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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025163703
(43)【公開日】2025-10-30
(54)【発明の名称】間欠動作制御回路
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/25 20060101AFI20251023BHJP
   G06F 3/05 20060101ALI20251023BHJP
   G06F 1/3287 20190101ALI20251023BHJP
【FI】
G01R19/25
G06F3/05 Z
G06F1/3287
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067131
(22)【出願日】2024-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗林 英毅
(72)【発明者】
【氏名】手島 紘明
(72)【発明者】
【氏名】野見山 隆
【テーマコード(参考)】
2G035
5B011
【Fターム(参考)】
2G035AA20
2G035AD26
2G035AD28
2G035AD55
2G035AD65
5B011DC06
5B011EA09
5B011LL00
(57)【要約】
【課題】本開示技術は、4-20[mA]の信号を内部の電気回路を動作させるための電流源として使用し、かつ、ΔΣA/D変換方式のA/D変換回路を使用する、という条件下で、CPUの動作周波数を上げずに、消費電流制約を満たしつつ高精度AD値を取得するシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示技術に係る間欠動作制御回路は、外部のセンサ(2000)と接続され、システム制御部(100)と、デルタシグマAD変換器(200)と、プロセッサ(300)と、SRAM(400)と、フラッシュメモリ(500)と、を含み、システム制御部(100)が、デルタシグマAD変換器(200)、プロセッサ(300)、SRAM(400)、フラッシュメモリ(500)、及びセンサ(2000)のそれぞれに対して、ActiveとInactiveとを切り替える指令を出す、というものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のセンサと接続され、
システム制御部と、デルタシグマAD変換器と、プロセッサと、SRAMと、フラッシュメモリと、を含み、
前記システム制御部が、前記デルタシグマAD変換器、前記プロセッサ、前記SRAM、前記フラッシュメモリ、及び前記センサのそれぞれに対して、ActiveとInactiveとを切り替える指令を出す、
間欠動作制御回路。
【請求項2】
前記デルタシグマAD変換器は、デルタシグマ変調部と、デジタルフィルタ部と、スケーリング部と、を備え、
前記デジタルフィルタ部は、SINC Filterである、
請求項1に記載の間欠動作制御回路。
【請求項3】
前記デルタシグマAD変換器の前段に備えられ、前記センサの出力をサンプリングしてホールドするサンプルホールド回路を更に備える、
請求項1に記載の間欠動作制御回路。
【請求項4】
前記サンプルホールド回路は、少なくとも接続される前記センサの個数だけあり、それぞれが1つの対応する前記センサの出力をサンプリングしてホールドし、前記システム制御部により制御される選択回路で選択される、
請求項3に記載の間欠動作制御回路。
【請求項5】
前記スケーリング部は、前記デジタルフィルタ部の積算期間に応じて、スケーリングの係数を切り替える、
請求項2に記載の間欠動作制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、間欠動作制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製等の化学工業の技術分野において、製造プロセスの自動化に関する技術開発が多くなされている。製造プロセスの自動化に用いられる制御機器の多くは、アナログ信号の出力として4-20[mA](「ヨンニジュウ」と称されることもある)の規格が用いられる。この4-20[mA]の出力が用いられることのメリットは、断線時に0[mA]になるため異常が分かりフェイルセーフであること、長距離の伝送でも減衰しにくいこと、250[Ω]の抵抗を利用することで容易に1-5[V]の電圧入力に変換できること、などが挙げられる。
【0003】
工場、及び化学プラントの現場においては、製造プロセスの自動化に貢献すべく、多くの調整弁(「コントロールバルブ」とも称される)が用いられている。この調整弁は、バルブポジショナと称される制御器部分と、アクチュエータ(駆動部分)と、を有する。バルブポジショナは、単に「ポジショナ」と称されることもある。
バルブポジショナは、例えば、上位コントローラから、調整弁の開度を指示する制御信号として、上記の4-20[mA]の規格に基づいた信号が入力される、という使われ方がよくなされる。
【0004】
工場、及び化学プラントで用いられる調整弁等の自動化機器は、上位コントローラから送られる信号を、単なる制御信号としてのみならず、内部の電気回路を動作させるための電流源として使用することもある。
自動化機器が、4-20[mA]の信号を、内部の電気回路を動作させるための電流源として使用する場合、電流が下限値の4[mA]であるときにおいても、内部の電気回路を正常に動作させなければならない。すなわち、このような自動化機器は、どのような条件下であっても、全体の消費電流を4[mA]未満に抑える必要がある。全体の消費電流を4[mA]未満に抑えられなかった場合に、自動化機器は、上位コントローラからの制御信号に基づいて正しく制御できないおそれも生じる。
【0005】
このように、自動化機器が、4-20[mA]の信号を、内部の電気回路を動作させるための電流源として使用する場合、自動化機器の消費電流を低く抑える設計は、非常に重要な課題である。なお、自動化機器が、4-20[mA]の信号を、内部の電気回路を動作させるための電流源として使用する構成の場合、このような自動化機器は、信号端子が2つしか存在しないことから、「二線式」と称されることがある。
また、仮に自動化機器が、内部に電池等を保有して、4-20[mA]の信号を内部の電気回路を動作させるための電流源として使用しない場合であっても、消費電流は製品寿命に関わるため、重要な設計課題であると言える。
【0006】
工場、及び化学プラントの現場において用いられるセンサ類は、必ずしも、4-20[mA]のアナログ信号を出力するものに限らない。工場、及び化学プラントの現場において用いられるシステムにおいて、複数種類の静電容量型センサを備えるものもある。
例えば、特許文献1には、容量型センサの容量値(アナログ値)をデジタルデータ化する信号変換部(例えば特許文献1の図5における「容量-デジタル変換部(22)」を参照)を備える、インタフェース装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-84103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1において開示された信号変換部は、例えば、逐次比較型A/D変換方式、ΔΣA/D変換方式(「デルタシグマA/D変換方式」と称する)、等により構成される。特に、高精度なセンシングが要求される場合、ΔΣA/D変換方式がよく用いられる。ここで、ΔΣA/D変換方式は、高精度なセンシングに向いているが、例えば、逐次比較型A/D変換方式と比較して、消費電流が大きい、という欠点がある。
【0009】
前述の調整弁を例にとると、調整弁は、弁の開度を検出するために、角度センサが用いられる。調整弁を駆動するためのいわゆる制御基板は、角度センサの出力であるアナログ信号を高精度に読み取るために、上記のΔΣA/D変換方式のA/D変換回路が搭載される。そして制御基板は、角度センサ、A/D変換回路、その他CPU、SRAM、及びFLASH等の電子部品をアクティブにするための電流を要する。ここで、上記の文脈における「アクティブにする」の意味は、外部からエネルギーを供給しその機能を発揮できる状態にすること、簡単に言えば電源をONにすること、と同じである。
【0010】
工場、及び化学プラントで用いられる調整弁等の自動化機器において、4-20[mA]の信号を内部の電気回路を動作させるための電流源として使用し、かつ、ΔΣA/D変換方式のA/D変換回路を使用する場合、従来の制御基板では、消費電流上限値の仕様が厳しく、低消費電流の動作周波数が低いCPUしか用いることができない、という課題があった。なお、工場、及び化学プラントで用いられる調整弁等の自動化機器に対しては、μ秒単位の周期で制御を実現したい、という場合もある。
本開示技術は、4-20[mA]の信号を内部の電気回路を動作させるための電流源として使用し、かつ、ΔΣA/D変換方式のA/D変換回路を使用する、という条件下で、CPUの動作周波数を上げずに、消費電流制約を満たしつつ高精度AD値を取得するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示技術に係る間欠動作制御回路は、外部のセンサと接続され、システム制御部と、デルタシグマAD変換器と、プロセッサと、SRAMと、フラッシュメモリと、を含み、システム制御部が、デルタシグマAD変換器、プロセッサ、SRAM、フラッシュメモリ、及びセンサのそれぞれに対して、ActiveとInactiveとを切り替える指令を出す、というものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示技術に係る間欠動作制御回路は上記の技術的特徴を有するため、4-20[mA]の信号を内部の電気回路を動作させるための電流源として使用し、かつ、ΔΣA/D変換方式のA/D変換回路を使用する、という条件下で、CPUの動作周波数を上げずに、消費電流制約を満たしつつ高精度AD値を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施の形態1に係る間欠動作制御回路1000の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1に係る間欠動作制御回路1000のタイミングチャートである。
図3図3は、実施の形態2に係る間欠動作制御回路1000の構成を示すブロック図である。
図4図4は、実施の形態2に係る間欠動作制御回路1000のタイミングチャートである。
図5図5は、実施の形態3に係る間欠動作制御回路1000の構成を示すブロック図である。
図6図6は、実施の形態3に係る間欠動作制御回路1000のタイミングチャートである。
図7図7は、実施の形態4に係る間欠動作制御回路1000の構成を示すブロック図である。
図8図8は、実施の形態4に係る間欠動作制御回路1000のタイミングチャートである。
図9図9は、本開示技術に係るデジタルフィルタ部220の例を示す説明図である。
図10図10は、本開示技術に係るスケーリング部230の処理を説明する表である。
図11図11は、本開示技術に係るスケーリング部230の処理を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る間欠動作制御回路1000の構成を示すブロック図である。図1に示されるとおり、実施の形態1に係る間欠動作制御回路1000は、システム制御部100と、デルタシグマAD変換器200と、プロセッサ300と、SRAM400と、フラッシュメモリ500と、汎用デジタル回路600と、を含む。
また、図1に示されるとおり、デルタシグマAD変換器200は、デルタシグマ変調部210と、デジタルフィルタ部220と、スケーリング部230と、を含む。
さらに、図1に示されるとおり、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、外部にあるセンサ2000と接続される。
【0015】
《間欠動作制御回路1000》
実施の形態1に係る間欠動作制御回路1000は、工場、及び化学プラントで用いられる調整弁等の自動化機器(不図示)を制御する構成要素である。本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の技術的特徴の一つは、以下に述べるシステム制御部100を備えることである。
なお、図1における太線は、間欠動作制御回路1000におけるBUS(バス)を表している。
【0016】
《システム制御部100》
実施の形態1に係るシステム制御部100は、センサ2000、デルタシグマAD変換器200、プロセッサ300、SRAM400、フラッシュメモリ500、及び汎用デジタル回路600のそれぞれに対して、ActiveとInactiveと切り替える指令を出す構成要素である。ここで、Activeとは、前述のとおり、電源ONと同義である。すなわち、別の言い方をすれば、システム制御部100は、センサ2000、デルタシグマAD変換器200、プロセッサ300、SRAM400、フラッシュメモリ500、及び汎用デジタル回路600のそれぞれに対して、電源ON/OFFの指令を出し、間欠動作制御回路1000をタイムシェアリングシステムとして実現する。
【0017】
《デルタシグマAD変換器200》
デルタシグマAD変換器200は、ΔΣA/D変換方式のA/D変換回路により実現される。前述のとおり、デルタシグマAD変換器200は、デルタシグマ変調部210と、デジタルフィルタ部220と、スケーリング部230と、を含む。
デルタシグマAD変換器200の詳細は、後述の説明により明らかとなる。
【0018】
《プロセッサ300》
プロセッサ300は、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP、とも称される)である。
【0019】
《SRAM400》
SRAM400は、Static Random Access Memoryであり、読み書きが可能な半導体メモリであるRAMの方式の一つである。SRAM400は、一定時間ごとに記録内容の再書き込み処理、いわゆるリフレッシュ動作を行う必要がない。このためSRAM400は、同じ規模のDRAMと比較して、消費電力が少ない。SRAM400は、演算に必要なデータをストレージ(後述のフラッシュメモリ500)から読み込み、一時的に置いておくために使われる。
【0020】
《フラッシュメモリ500》
フラッシュメモリ500は、書き換え可能な上、電源を切ってもメモリ内容が消えない不揮発性のメモリである。フラッシュメモリ500は、主にストレージとして使われる。
【0021】
《汎用デジタル回路600》
汎用デジタル回路600は、例えば、SPI(シリアルペリフェラルインターフェイス)、I2C(Inter-Integrated Circuit)、GPIO(汎用入出力)など、マイクロコントローラには必ず搭載されている、汎用的なデジタル回路を表現したものである。
【0022】
図2は、実施の形態1に係る間欠動作制御回路1000のタイミングチャートである。図2に例示されるタイミングチャートにおいては、5[ms]という長さの時間が、前半の1~2[ms]である「センサ+ADCフェーズ」と、後半の3~4[ms]である「CPUフェーズ」と、に分けられている。
【0023】
図2に例示される動作タイミングは、システム制御部100により実現される。図2に例示される動作タイミングに基づけば、システム制御部100は、「センサ+ADCフェーズ」においては、センサ2000、デルタシグマAD変換器200におけるデルタシグマ変調部210及びデジタルフィルタ部220、をActiveとする。また、システム制御部100は、「CPUフェーズ」においては、プロセッサ300、SRAM400、フラッシュメモリ500、及び汎用デジタル回路600をAcitiveとする。
なお、デルタシグマAD変換器200によるAD変換結果をSRAM400に格納する時は、「センサ+ADCフェーズ」であっても、SRAM400をActiveとしてもよい。
【0024】
このように、実施の形態1に係る間欠動作制御回路1000の技術的特徴は、システム制御部100を備え、間欠動作制御回路1000がタイムシェアリングシステムとして実現されることである。
上記の技術的特徴を備えることにより、実施の形態1に係る間欠動作制御回路1000は、4-20[mA]の信号を内部の電気回路を動作させるための電流源として使用し、かつ、ΔΣA/D変換方式のA/D変換回路を使用する、という条件下で、消費電流値の上限(例えば4[mA])を越えずに動作できる、という効果を奏する。
【0025】
実施の形態2.
実施の形態2に係る間欠動作制御回路1000は、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の変形例である。特に明記する場合を除き、実施の形態2においては、実施の形態1で用いた符号と同じものが使用される。また、実施の形態2においては、実施の形態1と重複する説明が、適宜、省略される。
【0026】
図3は、実施の形態2に係る間欠動作制御回路1000の構成を示すブロック図である。図3に示されるとおり、実施の形態2に係る間欠動作制御回路1000は、システム制御部100と、デルタシグマAD変換器200と、プロセッサ300と、SRAM400と、フラッシュメモリ500と、汎用デジタル回路600と、サンプルホールド回路700と、を含む。
実施の形態1に係る図1と比較すると、実施の形態2に係る図3は、間欠動作制御回路1000にサンプルホールド回路700が備えられていることを示している。このように、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、外部のセンサ2000から出力されるアナログ信号を、サンプルホールド回路700が取得する構成であってもよい。
【0027】
《サンプルホールド回路700》
サンプルホールド回路700は、文字どおり、アナログ信号をサンプリングし(サンプル)、一定時間その値を保持する(ホールド)、回路である。サンプルホールド回路700は、サンプル&ホールド回路、トラック&ホールド回路、と称されることもある。
本開示技術に係るサンプルホールド回路700は、センサ2000とデルタシグマAD変換器200とがActiveになるフェーズを分ける目的で使用される。
【0028】
図4は、実施の形態2に係る間欠動作制御回路1000のタイミングチャートである。図4に例示されるタイミングチャートにおいては、5[ms]という長さの時間が、前半の1[ms]である「センサフェーズ」と、中間の1[ms]である「ADCフェーズ」と、後半の3[ms]である「CPUフェーズ」と、に分けられている。
【0029】
図4に例示される動作タイミングは、システム制御部100により実現される。図4に例示される動作タイミングに基づけば、システム制御部100は、「センサフェーズ」においては、センサ2000及びサンプルホールド回路700をActiveとする。続いて、システム制御部100は、「ADCフェーズ」においては、デルタシグマAD変換器200におけるデルタシグマ変調部210及びデジタルフィルタ部220をActiveとする。最後に、システム制御部100は、「CPUフェーズ」においては、プロセッサ300、SRAM400、フラッシュメモリ500、及び汎用デジタル回路600をAcitiveとする。
なお、図4に示されるとおり、サンプルホールド回路700は、「センサフェーズ」と「ADCフェーズ」との両フェーズにおいて、Activeである。
【0030】
サンプルホールド回路700は、センサ2000が出力する電圧値をホールドすることができる。この性質を利用し、実施の形態2に係る間欠動作制御回路1000は、センサ2000をInactiveにすると同時にデルタシグマAD変換器200をActiveとし、サンプルホールド回路700で保持された電圧に基づいて、AD変換を行うことができる。
【0031】
このように、実施の形態2に係る間欠動作制御回路1000は、実施の形態1で述べた技術的特徴に加え、「センサフェーズ」と「ADCフェーズ」との両フェーズにおいてActiveであるサンプルホールド回路700を備える。
上記の技術的特徴を備えることにより、実施の形態2に係る間欠動作制御回路1000は、実施の形態1に係る間欠動作制御回路1000の効果に加え、消費電流の大きいセンサ2000と、同じく消費電流の大きいデルタシグマAD変換器200とを、異なるフェーズでActiveにすることができる、という効果を奏する。
【0032】
実施の形態3.
実施の形態3に係る間欠動作制御回路1000は、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の変形例である。特に明記する場合を除き、実施の形態3においては、既出の実施の形態で用いた符号と同じものが使用される。また、実施の形態3においては、既出の実施の形態と重複する説明が、適宜、省略される。
【0033】
図5は、実施の形態3に係る間欠動作制御回路1000の構成を示すブロック図である。図5に例示される間欠動作制御回路1000には、センサ2000-1、センサ2000-2、と複数のセンサ2000が接続されている。このように、1枚の制御基板が、複数のセンサ2000からの信号を処理し、複数のアクチュエータ(不図示)を制御することがある。図5に例示される間欠動作制御回路1000は、センサ2000-1から出力されるアナログ信号の電圧値をサンプル&ホールドするサンプルホールド回路700-1と、センサ2000-2から出力されるアナログ信号の電圧値をサンプル&ホールドするサンプルホールド回路700-2と、を備える。
【0034】
図5に示されるとおり、サンプルホールド回路700は、少なくとも接続されるセンサ2000の個数だけ存在する。サンプルホールド回路700のそれぞれが、1つの対応するセンサ2000の出力をサンプリングしてホールドする。図5には、サンプルホールド回路700-1とセンサ2000-2とを切り替える選択回路(スイッチャー)が、システム制御部100により制御されることが示されている。
【0035】
図6は、実施の形態3に係る間欠動作制御回路1000のタイミングチャートである。図6に例示される動作タイミングも、システム制御部100により実現される。図6に例示される動作タイミングは、「センサ1フェーズ」、「センサ2フェーズ」、「ADC1stフェーズ」、「ADC2ndフェーズ」、及び「CPUフェーズ」の5つのフェーズに分けられる。「センサ1フェーズ」において、システム制御部100は、センサ2000-1及びサンプルホールド回路700-1をActiveとする。「センサ2フェーズ」において、システム制御部100は、センサ2000-2及びサンプルホールド回路700-2をActiveとする。「ADC1stフェーズ」及び「ADC2ndフェーズ」において、システム制御部100は、デルタシグマAD変換器200(デルタシグマ変調部210及びデジタルフィルタ部220)をActiveとする。最後に「CPUフェーズ」において、システム制御部100は、プロセッサ300、SRAM400、フラッシュメモリ500、及び汎用デジタル回路600をActiveとする。
また、図6に示されるとおり、サンプルホールド回路700-1は、「センサ1フェーズ」、「センサ2フェーズ」、「ADC1stフェーズ」の3つのフェーズにおいて、Activeとするとよい。また、サンプルホールド回路700-2は、「センサ2フェーズ」、「ADC1stフェーズ」、「ADC2ndフェーズ」の3つのフェーズにおいて、Activeとするとよい。
さらに、図6に示されるとおり、「ADC1stフェーズ」においてはサンプルホールド回路700-1が、「ADC2ndフェーズ」においてはサンプルホールド回路700-2が、それぞれ選択されるとよい。
【0036】
このように、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、接続されるセンサ2000の数だけ、サンプルホールド回路700を備えるようにするとよい。
上記の構成を備えることにより、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、接続される複数のセンサ2000の動作タイミングをずらし、全てのフェーズにおいて消費電流の上限値に係る制約の中で動作できる、との効果を奏する。
【0037】
実施の形態4.
実施の形態4に係る間欠動作制御回路1000は、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の変形例である。特に明記する場合を除き、実施の形態4においては、既出の実施の形態で用いた符号と同じものが使用される。また、実施の形態4においては、既出の実施の形態と重複する説明が、適宜、省略される。
【0038】
図7は、実施の形態4に係る間欠動作制御回路1000の構成を示すブロック図である。図7に例示される間欠動作制御回路1000には、センサ2000-1、センサ2000-2、と複数のセンサ2000が接続されている。実施の形態3においても示されたように、1枚の制御基板が、複数のセンサ2000からの信号を処理し、複数のアクチュエータ(不図示)を制御することがある。図7に例示される間欠動作制御回路1000は、センサ2000-1から出力されるアナログ信号の電圧値をサンプル&ホールドするサンプルホールド回路700-1と、センサ2000-2から出力されるアナログ信号の電圧値をサンプル&ホールドするサンプルホールド回路700-2と、を備える。さらに、図7に例示される間欠動作制御回路1000は、サンプルホールド回路700-1によりホールドされた電圧値に対してADCを行うデルタシグマAD変換器200-1と、サンプルホールド回路700-2によりホールドされた電圧値に対してADCを行うデルタシグマAD変換器200-2と、を備える。すなわち、実施の形態4に係る間欠動作制御回路1000は、接続されるセンサ2000の数だけ、デルタシグマAD変換器200のチャンネルが用意されている、という構成である。
【0039】
図7に例示されるような、複数のデルタシグマAD変換器200のチャンネルを備える構成は、特に、デルタシグマAD変換器200の消費電流と比較して、センサ2000の消費電流が支配的な場合に有効である。
【0040】
図8は、実施の形態4に係る間欠動作制御回路1000のタイミングチャートである。図8に例示される動作タイミングも、システム制御部100により実現される。図8に例示される動作タイミングは、「センサ1フェーズ」、「センサ2フェーズ」、「ADCフェーズ」、及び「CPUフェーズ」の4つのフェーズに分けられる。
実施の形態3に係る図6と比較してわかるように、実施の形態4に係る間欠動作制御回路1000は、複数のデルタシグマAD変換器200のチャンネルにおいて、AD変換が、同じ1つの「ADCフェーズ」において、並列処理される。
【0041】
このように、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、接続されるセンサ2000の数だけ、デルタシグマAD変換器200のチャンネルを備えるようにしてもよい。
上記の構成を備えることにより、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、同じ1つの「ADCフェーズ」において、AD変換を並列処理することができる。
【0042】
実施の形態5.
実施の形態5に係る間欠動作制御回路1000は、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の変形例である。特に明記する場合を除き、実施の形態5においては、既出の実施の形態で用いた符号と同じものが使用される。また、実施の形態5においては、既出の実施の形態と重複する説明が、適宜、省略される。
【0043】
図9は、本開示技術に係るデジタルフィルタ部220の例を示す説明図である。デジタルフィルタ部220は、例えば、SINC Filter、又はCIC Filterであってよい。
図9に示されるように、SINC Filterは、Accumulatorと、Differentiatorと、から構成される。SINC Filterの離散伝達関数F(z)は、以下の数式で表すことができる。



ここで、数式(1)に登場するzは、Z変換における演算子(「Z演算子」とも称される)である。また、Nは、SINC Filterの積算期間である。図9においては、3次のSINCが示されており、この場合はN=3となる。3次のSINC Filterは、次数を明示するため、“SINC3 Filter”と表現される場合がある。
SINC Filterは、積算期間(N)を大きくすればするほどローパスフィルタとしての効果が得られるが、その反面、演算時間も長くなる、という性質を有する。
【0044】
また、SINC Filterの出力ビット幅(Output Bit Width)は、以下の数式で与えられる。



ここで、数式(2)に登場するbはフィルタへ入力される信号のビット幅を、sは符号ビットを、それぞれ表す。
数式(2)は、デジタルフィルタ部220の積算期間であるNの値に応じて、スケーリング部230が行うスケーリングの係数を変える必要があることを示唆している。
数式(1)及び数式(2)の導出等に関しては、本願の筆頭発明者が筆頭執筆者である、以下の論文に詳しく記載されている。
参考論文:H.Kuribayashi and T.Kajita、“Area-Efficient Decimation Filter with 50/60Hz Power-Line Noise Suppression for ΔΣ A/D Converters”, SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration, Vol. 10, No. 3, pp. 165-169, May 2017
【0045】
図10は、本開示技術に係るスケーリング部230の処理を説明する表である。より具体的に言えば図10は、b=2、s=1としたときに(数式(2)を参照)、スケーリング部230が行うスケーリングにおいて、スケーリングの係数としてどの値を用いればよいかを、表にまとめたものである。図10に示される表において、左から1つ目の列は、SINC Filterの積算期間である“N”を表している。また、右から3つ目の列は、スケーリング部230が行うスケーリングにおいて用いられるスケーリングの“係数”を表している。
設定できるNの値を2のべき乗で表せる値に限定すれば、スケーリング部230が行うスケーリングにおいて用いられるスケーリング“係数”は、“0.66667”の1種類であってよい(図10において、N=256、512、1024のケース)。これは、AD変換結果を符号付き24bitとし、出力が取り得る範囲を0x80_0000から0x7F_FFFFとしている。
しかし、実際の現場においては、デジタルフィルタ部220の積算期間(N)を、制限なく細かく設定したい、という場合がある。仮に、設定できるデジタルフィルタ部220の積算期間(N)を2のべき乗で表せる値に制限してしまうと、デルタシグマAD変換器200のサンプリング周期を短くしなければならない、といった状況が生じてしまい、装置全体として高スペック、高価格になってしまう。
本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、デルタシグマAD変換器200がスケーリング部230を含み、図10に示されるスケーリング“係数”のルックアップテーブルに基づいてスケーリングを行うため、柔軟に、細かくデジタルフィルタ部220の積算期間(N)を設定することができる。
【0046】
図11は、本開示技術に係るスケーリング部230の処理を説明するブロック図である。図11において、〇に乗算子“×”が記載されている記号が、スケーリング部230が行うスケーリングにおいて、係数を乗算することを表している。図11の例示は、係数が1からnまで準備され、SINC Filterの積算期間である“N”によって係数が切り換えられることを示している。また、図11は、係数を乗算した後に、下位ビット(小数点以下に相当)の切り捨てを行っていることを示している。
【0047】
このように本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、スケーリング部230が、デジタルフィルタ部220(すなわちSINC Filter)の積算期間(N)に応じて、スケーリングの係数を切り替えるようにするとよい。
上記のスケーリング部230を備えることにより、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、デジタルフィルタ部220(すなわちSINC Filter)の積算期間(N)を、制限なく細かく設定することができる。
【0048】
(付記)
本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の一つの態様は、外部のセンサ2000と接続され、システム制御部100と、デルタシグマAD変換器200と、プロセッサ300と、SRAM400と、フラッシュメモリ500と、を含み、システム制御部100が、デルタシグマAD変換器200、プロセッサ300、SRAM400、フラッシュメモリ500、及びセンサ2000のそれぞれに対して、ActiveとInactiveと切り替える指令を出す、というものである。
この技術的特徴を有するため、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、4-20[mA]の信号を内部の電気回路を動作させるための電流源として使用し、かつ、ΔΣA/D変換方式のA/D変換回路を使用する、という条件下で、消費電流値の上限(例えば4[mA])を越えずに動作できる、という効果を奏する。
【0049】
本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の別の態様は、デルタシグマAD変換器200は、デルタシグマ変調部210と、デジタルフィルタ部220と、スケーリング部230と、を備え、デジタルフィルタ部220は、SINC Filterである、というものである。
これは、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000が、SINC Filterを備える汎用のΔΣ型ADコンバータを利用できることを意味する。
【0050】
本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の別の態様は、デルタシグマAD変換器200の前段に備えられセンサ2000の出力をサンプリングしてホールドするサンプルホールド回路700、を更に備えてもよい。
サンプルホールド回路700を更に備えることにより、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、センサ2000とデルタシグマAD変換器200とがActiveになるフェーズをずらすことができる。
【0051】
本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の別の態様は、サンプルホールド回路700を、少なくとも接続されるセンサ2000の個数だけ備え、それぞれが1つの対応するセンサ2000の出力をサンプリングしてホールドし、システム制御部100により制御される選択回路で選択されるようにしてもよい。
サンプルホールド回路700を接続されるセンサ2000の個数だけ備えることにより、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、接続される複数のセンサ2000の動作タイミングをずらし、全てのフェーズにおいて消費電流の上限値に係る制約の中での動作が可能である。
【0052】
本開示技術に係る間欠動作制御回路1000の別の態様は、スケーリング部230が、デジタルフィルタ部220(すなわちSINC Filter)の積算期間(N)に応じて、スケーリングの係数を切り替えるようにするとよい。
このようなスケーリング部230を備えることにより、本開示技術に係る間欠動作制御回路1000は、デジタルフィルタ部220(すなわちSINC Filter)の積算期間(N)を、制限なく細かく設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示技術は、例えば、工場、及び化学プラントで用いられる調整弁等の自動化機器の制御に応用でき、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0054】
100 システム制御部、200 デルタシグマAD変換器、210 デルタシグマ変調部、220 デジタルフィルタ部、230 スケーリング部、300 プロセッサ、400 SRAM、500 フラッシュメモリ、600 汎用デジタル回路、1000 間欠動作制御回路、2000 センサ。
図1
図2
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図4
図5
図6
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図9
図10
図11