(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001634
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】ハイブリッド火炎処理装置及びハイブリッド火炎処理方法
(51)【国際特許分類】
B29C 37/02 20060101AFI20241225BHJP
B25J 9/16 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B29C37/02
B25J9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063405
(22)【出願日】2024-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2023100692
(32)【優先日】2023-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023125542
(32)【優先日】2023-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000150512
【氏名又は名称】株式会社仲田コーティング
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】松野 竹己
(72)【発明者】
【氏名】松野 順平
【テーマコード(参考)】
3C707
4F201
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707BS12
3C707CY36
3C707DS01
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT11
3C707HS27
3C707KS29
3C707KT01
3C707KT05
3C707MS05
4F201AJ08
4F201BA08
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC05
4F201BC12
4F201BS03
4F201BS08
4F201BS10
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品に対し、バリ取り火炎処理をしながら、ケイ酸化炎処理を行なうハイブリッド火炎処理装置等を提供する。
【解決手段】バリを有する、表面温度が50℃以上である樹脂成形品につき、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行うハイブリッド火炎処理装置等であって、樹脂成形品を所定位置に保持するための把持装置としての第2のロボットアームと、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行なう、少なくとも一つの火炎処理部を備えた第1のロボットアームと、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリを有する、表面温度が50℃以上である樹脂成形品につき、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行うハイブリッド火炎処理装置であって、
前記樹脂成形品を所定位置に移動させて保持する把持装置としての第2のロボットアームと、
前記把持装置により保持された前記樹脂成形品に対して、前記バリ取り火炎処理及び前記ケイ酸化炎処理を行なう、少なくとも一つの火炎処理部を備えた第1のロボットアームと、
を有することを特徴とするハイブリッド火炎処理装置。
【請求項2】
少なくとも一つの前記火炎処理部が、前記樹脂成形品に対して、前記バリ取り火炎処理を行うバリ取り火炎処理部と、前記樹脂成形品に対して、前記ケイ酸化炎処理を行なうケイ酸化炎処理部と、を有しており、かつ、前記バリ取り火炎処理部及び前記ケイ酸化炎処理部を相互に切り替えるための切替装置を有することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド火炎処理装置。
【請求項3】
前記把持装置が、前記第2のロボットアームとしての、多軸移動するロボットアームであって、かつ、前記第2のロボットアームが、前記樹脂成形品を、前工程における金型成形セクションから取り出し、前記バリ取り火炎処理及び前記ケイ酸化炎処理を行なう前記所定位置に対して、搬送する手段としての機能を有していることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド火炎処理装置。
【請求項4】
前記火炎処理部が、前記第1のロボットアームとしての、多軸移動するロボットアームに取り付けてあり、かつ、前記第1のロボットアームが、所定処理後の前記樹脂成形品を、次工程における塗装セクションに対して、搬送する機能を有していることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド火炎処理装置。
【請求項5】
前記火炎処理部が、パイロット着火方式であって、前記火炎処理部の着火状態及び消火状態を検知するセンサーを有することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド火炎処理装置。
【請求項6】
前記第1のロボットアームが、前記バリ取り火炎処理を行なう第1Aのロボットアームと、前記ケイ酸化炎処理を行なう第1Bのロボットアームとの複数のロボットアームを有していることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド火炎処理装置。
【請求項7】
前記第1のロボットアームが、前記樹脂成形品を載置する固定具に、前記樹脂成形品の重量を測定する荷重計測部及び前記樹脂成形品の厚さを測定する厚さ計測部、或いは、いずれか一方を有していることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド火炎処理装置。
【請求項8】
バリを有する、表面温度が50℃以上である樹脂成形品につき、少なくとも一つの火炎処理部によって、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行なうハイブリッド火炎処理方法であって、下記工程(1)及び(2)を含むことを特徴とするハイブリッド火炎処理方法。
(1)前記樹脂成形品を、把持装置により、所定位置に移動させて保持する把持工程
(2)前記把持装置により保持された前記樹脂成形品に対して、前記火炎処理部によって、易接着処理のための前記ケイ酸化炎処理を行なうともに、前記バリ取り火炎処理を行なうハイブリッドバリ取り工程
【請求項9】
前記工程(2)において、前記バリ取り火炎処理及び前記ケイ酸化炎処理を、同時に行うことを特徴とする請求項8に記載のハイブリッド火炎処理方法。
【請求項10】
前記工程(2)において、前記バリ取り火炎処理及び前記ケイ酸化炎処理の切替工程を含み、前記バリ取り火炎処理を行った後に、前記ケイ酸化炎処理を行うことを特徴とする請求項8に記載のハイブリッド火炎処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品に対するハイブリッド火炎処理装置及びハイブリッド火炎処理方法に関する。
より具体的には、表面温度が所定温度以上の、バリを有する樹脂成形品に対し、バリ取り火炎処理をするとともに、易接着処理のためのケイ酸化炎処理を行なうハイブリッド火炎処理装置、及び、それを用いたハイブリッド火炎処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周縁部にバリを有する樹脂成形品のためのバリ取り作業は、樹脂成形品と、バリとに分断する工程と、樹脂成形品の周縁部に残る微小幅のバリを溶融、平滑化して、バリ取り仕上げを行う工程と、からなり、非常に時間のかかる作業であり、完成品の製造原価を押し上げる要因となっていた。
【0003】
そこで、樹脂成形品と、バリとを分断するとともに、樹脂成形品に残るバリを溶融して、その表面張力によって樹脂成形品に吸着させてバリの部分を平滑化するためのバリ取り装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、
図18(a)に示すように、周縁部にバリをもつ樹脂成形品を保持する保持手段201と、バリを構成する材料を溶融する高温の気体を噴出する高温気体噴出手段202と、高温気体噴出手段202を、樹脂成形品に沿い、かつ、樹脂成形品に近接したバリの部分に高温の気体を噴出するように駆動する三次元駆動装置203と、から構成されている。そして、高温気体噴出手段202により、樹脂成形品に近接したバリの部分を溶融して、樹脂成形品と、バリとを分断するとともに、樹脂成形品に残るバリを溶融して、その表面張力によって樹脂成形品に吸着させて平滑化するためのバリ取り装置200が提案されている。
【0004】
又、
図18(b)に示すように、格子体301の搬送途中に、搬送方向と交差する方向に格子体幅に亘ってバーナー302を配置し、格子体301をバーナー302の火炎中に通すことによりバリ取りを実施する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、格子体301の本体から伸びているバリは薄肉であって、熱容量が小さいので、バーナー302の火炎をあてると、速やかに溶融して消失する。そして、溶融したバリは、表面張力により格子体301の本体と一体化して、滑らかな表面が形成できるというバリ取り方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-71658号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11-54127号公報 (特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されたバリ取り装置は、それぞれ樹脂成形品のバリ取りのみに着目しており、次工程における、塗装前の表面改質処理(プライマー処理やコロナ火炎処理)を、事実上、同一セクションで、同時に行うというような構想は何ら見られなかった。
従って、樹脂成形品のバリ取りを終了した後、所定搬送装置を用いて、バリ取りセクションから、表面改質セクションに搬送させ、一所定時間経過後に、所定の表面改質処理を行う必要があった。
【0007】
よって、樹脂成形品を、バリ取りセクションから、表面改質セクションに搬送させる装置を設ける必要があって、かつ、その搬送時間が余計にかかってしまい、製造時間や製造コストの関係で、歩留まりが低くなり、かつ、小型化にも極めて不利であった。
又、樹脂成形品を、バリ取りセクションから、表面改質セクションに搬送させる間に、樹脂成形品の表面が帯電し、ほこりや異物が付着しやすいと言う問題が見られた。
その上、樹脂成形品を、バリ取りセクションから、表面改質セクションに搬送させる間に、樹脂成形品の温度が、事実上、室温まで低下することから、結露条件になり易く、所定の表面改質処理や塗装処理をする際に、処理ムラが生じやすいという問題も見られた。
【0008】
そこで、本発明の発明者は鋭意検討した結果、事実上、同一セクションで、表面温度が所定温度(例えば、50℃以上)の樹脂成形品に対して、バリ取り火炎処理及び易接着処理のためのケイ酸化炎処理をそれぞれ行うことによって、極めて短時間で、かつ、少スペースで、効果的に、それぞれの処理ができることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、樹脂成形品に対するバリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理の合計処理時間(ハイブリッド処理時間)を、著しく短縮することができ、処理装置の小型化等が容易なハイブリッド火炎処理装置、及び、それを用いたハイブリッド火炎処理方法につき、それぞれ提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、バリを有する、表面温度が少なくとも50℃以上である樹脂成形品につき、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行うハイブリッド火炎処理装置であって、樹脂成形品を所定位置に移動させて保持する把持装置としての第2のロボットアームと、把持装置により保持された樹脂成形品に対して、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行なう、少なくとも一つの火炎処理部を備えた第1のロボットアームと、を有することを特徴とするハイブリッド火炎処理装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明のハイブリッド火炎処理装置(ケイ酸化炎処理装置+非ケイ酸化炎処理の組み合わせ処理装置、以下、単に、ハイブリッド火炎処理装置と称する場合がある。)によれば、事実上、同一セクションにおいて、実質的に同時期に、バリを有する、所定表面温度の樹脂成形品に対し、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理の複合処理(以下、単に、ハイブリッド火炎処理と称する場合がある。)をすることができる。
そのため、ハイブリッド火炎処理時間を、著しく短縮でき、かつ、小型化が容易で、帯電防止処理に基づく異物等の付着が少ないハイブリッド火炎処理装置を効果的に提供することができる。
そして、取り出した樹脂成形品を、室温まで冷却することなく、ハイブリッド火炎処理及び塗装処理まで行うことができるため、結露条件になりにくく、より処理ムラなく塗装することができる。
【0011】
又、本発明のハイブリッド火炎処理装置を構成するにあたり、少なくとも一つの火炎処理部が、樹脂成形品に対して、バリ取り火炎処理を行うバリ取り火炎処理部と、樹脂成形品に対して、ケイ酸化炎処理を行なうケイ酸化炎処理部と、を有しており、かつ、バリ取り火炎処理部及びケイ酸化炎処理部を相互に切り替えるための切替装置を有することが好ましい。
このように構成することによって、樹脂成形品における所望位置(例えば、縁部や、装飾予定部)に対応させて、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理、或いは、いずれか一方の処理を、容易に選択実施することができる。
【0012】
又、本発明のハイブリッド火炎処理装置を構成するにあたり、把持装置が、第2のロボットアームとしての、多軸移動するロボットアームであって、かつ、第2のロボットアームが、樹脂成形品を、前工程における金型成形セクションから取り出し、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行なう所定位置に対して、搬送する手段としての機能を有していることが好ましい。
このように構成することによって、所望の処理位置に対応させて、樹脂成形品の大小や長短等によらず、樹脂成形品の位置を容易に変更することができ、ひいては、より精度良く、かつ短時間で、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行うことができる。
【0013】
又、本発明のハイブリッド火炎処理装置を構成するにあたり、当該火炎処理部が、第1のロボットアームとしての、多軸移動するロボットアームに取り付けてあり、かつ、第1のロボットアームが、所定処理後の樹脂成形品を、次工程における塗装セクションに対して、搬送する機能を有していることが好ましい。
このように構成することによって、樹脂成形品の大小や長短等によらず、所望の処理位置に対応させて、第1のロボットアームを介して、より精度良く、かつ短時間で、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行うことができる。
【0014】
又、本発明のハイブリッド火炎処理装置を構成するにあたり、当該火炎処理部が、パイロット着火方式であって、火炎処理部の着火状態及び消火状態を検知するセンサーを有することが好ましい。
このように構成することによって、火炎処理部の燃焼ガスの少量化に寄与することができ、更には、着火状態及び消火状態を検知するセンサーによって、より確実に、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行ったり、終了したりすることができる。
【0015】
又、第1のロボットアームが、バリ取り火炎処理を行なう第1Aのロボットアームと、ケイ酸化炎処理を行なう第1Bのロボットアームとの複数のロボットアーム(複腕のロボットアームを含む。)を有していることが好ましい。
このように構成することによって、バリ取り火炎処理と、ケイ酸化炎処理とを、異なる対象製品に対しても、所定の流れ作業中に行うことができ、時間当たりの生産数をより増加させることができる。
更に、第1Aのロボットアームと、第1Bのロボットアームとで、同時に各火炎処理を行なうことができ、製品一つ当たりの生産時間(以降、サイクルタイムと称する場合がある。)をより短縮させることができる。
【0016】
又、第1のロボットアームが、樹脂成形品を載置する固定具に、樹脂成形品の重量を測定する荷重計測部及び樹脂成形品の厚さを測定する厚さ計測部、或いは、いずれか一方を有していることが好ましい。
このように構成することによって、樹脂成形品の重量や厚さ等の品質を確認しながら種々の火炎処理を行なうことができ、品質のバラツキをより低下させることができる。
【0017】
又、本発明の別の態様は、バリを有する、所定表面温度(少なくとも50℃以上)の樹脂成形品に対して、少なくとも一つの火炎処理部によって、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行なうハイブリッド火炎処理方法であって、下記工程(1)及び(2)を含むことを特徴とするハイブリッド火炎処理方法である。
(1)所定表面温度の樹脂成形品を、所定位置に移動させて保持する把持工程
(2)把持装置により保持された所定表面温度の樹脂成形品に対して、火炎処理部によって、易接着処理のためのケイ酸化炎処理を行なうともに、バリ取り火炎処理を行なうハイブリッドバリ取り工程
このように実施することによって、事実上、同一セクションにおいて、少なくとも一つの火炎処理部によって、バリを有する、所定表面温度(少なくとも50℃以上)の樹脂成形品に対して、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行うことができる。
従って、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理時間の合計処理時間を、著しく短縮でき、かつ、小型化が容易で、帯電防止処理に基づく異物等の付着が少ない所定処理を行うことができる。
【0018】
又、本発明のハイブリッド火炎処理方法を実施するにあたり、工程(2)において、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を、同時に行うことが好ましい。
このように実施することによって、樹脂成形品における所望位置(例えば、縁部や、装飾予定部)におけるバリ取り処理と、ケイ酸化炎処理とを、一度の動作で、短時間で実施することができる。
【0019】
又、本発明のハイブリッド火炎処理方法を実施するにあたり、工程(2)において、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理の切替工程を含み、バリ取り火炎処理を行った後に、ケイ酸化炎処理を行うことが好ましい。
このように実施することによって、樹脂成形品における所望位置(例えば、縁部や、装飾予定部)に対応させて、ハイブリッド火炎処理として、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を、それぞれ容易に選択実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1の実施形態におけるハイブリッド火炎処理装置を説明するために供する図である。
【
図2】
図2は、ハイブリッド火炎処理装置の別の態様を説明するために供する図である。
【
図3】
図3は、ハイブリッド火炎処理におけるロボットアームに取り付けてなる火炎処理部を説明するために供する図である。
【
図4】
図4(a)~(b)は、それぞれ火炎処理部の態様を説明するために供する図である。
【
図5】
図5は、ハイブリッド火炎処理装置のパイロット着火装置及びセンサーを説明するために供する図である。
【
図6】
図6は、ハイブリッド火炎処理による被処理物(バンパ)を説明するために供する図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態におけるハイブリッド火炎処理装置を説明するために供する図である。
【
図8】
図8(a)~(c)は、第2の実施形態のハイブリッド火炎処理装置における、樹脂成形品の固定具の態様を説明するために供する図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態におけるハイブリッド火炎処理装置を説明するために供する図である。
【
図10】
図10(a)~(b)は、第3の実施形態における火炎処理部の別の態様を説明するために供する図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態における固定具と、回転装置とを説明するために供する図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態における固定具と、計測部とを説明するために供する図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態における印字装置を説明するために供する図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態における被処理物(バンパ)と、ロボットアームとの動作例を説明するために供する図である。
【
図15】
図15は、第4の実施形態におけるハイブリッド火炎処理工程を含む被処理物の製造フロー(その1)を説明するために供する図である。
【
図16】
図16は、ハイブリッド火炎処理工程を含む被処理物の別の製造フロー(その2)を説明するために供する図である。
【
図17】
図17(a)~(b)は、ハイブリッド火炎処理工程、及び、従来の火炎処理工程における、それぞれ被処理物の表面温度を説明するために供する図である。
【
図18】
図18(a)~(b)は、それぞれ従来のバリ取り装置を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、
図1及び
図2に例示するように、バリを有する、表面温度が50℃以上の樹脂成形品に対して、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行うハイブリッド火炎処理装置10である。
そして、樹脂成形品12を所定位置に移動させて保持する把持装置としての第2のロボットアーム24と、把持装置により保持された樹脂成形品12に対して、バリ取り火炎処理を行うとともに、ケイ酸化炎処理を行なう、少なくとも一つの火炎処理部18を備えた第1のロボットアーム22と、を有することを特徴とするハイブリッド火炎処理装置10である。
以下、
図1~
図6を適宜参照して、本発明のハイブリッド火炎処理装置(以下、単に、ハイブリッド火炎処理装置と称する場合がある。)の態様を具体的に説明する。
【0022】
1.基本的構成
(1)ハイブリッド火炎処理装置
図1及び
図2に例示するように、基本的に、ハイブリッド火炎処理装置10は、基本的に、金型成形後のバリを有するとともに、所定表面温度(少なくとも50℃以上)の樹脂成形品12に対してハイブリッド火炎処理を施す装置である。
従って、火炎処理を行ないながら、被処理物である樹脂成形品12の表面や、側面を一部含む縁部等を加熱して、バリ取り処理するとともに、かつ、易接着性処理であるケイ酸化炎処理を行なう、少なくとも一つの火炎処理部18を備えている。
【0023】
又、
図3に示すように、ハイブリッド火炎処理装置10において、通常、バーナー18a等を、先端部に備えた、少なくとも火炎処理部18が、多軸移動可能なロボットアーム(第1のロボットアームと称する場合がある。)22に取り付けてあることが好ましい。
従って、第1のロボットアームは、360°回転移動を含む、任意に移動させられるべく、通常、6軸ロボットアームであることが好ましい。
【0024】
そして、
図4(a)に示すように、火炎処理部18は、火炎処理時間の短縮等のために、バリ取り用バーナーと、ケイ酸化炎処理用バーナーが共用されていて、少なくとも一つのケイ酸化炎処理用の火炎を噴出する構成であることが好ましい。
もちろん、かかるバリ取り用バーナーと、ケイ酸化炎処理用バーナーが共用されている場合であっても、各種樹脂成形品や、使用態様に対応させるべく、火炎処理部18に、所定の切替装置を設けて、一つのバーナーから、バリ取り用火炎(非ケイ酸化炎)のみを噴出させることも好ましいし、あるいは、ケイ酸化炎のみを噴出させることも好ましい。
【0025】
従って、
図4(a)に示す火炎処理部18の場合は、第1のロボットアーム22としての、多軸移動するロボットアームが、バリ取り用バーナーと、ケイ酸化炎処理用バーナーが共用されたバーナーを備えており、予め、樹脂成形品12の形態をティーチィングされたルートに沿って、6軸移動しながら、樹脂成形型のバリを有する縁部等の所定箇所につき、ケイ酸化炎を噴出させて、同時処理することができる。
【0026】
一方、
図4(b)に示すように、火炎処理部18´は、ケイ酸化炎処理用バーナー18xと、バリ取り用バーナー18yと、独立的に設けられており、バリ取り用火炎と、ケイ酸化炎処理用火炎とが、同時噴出、又は、例えば、60秒以内の短時間に、それぞれ所定火炎を順次に噴出させる構成としていても良い。
このように構成することによって、大面積や、形状が大きく異なる樹脂成形品等に対応することができ、しかも、バーナーの故障等にも迅速に対応でき、その上、所定の切替装置を省略することも可能である。
【0027】
従って、
図4(b)に示す火炎処理部18´の場合は、第1のロボットアーム22としての、多軸移動するロボットアームが、予め、樹脂成形品12の形態をティーチィングされた状態で、例えば、6軸移動しながら、バリ取り用火炎と、ケイ酸化炎処理用火炎を、事実上、同時に噴出させることができる。
【0028】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、ハイブリッドバリ取り処理のための第1のロボットアーム22が、第2のロボットアーム24に保持された樹脂成形品12に対して、所定のハイブリッドバリ取り処理を行うことも好ましい。
より具体的には、樹脂成形品12が、第2のロボットアーム24に保持された状態で、樹脂成形品12の縁部を含む側面(A面)を、第1のロボットアーム22の火炎処理部18でハイブリッドバリ取り処理することが好ましい。
そして、樹脂成形品12を水平方向に、所定角度(約180°)、回転処理させて、縁部を含む側面(B面)を、ハイブリッドバリ取り処理することが好ましい。
すなわち、第1のロボットアーム22の火炎処理部18と、第2のロボットアーム24とのインターロックを防止するためである。
なお、A面及びB面とは、特に厳密に区分けされていないものの、バンパーを例として、通常、自動車に取り付けた状態での鉛直上方側の縁部をA面とし、鉛直下方側の縁部をB面としている。
【0029】
又、別の態様として、樹脂成形品の縁部を含む側面(A面)をハイブリッドバリ取り処理した後、ロボットアームを、樹脂成形品に対して、水平方向の反対面に回り込ませて、縁部を含む側面(B面)を、ハイブリッドバリ取り処理することが好ましい。
この理由は、このような構成とすることにより、把持装置が、垂直及び水平方向の2軸に移動する簡易な装置であっても、より効率的にロボットアームの火炎処理部と、把持装置との干渉を防止するためである。
【0030】
(2)樹脂成形品
バリ取り(バリ取り仕上げも含む)が施される被処理物である樹脂成形品12としては、
図5に示すような自動車用バンパが典型的である。
又、かかる樹脂成形品として、自動車用内装材、自動車用フロントパネル、自動車用シート等、各種自動車部品に適用することができる。
これらの自動車部品は、大型樹脂成形品であって、複数の大小のバリが発生しやすい一方、外観上、安全上、平滑な表面が要求されるためである。
【0031】
より具体的には、かかる自動車部品、特に、バンパは、通常、ポリプロピレン樹脂(以下、PPという場合がある。)や、それ以外のオレフィン樹脂、更には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等を、金型を用いた射出成形法やブロー成形法によって得られる所定形状の樹脂成形品であることが好ましい。
【0032】
又、その成形直後に、金型から脱離した状態の樹脂成形品は、通常、金型の分離線に対応してなる樹脂成形品の周縁部に、薄皮的なバリを有していることがほとんどである。
従って、本発明のハイブリッド火炎処理装置によって、薄皮的なバリ、例えば、厚さ0.01~1mm未満の平板状バリに対しては、本発明のハイブリッド火炎処理装置10によって、ケイ酸化炎処理のみを行なうとともに、樹脂成形品の周縁部、更には、側面部(A面やB面)も一部含んで、表面改質することが可能である。
【0033】
一方、比較的大きなバリ、例えば、厚さ1~10mm程度の平板状バリに対しては、選択的に、通常の火炎処理(非ケイ酸化炎処理)を比較的長時間行ない、次いで、比較的短時間で、ケイ酸化炎処理を行うことが好適である。
すなわち、非ケイ酸化炎処理と、ケイ酸化炎処理との二段階で、相互に切替えて、火炎処理を行うことによって、ケイ酸化炎を生成する、比較的高価な、ケイ素含有化合物の消費量を、相対的に少なくすることができる。
【0034】
なお、このような樹脂成形品の大きさは、
図6に示される自動車用バンパの例であれば、横幅が1000~2000mm、奥行きが200~800mm、高さが200~500mmであり、全周の長さは樹脂成形品1個あたり、2000~5000mmであることが好ましい。
但し、複数の大きさや厚さ等のバリが発生する樹脂成形品であれば、このような寸法外であっても、本発明のハイブリッド火炎処理装置を好適に適用することができる。
【0035】
2.火炎処理部1
次いで、
図3及び
図4を再び参照しながら、バリ材料を溶融するとともに、ケイ酸化炎を噴出する火炎処理部18について、より具体的に説明する。
すなわち、
図3に示すように、第1のロボットアーム22は、矢印で示すように、互いに直交するX軸と、Y軸と、Z軸の3軸方向に適宜移動し、かつ、それぞれ回転駆動も可能であって、6軸ロボットアームの構成であることが好ましい。
かかる第1のロボットアームであれば、サーボモーターやパルスモーターによって、360°方向の任意位置へ移動が可能であって、それにともない、樹脂成形品に対して、火炎処理部18を、所定位置に移動させることができる。
【0036】
又、
図1及び
図2に示すように、かかる第1のロボットアーム22は、制御装置26に接続されており、かかる制御装置26を介して、第1のロボットアーム22に取り付けてある火炎処理部18の位置移動等を制御しつつ、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理からなるハイブリッド火炎処理を効率的に実施することができる。
すなわち、保持された状態の樹脂成形品に対して、第1のロボットアームにおける火炎処理部が、ほぼ水平方向に維持された樹脂成形品の表面や縁部との間の一定距離、例えば、0.1~10cmの所定間隔を保持しつつ、なぞるように、ケイ酸化炎を噴射しつつ、ハイブリッド火炎処理を実施することができる。
【0037】
ここで、火炎処理部18には、通常、
図3及び
図4に示すような、所定のバーナー18aが設けてあることが好ましい。
すなわち、樹脂成形品の縁等にあるバリに対しては、所定のバーナー18aを備えた火炎処理部18を用いて、選択的に、ケイ酸化炎による火炎処理を行ない、表面を平滑化するとともに、表面改質処理として、易接着処理をすることができる。
【0038】
なお、ケイ酸化炎処理とは、所定量(例えば、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、10モル%以下)のケイ素含有化合物(テトラメチルシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等)、及び、任意成分として、エタノール等のアルコールを燃料ガス中に添加し、それに由来したケイ酸化炎を被処理物の表面に吹き付けて、その上に形性する塗膜等の密着性を強固にする、易接着改質技術を意味する。
【0039】
但し、バーナーは、少なくとも一つあれば良いが、更に言えば、バリ取り用のケイ酸化炎を噴出するバーナーと、表面改質するためのケイ酸化炎を噴出するバーナーと、をそれぞれ設けることが好ましい。
又、
図4(a)に示すように、バーナー18aの末端部には、配管18dを介して、燃料ガスを収容した燃料源(ケイ酸化炎処理の場合は、所定のケイ素含有化合物や、任意成分としてのアルコール化合物を含む。)と連通しており、適宜、所定の燃料ガスを移送して、バーナー18aの出口において燃焼させることが好ましい。
そして、バーナー18aの末端部に、配管18dとは別に、配管18cを介して、燃料ガスと混合するための空気(酸素)を取り入れることが好ましい。
【0040】
ここで、火炎処理部に設けてあるバーナーは、配管を介して移送されるプロパンガスや天然ガス等の可燃ガスと、配管を介して移送される空気とを、ジョイント部分にて、均一に混合させて得られる燃料ガス(所定量のケイ素含有化合物を含む。)に由来した火炎を噴射するための装置である。
従って、火炎処理部の形態は、特に制限されるものではないが、例えば、複数のガス出口が並列的に配置されたバーナーを使用することが好ましい。
すなわち、並列的に、かつ横方向に配列されたガス入口と、バーナー本体と、バーナー延長部と、ガス流量計、弁と、ガス貯蔵部等からなるバーナーが好適である。
【0041】
そして、二種類のガス入口から、ガス流量計を介してそれぞれ導入されたLPGガス及び酸素等は、圧力損失が可及的に少なくなるように、ガス出口付近までの途中で混合されることがない、いわゆる先混合型バーナーであることが好ましい。
更に、火炎を所定位置のみに噴射可能とし、予定外の箇所に放射されないよう、バーナー出口において、噴射方向、少なくとも噴射方向の上方側には、制御板を設けることが好ましい。
【0042】
又、燃料ガスや樹脂成形品の種類にもよるが、かかる火炎温度としては約500~1000℃の範囲であり、火炎長さは約5~40mmの範囲が好適である。そして、樹脂成形品のバリに対して、バーナー18aから火炎を噴射して、当該部分をバリ取りしながら溶融させて、平滑化する構成である。
なお、
図4(a)に示すように、より選択的にバリ取り作業を実施するため、バーナー18aの先端孔18bの内径を0.2~2.0mmとして、火炎を噴出させることが好ましい。
【0043】
3.火炎処理部2
又、
図5に示すように、火炎処理部18が、パイロット着火方式である態様が好ましい。
この理由は、このように火炎処理部18を構成することにより、バーナー18a等に対して、何度も着火することによる着火部の耐久性や、火花が飛ぶことを抑制して、安全性を確保することができるためである。
【0044】
又、火炎処理部においては、極め細かく着火及び消火を繰り返すことにより、燃料ガスの消費を少なくすることができるとともに、二酸化炭素の発生量を少なくすることができるためである。
すなわち、火炎処理部において、常に火炎を噴射しているとなると、大量の燃料ガスの消費が生じて、無駄になるばかりか、安全性についても劣る可能性がある。それに対して、パイロット着火方式を採用し、燃料ガスの消費が少ない種火を準備しておくことにより、燃料ガスの消費を著しく低下することができる。又、種火であることから、過剰発火等の問題も少なくなる。
【0045】
なお、
図5に示すように、センサーである火炎検知手段19によって、その状態を検知して、安全装置により、火炎処理部18における火炎照射を確実に中止したり、あるいは条件によっては、再び着火させたりすることが好ましい。
例えば、火炎検知手段19として、紫外線光電管ウルトラビジョン(山武アドバンスオートメーションカンパニー製)19bを備えることにより、種火19cが、ついていることを確認することができる。
【0046】
その場合、
図5に示すように、仮に、種火19cが消えたことが確認されると、種火19c用の燃料ガスの供給を止めることになる。更に、別の火炎検知手段19aを備えることにより、種火19cからバーナー18aに火が移って、ついていることや、バーナー18aから安定的に火炎が噴射されていることを確認することができる。
よって、このように複数の火炎検知手段19a、19bを備えた火炎処理部18を構成することにより、火炎処理部18の安全性や経済性を担保できるとともに、バリ取り作業の安定性を高度に保つことができる。
【0047】
4.切替装置
次いで、任意構成ではあるが、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理をそれぞれ切り替えるための切替装置を設けることも好ましい。
より具体的には、切替装置は、ケイ酸化炎処理及び通常の火炎処理(非ケイ酸化炎処理)の切り替え機能を発揮する制御装置である。
従って、かかる制御装置を介して、ロボットアームに取り付けてある火炎処理部における、火炎の種類が切り替えられ、バリの大きさや、表面改質面積等に対応して、ハイブリッド火炎処理(ケイ酸化炎処理+バリ取り用火炎処理の複合)、或いは、バリ取り用火炎処理のみを効率的に実施することができる。
【0048】
なお、切替装置としての制御装置は、ロボットアームの位置制御システムや樹脂成形品のティ-チング機構(形状記憶装置)等を含むことが好ましい。
この理由は、このような制御装置を備えることにより、樹脂成形品の存在場所を正確に認識し、更には、樹脂成形品の形状や大きさ等にかかわらず、火炎発生部において、均一かつ迅速なバリ取りが可能となるためである。
そして、制御装置において、樹脂成形品の位置や形状等を一旦認識し、記憶した後は、その認識した情報に基づいて、ロボットアームを動作させ、確実にバリ取り処理やケイ酸化炎処理を実施することができる。
【0049】
5.把持装置
又、
図1及び
図2に例示するように、ハイブリッド火炎処理装置10は、把持装置としての第2のロボットアーム24を有していることを特徴としている。
かかる第2のロボットアームは、火炎処理部により、樹脂成形品に対して、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行う際に、所定位置に保持しておくための装置である。
従って、
図1及び
図2に例示するように、樹脂成形品12の表面を吸引して持ち上げるための吸引装置14を備えていることが好ましい。
更に、特に図示しないものの、ロボットアームの先端に、樹脂成形品を挟持するためのクランプ装置を備えていることも好ましい。
【0050】
又、把持装置の駆動部としての第2のロボットアームは、多軸移動するロボットアームであることが好ましい。
すなわち、
図1に例示するように、第2のロボットアーム24は、少なくとも垂直方向(Z軸)と、水平方向に沿った1軸方向(X軸又はY軸)との2軸に動作するアームであることが好ましい。
そして、第2のロボットアームが、樹脂成形品を、前工程における金型成形セクションから取り出し、バリ取り火炎処理及びケイ酸化炎処理を行なう所定位置に対して、搬送する手段としての機能を有していることが好ましい。
この理由は、かかる第2のロボットアームであれば、容易に樹脂成形品を、所定位置に保持した状態にでき、樹脂成形品に対して、そのままハイブリッド火炎処理を行うことができるためである。
更に、把持装置を、金型成形セクションから、樹脂成形品を取り出して、ハイブリッド火炎処理エリアに移動させる搬送装置としても使用することにより、ハイブリッド火炎処理装置の小型化にも資することができるためである。
従って、第2のロボットアームは、少なくとも1方向に回転動作できることが好ましく、3方向に回転動作できることが更に好ましい。
ここで、後述するように、ハイブリッド火炎処理装置が、樹脂成形品を載置するための固定具を有する場合に、第2のロボットアームは、火炎処理の際に、樹脂成形品を把持し続ける必要はなく、樹脂成形品を搬送する搬送装置として使用することが好ましい。
【0051】
又、把持装置は、後述する第2及び第3の実施形態における搬送装置、移動装置、回転装置等を備えていることが好ましい。
この理由は、かかる装置を備えていることにより、より迅速かつ精度良く、所定処理を行なうことができるためである。
【0052】
6.仮固定具
又、特に図示しないものの、樹脂成形品の仮固定具は、所定の樹脂成形機から取り出された状態で、周縁部にバリを有する樹脂成形品を、仮置きするための載置台を設けることが好ましい。
この理由は、かかる樹脂成形品の仮固定具を用いることにより、樹脂成形品の表面温度の調整が容易になり、かつ、温度調整をしている時間を利用して、次の、樹脂成形品を、金型生産等することができるためである。
なお、かかる樹脂成形品の仮固定具は、樹脂成形品である自動車用バンパ等の外形に対応すべく、通常、両端部分が持ち上がった舟形のフレーム枠と、吸引装置と、ストッパと、から構成してあることが好ましい。
【0053】
又、樹脂成形品に対する吸引装置については、特に図示しないものの、吸引部と、弾性部材からなる吸引室と、吸引部の圧力を調整するための圧力弁と、から構成してあることが好ましい。
この理由は、このような吸引装置であれば、基本的に弾性部材から構成されているため、比較的大きな樹脂成形品であっても、表面等に損傷を与えることなく、確実に固定することができるためである。
【0054】
7.筐体
そして、特に図示しないものの、安全上の観点から、火炎処理部は、概ね直方体状に組み立てられた筐体中に収容されており、火炎処理部等の配置エリアと、ハイブリッドバリ取りするハイブリッド化炎処理エリアと、所定のバリを有する樹脂成形品を搬入する搬入エリアと、を備えていることが好ましい。
すなわち、筐体の外部を覆う壁パネルが設けてあり、火炎処理部のハイブリッド火炎が、外部に漏れないように構成してあることが好ましい。
【0055】
又、筐体は、金型成形セクションから、所定のバリを有する樹脂成形品を搬入するための開口部を有しており、当該開口部に、シャッタを設けてあることが好ましい。
更に、筐体は、バリを取った後、次の工程に樹脂成形品を搬出するための開口部を有しており、当該開口部に、シャッタを設けてあることも好ましい。
すなわち、筐体中に収容されることにより、火炎処理部の安全性や経済性を担保できるとともに、ロボットアームの駆動により、所定のバリを有する樹脂成形品に対して、バリ取り火炎処理作業の迅速処理を担保することができる。
【0056】
又、筐体は、下部に、2つの稼動レールが取り付けてあることが好ましい。
この理由は、ハイブリッド火炎処理する樹脂成形品を、金型成形セクションから取り出して、迅速に、ハイブリッド火炎処理エリアの所定位置まで搬送することができるためである。
【0057】
一方、バリ取りする樹脂成形品を、第2のロボットアームによって、金型から取り出したバリ取りする樹脂成形品を、その表面温度が、例えば、50℃以上、より好ましくは、50~80℃の表面温度、更に好ましくは55~75℃の表面温度の状態でもって、ハイブリッドバリ取りするハイブリッド化炎処理エリアに搬送することも好ましい。
そして、その状態で、火炎処理部によって、ハイブリッドバリ取り処理を実施することも好ましい。
【0058】
8.前処理部
ハイブリッド火炎処理装置による、樹脂成形品の表面改質処理の前工程処理として、所定の前処理部を設けることが好ましい。
すなわち、
図1及び
図2に示すように、通常、樹脂成形品12の金型成形セクション30が設けてあり、かかる金型成形セクション30において、射出成形機や押出成形機等を用い、所定金型内に、ポリプロピレン樹脂等を溶融状態で導入して、樹脂成形品として、自動車のバンパ等を形成することが好ましい。
よって、金型成形セクション30から、第2のロボットアーム24を用いて、所定温度の樹脂成形品12を、搬送路32を介して、ハイブリッド火炎処理エリアに搬送することになる。
【0059】
具体的には、前処理部は、一例として、樹脂成形品の裏面側に相当する第1金型と、樹脂成形品の表面側に相当する第2金型と、第1金型及び第2金型を締め付ける型締め装置と、型締め装置によって組み合わされた金型の内部に樹脂を投入する射出成形機とを備えることが好ましい。
この理由は、このように構成することで、樹脂成形品を成形した後、第1金型及び第2金型を分離することにより、樹脂成形品の半面を容易に露出させることができるためである。
そして、露出した面を、搬送装置に設けた吸引装置により、吸引して、容易に次工程であるハイブリッド火炎処理エリアの所定位置まで搬送することができるためである。
従って、第1金型及び第2金型の型締め、射出成形機による型締めされた金型内部への樹脂の投入、第1金型及び第2金型の分離、搬送装置による露出させた樹脂成形品の取出し等の一連の動作を自動的に行うことが好ましい。
なお、各構成要素を、直動する油圧シリンダ、エアシリンダ、モータ等に固定し、パソコンやシーケンサ等の制御装置によって、動作させることで自動化させることができる。
【0060】
9.後処理部
又、ハイブリッド火炎処理装置によって、バリ取り処理及び表面改質処理等された樹脂成形品に対する次工程処理として、所定の後処理部を設けることが好ましい。
すなわち、後処理部において、通常、表面改質処理された樹脂成形品の表面に対して、塗装処理を行ったり、形成した塗膜に対する検査工程等を実施したりすることが好ましい。
その際、樹脂成形品の表面にケイ酸化炎処理等が施されていると、表面自由エネルギーが向上し、親水性が高まり、帯電防止機能を発揮し、周囲に存在する塵、ほこり、更には、ハイブリッド火炎処理により生じた低分子量物等の付着を有効に防止することができる。
【0061】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、
図7に示すように、第1のロボットアーム22が、樹脂成形品12に対して、バリ取り火炎処理を行なう第1Aのロボットアーム22aと、ケイ酸化炎処理を行なう第1Bのロボットアーム22bとの複数のロボットアームを有しているハイブリッド火炎処理装置である。
そして、
図8に示すように、かかるハイブリッド火炎処理装置の一部として、樹脂成形品12を所定位置に載置しておくための固定具23や、重量や厚さ測定をする計測部等を更に備えた態様である。
以下、
図7~
図8を適宜参照して、本発明のハイブリッド火炎処理装置の別の態様を具体的に説明する。
なお、第2の実施形態におけるハイブリッド火炎処理装置を説明するにあたり、第1の実施形態で説明したハイブリッド火炎処理装置と重複する部分については、再度の説明を省略する場合もある。
【0062】
1.第1Aのロボットアーム
本発明のハイブリッド火炎処理装置は、
図7に示すように、第1のロボットアーム22における複数のロボットアームの一つとして、バリ取り火炎処理を行なうための第1Aのロボットアーム22aを備えていることが好ましい。
この理由は、このように第1Aのロボットアーム22aを備えていることにより、バリ取り火炎処理と、ケイ酸化炎処理とを、インライン化でき、製品のサイクルタイムをより短縮させることができるためである。
【0063】
又、第1Aのロボットアームとしては、基本的に、第1の実施形態と同様の構成とすることができ、通常、少なくとも、バーナー等を先端部に備えた火炎処理部が、多軸移動可能なロボットアームに取り付けてある構成であることが好ましい。
この理由は、このような構成とすることにより、複雑な形状を有する樹脂成形品であっても、バリに対して、より効率的な方向から火炎を当てることができるためである。
【0064】
又、本発明のハイブリッド火炎処理装置の制御装置は、第1Aのロボットアームのバリ取り火炎処理の時間Taとして、特に限定されないものの、通常、90秒以下に設定されていることが好ましい。
この理由は、このような時間に設定されていることにより、後述する第1Bのロボットアームにおけるケイ酸化炎処理時間と合わせて、より効率的にロボットアームを動作させることができるためである。
従って、第1Aのロボットアームのバリ取り火炎処理の時間Taとしては、通常、1~60秒の範囲内の値であることが好ましく、3~40秒の範囲内の値であることがより好ましく、5~30秒の範囲内の値であることが更に好ましい。
ここで、ハイブリッド火炎処理装置の制御装置とは、一般的な制御装置が使用できるものの、通常、PC、マイコン、シーケンサ等により構成することができる。
【0065】
2.第1Bのロボットアーム
第1Bのロボットアームは、
図7に示すように、第1のロボットアーム22における複数のロボットアームの一つとして、ケイ酸化炎処理を行なうための第1Bのロボットアーム22bを備えていることが好ましい。
この理由は、このように第1Bのロボットアーム22bを備えていることにより、バリ取り火炎処理と、ケイ酸化炎処理とを、インライン化でき、製品のサイクルタイムをより短縮させることができるためである。
【0066】
又、第1Bのロボットアームとしては、基本的に、第1の実施形態と同様の構成とすることができ、通常、少なくとも、バーナー等を先端部に備えた化炎処理部が、多軸移動可能なロボットアームに取り付けてある構成であることが好ましい。
この理由は、このような構成とすることにより、複雑な形状を有する樹脂成形品であっても、バリに対して、より効率的な方向から火炎を当てることができるためである。
【0067】
又、本発明のハイブリッド火炎処理装置の制御装置は、実質的に、待ち時間等がなくなることから、第1Bのロボットアームのケイ酸化炎処理の時間Tbとして、第1Aのロボットアームのバリ取り火炎処理の時間Taと実質的に同一であって、通常、90秒以下に設定されていることが好ましい。
【0068】
但し、第1Bのロボットアームのバリ取り火炎処理の時間Tbに関し、以下の式(1B)を満たすように、設定されていることがより好ましい。
Ta/4≦Tb≦3×Ta (1B)
この理由は、このような時間に設定されていることにより、第1Aのロボットアームにおけるバリ取り火炎処理時間と合わせて、より効率的にロボットアームを動作させることができるためである。
【0069】
従って、以下の式(2B)を満たしていることがより好ましく、式(3B)を満たしていることが更に好ましい。
Ta/3≦Tb≦2×Ta (2B)
Ta/2≦Tb≦1.5×Ta (3B)
【0070】
3.第1Cのロボットアーム
本発明のハイブリッド火炎処理装置は、第1のロボットアームにおける複数のロボットアームの一つである、ゲートカット部として、金型成形セクションから取り出した樹脂成形品のゲート部分のバリを除去するための第1Cのロボットアーム22cを備えていることが好ましい。
この理由は、このように第1Cのロボットアーム22cを備えていることにより、金型成形セクションにおける射出成形のように、製造上、防ぐことが難しい、樹脂を注入する入口(以降、ゲートと称する場合がある。)に発生する突起状のバリをより効果的に除去することができるためである。
従って、第1Cのロボットアーム22cは、第1の実施形態と同様の構成とすることが好ましい。
一方、第1の実施形態とは異なり、先端部に、少なくとも、突起状のバリであるゲートを除去するためのナイフ刃、ノコギリ刃、回転刃、グラインダー刃、やすり等のいずれか一つを有する構成とすることも好ましい。
この理由は、このような構成とすることにより、火炎処理では除去することが難しい、比較的大きいバリを、バリ取り火炎処理前に、予め除去することができ、サイクルタイムを、より短縮することができるためである。
【0071】
又、本発明のハイブリッド火炎処理装置の制御装置は、第1Cのロボットアームのゲートカット処理の時間Tcに関し、特に限定されないものの、以下の式(1C)を満たすように、設定されていることが好ましい。
Ta/8≦Tc≦2×Ta (1C)
この理由は、このような時間に設定されていることにより、第1Aのロボットアームにおけるバリ取り火炎処理時間と合わせて、より効率的にロボットアームを動作させることができるためである。
【0072】
従って、以下の式(2C)を満たしていることがより好ましく、式(3C)を満たしていることが更に好ましい。
Ta/6≦Tc≦1.5×Ta (2C)
Ta/4≦Tc≦Ta (3C)
【0073】
4.固定具
本発明のハイブリッド火炎処理装置は、
図7に示すように、樹脂成形品12の各処理を、進行方向Dで順に行う場合に、樹脂成形品を所定位置に載置しておくための複数の固定具23を、進行方向Dに沿って、直線的、或いは、図示しないものの、非直線的(カーブ的配置、蛇行的配置、センターピボット的配置等)に備えていることが好ましい。
具体的には、少なくとも、バリ取り火炎処理中に、樹脂成形品を載置するための固定具23aや、ケイ酸化炎処理中に、樹脂成形品を載置するための固定具23bを備えていることが好ましい。
この理由は、このように所定の固定具23aや23bを備えた構成とすることにより、火炎処理を行なう場所を精度良く特定することができ、火炎処理の時間をより短縮することができるためである。
従って、ゲートカット処理中に、樹脂成形品を載置するための固定具23c、金型成形セクションから排出された樹脂成形品を一時的に載置するための固定具23d、ケイ酸化炎処理後に、塗装セクションに搬送する樹脂成形品を一時置きするための固定具23e等のうち、一つ以上の固定具を備えていることが更に好ましい。
【0074】
又、固定具は、
図8(a)~(b)に示すように、本体部23wと、本体部23wの上方で、樹脂成形品12を支える突起部23xと、本体部23wの側方で、樹脂成形品12を支える側方柱状部23yとを備えていることが好ましい。
この理由は、このような構成とすることにより、樹脂成形品12との接触面積を減らすことができ、各処理中に、樹脂成形品12の形状が変化してしまうことを、より効果的に防ぐことができるためである。
【0075】
又、具体的には、
図8(c)に示すように、側方柱状部23yは、ピストン式に、Z2方向に上下する構成であることが好ましい。
この理由は、このような構成とすることにより、樹脂成形品12を、突起部23xから浮かせることができ、後述する搬送装置へ、受け渡しが、より容易になるためである。
従って、左右の側方柱状部23yは、同時かつ同様の移動量で動作することが更に好ましい。
【0076】
又、固定具23は、
図7に示すように、固定具23に静電気が溜まることを防止するために、帯電防止材23g上に備えてあることが好ましい。
具体的には、通常、JIS C61340-4-3:2009に基づいて測定された厚さ方向の抵抗値を1×10
5~1×10
14Ωの範囲内の値とすることが好ましく、5×10
5~1×10
10Ωの範囲内の値とすることが好ましく、1×10
6~1×10
8Ωの範囲内の値とすることが更に好ましい。
この理由は、このように固定具が帯電防止材上に備えあることにより、樹脂成形品への処理中の静電気の帯電を抑え、埃等が樹脂成形品に付着してしまうことを、より効果的に抑えることができるためである。
従って、固定具23は、特に図示しないものの、静電気を逃がすためのアース部材を備えていることが更に好ましい。
【0077】
5.計測部
第1のロボットアームが、
図8(c)に示すように、計測部における計測器23zとして、樹脂成形品の重量を測定する荷重計測部及び樹脂成形品の厚さを測定する厚さ計測部、或いは、いずれか一方を備えていることが好ましい。
この理由は、このような計測部を備えていることにより、樹脂成形品の重量や厚さ等の品質を確認しながら種々の火炎処理を行なうことができるためである。
【0078】
(1)荷重計測部
又、第1のロボットアームが、重量計測部を備えていることが好ましい。
この理由は、樹脂成形品が予め設定された重量の範囲内であるかを検査することができ、後工程における歩留まりをより向上させることができるためである。
例えば、第1Cのロボットアームの固定具上に重量計測部を備えている場合、ゲートカット前後の重量を測定することができ、ゲートカットが適正に行われたか否かをより容易に判定することができる。
従って、荷重計測部は、一例として、フォースゲージ、ロードセル、トルク計の少なくとも一つの計測装置を含んでいることが好ましい。
【0079】
(2)厚さ計測部
又、別の一例として、第1のロボットアームが、厚さ計測部を備えていることが好ましい。
この理由は、樹脂成形品が予め設定された厚さの範囲内であるかを検査することができ、後工程における歩留まりをより向上させることができるためである。
そして、樹脂成形品の厚さによって、火炎処理の火力を調整することができ、より精度良く火炎処理を行なうことができるためである。
【0080】
例えば、厚さ計測部は、二つのプローブによって、厚さ方向に挟んで、ブローブ間の距離を計測するニップ式測定部、照射した超音波を、樹脂成形品の厚さ方向に伝播させ、反射してきた超音波の伝播時間を計測する超音波式測定部等の接触計測部であることが好ましい。
この理由は、このような接触計測部を備えることで、より短時間かつ簡易的に、樹脂成形品の厚さを計測することができるためである。
【0081】
又、厚さ計測部は、レーザーを照射して、反射光を読み取って計測するレーザー式測定部、電磁誘導による磁場の変化を読み取って計測する電磁誘導式測定部等の非接触計測部であることが好ましい。
この理由は、このような非接触計測部を備えることで、より精度良く、かつ、樹脂成形品に影響を与えることなく、樹脂成形品の厚さを計測することができるためである。
【0082】
6.搬送装置
第2の実施形態のハイブリッド火炎処理装置は、図示しないものの、金型成形セクションから第1のロボットアームの間、第1のロボットアームにおける各ロボットアームの間、第1のロボットアームから後工程である塗装セクションの間で、樹脂成形品を搬送するための搬送装置を備えていることが好ましい。
すなわち、所定の搬送装置を備えることによって、樹脂成形品を迅速かつ円滑に搬送できるとともに、各セクションでの処理に関する歩留まりを向上させることができる。
具体的には、搬送装置は、一般的に使用される搬送装置を使用することができるが、一例として、クレーン、バキュームリフター、フォークリフト、AGV、コンベア等であることが好ましい。
【0083】
又、本発明のハイブリッド火炎処理装置において、樹脂成形品は、一例として、以下のように搬送される構成であることが好ましい。
すなわち、
図7に符号F1で例示されるように、樹脂成形品12が、搬送装置によって、金型成形セクションから搬送(
図15の符号S1)されてきて、一時置きや温度管理(
図15の符号SA1)等のための固定具23dに載置される。
次いで、符号F2で例示されるように、表面温度が、所定温度(例えば、50~80℃)になった樹脂成形品12が、搬送装置によって、固定具23dから移されて、重量や厚さの計測(
図15の符号SA2)、ゲートカット(
図15の符号SA3)等のための固定具23cに載置される。
次いで、符号F3で例示されるように、ゲートカットされた樹脂成形品12が、搬送装置によって、固定具23cから移されて、バリ取り処理(
図15の符号S2、S3)等のための固定具23aに載置される。
次いで、符号F4で例示されるように、バリ取り処理された樹脂成形品12が、搬送装置によって、固定具23aから移されて、ケイ酸化炎処理(
図15の符号S4)等のための固定具23bに載置される。
次いで、符号F5で例示されるように、ケイ酸化炎処理された樹脂成形品12が、搬送装置によって、固定具23bから移されて、塗装処理前の一時置きや所定の検査等のための固定具23eに載置される。
そして、符号F6で例示されるように、検査された樹脂成形品12が、搬送装置によって、固定具23eから移されて、塗装セクションに搬送される。
なお、符号F1~F6で示される搬送は、一台の搬送装置によって、後半の工程側から逆順に行われることも好ましいが、複数の搬送装置によって、実質的に同時に行われることも好ましい。
【0084】
7.所用時間
第2の実施形態のハイブリッド火炎処理装置において、ゲートカット部や計測部等を設けたとしても、各セクションの工程処理時間を適宜調整し、最終的には、各セクションの所用時間を調整しつつ、樹脂成形品の表面温度を、通常、50~80℃の温度範囲に、調整できることが判明している。
よって、具体的に、ゲートカット部の所用時間、計測部の所用時間を、それぞれ、通常、10~80秒の範囲内の時間とすることが好ましく、それぞれ15~60秒の範囲内の時間とすることがより好ましい。
従って、第2の実施形態のハイブリッド火炎処理装置においても、所定温度(例えば、50~80℃)に維持された樹脂成形品に対して、ハイブリッド火炎処理を容易に行うことができる。
【0085】
又、本発明のハイブリッド火炎処理装置において、
図7に符号F1~F6で示される、樹脂成形品の搬送時間は、それぞれ20秒以内であることが好ましい。
この理由は、このような時間で搬送することにより、樹脂成形品の表面温度を過度に低下させることなく搬送することができ、各処理を、より効率的に行うことができるためである。
従って、樹脂成形品の搬送時間は、それぞれ1~20秒の範囲内であることが好ましく、3~15秒の範囲内であることがより好ましく、5~10秒の範囲内であることが更に好ましい。
【0086】
8.温度管理部
なお、第2の実施形態のハイブリッド火炎処理装置において、ゲートカット部や計測部等を設けたとしても、各セクションの工程処理時間を適宜調整し、樹脂成形品の表面温度が、それぞれ所望値となることが好ましい。
従って、図示しないものの、温度管理部を設けて、検知、管理することが好ましい。
よって、第2の実施形態の樹脂成形品の装置においても、樹脂成形品の表面温度(例えば、50~80℃)が、所定値範囲を超えた値になるような場合には、図示しないものの、所定装置を用い、加熱処理や冷却処理(自然空冷も含む。)を行って、適宜温度調整することが好ましい。
具体的には、
図7に示すように、金型成形セクションから搬送されてきた樹脂成形品12を、固定具23d上に、一時的に載置した際に、ヒーターや送風機等を用いて、加熱処理や冷却処理が行われる構成であることが好ましい。
【0087】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、
図9に示すように、第2の実施形態における所定の第1のロボットアーム22と、固定具23と、を備えたハイブリッド火炎処理装置である。
そして、固定具に載置された樹脂成形品を鉛直方向、水平方向に移動させて、別の固定具に受け渡す移動装置や固定具に載置された樹脂成形品の向きを変える回転装置を更に備えている態様である。
更に、樹脂成形品の重量や厚さを測る計測部や、処理を行なった樹脂成形品に対して、ロット番号等を印字する印字装置等を備えていることが好ましい。
【0088】
1.第1のロボットアーム
ハイブリッド火炎処理装置は、
図9に示すように、第1のロボットアーム22として、バリ取り火炎処理を行なう第1A´のロボットアーム22a´と、ケイ酸化炎処理を行なう第1B´のロボットアーム22b´とを有していることが好ましい。
この理由は、第1のロボットアームが、二つのロボットアームを有していることにより、バリ取り火炎処理と、ケイ酸化炎処理とを、連続的に行うことができ、処理時の結露の発生をより効果的に抑えることができるためである。ひいては、ハイブリッド火炎処理装置における製品のサイクルタイムをより短縮させることができるためである。
【0089】
ここで、第1A´のロボットアームは、基本的に、第1及び第2の実施形態と同様の構成とすることが好ましい。
更に、
図10に示すように、第1A´のロボットアーム22a´は、バリ取り火炎処理に加えて、ゲートやバリを除去することができるバーナー18a等の火炎処理部及びナイフ刃18e等の切断処理部を備えていることも好ましい。
この理由は、火炎処理部と、切断処理部との両方を備えていることで、金型成形セクションから搬送されてきた樹脂成形品について、切断処理部にて比較的大きなバリを切断した後に、より迅速に、火炎処理部にて切断跡を除去できるためである。
【0090】
又、
図10に示すように、第1A´のロボットアーム22a´は、切断処理部のナイフ刃18e等を、当該ナイフ刃18eの収納領域18fから出し入れして、火炎処理部と、切断処理部とを切り換える構成とすることが好ましい。
この理由は、処理部を切り替え可能とすることにより、同じロボットアームにより、ゲート処理と、バリ取り処理とを、時間をあけずに行うことができ、より迅速に所定処理を行なうことができるためである。
そして、いずれか一方の処理中に、別の一方が、樹脂成形品と干渉してしまうことを効果的に防ぎ、より精度良く所定の火炎処理を行なうことができるためである。
【0091】
又、ナイフ刃の収納領域の形状は、ナイフ刃の一方の側面を覆うように、板状としてあることが好ましい。
この理由は、かかる形状とすることにより、ロボットアームのハンド部をより小型化することができるためである。
従って、具体的には、ナイフ刃の収納領域に沿って、スライド部材が設けてあり、当該スライド部材を介して、ナイフ刃が設けてあることが好ましい。
一方、ナイフ刃の収納領域の形状は、ナイフ刃を全て覆うように、箱状としてあることも好ましい。
この場合、ナイフ刃を出し入れする窓を設けてあることが好ましいが、箱の側面に対して、ナイフ刃を出し入れするスリットを設けてあることも好ましい。
【0092】
又、第1A´のロボットアームは、一例として、切断処理部のナイフ刃を、長尺方向にスライドさせる構成とすることが好ましい。
更に、別の例として、第1A´のロボットアームは、切断処理部のナイフ刃を、当該ナイフ刃の根元を中心に回転させて出し入れする構成とすることも好ましい。
【0093】
又、第1B´のロボットアーム22b´は、基本的に、第1及び第2の実施形態と同様の構成とすることが好ましい。
更に、第1B´のロボットアームは、ケイ酸化炎処理と、通常の火炎処理とを切り換える構成とすることが好ましい。
この理由は、処理の種類を切り替え可能とすることにより、樹脂成形品に対するケイ酸化炎処理が完了した場合に、直前の固定具に載置されている別の樹脂成形品に対して、通常の火炎処理を行なうことができるためである。
そして、バリ取り火炎処理と、ケイ酸化炎処理とで時間差があるような場合であっても、時間差を縮めて、ハイブリッド火炎処理装置のサイクルタイムをより低減させることができるためである。
【0094】
2.移動装置
ハイブリッド火炎処理装置は、
図9に示すように、固定具23上に載置された樹脂成形品12を、別の固定具23に受け渡す移動装置25を備えていることが好ましい。
すなわち、移動装置は、金型成形セクションから取り出された樹脂成形品を載置する第1固定具と、バリ取り火炎処理を行なう樹第2固定具と、ケイ酸化炎処理を行なう第3固定具と、ケイ酸化炎処理を完了した樹脂成形品を載置する第4固定具とを、順に移動して、それぞれの固定具上に載置された樹脂成形品を、別の固定具上に受け渡す構成であることが好ましい。
この理由は、このような移動装置を備えることにより、第1のロボットアームが、樹脂成形品を搬送する必要がなくなり、より効率的かつ迅速に、バリ取り火炎処理と、ケイ酸化炎処理とを行うことができるためである。
従って、
図9に示すように、移動装置25は、樹脂成形品12の進行方向Dに沿ってなるガイドレール23vと、当該ガイドレール23vに沿って移動する支持アーム23y´と、当該支持アーム23y´を動作させる駆動部25cと、を有することが好ましい。
なお、駆動部は、モータ等を備えていることが好ましい。
【0095】
ここで、ガイドレールは、特に限定されないものの、通常、リニアガイドと、当該リニアガイドに対して、複数のボールベアリングを介して嵌合するブロックと、から構成されることが好ましい。
具体的には、ガイドレールは、角棒状のリニアガイドと、リニアガイドに跨るように、設けられた門型のブロックとからなることが好ましい。
この理由は、かかる構成とすることにより、リニアガイドと、ブロックとの摩擦を低減することができ、より迅速かつ精度良く移動装置を動作させることができるためである。
一方、ガイドレールの別の態様として、丸棒状のリニアガイドと、リニアガイドを貫通させるように、設けられた筒型のブロックとからなることも好ましい。
【0096】
又、ガイドレールは、支持アームの鉛直下方に、平行に2本以上設けてあることが好ましい。
この理由は、ガイドレールを2本以上設けることにより、支持アームがスライドする際に、左右にぶれることを、より効果的に低減させることができるためである。
従って、ガイドレールを、支持アームの鉛直下方に、平行に2~6本設けてあることが好ましく、3~5本設けてあることが好ましい。
なお、支持アームを、固定具を挟んで両側に設けてある場合に、ガイドレールは、各支持アームに対して、2本以上設けることが好ましい。
【0097】
又、支持アームは、鉛直方向の下端でガイドレールと接続されており、鉛直方向に沿って伸縮することが好ましい。
この理由は、伸縮する支持アームを有することで、固定具に載置された樹脂成形品を持ち上げて、次の固定具まで移動できるためである。そして、より迅速に樹脂成形品の受け渡しを行うことができるためである。
【0098】
又、支持アームは、樹脂成形品の進行方向とは垂直な方向に、固定具を挟むように配置されていることが好ましい。
この理由は、このような配置とすることにより、樹脂成形品を両側から持ち上げることができ、より安定して移動させることができるためである。
【0099】
又、支持アームは、樹脂成形品の進行方向に沿って、複数箇所備えていることが好ましい。
この理由は、支持アームを複数備えることにより、各固定具に載置された樹脂成形品を、複数同時に次の固定具に受け渡すことができ、ひいては、ハイブリッド火炎処理装置のサイクルタイムをより減少させることができるためである。
【0100】
具体的には、支持アームは、固定具の数に対して、1箇所少ない数量を備えていることが好ましい。
この理由は、樹脂成形品の進行方向における、先頭の樹脂成形品が搬出された場合に、それ以外の樹脂成形品を、全てまとめて、次の固定具に対して受け渡すことができ、ハイブリッド火炎処理装置のサイクルタイムをより減少させることができるためである。
従って、例えば、第1~第4固定具を有する場合に、支持アームは、第1~第3の固定具に対応する3箇所備えていることが好ましい。
【0101】
又、
図12(b)に示すように、支持アーム23y´は、その鉛直上方の端部に、樹脂成形品の接触部分の形状に沿ったフレーム状の支持部材を備えていることが好ましい。
この理由は、支持部材を備えることにより、樹脂成形品を移動させている際に、バランスを崩して落下することを防ぎ、より高速に動作させることができるためである。
従って、支持部材は、樹脂成形品の種類に合わせて交換できるように、支持アームと、支持部材とを、ネジ止めや嵌合等により接続させることが好ましい。
【0102】
又、
図14に示すように、移動装置25は、進行方向に沿って、支持アーム23y´に固定されたラック25aと、当該ラック25aと嵌合するピニオンギア25bと、当該ピニオンギア25bを回転させるための駆動部25c等を備えていることが好ましい。
この理由は、かかる構成とすることにより、リニアガイド上に配置された、複数の支持アームを、より迅速かつ精度よく移動させることができるためである。
従って、一本のラックにより、樹脂成形品の進行方向に沿った複数の支持アームを連結することで、支持アームを連動させることが好ましい。
【0103】
又、特に図示しないものの、移動装置は、支持アームを接続してあり、移動方向に沿って延設されたチェーンと、当該チェーンを回転させるモータ等を備えていることも好ましい。
この理由は、かかる構成とすることにより、より簡易な構成で、支持アームを移動させることができるためである。
【0104】
3.回転装置
ハイブリッド火炎処理装置は、
図11に示すように、第2固定具23a´又は第3固定具23b´において、載置した樹脂成形品12の向きを変えるための回転装置23mを備えることが好ましい。
この理由は、回転装置を設けることにより、第1のロボットアームが、樹脂成形品を回り込むことなく、両側面(A面及びB面)を処理することができ、より迅速にバリ取り処理やケイ酸化炎処理を行なうことができるためである。
【0105】
又、
図11に示すように、回転装置23mは、直線動作させるアクチュエータ23hと、当該アクチュエータ23hの動作に伴って直動するラック23kと、当該ラック23kに嵌合して回転するターンテーブルとを備えていることが好ましい。
この理由は、かかる構成とすることにより、ターンテーブル上に載置された樹脂成形品をより安定して回転させることができ、回転角度等の調整等を、より精度良く行うことができるためである。
【0106】
又、回転装置は、
図14に示すように、樹脂成形品の角度を、水平面沿って、10~360°回転させることが好ましい。
この理由は、樹脂成形品を回転させることにより、第1A´のロボットアーム22a´と、第1B´のロボットアーム22b´とが、同時に同じ樹脂成形品に対して、処理を行なうことができるためである。
従って、回転装置は、樹脂成形品の角度を、水平面沿って、20~270°回転させることがより好ましく、30~180°回転させることが好ましい。
【0107】
4.計測部
ハイブリッド火炎処理装置は、樹脂成形品の重量や厚さを測る計測部を備えていることが好ましい。
この理由は、計測部を備えていることにより、樹脂成形品の重量や厚さ等の品質を確認しながら種々の火炎処理を行なうことができるためである。
具体的には、
図12(a)~(b)に示すように、計測部は、計測器23zとしての荷重計測器と、樹脂成形品12の重量を測定する際に、樹脂成形品12を第4固定具23e´から浮かせる昇降機23sと、荷重計測器上で、樹脂成形品12を安定させる台座23pと、を備えていることが好ましい。
【0108】
5.印字装置
ハイブリッド火炎処理装置は、
図13に示すように、処理を行なった樹脂成形品12に対して、ロット番号等を印字する印字装置23tを備えていることが好ましい。
この理由は、樹脂成形品に対して、ロット番号等を印字することにより、生産後に、製造時間、製造場所、製造装置等を調べることができ、よりトレーサビリティ性が向上するためである。
【0109】
又、印字装置は、特に限定されないものの、樹脂成形品の幅方向に沿った端部の裏面に、レーザー等により、ロット番号、製造日時、製造場所、製造装置等の情報を刻印することが好ましい。
この理由は、レーザー刻印することにより、後に印字が薄れたりすることなく、長期的に品質を管理することができるためである。
従って、印字装置は、種々の材料に適用できることから、炭素レーザーによるレーザー照射装置であることが好ましい。
【0110】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、バリを有する、所定表面温度(少なくとも50℃以上)の樹脂成形品に対して、少なくとも一つの火炎処理部によって、バリ取り火炎処理をしながら、ケイ酸化炎処理を行なうハイブリッド火炎処理方法であって、下記工程(1)及び(2)を含むことを特徴とするハイブリッド火炎処理方法である。
(1)把持装置により、樹脂成形品を移動させて保持する把持工程
(2)把持装置により保持された樹脂成形品に対して、少なくとも一つの火炎処理部によって、バリ取り火炎処理をしながら、ケイ酸化炎処理を行なうハイブリッドバリ取り工程
以下、第4の実施形態のハイブリッド火炎処理方法の態様を、
図15に示す製造フローチャートに沿って、具体的に説明する。
なお、第4の実施形態におけるハイブリッド火炎処理方法を説明するにあたり、第1~第3の実施形態で説明したハイブリッド火炎処理装置を使用することができるため、重複する部分についての再度の説明は適宜省略する場合がある。
【0111】
1.取出し工程
図15に、S1として示すように、ハイブリッド火炎処理装置の使用を開始する前に、取出し工程を設けて、金型成形セクションから取り出す工程を有することが好ましい。
又、このとき、バリを有する樹脂成形品の表面をエア洗浄したり、表面の均一化処理を施したりして、清浄化する準備工程を含むことが好ましい。
この理由は、樹脂成形品の表面に剥離剤等が付着している場合には、樹脂成形品の固定性が低下したり、樹脂成形品のバリ取り効率が低下したりする場合があるためである。
【0112】
又、樹脂成形品のハイブリッド火炎処理を更に効率化させるために、樹脂成形品の温度を所定範囲にするととともに、その温度のばらつきを一定にすることが好ましい。
より具体的には、金型から取り出した直後の樹脂成形品は、通常、100~120℃を表面温度であるが、その表面温度は、5分以内の経過時間であれば、通常、50~80℃の温度範囲に、調整できることが判明している。
従って、
図17(a)に示すように、S1における所要時間T1は、一例として、10秒程度である。
【0113】
一方、樹脂成形品の表面温度が、50~80℃の温度であれば、ハイブリッド火炎処理の表面改質効果が、より向上し、しかも、表面改質効果のばらつきも少ないことが判明している。
逆に言えば、樹脂成形品の表面温度が50℃未満になると、樹脂成形品の硬度が高くなりバリ取り火炎処理が不十分となったり、あるいは、ケイ酸化炎による表面改質が、不均一になったりする場合がある。
一方、樹脂成形品の表面温度が、80℃を超えている場合、搬送途中に、部分的に変形しやすくなったりする場合がある。
【0114】
そこで、ハイブリッド火炎処理をする際に、樹脂成形品の表面温度を、50~80℃の温度範囲で、かつ、温度のばらつきを±20℃にすることが好ましく、±10℃にすることがより好ましいと言える。
すなわち、樹脂成形品の表面温度を、非接触式の赤外温度計等によりモニターし、所定温度範囲であって、そのばらつき具合を確認してから、ハイブリッド火炎処理をすることが更に好ましい。
【0115】
2.搬入工程
次いで、
図1及び
図2に示すように、金型成形セクション30で成形した、周縁部にバリを有する樹脂成形品を、把持装置としての第2のロボットアームにより保持して、搬送路32を介して、ハイブリッド火炎処理装置に搬入する工程を有することが好ましい。
【0116】
又、図示しないものの、仮固定工程を実施し、金型成形セクション(金型成形機)から取り出された、周縁部にバリを有するとともに、所定表面温度の樹脂成形品を、フレーム状の仮固定具の上に、吸引装置を介して、仮固定することが好ましい。
すなわち、樹脂成形品の仮固定工程は、所定の仮固定装置(吸引装置)を用いて、樹脂成形品を所定位置として、仮固定具に保持する工程である。
【0117】
3.ハイブリッド火炎処理工程
次いで、ハイブリッド火炎処理工程を実施し、
図15に、S2~S3として示すように、ロボットアームの先端部に備えられたバーナーを、樹脂成形品の全体形状の縁及び一部側面に沿って、かつ、両側面(A面及びB面)を有する樹脂成形品のバリに対して、ケイ酸化炎を噴射することが好ましい。
すなわち、ハイブリッド火炎処理装置10を起動させ、更に、火炎発生源及び第1のロボットアーム22を動作させて、火炎処理部18におけるバーナーから、火炎温度が約800℃で、火炎長さが約5~40mmの火炎を、樹脂成形品12のバリ部分に、ケイ酸化炎を噴出させるとともに、制御装置26を介して、バーナーを樹脂成形品12の周縁部(A面及びB面)に沿って、走査することが好ましい。
それによって、樹脂成形品のバリを除去するとともに、表面改質処理を、事実上、同時に実施し、易接着表面とすることが好ましい。
従って、
図17(a)に示すように、工程S2、S3における所要時間T2、T3は、一例として、それぞれ15秒程度である。
【0118】
次いで、
図15に、S4として示すように、ロボットアームの先端部に備えられたバーナーを、樹脂成形品の表面(C面)に沿って、通常、ケイ酸化炎を噴射して、樹脂成形品の表面改質を実施し、塗膜を形成する主要面に対して、易接着表面とすることが好ましい。
すなわち、塗膜が形成され、装飾面となる樹脂成形品12の主表面(C面)に沿って走査し、ケイ酸化炎を噴出させることが好ましい。
従って、
図17(a)に示すように、工程S4における所要時間T4は、一例として、20秒程度である。
【0119】
そして、ハイブリッド火炎処理装置10においては、樹脂成形品12の縁部から1~1.5mmの幅にわたって、すなわち、樹脂成形品12に残るバリの幅に合わせて、1~1.5mmの幅になるように、火炎処理部18におけるバーナーからケイ酸化炎を噴出させることが好ましい。
【0120】
4.切替工程
次いで、図示しないものの、工程S2及び工程S3において、ケイ酸化炎及び、通常の火炎処理(非ケイ酸化炎と称する場合がある。)をそれぞれ切り替えるための切替工程を設けることが好ましい。
より具体的には、樹脂成形品12の縁部等において、所定のバリがある箇所については、ハイブリッド火炎処理を行うべく、通常、ケイ酸化炎を噴射することが好ましい。
【0121】
一方、樹脂成形品において、所定のバリが小さく、かつ、樹脂材料の関係で、表面改質処理を実施する必要性が低い場合には、切替装置で、原料ガスを切り替えて、非ケイ酸化炎を噴射することも好ましい。
すなわち、切替工程を設けて、所定のケイ酸化炎の噴出及び非ケイ酸化炎の噴出を切り替えて、表面改質剤の消費量を適正化させることも好ましい。
【0122】
例えば、工程S2及び工程S3において、比較的小さなバリであって、その個数が少ないような場合には、ケイ酸化炎処理のみを実施し、バリ取りするとともに、表面改質処理を行うことが好ましい。
一方、工程S2及び工程S3において、比較的大きなバリを、相当数有する樹脂成形品については、最初に、通常の火炎処理、すなわち、非ケイ酸化炎処理を所定時間実施し、次いで、ケイ酸化炎処理を所定時間実施できるように、切替工程を実施することが好ましい。
【0123】
5.着脱工程
次いで、図示しないものの、着脱工程は、ハイブリッド火炎処理によって、バリ取り火炎処理と、ケイ酸化炎処理を行った樹脂成形品を取り外す一方、次に処理すべき樹脂成形品を固定する工程である。
より具体的には、バリを有する樹脂成形品を取り付ける際には、バリ取り装置を、着脱エリアに固定して、迅速に実施することができる。
【0124】
一方、樹脂成形品について、ハイブリッド火炎処理を実施しようとする際には、ハイブリッド火炎処理バリ取り装置を、処理エリアに移動して、迅速かつ安全的に実施することができる。
すなわち、着脱工程は、ハイブリッド火炎処理前の樹脂成形品及びハイブリッド火炎処理後の樹脂成形品をそれぞれ着脱する工程である。
なお、着脱工程の実施については、人力でも十分行なうことができるが、更にロボットアーム等を用いて、作業効率を高めることも好ましい。
【0125】
6.塗装処理工程
次いで、
図15に、S5として示すように、ハイブリッド火炎処理をした樹脂成形品に塗装処理を実施することが好ましい。
すなわち、通常、ハイブリッド火炎処理をした樹脂成形品を、塗装処理ブースに搬送し、そこで、スプレーガン等を用いて、所定塗料(水性塗料等)を吹き付け、塗装処理工程を実施することが好ましい。
従って、
図17(a)に示すように、工程S5における所要時間T5は、一例として、10分程度である。
【0126】
なお、
図15に示すような、ハイブリッド火炎処理前の樹脂成形品や、従来の火炎処理品の製造フロー(S1´~S6´)では、樹脂成形品(ポリプロピレン樹脂等)の性質上、極めて帯電しやすく、そのため、周囲の埃等が付着しやすく、塗装処理後に、異物の混入として見出されることがあった。
しかしながら、ハイブリッド火炎処理後の樹脂成形品の場合、表面体積抵抗を、通常、1×10
8~1×10
12Ω・cmの範囲内の値に調整することができる。
従って、容易に帯電しにくい、帯電防止処理が、易接着処理と同時に処理することができる。
【0127】
よって、仮に、埃等が付着した場合でも、気流噴霧によって容易に脱離することから、塗装処理後に、異物の観察が極めて少なくなるという効果を発揮することができる。
もちろん、ハイブリッド火炎処理後の樹脂成形品は、易接着処理表面となっているため、所定塗料(水性塗料等)を吹き付けた場合に、効果的に、残留し、塗膜を形成した後には、強固かつ平滑性に優れた特性を発揮することができる。
【0128】
しかも、
図16に示すような、ハイブリッド火炎処理前の樹脂成形品や、従来の火炎処理品の製造フロー(S1´~S6´)では、樹脂成形品を金型から取り出した後、少なくとも、室温付近になるまで長期間放置する冷却工程(S2´)を設けることが、一般的であった。
よって、各工程S1´~S6´において、
図17(b)に示すような表面温度変化が想定されることから、工程S3´~S5´において、バリ取り火炎処理や、ケイ酸化炎処理が、不十分になったり、ムラが生じたり、ひいては、S6´で表される塗装工程において形成される塗膜の密着力が大きくばらついたり、平滑な塗膜形成が困難になったりするなどの問題も見られた。
更に言えば、工程S1´~S6´における所要時間T1´~T6´のうち、所要時間T2´は、一例として、10分程度かかるという問題が見られた。
【0129】
それに対して、本発明の場合、各工程S1~S5において、
図17(a)に示すような表面温度変化が想定されることから、所定温度(例えば、50~80℃)に維持された樹脂成形品に対して、ハイブリッド火炎処理を行うことができる。
従って、成形樹脂の性質上、所定温度であれば、ガラス転移温度(例えば、0℃)の少なくとも50℃以上高い温度に維持されることから、成形樹脂が、容易に軟化しており、バリ取り処理を容易かつ迅速に実施することができる。
【0130】
加えて、樹脂成形品の表面温度が所定温度に維持されていることから、ケイ素含有化合物を含むケイ酸化炎が効果的に表面改質し、表面改質効果がより確実に向上し、処理ムラも少なくできる。
よって、S5で表される塗装工程において形成される塗膜の密着力が安定化するとともに、平滑な塗膜形成が容易になるという利点がある。
【0131】
7.検査工程
よって、上述したように、ハイブリッド火炎処理をしてなる塗膜形成した樹脂成形品は、バリを有しないばかりか、樹脂成形品の表面上に形成した塗膜における異物の混入が極めて少なく、かつ、JIS-K5600に準拠したクロスカット試験において、形成した塗膜の密着性が強固であるという効果を発揮することができる。
すなわち、検査工程において、バリの除去性、異物の混入等に起因し不良品が極めて少なくなり、かつ、塗膜の密着性も著しく高まり、塗膜形成した樹脂成形品の歩留まりが向上し、経済的利益も大きくなる。
【0132】
例えば、樹脂成形品(PP樹脂製プレート)の表面温度が20℃の場合、所定のケイ酸化炎処理によって、表面上に形成した塗膜における異物(直径0.1~100μm)の数は、光学顕微鏡検査の結果、塗膜形成した樹脂成形品100個当たり、8個個程度であり、クロスカット試験における碁盤目の剥離数が、平均10個/100碁盤目であった。
又、表面温度が40℃の場合、表面上に形成した塗膜における異物の数が、塗膜形成した樹脂成形品100個当たり、6個程度であり、クロスカット試験における碁盤目の剥離数が、平均6個/100碁盤目であった。
【0133】
それが、表面温度が50℃の場合には、表面上に形成した塗膜における異物の数が、樹脂成形品100個当たり、2個程度と、急激に少なくなり、かつ、クロスカット試験における碁盤目の剥離数が、平均2個/100碁盤目であることが確認された。
更に、表面温度が80℃の場合、表面上に形成した塗膜における異物の数が、樹脂成形品100個当たり、0個であって、所定の異物は全く観察されず、クロスカット試験における碁盤目の剥離数が、平均1個以下/100碁盤目であることが確認された。
【0134】
8.その他の工程
(1)温度管理工程
本発明のハイブリッド火炎処理方法は、
図15に符号SA1で示すように、その他の工程として、金型成形セクションから搬送されてきた樹脂成形品の表面温度を調整する(例えば、50~80℃)温度管理工程を含むことが好ましい。
この理由は、このように温度管理を行うことにより、樹脂成形品の硬度を調整して、ゲートカットやバリ取り処理の精度を向上させるとともに、塗装ムラが発生しにくい温度に、より容易に調整することができるためである。
【0135】
(2)計測工程
本発明のハイブリッド火炎処理方法は、
図15に符号SA2で示すように、その他の工程として、樹脂成形品の重量及び厚さ、或いは、いずれか一方を測定する計測工程を含むことが好ましい。
この理由は、このように計測を行うことにより、樹脂成形品の重量や厚さ等の品質を確認でき、その後の処理の程度等を適宜調整することができるためである。
【0136】
(3)本発明のハイブリッド火炎処理方法は、
図15に符号SA3で示すように、その他の工程として、金型成形セクションから取り出した樹脂成形品のゲート部分のバリを除去するゲートカット工程を含むことが好ましい。
この理由は、このようにゲートカットを行うことにより、射出成形において、製造上、防ぐことが難しい、ゲートに発生する突起状のバリをより効果的に除去することができるためである。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上、詳述したように、本発明のハイブリッド火炎処理装置及びハイブリッド火炎処理方法においては、表面温度が少なくとも50℃以上の、バリを有する樹脂成形品を所定位置に保持するための把持装置と、表面温度が50℃以上の、樹脂成形品に対して、ハイブリッド火炎処理を行なう、少なくとも一つの火炎処理部を備えた第1のロボットアームと、を備えて、ハイブリッド火炎処理を実施することにより、樹脂成形品のバリ取り火炎処理を行うとともに、ケイ酸化炎処理を実施し、効果的に表面自由エネルギーが向上し、良好な表面改質効果を安定的に発揮できるようになった。
【0138】
従って、本発明のハイブリッド火炎処理装置及びハイブリッド火炎処理バリ取り火炎処理方法によれば、例えば、自動車部品であるバンパ等の大きな樹脂成形品に適用した場合であっても、室温への冷却工程が、事実上不要であることから、極めて短時間に、かつ、効果的にバリ取り処理及びケイ酸化炎処理を実施できるようになった。
【0139】
しかも、本発明のハイブリッド火炎処理装置及びハイブリッド火炎処理方法によれば、ケイ酸化炎処理に基づく帯電防止効果により、粉塵等の異物が、樹脂成形品の表面に帯電付着するのを有効に防止できることが期待できる。
更に、本発明は燃料源中に、アルコール等の燃焼の結果として、水を発生させるような材料を含んでいたような場合であっても、室温まで低下させることなく塗装でき、結露条件となりにくいため、表面が結露することによる処理ムラの発生を有効に防止できることが期待できる。
又、第1のロボットアームにおける、バリ取り処理及びケイ酸化炎処理に用いるバーナーに加えて、他の表面改質効果のあるバーナーを用いることにより、より良好な表面改質効果を発揮させたり、より処理時間を短くすることが期待できる。
具体的には、一例として、水素バーナーを用いることにより、バーナー使用時の二酸化炭素の排出を大幅に低減させたり、火炎の吹き出し速度を向上させて、より迅速な表面処理を行なうことが期待できる。
よって、次工程である、樹脂成形品の塗膜形成後の歩留まりを、大幅に向上させることができるようになった。
なお、バリ取り処理及びケイ酸化炎処理に用いるバーナーを用いることなく、水素バーナー等に置き換えることにより、更に、二酸化炭素の排出を減らして、環境への影響を低減させることも期待できる。
【符号の説明】
【0140】
10:ハイブリッド火炎処理装置、12:樹脂成形品、18:火炎処理部、18a:バーナー、22:第1のロボットアーム、22a:第1Aのロボットアーム、22b:第1Bのロボットアーム、24:第2のロボットアーム(把持装置)、26:制御装置、30:金型成形セクション、32:搬送路