(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025163567
(43)【公開日】2025-10-29
(54)【発明の名称】耐熱付与材及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 25/12 20060101AFI20251022BHJP
C08L 23/08 20250101ALI20251022BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20251022BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20251022BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20251022BHJP
C08F 212/08 20060101ALI20251022BHJP
C08F 220/42 20060101ALI20251022BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L23/08
C08L51/06
C08L27/06
C08F222/40
C08F212/08
C08F220/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066972
(22)【出願日】2024-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】岡本 吉生
(72)【発明者】
【氏名】松原 達宏
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA01W
4J002BB02W
4J002BB04Y
4J002BB07Y
4J002BC06X
4J002BD03W
4J002BN06Y
4J002BN15W
4J002GT00
4J100AB02Q
4J100AJ09S
4J100AK32S
4J100AM01R
4J100AM02R
4J100AM45P
4J100AM48P
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂(特に、塩化ビニル樹脂)に対して、機械特性を十分に維持しつつ耐熱性を付与することが可能な、耐熱付与材を提供すること。
【解決手段】マレイミド系単量体単位と、芳香族ビニル系単量体単位と、シアン化ビニル系単量体単位と、を含有する共重合体(A)と、エチレン単位を含有する主鎖を有し、且つ、シアン化ビニル系単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位からなる群より選択される少なくとも一種の単量体単位(b)を含有する、共重合体(B)と、を含み、共重合体(A)中、マレイミド系単量体単位の含有量が5~30質量%、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位の合計含有量が65~90質量%であり、共重合体(A)中、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位の合計に対するシアン化ビニル系単量体単位の割合が5~30質量%である、耐熱付与材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド系単量体単位と、芳香族ビニル系単量体単位と、シアン化ビニル系単量体単位と、を含有する共重合体(A)と、
エチレン単位を含有する主鎖を有し、且つ、シアン化ビニル系単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位からなる群より選択される少なくとも一種の単量体単位(b)を含有する、共重合体(B)と、
を含み、
前記共重合体(A)中、前記マレイミド系単量体単位の含有量が5~30質量%、前記芳香族ビニル系単量体単位及び前記シアン化ビニル系単量体単位の合計含有量が65~90質量%であり、
前記共重合体(A)中、前記芳香族ビニル系単量体単位及び前記シアン化ビニル系単量体単位の合計に対する前記シアン化ビニル系単量体単位の割合が5~30質量%である、
耐熱付与材。
【請求項2】
前記共重合体(B)が、前記主鎖と前記単量体単位(b)を含有する側鎖とを有する、請求項1に記載の耐熱付与材。
【請求項3】
前記側鎖が、芳香族ビニル系単量体単位を更に含有する、請求項2に記載の耐熱付与材。
【請求項4】
前記主鎖が、エポキシ基を有する単量体単位(i)を更に有する、請求項1に記載の耐熱付与材。
【請求項5】
前記共重合体(B)の含有量が、前記共重合体(A)及び前記共重合体(B)の全量基準で、1~50質量%である、請求項1に記載の耐熱付与材。
【請求項6】
前記共重合体(A)が、0.1~10質量%の不飽和ジカルボン酸系単量体単位を更に含有する、請求項1に記載の耐熱付与材。
【請求項7】
熱可塑性樹脂用である、請求項1に記載の耐熱付与材。
【請求項8】
塩化ビニル樹脂用である、請求項1に記載の耐熱付与材。
【請求項9】
熱可塑性樹脂と、
請求項1~8のいずれか一項に記載の耐熱付与材と、
を含む、樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル樹脂である、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記耐熱付与材の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、10~100質量部である、請求項9に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐熱付与材及び耐熱付与材を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱可塑性樹脂の耐熱性を向上させる手段として、熱可塑性樹脂に耐熱付与材を配合する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル-マレイミド系共重合体(a)85~60質量%、特定の重量平均分子量を有し、ANとSTが特定比のAS系共重合体(b)15~40質量%からなり、特定のTgを有しかつ特定のパラメーターを有する耐熱付与材を、ABS系樹脂と混練混合することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩化ビニル樹脂は、一般に、機械特性、耐候性及び耐薬品性に優れているため、各種の成形体に加工されており、多くの分野で使用されている。更なる用途への展開から、塩化ビニル樹脂の良好な機械特性を十分に維持しつつ、耐熱性を付与する方法が求められている。
【0006】
本開示は、熱可塑性樹脂(特に、塩化ビニル樹脂)に対して、機械特性を十分に維持しつつ耐熱性を付与することが可能な、耐熱付与材を提供することを目的とする。また、本開示は、当該耐熱付与材を含有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、例えば、以下の[1]~[11]に関する。
[1]
マレイミド系単量体単位と、芳香族ビニル系単量体単位と、シアン化ビニル系単量体単位と、を含有する共重合体(A)と、
エチレン単位を含有する主鎖を有し、且つ、シアン化ビニル系単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位からなる群より選択される少なくとも一種の単量体単位(b)を含有する、共重合体(B)と、
を含み、
前記共重合体(A)中、前記マレイミド系単量体単位の含有量が5~30質量%、前記芳香族ビニル系単量体単位及び前記シアン化ビニル系単量体単位の合計含有量が65~90質量%であり、
前記共重合体(A)中、前記芳香族ビニル系単量体単位及び前記シアン化ビニル系単量体単位の合計に対する前記シアン化ビニル系単量体単位の割合が5~30質量%である、耐熱付与材。
[2]
前記共重合体(B)が、前記主鎖と前記単量体単位(b)を含有する側鎖とを有する、[1]に記載の耐熱付与材。
[3]
前記側鎖が、芳香族ビニル系単量体単位を更に含有する、[2]に記載の耐熱付与材。
[4]
前記主鎖が、エポキシ基を有する単量体単位(i)を更に有する、[1]~[3]のいずれか一つに記載の耐熱付与材。
[5]
前記共重合体(B)の含有量が、前記共重合体(A)及び前記共重合体(B)の全量基準で、1~50質量%である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の耐熱付与材。
[6]
前記共重合体(A)が、0.1~10質量%の不飽和ジカルボン酸系単量体単位を更に含有する、[1]~[5]のいずれか一つに記載の耐熱付与材。
[7]
熱可塑性樹脂用である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の耐熱付与材。
[8]
塩化ビニル樹脂用である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の耐熱付与材。
[9]
熱可塑性樹脂と、
[1]~[8]のいずれか一つに記載の耐熱付与材と、
を含む、樹脂組成物。
[10]
前記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル樹脂である、[9]に記載の樹脂組成物。
[11]
前記耐熱付与材の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、10~100質量部である、[9]又は[10]に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、熱可塑性樹脂(特に、塩化ビニル樹脂)に対して、機械特性を十分に維持しつつ耐熱性を付与することが可能な、耐熱付与材が提供される。また、本開示によれば、当該耐熱付与材を含有する樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(耐熱付与材)
本実施形態の耐熱付与材は、共重合体(A)と共重合体(B)とを含む。
【0011】
共重合体(A)は、マレイミド系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位を含有する共重合体である。また、共重合体(B)は、エチレン単位を含有する主鎖を有し、且つ、シアン化ビニル系単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位からなる群より選択される少なくとも一種の単量体単位(b)を含有する共重合体である。
【0012】
共重合体(A)中、マレイミド系単量体単位の含有量は、5~30質量%であり、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位の合計含有量は、65~90質量%である。また、共重合体(A)中、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位の合計に対するシアン化ビニル系単量体単位の割合は、5~30質量%である。
【0013】
本実施形態の耐熱付与材は、特定の共重合体(A)及び共重合体(B)の組み合わせにより、熱可塑性樹脂(特に、塩化ビニル樹脂)に対して、機械特性を十分に維持しつつ耐熱性を付与することができる。
【0014】
<共重合体(A)>
共重合体(A)は、マレイミド系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位を含有する。
【0015】
マレイミド系単量体単位は、マレイミド系単量体から形成される構造単位(繰り返し単位)を示す。マレイミド系単量体単位は、必ずしもマレイミド系単量体から形成されたものである必要はなく、例えば、マレイン酸から形成された構造単位をアンモニア又は第1級アミンでイミド化して形成されたものであってもよい。
【0016】
マレイミド系単量体単位は、例えば、下記式(1-1)で表される構造単位であってよい。
【化1】
【0017】
式(1-1)中、R1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0018】
R1のアルキル基は、例えば、炭素数1~18のアルキル基であってよく、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル基であってもよい。
【0019】
R1のアルキル基が有していてよい置換基としては、例えば、ハロゲノ基(例えばフルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であってよく、フルオロ基又はクロロ基であってもよい)、シクロアルキル基(例えば、炭素数3~9のシクロアルキル基であってよく、炭素数4~8のシクロアルキル基、又は炭素数5~7のシクロアルキル基であってもよい)、アリール基(例えば、炭素数6~10のアリール基であってよく、フェニル基であってもよい)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~18のアルコキシ基であってよく、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であってもよい)等が挙げられる。
【0020】
R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0021】
R1のシクロアルキル基は、例えば、炭素数3~9のシクロアルキル基であってよく、炭素数4~8のシクロアルキル基、又は炭素数5~7のシクロアルキル基であってもよい。
【0022】
R1のシクロアルキル基が有していてよい置換基としては、例えば、ハロゲノ基(例えばフルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であってよく、フルオロ基又はクロロ基であってもよい)、アルキル基(例えば、炭素数1~18のアルキル基であってよく、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル基であってもよい)アリール基(例えば、炭素数6~10のアリール基であってよく、フェニル基であってもよい)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~18のアルコキシ基であってよく、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であってもよい)等が挙げられる。
【0023】
R1のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0024】
R1のアリール基は、例えば、炭素数6~10のアリール基であってよく、フェニル基であってもよい。
【0025】
R1のアリール基が有していてよい置換基としては、例えば、ハロゲノ基(例えばフルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であってよく、フルオロ基又はクロロ基であってもよい)、アルキル基(例えば、炭素数1~18のアルキル基であってよく、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル基であってもよい)、シクロアルキル基(例えば、炭素数3~9のシクロアルキル基であってよく、炭素数4~8のシクロアルキル基、又は炭素数5~7のシクロアルキル基であってもよい)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~18のアルコキシ基であってよく、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であってもよい)等が挙げられる。
【0026】
R1のアリール基としては、例えば、フェニル基、4-メトキシフェニル、トルイル基基等が挙げられる。
【0027】
R1は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。
【0028】
マレイミド系単量体は、例えば、下記式(1-2)で表される化合物であってよい。
【化2】
【0029】
式(1-2)中、R1は上記と同義である。
【0030】
マレイミド系単量体は、N-置換マレイミドであることが好ましい。N-置換マレイミドとしては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-n-オクチルマレイミド、N-n-ドデシルマレイミド、N-n-オクタデシルマレイミド等のN-アルキルマレイミド;N-シクロヘキシルマレイミド等のN-シクロアルキルマレイミド;N-フェニルマレイミド、N-(4-メトキシフェニル)マレイミド等のN-アリールマレイミド等が挙げられる。
【0031】
芳香族ビニル系単量体単位は、芳香族ビニル系単量体から形成される構造単位(繰り返し単位)を示す。芳香族ビニル系単量体は、芳香環と、当該芳香環に結合する炭素-炭素二重結合とを有する化合物を示す。芳香族ビニル系単量体は、例えば、芳香環と、当該芳香環に結合する-C(R2)=CH2(R2は水素原子又はメチル基)で表される基とを有する化合物であってよい。
【0032】
芳香族ビニル系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体が有する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環等が挙げられる。芳香族ビニル系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体が有する芳香環は、例えばベンゼン環又はナフタレン環であってよく、ベンゼン環であってもよい。
【0033】
芳香族ビニル系単量体単位は、例えば、下記式(2-1)で表される構造単位であってよい。
【化3】
【0034】
式(2-1)中、R2は、水素原子又はメチル基を示し、Arは、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
【0035】
Arのアリール基は、例えば、炭素数6~10のアリール基であってよく、フェニル基又はナフチル基であってもよく、フェニル基であってもよい。
【0036】
Arのアリール基が有していてよい置換基としては、例えば、ハロゲノ基(例えばフルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であってよく、フルオロ基又はクロロ基であってもよい)、アルキル基(例えば、炭素数1~18のアルキル基であってよく、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル基であってもよい)、シクロアルキル基(例えば、炭素数3~9のシクロアルキル基であってよく、炭素数4~8のシクロアルキル基、又は炭素数5~7のシクロアルキル基であってもよい)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~18のアルコキシ基であってよく、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であってもよい)等が挙げられる。
【0037】
Arのアリール基としては、例えば、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-クロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0038】
芳香族ビニル系単量体は、例えば、下記式(2-2)で表される化合物であってよい。
【化4】
【0039】
式(2-2)中、R2及びArは上記と同義である。
【0040】
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン系単量体(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、エチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等)、ビニルナフタレン系単量体(例えば、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等)等が挙げられる。
【0041】
芳香族ビニル系単量体は、好ましくはスチレン系単量体であり、芳香族ビニル系単量体単位は、好ましくはスチレン系単量体単位である。
【0042】
シアン化ビニル系単量体単位は、シアン化ビニル系単量体から形成される構造単位(繰り返し単位)を示す。シアン化ビニル系単量体は、炭素-炭素二重結合と、当該二重結合に結合するシアノ基とを有する化合物を示す。シアン化ビニル系単量体は、例えば、シアノ基と、当該シアノ基と結合する-C(R3)=CH2(R3は水素原子又はメチル基)で表される基とを有する化合物であってよい。
【0043】
シアン化ビニル系単量体単位は、例えば、下記式(3-1)で表される構造単位であってよい。
【化5】
【0044】
式(3-1)中、R3は、水素原子又はメチル基を示す。
【0045】
シアン化ビニル系単量体は、例えば、下記式(3-2)で表される構造単位であってよい。
【化6】
【0046】
式(3-2)中、R3は上記と同義である。
【0047】
シアン化ビニル系単量体としては、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0048】
共重合体(A)は、不飽和ジカルボン酸系単量体単位を更に含有していてもよい。
【0049】
不飽和ジカルボン酸系単量体単位は、不飽和ジカルボン酸系単量体から形成される構造単位(繰り返し単位)を示す。不飽和ジカルボン酸系単量体は、例えば、炭素-炭素二重結合と当該二重結合に結合する2つのカルボキシ基とを有する化合物、又は、当該化合物の2つのカルボキシ基が脱水縮合してなる化合物であってよい。
【0050】
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、例えば、不飽和ジカルボン酸、及び、不飽和ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0051】
不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0052】
不飽和ジカルボン酸系単量体単位としては、マレイン酸系単量体単位(マレイン酸単位又は無水マレイン酸単位)が好ましい。すなわち、不飽和ジカルボン酸系単量体としては、マレイン酸系単量体(マレイン酸又は無水マレイン酸)が好ましい。
【0053】
共重合体(A)中、マレイミド系単量体単位の含有量は、共重合体(A)の全量基準で5質量%以上であり、樹脂組成物の耐熱性がより向上する観点からは、7質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、又は12質量%以上であってもよい。また、共重合体(A)中、マレイミド系単量体単位の含有量は、共重合体(A)の全量基準で30質量%以下であり、樹脂の良好な機械特性がより維持されやすい観点からは、27質量%以下、25質量%以下、又は23質量%以下であってもよい。
【0054】
共重合体(A)中、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位の合計含有量は、65質量%以上であり、樹脂(特に塩素含有樹脂)との親和性の観点からは、70質量%以上、又は75質量%以上であってもよい。また、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位の合計含有量は、90質量%以下であり、マレイミド単量体単位による耐熱付与性維持の観点からは、87質量%以下、又は85質量%以下であってもよい。
【0055】
共重合体(A)中、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位の合計に対するシアン化ビニル系単量体単位の割合は、5質量%以上であり、樹脂(特に塩素含有樹脂)との親和性の観点からは、7質量%以上、9質量%以上、又は10質量%以上であってもよい。また、芳香族ビニル系単量体単位及びシアン化ビニル系単量体単位の合計に対するシアン化ビニル系単量体単位の割合は、30質量%以下であり、樹脂(特に塩素含有樹脂)との親和性の観点からは、25質量%以下、22質量%以下、20質量%以下、又は18質量%以下であってもよい。
【0056】
共重合体(A)中、芳香族ビニル系単量体単位の含有量は、共重合体(A)の全量基準で、例えば45質量%以上であってよく、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上であってもよい。また、香族ビニル系単量体単位の含有量は、共重合体(A)の全量基準で、例えば85質量%以下であってよく、80質量%以下、又は75質量%以下であってもよい。
【0057】
共重合体(A)中、シアン化ビニル系単量体単位の含有量は、共重合体(A)の全量基準で、例えば3質量%以上であってよく、4質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。また、シアン化ビニル系単量体単位の含有量は、共重合体(A)の全量基準で、例えば27質量%以下であってよく、25質量%以下、20質量%以下、又は18質量%以下であってもよい。
【0058】
共重合体(A)中、不飽和ジカルボン酸系単量体単位の含有量は、共重合体(A)の全量基準で、例えば10質量%以下であってよく、7質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってもよい。共重合体(A)は、不飽和ジカルボン酸系単量体単位を含有せず、不飽和ジカルボン酸系単量体単位の含有量が0質量%であってもよい。また、共重合体(A)が不飽和ジカルボン酸系単量体単位を含有するとき、不飽和ジカルボン酸系単量体単位の含有量は、共重合体(A)の全量基準で、例えば0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上、0.7質量%以上、0.9質量%以上、又は1質量%以上であってもよい。
【0059】
共重合体(A)中、マレイミド系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、シアン化ビニル系単量体単位、及び不飽和ジカルボン酸系単量体単位の合計含有量は、共重合体(A)の全量基準で、例えば80質量%以上であってよく、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、又は99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0060】
共重合体(A)は、マレイミド系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、シアン化ビニル系単量体単位、及び不飽和ジカルボン酸系単量体単位以外の、他の単量体単位を更に含有していてもよい。他の単量体単位は特に限定されず、例えば、不飽和カルボン酸エステル単位、不飽和カルボン酸単位等が挙げられる。
【0061】
共重合体(A)中、他の単量体単位の含有量は、共重合体(A)の全量基準で、例えば20質量%以下であってよく、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。
【0062】
共重合体(A)は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0063】
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えば1万以上であってよく、樹脂の機械的強度向上の観点からは、3万以上、5万以上、又は6万以上であってもよい。また、共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えば25万以下であってよく、樹脂の流動性向上による分散性向上の観点からは、20万以下、18万以下、又は15万以下であってもよい。
【0064】
なお、本明細書中、共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値であり、以下の条件で測定される値を示す。
装置名:SYSTEM-21 Shodex(昭和電工株式会社製)
カラム:PL gel MIXED-Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製する。
【0065】
共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、例えば110℃以上であってよく、耐熱付与性向上の観点からは、120℃以上、130℃以上、又は140℃以上であってもよい。また、共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、例えば200℃以下であってよく、溶融及び混練がより容易となる観点からは、180℃以下、170℃以下、又は160℃以下であってもよい。
【0066】
なお、本明細書中、共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、JIS K-7121に準拠して、以下の装置及び測定条件により測定されるマレイミド系共重合体の補外ガラス転移開始温度(Tmg)を示す。
装置名:示差走査熱量計 Robot DSC6200(セイコーインスツル株式会社製)
昇温速度:10℃/分
【0067】
<共重合体(B)>
共重合体(B)は、エチレン単位を含有する主鎖を有する。また、共重合体(B)は、シアン化ビニル系単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル系単量体単位からなる群より選択される少なくとも一種の単量体単位(b)を含有する。
【0068】
このような共重合体(B)は、エチレン単位を含有する主鎖が、柔軟性に富むため、耐衝撃性の向上に寄与していると考えられる。また、共重合体(B)は、単量体単位(b)を有することで共重合体(A)との相溶性が良好となり、樹脂中での共重合体(A)の分散性が向上し、それにより樹脂の機械特性が向上していると考えられる。
【0069】
共重合体(B)は、エチレン単位を含有する主鎖を有する。エチレン単位は、エチレンから形成される構造単位であり、-CH2-CH2-で表される構造単位である。
【0070】
主鎖中のエチレン単位の含有量は、主鎖を構成する単量体単位の総数基準で、例えば70mol%以上であってよく、80mol%以上、85mol%以上、又は90mol%以上であってもよい。また、主鎖中のエチレン単位の含有量は、主鎖を構成する単量体単位の総数基準で、例えば99mol%以下であってよく、98mol%以下、又は97mol%以下であってもよい。
【0071】
主鎖は、単量体単位(b)を更に含有していてもよい。また、主鎖は、エポキシ基を有する単量体単位(i)を更に含有していてもよい。
【0072】
単量体単位(i)は、例えば、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位であってよい。すなわち、主鎖は、単量体単位(i)及び単量体単位(b)の双方に該当する単量体単位として、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を含有していてよい。
【0073】
不飽和カルボン酸エステル系単量体単位は、不飽和カルボン酸エステル系単量体から形成される構造単位(繰り返し単位)を示す。不飽和カルボン酸エステル系単量体は、例えば、炭素-炭素二重結合と、当該二重結合に結合するカルボニルオキシ基と、カルボニルオキシ基と結合する一価の基と、を有する化合物であってよい。
【0074】
単量体単位(i)としての不飽和カルボン酸エステル系単量体単位としては、例えば、下記式(4-1)で表される構造単位が挙げられる。
【化7】
【0075】
式(4-1)中、R41は、水素原子又はメチル基を示し、R42は、エポキシ基を有する一価の基を示す。
【0076】
R42におけるエポキシ基を有する一価の基としては、例えば、グリシジル基が挙げられる。
【0077】
主鎖において、エチレン単位と単量体単位(i)との合計量は、主鎖を構成する単量体単位の総数基準で、例えば80モル%以上であってよく、90モル%以上、95モル%以上、97モル%以上、又は99モル%以上であってもよく、100モル%であってもよい。
【0078】
共重合体(B)は、単量体単位(b)を含有する側鎖を有していてもよい。
【0079】
側鎖において、単量体単位(b)のシアン化ビニル系単量体単位としては、共重合体(A)におけるシアン化ビニル系単量体単位と同じものが例示できる。
【0080】
側鎖において、単量体単位(b)の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位としては、例えば、下記式(5-1)で表される構造単位が挙げられる。
【化8】
【0081】
式(5-1)中、R51は、水素原子又はメチル基を示し、R52は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0082】
R52のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基としては、R1のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基と同じものが例示できる。
【0083】
側鎖は、芳香族ビニル系単量体単位を更に含有していてもよい。側鎖における芳香族ビニル系単量体単位としては、共重合体(A)における芳香族ビニル系単量体単位と同じものが例示できる。
【0084】
側鎖としては、例えば、以下の態様が挙げられる。
【0085】
一態様の側鎖(以下、側鎖(1)ともいう。)は、シアン化ビニル系単量体単位と、芳香族ビニル系単量体単位と、を含有する。
【0086】
側鎖(1)において、シアン化ビニル系単量体単位の含有量は、側鎖(1)の全量基準で、例えば5質量%以上であってよく、共重合体(A)との親和性により優れる観点からは、10質量%以上、13質量%以上、又は15質量%以上であってもよい。また、側鎖(1)において、シアン化ビニル系単量体単位の含有量は、側鎖(1)の全量基準で、例えば50質量%以下であってよく、共重合体(A)との親和性により優れる観点からは、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってもよい。
【0087】
側鎖(1)において、芳香族ビニル系単量体単位の含有量は、側鎖(1)の全量基準で、例えば50質量%以上であってよく、共重合体(A)との親和性により優れる観点からは、55質量%以上、60質量%以上、又は65%以上であってもよい。また、側鎖(1)において、芳香族ビニル系単量体単位の含有量は、側鎖(1)の全量基準で、例えば95質量%以下であってよく、共重合体(A)との親和性により優れる観点からは、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であってもよい。
【0088】
側鎖(1)において、芳香族ビニル系単量体単位の含有量に対するシアン化ビニル系単量体単位の含有量の比(質量比)は、例えば0.05以上であってよく、共重合体(A)との親和性により優れる観点からは、0.11以上、0.17以上、又は0.25以上であってもよい。また、側鎖(1)において、芳香族ビニル系単量体単位の含有量に対するシアン化ビニル系単量体単位の含有量の比(質量比)は、例えば1.00以下であってよく、共重合体(A)との親和性により優れる観点からは、0.80以下、0.65以下、又は0.50以下であってもよい。
【0089】
側鎖(1)において、シアン化ビニル系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位の合計量は、側鎖(1)の全量基準で、例えば80質量%以上であってよく、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、又は99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0090】
他の一態様の側鎖(以下、側鎖(2)ともいう。)は、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を含有する。
【0091】
側鎖(2)は、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を2種以上含有していてよい。側鎖(2)は、例えば、式(5-1)中のR52が炭素数1又は2のアルキル基である第一の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位と、式(5-1)中のR52が炭素数4以上のアルキル基である第二の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位と、を含有していてよい。
【0092】
側鎖(2)において、第一の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量は、側鎖(2)の全量基準で、例えば0質量%以上であってよく、共重合体(A)、塩化ビニル樹脂等との親和性向上の観点からは、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってもよい。また、側鎖(2)において、第一の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量は、側鎖(2)の全量基準で、例えば100質量%以下であってよく、耐衝撃性向上の観点からは、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であってもよい。
【0093】
側鎖(2)において、第二の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量は、側鎖(2)の全量基準で、例えば0質量%以上であってよく、塩化ビニル樹脂、耐衝撃性改良剤等との親和性により優れる観点からは、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってもよい。また、側鎖(2)において、第二の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量は、側鎖(2)の全量基準で、例えば100質量%以下であってよく、共重合体(A)との親和性向上の観点からは、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であってもよい。
【0094】
側鎖(2)が第一の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位及び第二の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位を含有するとき、第一の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量に対する第二の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量の比(質量比)は、例えば0.05以上であってよく、耐衝撃性向上の観点からは、0.11以上、0.17以上、又は0.25以上であってもよい。また、側鎖(2)において、第一の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量に対する第二の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量の比(質量比)は、例えば20以下であってよく、共重合体(A)との親和性向上の観点からは、10以下、5.7以下、又は4以下であってもよい。
【0095】
側鎖(2)において、不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の含有量(例えば、第一の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位及び第二の不飽和カルボン酸エステル系単量体単位の合計量)は、側鎖(2)の全量基準で、例えば80質量%以上であってよく、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、又は99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0096】
共重合体(B)が主鎖及び側鎖を有するとき、共重合体(B)中の側鎖の割合は、共重合体(B)の全量基準で、例えば5質量%以上であってよく、共重合体(A)との親和性により優れる観点からは、10質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってもよい。また、共重合体(B)中の側鎖の割合は、共重合体(B)の全量基準で、例えば60質量%以下であってよく、耐衝撃性がより向上する観点からは、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。
【0097】
共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、例えば1万以上であってよく、耐衝撃性がより向上する観点からは、5万以上、7万以上、又は9万以上であってもよい。また、共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、例えば30万以下であってよく、樹脂の流動性向上による分散性向上の観点からは、20万以下、18万以下、又は16万以下であってもよい。
【0098】
なお、本明細書中、共重合体(B)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値であり、以下の条件で測定される値を示す。
装置名:SYSTEM-21 Shodex(昭和電工株式会社製)
カラム:PL gel MIXED-Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製する。
【0099】
共重合体(B)は、市販品であってもよい。共重合体(B)として、例えば、モディパー(登録商標)A4300、モディパー(登録商標)A4400、ボンドファースト(登録商標)、レクスパール EMA(登録商標)等を好適に用いることができる。
【0100】
本実施形態の耐熱付与材において、共重合体(B)の含有量は、共重合体(A)及び共重合体(B)の全量基準で、例えば1質量%以上であり、耐衝撃性がより向上する観点からは、3質量%、5質量%以上、又は7質量%以上であってもよい。また、共重合体(B)の含有量は、共重合体(A)及び共重合体(B)の全量基準で、例えば50質量%以下であってよく、樹脂の軟質化抑制の観点からは、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。
【0101】
本実施形態の耐熱付与材において、共重合体(A)及び共重合体(B)の合計量は、耐熱付与材の全量基準で、例えば80質量%以上であってよく、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、又は99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0102】
本実施形態の耐熱付与材は、熱可塑性樹脂(特に、塩化ビニル樹脂)に耐熱性を付与するための添加剤として、好適に用いることができる。
【0103】
本実施形態の耐熱付与材の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば5質量部以上であってよく、より高い耐熱性が得られる観点からは、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、又は50質量部以上であってもよい。また、本実施形態の耐熱付与材の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば100質量部以下であってよく、耐熱性、耐衝撃性及び軟質性の各物性のバランスがより良好となる観点からは、90質量部以下、80質量部以下、又は70質量部以下であってもよい。
【0104】
本実施形態の耐熱付与材は、共重合体(A)と共重合体(B)とを混合した予備混合物として熱可塑性樹脂に添加してもよい。また、本実施形態の耐熱付与材は、共重合体(A)及び共重合体(B)のそれぞれを同時に又は別々に、熱可塑性樹脂に添加して使用してもよい。
【0105】
(樹脂組成物)
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、上述の耐熱付与材と、を含む。
【0106】
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、共重合体(A)と、共重合体(B)とを含む、ということもできる。
【0107】
本実施形態の樹脂組成物は、共重合体(A)及び共重合体(B)を混合した予備混合物と熱可塑性樹脂とを混合して製造されたものであってもよく、共重合体(A)と共重合体(B)と熱可塑性樹脂とを同時に混合して製造されたものであってもよい。
【0108】
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0109】
本実施形態の耐熱付与材による効果が特に顕著に得られる観点から、熱可塑性樹脂は、塩化ビニル樹脂であってよい。
【0110】
本実施形態の樹脂組成物において、耐熱付与材の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば5質量部以上であってよく、より高い耐熱性が得られる観点からは、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、又は50質量部以上であってもよい。また、本実施形態の樹脂組成物において、耐熱付与材の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば100質量部以下であってよく、耐熱性、耐衝撃性及び軟質性の各物性のバランスがより良好となる観点からは、90質量部以下、80質量部以下、又は70質量部以下であってもよい。
【0111】
本実施形態の樹脂組成物において、熱可塑性樹脂及び耐熱付与材の合計量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば60質量%以上であってよく、70質量%以上、80質量%以上、又は85質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0112】
本実施形態の樹脂組成物は、耐熱付与材以外の他の添加剤を更に含んでいてもよい。他の添加剤は、例えば、熱可塑性樹脂に添加される公知の添加剤から適宜選択してよい。
【0113】
他の添加剤としては、例えば、耐衝撃性改良剤、安定剤、充填剤等が挙げられる。
【0114】
耐衝撃性改良剤は、例えば、熱可塑性樹脂用の公知の耐衝撃性改良剤から適宜選択してよい。耐衝撃性改良剤としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリルゴム等が挙げられる。
【0115】
本実施形態の樹脂組成物において、他の添加剤の含有量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば40質量%以下であってよく、30質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下であってもよい。本実施形態の樹脂組成物は、他の添加剤の含有量が0質量%であってもよい。本実施形態の樹脂組成物が他の添加剤を含有するとき、他の添加剤の含有量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば1質量%以上であってよく、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。
【0116】
本実施形態の樹脂組成物は、成形して、成形品として使用してよい。成形方法は特に限定されず、成形方法としては、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形等の方法が挙げられる。
【0117】
本実施形態の樹脂組成物の耐熱性は、例えば、B50法によるビカット軟化温度によって評価できる。本実施形態の樹脂組成物のビカット軟化温度(T1)は、例えば、熱可塑性樹脂のビカット軟化温度(T0)より高くなる。樹脂組成物のビカット軟化温度(T1)と熱可塑性樹脂のビカット軟化温度(T0)との差(T1-T0)は、例えば2℃以上であってよく、3℃以上、又は5℃以上であってもよい。
【0118】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0119】
以下、実施例によって本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0120】
(製造例1:共重合体A-1の製造)
以下の方法で、共重合体A-1を製造した。
撹拌機を備えた容積約120リットルのオートクレーブ中に77質量部のスチレン、13質量部のアクリロニトリル、1質量部のマレイン酸無水物、0.2質量部の1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、0.4質量部のα-メチルスチレンダイマー、15.4質量部のメチルイソブチルケトンを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて92℃まで昇温した。昇温後、96℃を保持しながら、9質量部のマレイン酸無水物及び0.5質量部のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを60質量部のメチルイソブチルケトンに溶解した溶液を、5.5時間かけて連続的に添加した。添加終了後、116℃に昇温し、1時間反応させて重合を終了させた。その後、重合液に9質量部のアニリン及び0.1質量部のトリエチルアミンを加え140℃で6時間反応させた。反応終了後のイミド化反応液をベントタイプスクリュー式押出機に投入し、揮発分を除去してペレット状のマレイミド系共重合体A-1を得た。
【0121】
得られた共重合体A-1において、N-フェニルマレイミド単位の含有量は14質量%、スチレン単位の含有量は71質量%、アクリロニトリル単位の含有量は13質量%、無水マレイン酸単位の含有量は2質量%であった。また、得られた共重合体A-1の重量平均分子量(Mw)は9.4万、ガラス転移温度(Tg)は131℃であった。
【0122】
(製造例2:共重合体A-2の製造)
以下の方法で、共重合体A-2を製造した。
撹拌機を備えた容積約120リットルのオートクレーブ中に74質量部のスチレン、12質量部のアクリロニトリル、2質量部のマレイン酸無水物、0.2質量部のt-ドデシルメルカプタン、33質量部のメチルイソブチルケトンを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて92℃まで昇温した。昇温後92℃を保持しながら、13質量部のマレイン酸無水物及び0.9質量部のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを84質量部のメチルイソブチルケトンに溶解した溶液を、6.5時間かけて連続的に添加した。添加終了後、116℃に昇温し、1時間反応させて重合を終了させた。その後、重合液に13質量部のアニリン及び0.2質量部のトリエチルアミンを加え140℃で6時間反応させた。反応終了後のイミド化反応液をベントタイプスクリュー式押出機に投入し、揮発分を除去してペレット状のマレイミド系共重合体A-2を得た。
【0123】
得られた共重合体A-2において、N-フェニルマレイミド単位の含有量は19質量%、スチレン単位の含有量は68質量%、アクリロニトリル単位の含有量は10質量%、無水マレイン酸単位の含有量は3質量%であった。また、得られた共重合体A-2の重量平均分子量(Mw)は9.4万、ガラス転移温度(Tg)は140℃であった。
【0124】
(製造例3:共重合体A-3の製造)
以下の方法で、共重合体A-3を製造した。
撹拌機を備えた容積約120リットルのオートクレーブ中に77質量部のスチレン、9質量部のアクリロニトリル、4質量部のマレイン酸無水物、0.45質量部のα-メチルスチレンダイマー、38質量部のメチルイソブチルケトンを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて92℃まで昇温した。昇温後92℃を保持しながら、9質量部のマレイン酸無水物及び0.80質量部のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを47質量部のメチルイソブチルケトンに溶解した溶液を、5時間かけて連続的に添加した。添加終了後、116℃に昇温し、1時間反応させて重合を終了させた。その後、重合液に13質量部のアニリン及び0.2質量部のトリエチルアミンを加え140℃で15時間反応させた。反応終了後のイミド化反応液をベントタイプスクリュー式押出機に投入し、揮発分を除去してペレット状のマレイミド系共重合体A-3を得た。
【0125】
得られた共重合体A-3において、N-フェニルマレイミド単位の含有量は22質量%、スチレン単位の含有量は70質量%、アクリロニトリル単位の含有量は8質量%、無水マレイン酸単位の含有量は0質量%であった。また、得られた共重合体A-3の重量平均分子量(Mw)は7.8万、ガラス転移温度(Tg)は140℃であった。
【0126】
(製造例4:共重合体A-4の製造)
以下の方法で、共重合体A-4を製造した。
撹拌機を備えた容積約120リットルのオートクレーブ中に24質量部のスチレン、23質量部のアクリロニトリル、2質量部のマレイン酸無水物、0.1質量部のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、0.3質量部のt-ドデシルメルカプタン、35質量部のメチルイソブチルケトンを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて92℃まで昇温した。昇温後92℃を保持しながら、39質量部のスチレン、13質量部のマレイン酸無水物及び0.6質量部のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを82質量部のメチルイソブチルケトンに溶解した溶液を、6時間かけて連続的に添加した。添加終了後、116℃に昇温し、1時間反応させて重合を終了させた。その後、重合液に13質量部のアニリン及び0.2質量部のトリエチルアミンを加え140℃で12時間反応させた。反応終了後のイミド化反応液をベントタイプスクリュー式押出機に投入し、揮発分を除去してペレット状のマレイミド系共重合体A-4を得た。
【0127】
得られた共重合体A-4において、N-フェニルマレイミド単位の含有量は20質量%、スチレン単位の含有量は59質量%、アクリロニトリル単位の含有量は19質量%、無水マレイン酸単位の含有量は2質量%であった。また、得られた共重合体A-4の重量平均分子量(Mw)は7.8万、ガラス転移温度(Tg)は143℃であった。
【0128】
(製造例5:共重合体X-1の製造)
以下の方法で、共重合体X-1を製造した。
撹拌機を備えた容積約120リットルのオートクレーブ中に62質量部のスチレン、5質量部のマレイン酸無水物、0.3質量部のt-ドデシルメルカプタン、92質量部のメチルイソブチルケトンを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて92℃まで昇温した。昇温後92℃を保持しながら33質量部のマレイン酸無水物及び0.6質量部のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを200質量部のメチルイソブチルケトンに溶解した溶液を、5.5時間かけて連続的に添加した。添加終了後、116℃に昇温し、2時間反応させて重合を終了させた。その後、重合液に34質量部のアニリン及び0.6質量部のトリエチルアミンを加え140℃で12時間反応させた。反応終了後のイミド化反応液をベントタイプスクリュー式押出機に投入し、揮発分を除去してペレット状のマレイミド系共重合体X-1を得た。
【0129】
得られた共重合体X-1において、N-フェニルマレイミド単位の含有量は38質量%、スチレン単位の含有量は60質量%、アクリロニトリル単位の含有量は0質量%、無水マレイン酸単位の含有量は2質量%であった。また、得られた共重合体X-1の重量平均分子量(Mw)は8.5万、ガラス転移温度(Tg)は161℃であった。
【0130】
(製造例6:共重合体X-2の製造)
以下の方法で、共重合体X-2を製造した。
撹拌機を備えた容積約120リットルのオートクレーブ中に20質量部のスチレン、30質量部のアクリロニトリル、3質量部のマレイン酸無水物、0.3質量部のt-ドデシルメルカプタン、45質量部のメチルイソブチルケトンを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて92℃まで昇温した。昇温後92℃を保持しながら、35質量部のスチレン、12質量部のマレイン酸無水物及び0.6質量部のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを76質量部のメチルイソブチルケトンに溶解した溶液を、6時間かけて連続的に添加した。添加終了後、116℃に昇温し、1時間反応させて重合を終了させた。その後、重合液に13質量部のアニリン及び0.2質量部のトリエチルアミンを加え140℃で12時間反応させた。反応終了後のイミド化反応液をベントタイプスクリュー式押出機に投入し、揮発分を除去してペレット状のマレイミド系共重合体X-2を得た。
【0131】
得られた共重合体X-2において、N-フェニルマレイミド単位の含有量は22質量%、スチレン単位の含有量は51質量%、アクリロニトリル単位の含有量は26質量%、無水マレイン酸単位の含有量は1質量%であった。また、得られた共重合体X-2の重量平均分子量(Mw)は8.2万、ガラス転移温度(Tg)は144℃であった。
【0132】
製造例1~6で得られた各共重合体の組成を表1に示す。なお、表1中、NPMIはN-フェニルマレイミド単位の含有量を示し、Stはスチレン単位の含有量を示し、ANはアクリロニトリル単位の含有量を示し、MAHは無水マレイン酸単位の含有量を示し、AN/(St+AN)は、スチレン単位及びアクリロニトリル単位の合計に対するアクリロニトリル単位の割合を示す。
【0133】
【0134】
(共重合体(B)の準備)
共重合体B-1として、モディパー(登録商標)A4400(エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体を主鎖とし、スチレン-アクリロニトリル共重合体を側鎖とするグラフト共重合体)を準備した。なお、共重合体B-1中、エチレン単位の含有量は53質量%、メタクリル酸グリシジル単位の含有量は15質量%、スチレン単位の含有量は25質量%、アクリロニトリル単位の含有量は7質量%であった。
【0135】
また、共重合体B-2として、モディパー(登録商標)A4300(エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体を主鎖とし、アクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル共重合体を側鎖とするグラフト共重合体)を準備した。なお、共重合体B-2中、エチレン単位の含有量は62質量%、メタクリル酸グリシジル単位の含有量は17質量%、n-ブチルアクリレート単位の含有量は15質量%、メチルメタクリレート単位の含有量は6質量%であった。
【0136】
また、共重合体B-3として、ボンドファースト(登録商標)(エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体)を準備した。
【0137】
また、共重合体Y-1として、スチレン-アクリロニトリル共重合体(スチレン単位82質量%、アクリロニトリル単位18質量%、重量平均分子量:18万)を準備した。
【0138】
(実施例1)
以下の方法で、樹脂組成物を製造した。
安定剤及び滑剤を加えてヘンシェルミキサーで混合された塩化ビニル樹脂(製品名:TH-1000、大洋塩ビ社製)と、共重合体A-1と、共重合体B-1と、耐衝撃性改良剤(メタブレン(登録商標)C-223A、MBS樹脂、三菱ケミカル社製)とを、表2に示した配合割合でブレンドした後、テストロール(φ6×L15テストロール、関西ロール社製)を用いて樹脂組成物のロールシートを作成し、ロールシートを重ねてプレス成形し、切削加工又は打ち抜き加工により試験片を作成して、各物性値の測定を行った。
【0139】
(実施例2~13、比較例1~7)
各成分の配合量を表2、表3又は表4に記載のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造した。
【0140】
実施例1~13、比較例1~7で得られた樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表2~表4に示す。
【0141】
<ビカット軟化温度の測定>
ビカット軟化温度は、JIS K7206:1999に基づき、B50法(荷重50N、昇温速度50℃/時間)で、20mm×20mm、厚さ4mmの試験片を用いて測定した。なお、測定機は東洋精機製作所社製HDT&VSPT試験装置を使用した。
【0142】
<シャルピー衝撃強度の測定>
シャルピー衝撃強度は、JIS K-7111に準拠して、ノッチあり試験片を用い、打撃方向はエッジワイズを採用して、相対湿度50%、雰囲気温度23℃の条件で測定した。なお、測定機は東洋精機製作所社製デジタル衝撃試験機を使用した。
【0143】
<曲げ弾性率の測定>
曲げ弾性率は、JIS K 7171に準拠して、2mm/minの条件で、4.0mm厚のプレス成形品から打ち抜き加工により作製した短冊状試験片を用いて測定した。測定機は株式会社インテスコ製 210X-3型万能試験機を使用した。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
表2~表4中、各成分の配合量の単位は「質量部」である。また、表2~表4中、「B/(A+B)」は、共重合体(A)及び共重合体(B)の合計に対する共重合体(B)の比(質量比)を示す。
【0148】
表2~4に示すとおり、実施例1~13の樹脂組成物は、7kJ/m2以上のシャルピー衝撃強度、1800MPa以上の曲げ弾性率、77℃以上のビカット軟化温度を有しており、本開示の耐熱付与材によって、機械特性を十分に維持しつつ、耐熱性の改善が図れることが確認された。