔である5個の地点で測定した第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0035】
外部電極131、132は本体110の外部に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4に配置されることができ、第1面、第2面、第5面及び第6面1、2、5、6の一部上に延びることができる。外部電極131、132は、第1内部電極121と連結される第1外部電極131及び第2内部電極122と連結される第2外部電極132を含むことができる。
【0036】
外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4に配置され、内部電極121、122と連結される第1電極層131a、132a及び第1電極層131a、132a上に配置される第2電極層132a、132bを含むことができる。
【0037】
第1電極層131a、132aは、本体110の第3面及び第4面3、4を導電性金属及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することにより形成することができる。第1電極層131a、132aに含まれる導電性金属は、Cu、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Pb及び/又はこれらを含む合金等を含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
一方、第1電極層131a、132aは、金属及びガラスを含む1層のみで構成されてもよいが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1電極層131a、132aは多層構造を有してもよい。例えば、第1電極層131a、132aは、金属及びガラスを含む第1層、及び上記第1層上に配置され、金属及び樹脂を含む第2層を含むことができる。
【0039】
上記第2層に含まれる金属は特に限定されず、Ni、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、W、Ti及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上を含むことができる。上記第2層に含まれる樹脂は、接合性確保及び衝撃吸収の役割を果たすことができる。上記樹脂は接合性及び衝撃吸収性を有し、金属粉末と混合してペーストを作製できるものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、エチルセルロース(Ethyl Cellulose)等から選択された1種以上を含むことができる。
【0040】
第2電極層131b、132bは実装特性を向上させることができる。第2電極層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及び/又はこれらを含む合金などを含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。第2電極層131b、132bは、例えば、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、第2電極層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0041】
図面では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、カバー部112、113はポリドーパミンを含むことができる。ポリドーパミン(Polydopamine)はドーパミンの重合体であって、ドーパミンの自己高分子化(self-polymerization)によって生成されたポリドーパミンは、共有結合カテコール(catechol)とイミン(imine)官能基を有しており、セラミック粉末などの無機物質やバインダーなどの有機物質といずれも強い結合を形成することができる。
【0043】
本発明の一実施形態によるカバー部形成用セラミックグリーンシートには、
図5の(a)に示すドーパミンヒドロクロリドが添加されることができる。カバー部形成用セラミックグリーンシートに添加されたドーパミンヒドロクロリドは、自己高分子化によって
図5の(b)に示すポリドーパミン重合体を形成することができる。カバー部形成用セラミックグリーンシートは、ポリドーパミン重合体を含むことにより、カバー部用セラミックグリーンシートに含まれたセラミック粉末やバインダー等との強い結合を形成することができ、これにより、上記カバー部用セラミックグリーンシートの接着力を向上させることができる。したがって、カバー部112、113を形成するためにカバー部形成用セラミックグリーンシートを積層する際に、シート間のデラミネーション(delamination)やクラック(crack)が発生することを防止することができ、積層及び圧着工程で加えられる熱と圧力を下げることができる。
【0044】
カバー部用セラミックグリーンシートに含まれたポリドーパミン重合体の全部又は一部は、積層型電子部品100の本体を形成するための焼成過程を経ることで、
図5の(c)に示す窒素がドープされた炭化ポリドーパミン(N-doped graphenated polydopamine)に変換されることができる。一実施形態において、カバー部112、113に含まれたポリドーパミンのうち少なくとも一部は、窒素がドープされた炭化ポリドーパミンであり得る。カバー部112、113に含まれた窒素がドープされた炭化ポリドーパミンは二次元物質であって、カバー部112、113の弾性係数(elastic modulus)と靭性(Toughness)を向上させることができ、カバー部112、113に生成されたクラックの伝播を遮断する役割を果たすことができる。これにより、積層型電子部品100の機械的強度を向上させることができ、究極的に積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0045】
一実施形態において、カバー部112、113を構成する元素の総含有量(at%)のうち窒素の含有量(at%)は、0at%を超え、3at%以下であることができる。カバー部112、113を構成する元素のうち窒素は、窒素ドープされた炭化ポリドーパミンに由来するものであり得る。カバー部112、113を構成する元素の総含有量(at%)のうち窒素の含有量が3at%を超える場合、ポリドーパミンの含有量が過度になり、凝集体(agglomerate)の形成による脆性破壊が発生するおそれがある。
【0046】
カバー部112、113を構成する元素の総含有量のうち窒素の含有量(at%)を測定する方法は特に限定する必要はない。例えば、本体110の第1方向及び第2方向の断面を透過電子顕微鏡(TEM)又は走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定したイメージを得た後、上記イメージにおいて、カバー部112、113内の第2方向に等間隔である5個の地点をエネルギー分散型分光分析法(EDS)で分析し、各地点内のカバー部112、113を構成する元素の総含有量100at%のうち、窒素が占める含有量(at%)の平均値をとることにより、上記窒素の含有量を測定することができる。
【0047】
以下、
図6を参照してカバー部についてより詳細に説明する。
図6は、第2カバー部113の一部を拡大して示したものであるが、第1カバー部112と第2カバー部113の構成は実質的に同じであるため、以下の説明は第1カバー部112及び第2カバー部113に対する説明を全て含むものと見なす。
【0048】
図6を参照すると、カバー部113は、複数の誘電体結晶粒G1及び隣接する誘電体結晶粒G1の間に配置される結晶粒界GB1を含み、カバー部113に含まれたポリドーパミンは結晶粒界GB1に配置されることができる。結晶粒界GB1に配置されたポリドーパミンは、クラックの伝播を効果的に遮断することができる。また、窒素ドープされた炭化ポリドーパミンは疎水性(Hydrophobic)を有するため、窒素ドープされた炭化ポリドーパミンが結晶粒界GB1に位置すると、水分浸透に対する障壁(barrier)としての役割を果たすことができる。
【0049】
図8を参照すると、クラックCRが誘電体結晶粒G1の間に存在する結晶粒界GB1に向かって伝播するとき、τs(τs=μN
R、ここで、μ:dynamic friction)などの力がエネルギーとして消耗されることができる。このとき、結晶粒界GB1に弾性係数の高いポリドーパミンが存在する場合、上記μ値が増加することができる。すなわち、結晶粒界GB1に弾性係数が高いポリドーパミンが存在する場合、クラックCRの伝播のためには、より多くのエネルギーが消耗されるため、クラック伝播を効果的に遮断することができる。
【0050】
一方、結晶粒界GB1に配置された窒素がドープされた炭化ポリドーパミンは、結晶粒G1の粒成長を抑制してカバー部113の緻密化を誘導することができる。カバー部113に含まれた複数の誘電体結晶粒G1の平均サイズは、例えば、170nm以上200nm以下であり得る。
【0051】
一方、
図7に示すように、誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒G2及び隣接する誘電体結晶粒G2の間に配置される結晶粒界GB2を含むことができる。誘電体層111に含まれた複数の誘電体結晶粒G2の平均サイズは特に限定する必要はない。誘電体層111に含まれた複数の誘電体結晶粒G2の平均サイズは、カバー部113に含まれた複数の誘電体結晶粒G1の平均サイズより大きくてもよい。この場合、積層型電子部品100の容量改善の観点から利点があり得る。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、誘電体層111に含まれた複数の誘電体結晶粒G2の平均サイズは、カバー部113に含まれた複数の誘電体結晶粒G1の平均サイズより小さくてもよい。この場合、積層型電子部品100の信頼性改善の観点から利点があり得る。
【0052】
カバー部113に含まれた複数の誘電体結晶粒G1の平均サイズは、例えば、本体110の第2方向の中央で切断した第1及び第2方向の断面において、カバー部113の中央領域(例えば、
図3のK1領域)を走査電子顕微鏡(SEM)で50,000倍拡大したイメージを得た後、上記イメージをイメージ分析プログラム、例えば、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得られた誘電体結晶粒サイズの平均値を意味することができる。
【0053】
また、誘電体層111に含まれた複数の誘電体結晶粒G2の平均サイズは、例えば、本体110の第2方向の中央で切断した第1及び第2方向の断面において、容量形成部Acの中央領域(例えば、
図3のK2領域)に配置された誘電体層111を走査電子顕微鏡(SEM)で50,000倍拡大したイメージを得た後、上記イメージをイメージ分析プログラム、例えば、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得られた誘電体結晶粒サイズの平均値を意味することができる。
【0054】
図9を参照すると、一実施形態において、カバー部112、113は、X線光電子分光法(XPS)を用いた分析の際に、N1sピーク及びC1sピークが検出されることができる。カバー部112、113が、窒素がドープされた炭化ポリドーパミンを含む場合、Ba3d5、O1s、Ti2p、C1sピークに加えてN1sピークがさらに検出されることができる。すなわち、XPS分析時にN1s及びC1sピークが同時に検出される場合、カバー部112、113に窒素がドープされた炭化ポリドーパミンが存在すると判断することができる。一方、上記N1sピークの強度(intensity)は395eV以上405eV以下の結合エネルギー(binding energy)において最大値を有し、上記C1sピークの強度(intensity)は280eV以上290eV以下の結合エネルギー(binding energy)において最大値を有することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
カバー部112、113に対するXPS分析は、カバー部112、113の外表面に対して行うことができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本体110の第3方向の中央部まで研磨した第1及び第2方向の断面に対して行うこともできる。
【0056】
図10を参照すると、一実施形態において、カバー部112、113に対するラマン分析の際に、1360cm
-1から1380cm
-1のラマンシフトで第1ピークXが検出され、1610cm
-1から1630cm
-1のラマンシフトで第2ピークYが検出されることができる。第1ピークXはDピーク、第2ピークYはGピークを意味することができる。カバー部112、113に対するラマン分析の際に、第1ピークX及び第2ピークYが同時に現れるのは、カバー部112、113が二次元構造を有する炭化ポリドーパミン構造を有するためである。
【0057】
一実施形態において、第2ピークYの最大強度に対する第1ピークXの最大強度の比率は、0.01以上1.50以下であり得る。第2ピークYの最大強度に対する第1ピークXの最大強度の比率は、炭化ポリドーパミン内の欠陥や窒素がドープされた程度に応じて異なり得る。
【0058】
一実施形態において、第1ピークXの半値全幅は80cm-1以上90cm-1以下であり、第2ピークYの半値全幅は100cm-1以上110cm-1以下であることができる。半値全幅とは、当該ピークの最大強度の半分であるときのピークの幅を意味することができる。第1ピークXの半値全幅と第2ピークYの半値全幅は、炭化ポリドーパミン内の欠陥や窒素がドープされた程度に応じて異なり得る。
【0059】
カバー部112、113に対するラマン分析は、カバー部112、113の外表面に対して行うことができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本体110の第3方向の中央部まで研磨した第1及び第2方向の断面に対して行うこともできる。
【0060】
一実施形態において、誘電体層111はポリドーパミンを含まなくてもよい。誘電体層111がポリドーパミンを含む場合、誘電体層111の機械的強度は改善できるものの、ポリドーパミンが積層型電子部品100の電気的特性と直接関連する誘電体層111に含まれると、積層型電子部品100の破壊電圧等が劣化するなど、副効果が発生する可能性がある。
【0061】
誘電体層111がポリドーパミンを含まない場合、誘電体層111には窒素が検出されないことがある。また、誘電体層111は、X線光電子分光法(XPS)を用いた分析の際に、N1sピークが検出されないことがある。また、誘電体層111に対するラマン分析の際に、1360cm-1から1380cm-1のラマンシフト及び1610cm-1から1630cm-1のラマンシフトのうち少なくとも1つでピークが検出されないことがある。
【0062】
一実施形態において、誘電体層111は、カバー部112、113に含まれたポリドーパミンの含有量より少ない含有量のポリドーパミンを含むことができる。誘電体層111の機械的強度を改善するために誘電体層111にポリドーパミンを添加する場合、積層型電子部品100の電気的特性が劣化することを防止するために、カバー部112、113に含まれたポリドーパミンの含有量より少ない含有量のポリドーパミンを誘電体層111に添加することが好ましい。誘電体層111がポリドーパミンを含む場合、ポリドーパミンは誘電体層111の結晶粒界GB2に配置されることができる。
【0063】
誘電体層111がポリドーパミンを含む場合、誘電体層111に対するラマン分析の際に、1360cm-1から1380cm-1のラマンシフトで第3ピークが検出され、1610cm-1から1630cm-1のラマンシフトで第4ピークが検出されることができる。一方、誘電体層111は、カバー部112、113に含まれたポリドーパミンの含有量より少ない含有量のポリドーパミンを含むため、上記第3ピークの強度は、第1ピークXの強度より低いことがあり、上記第4ピークの強度は、第2ピークYの強度より低いことがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
(実験例)
<サンプル作製>
BaTiO3粉末、エタノールなどの有機溶剤及びポリビニルブチラールなどのバインダーを混合してセラミックスラリーを製造した後、上記セラミックスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた。次に、セラミックグリーンシート上に、所定の厚さでNi粉末、バインダーなどを含む内部電極用導電性ペーストを設けた。
【0065】
次に、内部電極パターンが形成されていないカバー部用セラミックグリーンシートを積層した後、内部電極用導電性ペーストを印刷して内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを数十から数百層積層し、最後に内部電極パターンが形成されていないカバー部用セラミックグリーンシートを積層した後、圧着、切断及び焼成工程を行って本体を形成した。
【0066】
このとき、比較例の場合、カバー部用セラミックグリーンシートを形成するためのセラミックスラリーにドーパミンヒドロクロリドを添加しなかった。実施例1の場合、カバー部用セラミックグリーンシートを形成するためのセラミックスラリー全体100重量部に対して、ドーパミンヒドロクロリドを0.5重量部添加した。実施例2の場合、カバー部用セラミックグリーンシートを形成するためのセラミックスラリー全体100重量部に対してドーパミンヒドロクロリドを1重量部添加した。
【0067】
次に、Cu粉末、ガラスフリット、バインダー及び溶剤を混合した導電性ペーストに本体をディッピングした後、焼成して第1電極層を形成し、第1電極層上にNiめっき層及びSnめっき層を順次形成して第2電極層を形成した。これにより、比較例、実施例1及び実施例2のサンプルチップを設けた。
【0068】
<硬度及び靭性の評価>
その後、各サンプルのカバー部の硬度(hardness)及び靭性(toughness)を評価した。カバー部の硬度及び靭性は、カバー部の外表面に対してビッカース硬度計を用いて測定し、比較例、実施例1及び実施例2のそれぞれ20個のサンプルチップについて実施した。
【0069】
図11は、比較例と実施例の硬度(Hardness)を測定した結果を示すグラフであり、
図12は、比較例と実施例の靭性(Toughness)を測定した結果を示すグラフである。
【0070】
図11及び
図12を参照すると、実施例1及び実施例2は、比較例に比べて硬度及び靭性に優れることが確認できる。一方、カバー部用セラミックグリーンシートを形成するためのセラミックスラリー全体100重量部に対してドーパミンヒドロクロリドを1重量部以上添加したサンプルも同様に評価を行ったが、サンプルチップの脆性破壊により硬度及び靭性値が測定されなかった。これは、ドーパミンヒドロクロリドの含有量が過度になって発生した凝集体(agglomerate)の影響であるものと予想される。
【0071】
<耐湿信頼性の評価>
その後、比較例のサンプルチップと実施例2のサンプルチップに対する耐湿信頼性の評価を行った。耐湿信頼性の評価は、比較例及び実施例2のサンプルチップのそれぞれ400個について、温度85℃、湿度85%、3.75Vの電圧を8時間印加した後、絶縁抵抗IRの変化を測定した。
【0072】
図13は、(a)比較例の信頼性評価結果を示すグラフ及び(b)実施例2の信頼性評価結果を示すグラフである。
図13を参照すると、比較例は、実施例2に比べて、最初に絶縁抵抗IRが急激に低下するサンプルが存在することが確認できる。すなわち、疎水性(Hydrophobic)を有する窒素ドープされた炭化ポリドーパミンが結晶粒界に位置して水分浸透に対する障壁(barrier)としての役割を果たすため、実施例2は比較例に比べて耐湿信頼性に優れることが確認できる。
【0073】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定するものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0074】
また、「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記に提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態に説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【0075】
また、「第1、第2」などの表現は、ある構成要素と他の構成要素とを区分するために使用されるものであって、当該構成要素の順序及び/又は重要度などを限定しない。場合によっては、権利範囲を逸脱しない範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と命名されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:マージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:第1電極層
131b、132b:第2電極層
G1、G2:結晶粒
GB1、GB2:結晶粒界