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特開2025-16368電気コネクタおよび電気コネクタを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016368
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】電気コネクタおよび電気コネクタを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
H01R13/533 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024113764
(22)【出願日】2024-07-17
(31)【優先権主張番号】2307900
(32)【優先日】2023-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】518105024
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクス フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ ルイヤール
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ダエア
(72)【発明者】
【氏名】カルロス サルガド
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE11
5E087FF03
5E087FF06
5E087FF13
5E087GG17
5E087QQ04
5E087RR15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】振動の多い環境における防振性および耐久性が向上した電気接触ソリューションを提供する。
【解決手段】対向電気コネクタと嵌合するように構成された電気コネクタ(100)であって、電気コネクタ(100)は、ハウジング部材(101)と、ハウジング部材(101)の対応する端子キャビティ(107)に収容された電気端子と、防振要素(103)とを備える、電気コネクタ(100)に関する。電気コネクタ(100)は、ハウジング部材(101)がさらに、ハウジング部材外面(109)から、対応する端子キャビティ(107)を画定するハウジング部材内面までハウジング部材(101)を横切る横溝(117)を備え、防振要素(103)が横溝(117)に配置されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合方向(M)に沿って対向電気コネクタ(501)と嵌合するように構成された電気コネクタであって、
前記電気コネクタ(100)は、ハウジング部材(101)と、前記ハウジング部材(101)の対応する端子キャビティ(107)に収容された1つの電気端子(300)と、防振要素(103)とを備える、電気コネクタにおいて、
前記ハウジング部材(101)はさらに、ハウジング部材外面(109、311)から、前記対応する端子キャビティ(107)を画定するハウジング部材内面(301)まで前記ハウジング部材(101)を横切る横溝(117)を備え、
前記防振要素(103)は、前記横溝(117)に配置されることを特徴とする、電気コネクタ。
【請求項2】
前記防振要素(103)は、前記防振要素(113)が前記ハウジング部材外面(311、109)よりも突き出るように前記横溝(117)に配置される、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジング部材(101)のそれぞれの複数の対応する端子キャビティ(107)に収容された複数の前記電気端子(300)を備え、
前記横溝(117)は、前記ハウジング部材外面(109)から、複数の前記対応する端子キャビティ(107)を画定するそれぞれの前記ハウジング部材内面(301)の各々まで前記ハウジング部材(101)を横切るように、前記ハウジング部材(101)の外周、特に全周に沿って延び、
前記防振要素(103)は、前記ハウジング部材(101)の前記外周、特に前記全周に沿って前記ハウジング部材外面(109、311)よりも突き出るように、前記横溝(117)に配置される、請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記防振要素(103)は、前記ハウジング部材(101)の外周に一致する形状で形成され、特に前記ハウジング部材(101)は、前記嵌合方向(M)に直交する平面(P、P’)に矩形状の周囲を有し、前記防振要素(103)は、一致する矩形リング形状を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記防振要素(103)は、1つまたは複数の前記電気端子(300)と接触する、特に摩擦係合するように前記横溝(117)に配置され、特に前記防振要素(103)は、1つまたは複数の前記対応する端子キャビティ(107)を画定する前記ハウジング部材内面(301)よりも1つまたは複数の前記対応する端子キャビティ(107)へと突き出ている、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
1つまたは複数の前記電気端子(300)の各々が、相手側ピンコンタクト端子(515)との電気接触を実現するように構成された内側狭小部(309)を備えるソケットコンタクト端子(300)であり、
各電気端子(300)に対して、前記横溝(117)は、前記ハウジング部材外面(109)から、前記対応する端子キャビティ(107)を画定する前記ハウジング部材内面(301)のうち前記電気端子(300)のそれぞれの前記内側狭小部(309)と向かい合う部分まで前記ハウジング部材(101)を横切る、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気コネクタ(100)と、対向電気コネクタ(501)とを備える電気コネクタアセンブリであって、前記対向電気コネクタ(501)は、シェル部材(503)を備え、
前記対向電気コネクタ(501)は、前記シェル部材(503)が前記ハウジング部材(101)を包囲し、前記防振要素(103)が前記シェル部材(503)と1つまたは複数の前記電気端子(300)との間で圧縮されるように前記電気コネクタ(100)と嵌合する、電気コネクタアセンブリ。
【請求項8】
前記シェル部材(503)は、前記防振要素(103)と係合するように構成された面取り部(509)を有する内面(505)を備える、請求項9に記載の電気コネクタアセンブリ。
【請求項9】
請求項7または8に記載の前記電気コネクタアセンブリを組み立てる方法であって、
前記シェル部材(503)が前記ハウジング部材(101)を包囲するように、前記ハウジング部材(101)と前記シェル部材(503)とを嵌合させるステップと、
前記シェル部材(503)、特に前記シェル部材(503)の内面(505)の面取り部(509)と、前記電気端子(300)との間で前記防振要素(103)を圧縮(F)するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
電気コネクタ、特に請求項1から8のいずれか一項に記載の電気コネクタ(100)を製造するための方法であって、
ハウジング部材(101)を提供するステップであって、前記ハウジング部材(101)は、ハウジング部材外面(109)から、電気端子(300)用の端子キャビティ(107)を画定するハウジング部材内面(301)まで前記ハウジング部材(101)を横切る横溝(117)を備える、ステップと、
防振要素(103)が前記ハウジング部材外面(109、311)よりも突き出るように前記防振要素(103)を前記横溝(117)に配置するステップと、
好ましくは、前記電気端子(300)、特に相手側電気端子(515)との電気接触を実現するように構成された前記電気端子(300)の内側狭小部(309)が、前記防振要素(103)と接触する、特に摩擦係合するように前記電気端子(300)を前記端子キャビティ(107)に挿入するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気端子および防振要素を備える電気コネクタに関する。本発明はまた、その電気コネクタアセンブリ、電気コネクタアセンブリを組み立てる方法、および電気コネクタを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、ハウジング部材と、1つまたは複数の電気端子とを備える電気コネクタが知られている。電気端子は、ハウジング部材の対応する端子キャビティに収容される。電気端子は、電気コネクタが相手側の対向電気コネクタと嵌合すると、前記対向電気コネクタのそれぞれの相手側電気端子と電気的に接触するように構成されている。
【0003】
電気端子は、例えば、形状嵌め(form-fit)または摩擦嵌めによって、ハウジング部材のその対応する端子キャビティに嵌め込むことができる。電気接触の耐久性および品質に影響を及ぼす可能性がある、摩擦ひずみによるハウジング部材と電気端子の双方への材料劣化のリスクを軽減するために、電気端子の摩擦嵌めを避けることが好ましい。そのため、特に、カンチレバータイプのスナップ嵌めデバイスなど、電気端子をコネクタハウジング部材に嵌め込むための様々な形状嵌めソリューションが考案されている。
【0004】
但し、電気端子およびハウジング部材の所与の製造公差により、ハウジング部材への電気端子のスナップ嵌めは、依然として相対的な微小移動を許すことが多い。振動の多い環境、例えば、内燃機関の近くにある場合、相対的な微小移動は、電気端子および/またはハウジング部材を著しく劣化させるおそれがある。また、この相対的な微小移動は、電気コネクタが対向電気コネクタと嵌合する際、電気端子および相手側電気端子のフレッティング腐食も増大させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、振動の多い環境における防振性および耐久性が向上した電気接触ソリューションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、嵌合方向に沿って対向電気コネクタ(electrical counter-connector)と嵌合するように構成された電気コネクタであって、電気コネクタは、ハウジング部材と、ハウジング部材の対応する端子キャビティに収容された1つの電気端子と、防振要素とを備える、電気コネクタによって達成される。本発明によれば、電気コネクタは、ハウジングがさらに、ハウジング部材外面から、対応する端子キャビティを画定するハウジング部材内面まで横切る横溝を備え、防振要素が横溝に配置されることを特徴とする。
【0007】
横溝が、ハウジング部材外面から、対応する端子キャビティを画定するハウジング部材内面までハウジングを横切るため、ハウジング部材の外側と端子キャビティとを連結する空間が形成される。防振要素を横溝に配置することで、防振要素は、ハウジング部材の外側と電気端子を保持する端子キャビティとの間の直接的な機械的リンクとなり得る。
【0008】
したがって、防振要素は、特に、ハウジング部材の外側にある作動デバイスが、ハウジング部材外面に沿って位置決めされるとき、電気端子と前記作動デバイスとの間に挟まれてもよい。これは、特に、製造公差が電気端子とハウジング部材との間に依然として相対移動を許しているような場合に、端子キャビティにある電気端子にさらなる安定性をもたらす。
【0009】
特に、電気コネクタが、対向電気コネクタと嵌合方向に沿って嵌合するとき、対向電気コネクタは、電気端子とともに防振要素を挟む、特に圧縮する作動デバイスとなり得る。したがって、対向電気コネクタが、電気コネクタと異なる形で振動すると、対向電気コネクタの振動は、直接的かつ追加的に電気端子に伝わり、フレッティング腐食のリスクも低減することができる。
【0010】
一態様では、防振要素は、防振要素がハウジング部材外面よりも突き出すように横溝に配置されてもよい。これにより、横溝に位置する防振要素への機械的アクセスが容易になる。
【0011】
一態様では、電気コネクタは、ハウジング部材のそれぞれの複数の対応する端子キャビティに収容された複数の電気端子を備えることができる。横溝は、ハウジング部材外面から、複数の対応する端子キャビティを画定するそれぞれのハウジング部材内面の各々までハウジング部材を横切るように、ハウジング部材の外周に沿って延びる。防振要素は、外周に沿ってハウジング部材外面よりも突き出すように横溝に配置される。
【0012】
この構成では、単一の防振要素が、それぞれの電気端子を保持する複数の端子キャビティと同時にインターフェースすることができる。これは、防振要素が、複数の電気端子を同時に安定させるのに役立ち得ることを意味する。
【0013】
一態様では、横溝は、ハウジング部材の全周に沿って延びることができ、防振要素は、ハウジング部材の全周に沿ってハウジング部材外面よりも突き出すように横溝に配置される。
【0014】
一態様では、防振要素は、ハウジング部材の外周に一致する形状で形成されてもよい。これにより、防振要素は、複数の対応する端子キャビティの各々とのインターフェースとなるのに都合よく横溝に配置することができる。
【0015】
一態様では、ハウジング部材は、嵌合方向に直交する平面において矩形状の周囲を有することができ、防振要素は、一致する矩形リング形状を有する。リング状の防振要素が周方向の横溝に配置されることで、ハウジング部材に収容された複数の電気端子に内向きかつ均一に安定力を印加する、防振要素の弾性特性が実現され得る。
【0016】
一態様では、防振要素は、Oリングであってもよい。したがって、この構成では、電気コネクタ、そして特に防振要素が、実現する上でとりわけ費用対効果が高い。
【0017】
一態様では、防振要素は、特に50~30、好ましくは35~45のショア硬さを有する、ゴムまたは熱可塑性エラストマーで形成することができる。このように構成される防振要素は、ハウジング部材や電気端子に損傷を与えるリスクを冒すことなく、所望の可撓性および弾性特性を実現するのに適したものとなる。
【0018】
一態様では、防振要素は、1つまたは複数の電気端子と接触するように横溝に配置されてもよい。これにより、防振要素に印加される圧力または力が、直接的かつ即座に電気端子にも伝わり、防振要素と電気端子とが、協働して動くことが可能となる。
【0019】
一態様では、防振要素は、1つまたは複数の電気端子と摩擦係合するように横溝に配置されてもよい。これにより、電気コネクタが非結合状態にあるときでも、それぞれの端子キャビティにある電気端子の安定性を高めることが可能となる。
【0020】
一態様では、防振要素は、1つまたは複数の対応する端子キャビティを画定するハウジング部材内面よりも前記1つまたは複数の対応する端子キャビティへと突き出すことができる。この構成では、電気端子が、その対応する端子キャビティに嵌め込まれる、例えば、スナップ嵌めされると、防振要素と電気端子との間に摩擦係合を得ることができる。
【0021】
一態様では、横溝は、嵌合方向に直交する方向にハウジング部材を横切るようにしてもよい。これにより、電気端子が、嵌合方向に対して平行に延びるハウジング部材に収容されると、1つまたは複数の電気端子とのインターフェースとなる防振要素の配置構成が、より都合のよいものとなる。すなわち、ハウジング部材外面と対応する端子キャビティを画定するハウジング部材内面との間の距離を短くすることができる。
【0022】
一態様では、1つまたは複数の電気端子の各々は、相手側ピンコンタクト端子との電気接触を実現するように構成された内側狭小部を備えるソケットコンタクト端子であってもよい。各電気端子に対して、横溝は、ハウジング部材外面から、対応する端子キャビティを画定するハウジング部材内面のうち電気端子のそれぞれの内側狭小部と向かい合う部分までハウジングを横切る。
【0023】
したがって、機械力は、電気端子に対して防振要素を圧縮し、圧縮力は、電気端子の内側狭小部に局所的に印加される。すなわち、電気端子に印加される圧縮力が最大となる場所は、電気端子の内側狭小部であってもよい。この内側狭小部は、電気コネクタが対向電気コネクタと嵌合する際の1つまたは複数の電気接点を含む。これにより、電気端子と、対向電気コネクタに収容されるコンタクトピンとして構成された相手側電気端子との間の微小移動に起因するフレッティング腐食が低減され得る。とりわけ、防振要素が対向電気コネクタと協働して振動すると、対向電気コネクタの振動および相手側電気端子の振動が、電気接点に伝わる。
【0024】
本発明の目的はまた、本発明の前記態様のうちのいずれか1つによる電気コネクタと、シェル部材を有する対向電気コネクタとを備える電気コネクタアセンブリであって、対向電気コネクタは、シェル部材がハウジング部材を包囲するように電気コネクタと嵌合する、電気コネクタアセンブリによって達成される。ハウジングを包囲するシェルは、電気コネクタのハウジング部材の外周に沿って延びる横溝と都合よく相互作用し得る。
【0025】
電気コネクタアセンブリの一態様では、対向電気コネクタは、防振要素がシェル部材と1つまたは複数の電気端子との間で圧縮されるように、電気コネクタと嵌合することができる。これにより、防振要素は、そのキャビティにある電気端子をさらに安定させ、特に、1つまたは複数の電気端子が、電気コネクタのハウジング部材ではなく、対向電気コネクタとともに振動することを可能にする。
【0026】
電気コネクタアセンブリの一態様では、シェル部材は、特に、対向電気コネクタが電気コネクタと嵌合する際のシェル部材と1つまたは複数の電気端子との間の防振要素の圧縮のために、防振要素と係合するように構成された面取り部を有する内面を備えてもよい。面取り部により、電気コネクタアセンブリのコネクタ同士が嵌合する際に、防振要素の漸進的な圧縮が可能となる。これは、嵌合の動きをより滑らかにすることができる。
【0027】
本発明はまた、前述の態様のうちの1つによる電気コネクタアセンブリを組み立てる方法を含む。本方法は、
シェル部材がハウジング部材を包囲するように、ハウジング部材とシェル部材とを嵌合させるステップと、
シェル部材と電気端子との間で防振要素を圧縮するステップと
を含む。
【0028】
電気コネクタアセンブリが、本方法に従って組み立てられると、電気端子同士の間で、本発明の前記利点をもたらす電気接触が実現される。
【0029】
電気コネクタアセンブリを組み立てる方法の一態様では、対向電気コネクタのシェル部材の内面が、面取り部を備え、圧縮するステップは、面取り部と電気端子との間の圧縮を含む。面取り部により、電気コネクタアセンブリのコネクタ同士が嵌合する際に、防振要素の漸進的な圧縮が可能となる。これは、嵌合の動きをより滑らかにすることができる。
【0030】
本発明はまた、電気コネクタ、特に前記態様のうちの1つによる電気コネクタを製造するための方法に関する。電気コネクタを製造するための方法は、
ハウジング部材を提供するステップであって、ハウジング部材は、ハウジング部材外面から、電気端子用の端子キャビティを画定するハウジング部材内面までハウジング部材を横切る横溝を備える、ステップと、
防振要素がハウジング部材外面よりも突き出るように、防振要素を横溝に配置するステップと、
電気端子を端子キャビティに挿入するステップと
を含む。本方法に従って製造された電気コネクタは、本発明の問題を解決し、特に、本発明の様々な態様の上述した対応する利点を達成することができる。
【0031】
電気コネクタを製造するための方法の一態様では、電気端子は、電気端子が防振要素と接触する、特に、摩擦係合するように端子キャビティに挿入される。これにより、防振要素に印加される圧力または力を、直接的かつ即座に電気端子にも伝えることができ、防振要素と電気端子とが協働して動くことが可能となる。摩擦係合により、電気コネクタが非結合状態にあるときでも、それぞれの端子キャビティにある電気端子の安定性を高めることが可能となる。
【0032】
電気コネクタを製造するための方法の一態様では、電気端子は、相手側電気端子との電気接触を実現するように構成された電気端子の内側狭小部が、防振要素と、かつ/または端子キャビティを画定するハウジング部材内面のうち横溝がハウジング部材を横切る部分と向かい合って位置決めされるように端子キャビティに挿入される。
【0033】
したがって、機械力が、電気端子に対して防振要素を圧縮すると、圧縮力が電気端子の内側狭小部に局所的に印加される。この内側狭小部は、電気コネクタが対向電気コネクタと嵌合する際の1つまたは複数の電気接点を含む。これにより、電気端子と、対向電気コネクタに収容されるコンタクトピンとして構成された相手側電気端子との間の微小移動に起因するフレッティング腐食が低減され得る。
【0034】
電気コネクタを製造するための方法の一態様では、ハウジング部材の横溝は、ハウジング部材外面から、それぞれの複数の電気端子の複数の対応する端子キャビティを画定する複数のハウジング部材内面までハウジング部材を横切り、本方法は、複数の電気端子の各々が防振要素と接触するように、複数の電気端子をそれぞれの対応する端子キャビティに挿入する追加のステップをさらに含む。
【0035】
本方法は、単一の防振要素が同時に、それぞれの電気端子を保持する複数の端子キャビティとのインターフェースとなることができるため、材料費および製造工程費の双方に関して、特に費用効率が高い。
【0036】
本発明の上述の態様、目的、特徴および利点は、添付の図面と併せて、本発明の現在好まれている例示的な実施形態の以下のより詳細な説明の入念な吟味により、より完全に理解および評価されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1の実施形態による、電気コネクタの分解図である。
図2図1の電気コネクタの非分解斜視図である。
図3】非最終製造状態にある、図1の電気コネクタの一部の断面図である。
図4】電気コネクタが最終製造状態にある、図3を示す図である。
図5】非最終組立て状態にある、図1の電気コネクタを備える電気コネクタアセンブリの一部の断面図である。
図6】最終組立て状態にある、図5を示す図である。
図7図5および図6の電気コネクタアセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の実施形態の詳細な説明では、異なる図および/または図の説明の異なる部分で識別される同一の参照符号は、同一の要素に関する。さらに、別段明確に言及しない限り、図1図7に示す対象の構造的特徴は、縮尺通りに描かれていない。
【0039】
以下の実施形態の説明において説明する技術的特徴およびそれらの関連する利点または効果は、一緒にまたは独立して、本発明の任意の態様または実施形態と組み合わせることができるか、またはそれらに適合させることができ、本発明のさらなる可能な実施形態または態様を生み出すことができる。
【0040】
ここで、図1図4を参照して、本発明の第1の実施形態による電気コネクタについて説明する。図1は、本発明による電気コネクタ100の分解図を示す。この第1の実施形態によれば、電気コネクタ100は、車両、特に、自動車における電気信号用途のために構成される。具体的には、電気コネクタ100は、振動の多い環境、例えば、自動車の内燃機関の近くまたはそれに隣接する環境における電気信号用途に適している。
【0041】
電気コネクタ100は、ハウジング部材101、防振要素103、および外被105を備える。本実施形態では、ハウジング部材101は、複数の、ここでは、10個の端子キャビティ107を備える。端子キャビティ107は、直交座標系の方向xに対して平行となる、嵌合方向Mに沿ってハウジング部材101を通って延びる。電気コネクタ100は、この嵌合方向Mに沿って対向電気コネクタと嵌合するように構成される。例えば、本実施形態では、電気コネクタ100は、対向電気コネクタ501と嵌合方向Mに沿って嵌合するように構成される。これについて、図5図6、および図7を参照して説明する。
【0042】
ハウジング部材101は、ハウジング部材外面109を有する。嵌合方向Mに直交する平面Pにおいて、ハウジング部材外面109は、ハウジング部材101の外周を画定する。さらに、本実施形態では、ハウジング部材101は、箱状、すなわち、略直方体の形状を有する。したがって、嵌合方向Mに直交する平面Pにおいて、ハウジング部材101は、略矩形の周囲、特に、丸みを帯びた角部111を有する矩形状の周囲を有してもよい。
【0043】
外被105は、内部空間113を画定する筒状を有する。図2に示すように、ハウジング部材101は、外被105がハウジング部材101を包囲するような形で内部空間113に収まるように構成される。外被105は、電気コネクタと対向電気コネクタとが嵌合する際、対向電気コネクタに対する電気コネクタの位置を保証するように構成されたコネクタ位置保証(CPA)デバイス115をさらに備える。具体的には、CPAデバイス115は、電気コネクタ100を、対向電気コネクタ501などの対向電気コネクタと正しい嵌合位置でロックするように構成される。
【0044】
ハウジング部材101は、横溝117を備える。横溝117は、ハウジング部材101の外周に沿って延びる。具体的には、横溝117は、ハウジング部材101の全周、特に、嵌合方向Mに直交する平面P’における矩形状の周囲全体に沿って延びる。図1に示すように、横溝117は、ハウジング部材101の嵌合方向Mに沿った広がりの1%~10%に対応する幅W、すなわち、嵌合方向Mに沿った広がりを有する。代替または追加として、横溝117は、高さH、すなわち、嵌合方向Mに直交し、端子キャビティ107の直交座標系の方向yに対して平行な方向Oにおける広がりの80%~120%に対応する幅Wを有する。
【0045】
横溝117は、ハウジング部材101の外側からハウジング部材101の内側に向かって端子キャビティ107の各々へとハウジング部材101を横切る。具体的には、横溝117は、ハウジング部材外面109から、ハウジング部材101に形成されたそれぞれの端子キャビティ107を画定する各ハウジング部材内面301までハウジング部材101を横切る。ハウジング部材内面301は、図1および図2では確認できないが、図3図6に示しており、それらを参照して以下で説明する。
【0046】
第1の実施形態の電気コネクタ100は、10個の電気端子300をさらに備え、各電気端子300は、それぞれ、10個の端子キャビティ107の対応する端子キャビティ107に収容される。電気端子300は、図1または図2では確認できないが、図3図6に電気端子300を示しており、これについて、それらの図を参照して説明する。代替実施形態では、端子キャビティ107のうちのいくつかは、電気端子を保持しなくてもよい。言い換えれば、複数の、ここでは10個の端子キャビティ107のうちのすべてが、それぞれの電気端子を収容する必要はない。
そうではなく、電気コネクタ100は、端子キャビティ107の数よりも少ない数の電気端子、例えば、1つのみ、2つ、4つ、5つ、または8つの電気端子を備えることができ、端子キャビティ107のうち、1つから最大9つの端子キャビティ107が、それぞれの電気端子を収容することなく、空となる。
【0047】
防振要素103は、ハウジング部材101に被せることができる弾性バンドとして構成される。ここで、防振要素103は、ハウジング部材101の外周、ここでは矩形状の周囲の広がりに一致する矩形リング形状を有する。防振要素103は、非伸長の休止状態において、防振要素103が、溝117の外側の平面Pおよび溝117の内側の平面P’の両方で、ハウジング部材101の矩形断面よりも小さくなる内側表面積Aを有するように構成される。
【0048】
好ましくは、防振要素103は、50~30、好ましくは35~45、例えば、ここでは40のショア硬さを有する。変形例では、代わりに、防振要素103は、トーラス状またはドーナツ状であってもよい。一例では、防振要素103として市販のOリングジョイントを使用してもよい。
【0049】
ハウジング部材101、防振要素103、および外被105は、好ましくは、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも150℃の動作温度用に設計された材料から製造される。防振要素103は、好ましくはゴムまたは熱可塑性エラストマーから一体的に成形され得る。ハウジング部材101は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から成形されてもよい。
【0050】
ハウジング部材101はまた、各端子キャビティ107に対して、電気端子300のそれらの対応する端子キャビティ107でのスナップ嵌めロックを可能にするように、対応するスナップ嵌め開口部119を備える。この機能について、図3および図4を参照してさらに説明する。
【0051】
図2は、組立て配送状態における電気コネクタ100の斜視図を示す。ハウジング部材101は、ハウジング部材外面109と外被内面201との間に嵌合間隙200が形成されるように、外被105に収まる。嵌合間隙200は、嵌合方向Mを向く嵌合間隙開口部203を有する。嵌合間隙200は、電気コネクタ100が対向電気コネクタと嵌合する際、嵌合間隙開口部203を通して前記対向電気コネクタのシェル部材、例えば、図5および図6に示すシェル部材503を受け入れるように構成される。
【0052】
端子キャビティ107は、各々5つの端子キャビティ107の2つの平行な列R1、R2においてハウジング部材101に配置される。列R1、R2は、嵌合方向Mに対して垂直な方向に延びる。一変形例では、本発明によるハウジング部材は、端子キャビティを1つだけ備えることもできる。他の変形例では、本発明によるハウジング部材は、1列で、または列R1、R2などの2列で配置された、様々な数の端子キャビティ、例えば、2つ、4つ、7つ、または20個の端子キャビティを備えることができる。端子キャビティの数は、少なくとも電気端子の数と同数以上であることが好ましい。
【0053】
図2に示すように、防振要素103は、横溝117に配置される。具体的には、防振要素103は、横溝117におけるハウジング部材101の嵌合方向Mに直交する平面P’において、周囲に沿って延びる。防振要素103が、溝117の内側の平面P’においてハウジング部材101の矩形断面よりも小さい内側表面積Aを有するため、防振要素103は、横溝117に配置されると伸長状態となる。
【0054】
図3を参照してさらに説明するように、防振要素103は、ハウジング部材外面109よりも突き出るように横溝117に配置される。具体的には、図2は、防振要素103が、ハウジング部材101の矩形周囲の少なくとも一部に沿ってハウジング部材外面109よりも嵌合空間200へと突き出るように、横溝117に配置される様子を示す。
【0055】
図3および図4は、図1に示す断面図切断線Vに沿った、電気コネクタ100の一部の同じ断面図を示す。図4では、電気コネクタ100は、最終製造状態にあるが、図3では、電気コネクタ100は、非最終製造状態にある。特に、図3を見ると、電気端子300は、完全には挿入されておらず、ハウジング部材101にロックされていない。
【0056】
前述したように、電気コネクタ100は、各端子キャビティ107につき1つの、10個の電気端子300を備える。10個の電気端子300は、電気コネクタ100が嵌合方向Mに沿って対向電気コネクタと嵌合すると、前記対向電気コネクタの相手側電気端子と嵌合するように、構造的に同一であり、それらの対応する端子キャビティ107に同じように配置される。
【0057】
本実施形態では、電気端子300の各々および端子キャビティ107の各々が、いずれも同一であり、それらの特徴および効果が相互に対応するため、本開示は、1つの端子キャビティ107および1つの電気端子300の特徴および効果の説明に限定される。
【0058】
図3は、嵌合方向Mにおいて対応する端子キャビティ107に部分的に挿入された電気端子300を示す。キャビティ107は、ハウジング部材内面301によって画定され、嵌合方向Mに沿ってハウジング部材101の内側に延びる。本実施形態では、電気端子300は、導電性の板金からスタンピングされる。電気端子300は、導電体に圧着されるように構成された圧着部303と、相手側電気端子に電気的に接触するように構成された接触部305を備える。圧着部303は、嵌合方向Mにおいて縦向きに接触部305に接合される。
【0059】
本実施形態では、電気端子300は、ソケットコンタクト端子、すなわち、雌型コンタクトであり、したがって、電気コネクタ100が相手側の対向電気コネクタと嵌合すると、ピンコンタクト端子、すなわち、雄型コンタクトを受け入れるように構成される。好ましくは、電気端子300は、スズ、銀、または金被覆を有する銅製コンタクトである。
【0060】
電気コンタクト300は、嵌合方向Mに対して横切るように外向きに突き出て、カンチレバースナップ嵌めデバイスとして構成される弾性ランス307を備える。図3の部分的に挿入された図では、電気端子300は、弾性ランス307がスナップ嵌め開口部119に到達していない中間挿入状態にある。したがって、弾性ランスは、ハウジング部材内面301によって、依然として下向きに、すなわち、電気端子300の本体に向かって内向きに屈曲しており、電気端子300は、ハウジング部材101にロックされていない。
【0061】
電気端子は、内側狭小部309を備える。内側狭小部309は、電気コネクタ100が対向電気コネクタと嵌合すると、相手側ピンコンタクト端子との電気接触を実現するように構成される。
【0062】
横溝117は、嵌合方向に直交する方向Oにおいて、電気コネクタ100の外側から端子キャビティ107に向かって、ハウジング部材101を通って延びる。具体的には、横溝117は、ハウジング部材外面109から、端子キャビティ107を画定するハウジング部材内面301までハウジング部材101を横切る。
【0063】
防振要素103は、ハウジング部材外面109よりも突き出るように横溝117に配置される。具体的には、防振要素103は、ハウジング部材外面109の前部311よりも突き出るように横溝117に配置され、前部311は、嵌合方向Mに向く側が横溝117に隣接している。前部311は、横溝117からハウジング部材101の遠位端313まで嵌合方向Mに延びる。防振要素103は、前部311よりも距離D1だけ突き出ている。
【0064】
図4は、電気コネクタ100が最終製造状態にある、図3に対応する図を示す。特に、電気端子300は、端子キャビティ107に完全に挿入されており、電気端子300が端子キャビティ107に正しく収容されて、ハウジング部材101にロックされている、特にスナップ嵌めされている。
【0065】
すなわち、電気端子300は、嵌合方向Mにおいて端子キャビティ107のさらに奥へと挿入されており、弾性ランス307は、スナップ嵌め開口部119に延出可能な位置へと移動している。図4は、弾性ランス307がその休止位置へと外向きに戻ることで、電気端子300が、ハウジング部材101において狭小端子キャビティ開口部400とスナップ嵌め開口部119のスナップ嵌め停止面401との間でロックされる様子を示す。
【0066】
図4に示す最終製造状態では、電気端子300は、端子キャビティ107へとハウジング部材101を横切る横溝117に配置された防振要素103と摩擦係合される。図4から確認できるように、横溝117は、ハウジング部材内面301のうち、電気端子300が端子キャビティ107に完全に挿入されると前記電気端子300の内側狭小部309と向かい合う部分までハウジング部材101を横切る。
【0067】
図4のこの最終製造状態では、電気端子300は、電気端子300が、端子キャビティ107においてさらに安定するように、横溝117に配置された防振要素103と摩擦係合される。特に、電気端子300は、とりわけ電気端子300の内側狭小部309と摩擦係合される。これにより、電気端子300が、相手側ピンコンタクト端子と嵌合する場合に、電気接点において有利に安定することが可能となる。
【0068】
防振要素103は、ハウジング部材101の周囲全体に沿って横溝117に配置される。したがって、防振要素103は、列R1および列R2の両方で、それぞれの端子キャビティ107に配置された10個の電気端子300の各々と、同じような接触状態、特に摩擦係合状態にある。
【0069】
現在説明している本発明の第1の実施形態では、防振要素103は、端子キャビティ107(図3および図4では確認できない)へとわずかだけ突き出ている。これにより、防振要素103と電気端子300との間の軽い摩擦係合が可能となる。但し、変形例では、防振要素は、所定距離、例えば、距離D1だけ端子キャビティへと突き出る、すなわち、ハウジング部材内面よりも延出するように横溝に配置されてもよい。
【0070】
ここで、本発明の第2の実施形態による電気コネクタを製造するための方法について、図1図4を参照して説明する。以下で説明する第2の実施形態による方法は、既に上で説明した電気コネクタ100を製造するための方法である。
【0071】
本方法は、ハウジング部材101を提供するステップAから開始する。図1図4を参照して既に説明したように、ハウジング部材101は、ハウジング部材外面109から端子キャビティ107を画定するハウジング部材内面301のうちの少なくとも1つまでハウジング部材101を横切る横溝117を備える。
【0072】
ステップBでは、図3および図4を参照して説明するように、防振要素103は、防振要素103がハウジング部材外面109、特に前部311よりも突き出るように横溝117に配置される。この目的で、防振要素103は、ハウジング部材外面109を摺動して横溝117に入るように、例えば手動で、弾性的に伸長される。前述したように、防振要素103は、横溝117に達すると内向きに収縮するように寸法決めされる。これにより、防振要素103は、横溝117に堅く留められ、電気端子300を安定させる内向きの力をもたらすことができる。
【0073】
ステップCでは、電気端子300は、電気端子300が防振要素103と接触するように嵌合方向Mに沿って対応する端子キャビティ107に挿入される。先ほど具体的に説明したように、電気端子300は、前記電気端子300がハウジング部材101にスナップ嵌めされ、電気端子300の内側狭小部309が防振要素103と摩擦係合して向かい合うまで、嵌合方向Mに端子キャビティ107に挿入される。
【0074】
ここで、本発明の第3の実施形態による電気コネクタアセンブリについて、図5図6、および図7を参照して説明する。第3の実施形態の電気コネクタアセンブリ500は、本発明の第1の実施形態の電気コネクタ100と、対向電気コネクタ501とを備える。対向電気コネクタ501は、電気コネクタ100と嵌合して、10個の電気端子300と対向電気コネクタ501の10個の相手側電気端子503との電気接触を実現するように構成される。
【0075】
図5および図6は、図1に示す断面図線Vに沿った電気コネクタアセンブリ500の一部の断面図を示す。具体的には、図5および図6は、図3および図4を見るとわかるように、電気コネクタ100の一部の同じ断面図を示しており、電気コネクタ100は、対向電気コネクタ501との異なる嵌合状態にある。図6では、電気コネクタアセンブリ500は、最終組立て状態にある、すなわち、コネクタ100、501同士が、完全に嵌合しているが、図5では、電気コネクタアセンブリ500は、まだ完全には組み立てられていない。図5では、電気コネクタアセンブリ500は、中間嵌合状態にある。
【0076】
図5は、対向電気コネクタ501のシェル部材503を示す。シェル部材503は、図7を見るとわかるように、包囲シェルとして構成される。シェル部材503は、嵌合方向Mに対して平行な方向に沿って延び、ハウジング部材外面109と嵌合するように構成された内面505を備える。シェル部材503の内面505は、停止段507および面取り部509を備える。停止段507は、面取り部509よりもシェル部材501の遠位端511の近くにある。面取り部509は、嵌合方向Mに、すなわち、遠位端511から離れる方にシェル部材503のシェル空間513を狭めるように構成される。
【0077】
対向電気コネクタ501は、少なくとも1つの、ここでは10個の相手側電気端子515をさらに備える。相手側電気端子515は、電気端子300などの対応するソケットコンタクト端子に受け入れられるように構成されたピンコンタクト端子である。本実施形態の場合、相手側電気端子515は、いずれも同一であり、対応する電気端子300と嵌合するように、対応する形で配置される。以下では、相手側電気端子515とその嵌合について1つのみを取り上げて説明する。
【0078】
図5に示す中間嵌合状態では、電気コネクタ100は、ハウジング部材101が対向電気コネクタ501に部分的に挿入されるように、嵌合方向Mに対向電気コネクタ501に接続されている(pluged over)。すなわち、シェル部材503は、嵌合空間200へと部分的に摺動している。
【0079】
したがって、シェル部材503は、電気コネクタ100のハウジング部材101のハウジング部材外面109を摺動している。但し、停止段507は、まだ当接しておらず、面取り部は、まだ防振要素103に達していない。ピン端子515は、狭小端子キャビティ開口部400を通して電気端子300に部分的に進入している。
【0080】
図6では、電気コネクタアセンブリ500は、最終組立て状態にある。すなわち、電気コネクタ100と対向電気コネクタ501とが完全に嵌合している。特に、電気コネクタ100が嵌合方向Mにさらに移動することで、ハウジング部材101がシェル空間513の奥へとさらに移動しているため、シェル部材503も、ハウジング部材外面109をさらに摺動して進んでいる。シェル部材503は、停止段507が、ハウジング部材101から外向きに突き出ているストッパ600に当接するまで、ハウジング部材外面109を摺動している。
【0081】
これと同時に、面取り部509は、防振要素103に到達し、その上を摺動している。面取り部509が、シェル空間515を嵌合方向Mに狭めているため、面取り部509は、ハウジング部材101のハウジング部材外面109よりも外向きに突き出る防振要素103と係合している。シェル部材503によって画定されたシェル空間515が、面取り部509によって狭められているため、コネクタ100、501同士を互いに押し込むさらなる嵌合の動きが、防振要素103を横溝117のさらに深くへと押し込んでいる。
【0082】
特に、嵌合状態にある電気コネクタアセンブリにおけるシェル部材503は、防振要素103に対して、嵌合方向Mに直交する圧縮力Fを印加し、防振要素103を横溝117の中に、かつ電気コンタクト300に対して押し込む。言い換えれば、防振要素103は、シェル部材503と電気コンタクト300との間で圧縮され、挟まれる。面取り部509は、防振要素103が、嵌合方向Mに面取り部109を移動させると、圧縮力Fのその最大値までの漸進的な増加が可能となる。
【0083】
図6は、完全に嵌合した状態を示しており、ピン端子515は、電気端子300のさらに奥へと移動して、内側狭小部309で電気接触を実現している。防振要素103が、シェル部材503と電気コンタクト300との間で圧縮されると、その間に直接的な機械的リンクが確立される。これにより、電気端子300がその端子キャビティ107においてさらに安定し、製造公差により電気端子300を端子107にスナップ嵌めした後も存在し得る、ハウジング部材101に対する電気端子300の微小移動の可能性を低減する。
【0084】
また、電気端子300とシェル部材503との間に直接的な機械リンクが確立されるため、対向電気コネクタ501の振動(電気コネクタ100のハウジング部材101の振動とは異なり得る)を電気端子300に伝えることができる。すなわち、電気端子300は、対向電気コネクタ501およびその相手側電気端子515とともに有利に振動することができる。電気端子300と電気端子515とが協働で振動することで、フレッティング腐食が低減される。
【0085】
図7は、図5および図6の電気コネクタアセンブリの斜視図を示す。図7を見るとわかるように、電気コネクタ100は、シェル部材503を嵌合空間200に受け入れるように、対向電気コネクタ501に接続される。これにより、シェル部材503は、ハウジング部材101の周囲を、そのハウジング部材外面109に沿って包囲する。
【0086】
したがって、シェル部材503は、ハウジング部材101の周囲全体、特に、防振要素103の周囲全体に沿って、圧縮力Fを印加し得る。このようにすることで、シェル部材503はまた、一方側の防振要素103を、対応する端子キャビティ107にある10個の電気端子300の他方側の各々に対して圧縮する。
【0087】
ここで、上述した電気コネクタアセンブリ500に鑑みて、本発明のさらなる、すなわち第4の実施形態による、電気コネクタアセンブリを組み立てる方法について説明する。以下で説明する第4の実施形態による方法は、上で既に説明した特徴を持つ電気コネクタアセンブリ500を組み立てる方法である。
【0088】
第4の実施形態による電気コネクタアセンブリを組み立てる方法は、シェル部材503がハウジング部材101を包囲するように、ハウジング部材101とシェル部材503とを嵌合させるステップDから開始する。特に、電気コネクタ100は、シェル部材503が嵌合空間200に挿入され、ハウジング部材101がシェル空間515に挿入されるように、対向電気コネクタ501に接続される。これにより、内面505は、ハウジング部材101のハウジング部材外面109の周囲を摺動する。
【0089】
第4の実施形態による方法は、シェル部材503と電気端子300との間で防振要素103を圧縮するステップEをさらに含む。面取り部509は、シェル空間515を狭め、これにより、シェル部材503の内面505が、防振要素103と係合する。具体的には、シェル部材503は、嵌合方向Mに直交する方向に、かつ電気端子300に対して、圧縮力Fを防振要素103に印加する。すなわち、防振要素103は、シェル部材503と電気端子300との間に挟まれる。
【0090】
上述した本発明の実施形態は、各々、振動の多い環境において防振性および耐久性が向上した電気接触ソリューションを提供する。
【符号の説明】
【0091】
100 電気端子
101 ハウジング部材
103 防振要素
105 外被
107 端子キャビティ
109 ハウジング部材外面
111 ハウジング部材の丸みを帯びた角部
113 外被の内部空間
115 CPAデバイス
117 横溝
119 スナップ嵌め開口部
200 嵌合間隙
201 外被内面
203 嵌合間隙開口部
300 電気端子
301 ハウジング部材内面
303 圧着部
305 接触部
307 弾性ランス
309 内側狭小部
311 ハウジング部材外面の前部
313 ハウジング部材外面の遠位端
400 狭小端子キャビティ開口部
401 スナップ嵌め停止面
500 電気コネクタアセンブリ
501 対向電気コネクタ
503 シェル部材
505 シェル部材の内面
507 シェル部材の内面に形成された停止段
509 シェル部材の内面に形成された面取り部
511 シェル部材の遠位端
513 シェル空間
515 相手側電気端子
600 ストッパ
A 防振要素の内側表面積
D1 防振要素の外側突出距離
F 圧縮力
H 端子キャビティの高さ
M 嵌合方向
O 嵌合方向に直交する方向
P、P’ 嵌合方向に直交する平面
R1、R2 端子キャビティの列
V 断面線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合方向(M)に沿って対向電気コネクタ(501)と嵌合するように構成された電気コネクタであって、
前記電気コネクタ(100)は、ハウジング部材(101)と、前記ハウジング部材(101)の対応する端子キャビティ(107)に収容された1つの電気端子(300)と、防振要素(103)とを備える、電気コネクタにおいて、
前記ハウジング部材(101)はさらに、ハウジング部材外面(109、311)から、前記対応する端子キャビティ(107)を画定するハウジング部材内面(301)まで前記ハウジング部材(101)を横切る横溝(117)を備え、
前記防振要素(103)は、前記横溝(117)に配置されることを特徴とする、電気コネクタ。
【請求項2】
前記防振要素(103)は、前記防振要素(103)が前記ハウジング部材外面(311、109)よりも突き出るように前記横溝(117)に配置される、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジング部材(101)のそれぞれの複数の対応する端子キャビティ(107)に収容された複数の前記電気端子(300)を備え、
前記横溝(117)は、前記ハウジング部材外面(109)から、複数の前記対応する端子キャビティ(107)を画定するそれぞれの前記ハウジング部材内面(301)の各々まで前記ハウジング部材(101)を横切るように、前記ハウジング部材(101)の外周に沿って延び、
前記防振要素(103)は、前記ハウジング部材(101)の前記外周に沿って前記ハウジング部材外面(109、311)よりも突き出るように、前記横溝(117)に配置される、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジング部材(101)のそれぞれの複数の対応する端子キャビティ(107)に収容された複数の前記電気端子(300)を備え、
前記横溝(117)は、前記ハウジング部材外面(109)から、複数の前記対応する端子キャビティ(107)を画定するそれぞれの前記ハウジング部材内面(301)の各々まで前記ハウジング部材(101)を横切るように、前記ハウジング部材(101)の全周に沿って延び、
前記防振要素(103)は、前記ハウジング部材(101)の前記全周に沿って前記ハウジング部材外面(109、311)よりも突き出るように、前記横溝(117)に配置される、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記防振要素(103)は、前記ハウジング部材(101)の外周に一致する形状で形成され、前記ハウジング部材(101)は、前記嵌合方向(M)に直交する平面(P、P’)に矩形状の周囲を有し、前記防振要素(103)は、一致する矩形リング形状を有する、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記防振要素(103)は、1つまたは複数の前記電気端子(300)と接触するように前記横溝(117)に配置され、前記防振要素(103)は、1つまたは複数の前記対応する端子キャビティ(107)を画定する前記ハウジング部材内面(301)よりも1つまたは複数の前記対応する端子キャビティ(107)へと突き出ている、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記防振要素(103)は、1つまたは複数の前記電気端子(300)と摩擦係合するように前記横溝(117)に配置され、前記防振要素(103)は、1つまたは複数の前記対応する端子キャビティ(107)を画定する前記ハウジング部材内面(301)よりも1つまたは複数の前記対応する端子キャビティ(107)へと突き出ている、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
1つまたは複数の前記電気端子(300)の各々が、相手側ピンコンタクト端子(515)との電気接触を実現するように構成された内側狭小部(309)を備えるソケットコンタクト端子(300)であり、
各電気端子(300)に対して、前記横溝(117)は、前記ハウジング部材外面(109)から、前記対応する端子キャビティ(107)を画定する前記ハウジング部材内面(301)のうち前記電気端子(300)のそれぞれの前記内側狭小部(309)と向かい合う部分まで前記ハウジング部材(101)を横切る、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の電気コネクタ(100)と、対向電気コネクタ(501)とを備える電気コネクタアセンブリであって、前記対向電気コネクタ(501)は、シェル部材(503)を備え、
前記対向電気コネクタ(501)は、前記シェル部材(503)が前記ハウジング部材(101)を包囲し、前記防振要素(103)が前記シェル部材(503)と1つまたは複数の前記電気端子(300)との間で圧縮されるように前記電気コネクタ(100)と嵌合する、電気コネクタアセンブリ。
【請求項10】
前記シェル部材(503)は、前記防振要素(103)と係合するように構成された面取り部(509)を有する内面(505)を備える、請求項9に記載の電気コネクタアセンブリ。
【請求項11】
請求項9に記載の前記電気コネクタアセンブリを組み立てる方法であって、
前記シェル部材(503)が前記ハウジング部材(101)を包囲するように、前記ハウジング部材(101)と前記シェル部材(503)とを嵌合させるステップと、
前記シェル部材(503)と前記電気端子(300)との間で前記防振要素(103)を圧縮(F)するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記シェル部材(503)の内面(505)の面取り部(509)と、前記電気端子(300)との間で前記防振要素(103)を圧縮(F)する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
求項1から8のいずれか一項に記載の電気コネクタ(100)を製造するための方法であって、
ハウジング部材(101)を提供するステップであって、前記ハウジング部材(101)は、ハウジング部材外面(109)から、電気端子(300)用の端子キャビティ(107)を画定するハウジング部材内面(301)まで前記ハウジング部材(101)を横切る横溝(117)を備える、ステップと、
防振要素(103)が前記ハウジング部材外面(109、311)よりも突き出るように前記防振要素(103)を前記横溝(117)に配置するステップと
記電気端子(300)が、前記防振要素(103)と接触するように前記電気端子(300)を前記端子キャビティ(107)に挿入するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
相手側電気端子(515)との電気接触を実現するように構成された前記電気端子(300)の内側狭小部(309)が、前記防振要素(103)と摩擦係合するように前記電気端子(300)を前記端子キャビティ(107)に挿入する、請求項13に記載の方法。
【外国語明細書】