(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025163569
(43)【公開日】2025-10-29
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/18 20060101AFI20251022BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20251022BHJP
H01R 4/04 20060101ALI20251022BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20251022BHJP
【FI】
H01R13/18 B
H01R4/02 C
H01R4/04
H01R4/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066976
(22)【出願日】2024-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 真吾
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB12
5E085BB14
5E085CC03
5E085DD04
5E085DD13
5E085FF01
5E085FF08
5E085HH06
5E085HH11
5E085JJ03
5E085JJ23
(57)【要約】
【課題】導通抵抗の低減や放熱性能の向上が可能で、ばね部材の筒状接続部からの離脱を阻止して、雌端子の雄端子への接圧の減少を抑制することができる、雌端子を開示する。
【解決手段】雌端子10が、筒状接続部18と電線接続部24と連結部26とばね部材30とを備え、筒状接続部18は円弧状の第1周壁部60と第2周壁部64とを含み、電線接続部24が第1他端部96と第2他端部98とが重ね合わされて構成され、連結部26が第1壁部102と第2壁部104とを含み、第1他端部96と第2他端部98とが相互に重ね合わされて、第1周壁部60と第2周壁部64が対向配置されることにより筒状接続部18が構成され、ばね部材30により、第1周壁部60と第2周壁部64が相互に接近する方向に付勢されており、第1壁部102と第2壁部104の少なくとも一方が、筒状接続部18の外周面28よりも外方に突出する離脱防止突部110を有している。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部と、
電線の芯線が接続される電線接続部と、
前記筒状接続部と前記電線接続部とを連結する連結部と、
前記筒状接続部の外周面に装着されたばね部材と、を備え、
前記筒状接続部は、帯状の第1平板金具の一端部を円弧状に湾曲変形して設けられた第1周壁部と、帯状の第2平板金具の一端部を円弧状に湾曲変形して設けられた第2周壁部と、を含み、
前記電線接続部が、前記第1平板金具の他端部である第1他端部と前記第2平板金具の他端部である第2他端部とが重ね合わされて構成され、
前記連結部が、前記第1平板金具の前記第1周壁部と前記第1他端部の間に位置して前記第1周壁部の軸方向に交差する方向に屈曲された第1壁部と、前記第2平板金具の前記第2周壁部と前記第2他端部の間に位置して前記第2周壁部の軸方向に交差する方向に屈曲された第2壁部と、を含み、
前記第1平板金具の前記第1他端部と前記第2平板金具の前記第2他端部とが相互に重ね合わされて、前記第1周壁部と前記第2周壁部が対向配置されることにより、前記筒状接続部が構成され、
前記ばね部材により、前記第1周壁部と前記第2周壁部が対向方向で相互に接近する方向に付勢されており、
前記第1壁部と前記第2壁部の少なくとも一方が、前記筒状接続部の前記外周面よりも外方に突出する、離脱防止突部を有している、
雌端子。
【請求項2】
前記第1壁部は、前記第1他端部から前記交差する方向に立ち上がる第1基端側連結部と、前記第1基端側連結部よりも小さい幅寸法を有して前記第1基端側連結部の幅方向中央部分から前記第1周壁部に向かって延びて前記第1周壁部の周方向中央部分に連結される第1先端側連結部と、を有し、
前記第1基端側連結部の幅方向両端部分が前記筒状接続部の前記外周面よりも外方に突出して、一対の前記離脱防止突部を構成しており、
前記第2壁部は、前記第2他端部から前記交差する方向に立ち上がる第2基端側連結部と、前記第2基端側連結部よりも小さい幅寸法を有して前記第2基端側連結部の幅方向中央部分から前記第2周壁部に向かって延びて前記第2周壁部の周方向中央部分に連結される第2先端側連結部と、を有し、
前記第2基端側連結部の幅方向両端部分が前記筒状接続部の前記外周面よりも外方に突出して、一対の前記離脱防止突部を構成している、請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記第1壁部と前記第2壁部の少なくとも一方には、板厚方向に貫通する窓部が形成されている、請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【請求項4】
前記第1平板金具と前記第2平板金具は、前記第1他端部と前記第2他端部が連接部を介して相互に連接された一枚の帯状の金属平板によって構成されており、
前記金属平板の両端部に前記第1平板金具の前記第1周壁部と前記第2平板金具の前記第2周壁部がそれぞれ設けられ、
前記金属平板の前記連接部が板厚方向に屈曲されることで、前記第1平板金具の前記第1他端部と前記第2平板金具の前記第2他端部とが相互に重ね合わされて前記電線接続部が構成され、前記両端部に設けられた前記第1周壁部と前記第2周壁部が相互に対向配置されて前記筒状接続部が構成されている、請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【請求項5】
前記ばね部材が、周方向の一か所が切り欠かれた金属製のリング部材を含み、
前記筒状接続部の前記外周面に前記リング部材の内周面が圧接されて装着されている、請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【請求項6】
前記リング部材の軸方向寸法が、前記筒状接続部の軸方向寸法の2/3倍以上1.5倍以下である、請求項5に記載の雌端子。
【請求項7】
前記第1周壁部と前記第2周壁部の少なくとも一方の周方向端部に、径方向外方に屈曲された屈曲部が設けられており、前記屈曲部が前記ばね部材の嵌合穴に嵌合されている、請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【請求項8】
前記第1周壁部と前記第2周壁部の少なくとも一方には、他方に向かって突出する接近規制突部が設けられており、前記ばね部材により、前記第1周壁部と前記第2周壁部が対向方向で相互に接近する方向に付勢された際に、前記接近規制突部が前記他方に当接している、請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雌端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピン端子等と呼ばれる略円柱状の柱状接続部を有する雄端子と、スリーブ端子等と呼ばれる略円筒状の筒状接続部を有する雌端子との雌雄型端子による電気的な接続構造が開示されている。雌端子の筒状接続部には、複数のC字形状のばね部材が装着されて筒状接続部を径方向内方に付勢しており、雄端子への雌端子の接圧の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構造では、筒状接続部の周方向で一部の領域のみしか、被覆電線の芯線が接続される電線接続部に直接連結されていない。その結果、筒状接続部の周方向の残りの領域では、電線接続部までの導電経路が長くなっており、雌端子の導通抵抗や放熱性能の悪化を招いていた。また、雌端子に対する雄端子の挿抜が繰り返されることで、ばね部材が筒状接続部の軸方向で変位して筒状接続部から離脱することで、雌端子の雄端子への所望の接圧を維持できないおそれもあった。
【0005】
そこで、導通抵抗の低減や放熱性能の向上が可能で、ばね部材の筒状接続部からの離脱を阻止して、雌端子の雄端子への接圧の減少を抑制することができる、雌端子を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の雌端子は、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部と、電線の芯線が接続される電線接続部と、前記筒状接続部と前記電線接続部とを連結する連結部と、前記筒状接続部の外周面に装着されたばね部材と、を備え、前記筒状接続部は、帯状の第1平板金具の一端部を円弧状に湾曲変形して設けられた第1周壁部と、帯状の第2平板金具の一端部を円弧状に湾曲変形して設けられた第2周壁部と、を含み、前記電線接続部が、前記第1平板金具の他端部である第1他端部と前記第2平板金具の他端部である第2他端部とが重ね合わされて構成され、前記連結部が、前記第1平板金具の前記第1周壁部と前記第1他端部の間に位置して前記第1周壁部の軸方向に交差する方向に屈曲された第1壁部と、前記第2平板金具の前記第2周壁部と前記第2他端部の間に位置して前記第2周壁部の軸方向に交差する方向に屈曲された第2壁部と、を含み、前記第1平板金具の前記第1他端部と前記第2平板金具の前記第2他端部とが相互に重ね合わされて、前記第1周壁部と前記第2周壁部が対向配置されることにより、前記筒状接続部が構成され、前記ばね部材により、前記第1周壁部と前記第2周壁部が対向方向で相互に接近する方向に付勢されており、前記第1壁部と前記第2壁部の少なくとも一方が、前記筒状接続部の前記外周面よりも外方に突出する、離脱防止突部を有している、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の雌端子によれば、導通抵抗の低減や放熱性能の向上が可能で、ばね部材の筒状接続部からの離脱を阻止して、雌端子の雄端子への接圧の減少を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る雌端子を含む雌コネクタが雄端子に嵌合した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された雌コネクタにおける正面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された雌コネクタにおける縦断面図であって、
図6におけるV-V断面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示された雄端子と雌コネクタの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示された雌端子を構成する雌端子金具を、ばね部材を装着する前の単品状態で示す正面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示された雌端子金具における背面図である。
【
図10】
図10は、
図1に示された雌コネクタを構成する雌端子を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、
図1に示された雌コネクタを雄端子との嵌合前の状態で示す正面図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る雌端子を含む雌コネクタを雄端子との嵌合状態で示す横断面図であって、
図15におけるXIV-XIV断面図である。
【
図16】
図16は、実施形態3に係る雌端子を含む雌コネクタを雄端子との嵌合状態で示す横断面図であって、
図17におけるXVI-XVI断面図である。
【
図18】
図18は、実施形態4に係る雌端子を含む雌コネクタを雄端子との嵌合状態で示す横断面図であって、
図19におけるXVIII-XVIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の雌端子は、
(1)雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部と、電線の芯線が接続される電線接続部と、前記筒状接続部と前記電線接続部とを連結する連結部と、前記筒状接続部の外周面に装着されたばね部材と、を備え、前記筒状接続部は、帯状の第1平板金具の一端部を円弧状に湾曲変形して設けられた第1周壁部と、帯状の第2平板金具の一端部を円弧状に湾曲変形して設けられた第2周壁部と、を含み、前記電線接続部が、前記第1平板金具の他端部である第1他端部と前記第2平板金具の他端部である第2他端部とが重ね合わされて構成され、前記連結部が、前記第1平板金具の前記第1周壁部と前記第1他端部の間に位置して前記第1周壁部の軸方向に交差する方向に屈曲された第1壁部と、前記第2平板金具の前記第2周壁部と前記第2他端部の間に位置して前記第2周壁部の軸方向に交差する方向に屈曲された第2壁部と、を含み、前記第1平板金具の前記第1他端部と前記第2平板金具の前記第2他端部とが相互に重ね合わされて、前記第1周壁部と前記第2周壁部が対向配置されることにより、前記筒状接続部が構成され、前記ばね部材により、前記第1周壁部と前記第2周壁部が対向方向で相互に接近する方向に付勢されており、前記第1壁部と前記第2壁部の少なくとも一方が、前記筒状接続部の前記外周面よりも外方に突出する、離脱防止突部を有している、ものである。
【0010】
本開示の雌端子によれば、帯状の金属平板の一端部を円弧状に湾曲変形して設けた第1周壁部と第2周壁部を相互に対向配置させることで筒状接続部が構成されている。さらに、一端部に第1周壁部が設けられた第1平板金具の第1他端部と、一端部に第2周壁部が設けられた第2平板金具の第2他端部とが、相互に重ね合わされて電線接続部が構成されている。それゆえ、筒状接続部を構成する第1周壁部と第2周壁部の全体が電線接続部に直接連接されており、特許文献1に記載の従来構造のように、筒状接続部の一部の領域のみ電線接続部に接続された場合に比して、雌端子の導通抵抗の低減や放熱性能の向上を図ることができる。
【0011】
加えて、筒状接続部と電線接続部とを連結する連結部が、第1平板金具の第1周壁部と第1他端部の間に位置する第1壁部と、第2平板金具の第2周壁部と第2他端部の間に位置する第2壁部と、によって構成されている。第1壁部と第2壁部は、第1周壁部や第2周壁部(筒状接続部)の軸方向に交差する方向に屈曲されており、第1壁部と第2壁部の少なくとも一方が筒状接続部の外周面よりも外方に突出することで離脱防止突部が構成されている。すなわち、離脱防止突部は、筒状接続部の軸方向に交差する方向に屈曲された第1壁部と第2壁部の少なくとも一方の一部が、筒状接続部の外周面を越えて外方に突出することで設けられている。それゆえ、雄端子と雌端子の挿抜に伴い、筒状接続部の外周面に装着されたばね部材が筒状接続部の基端部側に変位する場合でも、ばね部材が離脱防止突部に干渉することでばね部材の筒状接続部からの離脱が防止され、雌端子の雄端子への接圧の減少を抑制することができる。
【0012】
なお、第1平板金具と第2平板金具は、相互に分離されていてもよいし、各他端部側で相互に連結されていてもよい。また、「第1他端部と第2他端部とが重ね合わされる」とは、第1他端部と第2他端部とが全面に亘って密着している必要はなく、相互に対向して近接配置されていればよく、その一部または全部が隙間を隔てて対向している状態も含むものである。
【0013】
(2)上記(1)において、前記第1壁部は、前記第1他端部から前記交差する方向に立ち上がる第1基端側連結部と、前記第1基端側連結部よりも小さい幅寸法を有して前記第1基端側連結部の幅方向中央部分から前記第1周壁部に向かって延びて前記第1周壁部の周方向中央部分に連結される第1先端側連結部と、を有し、前記第1基端側連結部の幅方向両端部分が前記筒状接続部の前記外周面よりも外方に突出して、一対の前記離脱防止突部を構成しており、前記第2壁部は、前記第2他端部から前記交差する方向に立ち上がる第2基端側連結部と、前記第2基端側連結部よりも小さい幅寸法を有して前記第2基端側連結部の幅方向中央部分から前記第2周壁部に向かって延びて前記第2周壁部の周方向中央部分に連結される第2先端側連結部と、を有し、前記第2基端側連結部の幅方向両端部分が前記筒状接続部の前記外周面よりも外方に突出して、一対の前記離脱防止突部を構成している、ことが好ましい。
【0014】
第1壁部と第2壁部が、いずれも電線接続部から屈曲して筒状接続部の軸方向に交差する方向に立ち上がる第1および第2基端側連結部と、それよりも小さい幅寸法で第1および第2周壁部の周方向中央部分に連結する第1および第2先端側連結部を有している。これにより、第1および第2周壁部の周方向中央部分を構成する際の平板金具の一端部を湾曲させる加工を容易に行うことができる。しかも、湾曲加工された第1および第2周壁部の周方向中央部分に第1および第2基端側連結部の幅方向中央部分から突出する第1および第2先端側連結部が連結されている。これにより、第1および第2基端側連結部の幅方向両端部分を、確実に第1および第2周壁部によって構成される筒状接続部の外周面よりも外方に突出させることができる。これにより、第1壁部と第2壁部の幅方向両側にそれぞれ一対の離脱防止突部を設けることができることから、雌端子の製造性の向上とばね部材の安定した保持性を両立して達成することができる。
【0015】
(3)上記(1)または(2)において、前記第1壁部と前記第2壁部の少なくとも一方には、板厚方向に貫通する窓部が形成されている、ことが好ましい。雌端子の製造時には、例えば筒状接続部の先端開口部から筒状接続部の内部の接点の状態等を検査する必要があるが、筒状接続部の軸方向に交差する方向に屈曲された第1壁部と第2壁部の存在により筒状接続部の内部の光量が制限される。本態様では、第1壁部と第2壁部の少なくとも一方に板厚方向に貫通する窓部が設けられていることから、光量が有利に確保されて、筒状接続部の接点部等の内部検査を有利に実行することができる。
【0016】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記第1平板金具と前記第2平板金具は、前記第1他端部と前記第2他端部が連接部を介して相互に連接された一枚の帯状の金属平板によって構成されており、前記金属平板の両端部に前記第1平板金具の前記第1周壁部と前記第2平板金具の前記第2周壁部がそれぞれ設けられ、前記金属平板の前記連接部が板厚方向に屈曲されることで、前記第1平板金具の前記第1他端部と前記第2平板金具の前記第2他端部とが相互に重ね合わされて前記電線接続部が構成され、前記両端部に設けられた前記第1周壁部と前記第2周壁部が相互に対向配置されて前記筒状接続部が構成されている、ことが好ましい。一枚の帯状の金属平板の両端部に第1および第2周壁部をプレス加工し、当該金属平板の中央部分に設けられた連接部を板厚方向に屈曲して、金属平板を長さ方向で半分に折り曲げるだけで、筒状接続部と電線接続部を簡単に製造することができ、更なる製造性や取扱性の向上を図ることができる。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記ばね部材が、周方向の一か所が切り欠かれた金属製のリング部材を含み、前記筒状接続部の前記外周面に前記リング部材の内周面が圧接されて装着されている、ことが好ましい。ばね部材を周方向の一か所が切り欠かれた金属製のリング部材を用いて簡単に構成できる。しかも、第1および第2周壁部の外周面にリング部材の内周面が圧接された状態でリング部材が筒状接続部に装着されていることから、筒状接続部に対する接圧の付与を簡単な構造で安定して実現することができる。
【0018】
(6)上記(5)において、前記リング部材の軸方向寸法が、前記筒状接続部の軸方向寸法の2/3倍以上1.5倍以下である、ことが好ましい。ばね部材を構成するリング部材の軸方向長さが、筒状接続部の軸方向寸法の2/3倍以上1.5倍以下であることから、ばね部材が筒状接続部への接圧付与に加えて、筒状接続部と他部材との干渉を抑制する保護機能を担うこともできる。
【0019】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つにおいて、前記第1周壁部と前記第2周壁部の少なくとも一方の周方向端部に、径方向外方に屈曲された屈曲部が設けられており、前記屈曲部が前記ばね部材の嵌合穴に嵌合されている、ことが好ましい。第1周壁部と第2周壁部の少なくとも一方の周方向端部を径方向外方に屈曲して屈曲部を設け、当該屈曲部をばね部材に設けられた嵌合穴に嵌め入れるだけで、ばね部材における軸方向と周方向の少なくとも一方への変位を有利に抑制できる。これにより、ばね部材による接圧の付与効果を安定して享受することができる。
【0020】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つにおいて、前記第1周壁部と前記第2周壁部の少なくとも一方には、他方に向かって突出する接近規制突部が設けられており、前記ばね部材により、前記第1周壁部と前記第2周壁部が対向方向で相互に接近する方向に付勢された際に、前記接近規制突部が前記他方に当接している、ことが好ましい。第1周壁部と第2周壁部の少なくとも一方に設けられた接近規制突部が他方に当接することで、ばね部材の付勢力に抗して、第1周壁部と第2周壁部の接近方向の変位量を抑制することができる。これにより、雄端子の雌端子に対する挿入時の挿入抵抗を低減することができる。
【0021】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の雌端子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1の雌端子10について、
図1から
図13を用いて説明する。
図1から
図13には、本開示の雌端子10を含む雌コネクタ12と、雌端子10と導通接続される雄端子14とが示されている。雄端子14は、図示しない高圧バッテリ等の車載機器の筐体に突出して設けられており、インバータ等の他の車載機器に接続された後述する被覆電線20(
図3,4において二点鎖線で図示)の端末に設けられた雌コネクタ12(雌端子10)と導通接続されることで、車載機器間が電気的に接続されるようなっている。なお、雌端子10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上方とは
図2中の上方、下方とは
図2中の下方、左方とは
図2中の左方、右方とは
図2中の右方、前方とは
図3中の左方、後方とは
図3中の右方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0023】
<雌端子10>
雌端子10は、雄端子14の柱状接続部16と導通接続される筒状接続部18と、電線としての被覆電線20の芯線22が接続される電線接続部24と、筒状接続部18と電線接続部24とを連結する連結部26と、筒状接続部18の外周面28に装着されたばね部材としてのリング部材30と、を備えている。実施形態1では、後述するように、一枚の帯状の金属平板を屈曲することで雌端子金具32が構成されており、この雌端子金具32が上記筒状接続部18と電線接続部24と連結部26とを備えている。そして、雌端子金具32における筒状接続部18の外周面28にリング部材30が装着されることで、実施形態1の雌端子10が構成されている。
【0024】
<雌コネクタ12>
雌コネクタ12は、上記雌端子10と、雌端子10を収容する絶縁性のハウジング34とを含んでいる。ハウジング34は、全体として前後方向に延びる略円筒形状であり、絶縁性を有する合成樹脂等により形成される。すなわち、ハウジング34は、中空の略円筒形状を有する本体部36を有しており、本体部36の前後方向両端部においてそれぞれ前方開口部38と後方開口部40とが構成されている。実施形態1では、ハウジング34の前端部において内周側に突出する環状の前方カバー部42が一体的に形成されており、前方カバー部42の内孔により上記前方開口部38が構成されている。
【0025】
本体部36の前後方向中間部分において、左右方向両側には、径方向(左右方向)で弾性変形可能な弾性片44が設けられている。すなわち、本体部36において各弾性片44の周囲の三方(周方向両側および前方)には間隙46が設けられており、各弾性片44が基端部(後端部)において本体部36とつながっている。各弾性片44は、この後端部を基点として、本体部36に対して径方向で弾性変形可能とされている。また、各弾性片44の突出端部(前端部)には、内周側に突出して、後述するようにリング部材30における各係止孔130に係止される係止突部48が形成されている。そして、各係止突部48の径方向中間部分には、前方に突出する位置決め突部50が設けられている。これら各係止突部48および各位置決め突部50は、それぞれ所定の周方向寸法を有している。なお、各位置決め突部50の内周面間における対向方向(左右方向)距離は、リング部材30の外径寸法と略等しくされている。これにより、各係止突部48が各係止孔130に係止された際に各位置決め突部50の内周面がリング部材30の外周面に当接することで、本体部36(ハウジング34)に対するリング部材30(雌端子10)における左右方向の変位が抑制され得る。
【0026】
さらに、
図6等にも示されるように、本体部36の内周面には内周側に突出する内周突部51が設けられている。実施形態1では、本体部36の内周面において複数の内周突部51が周方向で相互に離隔して設けられており、本体部36の内部に雌端子10が収容された状態において、各内周突部51の突出端面が雌端子10の外周面(すなわち、リング部材30の外周面)に当接しているか、僅かに離隔している。これにより、ハウジング34内において雌端子10が傾くことが効果的に防止され得る。
【0027】
<雄端子14>
雄端子14は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の比較的電気抵抗の低い金属を、切削加工やプレス加工により所定の形状に加工して構成されたものである。雄端子14は、図示しない高圧バッテリ等の車載機器の筐体内に設けられた機器側接続部に接続状態に固定される固定部52と、固定部52から筐体の外方(後方)に突出する略円柱状の柱状接続部16を一体的に備えている。固定部52には、機器側接続部との固定用の締結ボルト(図示省略)が締結されるボルト締結穴54が設けられている。また、柱状接続部16の突出先端部(後端部)には、合成樹脂製の樹脂キャップ56が固定的に設けられている。
【0028】
<筒状接続部18>
筒状接続部18は、帯状の第1平板金具58の一端部を円弧状に湾曲変形して設けられた第1周壁部60と、帯状の第2平板金具62の一端部を円弧状に湾曲変形して設けられた第2周壁部64とを含んでいる。実施形態1では、これら第1平板金具58および第2平板金具62が前後方向に延びており、第1平板金具58の一端部である第1周壁部60と第2平板金具62の一端部である第2周壁部64とが、それぞれ第1平板金具58と第2平板金具62の前端部に設けられている。
図8等にも示されるように、第1および第2周壁部60,64はそれぞれ略1/2周の周方向寸法を有しており、全体としてそれぞれ半円筒形状とされている。これら第1および第2周壁部60,64の周方向端部を上下方向で突き合わせるように対向配置することで、筒状接続部18が構成される。後述するように、筒状接続部18にばね部材としてのリング部材30が装着された状態において、筒状接続部18は、全体として雄端子14における柱状接続部16の外径寸法と等しいか僅かに小さい内径寸法を有しており、筒状接続部18に対して柱状接続部16が略圧入状態で挿入され得る。
【0029】
<第1周壁部60>
実施形態1では、第1周壁部60における周方向中央部分(上方部分)に、前後方向に延びるとともに第1周壁部60を厚さ方向で貫通する第1スリット66が設けられている。この第1スリット66は、第1周壁部60の前端部から、第1周壁部60の長さ方向(前後方向)の略全長にわたって延びている。これにより、第1周壁部60は、第1スリット66を挟んだ周方向両側で2分割されており、略1/4周の周方向寸法を有する一対の第1分割壁部68,68が構成されている。
図5等にも示されるように、これら各第1分割壁部68の長さ方向(前後方向)中央部分には、径方向内方に突出する内方突部70が設けられている。なお、後述するように、筒状接続部18(雌端子金具32)は一枚の帯状の金属平板に対してプレス加工することにより形成されることから、各第1分割壁部68における内方突部70と対応する箇所(前後方向中央部分)の外周面(すなわち、筒状接続部18の外周面28)には、径方向外方に凹となる外方凹部72が形成されている。
【0030】
特に、実施形態1では、各第1分割壁部68の内方突部70において、内周面74における周方向の曲率が部分的に異ならされている。具体的には、
図6に示されるように、各第1分割壁部68において、各内方突部70の内周面74における周方向の曲率は、周方向中央部分に比して周方向両側部分の方が小さく(曲率半径が大きく)されている。これにより、各第1分割壁部68の各内方突部70における内周面74の周方向両側部分は、内周面74の曲率が周方向中央部分の曲率によって一定とされる場合に比して、内周側に突出している。この結果、後述するように筒状接続部18に対して柱状接続部16が挿入された際には、柱状接続部16に対して各内方突部70の内周面74における周方向両側部分において曲率が小さくされた部分が当接することとなる。
【0031】
それゆえ、実施形態1では、各第1分割壁部68における各内方突部70の内周面74において、周方向で相互に離隔する周方向両側部分に、柱状接続部16の挿入時において柱状接続部16の外周面に接触する第1接点部76,76が設けられている。また、各第1分割壁部68の各内方突部70における内周面74の周方向中央部分には、柱状接続部16の挿入時において柱状接続部16の外周面に接触しない第1非接触部78が設けられている。したがって、柱状接続部16の挿入時には、柱状接続部16の外周面と第1非接触部78との間に隙間80が形成される。
【0032】
さらに、第1周壁部60の周方向端部には、径方向外方に屈曲された屈曲部82が設けられている。実施形態1では、第1周壁部60の後端部における周方向両端部に、それぞれ屈曲部82,82が設けられている。特に、実施形態1では、上述のように第1周壁部60の周方向中央部分に第1スリット66が設けられて各第1分割壁部68に分割されていることから、各第1分割壁部68における後端部において、第1スリット66とは反対側の周方向端部に屈曲部82が設けられている。なお、各屈曲部82の前端面は、外周側になるにつれて次第に後方へと傾斜する傾斜面83とされている。
【0033】
そして、第1周壁部60の周方向端部には、第2周壁部64へ向かって下方へ突出する接近規制突部84が設けられている。実施形態1では、第1周壁部60の前端部における周方向両端部に、それぞれ接近規制突部84,84が設けられている。特に、実施形態1では、上述のように第1周壁部60の周方向中央部分に第1スリット66が設けられて各第1分割壁部68に分割されていることから、各第1分割壁部68における前端部において、第1スリット66とは反対側の周方向端部に接近規制突部84が設けられている。
【0034】
なお、第1周壁部60の周方向中央部分(上方部分)における後端部(すなわち、第1スリット66の後方部分)には、水平方向(上下方向に直交する方向)に広がる平坦部85が形成されている。要するに、この平坦部85は、第1周壁部60と後述する第1先端側連結部108との接続部分の近傍に設けられている。第1周壁部60において、このような平坦部85を設けることで、雌端子金具32に対するリング部材30の装着時において、作業者が、雌端子金具32における周方向の位置(特に、上方部分)を容易に把握することができる。
【0035】
<第2周壁部64>
実施形態1では、第2周壁部64における周方向中央部分(下方部分)に、前後方向に延びるとともに第2周壁部64を厚さ方向で貫通する第2スリット86が設けられている。この第2スリット86は、上述の第1周壁部60における第1スリット66と同様の形状で形成されている。これにより、第2周壁部64は、第2スリット86を挟んだ周方向両側で2分割されており、一対の第2分割壁部88,88が構成されている。これら各第2分割壁部88の長さ方向(前後方向)中央部分には、第1周壁部60(各第1分割壁部68)と同様に、径方向内方に突出する内方突部70が設けられている。また、各第2分割壁部88における内方突部70と対応する箇所(前後方向中央部分)における外周面(すなわち、筒状接続部18の外周面28)には、第1周壁部60(各第1分割壁部68)と同様に、径方向外方に凹となる外方凹部72が形成されている。
【0036】
特に、実施形態1では、各第2分割壁部88の内方突部70において、径方向内方への突出寸法が、各第2分割壁部88の長さ方向(前後方向)で異ならされている。具体的には、
図5にも示されるように、各第2分割壁部88において、各内方突部70における径方向内方への突出寸法は、前後方向中央部分に比して前後方向両側部分の方が大きくされている。換言すれば、各第2分割壁部88における各内方突部70は、前後方向両側部分に比して前後方向中央部分の方が径方向内方への突出寸法が小さくされており、それに伴って各第2分割壁部88における各外方凹部72は、前後方向中央部分において外周面(筒状接続部18における外周面28)からの深さ寸法が小さくされている。要するに、各第2分割壁部88における外方凹部72の底面は、前後方向両側部分に比して前後方向中央部分の方が径方向外方に突出している。これにより、後述するように筒状接続部18に対して柱状接続部16が挿入された際には、各内方突部70において径方向内方への突出寸法が大きくされた部分が当接することとなる。
【0037】
それゆえ、実施形態1では、各第2分割壁部88における各内方突部70の内周面74において、前後方向で相互に離隔する前後方向両側部分に、柱状接続部16の挿入時において柱状接続部16の外周面に接触する第2接点部90,90が設けられている。各第2接点部90の突出先端面は略湾曲円弧形状であり、
図5に示される断面では、柱状接続部16の外周面に対して各第2接点部90がそれぞれ1点で接触している。また、各第2分割壁部88の各内方突部70の内周面74における前後方向中央部分には、柱状接続部16の挿入時において柱状接続部16の外周面に接触しない第2非接触部92が設けられている。したがって、柱状接続部16の挿入時には、柱状接続部16の外周面と第2非接触部92との間に隙間94が形成される。そして、実施形態1では、各第2分割壁部88が周方向において略一定の曲率で形成されている。この結果、柱状接続部16の挿入時において、各第2接点部90が柱状接続部16に対して各第2分割壁部88における周方向の略全長にわたって略線状に接触するとともに、柱状接続部16との各隙間94が各第2分割壁部88における周方向の略全長にわたって形成される。
【0038】
また、第2周壁部64の周方向端部には、径方向外方に屈曲された屈曲部82が設けられている。第2周壁部64における屈曲部82は、第1周壁部60における屈曲部82と同様に、各第2分割壁部88,88における後端部において、第2スリット86とは反対側の周方向端部に設けられている。第2周壁部64における各屈曲部82においても、各前端面が傾斜面83とされている。
【0039】
さらに、第2周壁部64の周方向端部には、第1周壁部60へ向かって上方へ突出する接近規制突部84が設けられている。第2周壁部64における接近規制突部84は、第1周壁部60における接近規制突部84と同様に、各第2分割壁部88,88における前端部において、第2スリット86とは反対側の周方向端部に設けられている。
【0040】
<電線接続部24>
電線接続部24は、第1平板金具58の他端部(実施形態1では後端部)である第1他端部96と第2平板金具62の他端部(実施形態1では後端部)である第2他端部98とが重ね合わされて構成されている。特に、実施形態1では、後述するように、第1平板金具58と第2平板金具62とが一枚の帯状の金属平板に対してプレス加工することにより形成されており、第1他端部96と第2他端部98とがそれぞれの後端部において連接部100を介して相互に連接されている。
【0041】
これら第1他端部96と第2他端部98は、それぞれ平面視において略矩形とされた板状であり、電線接続部24も全体として略矩形板形状とされている。第1他端部96と第2他端部98とは上下方向で重ね合わされており、第1他端部96の上面に対して、被覆電線20の前端部において露出された芯線22が固着されることで、電線接続部24(雌端子金具32)と被覆電線20とが電気的に接続される。実施形態1では、第2他端部98に比して第1他端部96の方が、幅方向寸法(左右方向寸法)が大きくされている。これにより、より広い範囲にわたって芯線22を固着することができる。
【0042】
なお、第1他端部96に対する芯線22の固定方法は限定されるものではなく、例えば接着や圧着により固定されてもよいし、超音波溶着等の溶接により固定されてもよい。本開示に係る電線接続部24はこの態様に限定されるものではなく、第1他端部96と第2他端部98とは幅方向寸法が等しくされてもよいし、第2他端部98の方が幅方向寸法が大きくされてもよい。また、第1他端部96と第2他端部98とは、例えば芯線22の固定時に、溶接により相互に固定されてもよいし、固定されることなく、僅かな隙間を隔てて対向配置されてもよい。
【0043】
<連結部26>
連結部26は、第1平板金具58において第1周壁部60と第1他端部96の間(前後方向間)に位置して第1周壁部60の軸方向(前後方向)に交差する方向に屈曲された第1壁部102と、第2平板金具62において第2周壁部64と第2他端部98の間(前後方向間)に位置して第2周壁部64の軸方向(前後方向)に交差する方向に屈曲された第2壁部104とを含んでいる。実施形態1では、第1壁部102が前後方向に対して略直交する方向(上下方向)に屈曲されており、略上下方向に延びている。また、第2壁部104が前後方向に対して略直交する方向(上下方向)に屈曲されており、略上下方向に延びている。特に、実施形態1では、第1平板金具58における第1壁部102の前後方向位置と第2平板金具62における第2壁部104の前後方向位置とが略等しくされており、雌端子金具32において第1壁部102と第2壁部104とが上下方向で略連続するように設けられている。
【0044】
さらに、第1壁部102における上下方向寸法は、第2壁部104における上下方向寸法よりも大きくされている。これにより、第1他端部96と第2他端部98とから構成される電線接続部24は、雌端子金具32における上下方向中央よりも下方に位置している。この結果、
図3等に示されるように、雌コネクタ12内において、電線接続部24よりも下方の空間に比して電線接続部24よりも上方の空間が大きくされており、第1他端部96の上面に対する被覆電線20における芯線22の固着領域を安定して確保することができる。
【0045】
<第1壁部102>
第1壁部102は、第1他端部96から前後方向に対して交差する方向(実施形態1では直交する方向であって、上方)に立ち上がる第1基端側連結部106と、第1基端側連結部106よりも小さい幅方向(左右方向)寸法を有して第1基端側連結部106の幅方向中央部分から第1周壁部60に向かって延びて第1周壁部60の周方向中央部分に連結される第1先端側連結部108とを有している。
【0046】
実施形態1では、第1基端側連結部106が、前後方向視において略矩形とされた板状であり、所定の幅方向寸法を有している。具体的には、第1基端側連結部106の幅方向寸法は、第1他端部96よりも小さくされているとともに、第1周壁部60(筒状接続部18)の幅方向寸法(左右方向寸法)よりも大きくされている。これにより、第1基端側連結部106の幅方向両端部分は、筒状接続部18の外周面28よりも左右方向外方に突出している。この結果、第1基端側連結部106の幅方向両端部分により、後述するように雌端子金具32に対してばね部材(リング部材30)を装着した際のリング部材30の離脱を防止する離脱防止突部110が構成されている。
【0047】
また、第1壁部102には、板厚方向に貫通する窓部としての第1窓部112が形成されている。実施形態1では、第1窓部112が、第1基端側連結部106の幅方向中央部分に形成されており、所定の左右方向寸法および上下方向寸法を有している。具体的には、第1窓部112は、第1基端側連結部106の下部(第1他端部96)から第1基端側連結部106の上下方向中間部分にわたって延びており、上端部分が円弧状の湾曲形状とされている。
【0048】
<第2壁部104>
第2壁部104は、第2他端部98から前後方向に対して交差する方向(実施形態1では直交する方向であって、下方)に立ち上がる第2基端側連結部114と、第2基端側連結部114よりも小さい幅方向(左右方向)寸法を有して第2基端側連結部114の幅方向中央部分から第2周壁部64に向かって延びて第2周壁部64の周方向中央部分に連結される第2先端側連結部116とを有している。
【0049】
実施形態1では、第2基端側連結部114が、前後方向視において略矩形とされた板状であり、所定の幅方向寸法を有している。具体的には、第2基端側連結部114の幅方向寸法は、第2他端部98よりも小さくされているとともに、第2周壁部64(筒状接続部18)の幅方向寸法よりも大きくされている。これにより、第2基端側連結部114の幅方向両端部分は、筒状接続部18の外周面28よりも左右方向外方に突出している。この結果、第2基端側連結部114の幅方向両端部分によっても、上述のリング部材30の離脱を防止する離脱防止突部110が構成されている。
【0050】
また、第2壁部104には、板厚方向に貫通する窓部としての第2窓部118が形成されている。実施形態1では、第2窓部118が、第2基端側連結部114の幅方向中央部分に形成されており、所定の左右方向寸法および上下方向寸法を有している。具体的には、第2窓部118は、第2基端側連結部114の上部(第2他端部98)から第2基端側連結部114の上下方向中間部分にわたって延びており、下端部分が円弧状の湾曲形状とされている。
【0051】
特に、実施形態1では、第1壁部102における第1窓部112と第2壁部104における第2窓部118とが左右方向で略等しい位置に形成されており、第1窓部112と第2窓部118とが上下方向で連通している。これにより、第1窓部112および第2窓部118は、前後方向視(前後方向の投影)において、全体として上下方向に延びる略長円形状として形成されている。
【0052】
<雌端子金具32(第1平板金具58および第2平板金具62)>
以上のような形状とされた第1平板金具58と第2平板金具62は、第1他端部96と第2他端部98が連接部100を介して相互に連接された一枚の帯状の金属平板によって構成されている。すなわち、この一枚の帯状の金属平板を上述の形状に折り曲げることによって、
図8,9に示されるように雌端子金具32が構成されており、折り曲げる前の金属平板において、長さ方向中央部分に連接部100が設けられるとともに、金属平板の両端部に第1周壁部60と第2周壁部64が設けられている。そして、金属平板の連接部100が板厚方向に屈曲されることで、第1他端部96と第2他端部98とが相互に重ね合わされて電線接続部24が構成されるとともに、第1周壁部60と第2周壁部64とが対向配置されることで筒状接続部18が構成される。実施形態1では、筒状接続部18が前後方向に延びており、筒状接続部18の後方において連結部26および電線接続部24が構成されているとともに、筒状接続部18は前方に開口している(前方開口部119を有している)。第1周壁部60と第2周壁部64とは、連結部26(特に、第1先端側連結部108および第2先端側連結部116)との接続部分を基点として、特に前端側が相互に接近または離隔する方向に変形することができる。なお、雌端子金具32を構成する一枚の帯状の金属平板は、例えば銅(銅合金を含む)やアルミニウム(アルミニウム合金を含む)等により形成される。
【0053】
<ばね部材(リング部材30)>
ばね部材は、周方向の一か所が切り欠かれた金属製のリング部材30を含んでおり、実施形態1では、ばね部材の全体が略円筒形状とされて前後方向に延びるリング部材30とされている。リング部材30は、例えばばね性を有するステンレス鋼等により形成され、上記ばね性を有するステンレス鋼等の金属素板をプレス加工すること等により形成される。このリング部材30には、周方向の一か所である下方において切欠き120が設けられており、この切欠き120がリング部材30の長さ方向(前後方向)全長にわたって形成されている。リング部材30は所定の径方向寸法を有するように形成されるが、上記切欠き120の幅方向寸法(周方向寸法)を大きくするように弾性的に拡径変形可能である。これにより、前述のように、リング部材30が、筒状接続部18の外周面28に装着される。このリング部材30の軸方向寸法(前後方向寸法)A(
図3参照)は、筒状接続部18の軸方向寸法B(
図3参照)の2/3倍以上、且つ1.5倍以下とされることが好ましい。実施形態1では、筒状接続部18が前後方向の略全長にわたってリング部材30により覆われており、リング部材30は、筒状接続部18の前端部から筒状接続部18の後端部を越えて、連結部26における第1先端側連結部108および第2先端側連結部116にまたがって覆っている。なお、筒状接続部18の後端部の位置(連結部26との境界部分)は明確なものではないが、例えば平坦部85の後端部が筒状接続部18の後端部とされ得る。
【0054】
具体的には、筒状接続部18に装着される前のリング部材30の単品状態では、リング部材30の内径寸法は、筒状接続部18の外径寸法と略等しいか僅かに大きくされている。筒状接続部18に対してリング部材30を装着するには、例えばリング部材30の後端部に筒状接続部18の前端部を挿入する。その後、筒状接続部18に対してリング部材30を後方にスライド変位させることで、筒状接続部18に対してリング部材30が外挿される。
【0055】
また、リング部材30における後方部分において、左右方向両側には、筒状接続部18から外方に屈曲する各屈曲部82が嵌合する各嵌合穴122が形成されている。実施形態1では、第1周壁部60と第2周壁部64のそれぞれの周方向両端部において各屈曲部82が設けられており、筒状接続部18においては合計で4つの屈曲部82が設けられている。リング部材30における嵌合穴122は各屈曲部82と対応する位置に形成されており、リング部材30における後方部分の左右方向両側において、それぞれ2つずつ嵌合穴122が設けられることで、リング部材30において合計で4つの嵌合穴122が形成されている。そして、筒状接続部18に対してリング部材30を後方へスライド変位させて装着する際に、リング部材30の後端部が各屈曲部82における傾斜面83に当接することで、リング部材30の後端部が各傾斜面83に沿って拡径変形させられて、さらなる後方への変位が許容される。また、リング部材30の後端部が各屈曲部82を乗り越えることで、リング部材30の後端部が弾性的に復元変形して、各屈曲部82が各嵌合穴122に入り込み嵌合する。
【0056】
ここで、上述のように、筒状接続部18の後方に位置する第1壁部102および第2壁部104における第1基端側連結部106および第2基端側連結部114における左右方向両端部は筒状接続部18よりも左右方向外方まで突出しており、それぞれ離脱防止突部110を構成している。したがって、筒状接続部18に対するリング部材30の後方への変位は、リング部材30の後端部が雌端子金具32における各離脱防止突部110に当接することで制限される。リング部材30の後端部が各離脱防止突部110に当接して筒状接続部18に対するリング部材30の装着が完了した状態では、上述のように各屈曲部82が各嵌合穴122に嵌合している。換言すれば、リング部材30の後端部における左右方向両側の壁部124が、各屈曲部82と各離脱防止突部110の前後方向間に保持されている。
【0057】
また、実施形態1では、リング部材30の前方部分における内周面125において、内周側に突出して筒状接続部18の外周面28に圧接する圧接突部126が設けられている。リング部材30においては、複数(4つ)の圧接突部126が設けられており、各圧接突部126が周方向で相互に離隔している。
図6にも示されるように、各圧接突部126は、周方向で略等間隔(略90度毎)に配置されている。すなわち、リング部材30の内径寸法は各圧接突部126の形成位置で小さくされており、各圧接突部126の形成位置におけるリング部材30の内径寸法(各圧接突部126の突出先端面を通る仮想的な円の内径寸法)は、筒状接続部18の外径寸法よりも小さくされている。リング部材30は、例えばプレス加工により形成されることから、リング部材30における外周面において各圧接突部126と対応する位置には外方に開口する凹部128が形成されている。
【0058】
そして、リング部材30が筒状接続部18に装着された状態では、各圧接突部126が、第1周壁部60および第2周壁部64における各外方凹部72に入り込んで、筒状接続部18の外周面28を構成する各外方凹部72の底面に対して径方向外方から圧接している。これにより、各圧接突部126は、第1周壁部60を構成する各第1分割壁部68および第2周壁部64を構成する各第2分割壁部88を内周側に押圧している。この結果、
図10に示されるように、筒状接続部18に対してリング部材30が装着された状態では、リング部材30により第1周壁部60(各第1分割壁部68)と第2周壁部64(各第2分割壁部88)とが相互に接近する方向に付勢されており、第1周壁部60と第2周壁部64のそれぞれの周方向両端部に設けられる各接近規制突部84が相互に当接している。これにより、筒状接続部18に対してリング部材30が装着された状態(雄端子14が挿入される前の状態)において、筒状接続部18における前方開口部119の内径寸法が必要以上に小さくなることが回避される。
【0059】
さらに、リング部材30において、長さ方向(前後方向)中間部分には、厚さ方向で貫通する係止孔130が形成されている。この係止孔130は、リング部材30において左右方向両側に設けられている。これら各係止孔130は、所定の周方向寸法を有しており、左右方向視において略矩形状とされている。実施形態1では、各係止孔130は、各嵌合穴122よりも前方、且つ各圧接突部126(各凹部128)よりも後方に設けられている。これら各係止孔130には、前述のように、ハウジング34における各弾性片44に設けられた係止突部48が係止されて、これにより、雌端子10に対してハウジング34が固定され得る。
【0060】
また、リング部材30の後方部分における内周面125には、
図11に示されるように、内周側に突出する内周突部132が設けられている。リング部材30は、例えばプレス加工により形成されることから、リング部材30における外周面において各内周突部132と対応する位置には外方に開口する凹部134が形成されている。筒状接続部18に対してリング部材30が装着された状態において、各内周突部132が筒状接続部18(第1周壁部60および第2周壁部64)の外周面28に当接するか、僅かな隙間を介して離隔することでリング部材30に対して筒状接続部18の後方部分が傾くことが防止され得る。
【0061】
そして、実施形態1におけるリング部材30は、周方向中央部分(上方部分)において、水平方向に広がる平坦壁部136を有している。この平坦壁部136は、所定の幅方向寸法(左右方向寸法)を有しており、リング部材30の長さ方向全長にわたって形成されている。したがって、実施形態1のリング部材30は、この平坦壁部136の左右方向両端部から所定の周方向寸法を有する湾曲壁部138が下方に延び出す形状とされている。これにより、リング部材30が拡径変形する際には、平坦壁部136と各湾曲壁部138との接続部分を基点として各湾曲壁部138の周方向端部(切欠き120側の端部)が相互に離隔するように変形するようになっている。
【0062】
このような平坦壁部136を設けることで、雌端子金具32に対するリング部材30の装着時において、作業者が、リング部材30における周方向の位置(特に、上方部分)を容易に把握することができる。特に、雌端子金具32における平坦部85と組み合わせることで、リング部材30と雌端子金具32との周方向位置を合わせつつ、装着作業を行うことができる。なお、雌端子金具32に対してリング部材30を上下方向で反対向きに装着した場合、第2周壁部64の下端部分がリング部材30における平坦壁部136に接触することから、作業者が誤組付けを把握することができて、誤組付け防止の効果も発揮され得る。
【0063】
<雌端子10および雌コネクタ12の組立て>
以下、雌端子10および雌端子10を含む雌コネクタ12の組立方法の具体的な一例を説明する。なお、雌端子10および雌コネクタ12の組立方法は、以下に記載の態様に限定されるものではない。
【0064】
先ず、それぞれ一枚の金属平板をプレス加工して、雌端子金具32とリング部材30とを形成する。その後、雌端子金具32に対してリング部材30を前方から装着して、リング部材30の後端部を雌端子金具32における各離脱防止突部110に当接させるとともに、雌端子金具32における各屈曲部82をリング部材30における各嵌合穴122に嵌合させる。これにより、リング部材30の後端部における左右方向両側の壁部124が、各屈曲部82と各離脱防止突部110の前後方向間に保持されて、リング部材30が雌端子金具32に組み付けられる。この結果、
図10に示されるように、実施形態1における雌端子10が完成する。このように製造された雌端子10では、各圧接突部126による押圧力が各第1分割壁部68および各第2分割壁部88に及ぼされて、各第1分割壁部68および各第2分割壁部88が内周側に付勢される。これにより、各第1分割壁部68および各第2分割壁部88の前端部における周方向端部に設けられた各接近規制突部84が、上下方向で相互に当接する。なお、雌端子金具32における電線接続部24に対しては、任意のタイミングで、被覆電線20における芯線22が固着される。
【0065】
次に、上述のように製造された雌端子10に対して、
図7に示されるように、前後方向でハウジング34を対向させて、ハウジング34における後方開口部40から上記雌端子10を挿入する。本体部36へ雌端子10を挿入することで、リング部材30の前端部が本体部36から内周側に突出する各係止突部48に当接し、本体部36における各弾性片44が外周側に弾性変形して、雌端子10のさらなる挿入が許容される。さらに雌端子10を挿入して各係止突部48がリング部材30における各係止孔130に到達することで、各弾性片44が弾性的に復元変形して、各係止突部48が各係止孔130に入り込み係止される。また、各弾性片44の復元変形により、各位置決め突部50の内周面がリング部材30の外周面に当接する。これにより、ハウジング34からの雌端子10の抜落ちが防止される。雌端子10における本体部36への挿入は、雌端子10の前端部が本体部36の前端部において内周側に突出する前方カバー部42に当接することで制限される。これにより、
図12,13に示されるように、雌端子10とハウジング34とが組み付けられて、雌コネクタ12が完成する。
【0066】
このように製造された雌コネクタ12に対しては、本体部36における前方開口部38を通じて、雌端子金具32の前方開口部119から雄端子14の柱状接続部16が筒状接続部18へ圧入される。筒状接続部18を構成する各第1分割壁部68および各第2分割壁部88にはそれぞれ径方向内方へ突出する各内方突部70が設けられており、柱状接続部16の外周面が各内方突部70に接触して、各第1分割壁部68および各第2分割壁部88を外周側へ弾性変形させつつ、柱状接続部16が筒状接続部18内へ圧入される。特に、前述のように、各第1分割壁部68は、内周面74における周上の2箇所において各第1接点部76を有しているとともに、各第2分割壁部88は、内周面74における前後方向の2箇所において第2接点部90を有している。それゆえ、筒状接続部18の内周面と柱状接続部16の外周面とは、これら各第1接点部76および各第2接点部90において、接触するようになっている。これにより、雌端子10と雄端子14とが電気的に導通状態とされる。なお、雌コネクタ12に対する雄端子14の挿入は、例えば雄端子14を保持する図示しない雄コネクタハウジングと雌コネクタ12におけるハウジング34とが相互に当接すること等によって制限される。
【0067】
特に、これら各内方突部70の外周側にはリング部材30から内周側に突出する各圧接突部126が位置しており、各第1分割壁部68および各第2分割壁部88が外周側へ弾性変形することに伴ってリング部材30が外周側に弾性変形する。このリング部材30の外周側への弾性変形に伴う内周側への弾性的な復元変形によって、各内方突部70が各圧接突部126により内周側に押圧されて、各第1接点部76および各第2接点部90における接圧が確保される。
【0068】
以上のような構造とされた実施形態1の雌端子10によれば、第1平板金具58が第1周壁部60と第1壁部102と第1他端部96を備えているとともに、第2平板金具62が第2周壁部64と第2壁部104と第2他端部98を備えている。そして、第1周壁部60と第2周壁部64とにより筒状接続部18が構成されるとともに、第1他端部96と第2他端部98とにより電線接続部24が構成される。また、これら筒状接続部18と電線接続部24とは、第1壁部102と第2壁部104とにより構成される連結部26により連結されている。すなわち、筒状接続部18から電線接続部24にかけて、すなわち雌端子金具32の全体がそれぞれ一枚とされた第1平板金具58と第2平板金具62とを含んで構成されることから、良好な導通性能や放熱性能が発揮される。
【0069】
また、雌端子金具32において連結部26を構成する第1壁部102と第2壁部104の左右方向両端部分によって、雌端子金具32からのリング部材30の離脱を防止する離脱防止突部110が構成されている。すなわち、リング部材30を雌端子金具32に装着するに際して、雌端子金具32の前方からリング部材30が外挿されるが、リング部材30が各離脱防止突部110に当接することで、雌端子金具32からのリング部材30の離脱が防止される。また、筒状接続部18に対して柱状接続部16が圧入されて筒状接続部18が拡径変形する際にも雌端子金具32からのリング部材30の後方への離脱が防止される。したがって、上記各離脱防止突部110により、リング部材30を雌端子金具32に対する装着状態に維持することができて、各第1接点部76および各第2接点部90における柱状接続部16への接圧を安定して確保することができる。
【0070】
第1壁部102が第1基端側連結部106と第1先端側連結部108を含んで構成されているとともに、第2壁部104が第2基端側連結部114と第2先端側連結部116を含んで構成されている。そして、上記各離脱防止突部110が、第1基端側連結部106および第2基端側連結部114における幅方向両端部分により構成されている。実施形態1では、第1壁部102と第2壁部104とがいずれも上下方向に広がるように構成されており、例えば第1壁部と第2壁部が外周側になるにつれて前方へ傾斜するような態様に比して、第1壁部102および第2壁部104、ひいては雌端子金具32の前後方向寸法を小さく抑えることができる。
【0071】
また、第1壁部102を第1基端側連結部106と第1先端側連結部108に分けて構成することで、第1先端側連結部108に接続される第1周壁部60の円弧状の湾曲変形を安定して実現しつつ、第1基端側連結部106における幅方向寸法を大きく確保して、各離脱防止突部110を安定して形成することができる。同様に、第2壁部104を第2基端側連結部114と第2先端側連結部116に分けて構成することで、第2先端側連結部116に接続される第2周壁部64の円弧状の湾曲変形を安定して実現しつつ、第2基端側連結部114における幅方向寸法を大きく確保して、各離脱防止突部110を安定して形成することができる。
【0072】
第1壁部102には窓部としての第1窓部112が板厚方向で貫通して形成されているとともに、第2壁部104には窓部としての第2窓部118が板厚方向で貫通して形成されている。これにより、これら第1窓部112および第2窓部118を通じて筒状接続部18内部の光量を確保することができて、雌端子10の製造時における接点(例えば、各第1接点部76および各第2接点部90)の確認を容易に行うことができる。
【0073】
第1平板金具58および第2平板金具62は一枚の帯状の金属平板によって構成されており、すなわち、実施形態1では、雌端子金具32の全体が一枚の金属平板によって構成されている。これにより、雌端子金具32、ひいては雌端子10や雌コネクタ12の製造効率が向上され得る。また、導通性能や放熱性能のさらなる向上も図られる。
【0074】
ばね部材が、周方向の一か所が切り欠かれた金属製のリング部材30を含み、筒状接続部18の外周面28にリング部材30の内周面125が圧接されて装着されている。具体的には、筒状接続部18に設けられる各外方凹部72の底面を含んで筒状接続部18の外周面28が構成されているとともに、リング部材30の内周面125から内周側に各圧接突部126が突出しており、これら各圧接突部126が各外方凹部72の底面に圧接している。特に、これら各外方凹部72と対応する位置に、筒状接続部18において内方に突出する各内方突部70が設けられているとともに、各内方突部70が雄端子14の挿入時に柱状接続部16と接触する各第1接点部76および各第2接点部90を含んでいる。この結果、各圧接突部126による押圧力を安定して各第1接点部76および各第2接点部90に及ぼすことができて、柱状接続部16に対する各第1接点部76および各第2接点部90の接圧を安定して確保することができる。
【0075】
リング部材30の軸方向寸法Aが、筒状接続部18の軸方向寸法Bの2/3倍以上、且つ1.5倍以下とされている。これにより、上述のような各第1接点部76および各第2接点部90における接圧を確保する効果に加えて、リング部材30による筒状接続部18の保護効果も発揮される。すなわち、リング部材30がこのような形状とされることで、筒状接続部18と他部材との干渉が防止され得る。
【0076】
第1周壁部60と第2周壁部64の周方向両端部には径方向外方に屈曲された各屈曲部82が設けられており、各屈曲部82がリング部材30における各嵌合穴122に嵌合されている。各屈曲部82が各嵌合穴122に嵌合されることで、リング部材30と雌端子金具32との軸方向(前後方向)および周方向における相対変位が防止され得る。特に、これら各屈曲部82および各嵌合穴122はそれぞれ筒状接続部18およびリング部材30の後端部分に設けられており、リング部材30が雌端子金具32に装着された状態では、リング部材30の後端部における左右方向両側の各壁部124が、各屈曲部82と各離脱防止突部110との前後方向間に保持される。この結果、リング部材30と雌端子金具32との前後方向での変位がより確実に防止され得る。
【0077】
第1周壁部60と第2周壁部64の周方向両端部には各接近規制突部84が設けられており、雌端子金具32に対してリング部材30が装着された状態において、第1周壁部60に設けられた各接近規制突部84と第2周壁部64に設けられた各接近規制突部84とが相互に当接している。これにより、雄端子14の挿入前の状態において、筒状接続部18の前方開口部119における内径寸法が小さくなり過ぎることが回避されて、雄端子14の挿入抵抗が過剰に大きくなることが防止され得る。
【0078】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2の雌端子140について、
図14,15を用いて説明する。実施形態2の雌端子140における基本的な構造は、実施形態1の雌端子10と同様であるが、筒状接続部142における各第1接点部144の態様が、実施形態1に対して異なっている。なお、筒状接続部142における各第2接点部90の態様は、実施形態1と同様である。また、雌端子金具146に装着されるリング部材30や、雌端子140に装着されるハウジング34の形状は、実施形態1と同様である。以下では、実施形態1と異なる点について説明するとともに、実施形態1と実質的に同一の部材および部位には、図中に、実施形態1と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0079】
<筒状接続部142>
筒状接続部142は、実施形態1と同様に、第1周壁部60と第2周壁部64とを含んで構成されており、第1周壁部60が周方向中央部分の第1スリット66により2つの第1分割壁部68,68に周方向で分割されている。そして、各第1分割壁部68には、径方向内方に突出する内方突部148が設けられているが、これら各内方突部148の径方向内方への突出寸法が前後方向で異ならされており、各内方突部148における径方向内方への突出寸法は、前後方向中央部分に比して前後方向両側部分の方が大きくされている。また、これら各内方突部148において、前後方向両側部分の内周面150における曲率が周方向で異ならされている。これら各内方突部148の前後方向両側部分における周方向の曲率の変化は、実施形態1と同様であり、周方向中央部分に比して周方向両側部分の方が小さく(曲率半径が大きく)されている。
【0080】
したがって、実施形態2では、各第1分割壁部68の内方突部148において、前後方向両側部分、且つ周方向両側部分に第1接点部144が設けられており、各内方突部148の内周面150における合計4箇所において第1接点部144が構成されている。要するに、各内方突部148における前後方向中間部分や、前後方向両側部分における周方向中間部分には第1非接触部152が構成されて、柱状接続部16の挿入時において、柱状接続部16と各第1非接触部152との間に隙間154が形成される。
【0081】
以上のような構造とされた実施形態2の雌端子140においては、実施形態1に比して、第1接点部144の配置態様が異なるのみであることから、実施形態1と同様の効果が発揮され得る。
【0082】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3の雌端子160について、
図16,17を用いて説明する。実施形態3の雌端子160における基本的な構造は、実施形態1の雌端子10と同様であるが、筒状接続部162における各第1接点部164および各第2接点部166の態様が、実施形態1に対して異なっている。なお、雌端子金具168に装着されるリング部材30や、雌端子160に装着されるハウジング34の形状は実施形態1と同様であることから、詳細な説明を省略する。
【0083】
<筒状接続部162>
筒状接続部162は、実施形態1と同様に、第1周壁部60と第2周壁部64とを含んで構成されている。そして、第1周壁部60が周方向中央部分の第1スリット66により2つの第1分割壁部68,68に周方向で分割されているとともに、第2周壁部64が周方向中央部分の第2スリット86により2つの第2分割壁部88,88に周方向で分割されている。
【0084】
図17に示されるように、各第1分割壁部68の長さ方向(前後方向)中央部分には、径方向内方に突出する内方突部170が設けられている。実施形態3では、内方突部170における内周面172の曲率が周方向で略一定とされており、この内方突部170における内周面172の曲率が柱状接続部16における外周面の曲率よりも小さく(曲率半径が大きく)されている。これにより、各内方突部170における内周面172は、柱状接続部16の外周面に対して周方向中央部分の1点で当接することとなり、
図16に示されるように、各内方突部170における内周面172の周方向中央部分により各第1接点部164が構成されている。換言すれば、各内方突部170における内周面172において、周方向中央部分以外の部分により第1非接触部174が構成されており、柱状接続部16の挿入時において、柱状接続部16の外周面と各第1非接触部174との間には隙間176が形成されるようになっている。
【0085】
また、各第2分割壁部88に設けられる各内方突部170の形状は、基本的には実施形態1と同様であり、各第2分割壁部88における各内方突部170の内周面172において、前後方向両側部分に第2接点部166が設けられている。なお、実施形態1では、各第2接点部90の突出先端面は略湾曲円弧状であり、
図5に示される断面において、各第2接点部90が柱状接続部16の外周面に対してそれぞれ1点で接触していたが、実施形態3では、各第2接点部166の突出先端面が略平坦であり、
図17に示される断面では、各第2接点部166が柱状接続部16の外周面に対して略ストレートに延びる領域において接触している。そして、実施形態3では、各第2分割壁部88が周方向において略一定の曲率で形成されている。これにより、柱状接続部16の挿入時において、各第2接点部166は、柱状接続部16に対して各第2分割壁部88における周方向の略全長にわたって、所定の前後方向寸法を有する略面状に接触するようになっている。なお、実施形態1と同様に、各内方突部170における前後方向中間部分に第2非接触部92が設けられて、柱状接続部16の挿入時には、各第2非接触部92と柱状接続部16の外周面との各隙間94が、各第2分割壁部88における周方向の略全長にわたって形成されるようになっている。
【0086】
以上のような構造とされた実施形態3の雌端子160においては、実施形態1に比して、各第1接点部164および各第2接点部166の形状が異なるのみであることから、実施形態1と同様の効果が発揮され得る。
【0087】
<実施形態4>
次に、本開示の実施形態4の雌端子180について、
図18,19を用いて説明する。実施形態4の雌端子180における基本的な構造は、実施形態3の雌端子160と同様であるが、筒状接続部182における各第1接点部184の態様が、実施形態3に対して異なっている。なお、雌端子金具186に装着されるリング部材30や、雌端子180に装着されるハウジング34の形状は実施形態1と同様であることから、詳細な説明を省略する。
【0088】
<筒状接続部182>
筒状接続部182は、実施形態3と同様に、第1周壁部60と第2周壁部64とを含んで構成されており、第1周壁部60が周方向中央部分の第1スリット66により2つの第1分割壁部68,68に周方向で分割されている。そして、各第1分割壁部68には、径方向内方に突出する内方突部188が設けられているが、これら各内方突部188の径方向内方への突出寸法が前後方向で異ならされており、各内方突部188における径方向内方への突出寸法は、前後方向中央部分に比して前後方向両側部分の方が大きくされている。
【0089】
また、これら各内方突部188における前後方向両側部分において、内周面190における周方向の曲率が略一定とされている。これら各内方突部188の内周面190における周方向の曲率は、実施形態3と同様であり、柱状接続部16における外周面の曲率よりも小さく(曲率半径が大きく)されている。これにより、各内方突部188における前後方向両側部分の内周面190は、柱状接続部16の外周面に対して周方向中央部分の1点で当接することとなり、
図18に示されるように、各内方突部188の前後方向両側部分における内周面190の周方向中央部分により各第1接点部184が構成されている。換言すれば、各内方突部188の前後方向両側部分における周方向中央部分以外の部分や前後方向中央部分により第1非接触部192が構成されており、柱状接続部16の挿入時において、柱状接続部16の外周面と各第1非接触部192との間には隙間194が形成されるようになっている。
【0090】
以上のような構造とされた実施形態4の雌端子180においては、実施形態3に比して、第1接点部184の配置態様が異なるのみであることから、実施形態1と同様の効果が発揮され得る。
【0091】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1から実施形態4について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0092】
(1)前記実施形態では、雌端子金具32からのばね部材(リング部材30)の離脱を防止する離脱防止突部110が、第1壁部102の第1基端側連結部106における幅方向(左右方向)両端部分と第2壁部104の第2基端側連結部114における幅方向(左右方向)両端部分に設けられていたが、この態様に限定されるものではない。離脱防止突部は、例えば第1壁部と第2壁部の少なくとも一方に設けられればよく、第1壁部と第2壁部の少なくとも一方において、幅方向の一方の端部分に設けられてもよい。
【0093】
(2)前記実施形態では、第1壁部102において窓部としての第1窓部112が設けられるとともに、第2壁部104において窓部としての第2窓部118が設けられていたが、この態様に限定されるものではなく、窓部は第1壁部と第2壁部の一方に設けられるだけでもよい。なお、本開示に係る雌端子において、第1壁部や第2壁部に設けられる窓部は必須なものではない。
【0094】
(3)前記実施形態では、第1平板金具58と第2平板金具62が一枚の帯状の金属平板によって構成されていたが、この態様に限定されるものではなく、第1平板金具と第2平板金具とは相互に別体として形成されて、第1平板金具における第1他端部と第2平板金具における第2他端部が溶接等により固定されてもよい。
【0095】
(4)前記実施形態では、ばね部材が、周方向の一か所(下方部分)が切り欠かれた金属製のリング部材30によって構成されていたが、この態様に限定されるものではない。ばね部材は、例えばゴム等の弾性材により形成される環状の部材であってもよい。また、前記実施形態では、リング部材30の軸方向寸法(前後方向寸法)Aが筒状接続部18,142,162,182の軸方向寸法Bの2/3倍以上1.5倍以下とされており、リング部材30から内周側に突出する各圧接突部126が筒状接続部18,142,162,182の外周面28に圧接されていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、ばね部材(例えば、リング部材)は、筒状接続部の軸方向寸法に対して2/3未満の軸方向寸法であってもよいし、あるいは1.5倍よりも長い軸方向寸法であってもよいし、ばね部材が軸方向全長にわたって筒状接続部に圧接していてもよい。
【0096】
(5)前記実施形態1から実施形態4では、第1周壁部に設けられる第1接点部や第2周壁部に設けられる第2接点部の数や形状が異ならされていたが、前記実施形態に示された第1接点部や第2接点部の数や形状は単なる例示であり、限定されるものではない。また、前記実施形態では、第1周壁部60および第2周壁部64が、それぞれ第1スリット66および第2スリット86により一対の第1分割壁部68,68および一対の第2分割壁部88,88に分割されていたが、この態様に限定されるものではない。第1周壁部や第2周壁部にはスリットが設けられなくてもよく、第1周壁部および第2周壁部はそれぞれ分割されていなくてもよい。また、第1周壁部や第2周壁部にスリットが設けられる場合であっても、2つに分割される態様に限定されるものではなく、3つ以上の分割壁部に分割されてもよい。
【0097】
(6)前記実施形態では、第1周壁部60と第2周壁部64の後端部における周方向両端部において、それぞれ径方向外方に突出する屈曲部82が設けられていたが、屈曲部は第1周壁部と第2周壁部の一方に設けられるだけでもよいし、第1周壁部と第2周壁部の両方に設けられる場合であっても、周方向の一方の端部に設けられるだけであってもよい。同様に、前記実施形態では、第1周壁部60と第2周壁部64の前端部における周方向両端部において、それぞれ対向方向内方に突出する接近規制突部84が設けられていたが、接近規制突部は第1周壁部と第2周壁部の一方に設けられるだけでもよいし、第1周壁部と第2周壁部の両方に設けられる場合であっても、周方向の一方の端部に設けられるだけであってもよい。
【0098】
(7)前記実施形態では、第1壁部102における第1基端側連結部106および第2壁部104における第2基端側連結部114が、それぞれ第1他端部96および第2他端部98から直交する上下方向に延び出していたが、この態様に限定されるものではなく、第1基端側連結部を含む第1壁部や第2基端側連結部を含む第2壁部は、上下方向外方になるにつれて前方へ向かう方向に傾斜していてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 雌端子(実施形態1)
12 雌コネクタ
14 雄端子
16 柱状接続部
18 筒状接続部
20 被覆電線(電線)
22 芯線
24 電線接続部
26 連結部
28 外周面
30 リング部材(ばね部材)
32 雌端子金具
34 ハウジング
36 本体部
38 前方開口部
40 後方開口部
42 前方カバー部
44 弾性片
46 間隙
48 係止突部
50 位置決め突部
51 内周突部
52 固定部
54 ボルト締結穴
56 樹脂キャップ
58 第1平板金具
60 第1周壁部
62 第2平板金具
64 第2周壁部
66 第1スリット
68 第1分割壁部
70 内方突部
72 外方凹部
74 内周面
76 第1接点部
78 第1非接触部
80 隙間
82 屈曲部
83 傾斜面
84 接近規制突部
85 平坦部
86 第2スリット
88 第2分割壁部
90 第2接点部
92 第2非接触部
94 隙間
96 第1他端部
98 第2他端部
100 連接部
102 第1壁部
104 第2壁部
106 第1基端側連結部
108 第1先端側連結部
110 離脱防止突部
112 第1窓部(窓部)
114 第2基端側連結部
116 第2先端側連結部
118 第2窓部(窓部)
119 前方開口部
120 切欠き
122 嵌合穴
124 (リング部材の後端部における左右方向両側の)壁部
125 内周面
126 圧接突部
128 凹部
130 係止孔
132 内周突部
134 凹部
136 平坦壁部
138 湾曲壁部
140 雌端子(実施形態2)
142 筒状接続部
144 第1接点部
146 雌端子金具
148 内方突部
150 内周面
152 第1非接触部
154 隙間
160 雌端子(実施形態3)
162 筒状接続部
164 第1接点部
166 第2接点部
168 雌端子金具
170 内方突部
172 内周面
174 第1非接触部
176 隙間
180 雌端子(実施形態4)
182 筒状接続部
184 第1接点部
186 雌端子金具
188 内方突部
190 内周面
192 第1非接触部
194 隙間